2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 3836-1995
空中浮遊菌測定器の捕集性能試験方法
Testing methods for collection efficiency
of airborne microbe samplers
1. 適用範囲 この規格は,バイオプロセスにおける空中浮遊菌の濃度測定に用いられる空中浮遊菌測定
器の捕集性能を試験する方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 8330 送風機の試験及び検査方法
JIS B 9920 クリーンルーム中における浮遊微粒子の濃度測定方法及びクリーンルームの空気清浄度
の評価方法
JIS B 9921 光散乱式自動粒子計数器
JIS B 9927 クリーンルーム用エアフィルタ−性能試験方法
JIS K 0557 化学分析用の水
JIS T 8202 携帯用熱式風速計
JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語
JIS Z 8901 試験用ダスト
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Z 8122によるほか,次による。
空中浮遊菌測定器 空気中に浮遊している細菌を増殖に適した培地に捕集し,一定期間培養後,培地表面
に出現した細菌のコロニー数から捕集細菌数を求めるための機器。
3. 試験方法の概要 試験用生物粒子(以下,生物粒子という。)又は試験用非生物粒子(以下,非生物粒
子という。)を発生させ,この粒子を空中浮遊菌測定器によって捕集し,発生した粒子の濃度と空中浮遊菌
測定器が捕集した粒子濃度(単位体積当たりの粒子の個数)の測定値を比較することによって,空中浮遊
菌測定器の捕集性能を試験する方法である。
4. 試験条件
4.1
生物粒子 生物粒子に使用する生物は,乾燥などの物理的条件に強く,試験中に容易に死滅せず,
発生器を用いて一定時間安定で単体で発生でき,人体に危険がないもの(1)。
これをエアロゾル定数発生器によって噴霧する。粒径分布を,5.2に規定する光散乱式自動粒子計数器に
よって測定する。
注(1) 枯草菌芽胞 Bacillus subtilis (Bacillus globigii) ATCC 9372, IFO 13721の芽胞などがある。
2
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4.2
非生物粒子 JIS Z 8901の14種に規定するDOP粒子,又はJIS B 9921の附属書1(粒径判別に用い
る試験用空気の作り方)に規定するPSL粒子とする。
DOP粒子については,粒径分布を,5.2に規定する光散乱式自動粒子計数器によって測定する。
粒径範囲は0.5〜1.0μm及び1.0〜2.0μmの粒径区分を選択する。
備考 生物粒子で比較的大きな粒子径をもつものに,物理的条件に強いものが今のところ見付からな
いために,生物粒子の粒径範囲の確認と測定値のばらつきの適合性を非生物粒子で測定し,代
用する。
4.3
生物粒子懸濁液 生物粒子懸濁液は,滅菌したJIS K 0557に規定する種別A2以上の品質のものを
用いて調製する。
4.4
空中浮遊菌測定用培地 使用する生物粒子の培養に適したもの。
参考 使用する生物粒子が枯草菌芽胞の場合には,トリプトソイ寒天平板などがある。
4.5
測定チャンバ内温度 室温とする。
4.6
測定チャンバ内湿度 室内湿度とする。
4.7
測定チャンバ内清浄度 JIS B 9920に規定するクラス3(2)より清浄であること。
注(2) JIS B 9920に規定するクラス3は,Federal Standard 209 Dのクラス1に相当する。
4.8
測定チャンバ内風速 測定チャンバ内の風速は,空中浮遊菌採取を妨げない風速とする(3)。風速分
布を,附属書1によって測定する。
注(3) 例えば,0.15m/s程度。
5. 装置
5.1
試験装置 試験装置は,送風部,生物粒子・非生物粒子発生部,エアロゾル混合部及び測定部によ
って構成する。試験装置の構成の一例を図1に示す。
各部は,次のとおりとする。
図1 試験装置の構成の一例
(1) 送風部 送風部は,HEPAフィルタ2段又はULPAフィルタ,送風機などで構成し,次のとおりとす
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る。
(a) HEPAフィルタ 試験条件の4.7測定チャンバ内清浄度を満たす性能をもつもの。
備考 HEPAフィルタの性能試験方法としてJIS B 9927がある。
(b) 送風機 試験条件を満たす性能をもつもの。
備考 送風機の性能試験方法としてJIS B 8330がある。
(2) 生物粒子・非生物粒子発生部 生物粒子・非生物粒子発生部(以下,発生部という。)は生物粒子・非
生物粒子発生器(以下,発生器という。)とエアロゾル投入ノズルで構成し,発生器は均一な粒径の生
物粒子・非生物粒子を得られ,粒子を乾燥し,非帯電化ができるものとする。
(3) エアロゾル混合部 エアロゾル混合部は,送風部から送られる空気と,発生部から送られる生物粒子・
非生物粒子が十分に混合する形状・寸法及び構造とする。
(4) 測定部 測定部は,拡大ダクト,空中浮遊菌測定器を設置する測定チャンバ及び排気清浄用エアフィ
ルタで構成し,次のとおりとする。
(a) 拡大ダクト 拡大ダクトは,測定チャンバ内部の粒子濃度が空間的に均一で一定となる形状・寸法
及び構造とする。
(b) 測定チャンバ 測定チャンバは,空中浮遊菌測定器の設置が可能な十分な大きさをもち,内部の粒
子濃度が空間的及び時間的に均一で一定となる形状・寸法とする。
粒子濃度の測定方法を附属書2に示す。
(c) 排気清浄用エアフィルタ 排気清浄用エアフィルタは,使用する生物粒子の漏えいを防ぐ性能をも
つHEPAフィルタとする。
5.2
光散乱式自動粒子計数器 光散乱式自動粒子計数器は,JIS B 9921に規定する光散乱式自動粒子計
数器(以下,粒子計数器という。)とする。
6. 性能試験操作
6.1
生物粒子捕集性能試験操作 生物粒子捕集性能試験操作は,次のとおりとする。
(1) 発生部以外の試験装置を作動した後,粒子計数器で粒子濃度を測定し,試験装置内部,特に測定チャ
ンバ内は,クラス3又はそれより清浄であることを確認する。
(2) 測定チャンバ内の風速及び風速分布を測定する。
(3) 空中浮遊菌測定器を測定チャンバに設置する。
(4) 発生器を作動させ,粒子計数器で測定チャンバ内の生物粒子の粒径範囲について粒子数濃度を測定し,
生物粒子の濃度が均一で一定したことを確認した後,空中浮遊菌測定器で生物粒子を捕集する(4)(5)。
注(4) 空中浮遊菌測定器の作動方法は,取扱説明書のとおりとする。ただし,作動の開始・停止方法
は,リモートコントロール,タイマーなど遠隔操作が可能な方法による。
(5) 捕集は,3回以上行う。
(5) 試験装置及び空中浮遊菌測定器を停止する。
(6) 空中浮遊菌測定器に設置した培地又はフィルタを取り出し,用いた生物に適した一定温度で一定時間
培養し(6),コロニー数を計測する。
注(6) 枯草菌芽胞の場合は,37℃で48時間好気的に培養する。
6.2
非生物粒子捕集性能試験操作 非生物粒子捕集性能試験操作は,次のとおりとする。
(1) 発生部以外の試験装置を作動した後,粒子計数器で粒子濃度を測定し,試験装置内部,特に測定チャ
ンバ内は,クラス3又はそれより清浄であることを確認する。
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(2) 測定チャンバ内の風速及び風速分布を測定する。
(3) 空中浮遊菌測定器を測定チャンバに設置する。
(4) 発生器を作動させ,粒子計数器で測定チャンバ内の非生物粒子の粒径範囲について粒子数濃度を測定
し,非生物粒子の濃度が均一で一定したことを確認した後,空中浮遊菌測定器を作動し,測定チャン
バ内の粒子濃度及び空中浮遊菌測定器の排出口における粒子濃度を粒子計数器によって測定する。
(5) 試験装置及び空中浮遊菌測定器を停止する。
7. 計算
7.1
生物粒子捕集率計算 生物粒子の捕集率の計算は,次による。
Q
C
A=
····················································································· (1)
ここに, C: 培地当たりの発現コロニー数(個)
Q: サンプリング空気量 (m3)
A: 生物粒子捕集濃度(個/m3)
100
×
=BA
η
··············································································· (2)
ここに,
B: 粒子計数器で測定 測定チャンバ内の生物粒子濃度(個/
m3)
η: 生物粒子捕集率 (%)
7.2
非生物粒子捕集率計算 非生物粒子の捕集率の計算は,次による。
100
1
'
1
0×
−
=
C
C
η
······································································ (3)
ここに,
Co: 各粒径区分における空中浮遊菌測定器の排出口における
非生物粒子濃度(個/m3)
Ci: 各粒径区分における測定チャンバ内の非生物粒子濃度(個
/m3)
η': 各粒径区分における非生物粒子捕集率 (%)
8. 記録 記録は,次のとおりとする。
(1) 空中浮遊菌測定器の生物粒子捕集性能試験結果の記録は,表1に示すとおりとする。
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表1 測定チャンバ内の生物粒子濃度試験結果の記録
(2) 空中浮遊菌測定器の非生物粒子捕集性能試験結果の記録は,表2に示すとおりとする。
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表2 空中浮遊菌測定器の非生物粒子捕集性能試験結果の記録
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附属書1 測定チャンバ内の風速分布測定方法
1. 適用範囲 この附属書は,空中浮遊菌測定器の捕集性能試験法に用いる測定チャンバ内の風速分布測
定方法について規定する。
2. 風速計 一測定点の風速を測定する場合には,JIS T 8202に規定する携帯用熱式風速計,又はこれと
同等以上の性能をもつ風速計とする。
また,測定点の風速を瞬時に測定する場合には,多点式熱式風速計とすることができる。
3. 測定点 測定チャンバ内の風速分布の一様性を確認するのに適切なチャンバ内の空中浮遊菌測定器を
設置する箇所を含む垂直な面において,5点以上(附属書1図1参照)とする。
附属書1図1 測定チャンバ内の風速分布測定の測定点(測定チャンバ断面)
4. 測定操作 風速計の検知部を中心列,左側列,右側列に設置し,各点の風速を測定する。
5. 記録 測定チャンバ内の風速分布試験結果の記録は,附属書1表1に示すとおりとする。
6. 判定 各測定点での風速が平均風速値に対し,±20%であるとき,適合とする。
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附属書1表1 測定チャンバ内の風速分布試験結果の記録
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附属書2 測定チャンバ内の粒子濃度分布測定方法
1. 適用範囲 この附属書は,空中浮遊菌測定器の捕集性能試験法に用いる測定チャンバ内の粒子濃度の
一様性についての測定方法について規定する。
2. 測定点 測定チャンバ内の粒子濃度の一様性を確認するため,チャンバ内の空中浮遊菌測定器を設置
する箇所を含む垂直な面において,5点以上(附属書2図1参照)とする。
3. 試験粒子 試験粒子は,本体4.2に規定する非生物粒子とする。
4. 発生濃度 測定に十分な粒子数を安定に発生し,光散乱式自動粒子計数器の測定濃度範囲の上限を超
えないものとする。
附属書2図1 測定チャンバ内の粒子濃度測定点(測定チャンバ断面)
5. 測定操作 送風機及び非生物粒子発生部が安定に作動した後,本体5.2の光散乱式自動粒子計数器を
作動させ,各測定点における粒子濃度を測定する。
6. 記録 測定チャンバ内の粒子濃度分布試験結果の記録は,附属書2表1に示すとおりとする。
7. 判定 各測定点での粒子濃度は,平均濃度に対し,±10%であるとき,適合とする。
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附属書2表1 測定チャンバ内の粒子濃度分布試験結果の記録
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JIS K 3836空中浮遊菌測定器の捕集性能試験方法原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○ 森 地 敏 樹
日本大学農獣医学部畜産学科
(主査)
○ 山 崎 省 二
国立公衆衛生院衛生獣医学部動物管理室
山 里 一 英
東京大学応用微生物研究所微生物微細藻類総合センター
大 沢 勝 次
農林水産省農業生物資源研究所細胞育種部遠縁雑種研究室
吉 澤 晋
東京理科大学工学部建築学科
細 川 幹 夫
通商産業省基礎産業局生物化学産業課
地 崎 修
工業技術院標準部繊維化学規格課
黒 木 勝 也
財団法人日本規格協会技術・検査部
小 林 晴 巳
微生物工業技術研究所生物工学研究室
吉 田 徳 夫
財団法人バイオインダストリー協会
鈴 木 顕
キリンビール株式会社エンジニアリング事業部
武 部 英 日
明治製菓株式会社薬品開発研究所開発第1室
佐 藤 清
第一製薬株式会社中央研究所製剤研究センター
○ 杉 田 直 記
ミドリ安全工業株式会社研究開発室
武 富 英 俊
日本ポール株式会社応用技術研究所
○ 阿 部 帥 男
柴田科学器械工業株式会社開発部
○ 佐 藤 行 成
日本科学工業株式会社開発部
○ 曽我部 正 照
住ベメディカル株式会社開発センター研究部
○ 水 田 昌
グンゼ産業株式会社理化学機器部
○ 水 嶋 龍 司
日本ゼネラル株式会社営業部
○ 島 野 博 明
三基科学工芸株式会社
○ 三 上 壯 介
社団法人日本空気清浄協会
(関係者)
沼 田 典 之
備考 ○印は,分科会の兼任を示す。