日本工業規格
JIS
K
2408
-1996
ラジエータ防食剤
Corrosion inhibitors for engine coolant
1.
適用範囲 この規格は,水に添加して液冷式内燃機関の冷却に用いる液体のラジエータ防食剤(以下,
防食剤という。
)について規定する。
備考 この規格の引用規格を,付表 1 に示す。
2.
用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
(1)
原液 荷姿の状態で,常温において液体で,水に添加していない防食剤。
(2)
最低及び最高使用濃度 製品容器に表示された最低及び最高使用濃度。
3.
品質 品質は,7.によって試験をしたとき,表 1 に適合しなければならない。
表 1 品質
項目
品質
pH
値(最低使用濃度) 6.0〜11.0
アルミニウム鋳物
±0.60
鋳鉄
±0.30
鋼
±0.30
黄銅
±0.30
はんだ
±0.60
金属腐食性
(最低使用濃度)
88
±2℃
336
±2h
金
属
試
験
片
質量の
変化量
mg/cm
2
銅
±0.30
外観
試験片とスペーサとの接触部以外に,目視によって認めるこ
とができる腐食がないこと。ただし,変色は差し支えない。
試験中の泡立ち性
冷却器から,泡があふれ出ないこと。
pH
値 6.0〜11.0
pH
値の変化
±1.0
液相
色は,著しい変化がないこと。液は,分離,ゲルの発生など
の著しい変化がないこと。
試験後の液
の性状
沈殿量 vol% 0.5 以下
泡立ち性 ml(最低及び最高使用濃度)
4
以下
質量の変化率の差 %
± 7
体積の変化率の差 %
±10
ゴム膨潤性(
1
)
(最高使用濃度)
88
±2℃
120
±2h
硬さの変化量の差
IRHD
又は Hs
±10
密度 (20℃) g/cm
3
(原液)
報告
アルミニウム鋳物
±0.60
鋳鉄
±0.30
鋼
±0.30
循環腐食性
(最低使用濃度)
88
±3℃
336
±2h
金
属
試
験
質量の
変化量
mg/cm
2
黄銅
±0.30
2
K 2408-1996
項目
品質
はんだ
±0.60
片
銅
±0.30
外観
試験片とスペーサとの接触部以外に,目視によって認めるこ
とができる腐食がないこと。ただし,変色は差し支えない。
pH
値 6.0〜11.0
pH
値の変化
±1.0
試験後の液
の性状
液相
色は,著しい変化がないこと。液は,分離,ゲルの発生など
の著しい変化がないこと。
ポンプシール部
運転中作動不良を起こさず,液漏れ及び異常音のないこと。
部品の状態
ポンプケーシングの内
面及びポンプの羽根
著しい腐食のないこと。
アルミニウム鋳物伝熱面腐食性
(最低使用濃度)
(135
±2℃,168±2h)
質量の変化量 mg/cm
2
報告
注(
1
)
水による空試験を行い,試験液による変化率との差を示す。
4.
一般事項 この試験において共通する一般事項は,JIS K 0050 による。
なお,試験上の注意事項を次に示す。
(1)
保護具の着用 必要に応じて,皮膚,目などを守るために保護具を着用する。
(2)
操作 操作は,安全を確認しながら行うこと。
(3)
廃棄物の処理 廃棄する試料などは,公害汚染源とならないように処理する。
(4)
法規の遵守 関連する法令・法規に従って取り扱うこと。
5.
試料採取方法 試料の採取方法は,JIS K 2251 による。
6.
試験場所の標準状態 試験場所の標準状態は,JIS Z 8703 に規定する常温 (5〜35℃) ,常湿 (45〜85%)
とする。
7.
試験方法
7.1
pH
値 pH 値は,原液を水で最低使用濃度に調整し,JIS Z 8802 の 7.2(測定方法)によって 23±5℃
で測定する。測定中の液温は,±1℃以上の変動があってはならない。2 回の測定結果を平均し,JIS Z 8401
によって小数点以下 1 けたに丸める。
7.2
金属腐食性
7.2.1
装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(1)
金属腐食性試験装置 次に示す器具を用いて,図 1 のように組み立てたものを各二組用いる。
(a)
容器 JIS K 2839 に規定するもの。栓は,シリコーンゴム製又はガラス製のすり合わせのもの。
(b)
冷却器 JIS R 3503 に規定する蛇管冷却器 400mm。
(c)
通気管 JIS K 2839 に規定するもの。ガス分散孔の大きさは,JIS R 3503 に規定するガラスろ過板
の細孔記号 2 又は細孔記号 3 とする。
(d)
温度測定器 JIS B 7413 に規定する 100P の温度計又はそれと同等の精度のある温度計測器。
(e)
加熱装置 加熱板,水浴などで試料温度を 88±2℃に調節することができ,連続 2 週間の加熱に適
するもの。
3
K 2408-1996
(f)
乾燥空気吹込み装置 乾燥空気吹込み装置は,容器 1 個について毎分 100±10ml の乾燥空気を吹き
込むことができるもの。
(2)
ノギス JIS B 7507 に規定するもの。
(3)
耐水研磨紙 JIS R 6253 に規定する C, P320。
(4)
デシケーター 適当な寸法のもので,乾燥剤としてシリカゲル又は塩化カルシウムを用いたもの。
(5)
ナイロンブラシ 適当な市販のもの。
(6)
黄銅へら又は黄銅ブラシ 適当な市販のもの。
図 1 金属腐食性試験装置の一例
7.2.2
試薬 試薬は,次のとおりとする。
(1)
硫酸ナトリウム(無水) JIS K 8987 に規定するもの。
(2)
塩化ナトリウム JIS K 8150 に規定するもの。
(3)
炭酸水素ナトリウム JIS K 8622 に規定するもの。
(4)
酢酸(1vol%) JIS K 8355 に規定する酢酸を用いて調製したもの。
(5)
塩酸 (1+1) JIS K 8180 に規定する塩酸を用いて調製したもの。
(6)
硝酸 (4+1) JIS K 8541 に規定する硝酸を用いて調製したもの。
(7)
アセトン JIS K 8034 に規定するもの。
(8)
エタノール JIS K 8102 に規定するもの。
7.2.3
金属試験片 金属試験片(以下,試験片という。)は,次のものを各二組用いる。
(1)
試験片の材質 試験片の材質は,次のとおりとする。
(a)
アルミニウム鋳物 JIS H 5202 に規定する AC2A−F。
(b)
鋳鉄 JIS G 5501 に規定する FC200。
4
K 2408-1996
(c)
鋼 JIS G 3141 に規定する SPCC−B。
(d)
黄銅 JIS H 3100 に規定する C2680P。
(e)
はんだ JIS Z 3282 に規定する H30A。
(f)
銅 JIS H 3100 に規定する C1100P。
(2)
試験片の寸法 試験片の寸法は,縦約 50mm,横約 25mm とし,厚さは,アルミニウム鋳物,鋳鉄及
びはんだの場合には約 3mm とし,
鋼,
黄銅及び銅の場合には約 1.6mm とし,
試験片の中心に直径 6.5mm
の穴を開ける。
(3)
組立試験片 組立試験片は,試験片と表 2 の部品を用いて図 2 のように組み立てる。
表 2 組立試験片用部品
名称
寸法
材質
ねじ
すりわり付丸ねじ M5×0.8×60
黄銅製ねじに合成樹脂のスリーブをかぶせる。
スペーサ (A)
φ
12
×
φ
6.5
×1.5mm
合成樹脂
スペーサ (B)
φ
12
×
φ
6.5
×4.5mm
鋼
スペーサ (C)
φ
12
×
φ
6.5
×4.5mm
黄銅
スペーサ (D)
φ
12
×
φ
6.5
×4.5mm
合成樹脂
支持板 50×25×1.6mm
黄銅
ナット
六角ナット 2 種上 M5×0.8-6H
黄銅
備考1. ここに使用する合成樹脂は,JIS K 6888に規定する四ふっ化エチレン樹脂又は JIS K
6748
に規定するポリエチレン成形材料とし,ポリ塩化ビニルは使用してはならない。
2.
支持板の穴の位置と直径は,
図 2 のとおりとする。
図 2 組立試験片
7.2.4
試験液の調製 試験液の調製は,次のとおりとする。
(1)
調製水 調製水は,1l の水に硫酸ナトリウム 148mg,塩化ナトリウム 165mg 及び炭酸水素ナトリウム
138mg
を溶解したもの。
5
K 2408-1996
(2)
試験液 試験液は,原液を調製水で,最低使用濃度に希釈したものとし,あらかじめ JIS Z 8802 の 7.2
によって pH 値を測定しておく。
7.2.5
操作 操作は,次のとおり行う。
(1)
試験片,支持板及び金属スペーサの表面を耐水研磨紙にエタノールを付けて,きずや穴がなくなるま
で研磨した後,アセトンで洗い,次にエタノールで洗って乾燥し(
2
)
,室温でデシケータ中に 1 時間以
上放置した後,ノギスを用いて各辺を測定し,全表面積を求める。ただし,全表面積は,穴の部分を
埋めた 1 枚の板として求める。
なお,耐水研磨紙は,異種の金属ごとに取り替え,洗浄した試験片は,きず,汚れなどが付かない
ように注意して取り扱うこと。
注(
2
)
このとき結露しないように注意する。
(2)
各試験片の質量を 0.1mg のけたまで量り,
図 2 のように組み立てる。
(3) 2
個の容器に試験液を 750ml ずつ取り,それぞれに一組の試験片を浸し,温度計,冷却器及び通気管
を
図 1 のように取り付ける。このとき,ガス分散孔と試験片との間隔は 10mm 以上とする。
(4)
組み立てた装置を加熱装置に取り付け,通気管から乾燥空気を毎分 100±10ml の流量で送り込み,試
験液を 88±2℃で 336±2 時間保つ。
(5)
試験中は,泡立ち状態を目視によって調べ,それを試験中の泡立ち性とし,液量を確認し,蒸発損失
分は水で補充する。
(6)
試験終了後,室温まで放冷した後試験片を取り出して分解し,鋳鉄,鋼を除いた試験片は水道水でぬ
らしたナイロンブラシで付着物を取り除いた後,水洗し,更に,次のとおり各試験片を処理する。こ
の場合,各処理液の量は 100ml とする。
(a)
アルミニウム鋳物は,硝酸 (4+1) を処理液として室温で 10 分間浸した後,水洗する。
(b)
鋳鉄及び鋼は,黄銅へら又は黄銅ブラシで付着物を取り除いた後,水洗する。
(c)
黄銅及び銅は,塩酸 (1+1) を処理液として室温で 15 秒間浸した後,水洗する。
(d)
はんだは,沸騰した酢酸 (1vol%) を処理液として 5 分間浸した後,水洗する。
(7)
処理後の各試験片をエタノールで洗って乾燥し(
2
)
,室温でデシケータ中に 1 時間以上放置した後,各
試験片の質量を 0.1mg のけたまで量る。
(8)
各試験片の外観は,表面の状態を目視によって調べる。
(9)
試験後の液の性状は,試験片を取り出した液について,次の項目を試験する。
(a) pH
値は,JIS Z 8802 の 7.2 によって,23±5℃において測定する。測定中の液温は,±1℃以上の変
動があってはならない。
(b)
液相は,試験片を取り出した後に液を静置し,試験前の液と比較し,変化等を目視によって調べる。
(c)
沈殿量は,液をかき混ぜ棒で均一にかき混ぜた後,JIS K 2503 の 4.(沈殿価試験方法)によって測
定する。ただし,試験液は 100ml とし,沈殿用ナフサは用いない。
7.2.6
計算 計算は,次のとおりとする。ただし,試験片について二組の試験のうち,一組が表 1 の品質
に適合しないときは,一度だけ試験をやり直す。
(1)
質量の変化 量質量の変化量は,式(1)によって算出し,二組の変化量の平均値を JIS Z 8401 によって
小数点以下 2 けたに丸める。
s
m
m
C
1
2
−
=
(1)
ここに,
C
: 質量の変化量 (mg/cm
2
)
6
K 2408-1996
m
1
: 試験前の試験片の質量 (mg)
m
2
: 試験後の試験片の質量 (mg)
s
: 試験前の試験片の全表面積 (cm
2
)
(2) pH
値 pH 値は,二組の測定結果を平均し,JIS Z 8401 によって,小数点以下 1 けたに丸める。
(3) pH
値の変化 pH 値の変化は,式(2)によって算出し,二組の変化の平均値を JIS Z 8401 によって,小
数点以下 1 けたに丸める。
P
=P
2
−P
1
(2)
ここに,
P
: pH 値の変化
p
1
: 試験前の液の pH 値
p
2
: 試験後の液の pH 値
(4)
沈殿量 沈殿量は,二組の測定結果を平均し,JIS Z 8401 によって,小数点 1 けたに丸める。
7.3
泡立ち性
7.3.1
装置及び器具 装置及び器具は,JIS R 3505 に規定するメスシリンダー有栓形の 100ml。
7.3.2
操作 操作は,次のとおり行う。
(1)
原液を最低及び最高使用濃度に水で希釈した試料各 50ml をメスシリンダーに取り,室温に 30 分間保
つ。
(2)
メスシリンダーを上下に強く 100 回(約 30 秒間)振とうする。
(3)
メスシリンダーを静置し,10 秒後,泡の体積を目盛によって読み取る。
なお,泡の体積を判定するとき,
静置 10 秒後の泡の状態が,メスシリンダー内壁にリング状に残り,
中央部に液面が現れている場合は,ゼロと判定する。
(4)
この操作を 2 回繰り返し,その平均値を記録する。
7.4
ゴム膨潤性
7.4.1
装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(1)
加熱装置 試験液温度を 88±2℃に自動的に調節でき,連続して 120 時間の加熱に適する恒温槽。
(2)
容器 JIS K 2839 の図 20 に規定するもの。
(3)
硬さ試験機 JIS K 6253 に規定するマイクロ硬さ試験機若しくは IRHD ポケット硬さ計,又は JIS K
6301
に規定するスプリング式 A 形のもの。
(4)
ゴム台 スプリング式硬さ試験機に用いるゴム台は,硬さ約 60Hs 及び厚さ 7mm 以上のものか,又は
試験片を積み重ねて 7mm 以上としたもの。
7.4.2
試薬 試薬は,次のとおりとする。
(1)
アセトン 7.2.2(7)による。
(2)
エタノール 7.2.2(8)による。
7.4.3
ゴム試験片 ゴム試験片(以下,ゴム片という。)は,JIS D 2602(自動車用ウォーターホース)
に規定するホースの内面のゴム層,又は当事者間の協定によるものを用いる。
(1)
ゴム片の採取作製 ゴム片は,原則として加硫ゴム板から採取する。製品から取る場合は研磨機など
によって厚さを均一にした後,ゴム片を作製する。
(2)
寸法及び数 ゴム片の寸法は,約 20×20mm,厚さ 2.00±0.15mm とし,ゴム片の数は 6 個とする。
7.4.4
試験液の調製 試験液の調製は,原液を最高使用濃度に水で希釈する。
7.4.5
操作 操作は,次のとおり行う。
(1)
ゴム片をエタノールに浸し,速やかに取り出し,ろ紙で軽くふいた後,JIS K 6301 の 12.5.2(体積変
化の測定)によって 1mg のけたまで質量を量り,また水中でのひょう量を行う。
7
K 2408-1996
(2)
次に,ゴム片の硬さを,次のいずれかによって測定する。
(a)
硬さの測定 (IRHD) マイクロ硬さ試験機の場合は JIS K 6253 の 4.4.2
(操作方法)
によって測定し,
ポケット硬さ計の場合は,JIS K 6253 の 6.4.2(操作方法)によって測定する。いずれもその中央値
を JIS Z 8401 によって,整数位に丸め硬さ (IRHD) とする。
(b)
硬さの測定 (Hs) ゴム台にゴム片を載せ,硬さ試験機の押針がゴム片の測定面に垂直になるように
加圧面を軽く接触させ,直ちに目盛を読み取る。測定は 5 か所について行い,その平均値を硬さ (Hs)
とする。
(3)
試験液 150ml を容器に取り,ゴム片 3 個を浸せきして軽くふたをし,温度 88±2℃に 120±2 時間保持
する。
(4)
ゴム片を取り出し,新しい試験液に浸せきし,常温で 30〜60 分間放置する。
(5)
試験液からゴム片を取り出し,アセトンで洗浄し,ろ紙で軽くふいた後,速やかに常温で質量を量り,
また,水中でのひょう量を行い,続いて硬さを測定する。
(6)
残りのゴム片 3 個については,試験液の代わりに水を用いて(3)以後の操作を行う。
7.4.6
計算 ゴム片の質量の変化率,体積の変化率及び硬さの変化量は,次に示す方法によって算出した
後,それぞれゴム片 3 個の平均値を計算し,質量の変化率及び体積の変化率は平均値を JIS Z 8401 によっ
て小数点以下 1 けたに丸め,硬さの変化量は JIS Z 8401 によって整数に丸め,いずれも試験液と水との差
を記録する。
(1)
質量の変化率の差 質量の変化率の差は,式(3)〜(5)によって求める。
100
1
1
2
1
×
−
=
W
W
W
m
m
m
C
(3)
100
1
1
2
2
×
−
=
S
S
S
m
m
m
C
(4)
ここに,
C
1
:
水に浸せきしたときの質量の変化率 (%)
C
2
:
試験液に浸せきしたときの質量の変化率 (%)
m
1W
:
水に浸せきする前の質量 (mg)
m
2W
:
水に浸せきした後の質量 (mg)
m
1S
:
試験液に浸せきする前の質量 (mg)
m
2S
:
試験液に浸せきした後の質量 (mg)
C
=C
2
−C
1
(5)
ここに, C: 質量の変化率の差 (%)
(2)
体積の変化率の差 体積の変化率の差は式(6)〜(8)によって求める。
100
)
(
)
(
)
(
3
1
3
1
4
2
1
×
−
−
−
−
=
W
W
W
W
W
W
m
m
m
m
m
m
V
(6)
100
)
(
)
(
)
(
3
1
3
1
4
2
2
×
−
−
−
−
=
S
S
S
S
S
S
m
m
m
m
m
m
V
(7)
ここに,
V
1
:
水に浸せきしたときの体積の変化率 (%)
V
2
:
試験液に浸せきしたときの体積の変化率 (%)
m
1W
:
水に浸せきする前の質量 (mg)
m
2W
:
水に浸せきした後の質量 (mg)
m
3W
:
水に浸せきする前の水中でのひょう量値 (mg)
m
4W
:
水に浸せきした後の水中でのひょう量値 (mg)
m
1S
:
試験液に浸せきする前の質量 (mg)
m
2S
:
試験液に浸せきした後の質量 (mg)
8
K 2408-1996
m
3S
:
試験液に浸せきする前の水中でのひょう量値 (mg)
m
4S
:
試験液に浸せきした後の水中でのひょう量値 (mg)
V
=V
2
−V
1
(8)
ここに, V: 体積の変化率の差 (%)
(3)
硬さの変化量の差 硬さの変化量の差は式(9)〜(11)によって求める。
H
1
=h
2W
−h
1W
(9)
H
2
=h
2S
−h
1S
(10)
ここに,
H
1
:
水に浸せきしたときの硬さの変化(IRHD 又は H
s
)
H
2
:
試験液に浸せきしたときの硬さの変化(IRHD 又は H
s
)
h
1W
:
水に浸せきする前の硬さ(IRHD 又は H
s
)
h
2W
:
水に浸せきした後の硬さ(IRHD 又は H
s
)
h
1S
:
試験液に浸せきする前の硬さ(IRHD 又は H
s
)
h
2S
:
試験液に浸せきした後の硬さ(IRHD 又は H
s
)
H
=H
2
−H
1
(11)
ここに,
H
:
硬さの変化量の差(IRHD 又は H
s
)
7.5
密度 密度は,JIS K 0061 の 4.1(浮ひょう法)又は 4.3(振動式密度計法)によって測定する。
なお,比重 (20/20℃) から密度 (20℃) を求める場合は,式(12)による。
D
=S×0.998 20 (12)
ここに,
D
:
密度 (20℃) (g/cm
3
)
S
:
比重 (20/20℃)
0.998 20
:
水の密度 (20℃) (g/cm
3
)
7.6
循環腐食性
7.6.1
装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(1)
循環腐食性試験装置 次の器具を用いて図 3 のように組み立て,試験液総量は 12±4l とする
。
(a)
加熱槽 図 4 に示す組立試験片を組み込むことができるステンレス鋼製の円筒形とし(
3
)
,槽外加熱
方式とする。一例を
図 5 に示す。
なお,槽の容積は 7±1l とし,槽内の液温を 88±3℃に調節できるもの。
注(
3
)
組立試験片を組み込んだ場合,試験片の表面に加熱槽入口からの循環液が直接当たらないよう
にするとともに,液が槽内で滞留しないようにする。
(b)
ウォーターポンプ(
4
)
自動車用遠心形ポンプで,アルミニウム鋳物製ケーシング,鋼又は鋳鉄製羽
根のもの。
注(
4
)
総排気量1.6±0.2l 級の自動車部品。
(c)
ラジエータ(
4
)
液量約 1 l のリザーブタンク付自動車用黄銅製ラジエータ又はアルミニウム製ラジ
エータ。
(d)
アッパーホース及びロアーホース JIS D 2602 に適合する自動車用ゴムホース。
(e)
連結用管 JIS G 3459 に規定するもの。
9
K 2408-1996
図 3 循環腐食性試験装置の一例
10
K 2408-1996
図 4 組立試験片の取付方法の一例
図 5 加熱槽の一例
7.6.2
組立試験片 7.2.3 の試験片を用い,支持板を除いて図 2 のように組み立てたもの三組を図 4 のよ
うに取り付けたもの。この場合,
棚受板は,JIS K 6888 に規定する四ふっ化エチレン樹脂製,又は JIS K 6748
に規定するポリエチレン成形材料の板とし,JIS G 4305 に規定するステンレス鋼を用いる場合には,組立
試験片及び棚受板を
表 2 に示す合成樹脂スペーサ (D) で絶縁する。
7.6.3
試験条件 試験条件は,表 3 のとおりとする。
表 3 試験条件
項目
条件
試験液濃度 最低使用濃度に 7.2.4(1)の調製水で希釈
液温 88±3℃
流量 60±10l/min
参考 ポンプ回転数 3 500r/m
運転時間 336±2h 連続
7.6.4
操作 操作は,次のとおり行う。
11
K 2408-1996
(1)
組立部品を十分に洗浄し,加熱槽内面,ポンプケーシング,ポンプ羽根などの表面状態を調べ,異常
がないことを目視で確かめた後,
図 3 のように試験装置を組み立てる。
(2)
7.2.4
によって試験液を調製し,あらかじめ pH 値を測定する。
(3)
試験液を加熱槽に注入し,リザーブタンクの下限に達した後,ラジエータのふたをする。低速で液を
循環させながら,88±3℃に加熱した後,
表 3 の試験条件で 1 時間運転し,その間に液漏れ,異常音又
は不具合な箇所を調べる。
一度運転を中止して放冷し,常温近くになった後ふたを取り液量を確認する。液量が不足の場合,
試験液を補充してふたをし,試験を再開する。
(4)
表 3 の条件で規定時間運転(
5
)
を続ける。試験中及び終了直前にポンプシール部の作動不良及び異常音
の有無について調べる。
注(
5
)
運転中は,衣服の巻き込みや液の飛散を防止するために,囲いをする。
(5)
試験終了後,室温まで放冷した後ポンプを止め液を抜く。試験片は取り出して分解し,7.2.5(6),(7)
及び(8)によって処理及び測定を行う。ポンプはシール部よりの液漏れについて目視によって調べる。
さらに,ポンプの異常音の有無を調べる。その後取り外して,水及びエタノールで洗浄し乾燥させた
後,ポンプケーシング内面及びポンプの羽根を,目視によって表面腐食の有無を調べる。
(6)
放冷後,抜いた液については,7.2.5(9)(a)及び(b)の項目を試験する。
7.6.5
計算 計算は,次のとおりとする。
(1)
質量の変化量 三組の試験片について,質量の変化量を式(1)によって算出し,三組の変化量の平均値
を JIS Z 8401 によって小数点以下 2 けたに丸める。
(2)
pH
値 pH 値は 2 回の測定結果を平均し,JIS Z 8401 によって小数点以下 1 けたに丸める。
(3)
pH
値の変化 pH 値の変化は,式(2)によって算出する。
7.7
アルミニウム鋳物伝熱面腐食性
7.7.1
装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(1)
伝熱面腐食試験装置 装置は,次に示す器具を用いて,図 6 のように組み立てたものを用いる。
(a)
圧力計 JIS B 7505 に規定する圧力計で,指示値 300kPa 以上のもの。
(b)
安全弁又は圧力調整弁(リリーフ機構付) 安全弁又は JIS B 8372 に規定する又は準拠したリリー
フ機構付圧力調整弁。
なお,圧力調整弁を用いる場合は,試験装置から十分離して使用すること。
(c)
耐熱性ガラスセル(O リング溝付) 内径 40〜45mm,厚さ 2.5mm 以上の耐熱ガラス管で,全長約
530mm
のもの。
(d)
組立板 上部板と下部板を一組とし,上部板はステンレス鋼製,下部板は鋼又はステンレス鋼製の
もの。
(e)
鉄心 バンドヒーターを巻く鋳鉄,鋼製又はステンレス鋼製のもので,直径約 51×長さ約 135mm。
(f)
ねじ付ロッド 上部及び下部組立板を組み合わせるための鋼又はステンレス鋼製の丸棒で,上下に
ねじ部を備えたもの。
(g)
バンドヒーター 100VAC 又は 200VAC を用いた容量 950W 以上のもので,内径約 51×長さ約 127mm。
(h)
注入口及び栓 ステンレス鋼製のもの。
(i)
O
リング JIS B 2401 に規定する 4 種 C 又は D。
(2)
温度調節器 135±2℃に保つことができるもの。
(3)
熱電対及び温度測定装置 熱電対は,JIS C 1602 に規定するもので,許容差が±1.5℃以内とし,温度
12
K 2408-1996
測定装置は,JIS Z 8704 の 11.6(測定方式の等級)の C 級のもの。
(4)
乾燥器 100±2℃に保つことができるもの。
(5)
デシケーター 適当な寸法のもので,乾燥剤としてシリカゲル又は塩化カルシウムを用いたもの。
(6)
超音波洗浄器 出力約 50W の超音波洗浄器。
(7)
ナイロンブラシ 適当な市販のもの。
(8)
耐水研磨紙 JIS R 6253 に規定する C,P320 及び C,P600。
図 6 伝熱面腐食試験装置の一例
7.7.2
試薬 試薬は,次のとおりとする。
(1)
塩化ナトリウム 7.2.2(2)による。
(2)
アセトン 7.2.2 (7)による。
(3)
エタノール 7.2.2(8)による。
(4)
硝酸 (4+1) 7.2.2 (6)による。
7.7.3
金属試験片 金属試験片は,次のものを二組用いる。
(1)
試験片の材質 JIS H 5202 に規定するアルミニウム合金鋳物 AC2B−F。
(2)
試験片の寸法 直径 65×厚さ約 13mm のもの。熱電対の穴 2 個の位置は図 7 に示す。
13
K 2408-1996
図 7 金属試験片の一例
7.7.4
試験片の準備 試験片の準備は,次のとおりとする。
(1)
試験片の表面に水を流しながら,耐水研磨紙 C, P320 を用いて,試験片の表面を研磨し,更に C, P600
で仕上げ,アセトン又はエタノールで洗浄する。
(2)
エタノールを用いて超音波洗浄を 1 分間行う。熱電対の穴も洗浄し,こよりなどで穴の中のエタノー
ルなどをふき取る。さらに,目視によって残留付着物を調べ,付着物を認めた場合は,前記の洗浄を
繰り返す。
(3)
100
℃の乾燥器中で約 1 時間乾燥する。
(4)
デシケーター中で 1 時間以上放置する。
(5)
質量を 0.1mg のけたまで量る。
7.7.5
試験液の調製 試験液は,水 1 000ml に塩化ナトリウム 165mg を添加した食塩水で,原液を最低使
用濃度に希釈したものを用いる。
7.7.6
操作 操作は,次のとおり行う。
(1)
図 6 のように試験装置を組み立てる。試験片と耐熱性ガラスセル,ガラスセルと上部組立板との間に
各 1 個の O リングを用いる。ガラスセルの O リング用溝に潤滑のために少量の試験液を使用してもよ
い。
なお,この組立時にねじ付ロッドのナットによる締め過ぎを避けること。
(2)
組み立て完了後,ガラスセル周囲に安全防御壁(
6
)
を備えた後,空気漏れの有無を確認するため,栓を
し,圧縮空気で約 200kPa の圧力をかけて検査する。漏れ検査完了後に注入口から試験液 500ml を注
入し,
栓を堅く締め付けた後,
安全防御壁(
6
)
を確認し,
ガラスセル試験装置に約 150kPa の圧力をかけ,
熱源のバンドヒータに電気を通す。
注(
6
)
安全弁の設置にもかかわらずガラスセルが圧力によって破裂することがあるため,必ず安全防
御壁を用いること。ガラスセル周辺の防御壁に囲まれた部分は,空気が十分に循環するように
配慮する。安全防御壁の材質は,透明プラスチック板などを周辺の安全を考慮して選定するこ
と。
備考 試験装置は温度が高くなると,圧力が徐々に加わり試験温度の 135±2℃に到達したときの最終
圧力は,180〜200kPa となる。
(3)
試験片温度 135±2℃,168±2 時間保つ。
なお,試験中は,必要に応じて熱電対の補助穴を利用して試験温度を監視する。
(4)
試験終了後,室温まで放冷し,圧力を開放後に栓を取り,試験液を外部に流出させる。
(5)
試験後の試験片の処理
14
K 2408-1996
(a)
試験片は装置から取り外し,水洗し,ナイロンブラシを用いて表面の付着物を軽く取り除く。
(b)
硝酸 (4+1) に室温で 10 分間浸す。
(c)
水洗し,硝酸を洗い流す。
(d)
エタノール中で超音波洗浄器を用いて 2 分間洗浄する。熱電対の穴は,こよりなどで穴の中をふき
取る。残留付着物を認めた場合は,前記の洗浄を繰り返す。
(e)
100
℃の乾燥器で約 1 時間乾燥する。
(f)
デシケーター中で 1 時間以上放置する。
(g)
質量を 0.1mg のけたまで量る。
7.7.7
計算 アルミニウム鋳物伝熱面腐食性は,質量の変化量で表し,質量の変化量の計算は,式(13)に
よって算出し,2 回の測定結果を平均し,JIS Z 8401 によって小数点以下 1 けたに丸める。
s
m
m
C
1
2
−
=
(13)
ここに,
C
: 質量の変化量 (mg/cm
2
)
m
1
: 試験前の試験片の質量 (mg)
m
2
: 試験後の試験片の質量 (mg)
s
: 試験片と試験液との接触部面積 (cm
2
)
8.
容器 容器は,その取扱い中にラジエータ防食剤の漏れ,吸湿などを起こさない構造のものでなけれ
ばならない。
9.
検査方法 検査方法は,7.によって試験し,表 1 に適合しなければならない。
10.
表示 容器には,次の事項を表示しなければならない。
(1)
規格名称
(2)
用途 液冷式内燃機関用冷却系統の防食又はエンジン冷却系統の防食
(3)
最低及び最高使用濃度
(4)
製造業者名又はその略号及び所在地
(5)
製造年月日又はその略号及び製造番号
付表 1 引用規格
JIS B 2401
O リング
JIS B 7413
浸没線付ガラス製水銀棒状温度計
JIS B 7505
ブルドン管圧力計
JIS B 7507
ノギス
JIS B 8372
空気圧用減圧弁
JIS C 1602
熱電対
JIS D 2602
自動車用ウォーターホース
JIS G 3141
冷間圧延鋼板及び鋼帯
JIS G 3459
配管用ステンレス鋼管
JIS G 4305
冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯
JIS G 5501
ねずみ鋳鉄品
15
K 2408-1996
JIS H 3100
銅及び銅合金の板及び条
JIS H 5202
アルミニウム合金鋳物
JIS K 0050
化学分析方法通則
JIS K 0061
化学製品の密度及び比重測定方法
JIS K 2251
原油及び石油製品−試料採取方法
JIS K 2503
航空潤滑油試験方法
JIS K 2839
石油類試験用ガラス器具
JIS K 6253
加硫ゴムの硬さ試験方法
JIS K 6301
加硫ゴム物理試験方法
JIS K 6748
ポリエチレン成形材料
JIS K 6888
四ふっ化エチレン樹脂板
JIS K 8034
アセトン(試薬)
JIS K 8102
エタノール(95)(試薬)
JIS K 8150
塩化ナトリウム(試薬)
JIS K 8180
塩酸(試薬)
JIS K 8355
酢酸(試薬)
JIS K 8541
硝酸(試薬)
JIS K 8622
炭酸水素ナトリウム(試薬)
JIS K 8987
硫酸ナトリウム(試薬)
JIS R 3503
化学分析用ガラス器具
JIS R 3505
ガラス製体積計
JIS R 6253
耐水研磨紙
JIS Z 3282
はんだ
JIS Z 8401
数値の丸め方
JIS Z 8703
試験場所の標準状態
JIS Z 8704
温度測定方法−電気的方法
JIS Z 8802
pH 測定方法
JIS K 2408
改正原案作成委員会 構成表
(委員長)
渡 辺 昭一郎
財団法人北里環境科学センター・北里大学名誉教授
(委員)
増 田 優
通商産業省基礎産業局
岡 林 哲 夫
工業技術院標準部
高 橋 孝 一
通商産業省製品評価技術センター
石 山 裕
工業技術院物質工学工業技術研究所
高 橋 教 司
社団法人日本防錆技術協会
広 庭 正
財団法人化学品検査協会
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
金 井 孝
国民生活センター
村 島 善 樹
社団法人自動車技術会(トヨタ自動車株式会社)
安 部 三 郎
社団法人自動車技術会(日産自動車株式会社)
山 口 弘 一
社団法人全国自動車部品商団体連合会
三 好 重 男
日本自動車部品協会
日下部 明 昭
社団法人自動車連盟
住 野 耕 三
株式会社オートバックスセブン
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K 2408-1996
加 藤 行 平
三興油脂株式会社
藤 江 太 郎
三進化学工業株式会社
関 久 雄
エチレンケミカル株式会社
辻 井 哲 也
シーシーアイ株式会社
安 実 港
制研化学工業株式会社
田 見 秀 行
日本ケミカル工業株式会社
御手洗 宏 美
興新化学株式会社
(事務局)
塩 谷 栄 二
日本オートケミカル工業会
(関係者)
橋 田 安 弘
工業技術院標準部
稲 葉 知 英
工業技術院標準部
文責 JIS k 2408 改正原案作成委員会 事務局 塩谷栄二