K 0400-67-20 : 1998
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
K 0400-67-20 : 1998
(1)
目次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
3.
原理
2
4.
試薬
2
5.
装置
2
6.
サンプリング方法
2
7.
手順
3
7.1
空試験液
3
7.2
検量線用溶液
3
7.3
処理
3
7.4
校正及び定量
4
8.
標準検量線法による結果の評価
5
9.
試験結果の表現
5
10.
精度
5
11.
妨害物質
5
12.
試験報告
6
日本工業規格
JIS
K
0400-67-20
: 1998
水質−セレンの定量−
原子吸光法(水素化物発生法)
Water quality
−Determination of selenium−
Atomic absorption spectrometric method (hydride technique)
序文 この規格は,1993 年に発行された ISO 9965,Water quality−Determination of selenium−Atomic
absorption spectrometric method (hydride technique)
を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更すること
なく作成した日本工業規格である。原国際規格の適用範囲には飲料水も含まれているが,この規格では除
いてある。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にない事項である。
1.
適用範囲 この規格はフレーム原子吸光法による地下水及び表層水中の 1〜10
µg/l のセレン及び有機
結合セレンの定量法について規定する。
これより高い濃度のものも適切に薄めることによって定量可能である。
2.
引用規格 次に掲げる規格は規定を含んでおり,この規格に引用することによって,この規格の規定
を構成する。この規格制定の時点では,次に示す版が有効であった。すべて規格は改正されることがあり,
この規格に基づいて契約を結ぶ関係者は次の規格の最新版の適用の可能性を調査されたい。
JIS K 1105
アルゴン(試薬)
JIS K 1107
高純度窒素(試薬)
JIS K 8180
塩酸(試薬)
JIS K 8230
過酸化水素(試薬)
JIS K 8576
水酸化ナトリウム(試薬)
JIS K 8951
硫酸(試薬)
ISO 5667-1 : 1980,
Water quality−Sampling−Part 1 : Guidance on the design of sampling programmes
ISO 5667-2 : 1991,
Water quality−Sampling−Part 2 : Guidance on sampling techniques
ISO 5667-3 : 1985,
Water quality−Sampling−Part 3 : Guidance on the preservation and handling of
samples
1)
1)
原国際規格制定時点では ISO 5667-3 の改訂案の段階。現在は ISO 5667-3 : 1994 が発行されている。
2
K 0400-67-20 : 1998
3.
原理 この方法は,セレン化水素 (selenium hydride) の熱分解によって生成するセレンを,原子吸光
法によって測定することに基づいている。この方法の条件下では,セレン (IV) だけが定量的に水素化合
物に変換される。定量の誤りを避けるためには他の酸化数のものは定量する前に 4 価に変換しておく必要
がある。セレン (IV) は塩酸中でテトラヒドロほう酸ナトリウムと反応して気体状のセレン化水素 (SeH
2
)
に還元される。
吸光度は,波長 196.0nm で測定する。
4.
試薬 分析には分析用と認められた試薬だけを使用する。水及び試薬中のセレンの含有量は定量しよ
うとする最低の濃度と比べて無視できるほど低くなければならない。
4.1
硫酸
ρ
=1.84g/ml JIS K 8951 に規定するもの
4.2
塩酸
ρ
=1.16g/ml JIS K 8180 に規定するもの
4.3
過酸化水素 JIS K 8230 に規定するもの
4.4
水酸化ナトリウム JIS K 8576 に規定するもの
4.5
テトラヒドロほう酸ナトリウム溶液 水約 20ml に水酸化ナトリウム (4.4) 1g を溶かす。テトラヒド
ロほう酸ナトリウム (NaBH
4
) 3g
を加え,水で 100ml に薄める。
この溶液は,毎日調製しなければならない。
4.6
セレン貯蔵液 1 000mgSe/l 二酸化セレン 1.405 3g を全量フラスコ 1 000ml に入れる。水酸化ナトリ
ウム(4.4)2g を加え,少量の水で溶かし,水を標線まで加える。
備考 セレンの貯蔵液には,市販のものが利用できる。
4.7
セレン標準液 1 10mgSe/l 全量フラスコ 1 000ml にセレンの貯蔵液 (4.6) 10ml をピペットでとる。塩
酸 (4.2) 20ml を加え,水を標線まで加える。
この溶液は,最低 1 週間は安定である。
4.8
セレン標準液 2 0.1mgSe/l 全量フラスコ 1 000ml にセレン標準液 1 (4.7) 10ml をピペットでとる。塩
酸 (4.2) 20ml を加え,水を標線まで加える。
この溶液は,最低 1 週間は安定である。
5.
装置 通常の試験室用の設備,及び
5.1
原子吸光分析装置 水素化合物発生システム及びセレン定量のための適切な光源,例えば,無電極
放電管又は中空陰極ランプを備えたもの。バックグラウンド補正機能を備えたものが望ましい。
5.2
ガス供給 JIS K 1105 に規定するアルゴン 2 級又は JIS K 1107 に規定する高純度窒素 2 級
5.3
ガラス器具 使用する直前に温硝酸(例えば,2mol/l)で清浄にし,水ですすいでおく。
6.
サンプリング方法
− ISO 5667-1 及び ISO 5667-2 に従って試料を採取する。
− 試料をポリエチレン又はほうけい酸ガラス容器に採取する。なお,この容器はあらかじめ硝酸(例え
ば,2mol/l)で清浄にし,水ですすいだもの。
− 試料 1 000ml につき塩酸 (4.2) 20ml を加える。
− pH が 2 より高い場合は,塩酸を更に加えて pH2 以下にする。
− 試料の保存方法に関しては ISO 5667-3 を参照。
3
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7.
手順
7.1
空試験液
− 目盛付きフラスコ 100ml に塩酸 (4.2) 2ml をピペットでとり,水で標線まで薄める。
− 空試験は,試料と全く同様に操作する。
7.2
検量線用溶液
− セレン標準液 2 (4.8) を用いて,予想される濃度範囲を包含する少なくとも 5 個の検量線用溶液を調製
する。
− 例えば,1〜10
µg/l の範囲に対しては,一連の全量フラスコ 100ml にセレン標準液 2 (4.8) をそれぞれ
1ml
,3ml,5ml,8ml 及び 10ml ずつピペットで加える。全量フラスコに塩酸 (4.2) 2ml を加え,水で標
線まで薄める。これらの検量線用溶液は,セレンの濃度がそれぞれ 1
µg/l
,
3
µg/l,5µg/l,8µg/l 及び 10µg/l
となる。
− 検量線用溶液は,毎日調製しなければならない。
7.3
処理
− 全セレンの定量のためには,有機セレン化合物を分解するために試料は加熱分解しなければならない。
分解せずに定量的に全セレンが測定されることが経験的に分かっている場合には,加熱分解の過程
(7.3.1)
を省略してもよい。
− 丸底フラスコに試料 50ml を入れる。
7.3.1
加熱分解方法
− 硫酸 (4.1) 5ml と過酸化水素 (4.3) 5ml を丸底フラスコに加える(7.3 参照)
。
− 沸騰石数個を加え,丸底フラスコを例えば,
図 1 に示す器具に接続する。コックを閉じる。フラスコ
の内容物が沸騰するまで加熱し,凝縮物を凝縮物受器に集める。
− 硫酸の白煙が上がるまで加熱を続ける。試料の外観を調べる。もし,試料が不透明でほとんど無色で
あれば,冷却後,過酸化水素 (4.3) 5ml を加え,前の段落に記述したように加熱を続ける。
− 冷後,凝縮物を丸底フラスコに戻す。
備考 試料が決して完全に蒸発乾固しないよう注意しなければならない。
4
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図 1 試料分解装置の例
7.3.2
セレン (VI) からセレン (IV) への還元
− 塩酸 (4.2) 20ml を丸底フラスコに加える。
− コックを開いたまま 15 分間還流しながら緩やかに加熱する。試料の加熱分解操作を行っていない場合
で試料が遊離の塩素を含む場合は,その間,窒素(約 1l/min)を溶液に通気する。
− 試料溶液を冷却後,全量フラスコ 100ml に移し,水を標線まで加える。
− 空試験液 (7.1) 及び検量線用溶液 (7.2) を同様に処理する。
7.4
校正及び定量
− 使用する水素化合物発生装置によっては,この細分した箇条で記述されている量よりも多いか又は少
ない量を用いてもよい。しかしながら,規定された量比は守らなければならない。
− 製造業者の取扱説明書に従って,原子吸光分析装置のすべての操作条件を設定する(波長:196.0nm)
。
透過光が最大となるよう吸収セルの位置を最適化する。
− 次の順番に測定する。
− 空試験液
− 検量線用溶液
− 試料
− 分析システムにアルゴン又は窒素 (5.2) を流してゼロ合わせをする。還元後の溶液(7.3 参照)を,例
えば,20ml を反応容器に入れる。
− 反応容器を水素化合物発生システムに接続する。
− 吸光度がゼロになるまで溶液にアルゴン又は窒素 (5.2) を通じる。
5
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− テトラヒドロほう酸ナトリウム溶液 (4.5) 約 5ml を溶液に加え,吸光度を記録する。
− 空試験液と検量線用溶液を用いて検量線を作成する。
− 各溶液から再び測定試料を採取して,操作を繰り返す。
備考1. ときどき空試験と検量線を確認するとよい。
2.
未知の試料群に対しては少なくとも 1 試料に既知量のセレンを添加してこの方法の有効性を
確認するとよい。もし,回収率試験の結果が思わしくない場合は,標準添加法を用いるとよ
い。
8.
標準検量線法による結果の評価
− 検量線と吸光度から測定溶液中のセレンの質量濃度,
µg/l,を求める。
− すべての希釈過程を考慮しなければならない。
9.
試験結果の表現 結果を有効数字 2 けたと小数第 1 位で表示する。
例 セレン (Se) : 8
µg/l
セレン (Se) : 32
µg/l
10.
精度 この方法とほぼ同様の方法を用いて 1992 年秋に行われた室間試験から表 1 に示す結果が得られ
た。
表 1 精度データ
試料
番号
I
n
n
e
%
x
µg/l
x
µg/l
σ
t
µg/l
VC
r
%
σ
R
µg/l
VC
R
%
WFR
%
A
19
50
0
3.0 2.92 0.525
18.0 0.191
6.5 97.4
B 19 42 11 9.0 7.76
0.869
11.2
0.439
5.7 86.2
I
:試験室数
σ
t
:繰返し性の標準偏差
n
:測定値数
VC
r
:繰返し性の変動係数
n
e
:外れ値の割合
σ
R
:再現性の標準偏差
x
:真値
VC
R
:再現性の変動係数
x
:全平均値
WFR
:回収率
A
:飲料水
B
:廃水
11.
妨害物質 表 2 は,分析手順のいずれかの段階において存在する物質の妨害能力を表している。妨害
物試験用の溶液は,500ml 中に記述された量の妨害物質とセレンを含むように,固体又は濃厚溶液から調
製した。次いで,その溶液を測定にかけ,結果を記述された量のセレンに対する影響を表した。
乾燥固体試料 250mg を灰化,抽出,希釈して 500ml の溶液にしたとすると,共存物が 100mg 及び 250mg
存在するということは,元の試料中にその共存物質がそれぞれ 40%及び 100%存在していることに相当す
る。そして 3.75
µg のセレンは元の固体試料中に 15mg/kg の濃度で存在していることに相当する。
6
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表 2 セレンの定量に対する他の物質の影響
他の物質
他の物質の質
mg
Se3.75
µg に対する
他の物質の影響
µgSe として
塩化物としてのナトリウム 250
0.0
塩化物としてのカリウム 250
−0.1
塩化物としてのカルシウム 250
0.0
塩化物としてのマグネシウム 250
0.2
硫酸塩としてのアルミニウム 250
0.2
塩化物としてのランタン 250
−0.3
ナトリウム塩としてのほう酸イオン 250
−0.1
ナトリウム塩としての炭酸イオン 250 −0.2
ナトリウム塩としての硝酸イオン 250 −0.5
水酸化物としてのアンモニウム塩 250
0.0
カリウム塩としてのりん酸イオン 250
0.2
ナトリウム塩としての硫酸イオン 250
0.0
ナトリウム塩としてのふっ化物 250
−0.7
ナトリウム塩としての臭化物 100
0.2
ナトリウム塩としてのよう化物 100 0.1
塩化物としてのクロム (III)
100
−0.2
硫酸塩としてのマンガン (II)
100
0.3
塩化物としての鉄 (II)
250
0.5
塩化物としてのコバルト (II)
100
−1.7
硫酸塩としてのニッケル 100
−3.4
塩化物としての銅 (II)
250
−1.8
酸化物としての亜鉛 250
0.2
塩化物としてのカドミウム 100
0.3
塩化物としての水銀 (II)
100
−2.9
塩化物としてのすず (II)
100
−0.4
酢酸塩としての鉛 (II)
100
0.5
酒石酸ナトリウム塩としてのアンチモン
250
−3.7
硝酸塩としてのビスマス 100
−3.0
12.
試験報告 報告書には,次の事項を含めなければならない。
a)
この規格の引用
b)
試料の完全な確認
c)
試料の前処理
d) 9.
に従った試験結果の表現
e)
この規格に含まれていないすべての操作及び結果に影響しそうな付随事項
7
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平成 8 年度 JIS K 0102 改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○
並 木 博
工学院大学工学部
○
佐 藤 寿 邦
横浜国立大学工学部
○
西 出 徹 雄
1
)
工業技術院標準部消費生活規格課
乾 敏 一
2
)
通商産業省環境立地局産業施設課
○
畑 野 浩
3
)
環境庁水質保全局水質規制課
中 村 進
工業技術院物質工学工業技術研究所計測化学部
中 村 和 憲
工業技術院生命工学工業技術研究所
○
田 尾 博 明
工業技術院資源環境技術総合研究所水圏環境保全部
田 中 宏 明
建設省土木研究所水道部
柴 田 康 行
国立環境研究所科学環境部
○
土 屋 悦 輝
東京都立衛生研究所環境保健部
渡 辺 真利代
東京都立衛生研究所環境保健部
○
日 野 隆 信
千葉県衛生研究所
小 倉 光 夫
神奈川県環境科学センター水質環境部
西 尾 高 好
財団法人日本環境衛生センター東日本支局環境科学部
○
坂 本 勉
財団法人日本規格協会技術部
山 村 修 蔵
財団法人日本規格協会技術部
浅 田 正 三
財団法人日本品質保証機構環境計画センター
○
梅 崎 芳 美
社団法人産業環境管理協会
横 倉 清 治
社団法人日本環境測定分析協会(三菱マテリアル株式会社)
神 代 啓
社団法人日本化学工業協会
池 田 久 幸
社団法人日本分析機器工業会(横河アネリティカルシステム
ズ株式会社)
長 澤 忠 彦
社団法人日本鉄鋼連盟(住友金属工業株式会社)
山 田 昭 捷
社団法人日本下水道協会(東京都下水道局)
土 屋 徳 之
石油連盟(興亜石油株式会社)
松 谷 成 晃
日本石鹸洗剤工業会(ライオン株式会社)
波多江 正 和
日本製紙連合会技術環境部
佐 山 恭 正
日本鉱業協会(三菱マテリアル株式会社)
狩 野 久 直
日本練水株式会社研究所
久 島 俊 和
オルガノ株式会社総合研究所
○
川 瀬 晃
セイコー電子工業株式会社科学機器事業部
○
米 倉 茂 男
元 東京都立工業技術センター
岩 崎 岩 次
社団法人日本工業用水協会
(事務局)
秋 本 孝
社団法人日本工業用水協会
飛 渡 祥 弘
社団法人日本工業用水協会
本 郷 秀 昭
社団法人日本工業用水協会
備考
1)
:発足当初は岡林哲夫(工業技術院繊維化学規格課)
2)
:発足当初は相澤徹(通商産業省環境立地局産業施設課)
3)
:発足当初は飯島孝(環境庁水質保全局水質規制課)
○は、幹事兼任
(文責 並木 博)