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K 0189

:2013

(1)

目  次

ページ

序文  

1

1  適用範囲  

1

2  引用規格  

1

3  用語及び定義  

1

4  略語 

2

5  測定パラメータ  

2

5.1  一般  

2

5.2  電子プローブに関するパラメータ 

2

5.3  波長分散 線分光器に関するパラメータ  

3

5.4  試料に関するパラメータ  

5

6  測定手順  

5

6.1  一般  

5

6.2  プローブ電流  

5

6.3  ピーク計測に関するパラメータ  

6

6.4  試料に関するパラメータ  

8

7  分析結果の報告  

8

附属書 A(参考)分析面積の算出方法  

9

附属書 B(参考)分析深さの算出方法 

11

附属書 C(参考)モンテカルロ法を用いた 線分析体積の算出方法  

12

附属書 JA(参考)JIS と対応国際規格との対比表  

15


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まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工

業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済

産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


日本工業規格

JIS

 K

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マイクロビーム分析−電子プローブマイクロ分析−

波長分散 X 線分光法のパラメータの決定方法

Microbeam analysis-Electron probe microanalysis-Determination of

experimental parameters for wavelength dispersive X-ray spectroscopy

序文 

この規格は,2003 年に第 1 版として発行された ISO 14594 を基とし,国内の状況に適合させるため技術

的内容を変更して作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一

覧表にその説明を付けて,

附属書 JA に示す。

適用範囲 

この規格は,電子プローブマイクロ分析(EPMA)を行う上で考慮しなければならない電子プローブ,

波長分散 X 線分光器及び試料に関する測定パラメータの決定方法について規定する。この規格は,特に,

プローブ電流,プローブ電流密度,不感時間,波長分解能,バックグラウンド,分析面積,分析深さ及び

分析体積の決定のための手順についても規定する。

この規格は,よく研磨した試料面に対して垂直に電子を照射して分析する場合に適用する。これ以外の

場合にはこのパラメータは単に目安を与えるものである。

この規格は,エネルギー分散 X 線分光器には適用しない。

注記  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 14594:2003 , Microbeam analysis − Electron probe microanalysis − Guidelines for the

determination of experimental parameters for wavelength dispersive spectroscopy(MOD)

なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,

“修正している”

ことを示す。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS Q 17025  試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。


2

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3.1 

分析面積(analysis area)

照射電子が試料内で散乱し横方向にひろ(拡)がることに対応した二次元の領域である面積。

3.2 

分析深さ(analysis depth)

試料表面から全ての信号又は特定の割合の信号が検出される垂直方向の深さ。

3.3 

分析体積(analysis volume)

試料において,全ての信号又は特定の割合の信号が検出される三次元の領域である体積。

3.4 

バックグラウンド(background)

全ての X 線スペクトルから特性 X 線スペクトルを取り除いた制動ふく(輻)射に由来する連続 X 線だ

けからなる部分。

3.5 

プローブ電流(probe current)

試料表面に照射する電子の電流値。

3.6 

プローブ電流密度(probe current density)

試料表面に照射する単位面積当たりの電流値。

3.7 

不感時間(dead time)

X 線の検出システム及び/又は計数システムで X 線量子の計測中に,次に入ってきた X 線量子を計測で

きない時間。

3.8 

波長分解能(wavelength resolution)

特性 X 線スペクトルの半値幅。

略語 

この規格で用いる主な略語は,次による。

EPMA(Electron Probe Micro Analysis)

:電子プローブマイクロ分析

FWHM(Full Width at Half Maximum)

:半値幅

測定パラメータ 

5.1 

一般 

EPMA 装置を使用する場合には,5.2.15.2.4 で規定するパラメータの値を知り,記録しなければならな

い。加速電圧,プローブ電流,倍率,及び計数器の不感時間が校正されていることの確認を装置の保守項

目の中に含めることが望ましい。

5.2 

電子プローブに関するパラメータ 

5.2.1 

加速電圧 


3

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加速電圧は,通常 2 kV∼30 kV の範囲内の値を用いる。通常は,加速電圧を校正することは定性分析で

は重要ではない。

注記  試料表面に存在する層の厚さ,又は元素の深さ分布を計測する場合は,加速電圧の校正が必要

になる場合がある。 

5.2.2 

プローブ電流 

X 線のピーク強度は,プローブ電流に正比例する。プローブ電流の測定精度は,定量分析に要求される

精度より高くしなければならない。

注記  正確な定量分析を行うためには,長時間のプローブ電流の安定性が必要である。プローブ電流

の安定性は定期的にテストすることが望ましく,特に定量分析を行う前にする必要がある。各

測定の前後にプローブ電流を記録してプローブ電流の小さな変動を補正することが望ましい。

これによって,全ての X 線ピーク及びバックグラウンド強度の測定値が I

i

/I

m

によって適切に目

盛られる。ここで I

i

は初期のプローブ電流値,I

m

は測定時のプローブ電流値である。

5.2.3 

プローブ電流密度 

電子プローブの影響を受けやすい試料を分析する場合,プローブ電流密度は,特に重要である。収束し

た電子プローブでの電流密度は,10

4

 A/m

2

を超えることがある。水平方向の空間分解能が低くてもよい測

定では,電子プローブをひろ(拡)げるか,又は走査して試料に照射し,プローブ電流密度を下げなけれ

ばならない。電子プローブを走査する場合には標準試料及び,分析試料との比較に対して同様の走査を行

わなければならない。走査領域が広くなるにつれて,電子プローブを照射する位置と分光素子との位置関

係が変わり X 線強度の減少をもたらすからである。5.3.5 

注記 を参照。

5.2.4 

倍率 

電子プローブを走査して線分析を行ったり,

画像を取り込んだ場合,

試料上の寸法を正確に求めるには,

倍率の校正をしなければならない。

5.3 

波長分散 線分光器に関するパラメータ 

5.3.1 

一般 

装置は 1 台以上の波長分散 X 線分光器を備える。それぞれの分光器に組み込まれている分光素子は特定

の波長範囲をカバーしており,分析元素に応じて選択する必要がある。波長分散 X 線分光器を適切に操作

するときに重要となるパラメータは,次による。

5.3.2 X 線取出し角 

X 線取出し角は定量分析に影響を与える。また,X 線取出し角の異なる装置間での測定結果を比較する

ときは,X 線取出し角の差を考慮に入れることが必要なため,X 線取出し角を分析結果の報告書に記載し

なければならない。

注記  X 線取出し角は,装置の製造業者から知ることができる。

5.3.3 

波長分解能 

波長分解能は,分光素子の材質及びミラー指数,分光素子の曲率半径,並びに検出器の入射窓又はその

スリットの大きさ及び位置の影響を受ける。これら全ての設定条件が,計測する X 線スペクトルの波長分

解能及び観察する特性 X 線スペクトルの半値幅(FWHM)を決定する。

波長分解能を上げることによって,

重なったピークの分離,

又はバックグラウンドの影響を低減できる。

反面,試料高さ及び電子プローブ位置の変動による影響を受けやすくなる。


4

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5.3.4 X 線検出器及び波高分析器 

多くの分光器は X 線検出器として比例計数管を使用している。出力されるパルス高さは,入射 X 線のエ

ネルギー及び/又は比例計数管にかける電圧に依存する。目的とするパルスを選別するのに波高分析器を

用いる。下限レベルはノイズによるパルスを排除するように設定する。一方,上限レベルは,高次反射に

よる高エネルギーの X 線を計数することを防ぐように設定する。一般的には最適な設定は分析対象となる

X 線の分析線に依存する。例えば,高い計数率の場合などで,パルス高さが意図しない変化をしても,計

数率に大きな影響を及ぼさないことを保障するように波高分析器を設定することが重要である。

注記  計数率が増えると,X 線の計数効率は低下するので,計測された計数率に対して不感時間の補

正をすることが非常に重要である。

自動化したシステムでは,波高分析器の設定も自動化している。この設定の確認を定期的に

行い,自動動作が適切であるかを確認することが望ましい。

5.3.5 

ピーク位置(波長) 

通常の条件では,最大のピーク強度の波長を用いて X 線ピークの位置を決定する。適切な標準試料を用

いて理論ピーク位置と使用する分光器及び分光素子で実際に測定した位置との差を定期的に調査し,

かつ,

補正しなければならない。この頻度は分光器の安定性に依存する。FWHM の狭いピークの強度の測定値は,

ピーク位置の誤差の決定における影響を強く受ける。ピーク強度は化学結合状態及び偏光効果によって変

化することがある。

注記 1  分析対象となる試料中の元素の化学結合状態が,標準試料の場合と異なる場合,特性 X 線ス

ペクトルの形状は,分析試料と標準試料とで異なる可能性がある。この場合,ピークの最大

値だけでは,全ピーク強度を反映する信頼できる測定値とはいえない。信頼性のある結果を

得るためには,ピークの面積を測るなどの別の手法が必要となる場合がある。これら化学結

合状態の影響は,特に低エネルギーX 線のピーク位置の判定において重要となる。

注記 2  結晶性試料において,試料及び分光素子間の位置関係が偏光効果を引き起こす場合には,ピ

ークの形状及び位置が変化することがある。この現象は,電子プローブと垂直な軸のまわり

に試料を回転させたときにピークの形状及び位置を観測することによって確認できる。これ

は,立方晶より低く斜方晶より高い対象性をもつ試料の場合に生じやすく,分光素子のブラ

ッグ角が 45 度のときに最も影響が大きいとされる。

この現象は,まれにグラファイト及び特定のほう(硼)化物で認められており,精度良い

定量分析のためにはピーク面積を測定することが望ましい(参考文献[1]及び[2]を参照)

注記 3  特性 X 線のピークが最大となる位置は,電子プローブの照射位置が分光器の焦点位置から離

れるにつれて変化する。校正のための測定及び定量分析では,この焦点位置に関して相対的

に同じ位置に電子プローブを照射するようにして測定しなければならない。このことは電子

プローブのデフォーカス及び走査法で行うときも同様である。デフォーカス及び走査法を用

いて行う全ての定量及び定性分析に対して,照射される試料面の面積は,その X 線カウント

数が,静止した収束電子プローブで得られる X 線カウント数に比べて顕著な低下を来たすほ

ど大きくしてはならない。

5.3.6 

バックグラウンド 

スペクトル上では,特性 X 線のピークは連続 X 線のバックグラウンドに重畳している。

真の特性 X 線強度を正確に求めるには,バックグラウンドの強度を求め,これを差し引く補正をしなけ

ればならない。


5

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5.4 

試料に関するパラメータ 

5.4.1 

試料ステージ 

高精度の X,Y,Z ステージは,試料及び標準試料を,正確に電子プローブの位置まで移動させること

ができる。波長分散 X 線分光器の焦点位置と電子プローブの位置とを試料表面で一致させるために,装置

に取り付けた光学顕微鏡を使って,試料の高さを合焦点位置に設定しなければならない。適切な定量分析

を行うために,電子プローブの光学軸と試料面とが直角になっていなければならない。光学顕微鏡が調整

されていることの確認を定期的な装置の保守項目に含めることが望ましい。

自動分析では,試料及び標準試料上のあらかじめ設定された点を測定するため,ステージをあらかじめ

設定した点に位置決めする再現性を知っておくことが重要である。

5.4.2 

表面粗さ 

最良の定量分析結果を得るためには,試料の表面粗さを最小にすることが望ましい。

5.4.3 

分析体積 

分析体積は電子プローブの径,試料への侵入深さ,試料中での電子プローブのひろ(拡)がり及び測定

する X 線のエネルギーによって決まる。さらに,分析体積は,特性 X 線と連続 X 線とによって発生する

蛍光効果によってひろ(拡)がることがある。

測定手順 

6.1 

一般 

重要なパラメータは,次の手順に従って決めることが望ましい。

6.2 

プローブ電流 

6.2.1 

測定 

プローブ電流は,最終絞りの後段でファラデーカップを用いて測定する。その他の位置で測定する場合

は最終段絞りの後段との相関をとっておかなければならない。

6.2.2 

プローブ電流密度 

6.2.2.1  プローブ電流の平均密度は,電子プローブ径内の電流分布がガウス関数で近似できることを仮定

して 6.2.2.2 a)又は 6.2.2.2 b)の方法で決定した電子プローブ径及び 6.2.2.3 の方法で計算することができる。

6.2.2.2  電子プローブ径の測定は,次のいずれかによる。 
a)  ナイフエッジに対し直角に電子プローブを走査して二次電子信号のプロファイルをとる。二次電子の

信号強度が最大値の 84 %∼16 %になる幅を電子プローブ径とする。最大値の 84 %∼16 %は誤差関数

の標準偏差の 2σ に相当する(

図 参照)。

b)  アルミニウム酸化物,ジルコニウム酸化物,トリウム酸化物などの蛍光を発する物質に電子プローブ

を照射し,光学顕微鏡を用いて電子プローブ径を測定する。電子プローブ径が 5  μm 以上の場合は,

この方法を用いることが望ましい。

6.2.2.3  プローブ電流密度は,6.2.1 で決まるプローブ電流を 6.2.2.2 で決まる電子プローブ径から計算し

た面積で除して求める。デフォーカスされた円形の電子プローブに対しては,その面積は πd

2

/4 になる。

ここで は電子プローブの直径である。


6

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図 1−電子プローブ径の測定の方法 

6.3 

ピーク計測に関するパラメータ 

6.3.1 

不感時間の補正 

6.3.1.1  6.2.1 に従ってプローブ電流(i)を測定し,計数率(N)を求める。 
6.3.1.2  図 に示すように検量線を作成する。横軸に計数率(N)をとり,縦軸に計数率(N)とプロー

ブ電流(i)との比をとる。

図 2−不感時間による数え落とし 

高計数率(N)のスペクトルと低計数率(n)のスペクトルとの両方を同時に計測することによって,測

定装置の直線性を確認することが望ましい。低計数率では,全測定領域にわたって n/i の比は一定である。

通常 K

α

線を N,K

β

線を n の計測に用いる。

注記  プローブ電流値を正確に測れない場合には,2 個の X 線分光器を用いた X 線強度測定から求め

てもよい(参考文献[2]及び[3]を参照)

6.3.1.3  検量線から勾配(k)及び切片(b)を求める。式(1)を用いて不感時間(τ)を計算する。

b

k

τ

  (1)

誤差関数

測定曲線

真の境界

 16 %

84 %

 
100

二次電子強度

σ

σ

0

  直径

距離

N / i

b

k

N


7

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6.3.1.4  式(2)を用いて真の計数率(N

0

)を求める。

τ

×

N

N

N

1

0

  (2)

精度の良い測定を行うためには不感時間の補正[(N

0

N)/N

0

]×100 は,5 %を超えない範囲に制限するこ

とが望ましい。

6.3.2 

特性 線スペクトルの波長分解能 

6.3.2.1  波長走査による X 線信号強度の計測から分析元素の特性 X 線スペクトルを求める。 
6.3.2.2  検出した特性 X 線の波長分解能は,バックグラウンドを差し引いた後(6.3.3 参照)の半値幅を

特性 X 線の波長分解能として求める(

図 参照)。

図 3FWHM の定義 

6.3.3 

バックグラウンド消去法 

6.3.3.1  測定した特性 X 線ピークは,特性 X 線の真の強度とバックグラウンド強度との和であるため,

特性 X 線ピークの真の強度は測定した X 線ピーク強度からバックグラウンド強度を差し引いて求める。

6.3.3.2  6.3.2.1 に従って波長対 X 線強度スペクトルを測定する。 
6.3.3.3  対象とするピークの両側で,ピークにごく近い波長位置で,ピーク由来の裾野強度がピークの最

高強度の 1 %未満となり,かつ,副次ピーク又は妨害ピークを避けるように波長位置を選ばなければなら

ない。選定した二つのバックグラウンド位置を直線で結ぶことによってピーク位置でのバックグラウンド

強度を算出し,測定ピーク強度からバックグラウンド強度を差し引くことによって特性 X 線の真の強度を

求める。

注記 1  波長に対してバックグラウンドが急激に変化する場合又は干渉するピークがバックグラウン

ド位置の選定を妨害する場合には,6.3.3.3 における手順を適用することが難しい。その場合

はカーブフィッティング法を用いるか,又は注目する試料に可能な限り近い平均原子番号を

もち,かつ,目的としている元素を含有しない材料を測定することによってバックグラウン

ドを算出する方法がある。

注記 2  バックグラウンド強度を計数する時間は,要求する精度に応じて十分であることが望ましい。

注記 3  微量成分については,バックグラウンドの決め方が分析結果に大きな影響を与える可能性が

あるので,測定精度を詳細に報告することが望ましい。

1/2

1/2

  バックグラウンド

    波長

検出

X

線強度

FWHM


8

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6.4 

試料に関するパラメータ 

6.4.1 

一般 

分析体積は,ルーティン分析の場合にはその都度求める必要性はなく,以前の類似した分析を参照すれ

ばよい。介在物,細粒物質又は塗装材のような特殊分析では分析の有効性の判定に重要なため個々に計算

することが望ましい。これらの分析においては,分析深さ,分析面積及び分析体積は,6.4.26.4.4 で与え

られる情報で計算できる。計算の方法と結果は分析結果の報告書に記載するのが望ましい。分析面積,分

析深さ及び分析体積の算出方法は,それぞれ

附属書 A∼附属書 で与えられる。

6.4.2 

分析面積 

分析面積は,使った全てのパラメータを明記した上で,適切な方法によって算出することが望ましい。

その方法の例を

附属書 に示す。

6.4.3 

分析深さ 

分析深さは,使った全てのパラメータを明記した上で,適切な方法によって算出することが望ましい。

その方法の例を

附属書 に示す。

6.4.4 

分析体積 

分析体積は,6.4.2 で規定した分析面積と 6.4.3 で規定した分析深さとで決める。

分析体積のより精密な値は,

附属書 に示した方法を用いて算出することが望ましい。

分析結果の報告 

装置及び個々の測定の記録は,必要であれば,JIS Q 17025 の 5.10(結果の報告)に従って,次に示す項

目を報告することが望ましい。

a)  この規格の名称又は規格番号 
b)  校正又は試験を行った試験所の名称及び所在地 
c)  顧客の名称及び所在地(必要に応じて)

d)  校正又は試験の受付日,及び校正又は試験の実施日(必要に応じて) 
e)  装置の形式及び識別番号 
f)  試料調製法(必要に応じて)

g)  加速電圧 
h)  プローブ電流 
i)

検出した X 線ピーク

j)  装置の X 線取出し角 
k)  分析体積の算出方法,必要に応じて附属書 の式(A.1)で用いた定数の値   
l)

校正,又は試験結果における精度の評価(必要に応じて)

m)  この校正方法又は試験方法との違い,及び追加項目又は削除項目の詳細   
n)  報告書の日付並びに報告責任者の氏名及び職位


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附属書 A

(参考)

分析面積の算出方法

波長分散 X 線分析において,分析面積の決定は本質的な問題ではないが,粒子,微小領域で偏析のある

材料又は層状の試料で特に有用である。着目する特性 X 線を励起させるのに十分なエネルギーをもった電

子のおおよその面積を算出する様々な方法が文献にある。いずれの方法も分析面積の算出に使うことがで

きる。

分析面積 A は,次の式によって求める。

2

2

 d

A

π

  (A.1)

ここに,

d: 次の方法で,計算又は評価された直径(μm)

a)

  モンテカルロ法(

附属書 C

参照)

b)

  式(A.2)を適用して決められた分析面積の直径を用いて分析面積が計算できる。

式(A.2)は,電子の侵入についての拡散モデル及び定数を 0.025 とした式(B.1)に基づいて求められる。

m

e

1

2

.

2

Z

D

d

×

γ

γ

  (A.2)

ここに,

3

2

187

.

0

Z

γ

Z

m

E

E

Z

ρ

a

7

.

1
k

7

.

1

i

m

)

(

025

.

0

×

d: 分析面積の直径(μm)

D

e

電子プローブの直径(μm)

Z

m

分析深さ(μm)

Z: 電子プローブ照射点の平均原子番号

E

i

電子プローブのエネルギー(keV)

E

k

臨界励起エネルギー(keV)

m

a

電子プローブ照射点の平均原子量

ρ: 電子プローブ照射点の質量密度(g/cm

3

c)

  次の実験的方法によって,バイメタル系を用いて分析面積の直径を求めることができる。

めっきによって形成され,類似の質量密度をもち,内部拡散のない,互いに蛍光励起効果の小さい

二つの物質を張り合わせた試料を準備する。例えば,Ni/Cu がある。

二つの異なる物質の接合面に垂直な電子プローブの移動距離の関数として特性 X 線強度を測定する。

電子プローブの替わりに試料ステージを移動させてもよい。

一つの特性 X 線の信号強度が信号強度の最大値の 84 %から 16 %までに低下する間の移動距離を決

め,この距離を検出される X 線信号の直径として用いる。

この移動距離は,

図 A.1

に示される誤差曲線の標準偏差(σ)の 2 倍に等しい。

注記

  この方法は,電子プローブ径が電子プローブのひろ(拡)がりより十分大きくない限り,測定

に用いた特定の物質の組合せにだけ適用が可能である。


10

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図 A.1

分析面積の評価 

誤差関数

測定曲線

真の境界

 16 %

84 %

 
100

   

検出

X

強度(任意単

位)

σ

σ

0

  直径

距離


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附属書 B

(参考)

分析深さの算出方法

波長分散 X 線分析において,分析深さの決定は本質的な問題ではないが,粒子,微小領域で偏析のある

材料又は層状の試料で特に有用である。着目する特性 X 線を励起させるのに十分なエネルギーをもった電

子のおおよその浸透深さを算出する様々な方法が文献にある。いずれの方法も分析深さの算出に使うこと

ができる。次に三つの方法を概説する。しかしながら,正確な分析深さ(分光器によって検出された特性

X 線の 90 %以上が発生する深さに限定する。)は,特に低エネルギー放射線又は大きな原子番号素材によ

って吸収された X 線,発生した特性 X 線及び蛍光 X 線の深さ分布によって顕著に影響される。他の方法

もまた使われるかもしれない。

a)  Φ(ρZ)表現

(参考文献[4]を参照)

b)  モンテカルロシミュレーション

附属書 C

参照)

c)  多数の実績結果に基づく式(B.1) 

Z

m

E

E

const

Z

ρ

a

7

.

1
k

7

.

1

i

m

)

(

.

×

×

  (B.1)

ここに,

Z

m

分析深さ(μm)

E

i

電子プローブのエネルギー(keV)

E

k

臨界励起エネルギー(keV)

m

a

電子プローブ照射点の平均原子量

ρ: 電子プローブ照射点の質量密度(g/cm

3

Z: 電子プローブ照射点の平均原子番号

i

m

C

m

i

a,

i

a

i

Z

C

Z

i

i

C

i

元素 の質量濃度

m

a,i

元素 の原子量

Z

i

元素 の原子番号

注記

  式(B.1)中の定数は,通常 0.033 又は 0.025 である。もし定数として 0.025 を使用するときは,

電子プローブによって直接励起される特性 X 線のおよそ 95 %は深さ Z

m

より内側で発生する

(参考文献[5]及び[6]を参照)


12

K 0189

:2013

附属書 C 
(参考)

モンテカルロ法を用いた X 線分析体積の算出方法

電子プローブが試料上に照射されると,X 線は電子浸透のため大きな体積から発生する。電子プローブ

マイクロ分析において,この分析の分解能を知るためにこの体積を知ることは重要である。体積は加速電

圧,特性 X 線の種類などに依存している。実験的な方法,輸送方程式に基づいた分析的な方法,及びモン

テカルロ法のような様々な方法がこれまでに提案されている。次に概説するモンテカルロ法は,擬似乱数

を用いて無作為抽出による統計的手法によって,電子散乱理論に基づいた電子軌道をシミュレーションす

る。この方法はどのような固体物質にでも適用でき,どのようなタイプの実験条件でも処理することがで

き,相対的にシミュレーションプログラムしやすい。ここでは,最も簡単なモデルとしてシングルスキャ

ッタリングモデル(single scattering model)を説明する。他の方法を用いる場合がある。

C.1  モンテカルロ法 

モンテカルロ法は,次に示す理論及び算出法を用いて,固体物質中の電子の軌跡をシミュレーションす

る。

a)  主な基本式

微分散乱断面積(電子雲の遮蔽効果を考慮したラザフォード散乱理論に基づく。

(参考文献[7]を参照)

2

i

2

i

i

4

i

)

cos

2

1

(

4

)

1

(

θ

β

E

Z

Z

e

d

   (C.1)

ここに,

Ω: 散乱立体角

e: 電子の電荷

Z

i

元素 の原子番号

E: 電子の運動エネルギー(eV)

スクリーニングパラメータ(参考文献[8]を参照)

E

Z

β

3

/

2

i

i

44

.

5

  (C.2)

阻止能(Bethe の式に基づく。

(参考文献[9]を参照)

×

×

×

i

i

i

i

4

166

.

1

2

J

E

In

A

Z

C

E

N

ρ

e

dS

dE

π

=−

  (C.3)

平均イオン化エネルギー(参考文献[10]を参照)

19

.

0

i

i

i

5

.

58

76

.

9

Z

Z

J

   (C.4)

b)  散乱過程

弾性散乱確率

Ω





×

Ω

d

σ

d

d

θ

P

i

1

)

,

(

ϕ

   (C.5)

ここに,

θ,φ: 入射電子の散乱角度(

図 C.1

参照)

σ

i

全弾性散乱断面積

角度 φ は,次のように求める。

φ=2πR

1

  (C.6)

ここに,

R

1

一様乱数  0≦R

1

≦1

角度 θ は,次のように求める。


13

K 0189

:2013

θ

P

θ

d

θ

P

θ

F

θ

)

(

sin

2

)

,

(

)

(

×

Ω

Ω

π

ϕ

  (C.7)

)

(

1

)

(

2

1

cos

i

i

θ

β

θ

β

θ

F

F

ここに,

F(θ): 弾性散乱確率を,角度範囲 0 から与えられた角度 θ まで

積分した累積密度関数。一様乱数 0≦F(θ)≦1 で与えられ
る。

電子が弾性散乱を受けた後,次の弾性散乱を受けるまでに電子が進む距離

ΔS=−L×In(R

2

)  (C.8)

ここに,

R

2

一様乱数,0≦R

2

≦1

電子が弾性散乱を受けた後,次の弾性散乱を受けるまでの電子のエネルギー損失

ΔE=ΔS×|dE/dS|  (C.9)

図 C.1

散乱過程におけるθ及び φ の定義 

C.2  イオン化量に基づく 線発生量の評価 

X 線量子数

QL

m

N

ρ

C

n

i

a,

i

i

×

イオン化断面積(参考文献[11]を参照)

i

2

ci

i

i

i

1

)

1

exp(

35

.

2

65

.

1

4

.

U

E

U

U

In

const

Q

×

×

  (C.10)

平均自由行程

)

/

(

1

i

a,

i

i

m

σ

C

ρN

L

  (C.11)

ここに,

U

i

オーバーボルテージレシオ(E/E

ci

E

ci

臨界励起エネルギー(eV)

ρ: 電子プローブ照射点の質量密度

N: アボガドロ数

C

i

元素 の質量濃度

m

a,i

元素 の原子量

C.3 X 線発生分布 

X 線発生分布は,適切な X 線吸収パラメータを取り入れて,式(C.1)∼式(C.11)を用いて計算できる。

C.2

にモンテカルロシミュレーションによる分析体積評価の例を示す。


14

K 0189

:2013

図 C.2

モンテカルロシミュレーションによる分析体積評価の一例 

(電子線エネルギー/10 KeV

材料/Si

Si Kα 

参考文献 

[1] MCFARLANE,A.A.,Micron,3,1972,p.506

[2] HEINRICH,K.F.J.,Electron Beam X-ray Microanalysis,p.142,Van Nostrand Reinhold Company,

New York,1981

[3] REED,S.J.B.,Electron Microprobe analysis,Second edition,p.101,Cambridge,Cambridge

University Press,1993

[4] POUCHOU,J.L. and PICHOIR,F.,Electron Probe Quantitation,Ed Heinrich and Newbury,

Pienum Press,New York,(1991)pp.31-75

[5] CASTAING,R.,Advances in Electronics and Electron Physics,vol.13,p317,Academic Press,

New York,1960

[6]  SOEJIMA, H. Surface Science, 1979, vol.85, p 610.

[7]  MURATA, K.,MATSUKAWA, T. and SHIMIZU, R. Jpn. J. Appl. Phys., 1971,vol. 10, p678.

[8]  NIGAM, B.P., SUNDARESEN, M.K. and WU TA-YOU. Phys. Rev. 1959, vol. 115, p 491.

[9] BETHE,H.A.,Ann. Physik Lpz. 1930,vol.5,p.325

[10] BERGER M.J. and SELTZER S.M.,N.A.S.N.R.C. Publ. 1133,Washington D.C.,205(1964)

[11] WORTHINGTON,C.R. and TOMLIN,S.G.,Proc. Phys. Soc. 1956,vol.69,p.401


附属書 JA

(参考)

JIS

と対応国際規格との対比表

JIS K 0189:2013  マイクロビーム分析−電子プローブマイクロ分析−波長分散 X 線
分光法のパラメータの決定方法

ISO 14594:2003  Microbeam analysis−Electron probe microanalysis−Guidelines for 
the determination of experimental parameters for wavelength dispersive spectroscopy

(I)JIS の規定 (II)

国際規格

番号

(III)国際規格の規定 (IV)JIS と国際規格との技術的差異の箇条

ごとの評価及びその内容

(V)JIS と国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策

箇 条 番 号

及び題名

内容

箇条番号

内容

箇条ごとの

評価

技術的差異の内容

2  引 用 規

3  用 語 及
び定義

3.5  プ ロ ー ブ 電 流
(probe current)

 3.5

beam

current

変更

JIS では beam を probe に置き
換えた。技術的差異はない。

広義な beam よりも electron probe の
名称にある狭義な probe に統一し

た。probe は探針とも訳せるが訳語

よりもこのままで使う方がなじま
れているのでプローブとした。

 3.6

プローブ電流密

度(probe current 
density)

3.6

beam current density

変更

JIS では beam を probe に置き
換えた。技術的差異はない。

広義な beam よりも electron probe の

名称にある狭義な probe に統一し

た。probe は探針とも訳せるが訳語
よりもこのままで使う方がなじま

れているのでプローブとした。

4  略語

4

WD:Wavelength

Dispersive

削除

JIS では削除した。

略語を使わず,日本語を用いるので

不用となった。

5  測定パ
ラメータ

5.1  
パ ラ メ ー タ の 扱 い

に関する規定

 5.1

JIS にほぼ同じ

変更

JIS では指示又は要求の規定
を表す表現形式に変更した。

技術的差異はない。

ISO 規格ではこの規格をガイドラ
インとしたため,規定の仕方が緩い

表現となっている(should による規

定)

 5.2.1

加速電圧の範囲は,
2 kV∼30 kV として
いる。

 5.2.1

ビームエネルギーの範囲
は 2 keV∼30 keV として

いる。

変更

技術的差異はない。

実質的には,ビームエネルギーの校
正はできないので,加速電圧の校正

を行う。

15

K 01

89

201

3


(I)JIS の規定 (II)

国際規格

番号

(III)国際規格の規定 (IV)JIS と国際規格との技術的差異の箇条

ごとの評価及びその内容

(V)JIS と国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策

箇 条 番 号

及び題名

内容

箇条番号

内容

箇 条 ご と

の評価

技術的差異の内容

5  測定パ
ラメータ 
(続き)

5.2.2  
プ ロ ー ブ 電 流 設 定
に関する規定

 5.2.2

JIS にほぼ同じ

変更

JIS では指示又は要求の規定を
表す表現形式に変更した。技術
的差異はない。

ISO 規格ではこの規格をガイドラ
インとしたため,規定の仕方が緩い
表現となっている(should による規

定)

 5.3.2

X 線取出し角につい
ての規定

 5.3.2

JIS にほぼ同じ

変更

JIS では指示又は要求の規定を
表す表現形式に変更した。技術
的差異はない。

ISO 規格ではこの規格をガイドラ
インとしたため,規定の仕方が緩い
表現となっている(should による規

定)

 5.3.4

波高分析器

 5.3.4

counting

chain  変更

技術的差異はない。

基本的な機能回路単位による表現

を具体的な機能ユニット単位の一
般名称を用いた表現に変更した。

 5.3.5

ピーク位置(波長)

設定に関する規定

 5.3.5

JIS にほぼ同じ

変更

JIS では指示又は要求の規定を
表す表現形式に変更した。技術

的差異はない。

ISO 規格ではこの規格をガイドラ
インとしたため,規定の仕方が緩い

表現となっている(necessary によ
る規定)

 5.3.6

バ ッ ク グ ラ ウ ン ド

補正に関する規定

 5.3.6

JIS にほぼ同じ

変更

JIS では指示又は要求の規定を
表す表現形式に変更した。技術

的差異はない。

ISO 規格ではこの規格をガイドラ
インとしたため,規定の仕方が緩い

表現となっている(need による規
定)

JIS と国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 14594:2003,MOD

注記 1  箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。

    −  削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。

    −  変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。

注記 2  JIS と国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。

    −  MOD……………  国際規格を修正している。

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