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K 0166:2011  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 2 

2 引用規格························································································································· 2 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 記号及び略語 ··················································································································· 3 

5 校正方法の概要 ················································································································ 4 

6 エネルギー軸の目盛の校正手順 ··························································································· 7 

6.1 標準物質の入手 ············································································································· 7 

6.2 標準試料の取付け ·········································································································· 7 

6.3 標準試料の清浄化 ·········································································································· 7 

6.4 エネルギー軸の校正をする分光器の設定条件の選択 ······························································ 8 

6.5 分光器の操作 ················································································································ 8 

6.6 最初及びその次からの校正手順の選択················································································ 9 

6.7 ピークの運動エネルギーに関する繰返し性の標準偏差及び直線性の測定 ··································· 9 

6.8 ピークの運動エネルギーの繰返し性の標準偏差の計算 ·························································· 11 

6.9 適切な参照運動エネルギーの決定····················································································· 14 

6.10 運動エネルギーの直線性の点検 ······················································································ 14 

6.11 校正誤差を定期的に決めるための手順 ············································································· 16 

6.12 分光器のエネルギー軸の目盛を補正する手順 ···································································· 16 

6.13 校正の時期 ················································································································· 19 

6.14 校正時期の決定 ··········································································································· 19 

附属書A(規定)0.1 eVのエネルギー間隔のピークにサビツキー・ゴーレイ法による 

  平滑化を1回適用する場合の最大点数 ··············································································· 20 

附属書B(規定)簡易的な計算手法を用いた最小二乗法によるピークの運動エネルギーの決定 ··········· 21 

附属書C(参考)不確かさの計算法 ························································································ 23 

附属書D(参考)測定した運動エネルギーの不確かさの考え方····················································· 25 

附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 29 

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(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標

準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業

大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格 

JIS 

K 0166:2011 

表面化学分析−高エネルギー分解能をもつ 

オージェ電子分光器による元素分析及び 

化学結合状態分析のためのエネルギー軸の校正方法 

Surface chemical analysis-High-resolution Auger electron spectrometers- 

Calibration of energy scales for elemental and chemical-state analysis 

序文 

この規格は,2002年に第1版として発行されたISO 17974を基とし,技術的内容を変更して作成した日

本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一

覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。 

オージェ電子分光法(以下,AESという。)は,材料の表面分析の分野で広く用いられている。試料中

の元素(水素及びヘリウムを除く。)は,元素のエネルギー位置の表又はスペクトルハンドブックの情報を

参照して,ピークエネルギー及びピーク形状から同定される。元素の化学結合状態に関する情報は,測定

されたオージェ電子ピークの化学シフトを参照状態のスペクトルのシフトと比較することで推定される。

化学結合状態の同定は、0.1 eV以下の確からしさ(appropriate accuracy)での化学シフトの測定に基づいて

行われる。その場合,個々の測定での必要性及び利用可能な参照情報を活用するための,適切な確からし

さをもっている。したがって,オージェ電子分光器(以下,分光器という。)のエネルギー軸の校正が必要

となり,しばしば0.3 eV以下での不確かさが要求される。 

この規格では,純金属の銅,アルミニウム又は金のダイレクトスペクトルを測定することによって,分

光器を,0.2 %以下の相対分解能で運動エネルギーの校正を行うことを規定する。金を用いた場合は0 eV

〜2 250 eVの領域の校正が,アルミニウムを用いた場合は0 eV〜1 550 eVの領域の校正が可能となる。 

伝統的にオージェ電子の運動エネルギーは,真空準位を基準としており,この基準はいまだ多くの分析

担当者に採用されている。しかし,真空準位の定義は明確でなく,分光器間では0.5 eV以上の差が生じ得

る。真空準位基準での測定は,一般的に元素同定には曖昧さをもたらさないが,化学結合状態に関する高

分解能測定には不確かさをもたらす可能性がある。このため,AESはX線光電子分光法と同様にフェルミ

準位基準となるように分光器が設計され,真空準位基準に比べて典型的には4.5 eV高い運動エネルギー値

を与えることとなっている。この規格の目的は,フェルミ準位基準で運動エネルギーを決定することであ

る。 

ISO/IEC 17025 [1] の適用範囲にある分析のため,又は他の目的のために校正された分光器は,校正に伴

う不確かさを明示することが必要である。分光器は,ある許容限界±δの範囲内で運動エネルギー測定を

実現するための校正がされていることとなる。δの値は,適用される測定及び分光器に依存するために,

この規格では定義していない。それは,この規格を用いた経験,分光器校正の安定性,適用する運動エネ

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ルギー測定に要求される不確かさ,及び校正に関わる手間を基に分析者が決めるものである。この規格は,

選択され得るδ値に対する情報を与えており,典型的にはδは0.2 eV又は繰返し性の標準偏差σRの約4

倍以上となる。 

校正される分光器に対して,分光器の時間に対するドリフトも考慮した場合,参照運動エネルギーから

の発散及び信頼性95 %の不確かさに拡張された校正値は,設定された許容値を超えてはならない。分光器

が校正適用範囲外になりそうな場合は,再校正が必要となり,校正のための測定を行い,測定値と参照値

との差異を減じる対応が必要となる。ここで,差異がゼロとなる必要はないが,少なくとも通常は分析業

務に要求される許容限界の数分の一になる必要がある。 

この規格は,分光器の可能性のある分光器故障の全てに関して扱うものではない。それは,非常に長い

時間を費やし,専門家としての知識及び技能が要求されるからである。しかし,AES分光器のエネルギー

軸の校正において基本的で共通的な事項は扱っている。 

適用範囲 

この規格は,表面における元素及び化学結合状態の分析に使用するオージェ電子分光器のエネルギー軸

を校正するための方法について規定する。 

また,この規格は,中間的なエネルギーにおけるエネルギー軸の直線性を試験し,低い運動エネルギー

及び高い運動エネルギーの値での校正の不確かさを確認し,エネルギー軸の小さいドリフトを補正するた

め,並びにエネルギー軸の校正の拡張不確かさを95 %の信頼性で定義するため(この不確かさは,機関間

の検討で見いだされた挙動の寄与を含んではいるが,起こり得る故障の全てを含んではいない。)に,校正

のスケジュールについても規定する。 

この規格は,スパッタクリーニングするためのイオン銃が組み込まれた分光器にだけ適用し,エネルギ

ー軸の誤差が運動エネルギーに非線形な関係をもつ場合には適用しない。また,ΔE/E一定モードで0.2 %

又はΔE一定モードで1.5 eVより大きな分解能の場合,要求される許容限界が±0.05 eV以下の場合,又は

電子銃が5 kV〜10 kVの間の加速電圧範囲だけで動作する場合も適用外である。この規格は,分光器製造

業者が指示する測定可能なエネルギー点の全領域を確認するために十分な校正検査を提供するものではな

い。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 17974:2002,Surface chemical analysis−High-resolution Auger electron spectrometers−

Calibration of energy scales for elemental and chemical-state analysis(MOD) 

なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”

ことを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 0147 表面化学分析−用語 

注記 対応国際規格:ISO 18115:2001,Surface chemical analysis−Vocabulary(IDT) 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0147による。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

記号及び略語 

この規格で用いる主な記号及び略語は,次による。 

AES:オージェ電子分光法 

A:オージェ減速因子 

a:エネルギー軸の測定誤差 

b:ゼロオフセットの測定値(eV) 

c:Rの係数 

d:R2の係数 

Ecorr:あるEmeasに対応した正しい運動エネルギー値(eV) 

Eelem:頻繁に測定される元素の運動エネルギーで,表示される運動エネルギーが校正後正しく読み出さ 

れるように設定されたもの(eV)。 

Emeas:運動エネルギーの測定値(eV) 

Emeas, n:ピークnの運動エネルギーの測定値(eV) 

Emeas, ni:ピークnの運動エネルギーの測定値の集合の一つ(eV) 

Eref, n:ピークnの運動エネルギーの基準値(eV) 

0

ref,n

E

:ピークnの基準運動エネルギー値(eV) 

FWHM:(full width at half maximum):半値幅(eV) 

i:ピークの7回繰返し測定におけるスペクトルの番号 

j:新しいピークの測定繰返し回数 

k:繰返し性及び直線性決定のためのCu M2, 3VV,Cu L3VV及びAu M5M6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3の測定

繰返し回数 

m:通常の校正のためのCu M2, 3VV,Au M5M6, 7N6, 7,又はAl KL2, 3L2, 3の測定繰返し回数 

n:ピーク同定における指標 

R(relative energy resolution):相対エネルギー分解能 ΔE/E(百分率で表記),ここで、Eは、電子の運

動エネルギー(eV) 

tx:信頼性95 %を与える両側検定のx次の自由度のtパラメータ値 

U95:信頼度95 %で校正された軸全体の不確かさ(eV) 

)

(

c

95E

U

:エネルギー軸の完全な直線性を仮定した場合の運動エネルギーEにおけるCu M2, 3VV, 

Au M5M6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3を用いた校正から求められる信頼度95 %の不確かさ(eV) 

I

95

U:信頼度95 %でのε2の不確かさ(eV) 

cI

95

U:直線性の誤差がない場合の信頼度95 %での校正の不確かさ(eV) 

Δn:校正対象ピークの基準運動エネルギーに対する平均測定値のオフセット(n=1,2,3,4)(eV) 

ΔEcorr:正しい運動エネルギーを与えるための校正後にEmeasに加えられる補正値 

Δφ:Δ1及びΔ4の平均値 

δ:信頼度95 %でのエネルギーの校正における許容限界値(eV) 

ε2:Cu L3VVの直線性誤差の測定値(eV) 

σR:σR1,σR2及びσR3,又はσR1,σR2及びσR4のいずれかの全体の標準偏差の最大値 

σRn:n番目のピークの繰返し性の標準偏差 

σRnew:新しいピークの繰返し性の標準偏差(eV) 

附属書だけに用いられる記号は,附属書Bによる。 

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校正方法の概要 

この規格によって分光器を校正するためには,銅及び金の組合せ,又はその代わりに銅及びアルミニウ

ムの組合せからなる標準物質薄片を用いて選択したオージェ電子ピークの測定を行うので,あらかじめこ

れらを入手しておく。これらの標準試料は,実際の分析で用いられる運動エネルギーの高い領域及び低い

領域の端に近いオージェ電子ピークを得るために選ばれたものである。エネルギー軸の直線性を検査する

ためには,中間のエネルギー領域にあるピークを用いる。これらのピークの運動エネルギーは、この目的

に適用できることが十分に立証されており,適切な参照データが公表されている。 

作業の構成及び操作手順を,図1に示す。 

これら校正の最初の段階については,6.1〜6.5に規定する。初めての校正においては,選択した分光器

設定に対して分光器の動作特性が分からないと仮定する。したがって,6.7によって,Cu M2, 3VV,Cu L3VV

及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3いずれかの三つのピークの運動エネルギーを一連で測定するが,その

測定を7回繰り返す。これらのデータからピークの運動エネルギーの繰返し性の標準偏差σRが得られる。

この標準偏差には,分光器における電源の安定性,測定試料の位置に対する測定ピークエネルギーの感度

及びピークにおける統計的ノイズ成分が関係している。これらのデータを得るに当たっては,統計的ノイ

ズ成分が比較的小さくなるように,測定条件を規定する必要がある。分光器における電源の安定性及び測

定試料の位置に対する測定ピークエネルギーの感度の寄与は測定する運動エネルギー値によっても変わる

ので,σR測定した三つのピークから得られる繰返し性の標準偏差の最大値を選んでσRに充てる。σRの値

は,試料の位置合せ手順に影響されることがある。6.7.1では,一貫した試料の位置合せ手順を用いること

が要求されており,最終的な校正は,この位置合せ手順を用いた試料の位置で行ったものだけが有効であ

る。 

Au M5N6, 7N6, 7ピーク強度は弱い。特に,5 kVの加速電圧では弱く,ピークエネルギーの参照値は5 kV

及び10 kVの加速電圧を用いた場合しか公表されていない。したがって,信号対ノイズ比が不十分な分光

器,2 000 eV以上の運動エネルギーを掃引できない,又は5 kV若しくは10 kVの加速電圧で操作できない

分光器では,代わりにAl KL2, 3L2, 3ピークを用いる。Au M5N6, 7N6, 7ピークを用いることで,0〜2 250 eVの

運動エネルギー範囲が校正可能となり,Al KL2, 3L2, 3ピークを用いた場合は上限が1 550 eVに制限される。 

分光器に関する調査では,ピークエネルギーのいかなる測定誤差もピークの運動エネルギーに対してお

おむね比例して増加している。この規格で規定する式は,一般的な状態のときに限って有効である。さら

に,運動エネルギーの測定値と参照値との差が小さく,かつ,運動エネルギーに対して比例して増加する

か,又はそのように近似できるという原則に基づいている。分光器が故障している場合はこの直線性が失

われていることもあるので,中間のエネルギー領域でどの程度の直線性が成立しているかという点につい

て確認する必要がある。検査法を6.7及び6.10に示す。簡便性の観点から,この検査法ではCu L3VVピー

クを用いる。 

直線性の検査結果が妥当であるなら,エネルギー軸の校正は,6.11に示す簡単な校正手順が利用できる。

エネルギー軸をどのように校正するかは,実際に分光器がどのように校正されているかに依存するので,

幾つかの作業方法を6.12に示す。また,分析者は,測定する必要のあるピークの運動エネルギーにどの程

度の不確かさを見込むかを考慮しておく必要がある。この規格で用いる幾つかの値を表1に示す。これら

の値は,信頼水準95 %における許容限界±0.2 eV及び±0.3 eVの場合の実例である。表1において校正周

期内における装置変動の許容範囲は重要である。したがって,図1に示すように,校正周期は6.14に示す

分光器変動の測定に基づいて決定する。通常のエネルギーの校正は,適切な校正周期で行うようにする。

ここで,適切な校正周期とは,エネルギー軸の誤差を要求する許容誤差の範囲内に保持できる期間である。 

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図1−校正方法の操作手順 

6.1 標準物質の入手 

6.2 標準試料の取付け 

6.3 標準試料の清浄化 

サーベイスペクトルの記録 

6.4 エネルギー軸の校正をする分光器の設定条件の選択 

6.5 分光器の操作 

6.11 通常の校正誤差の決定 

6.12 分光器のエネルギー軸の補正 

6.14 個別の校正ごとの校正時期の決定 

決められた校正時まで待って, 

次回の校正を行う 

6.6 設定 

又は仕様変更後の 

最初の校正か? 

6.7 運動エネルギーの繰返し性及び直線性の測定 

6.8 運動エネルギーの繰返し性の計算 

6.9 参照スペクトルのピークの運動エネルギー値の決定 

6.10 エネルギー軸の直線性の点検 

はい 

いいえ 

6.13 校正間隔は 

決めてあるか? 

はい 

いいえ 

スタート 

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表1−エネルギー軸の校正時の不確かさの見積りにおける各値の計算例 

項目 

記号 

式及び 
算出元 

例 

説明 

要求される精確さ 

(高) 

要求される精確さ 

(低) 

許容限界 eV 

±δ 

使用者が選択 

±0.2 

±0.3 

使用者選択, 
要求する精確さ,及び
通常の校正時に取得可
能なスペクトル数によ
って決まる。 

繰返し性の標準
偏差 eV 

σR 

式(1) 

0.050 

0.050 

初めての校正時に測定
される分光器の特性値
(6.7参照)。 

スペクトル組の
測定回数 

使用者が選択 

m=1又は2 

m=1 

m=2 

m=1 

m=2 

− 

校正測定の不確
かさ eV 

cl

95

式(12)又は 

式(13) 

0.185 

0.130 

0.185 

0.130 

− 

目盛の非直線性 
eV 

ε2 

式(5)又は式(6) 

0.050 

0.050 

0.050 

0.050 

初めての校正時に測定
される分光器の特性値
(6.7参照)。 

校正後のエネル
ギー軸の不確か
さ eV 

U95 

式(11) 

0.192 

0.139 

0.192 

0.139 

− 

校正周期の内に
許容される最大
変動 eV 

±(δ−U95) 

δ及びU95 

±0.008 

±0.061 

±0.108 

±0.161 

設定限界±δを超えな
いように許容変動範囲
を決める。 

校正周期の最大
値(0.025eV/月と
いう定速変動の
とき) 月 

− 

6.14参照 

0.3 

2.4 

4.3 

6.4 

都合のよい校正間隔を
選択する。ただし,次
の条件を満たす。 
a)この最大値を超えな
い。b) 4か月を超えな
い。c)突発異状にも対
応できるよう,十分な
余裕をもたせる。 

校正周期の選択 
 月 

− 

観測される変
動に基づき使
用者が選択 

非実用
的な選
択肢 

− 

注記 不確かさの信頼水準は,95 %。この例は,使用者の選択が,校正の不確かさ及び再校正までの期間に及ぼす影

響を示す。 

この規格によって校正すれば,校正直後には測定結果が信頼水準95 %となる不確かさで得られることに

なる。エネルギー軸の誤差は,一般的に時間とともに増大するが,測定の質を決定するために分析(管理)

者が選択した許容限界±δを,次の校正までに超えることがあってはならない。表1の表を完成させるこ

とによって,δの適切な値を定めることができる。分光器の能力に関する知識がほとんど若しくは全くな

い場合,分光器製造業者からのデータがこの点に関して不十分な場合,又は要求精度について明確な指針

をもっていない場合には,表1のδを0.2 eVに設定することから始める。この規格に記載した手順で表の

空欄を埋め,δの値が分光器へ適用可能であるかどうか最終的に確認する。適用できなければ,操作手順

を見直し,U95に関係する項目を一つ以上緩めるか,又はδの値を許容できる範囲内で大きくする。 

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δが分光器のエネルギー軸の校正における精確さの許容限界であることは重要な点である。その後の測

定では,ピーク幅が広り,計数された統計量の不十分さ,又は帯電効果によって,運動エネルギー値はδ

より大きな不確かさをもつことになる。附属書Dに,そのような不確かさを報告するときの要領を示す。 

エネルギー軸の目盛の校正手順 

6.1 

標準物質の入手 

運動エネルギー範囲を2 050 eVまでスキャンでき,5 keV又は10 keVのビームエネルギーを用いること

ができる分光器の校正のためには,銅及び金の試料を用いる。その他の分光器では,銅及びアルミニウム

を使う。これらの試料には,少なくとも99.8 %の純度の多結晶体金属で,大きさ10 mm×10 mm,厚さ0.1 

mm〜0.2 mmのはくの形状のものを用いるのがよい。 

試料の清浄化が必要な場合は,銅は1 %硝酸に少し浸した後に蒸留水ですすぐとよい。銅の試料を2,3

日以上空気中に放置した場合は,上記の硝酸に浸すことによって6.3で規定する試料の清浄化が容易にで

きる。 

6.2 

標準試料の取付け 

銅及び金の組合せ,又は銅及びアルミニウムの組合せからなる試料を,同一のホルダ又は別のホルダに,

止めねじ又は他の金属的手段で電気的な導通を確保して固定する。両面粘着テープは用いない。 

注記 試料を取り付けるホルダの材料としては,非磁性材料で,かつ,放出ガスの少ない材料を用い

る必要がある。磁性の強い材料を用いると一次電子線の照射位置が移動したり,又は検出信号

が減少する場合がある。亜鉛を含む合金,黄銅などのホルダ,止めねじ,座金などを用いて,

更に加熱した場合,黄銅などから亜鉛が蒸発して分析室などを汚すため,特に注意が必要であ

る。測定試料として,これらの材料を分析する場合にも,同様の注意が必要である。 

6.3 

標準試料の清浄化 

超高真空にして,イオンスパッタリングによって表面汚染を取り除き,試料を清浄化する。目安は,サ

ーベイスペクトルで酸素及び炭素のオージェ電子ピークが最も強い金属ピークの高さの2 %以下になるよ

うにする。それぞれの試料についてサーベイスペクトル(ワイドスキャン)をとり,存在すべき純元素の

ピークだけであることを確かめる。ここで必要とされる真空度は,6.11が終了するまで,又は一日(どち

らか早い方)に,酸素及び炭素のピーク高さが金属の最も強いピークの3 %を超えないことである。 

この規格に関係する全ての測定は,一日で終わらせる。一日を超える場合には,その日の始めごとに試

料の清浄さを確認する。 

注記1 試料清浄化に適切な希ガスイオンスパッタリング条件は,5 keVのアルゴンイオンでは1 cm2

当たり30 μAで1分間である。 

注記2 汚染の影響は,一般的に金が最も小さく,アルミニウムが最も大きい。 

AESサーベイスペクトルの例を,図2に示す。 

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図2−ΔE/E一定モードで測定した清浄化された銅,金及びアルミニウムのダイレクトサーベイスペクトル 

6.4 

エネルギー軸の校正をする分光器の設定条件の選択 

エネルギー軸の校正をする分光器の条件設定をする。パスエネルギー,減速比,スリット,レンズ調整

など,校正が必要なアナライザ設定のそれぞれの組合せごとに6.4〜6.14に示す校正手順を繰り返す。こ

れらの設定値は,分光器校正の日誌に記録する。 

注記 分光器及びその回路デザインには,様々な種類がある。ある一つの組合せで校正したレンズの

調整,スリット及びパスエネルギーの値はそれ以外の組合せに対しては必ずしも有効ではない。

大多数の分析者は,ある一つの最適な組合せの条件で正確な測定を行う。したがって,この条

件での校正が必要とされる。どのような校正も実際に設定した組合せに対してだけ有効である。 

6.5 

分光器の操作 

重要−高い計数率[3] 又は不適切な検出器の電圧[3], [4] は,ピークのひずみ(歪)を引き起こし,誤ったピー

クエネルギーの値を与える原因になる。 

金の試料を使うときは電子ビームの加速電圧を5 kV又は10 kVとし,もしアルミニウムの試料を用いる

ときは5 kV〜10 kVの範囲内とする。分光器製造業者の説明書又は試験機関の手順書によって分光器を操

作する。分光器は,ベーキングの後で十分に冷えた状態にする。計数率,分光器の掃引速度及びその他の

分光器製造業者が規定したパラメータについて,分光器製造業者が推奨する範囲内で操作していることを

運動エネルギー(eV)

/1

0

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

確認する。検出器の電子増倍管の設定が正しく調整されていることを点検する。多重検出器をもつ分光器

については,分光器製造業者が記述している必要な最適化又は点検を,この校正に先立って確実に行う。 

注記 多くの分光器製造業者が,正確な運動エネルギーの参照が重要である仕事を行う場合は,制御

装置及び高圧電気系統のスイッチを少なくとも4時間前には入れておくことが望ましい。 

6.6 

最初及びその次からの校正手順の選択 

校正において分光器のエネルギー軸の精度を維持するためには,運動エネルギーの再現性,目盛の直線

性の誤差及び校正の間隔の全てを決めておく必要がある。これらの中で決まっていないものがある場合に

は,6.7による。この規格の使用の前に分光器の適切な設定が全て決まっていて,分光器の改造・重要な修

理・移動を行っていない場合には,図1によって直接6.11に進む。 

注記 運動エネルギーの再現性の,“再現性”に対応する対応国際規格での表記は繰返し性

(repeatability)であるが,内容から判断して再現性(reproducibility)と修正した。 

6.7 

ピークの運動エネルギーに関する繰返し性の標準偏差及び直線性の測定 

6.7.1 

ピークの運動エネルギーの繰返し性の標準偏差σRは,6.7.4〜6.7.6によって,Cu M2, 3VV,Cu L3VV

及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3のピークを使って求める。通常この作業は,ある分光器条件で最初に

エネルギーの校正を行う場合に実施する。σRの値は,その既定の分光器条件が選択されたときにだけ有効

な値であり,分析の際の試料の位置決め作業にも強く依存する。常に同じ実験条件を再現するためには,

分光器製造業者が推奨する手順を参考にして決められた手順書によって,試料の位置決め作業を行わなけ

ればならない。6.4に規定するエネルギー軸の校正を必要とするような分光器の設定条件ごとに,この手順

は決められていなければならない。分光器を改造した場合には,上記の作業をやり直す。 

試料の位置決め作業は,分光器のデザイン,試料の種類又は形状,及び分析の内容に依存する。多くの

場合,スペクトルの最大強度が得られる位置を試料の最適位置とみなしている。その最適化作業は複数個

の相互に関連するパラメータを含んでいるため,一貫した最適化の方針が必要となる。分光器をΔE/E一

定モードで使用する場合,ピークのエネルギー値は試料の位置に依存する。特に,低運動エネルギーのピ

ークよりも,高運動エネルギーのピークに対して,その傾向が顕著である。試料の位置決め作業を洗練し

たものにし,繰返し性の標準偏差を小さくするには,6.7の作業を数回行うことが望ましい。 

注記 多くの分光器で,試料の法線方向が入射電子線の方向と一致するように試料を傾斜させること

によって,ピークのエネルギー値が試料の位置に依存する傾向を低減することができる。 

6.7.2 

Cu L3VVオージェ電子のピークを使って,エネルギー軸の直線性を調べる(6.7.4参照)。そのとき,

繰返し性の確認も同時に行えば,手間を省ける上に測定の不確かさも減らすことができる。 

6.7.3 

データの取得は,Cu M2, 3VV,Cu L3VV,Au M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3の順番(6.7.4〜6.7.6を参

照)で7回以上繰り返して行う。 

これらの三種類のピークの詳細については,図3を参照する。 

6.7.4 

銅の試料で,試料法線方向に対して0°〜56°の範囲の角度に放出された電子を検出するように試

料の傾斜角を設定する。手順書によって試料の位置決めを行い,ピークの1チャンネル当たりの信号強度

が106カウントを超えるように,入射電子線の強度と1チャンネル当たりの計測時間とを適切に設定し,

6.4に規定した設定条件でCuのM2, 3VV及びL3VVピークを測定する。エネルギー掃引のステップは,ピ

ークの運動エネルギーを決める方法に依存するが,一般に0.1 eV以下に設定する。エネルギー掃引幅は,

M2, 3VVピークについては,低エネルギー側のピークよりも少なくとも2 eV低いエネルギー値から,高エ

ネルギー側のピークよりも2 eV高いエネルギー値までとする。L3VVでのエネルギー掃引幅については,

ピークよりも2 eV低いエネルギー値から2 eV高いエネルギー値までとする。図2及び図3によって,ピ

background image

10 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ーク位置が正しいことを確認する。 

多くの分光器では,エネルギー掃引の速度を幅広く調整できるが,高速のエネルギー掃引を行うとピー

クの運動エネルギーがシフトすることがある。したがって,実際に使っている掃引速度では,ピークシフ

トを起こしていないことを確認しておく必要がある。 

注記 エネルギーの校正に使うピークの運動エネルギーの参照値が,検出角度によって変わる場合が

ある。この規格では,試料法線方向に対して0°〜56°の範囲の角度で測定されたピークの運

動エネルギーの参照値だけが有効としている。エネルギーの校正の手順としては,この角度制

限を最初から設けている。この範囲を超える角度で測定した場合には,ピークシフトがエネル

ギーの校正に大きな誤差をもたらすことになる。 

6.7.5 

銅の試料を分析する位置から移動し,金又はアルミニウムの試料に交換し,既定の試料の位置決め

手順によって同じ放出角度になるようにセットする。金の試料に交換した場合には,銅の試料の場合と同

じ分光器の設定条件を保ちながら,1チャンネル当たり107カウント以上の信号強度を得るだけの十分な測

定時間をかけてAu M5N6, 7N6, 7のピークを記録する。 

なお,アルミニウムの試料に交換した場合には,1チャンネル当たり106カウント以上の信号強度を得る

だけの十分な測定時間をかけてAl KL2, 3L2, 3ピークを記録する。ピーク位置から低エネルギー側に少なく

とも2 eV,高エネルギー側に2 eVの範囲でエネルギー掃引する。図2及び図3に従って,ピーク位置が

正しいことを確認する。 

6.7.4の分光器の設定条件,すなわち,パスエネルギー,減速比,絞りサイズ,レンズ条件,電子増倍管

の設定,エネルギーステップ及びエネルギー掃引速度をそろえる。通常,エネルギー掃引の開始エネルギ

ー及び終了エネルギー並びにデータ取得時間は,変える必要がある。 

6.7.6 

三つのピークのそれぞれについて七つの独立したデータを得るために,決められた手順に従って

6.7.4及び6.7.5の作業を7回以上繰り返す。このとき,6.8.1 a)によってピークの運動エネルギーを決める

ために広いエネルギー範囲を指定する必要がある場合を除いては,時間を節約するためにエネルギー掃引

幅を減らすことがある。 

a) Cu M2,3VV 

b) Cu L3VV 

図3−オージェ電子ピークの参照スペクトル 

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

background image

11 

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c) Au M5N6,7 N6,7 

d) Al KL2,3L2,3 

 a 

参照スペクトル 

最大ピークに近い領域をエネルギー軸方向に拡大表示したもの。それぞれのピークの横に書かれた数値は 
拡大率を示している。 

図3−オージェ電子ピークの参照スペクトル(続き) 

6.8 

ピークの運動エネルギーの繰返し性の標準偏差の計算 

6.8.1 

Cu M2, 3VVのピークは次のa)に規定する方法で,その他のピークはa)又はb)に規定する方法でピ

ークエネルギーの測定値を決定する。 

a) Cu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3のピークなどに対応する第一の方法では,バックグラ

ウンドから最大ピーク高さの80 %かそれを少し超える程度の強度の位置に,ピークを横断するように

水平な弦を引き,その中点を決める。そして,3本以上の数の弦を80 %〜100 %強度の中間にほぼ等

間隔で線を引く。図4のd)及びf)に示すように,それぞれの弦の中点をピーク付近の測定データをな

るべく通るように引かれた直線との交点がピークエネルギーとなる。これをグラフから読み取るか,

又は4点以上の中点による最適化手法で計算して求める。 

図4のc)及びe)に示すCu M2, 3VVのピークでは,ピークとピークとに接線を引く。次にピークと谷

とのほぼ50 %の強度の位置でピークトップの接線と平行に線を引く。そして,その間を3本以上の数

の平行な翼弦をほぼ等間隔で引く。次に,図4のc)及びe)に示すようにスペクトルAとスペクトルB

との翼弦が交差してできるそれぞれの弦の中点を探す。i番目のスペクトルのこれらの中点Ai及び中

点Biは,それぞれが,ほぼ,61.3 eV及び63.4 eVにある。次に,それぞれの接線のAiとBiとの中点

をMiとする。全てのMiのエネルギーをグラフから読み取り,一番上の接線に投影するか,コンピュ

ーターを用いて,四つ以上のMiを最適化フィッティングする。この値が,Cu M2, 3VVピークの参照値

に対応する測定されたエネルギーとなる。 

三次又は二次のサビツキー・ゴーレイ法(Savitzky and Golay smoothing)[5] で平滑化したデータを用

いれば,この方法の精度はよくなる。このときのデータ間隔は,バックグランドからのピーク最大強

度の半分の位置での半値幅(FWHM)の1/2に等しいか又はそれより狭い範囲において処理を行う。

図4のe)及びf)では,それぞれ9点及び7点の平滑化処理を行っている。Cu M2, 3VVの二重項のピー

クの幅は,それぞれ2.0 eVとしている。サビツキー・ゴーレイ法による平滑化処理を行う場合に扱う

データ点数の最大値は,分光器のそれぞれの相対分解能ごとに附属書Aに規定している。 

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

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b) Cu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3のピークなどに対応する第二の方法では,ピークトッ

プ周辺のデータを放物線の最小二乗法でカーブフィットして求める。選択したデータポイントは最大

強度の両側におよそ同じ点数を取り,バックグラウンドから測ったピーク強度の80 %〜85 %の領域で

カーブフィットを行う。用いているシステムに最小二乗法によるカーブフィットのソフトウェアがな

ければ,附属書Bに規定する簡易的な最小二乗法の計算手法を用いるとよい。 

注記 附属書Bに規定する手順のエネルギー間隔は,0.1 eVである。 

6.8.2 

三つのピークそれぞれについて,7回繰り返して測定した運動エネルギーを表にする。 

6.8.3 

それぞれのピークnについて7回繰り返して測定した運動エネルギーEmeas, niの組から,平均の運動

エネルギーEmeas, niを計算する。n番目のピークについて七つの測定値Emeas, niの繰返し性の標準偏差σRnは,

6.7を考慮して,式(1)によって求める。 

=

=

7

1

2

,

meas

,

meas

2

R

6

)

(

i

n

ni

n

E

E

σ

 ·························································· (1) 

金を使う場合には,nが1,2及び4,アルミニウムを使う場合には,nが1,2及び3のピークで上記と

同様の方法で標準偏差を計算する。 

全体の標準偏差σRは,σR1,σR2及びσR4,又はσR1,σR2及びσR3のいずれか最も大きいものが採用される。 

注記 利用者仕様の表1にσRを記録しておくのがよい。 

6.8.4 

ピークエネルギーの系統的な時間変化を,測定順に結果を並べ比較してよく調べる。このような系

統的な変化は,予熱が不十分か,実験室の温度が変化したか又は他のドリフトの原因を示してくれること

もある。このようなことが起こった場合は,適切な処置(例えば,予熱時間を増やす。)をし,6.7を繰り

返す。 

6.8.5 

十分なカウントをもったピークの繰返し性の標準偏差は,分光器が良好な動作状態であれば,0.05 

eV以下である。σR1,σR2及びσR4,又はσR1,σR2及びσR3のうち一つでもこの値を超えるときは,分光器の

電圧の安定性又は接地の適切さ,試料の分析位置の調整方法などを点検する。もし,σR>δ/4であれば,分

析者が設定した許容限界値δを大きな値にするか,σRを減少させるような方法を見つける必要がある。 

注記1 図3に示されているように銅及びアルミニウムの強度が106カウント,金の強度が107カウン

トの場合,計数の統計学上のσRは,附属書Bに基づいてデータを最小二乗法でフィッティン

グする方法を用いると0.025 eV以下の標準不確かさになる。 

注記2 実験室間を比較した報告[6] では,異なる試料を測定した後,毎回銅試料を付け替えたときの

平均の値は,高分解能の分光器によってグラフに記録されたデータを読み取ってσR2=0.06 eV

であった。 

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a) Cu M2,3VV 

b) Cu L3VV 

c) 平滑化処理なし 

d) 平滑化処理なし 

e) 平滑化処理 

f) 平滑化処理 

 a)はCu M2, 3VVスペクトル,b)はCu L3VVスペクトル,c)及びd)は平滑化処理をしていない拡大図,e)及びf)はサ

ビツキー・ゴーレイ法[5] で,それぞれ9点平滑化処理,7点平滑化処理を行ったものの拡大図を示す。下段の四つの
グラフは,翼弦を2分する方法でピークの運動エネルギーを求める手順を示している。 

図4−Cu M2, 3VVスペクトル及びCu L3VVスペクトル 

(5 keVの電子線,相対分解能0.1 %,エネルギーステップ0.1 eV) 

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

運動エネルギー(eV)

1

0

C

P

S

運動エネルギー(eV)

度(

1

0

C

P

S

) 

background image

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6.9 

適切な参照運動エネルギーの決定 

6.9.1 

アルミニウムを用いたときの相対分解能が0.04 %以下の分光器,又は金を用いたときの相対分解能

が0.07 %以下の分光器のための参照運動エネルギーは,表2のとおりである。 

表2−エネルギー軸上でのピーク位置の参照値[7] 

単位 eV 

ピーク番号 

帰属 

0

,

refn

E

Cu M2, 3VV 

62.37 

Cu L3VV 

918.69 

Al KL2, 3L2, 3 

1393.09 

Au M5N6, 7N6, 7 

2015.80 

注記1 これらの運動エネルギーは,フェルミ順位を基準としている。 
注記2 この表は,参考文献[8]〜[10]で既に発表されたものを見直し

たものである。 

6.9.2 

6.9.1及び表2で要求されたものより大きく,0.2 %より小さな相対分解能R %をもつ分光器のため

のEref, nは,式(2)によって求める。 

2

0

,

ref

,

ref

dR

cR

E

E

n

n

+

+

=

 ······························································· (2) 

ここに, 

c,dは,表3のとおりである。 

表3−参照運動エネルギーの補正 

単位 eV 

ピーク番号 

帰属 

Cu M2, 3VV 

0.0 

0.0 

Cu L3VV 

0.2 

−2.0 

Al KL2, 3L2, 3 

−0.3 

−1.8 

Au M5N6, 7N6, 7 

5kVn(E) 

5kVEn(E) 

10kVn(E) 

10kVEn(E) 

0.0 

−0.3 
−0.2 
−0.1 

0.0 
4.4 
0.0 
0.0 

注記1 この表は,もっと複雑な表[10] を単純化しており,0 %<R<0.2 %内の相対

分解能のための表と,0.015 eVの範囲で矛盾がない。 

注記2 この表の帰属の最下部欄で,対応国際規格では単位がkeVと表記されてい

たが,印加電圧で表記されるのが普通であり,単位はkVに修正した。 

6.10 運動エネルギーの直線性の点検 

6.10.1 6.8.3で決定された運動エネルギーの測定値の平均Emeas, nから,表2で与えられる参照エネルギー

Eref, nを式(2)に従って差し引くことで,それぞれのピークnに対する分光器のオフセットエネルギーの測定

値Δnが得られる。すなわち,式(3)が得られる。 

Δn=Emeas, n−Eref, n ······································································· (3) 

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6.10.2 エネルギー軸の目盛が,目的とする分析のために十分に直線的であるかを判定するためには,式(5)

又は式(6)を用いて,測定したエネルギー軸の目盛における直線性の誤差,すなわち,Cu L3VVのピークに

おけるε2を計算する必要がある。この誤差は,分光器のオフセットエネルギーの測定値であるΔ2と,目

盛が線形であると仮定したときのCu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3ピークの運動エネルギー

から導出される数値との差である。Au M5N6, 7N6, 7の場合,ε2は,式(4)による。 

(

)

(

)

+

=

1

ref

4

ref

1

ref

2

ref

4

2

ref

4

ref

1

2

2

E

E

E

E

E

E

ε

 ···································· (4) 

Al KL2, 3L2, 3の場合,ε2は,Δ4とEref 4とを,Δ3とEref 3とに置き換えた同様の式で与えられる。これらの

式は,具体的に数値を用いて次のように表される。 

ε2=Δ2−0.562Δ1−0.438Δ4  (Au M5N6, 7N6, 7のとき) ······················ (5) 

ε2=Δ2−0.356Δ1−0.644Δ3  (Al KL2, 3L2, 3のとき) ························· (6) 

それぞれのピークについて,式(5)又は式(6)から,ε2の値を計算する。 

注記1 ε2の値を,表1に記録しておくとよい。 

注記2 エネルギー軸の目盛の非直線性は,相対論的な影響の未補正によって生じる可能性もある。

同軸円筒形分光器を電子の減速なしで用いた場合,Au M5N6, 7N6, 7による補正では0.398 eV,

Al KL2, 3L2, 3による補正では0.172 eV影響を及ぼす。同心半球形分光器では,ε2への影響は,

それぞれ0.920 eV及び0.398 eVとなる。電子の減速をすることなく0.2 %以上の相対分解能

を得ることのできる市販の分光器はほとんどなく,4又は10の減速比Aで用いられている。

この減速によって前記の非直線性はA2分の1,すなわち,16又は100分の1に低減される。

先に示した非直線性が最大となる同心半球形分光器の場合で,0.058 eV又は0.009 eVにそれ

ぞれ低減される。この影響は実用上はほとんどの場合に無視してよいが,非常に高精度又は

低減速比の条件で,かつ,ε2の寄与がδ/4よりも大きいと判断される場合には文献を参考に

するとよい [10]〜[12]。 

注記3 対応国際規格では,式(6)の最後の項は“−0.644Δ4”となっていたが,理論上Δ4ではなくΔ3

であることから,Δ4をΔ3と修正した。 

6.10.3 eV単位で示された信頼水準95%でのε2の不確かさは,

I

95

Uより小さく,

I

95

Uは式(7)による。 

(

)

(

)

[

]

2

1

2

2

R

I

95

040

.0

2.1

+

=

σ

U

 ·························································· (7) 

6.10.4 

I

95

Uを計算する。|ε2|が

I

95

Uより小さければ,実用上,エネルギー軸の目盛は直線的とみなされる。|ε2|

の値が

I

95

Uより大きい場合,エネルギー軸の目盛は直線的ではない。しかし,|ε2|がδ/4より小さい場合,

すなわち,選択した許容限界δに比べて,直線性の誤差が十分小さい値とみなせる場合は,この程度の非

直線性は差し支えない。 

例 σRが0.05 eV(表1に示した値)の場合,不確かさ

I

95

Uは0.072 eVとなる。 

式(7)は,附属書Cで導き出される。 

注記 研究機関同士の共同研究の結果では,高分解能分光器から得られた平均σR2の値は0.06 eVであ

った。 

6.10.5 |ε2|がδ/4より大きければ,分光器を修正することが望ましい。これは,6.7の繰り返しによって操

作を見直すか又は分光器製造業者に連絡するか,先に示したδの緩い値への変更が必要となる。 

注記 上記は,直線性を点検するために必要な試験の全てではない。全ての試験を行うとすると,大

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規模な設備が必要となり,この規格の範囲を超えたものとなる。 

6.11 校正誤差を定期的に決めるための手順 

6.11.1 σR及びε2が決定された後,運動エネルギーの校正が必要とされる分光器を操作条件の設定ごとに,

一定の校正周期で校正誤差を決定しなければならない。6.14で規定するように,校正誤差の決定を,前回

の校正手順で決まっていた有効校正期間が失効する前にしなければならない。 

6.11.2 定期的な校正には,Cu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3ピークだけが用いられる。測定

の手順は,Cu M2, 3VVに続いてAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3ピークの順で,この手順によって行われた

前回の校正がσR<δ/8であれば繰り返す必要はないが,そうでなければ,更にもう1回測定を繰り返す必

要がある。したがって,定期の校正における繰返し回数mは,1回又は2回である。それぞれの測定では

電子の放出角度が法線に対して0°〜56°の間で,いつも同じ角度に試料を保持して測定する。試料の設

置は,手順に従って行う。6.8.1で規定した方法で,ピークの運動エネルギーを決定し,かつ,式(3)によっ

て,測定に用いた分光器のオフセットエネルギーΔ1及びΔ4の値を求める。 

6.11.3 補正した運動エネルギーの値Ecorrと運動エネルギーの測定値Emeasとは,次に示す線形関係がある

と仮定する。 

Ecorr=(1+a) Emeas+b ··································································· (8) 

エネルギー軸の目盛誤差aは,式(9)による。 

1

ref

4

ref

4

1

E

E

a

=

 ········································································· (9) 

そして,表2及び表3でEref 1及びEref 4が与えられると,エネルギーが0のときのオフセット値bは,式

(10)によって与えられる。 

1

ref

4

ref

4

ref

1

1

ref

4

E

E

E

E

b

=

 ································································· (10) 

注記1 a及びbの値は,Eに対する−Δ(Δではない。)の傾き及び切片である。 

注記2 対応国際規格では,1行目は“補正した結合エネルギー”となっていたが,これは間違いの

ため,“補正した運動エネルギー”に修正した。 

6.11.4 信頼水準が95 %である場合,この校正の不確かさU95は,式(11)によって求める。 

(

)()(

)2

2

2

cI

95

2

95

2.1ε

+

=U

U

 ·····························································(11) 

運動エネルギーの範囲が0 eV〜2 250 eVの場合(Au M5N6, 7N6, 7のとき),又は1 550 eVの場合(Al 

KL2, 3L2, 3のとき),

cI

95

Uは,式(12)及び式(13)によって与えられる。 

R

cI

95

6.2σ

=

U

(m=2) ······························································· (12) 

又は 

R

cI

95

7.3σ

=

U

(m=1) ······························································· (13) 

注記 分析者が選んだmに対し,

cI

95

U及びU95の値を表1に記入しておくとよい。 

附属書Cに式(11)〜式(13)の導出法を示す。 

6.12 分光器のエネルギー軸の目盛を補正する手順 

6.12.1 分光器を校正するかどうかは,分光器,ソフトウェア,分光器のオフセットエネルギーの大きさを

表すΔn,繰返し性の標準偏差σR,及び許容限界±δのうち,どれを実行するかによって決まる。 

ピーク1及び3又は4に対する (|Δn|+U95) の値が共にδ/4より小さければ,校正用の確認を行った後,

装置を再校正する必要はない。校正用の確認をした後に毎回再校正を行うのが最善であるが,毎回校正を

17 

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するかどうかは,これに要する労力と要求される不確かさとで決めればよい。校正の実施は,分光器製造

業者から分析者に示されている校正方法に従う。多くの分光器において,分析者には,分光器の仕事関数

φを変更することだけが許されている。校正方法の選択は,分光器を利用できる施設に依存する。分光器

の仕事関数を変えることが唯一の実効的な選択である分光器に対して,次の三つの方法が提案されている

[6.12.1 a)〜6.12.1 c)参照]。これらの提案では,運動エネルギーの補正値Ecorrは,式(14)によって求める。 

Ecorr=Emeas+ΔEcorr ···································································· (14) 

ここに, 

Ecorr: 次の方法ごとの補正値 

a) 方法1は,分光器を変更しないで,式(8)の測定された運動エネルギーに,測定後の補正値ΔEcorrを加

える。 

ΔEcorr=aEmeas+b ······································································ (15) 

ここに, a,bは,式(9)及び式(10)によって与えられる。 

b) 方法2は,Au M5N6, 7N6, 7ピークを用いる場合には0 eV〜2 250 eV,Al KL2, 3L2, 3ピークを用いる場合に

は0 eV〜1 550 eVの運動エネルギー範囲に適用されるもので,測定後の補正を最小にする。ここでは,

増分Δφを,分光器で採用されている分光器の仕事関数に加える。ここで,Au M5N6, 7N6, 7ピークを用

いる場合には,増分Δφは,式(16)によって求める。 

)

(

4

1

21

+

=

∆φ

 ···································································· (16) 

測定された運動エネルギーに対する測定後の補正は,式(17)によって求める。 

+

=

2

4

ref

1

ref

meas

corr

E

E

E

a

E

 ····················································· (17) 

Al KL2, 3L2, 3ピークを用いる場合には,式(16)及び式(17)において,添字4を添字3に置き換える。 

この方法では,Au M5N6, 7N6, 7ピークを用いる場合には1 039 eV,AlKL2, 3L2, 3ピークを用いる場合には728 

eVの運動エネルギーのところで,それぞれΔEcorrがゼロになり,運動エネルギーの測定値に対する測定後

の補正が,それぞれ0 eV〜2 250 eV又は0 eV〜1 550 eVの範囲の運動エネルギー範囲で最小となる。 

c) 方法3では,分析者によって選択される特定の運動エネルギー(頻繁に測定される元素の運動エネル

ギー)で,測定後の補正をゼロにする。ここでは,式(18)で与えられる増分Δφを分光器の仕事関数

に加える。 

ΔEcorr=aEelem+b ······································································ (18) 

ここに, 

Eelem: 頻繁に測定される元素に対するオージェ電子ピークの 

運動エネルギー 

実際に測定された運動エネルギーに対する測定後の補正は,式(19)による。 

ΔEcorr=a(Emeas−Eelem) ································································ (19) 

ここに, 

ΔEcorr: 運動エネルギーEelemで,ゼロ 

6.12.2 6.12.1によって,分析上必要な運動エネルギーの全範囲,又は選択された狭い運動エネルギーの範

囲において,|ΔEcorr|+U95で表される和が,校正を実施する校正周期にわたってδより小さくなる場合,6.12.1

のa)〜c)で定義された測定後の補正ΔEcorrは無視してよい。しかし,この校正は,選択された運動エネル

ギーの範囲内においてだけ有効である。 

6.12.3 採用した補正手順は,実行していれば,Δ1,Δ4,a,b,妥当な運動エネルギー範囲及びΔφととも

に,記録しなければならない。全ての作業が正確に行われることを確実にするために,最初の繰返し校正

手順において,その補正手続を確認しなければならない。 

6.12.4 これが選択された条件での最初の校正ならば,校正日付に対する校正データの変化を示す図5のよ

うなエネルギーの校正管理図を準備する。この管理図には,誤差許容範囲±δ及び再校正が必要となる時

background image

18 

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期を示す±0.7δの警戒限界も示す。 

6.12.5 全ての校正において,エネルギー軸に対し,測定後の補正がされている場合は,Δ1及びΔ4の測定

値を,この管理図に書き加える。エネルギー軸に対する測定後の補正がなされているならば,Δ1+ΔEcorr

(ΔEref 1で算出されたもの)及びΔ4+ΔEcorr(ΔEref 4で算出されたもの)の測定値も,この管理図に書き加

える。各測定に対する不確かさU95を,図5に示すように,この管理図に追加する。 

6.12.6 エネルギー軸に対する測定後の補正がされない場合は,(|Δ1|+U95)及び(|Δ4|+U95)がいずれもδ

より小さいことを確認する。エネルギー軸に対する測定後の補正がされている場合は,[|Δ1+ΔEcorr(ΔEref 1

のエネルギー点で算出されたもの)|+U95]及び[|Δ4+ΔEcorr(ΔEref 4のエネルギー点で算出されたもの)|

+U95]がいずれもδより小さいことを確認する。これらの条件が満たされず,かつ,初めて校正する場合

には,計算間違いを検査する。これらの条件が満たされず,かつ,初めての校正ではない場合には,校正

周期を短くするか,又はδの値を許容できるまで大きくする必要がある。 

注記 エネルギー軸に対する測定後の補正がされている場合,Δ1及びΔ4の測定値を管理図に書き加え

ることは,分光器がこの手順による校正の範囲内にあるかどうかを確かめるためには重要では

ないが,累積する分光器変動を監視でき,その結果として,校正間隔を最適化するには役立つ。 

 a 

95 %許容限界 

警戒限界 

図5は,1月に測定を始めて以来,再校正されておらず,エネルギー軸に対する測定後の補正もされていない

分光器におけるΔ1及びΔ4の経月変化を示す。9月に初めて校正許容限界を越えているだけでなく,5月に警戒限
界の上限を超えていた上,4か月の期限を超えているので,5月に再校正をするべきであった。それぞれの測定
点の不確かさU95は,信頼性が95 %の場合のものであり,エネルギー軸の直線性の誤差及び不確かさを含む。こ
の図は,表1におけるm=2,δ=0.3 eVの例を表したものである。 

図5−分光器の校正状態を表示する管理図[13], [14] 

1月 

3月 

5月 

7月 

9月 

11月 

校正日付 

Δ

1

Δ

4

eV

19 

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6.13 校正の時期 

6.13.1 次回の校正は,校正の不確かさU95及び分光器変動の和としての校正の全不確かさが信頼水準95 %

で,±δを超える前に行うのがよい。したがって,6.14で定義される校正間隔又はそれより前に校正する

必要がある。この校正間隔が不明な場合,6.14に示された方法でまず校正間隔を決定し,その校正間隔で

6.13.2の手順を実行する。 

6.13.2 分光器が改造されていないか,又は明らかに変化をしていなければ,6.14で定義される校正間隔で,

6.2〜6.6,6.11及び6.12の手順を繰り返す。常に,校正を開始してからの校正でなされた変更及び累積し

た変化の全てを記録する。累積した変化が分光器製造業者によって推奨された値を超えていないことを確

認する。全ての場合において,パスエネルギー,減速比,スリット又は絞りの設定,レンズの設定及び使

用した電子線の加速電圧を含む,校正に用いた全ての分光器設定条件を記録する。 

6.14 校正時期の決定 

分光器を終日運転してCu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7の運動エネルギーを,1時間間隔で測定する。どの

ような分光器変動を示すとしても,十分な安定性を得るため,電気系統は事前に指定された最小限の時間,

暖気運転しておく必要がある。測定のときに,周囲の温度を記録して,何らかの相関関係がないかを検査

しておく。どのような手順が用いられても,この規格に準拠した分析をするには,暖気運転時間などの項

目を含めた校正手順の全ての手続きが,実際の分析においても使われなければならない。 

注記1 多くの場合,分光器の電源の温度変化によって,分光器変動が生じる。これらの変動は,操

作した時間に関連して発生するので,毎日同じように繰り返されるかもしれない。このため,

例えば,毎日午前9時にだけ確認を行うと,これ以外の時間に生じる変動を見逃してしまう。

Au M5N6, 7N6, 7ピークのエネルギー変動は,Cu M2, 3VVのそれに比べてより大きく観測される。 

初日に一日を通じて十分な安定性が得られた場合,Δ1とΔ4とで大きな方をU95に加えた値が,校正間隔

内で±0.7δ以下なら,順次,より長い間隔でCu M2, 3VVとAu M5N6, 7N6, 7の運動エネルギーを測定する。

どの程度の校正間隔が適切であるかを示す実際のデータが得られるまでは,最後に行った校正間隔が最大

の有効な校正間隔である。この校正間隔は4か月を超えてはならない。 

注記2 多くの分光器では,1か月又は2か月の校正間隔が適切である。校正間隔の適正値及び適切

な許容限界は,分析上の必要条件又は分光器の状況に依存する。 

background image

20 

K 0166:2011  

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附属書A 

(規定) 

0.1 eVのエネルギー間隔のピークにサビツキー・ゴーレイ法による 

平滑化を1回適用する場合の最大点数 

二次又は三次のサビツキー・ゴーレイ法の平滑化の1回限りの適用は,スペクトルに大きなひずみ(歪)

を与えることなく,見かけ上のノイズを減少させるために利用される。サビツキー・ゴーレイ関数の幅は,

平滑化されるスペクトルの元のピークの半値における全幅の0.5より小さい幅とする。この平滑化の最大

点数は,0.1 eVのエネルギー間隔で翼弦法によるピークエネルギーの評価が行われる場合,表A.1による。 

表A.1−相対分解能の異なる分光器に対して,各ピークにサビツキー・ゴーレイ法による 

平滑化を適応する場合の最大点数 

ピーク番号 

帰属 

分光器の相対分解能 

0.01 % 

0.05 % 

0.1 % 

0.15 % 

0.2 % 

Cu M2, 3VV 

Cu L3VV 

Al KL2, 3L2, 3 

11 

15 

Au M5N6, 7N6, 7 

13 

13 

15 

19 

23 

background image

21 

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附属書B 

(規定) 

簡易的な計算手法を用いた最小二乗法による 

ピークの運動エネルギーの決定 

B.1 

記号及び略語 

この附属書に用いる記号及び略語は,次による。 

ci 

:i番目のチャンネルの計数値 

E0 :ピーク中で絶対的最大強度に対応するチャンネルより低運動エネルギー側で最初のデータチャン

ネルの運動エネルギー値(eV) 

Ep :最小二乗法で推定されたピークの運動エネルギー値(eV) 

:チャンネル間隔(eV) 

:ピーク中で絶対的最大強度に対応するチャンネルより低運動エネルギー側で最初のデータチャン

ネルを原点としたチャンネル番号 

P :Sの値に依存したpの係数 

:ピーク前後のSチャンネル分のカウント数の合計 

Q :Sの値に依存したqの係数 

:ピーク前後のSチャンネル分のカウント分布をgで除した一次モーメント 

:ピーク前後のSチャンネル分のカウント分布をg2で除した二次モーメント 

:最小二乗法の計算に用いられる連続した値の数 

B.2 

最小二乗法 

最小二乗法を用いたピークのエネルギー位置の推定は,0.1 eVのチャンネル間隔で,Sが表B.1で表さ

れるとき,推定されるピークの運動エネルギー値の前後のSの半分の点数で等間隔でとられたデータ点数

(δの値)を表から選択することで簡便に決定できる。 

表B.1−式(B.1)の最適な利用のためのSの最大値 

ピーク番号 

帰属 

分光器の最小の相対分解能 

0.01 % 

0.05 % 

0.1 % 

0.15 % 

0.2 % 

Cu L3VV 

10 

10 

Al KL2, 3L2, 3 

10 

14 

14 

Au M5N6, 7N6, 7 

14 

14 

18 

22 

26 

最小二乗法を用いて推定されたピークの運動エネルギーEpは,参考文献[15]から式(B.1)によって求める。 

+

=

p

p

q

P

q

r

P

Q

r

g

E

E

5

3

2

0

p

 ························································ (B.1) 

パラメータp,q及びrは,次のように定義される。 

=

=

3

2

i

ic

p

 ·············································································· (B.2) 

background image

22 

K 0166:2011  

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=

=

3

2

i

i

ic

q

 ············································································· (B.3) 

=

=

3

2

2

i

ic

i

r

············································································· (B.4) 

さらに, P及びQの値は,表B.2による。 

表B.2−Sの値に対する係数P及びQの値 

係数 

Sの値 

10 

14 

18 

22 

26 

8/15 

8/5 

16/5 

16/3 

56/5 

47/15 

37/5 

69/5 

67/3 

33 

229/5 

表B.3は,0.05 %の相対分解能で測定されたCu L3VVピークに対して式(B.1)〜式(B.4)の計算に用いられ

る完全な表を示している。 

参考文献[15]では,ポアソン分布に基づくピーク計数の不確かさに起因するEp値の不確かさを示す式が

与えられている。ここで定義された条件では,標準的な不確かさは,25 meVより小さい。 

表B.3−0.05 %の相対分解能及び6個のデータ値で測定された 

Cu L3VVピークに対する式(B.1)〜式(B.4)の計算例 

エネルギー 

計数値 

ci 

ici 

i2ci 

−2 

918.3 

972889 

−1945778 

3891556 

−1 

918.4 

997619 

−997619 

997619 

918.5 

1002390 

918.6 

993814 

993814 

993814 

918.7 

968876 

1937752 

3875504 

918.8 

935287 

2805861 

8417583 

E0 

918.5 

5870875 

2794030 

18176076 

495

.

918

3

/

8

5

/

8

15

/

47

2

0

p

=

+

=

p

q

r

p

q

r

g

E

E

注記 斜字体の数値は(例題として)表の中に挿入されたときのデータであり,空の表は参

考文献[15]にある。 

23 

K 0166:2011  

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附属書C 
(参考) 

不確かさの計算法 

C.1 エネルギー軸の線形性誤差の不確かさの計算法 

Cu M2, 3VV,Au M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3ピークに対する,σR1,σR4又はσR3の繰返し性の標準偏差を

定義するため,k回の測定を行う。この規格では,kは7とする。エネルギーEref 1,Eref 4又はEref 3での分光

器のオフセットエネルギーΔ1,Δ4又はΔ3で決まる不確かさは,信頼水準95 %で,

(

)

1

ref

c

95E

U

±

(

)

4

ref

c

95E

U

±

(

)

3

ref

c

95E

U

±

で与えられる。 

ここで, 

(

)

2

1

1

R

1

1

ref

c

95

k

t

E

U

=

 ····························································· (C.1) 

及び, 

(

)

2

1

4

R

1

4

ref

c

95

k

t

E

U

=

 ···························································· (C.2) 

であり,Eref 3についても同様である。ここでtk−1は,自由度k−1の両側分布に対するステューデントの検

定に基づく係数tである。この附属書では,全ての不確かさは信頼水準95 %としている。 

測定エネルギー値Emeasでのオフセットエネルギーの不確かさは,エネルギーEref 1及びEref 4でのオフセ

ットエネルギーΔ1及びΔ4を通る直線から予測でき,参考文献[4]から式(C.3)によって求める。 

(

)

2

1

2

1

R

2

1

ref

4

ref

meas

4

ref

2

4

R

2

1

ref

4

ref

1

ref

meas

1

meas

c

95

+

=

k

E

E

E

E

k

E

E

E

E

t

E

U

k

σ

σ

 ·············· (C.3) 

この点において,σRが,σR1,σR4又はσR3のいずれかの大きい方と一致するようであれば,線形性を試験

したエネルギー値Eref 2での校正の不確かさは

(

)

2

ref

c

95E

U

である。 

ここで, 

(

)

2

1

2

1

ref

4

ref

2

ref

4

ref

2

1

ref

4

ref

1

ref

2

ref

2

1

R

1

2

ref

c

95

+

=

E

E

E

E

E

E

E

E

k

t

E

U

k

σ

 ···················· (C.4) 

2

1

R

1

71

.0

k

tkσ

=

 ········································································· (C.5) 

係数0.71は,Au M5N6, 7N6, 7を用いた校正に対して計算された値である。Al KL2, 3L2, 3に対しての係数は

0.74である。線形性試験のためのピークエネルギー測定における不確かさは,tk−1σR2/k1/2で与えられる。測

定されたエネルギー軸の線形性に関する誤差ε2の不確かさの項と,次の更に二つの項との二乗和で与えら

れる。 

一つは,式(C.5)から算出される

(

)

2

ref

c

95E

U

であり,もう一つはCu M2, 3VV,及びAu M5N6, 7N6, 7又は

Al KL2, 3L2, 3ピークの運動エネルギーに対応する線形性試験用ピークの運動エネルギーの不確かさである。 

なお,この不確かさは0.04 eVの値をもつ。 

したがって,ここでσRが,σR1,σR2若しくはσR4又はσR3の最も大きいものと一致するとすれば, 

24 

K 0166:2011  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

()

(

)2

2

2

1

R

1

2

I

95

040

.0

24

.1

+

=

k

t

U

(eV) ········································ (C.6) 

kを7,tk−1を=2.447とすると,式(C.6)から,式(C.7)に示すように 

(

)

(

)

[

]2

1

2

2

R

I

95

040

.0

1.2

+

σ

U

(eV) ············································· (C.7) 

となる。 

C.2 通常の校正に関する不確かさの計算法 

ほとんどの分光器のエネルギー軸の誤差は,近似的には運動エネルギーEに比例する。ε2が

I

95

Uよりも小

さく,それゆえエネルギー軸が線形にとれるであろうことが分かっても,これは単にエネルギー値Eref 2で

の不確かさ

I

95

Uが分かるだけである。σRが,σR1,σR2,σR4又はσR3の最も大きいものと等しいとした解析に

よって,運動エネルギー0 eV〜2 250 eV(Au M5N6, 7N6, 7を用いた場合)又は0 eV〜1 550 eV(Al KL2, 3L2, 3

を用いた場合)の領域での全体的な不確かさ

cI

95

Uが与えられる。ここで(参考文献[7]参照), 

2

1

R

6

cI

95

1.5

m

t

U

σ

 ········································································ (C.8) 

であり,mは日常的な校正手順での繰返し回数である。式(C.8)から, 

R

cI

95

6.2σ

U

,m=2 ································································· (C.9) 

R

7.3σ

,m=1 ································································ (C.10) 

となり,式(12)及び式(13)で示されたものが求められる。|ε2|が

I

95

Uよりも大きいかδ/4よりも小さいのであ

れば,校正はまだ有効である。この場合にε2の値は,校正の不確かさに含まれなければならない。エネル

ギー軸の誤差がEについての二次の依存性があると仮定するのであれば,非線形的な寄与は,Au M5N6, 7N6, 

7を用いた場合の0 eV〜2 250 eVの間の運動エネルギー領域又はAl KL2, 3L2, 3を用いた場合の0 eV〜1 550 

eVの間の領域において,1.15ε2で最大となり,−1.15ε2で最小となる。さらに,三次のエネルギー軸の誤

差は,±1.2ε2の間に入る。したがって,エネルギー軸全体の不確かさU95は,式(11)から,式(C.11)で与え

られる。 

()(

)

[

]2

1

2

2

2

I

95

95

2.1ε

+

=U

U

 ························································· (C.11) 

25 

K 0166:2011  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書D 
(参考) 

測定した運動エネルギーの不確かさの考え方 

D.1 一般 

この附属書は,分光器のエネルギー軸の目盛の校正の不確かさの決定法について記載する。すなわち分

析者は,さらなる(例えば,新しい)ピークエネルギー値を決定する場合の不確かさを引用しようとする

であろう。この附属書では,これを“分析不確かさ”(UA)と呼ぶ。次に概要を示すとおり,考慮するの

がよい三つの一般的な場合がある。これら三つは,全て新しいピークの繰返し性の標準偏差σRnewを含んで

いる。 

D.2 表面電位が分析試料のほとんどの部分で一定のときに,一つのスペクトル中の二つの化学状態に対

して測定されたオージェ電子ピークの間でのエネルギーの差 

この場合,分光器が0.1 %以上の目盛誤差をもつことはまれであり,更に化学状態間のエネルギー差は

10 eV未満であるので,ここで行った校正の不確かさの多くは特に考慮する必要はない。6.7で規定してい

る測定の繰返し性には試料の位置が大きく影響するが,この場合は,関連するいずれのピークについても

共通条件であるため,やはり考慮する必要はない。ピークが重なり合っていないのであれば,分離に対す

る不確かさはそれぞれのピークに定義される不確かさによって定義される。ピークが重なり合っている場

合には,スペクトルの最大値を与えるエネルギー値は,各成分のピークのエネルギー値と一致しない。し

たがって,通常はピーク分離を行うソフトウェアを利用して,それぞれの成分ピークの運動エネルギーを

求める。有効なソフトウェアによる場合,分析の不確かさは,この校正法で議論した項目よりもむしろピ

ークフィッティング[16], [17] からくる統計誤差に支配される。 

D.3 続けて測定した二つの試料の化学状態に対する測定されたオージェ電子ピークのエネルギー差 

D.2のように,ほとんどの校正の不確かさは無視でき,分析の不確かさは二つのピークの繰返し性の標

準偏差に依存する。測定している新しいピークに対する繰返し性の標準偏差σRnewが校正時に決定されたσR

の値に等しいとき,導体試料に対する信頼度95 %でのエネルギー差の分析の不確かさは,次の式で求める。 

UA=tk−121/2σR ········································································· (D.1) 

k=7とすれば, 

UA=3.5σR·············································································· (D.2) 

絶縁物試料の場合は,帯電補正の不確かさを含める必要がある。この不確かさは,主に他の要因で支配

される。 

着目している多くのピークに対して,これらのピークはしばしば校正に用いられる適切な金属のピーク

よりも幅が広く強度も弱いことから,σRnewがσRよりも大きくなることに注意する。 

D.4 校正の直後に測定した単一ピークのエネルギー 

分光器のドリフトが無視できるように分光器を校正した直後にピークエネルギーの測定が行われた場合

は(6.14参照),不確かさは,式(11)及び式(C.11)で与えられるが,新しいピークに対する項も含まれる。

式(11)及び式(C.11)の条件に対して,分析不確かさは式(D.3)で表される。 

26 

K 0166:2011  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

()

[

]

(

)(

)

{

}2

1

2

Rnew

1

2

2

2

cI

95

A

2.1

σ

ε

+

+

=

jt

E

U

U

 ····································· (D.3) 

これは新しいピークに対してj回の測定の分散からσRnewが導出されるということを仮定している。実際

には,もちろん,一般的にσRnewが測定されることはない。σR1,σR2,σR4又はσR3がσRに等しいかそれより

小さければ,式(D.3)は評価できる。通常の校正におけるCu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7ピークに対する2

回の繰り返し又は1回の測定及び新しいピークに対する1回のスペクトル測定に対して,分析の不確かさ

は式(D.4)及び式(D.5)で表される。 

(

)(

)

[

]2

1

2

2

2

R

A

2.1

6.3

ε

σ

+

U

(m=2) ·········································· (D.4) 

かつ, 

(

)

(

)

[

]2

1

2

2

2

R

A

2.1

4.4

ε

σ

+

U

(m=1) ·········································· (D.5) 

D.3で述べたように,式(D.3)を用いる場合は,多くの新しいピークに対してσRnewはσRより大きい。 

D.5 校正の間における単一ピークのエネルギー 

校正の間に測定された新しいピークに対して,分析の不確かさは式(D.6)の関係にある。 

UA≦δ+tj−1σRnew······································································ (D.6) 

ここで,D.4のように,新しいピークの繰返し性の標準偏差σRnewはj回の測定で定義される。 

先に述べたように,σRnewが,以前の新しいピークの7回測定の記録による校正で決定したσRの値より

小さいか等しいならば,新しいピークのスペクトル1回の測定に対して,分析の不確かさは式(D.7)の関係

にある。 

UA≦δ+2.5σR ········································································· (D.7) 

D.3で述べたように,多くの新しいピークに対してσRnewはσRより大きい。 

27 

K 0166:2011  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考文献 

[1] 

JIS Q 17025 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 17025,General requirements for the competence of testing and 

calibration laboratories(IDT) 

[2] 

SEAH, M.P. and TOSA, M., Linearity in electron counting and detection systems, Surface and Interface 

Analysis, Mar. 1992, vol. 18, no. 3, pp. 240-246 

[3] 

SEAH, M.P., LIM, C.S. and TONG, K.L. Channel electron multiplier efficiencies: the effect of the pulse 

height distribution on spectrum shape in Auger electron spectroscopy, Journal of Electron Spectroscopy, Mar. 

1989, vol. 48, no. 3, pp. 209-218 

[4] 

SEAH, M.P., GILMORE, I.S. and SPENCER, S.J. XPS−Binding energy calibration of electron 

spectrometers 4−Assessment of effects for different X-ray sources, analyser resolutions, angles of emission 

and of the overall uncertainties, Surface and Interface Analysis, Aug. 1998, vol. 26, no. 9, pp. 617-641 

[5] 

SAVITZKY, A. and GOLAY, M.J.E. Smoothing and differentiation of data by simplified least squares 

procedures, Analytical Chemistry, July 1964, vol. 36, no. 8, pp. 1627-1639 

[6] 

SEAH, M.P. and SMITH, G.C. AES: Energy calibration of electron spectrometers, II−Results of a BCR 

interlaboratory comparison co-sponsored by the VAMAS SCA TWP, Surface and Interface Analysis, Feb. 

1990, vol. 15, no. 2, pp. 309-322 

[7] 

SEAH, M.P. AES: Energy calibration of electron spectrometers, IV−A re-evaluation of the reference 

energies, Journal of Electron Spectroscopy, December 1998, vol. 97, no. 3, pp. 235-241 

[8] 

SEAH, M.P., SMITH, G.C. and ANTHONY, M.T. AES: Energy calibration of electron spectrometers I−An 

absolute, traceable energy calibration and the provision of atomic reference line energies, Surface and 

Interface Analysis, May 1990, vol. 15, no. 5, pp. 293-308 

[9] 

SEAH, M.P. and SMITH, G.C. Spectrometer energy scale calibration, Appendix 1: in Practical Surface 

Analysis Vol 1: Auger and X-ray Photoelectron Spectroscopy, Chichester: Wiley, 1990, pp. 531-540 

[10] 

SEAH, M.P. and GILMORE, I.S. AES: Energy calibration of electron spectrometers III−General calibration 

rules, Journal of Electron Spectroscopy, Feb. 1997, vol. 83, nos. 2,3, pp. 197-208 

[11] 

SEAH, M.P. and ANTHONY, M.T. A verification of the relativistic correction for electrostatic electron 

spectrometers, Journal of Electron Spectroscopy, Feb. 1995, vol. 35, nos. 1,2, pp. 145-153 

[12] 

GOTO, K. and SHIMIZU, R. Absolute Auger electron spectroscopy: accuracy and detectability, International 

Symposium on Atomic Level Characterisations for New Materials and Devices, 23-28 November 1997, 

Hawaii, Japan Society for Promotion of Science, Tokyo, 1990, pp. 403-406 

[13] 

ISO 7870-1,Control charts−Part 1: General guidelines 

[14] 

ISO 7873,Control charts for arithmetic average with warning limits 

[15] 

CUMPSON, P.J., SEAH, M.P. and SPENCER, S.J. Simple procedure for precise peak maximum estimation 

for energy calibration in AES and XPS, Surface and Interface Analysis, Sept. 1996, vol. 24, no. 10, pp. 

687-694 

[16] 

CUMPSON, P.J. and SEAH, M.P. Random uncertainties in AES and XPS: 1: Uncertainties in peak energies, 

intensities and areas derived from peak synthesis, Surface and Interface Analysis, May 1992, vol. 18, no. 5, 

pp. 345-360 

[17] 

SEAH, M.P. and BROWN, M.T. Validation and accuracy of software for peak synthesis in XPS, Journal of 

28 

K 0166:2011  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

Electron Spectroscopy, Aug. 1998, vol. 95, no. 1, pp. 71-93 

background image

29 

K 0166:2011  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書JA 

(参考) 

JISと対応国際規格との対比表 

JIS K 0166:2011 表面化学分析−高エネルギー分解能をもつオージェ電子分光器
による元素分析及び化学結合状態分析のためのエネルギー軸の校正方法 

ISO 17974:2002 Surface chemical analysis−High-resolution Auger electron 
spectrometers−Calibration of energy scales for elemental and chemical-state analysis 

(I)JISの規定 

(II) 
国際 
規格 
番号 

(III)国際規格の規定 

(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごとの評
価及びその内容 

(V)JISと国際規格との技
術的差異の理由及び今後の
対策 

箇条番号 
及び題名 

内容 

箇条 
番号 

内容 

箇条ごと 
の評価 

技術的差異の内容 

1 適用範囲 表面の元素及び化学結合

状態の分析に使用するオ
ージェ電子分光器のエネ
ルギー軸を校正する方法
について規定 

JISとほぼ同じ 

変更 

オージェ電子分光器でプローブとして
使用する電子線は,加速電圧(kV)で表
記されるのが普通であり,エネルギー単
位では計測は困難であるために,単位を
keVからkVに変更する。技術的内容に
差異はない。 

ISO 17974の見直しの際に
変更を要請する。 

6.5 分光器
の操作 

分光器の操作について規
定 

6.5 

JISとほぼ同じ 

変更 

オージェ電子分光器でプローブとして
使用する電子線は,加速電圧(kV)で表
記されるのが普通であり,エネルギー単
位では計測は困難であるために,単位を
keVからkVに変更する。技術的内容に
差異はない。 

ISO 17974の見直しの際に
変更を要請する。 

6.6 最初及
びその次か
らの校正手
順の選択 

分光器のエネルギー軸の
校正手順についての規定 

6.6 

JISとほぼ同じ 

変更 

運動エネルギーの再現性の“再現性”に
対応する対応規格での表記は,繰返し性
(repeatability)であるが,内容から再現
性(reproducibility)に変更した。 
技術的内容に差異はない。 

− 

6.10.2 

運動エネルギーの直線性
の点検のための,直線性の
誤差の算出方法について
規定 

6.10.2 

JISとほぼ同じ 

変更 

対応国際規格では,式(6)の最後の項は
“−0.644Δ4”となっていたが,理論上Δ4
ではなく,Δ3であることから変更した。 
技術的内容に差異はない。 

ISO 17974の見直しの際に
変更を要請する。 

8

K

 0

1

6

6

2

0

11

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

background image

30 

K 0166:2011  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(I)JISの規定 

(II) 
国際 
規格 
番号 

(III)国際規格の規定 

(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごとの評
価及びその内容 

(V)JISと国際規格との技
術的差異の理由及び今後の
対策 

箇条番号 
及び題名 

内容 

箇条 
番号 

内容 

箇条ごと 
の評価 

技術的差異の内容 

6.11.3 

校正誤差を定期的に決め
るための手順について規
定 

6.11.3 

JISとほぼ同じ 

変更 

Ecorrの説明が補正した結合エネルギーと

なっていたが,間違いのため“補正した
運動エネルギー”に変更した。技術的内
容に差異はない。 

ISO 17974の見直しの際に
変更を要請する。 

JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 17974:2002,MOD 

注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。 
 

− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。 

注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。 
 

− MOD ··············· 国際規格を修正している。 

8

K

 0

1

6

6

2

0

11

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。