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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 7075-1991 

炭素繊維強化プラスチックの 

繊維含有率及び空洞率試験方法 

Testing methods for carbon fiber content 

and void content 

of carbon fiber reinforced plastics 

1. 適用範囲 この規格は,炭素繊維強化プラスチック(以下,CFRPという。)の繊維含有率及び空洞率

試験方法について規定する。 

備考1. この規格は,エポキシ樹脂,炭素繊維及びCFRPの密度の値とCFRP中の炭素繊維の質量か

ら繊維含有率及び空洞率を計算によって求める方法について規定する。 

2. この規格は,CFRP中の炭素繊維の質量の測定方法として,燃焼法,硝酸分解法及び硫酸分

解法の三つの試験方法について規定する。試験方法の選択は,CFRPに用いられている樹脂

の燃焼性,分解性などを考慮して行うとよい。 

3. 燃焼法は,樹脂が高温の不活性気体中で容易に熱分解すること及び炭素繊維はこの雰囲気下

では酸化減耗しにくいことから,CFRPをブンゼンバーナの還元炎中で加熱し,樹脂分だけ

を燃焼除去させるものである。この方法は,燃焼によって完全に熱分解する樹脂に適用が限

定される。 

なお,この方法は,不燃分の残る臭素化エポキシ樹脂,エポキシノボラック樹脂などには

適用できず,測定精度が硝酸及び硫酸分解法にやや劣ることなどの欠点はあるが,極めて短

時間に測定が可能であり,操作が安全,かつ,簡便なため迅速試験方法として有用である。 

4. 硝酸分解法及び硫酸分解法は,樹脂が硝酸及び硫酸の高温浴中で容易に分解すること及び炭

素繊維はこの条件下では減耗しにくいことから,CFRPをこれらの試薬の高温浴中に浸せき

して樹脂分だけを分解除去させる方法である。硝酸分解法は,酸無水硬化物を除くエポキシ

樹脂に適しており,硫酸分解法は,すべてのエポキシ樹脂,フェノール樹脂,ポリイミドな

どに適用できる。 

5. この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS C 2520 電熱用合金線及び帯 

JIS K 6900 プラスチック用語 

JIS K 7100 プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態 

JIS K 7112 プラスチックの密度と比重の測定方法 

JIS K 8034 アセトン(試薬) 

JIS K 8230 過酸化水素〔過酸化水素水30%)〕(試薬) 

JIS K 8541 硝酸(試薬) 

K 7075-1991  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

JIS K 8951 硫酸(試薬) 

JIS R 3503 化学分析用ガラス器具 

JIS R 6252 研摩紙 

JIS R 7601 炭素繊維試験方法 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 6900によるほか,次のとおりとする。 

(1) 繊維質量含有率 CFRPの全質量に対する炭素繊維の質量の割合。 

(2) 繊維体積含有率 CFRPの全体積に対する炭素繊維の体積の割合。 

(3) 空洞率 CFRP中の空洞(空げき)の占める体積の割合。 

3. 試験片の状態調節 試験片の状態調節は,原則として,試験前にJIS K 7100の標準温度状態3級(温

度23±5℃)に置いたデシケータ中で12時間以上行う。 

4. 試験器具及び試薬 試験器具及び試薬は,次のとおりとする。 

(1) 共通 

(1.1) デシケータ JIS R 3503に規定するもので,硫酸カルシウムなどの乾燥剤が入っているもの。 

(1.2) 天びん 感量0.1mgのもの。 

(1.3) 研磨紙 JIS R 6252に規定するCC 600番又はこれより粒度の細かい研磨紙。 

(2) 燃焼法 

(2.1) ブンゼンバーナ 使用ガスの種類に応じたブンゼンバーナを用いる。 

(2.2) ニクロム線 JIS C 2520に規定するニッケルクロム電熱線1種(記号,NCHW 1)を用い,線径は

約0.2mmとする。 

(3) 硝酸分解法 

(3.1) ガラスフィルタ JIS R 3503に規定するG-4のもの。 

(3.2) フラスコ 容量200mlのもの。 

(3.3) メスシリンダ 容量100mlのもの。 

(3.4) 冷却用コンデンサ JIS R 3503に規定するもの。 

(3.5) 乾燥器 約200℃まで昇温可能な熱風乾燥機。 

(3.6) アセトン JIS K 8034に規定するアセトン。 

(3.7) 濃硝酸 JIS K 8541に規定する62%濃硝酸。 

(4) 硫酸分解法 

(4.1) ガラスフィルタ JIS R 3503に規定するG-4のもの。 

(4.2) ビーカー JIS R 3503に規定する容量200mlのもの。 

(4.3) メスシリンダ 容量100mlのもの。 

(4.4) 乾燥器 約200℃まで昇温可能な熱風乾燥機。 

(4.5) アセトン JIS K 8034に規定するアセトン又はこれと同等以上の純度のもの。 

(4.6) 濃硫酸 JIS K 8951に規定する98%濃硫酸。 

(4.7) 過酸化水素水 JIS K 8230に規定する30〜35%の過酸化水素水。 

参考 硝酸,硫酸,過酸化水素を取り扱う場合は,危険防止のため,次の注意が必要である。 

K 7075-1991  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

直接人体に触れないように,ゴム手袋,保護めがねなどを着用する。人体に付着したときは,

直ちに適切な処置を行う。 

また,試験場所の排気を行うことが必要である。過酸化水素は,65%の沸騰状態では爆発的

分解が起こるおそれがあるので,蒸留によって濃縮などを行ってはならない。 

5. 試験片 

5.1 

試験片の質量は,0.2〜0.5gとする。板状試験片の場合の形状寸法は,厚さ4mm以下で,縦及び横の

長さは,6〜10mmとする。 

5.2 

試験片の端面は,JIS R 6252に規定するCC600番又はこれより粒度の細かい研磨紙で研磨し平滑に

する。 

5.3 

試験片の数は,5個とする。 

6. 密度の測定 樹脂,CFRP及び炭素繊維の密度の測定は,次による。 

(1) 樹脂の密度 (ρr) は,JIS K 7112によって測定する。 

(2) 炭素繊維の密度 (ρf) は,JIS R 7601によって測定する。 

(3) CFRPの密度 (ρc) は,JIS K 7112の水中置換法によって測定する。 

備考 樹脂及びCFRPの密度を水中置換法で測定する場合は,測定に使用した針金の質量の補正を行

うことが望ましい。 

7. 炭素繊維の質量の測定 炭素繊維の質量の測定は,燃焼法,硝酸分解法及び硫酸分解法のいずれかに

よって行う。 

(1) 燃焼法 燃焼法による炭素繊維の質量の測定は,次による。 

(1.1) 試験片の質量を0.1mgまで正しく量る(この質量を“W”とする。)。 

(1.2) 試験片をニクロム線で図1のように縛る。ニクロム線を含む試験片の質量を0.1mgまで正しく量る

(この質量を“W1”とする。)。 

(1.3) ブンゼンバーナに点火し,炎の高さを15〜20cmに調節してから徐々に空気を入れて還元炎(青い

炎)の高さが約2cmになるように調節する。 

(1.4) 試験片のニクロム線部分をピンセットでつかみ,図1のようにブンゼンバーナの還元炎に接触しな

いように,かつ,還元炎の少し上の部分の炎の中に試験片全体が入るように試験片を水平に入れる。 

(1.5) 5〜20秒で黒いすす(煤)を出して大部分が燃え尽きる。このとき,試験片の下面が赤熱するまで

加熱し,次いで,反転させ,他の面を赤熱させる。加熱時間は,試験片から赤い炎が出なくなるま

でとし,その時間は,3分以内である。 

(1.6) 試験片を炎から取り出し,直ちに金属板上に置いて室温まで放冷した後,デシケータ中に保管する。 

(1.7) ニクロム線を含む燃焼後の試験片の質量を0.1mgまで正しく量る(この質量“W2”とする。)。 

background image

K 7075-1991  

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図1 燃焼試験方法の一例 

(2) 硝酸分解法 硝酸分解法による炭素繊維の質量の測定は,次による。 

(2.1) 試験片の質量を0.1mgまで正しく量る(この質量を“W”とする。)。 

(2.2) 濃硝酸50mlをメスシリンダで量り,三角フラスコ200mlに採る。 

(2.3) 120℃に保ったオイルバスにフラスコを入れ,次いで,試験片を入れる。 

(2.4) フラスコに冷却用コンデンサを取り付け,90分間加熱する。 

(2.5) ガラスフィルタを乾燥させ,恒量(1)の状態で量る(この質量を“W3”とする。)。 

注(1) 恒量の目安は,ガラスフィルタの質量のmgの単位で数値が変化しなくなること。 

(2.6) 分解時間終了後に,冷却してから溶液をアスピレーターで吸引しながら,繊維をガラスフィルタに

よって,ろ過分離する。 

(2.7) フラスコに濃硝酸20〜30mlを入れ,残さ(渣)を洗浄してろ過する。 

(2.8) 洗瓶を用いて蒸留水約100mlで繊維を洗浄し,次いで,アセトンで洗浄する。 

(2.9) 熱風乾燥機にガラスフィルタを入れ,105±5℃で,90分間乾燥する。 

(2.10) 乾燥終了後,乾燥機からガラスフィルタを取り出し,デシケータ中で30分間冷却する。 

(2.11) 分解処理後の試験片とガラスフィルタの質量を0.1mgまで正しく量る(この質量を“W4”とする。)。 

(3) 硫酸分解法 硫酸分解法による炭素繊維の質量の測定は,次による。 

(3.1) 試験片の質量を0.1mgまで正しく量る(この質量を“W”とする。)。 

(3.2) 濃硫酸30mlをメスシリンダで量り,トールビーカー200mlに採る。 

(3.3) 濃硫酸の中に試験片を入れて,時計皿でふたをし,ホットプレート上で発煙するまで加熱(約220℃)

し,溶解させる。 

(3.4) 試験片の樹脂が溶解して,濃硫酸液が黒褐色になったところで加熱を中止し,トールビーカーをホ

ットプレートから取り去る。 

(3.5) 過酸化水素水約20mlをスポイトで採り,少量ずつトールビーカー中に滴下する。繊維が表面に浮

き,濃硫酸液が透明になった後,更に,過酸化水素水2mlを加え,10分間加熱した後,放冷する。 

(3.6) ガラスフィルタを恒量(1)の状態で0.1mgまで正しく量る(この質量を“W3”とする。)。 

(3.7) トールビーカー中の内容物をアスピレーターで吸引しながら,繊維をガラスフィルタによって,分

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離ろ過する。 

(3.8) トールビーカーに濃硫酸20〜30mlを入れ,残さを洗浄してろ過する。 

(3.9) 洗瓶を用いて蒸留水約500mlで繊維を洗浄し,次いで,アセトンで洗浄する。 

(3.10) 熱風乾燥機にガラスフィルタを入れ,105±5℃で,90分間乾燥する。 

(3.11) 乾燥終了後,乾燥機からガラスフィルタを取り出し,デシケータ中で30分間冷却する。 

(3.12) 分解処理後の試験片とガラスフィルタの質量を0.1mgまで正しく量る(この質量を“W4”とする。)。 

8. 計算 

8.1 

繊維質量含有率は,式(1)及び式(2)によって算出する。 

(1) 燃焼法の場合 

100

2

1

×

+

W

W

W

W

Wf=

 ······························································· (1) 

(2) 硝酸及び硫酸分解法の場合 

100

3

4

×

W

W

W

Wf=

 ···································································· (2) 

ここに, 

Wf: 繊維質量含有率 (%) 

W: 試験片の質量 (g) 

W1: ニクロム線を含む試験片の質量 (g) 

W2: 燃焼後のニクロム線を含む試験片の質量 (g) 

W3: ガラスフィルタの質量 (g) 

W4: 分解処理後の試験片とガラスフィルタの質量 (g) 

8.2 

繊維体積含有率及び空洞率は,式(3)及び式(4)によって算出する。 

f

c

f

f

W

V

ρ

ρ

×

 ············································································ (3) 

)

(

100

γ

V

V

V

f

v

+

 ····································································· (4) 

ここに, 

Vf: 繊維体積含有率 (%) 

Vv: 空洞率(2)(%) 

ρc: 試験片の密度 (g/cm3) 

ρf: 試験片に用いられている炭素繊維の密度 (g/cm3) 

Vr: 樹脂体積含有率(3)(%) 

注(2) 空洞率が負値になる場合は,樹脂,炭素繊維及びCFRPの密度を正確に測定する必要があり,

その取扱いについては,受渡当事者間の協定による。 

(3) 樹脂体積含有率は,次の式によって算出する。 

r

c

f

r

W

V

ρ

ρ

×

)

100

(

ここに, 

Vr: 樹脂体積含有率 (%) 

Wf: 繊維質量含有率 (%) 

ρc: 試験片の密度 (g/cm3) 

ρr: 試験片に用いられている樹脂の密度 (g/cm3) 

8.3 

各試験結果は,個々に算出して,その平均値をJIS Z 8401によって,小数点以下1けたに丸める。 

8.4 

標準偏差及び変動係数は,式(5)及び式(6)から算出し,JIS Z 8401によって有効数字2けたに丸める。 

1

)

(

2

Σ

n

x

x

s=

 ·········································································· (5) 

K 7075-1991  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

100

×

x

s

Cv=

 ·············································································· (6) 

ここに, 

s: 標準偏差 

Cv: 変動係数 (%) 

x: 個々の測定値 

x: 測定値の平均値 

n: 測定値の数 

9. 報告 報告には,必要に応じて次の事項を記録する。 

(1) 試験した材料の種類(樹脂の種類,硬化剤,繊維の種類,名称及び物性値) 

(2) 試験片の作製方法(成形方法,成形条件など) 

(3) 試験片の数 

(4) 試験片の状態調節の温度,湿度及び時間 

(5) 試験の種類(燃焼法,硝酸分解法,硫酸分解法の別) 

(6) 試験結果 

(7) 試験年月日 

(8) その他特記すべき事項 

K 7075-1991  

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炭素繊維複合材料本委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

宮 入 裕 夫 

東京医科歯科大学医用器材研究所 

阿 部 己喜雄 

通商産業省基礎産業局 

知 久 多喜真 

通商産業省基礎産業局 

和 田 正 武 

通商産業省生活産業局 

櫻 井 俊 彦 

工業技術院標準部 

金 原   勲 

東京大学工学部 

影 山 和 郎 

工業技術院機械技術研究所 

野 口 義 男 

科学技術庁航空宇宙技術研究所 

劔 持   潔 

工業技術院製品科学研究所 

渡 辺   寧 

工業技術院繊維高分子材料研究所 

近 藤 春 樹 

工業技術院大阪工業技術試験所 

(植 村 幸 生) 工業技術院大阪工業技術試験所 

則 竹 佑 治 

防衛庁技術本部第3研究所 

代 田   忠 

代田技術事務所 

犬 竹 紀 弘 

石川島播磨重工業株式会社 

井 出   正 

富士重工業株式会社 

酒 谷 芳 秋 

三菱重工業株式会社 

三 好 一 雄 

三菱電機株式会社 

(木名瀬 武 男) 三菱電機株式会社 

村 島 善 樹 

トヨタ自動車株式会社 

星   郁 夫 

日立化成工業株式会社 

棚 橋 良 次 

ヤマハ株式会社 

笹 島 洋 一 

住友電気工業株式会社 

松 井 醇 一 

東レ株式会社 

山 内 啓 司 

東邦レーヨン株式会社 

奥 田 謙 介 

呉羽化学工業株式会社 

松 本 嘉 生 

旭化成工業株式会社 

山 口 金 哉 

昭和高分子株式会社 

藤 田 利 仁 

日東紡績株式会社 

(事務局) 

鹿 毛 紀久雄 

財団法人高分子素材センター 

新 鍋 秀 文 

財団法人高分子素材センター 

繊維含有率小委員会及び繊維含有率試験方法分科会 構成表 

氏名 

所属 

(分科会長) 

星   郁 夫 

日立化成工業株式会社 

池 田 喜 好 

工業技術院 

渡 辺   寧 

工業技術院繊維高分子材料研究所 

平 井 亜 夫 

日本カーボン株式会社 

(佐 藤   健) 日本カーボン株式会社 

高 田 信 洋 

ダイワ精工株式会社 

背 戸 正 昭 

東都化成株式会社 

安 達 健次郎 

旭カーボンファイバー株式会社 

松 井 醇 一 

東レ株式会社 

北 沢 清 一 

大日本インキ化学工業株式会社 

安 藤 友 憲 

昭和高分子株式会社 

信 夫 正 廉 

積水化学工業株式会社 

(事務局) 

鹿 毛 紀久雄 

財団法人高分子素材センター 

新 鍋 秀 文 

財団法人高分子素材センター