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K 3813

:2003

(1)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人バイオインダストリー協会 (JBA)

/財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,

日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。


K 3813

:2003

(2)

目  次

ページ

1.

  適用範囲

1

2.

  引用規格

1

3.

  定義

1

4.

  分類

1

5.

  装置

1

5.1

  構成

2

5.2

  電源部

2

5.3

  泳動部

2

5.4

  附属装置 

2

5.5

  操作の安全性 

3

6.

  操作方法

3

6.1

  装置の設置場所

3

6.2

  安全性についての注意事項 

3

6.3

  試料溶液の調製

3

6.4

  泳動液の調製 

3

6.5

  試料の導入 

4

6.6

  通電条件 

4

6.7

  試料成分の検出

4

6.8

  検出結果の記録

4

6.9

  記録の整理 

4

7.

  定性分析

4

8.

  定量分析

7

9.

  分離性能の評価 

7

 


日本工業規格

JIS

 K

3813

:2003

キャピラリー電気泳動分析通則

General rules for capilary electrophoretic analysis

1.

適用範囲  この規格は,キャピラリー型泳動槽をもつ電気泳動装置を用いて定性及び定量分析を行う

場合の通則について規定する。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS K 3812

  電気泳動分析通則

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,次による。

a)

キャピラリーゾーン電気泳動  泳動液又は泳動液を含む支持体を充てんしたキャピラリー内に試料を

狭いゾーンとして導入した後,キャピラリーの両端に電圧を加えてキャピラリー内に均一な電位こう

配を作成し,電荷及び分子サイズによって決まる電気泳動移動度の差を利用して試料中のイオン性成

分を分離する方法。

b)

キャピラリー等速電気泳動  キャピラリー内に先行イオンを含む泳動液と後続イオンとを含む泳動液

を充てんし,その境界面に試料を導入した後キャピラリーの両端に電圧を加えて,試料中のイオンを

先行イオンと後続イオンとの間でその移動度の順に電位こう配一定のゾーンを形成させながら等速移

動させて,イオン性成分を分離する方法。

c)

キャピラリー等電点電気泳動  泳動液又は泳動液を含む支持体を充てんしたキャピラリー内に,pH こ

う配を作成し,これに試料を導入して電圧を加えて,両性イオン成分をその等電点まで移動させて濃

縮されたバンドを形成させる分離方法。

d)

キャピラリー動電クロマトグラフィー  キャピラリーに機能性イオンを添加した泳動液を充てんし,

試料を導入して電圧を加えて,試料の成分を等速移動する機能性イオンと相互作用させ,その作用の

度合に応じて成分を分離する方法。

4.

分類  キャピラリーを用いた電気泳動の分析は,電位こう配のかけ方,分離の原理などによってキャ

ピラリーゾーン電気泳動,キャピラリー等速電気泳動,キャピラリー等電点電気泳動,キャピラリー動電

クロマトグラフィーなどに分類する。

5.

装置


2

K 3813

:2003

5.1

構成  キャピラリー電気泳動装置は,JIS K 3812 の 6.1(構成)に示す電源部及び泳動部で構成する。

泳動部は,電極端子,電極,電極槽及び泳動槽(キャピラリー)で構成し,これに試料導入装置,分取装

置,検出予備操作のための装置及び検出・記録装置をつけることができる。検出・記録装置にはデータ処

理装置を接続することができる。また,泳動部には,JIS K 3812 の 6.1 に規定するもののほか,更にキャ

ピラリー自動洗浄・泳動液自動交換装置などを附属させることができる。

各構成部分は独立させて幾つかのモジュールとしたり,すべての構成要素を一つのモジュールに組むこ

とができる。

5.2

電源部  JIS K 3812 の 6.2(電源部)による。

5.3

泳動部

a)

電極端子  JIS K 3812 の 6.3 a)(電極端子)による。

b)

電極  JIS K 3812 の 6.3 b)(電極)による。

c)

電極槽  JIS K 3812 の 6.3 c)(電極槽)による。

d)

泳動槽  キャピラリー自体が泳動槽を構成する。キャピラリーは,絶縁性のよい材質からなり,JIS K 

3812

の 6.3d)(泳動槽)に規定された範囲(内径 1 mm 未満,長さ 1∼5 000 mm)のものとする。また,

円筒形以外のものではこれに準じるものとする。キャピラリーの内面は,電気浸透流の調節や試料の

成分の分離を改善する目的で,化学処理などによって改変することができる。また,キャピラリーの

外面は,キャピラリーに絶縁性を与えたり強度を高めるために被覆することができる。キャピラリー

には,泳動液又は泳動液を含むゲルなどの支持体を充てんして使用する。キャピラリーを収納する部

分は温度を制御する機能をもたせることができる。

5.4

附属装置

a)

試料導入装置  試料をキャピラリーに導入するために,電気的導入法,落差・圧力差を利用する方法,

流路切替えによる方法などによって,それぞれに対応した装置を用いる。また,試料導入装置を自動

化してオートサンプラーとすることもできる。これらの導入装置によって導入される試料の容積は高

い再現性を与えなければならない。

b)

分取装置  キャピラリー中で分離された個々の成分を自動分取する装置。

c)

検出予備操作のための装置  キャピラリーに側管から試液を導入して,分離された試料の成分と混和

反応させ,試料の成分を検出可能な物質に変換させることができる装置。

d)

検出・記録装置  検出装置は,キャピラリー内で分離された試料成分をオンカラム検出するために,

キャピラリーの末端又はこれに近い部分に設ける。

目的成分によって紫外部吸収検出器,

蛍光検出器,

電位こう配検出器,電気伝導度検出器,電気化学検出器などを使用することができる。また,質量分

析計などの構造解析装置と接続することができる。キャピラリー中の試料の成分の量は微少であるた

め,これらの検出器は分離された試料成分を十分に検出できる検出感度を備えていなければならない。

記録装置は,検出装置から送られる電気信号を記録紙などのうえに視覚化するために,検出速度に

十分追従して作動するものでなければならない。

e)

データ処理装置  検出装置からの信号を積分したり,デジタル化したのちプログラムに従って種々の

処理を行うための装置で,電子記憶媒体などにデータを保存することができるもの。

f)

キャピラリー自動洗浄・泳動液自動交換装置  キャピラリーの内壁を洗浄したりキャピラリー中に泳

動液を充てんする操作を自動的に行わせるための装置で,試料導入法に応じた機構をもたせることが

できる。


3

K 3813

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5.5

操作の安全性  キャピラリー電気泳動では通常,数 V∼数十 kV の高電圧を加えるための装置は JIS 

K 3812

の 9.(電気泳動装置の安全性)の規定に従う。

6

操作方法

6.1

装置の設置場所  JIS  K3812  10.1(電気泳動装置の設置場所)による。

6.2

安全性についての注意事項  JIS K 3812 の 10.2(安全についての注意事項)に規定されている事項

のほか,次の各項に留意する。

a)

装置の運転中は濡れた体で装置に触れない。

b)

装置,特に電源部の周辺には金属など導電性のよい材質からなる物体を置かない。

c)

電源部や電極周辺の故障などの修理は製造業者が責任をもって行う。

6.3

試料溶液の調製  試料は泳動液にできるだけ近い組成をもつ緩衝液  (

1

)

に十分に溶解し,不溶物が

あれば遠心分離やろ過によって除去する。試料の濃度は,使用する検出装置によって試料の成分が十分に

検出できる範囲に調製する。電気的導入法によって試料を導入する場合には,試料溶液のイオン強度が成

分イオンの導入量に影響することに留意する。試料溶液中で変性する高分子試料はあらかじめその溶液中

で十分に変性させた後分析する。目的成分の分析が試料溶液中の他の成分によって妨害を受ける場合は,

あらかじめ適切な方法によって妨害成分を除去する。濃縮などを目的として,泳動液として用いる緩衝液

とは大幅に異なる組成の液に,試料を溶解することがある。

注(

1

)

試料溶液の pH や組成が成分の分離に大きな影響を与えることがあるため,用いる緩衝液の組

成は十分に吟味する必要がある。

6.4

泳動液の調製  泳動液は,キャピラリーの素材,充てんされるゲルなどの支持体に対して不活性で

あると同時に,試料を十分に溶解し,成分の分離に適したものでなければならない。また,検出における

ベースラインを十分に低く保てるものでなければならない。泳動液の電解質組成は泳動液に適切な導電性

を与える程度のものであり,イオン強度が高過ぎて過度のジュール熱を発生しないようなものでなければ

ならない。泳動液が不溶物を含む場合は,使用前にろ過などによって除去してから使用する。また,泳動

液が気体を溶存している場合には,脱気したものを使用する。

泳動液の調製は,分離モードによって異なる問題をもっているため,次の事項に留意する。

a)

キャピラリーゾーン電気泳動  試料成分が弱電解質であってイオンの形で分離される場合には,泳動

液の pH によって電離の度合が異なるため,適切な pH を選ぶ。一方,pH が電気浸透流速に大きく影

響を及ぼし,試料の成分イオンの検出時間を変えることにも留意する。また,泳動液の成分とキャピ

ラリー内壁の相互作用によって内壁の帯電状態が変わり,電気浸透流速が変化することもあるので,

目的成分の分離に悪影響がでないように配慮する必要がある。

b)

キャピラリー等速電気泳動  試料中のどの成分よりも移動度の高いイオン(先行イオン)を含む先行

液及び試料中のどのイオンよりも移動度の低いイオン(後続イオン)を含む後続液を調製する。一般

に陽イオン分析では水素イオンを,また陰イオン分析では塩素イオンを含む泳動液を先行液にするの

が標準的である。これらのイオンの濃度は試料成分イオンの濃度に応じて決めるが,一般には,0.01 M

を使用する。他の分離モードにおけると同様に電離によって試料の成分がイオン化する場合は,イオ

ン化の度合がこれらの泳動液の pH によって左右されることを考慮して pH を選ぶとよい。

なお,界面活性剤,極性の高い有機溶媒,各種修飾用試薬などを添加することによって成分イオン

の分離を改善することができる。

c)

キャピラリー等電点電気泳動  キャピラリー内に安定な pH こう配を形成させることが必要であり,


4

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このため緩衝能が大きく,試料成分に対して不活性で等電点の異なる多種類の成分を含む泳動液を用

いる必要がある。陽極の電極液にはこれらの成分のうち最も酸性の強いものよりも更に酸性の強い電

解質溶液を入れ,陰極の電極液には最も塩基性の強い成分よりも更に塩基性の強い電解質溶液を入れ

る。

なお,たん白質試料においては,等電点における試料成分の沈殿を防ぐ目的で界面活性剤,尿素,

塩類などを添加することができる。

d)

キャピラリー動電クロマトグラフィー  電解質溶液に機能性イオンを添加することによって調製する

が,目的成分の分離に適した機能性イオンを選ぶことが必要である。硫酸ドデシルナトリウム(通称,

ドデシル硫酸ナトリウム,SDS)のようなイオン性界面活性剤を添加してミセルを形成させ,これに

よる可溶化を利用したり,イオン性を付与したクラウンエーテル誘導体を添加してこれに対する相互

作用を利用したりする方法を一般に使用する。機能性イオンの移動速度は,それ自体の移動度だけで

なく電気浸透流によっても影響され,試料成分の検出時間はこれによって支配されるので,pH やイオ

ン強度の調整が必要である。

6.5

試料の導入  試料溶液をキャピラリーに導入するには,次に示す方法などによる。

a)

電気的導入法  試料溶液に一方の電極及びキャピラリーの一端を挿入し,電極液に他方の電極及びキ

ャピラリー端をつけた状態で両極間に短時間高電圧を加えることによって,試料成分を電気泳動や電

気浸透流を利用してキャピラリー内に誘導する方法  (

2

)

注(

2

)

試料成分の移動度の違いによって試料成分の導入量に差が生じる場合がある。ゲルを充てんし

たキャピラリーに試料を導入する場合は,この方法が適している。

b)

落差・圧力差を利用する方法  落差又は加圧・吸引による圧力差を利用して試料をキャピラリー内に

導入する方法  (

3

)

注(

3

)

手動で行っても,ある程度の再現性は得られるが,自動調製機構によって圧力と導入時間を十

分に制御しなければ高い再現性は得られない。これらの方法では,試料溶液の粘性が試料導入

量に強く影響することに留意する。

c)

細溝内採取/流路切替えによる方法  試料溶液の一定容積を導入装置の細溝内に採取し,流路の切替

えによって採取された試料をキャピラリー内に導入する方法で,流路の切替えには回転バルブを用い

たりクロスチャンネルを用いることができる。

6.6

通電条件  電圧,電流,電力などによって成分の移動速度を制御することができる。

これらの値が大きいほど試料成分の検出時間が短くなり,分析時間が短縮されるが,ジュール熱の発生

量は増加して分離されたゾーンの拡散が著しくなるため,適切な条件を選ばなければならない。

6.7

試料成分の検出  JIS K 3812 の 10.4.4(試料成分の検出)による。

6.8

検出結果の記録  JIS K 3812 の 10.4.5(検出結果の記録)による。

6.9

記録の整理  JIS K 3812 の 10.4.6(記録の整理)に規定するもののほか,次の事項を加える。

a)

キャピラリーの材質,製造者名,内径,外径及び長さ(全長及び試料導入端から検出部までの長さ)

7.

定性分析  JIS K 3812 の 11.(定性分析)に規定されているもののほか,次の事項にも留意する。

キャピラリーゾーン電気泳動においては,

中性マーカーを添加した試料について得られた電気泳動図

(検

出装置からの信号を時間に対してプロットした図,

〔例えば

図 1〕),から成分イオンの移動度  (

µ

ep

)

s

を次の

式によって求める。


5

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)

1

1

(

1

)

(

S

N

S

ep

t

t

V

L

×

×

µ

ここに,

 (

µ

ep

)

S

: 成分イオンの移動度

1

: キャピラリー有効長

(キャピラリーの試料導入端から検出部までの長さ)

L

: キャピラリーの全長

V

: 電位差

t

N

: 中性マーカーの検出時間

t

S

: 成分イオンの検出時間

検  出  時  間

N

S

  1  キャピラリーゾーン電気泳動による分離

この成分イオンの移動度の値は,同一条件下では一定であり,試料成分を特定することのできる定数で

ある。また,試料成分の移動度の値を対照物質について同様に得られた値で割った値(相対電気泳動移動

度)は更に信頼性の高い定性指標である。

キャピラリー等速電気泳動においては,電位こう配は移動度の逆数になるのでこれを

図 のように時間

に対してプロットした場合,後続イオンの移動度に対する成分イオンの相対電気泳動移動度  (RE)  は次の

式で表される。

L

S

H

H

RE

ここに,

 RE

: 後続イオンの移動度に対する成分イオンの相対電気泳動移

動度

H

S

: 試料体ゾーンにおける電位こう配

H

L

: 先行イオンゾーンにおける電位こう配

同様に次の式で与えられるポテンシャルユニット PU も RE に代わる定性指標として有効である。

L

T

L

S

H

H

H

H

PU

ここに,

 PU

: ポテンシャルユニット

H

S

: 試料体ゾーンにおける電位こう配

H

L

: 先行イオンゾーンにおける電位こう配

H

T

: 後続イオンゾーンにおける電位こう配


6

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H

T

H

T

H

T

時  間

ゾーン長

S

T

  2  キャピラリー等速電気泳動による分離

キャピラリー動電クロマトグラフィーでは,試料成分と泳動液に添加された機能性イオンとの間で図 3

で示すようににプソイド型のクロマトグラフィーが行われるが,試料成分と機能性イオンとの相互作用の

大きさを表す尺度として,一般の分配クロマトグラフィーと同様に,容量分布比 k'を次の式によって求め

る。

[

]

)

/

(

1

R

S

O

O

S

t

t

t

t

t

k'

ここに,

  k'

: 容量分布比

t

S

: 成分の移動度

t

O

: 機能性イオンへ全く取り込まれない物質の検出時間

t

R

: 機能性イオンへ完全に取り込まれる物質の検出時間

検  出  時  間

O

S

R

  3  キャピラリー動電クロマトグラフィーによる分離


7

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8.

定量分析  キャピラリー等速電気泳動においては層の幅が,また,他の電気泳動においてはピーク面

積が被検成分濃度に比例する。したがって,これらを用いて次のいずれかの方法によって被検成分の定量

を行う,層の幅は記録紙上のステップの長さとして,また,面積は積分計による積分値として求める。積

分計による測定は,

電気信号の大きさ及びピークの形状に対応して適切な条件を設定しなければならない。

積分計を利用できないときは,記録紙上のピークの半値幅(ピーク高さの 2 分の 1 の高さにおけるピーク

の幅)とピーク高さの積として近似的にピーク面積を求める。

そのほかは,JIS K 3812 の 12.(定量分析)による。

9

分離性能の評価

JIS K 3812

の 13.(分離性能の評価方法)による。