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K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

(1)

目  次

ページ

序文  

1

1  適用範囲  

2

1A  引用規格  

2

2  記号及び略語  

2

3  評価方法の概要  

3

4  強度目盛の繰返し性,再現性及び一定性の評価方法  

4

4.1  標準物質の入手  

4

4.2  試料の取付け  

5

4.3  試料のクリーニング  

5

4.4  強度目盛の安定性を決定する分光器の動作条件の選択  

6

4.5  装置の操作  

7

4.6  初めて評価測定を行う場合か,二度目以後かの選択  

7

4.7  強度目盛,繰返し性及び再現性の測定  

7

4.8  ピーク面積強度,強度比及び不確かさの計算  

8

4.9  強度目盛の一定性を定期的に評価するための手順  

9

4.10  次期の評価  

10

附属書 A(規定)単色化していない Mg Kα X 線源を用いた市販 線光電子分光器における強度目盛の繰

返し性及び再現性を求めるための測定及び計算の例  

12


K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工

業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済

産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


   

日本工業規格

JIS

 K

0152

:2014

(ISO 24237

:2005

)

表面化学分析−X 線光電子分光法−

強度目盛の繰返し性,再現性及び一定性

Surface chemical analysis-X-ray photoelectron spectroscopy-

Repeatability and constancy of intensity scale

序文 

この規格は,2005 年に第 1 版として発行された ISO 24237 を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。

X 線光電子分光法(XPS: X-ray photoelectron spectroscopy)は,材料の表面分析に広く使用されている。

水素及びヘリウムを除く試料中の元素は,測定した内殻レベルの結合エネルギーを元素の結合エネルギー

表と比較することによって同定することができる。元素の定量情報は,光電子強度から得られる。組成値

は,分光器の装置製造業者が提供する相対感度係数

[1]

 を用いて計算することができる。感度係数がその装

置に対して適切であることが重要であるが,一般的に,装置の据付直後又は適切な機関によってエネルギ

ー対強度応答関数が校正された直後はその状態にあると考える。この規格では,XPS の信号強度の不確か

さに,装置が与える次の二つの重要な寄与,a)  計測強度目盛の繰返し性及び再現性,及び b)  時間経過に

伴う強度目盛の一定性について規定されている。

繰返し性及び再現性は,類似した試料間の傾向及び違いを分析する場合に重要である。測定の繰返し性

及び再現性に限界を与える装置に関連する項目としては,X 線源の安定性,検出器の設定,試料位置,測

定パラメータ,及びデータ処理手順が含まれる。装置の強度目盛のドリフトは,全ての定量的解釈の正確

さを制限するが,それは,分光器の構成部品の経年劣化,分光器の電源の経年劣化,分光器の検出器の経

年劣化などから生じる。XPS 装置では,稼働中の装置が年を経るにつれて,エネルギー対強度応答関数が

変化する可能性があることが知られている。

この規格では,装置の強度目盛の繰返し性及び一定性を決定する簡便な方法を示すが,評価結果によっ

ては,操作手順の改良,装置パラメータの再設定,エネルギー対強度応答関数の再校正に際した是正措置

をとってもよい。そのため,この方法は定期的に実施されることが望ましく,さらに装置製造業者又は他

の適切な機関によって,装置が正しく動作することが確かめられた期間内に測定されたデータであれば,

最も有用である。この方法は,純銅(Cu)試料を使用し,単色化していないアルミニウム(Al)X 線,マ

グネシウム(Mg)X 線又は単色化した Al X 線を使用する X 線光電子分光器に適用できる。

この規格は,装置に対して考えられる全ての欠陥について示すものではない。そのために要求されるテ

ストには時間がかかり,専門知識及び専用器具を必要とするからである。この規格は,XPS 装置の強度目

盛の繰返し性,再現性及び一定性に関する基本的な問題について規定することを意図している。この方法

は,JIS K 0145

[2]

 を使用した分光器のエネルギー軸校正と同時に実施してもよい。


2

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

   

適用範囲 

この規格は,単色化していない Al X 線,Mg X 線又は単色化した Al X 線を用いた X 線光電子分光器の

強度目盛の繰返し性,再現性及び一定性を評価する方法について規定する。この規格は,スパッタクリー

ニングのためのイオン銃を組み込んだ装置についてだけ適用する。この規格は,エネルギー対強度応答関

数の校正は意図していない。そのような校正手続は,装置製造業者又は他の機関のいずれによって行われ

ても差し支えない。この規格で規定する手順は,継続して使用している装置のエネルギー対強度応答関数

が一定であると仮定して,強度の一定性を評価・確認するためのデータを提供する。また,一定性に影響

を及ぼす可能性のある幾つかの装置設定方法に関する手引も提供する。

注記 1  日本語では,厳密には“繰返し性”と“再現性”とでは意味が異なる。しかし,対応国際規

格で用いられている“repeatability”は,

“繰返し性”及び“再現性”の両方の意味をもって使

用されている。そこで,

“repeatability”の訳としては,両方の意味を含ませて“繰返し性及び

再現性”とした。

注記 2  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 24237:2005,Surface chemical analysis−X-ray photoelectron spectroscopy−Repeatability and

constancy of intensity scale(IDT)

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,

“一致している”

ことを示す。

1A  引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の一部を構成する。この引用規格は,

その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS K 0145  表面化学分析−X 線光電子分光装置−エネルギー軸目盛の校正

注記  対応国際規格:ISO 15472:2001,Surface chemical analysis−X-ray photoelectron spectrometers−

Calibration of energy scales(IDT)

記号及び略語 

この規格で用いる主な記号及び略語は,次による。

A

2

:シャーリーバックグラウンドを除去した後の Cu 2p

3/2

ピーク面積の数値の算術平均値

A

2j

A

2

を求めるための一連の測定値のうちの 番目の値

A

3

:シャーリーバックグラウンドを除去した後の Cu 3p ピーク面積の数値の算術平均値

A

3j

A

3

を求めるための一連の測定値のうちの 番目の値

i

P

i

として(A

2

A

3

A

3

 / A

2

)を代表させて記述するための識別子

j

:パラメータ P

i

の 7 個の測定値 P

ij

を区別する指標

P

i

:識別子 に対応する,A

2

の平均値,A

3

の平均値,A

3

 / A

2

の平均値のいずれかのパラメータ

P

ij

:算術平均値が P

i

であるパラメータの 番目の測定

U

95

(P

i

) :信頼水準 95 %における,P

i

の平均値の不確かさ

XPS  :X 線光電子分光法 
δ

:信頼水準 95 %における A

3

 / A

2

の許容限界値(分析者が設定する値)

Δ

:装置の結合エネルギー軸のエネルギーオフセットで,Cu 2p

3/2

ピークの最大強度の結合エネル

ギーの測定値から 932.7 eV を差し引いた差


3

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

σ(P

i

)  :標準偏差で示されるパラメータ P

i

の繰返し性

評価方法の概要 

評価方法の詳細は,箇条 に記載する。

この評価方法に従って X 線光電子分光器を適切に評価するためには,銅の標準物質薄片をあらかじめ入

手し,Cu 2p

3/2

及び Cu 3p の X 線光電子ピーク強度を適切な装置条件で測定する。これらのピークは実用

的な分析における結合エネルギーの上端及び下端に近いことから,強度目盛の繰返し性,再現性及び一定

性を評価するための基準として選んだものである。これらのピークはこの目的によく使われており,参照

データも多く存在する。

試料の入手及び装置の設定に関する最初の手順を,4.14.5 に規定する。関連項目を項目番号とともに

図 の操作手順に示す。

強度目盛の繰返し性及び再現性の決定を以前に行ったことがなければ,使用者は,4.6 から 4.7 に移る。

4.7 において,Cu 2p

3/2

及び Cu 3p のピーク強度の一連の測定を 7 回繰り返す。これらのデータは,ピー

ク強度目盛の繰返し性及び再現性の標準偏差を与える。これらの繰返し性及び再現性には,X 線源,検出

器,電源の安定性,測定試料位置及びピーク強度のばらつきが関係している。この方法において,測定さ

れた強度目盛のばらつきが相対的に小さいことを確かめるための条件を定義する。これについては

附属書

に示す。繰返し性及び再現性を示す標準偏差値は,試料の位置合わせ方法に影響されることがある。4.7.1

では,測定位置の合わせ方は一貫していることが要求され,この位置合わせ方法に従って位置合わせした

試料に対してだけ有効である。

これら二つのピークの強度の絶対値は,適切に規定された条件の下で知られているので,原理的には分

光器のエネルギー対強度応答関数を部分的に決定するのに用いることができる

[3]

。しかしながら,これら

応答関数のエネルギー依存性が,実際には複雑なものになり得るため

[4]

,2 点だけの強度を用いるのでは

応答関数の決定には不十分である。そのため,この試験方法の適用範囲をこれら 2 点の強度及び強度比の

一定性から示される応答関数の計測強度の繰返し性及び再現性から導かれる不確かさの範囲内での評価に

限定する。

図 の操作手順で示したように,強度目盛の決定は 4.7,それに基づく応答関数の計算は 4.8 

行う。引き続いて 4.9 で,強度目盛の一定性の 1 回目の決定をより簡便に行う。

実際には,エネルギー対強度応答関数は,装置の使用時間及び使用状況に従って大きく変化することが

あり,そのときはスペクトルから導かれる定量的結果も変化するかもしれない。このようなことが起こっ

たときは,次の対策を検討することが重要である。

a)  試料の位置合わせ方法を改善する。 
b)  装置の暖機時間を長くとる。 
c)  元の応答関数を回復するために装置を再調整する。

d)  定量に用いる相対感度係数を測定又は計算によって求め直す。 
e)  この装置で得られるあらゆる定量的結果の不確かさを大きくとる。

これらの対策のうちのどれを行うかは,この手順で測定される強度比に対する一定性の要求,及び実際

の強度比のドリフトの度合いに依存する。

“∆E/E 一定モード”

(減速比一定モード又は減速比固定モードの名称でも知られている。

)で動作するオ

ージェ電子分光器では,検出器の更新に伴う応答関数の大きな変化によって,ドリフトが年率 40 %にも達

するとの測定結果がある

[5]

“∆E 一定モード”

(分析器通過エネルギー一定モード,分析器通過エネルギー

固定モードの名称でも知られている。

)で動作する XPS では,この影響は小さいと考えられている。した


4

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:2014 (ISO 24237:2005)

   

がって,1 回目の 4.9 の評価又は分光器の大きな変更から 3 か月を経過した後は,3 か月ごとに,4.24.5

に続いて 4.9 の通常の評価を繰り返す。

強度目盛の繰返し性,再現性及び一定性の評価方法 

4.1 

標準物質の入手 

純度 99.8 %以上の多結晶銅を試料として用いる。取扱いやすさから,通常,試料は,はく(箔)状で,

大きさ 10 mm 角,厚さ 0.1 mm∼0.2 mm である。

試料のクリーニングが必要なときは,1 %硝酸に少し浸した後に蒸留水ですすぐとよい。試料を 2,3 日

以上空気中に放置した場合は,上記の硝酸に浸すことによって簡単に 4.3.1 で規定する試料のクリーニン

グができる。

図 1−操作手順 

スタート

4.1  標準物質の入手

4.2  試料の取付け

4.3  試料のクリーニング,サーベイスペクトルの記録

4.4  分光器の動作条件の選択

いいえ

はい

4.8  ピーク面積強度,強度比及び不確かさの計算

4.7  強度,繰返し性及び再現性の測定

4.6  設置又は仕様
変更後の最初の評
価か?

4.9  一定性の定期的評価(通常の評価)

4.10  3 か月待って次期の評価

4.5  装置の操作


5

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4.2 

試料の取付け 

電気的な導通を確実にするため,固定ねじ又は他の金属的な方法で試料ホルダに試料を取り付ける。両

面接着テープを使用してはならない。

注記 1  この試料に対する測定は,3 か月ごとに繰り返す必要がある。真空装置内に保管できるよう

に試料を取り付けると便利である。

注記 2  この規格の適用に際して想定される経過時間にかけて,両面接着テープは,汚染,帯電又は

真空の質の劣化につながる。

4.3 

試料のクリーニング 

4.3.1

超高真空にして,イオンスパッタリングによって表面汚染を取り除き,試料をクリーニングする。

サーベイスペクトルで汚染による酸素及び炭素の 1s 光電子ピークの高さが各々最も強い金属ピークの高

さの 2 %以下になることを目安とする。サーベイ(ワイドスキャン)スペクトルを測定し,主なピークが

Cu のピークだけであること,さらに試料ホルダに起因するピークがないことを確かめる。ここで必要とさ

れる真空度は,4.7 が終了するまで,又は 1 日の終わりまで(いずれか早い方)に酸素及び炭素の 1s ピー

クの高さが最も強い金属ピークの高さの 3 %を超えないことである。

注記 1  クリーニングに適切な希ガスイオンスパッタリング条件は,5 keV のアルゴンイオンでは 1

cm

2

当たり 30 μA で 1 分間である。これらの条件でのスパッタリングフラックス密度は 1 cm

2

当たり 1.8 mC であるが,使用する装置によってビーム電流,時間及びスパッタ用イオンビー

ムの走査範囲を他の値にして調整してもよい。スパッタによってクリーニングされる領域及

びフラックス密度は,装置により異なる。

注記 2  手順は 3 か月ごとに繰り返す必要がある。必要以上のスパッタリングは光電子の強度の変化

を引き起こし,結果に影響する場合がある。必要以上にスパッタすると,表面荒れが非常に

大きくなるので,試料交換が必要になる。

注記 3 Cu の XPS サーベイスペクトルの例は,参考文献

[6]

[9]

 に示されている。ピークの詳細を図 2

に示す。

4.3.2

この規格で必要とする測定は,1 日で終わることが望ましい。1 日以上かかる場合は,測定を始め

る前に銅試料の清浄さを確認する。


6

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1

1

3

3

2

2

 a)  Cu 2p

3/2

 b)  Cu 3p 

 X 結合エネルギー(eV) 
 Y 強度/1 000 カウント 
 1 測定データ 
 2 シャーリーバックグラウンド 
 3 測定データからシャーリーバックグラウンドを除去したスペクトル

図 2−単色化していない Al X 線を用いてエネルギー間隔 0.1 eV で測定したスペクトル例 

a)  Cu 2p

3/2

及び b)  Cu 3p 

4.4 

強度目盛の安定性を決定する分光器の動作条件の選択 

強度目盛の安定性を決定する分光器の動作条件を選択する。各 X 線源及び分光条件設定(パスエネルギ

ー,減速比,スリット幅,レンズの設定など)の組合せごとに,強度目盛の一定性を調べ記録しておくこ

とが求められる分光条件に関しては 4.44.9 の方法を繰り返さなければならない。

注記 1  ある特定の設定を定量分析に使用する分析者は,その設定だけを評価に用いればよい。化学

状態を決定する場合,JIS K 0145

[2]

 に従ったエネルギー軸校正のために決めてある条件を選

択してもよい。エネルギー軸校正のための設定条件と今回の評価方法における分光器の設定

条件とが同じであれば,Cu 2p

3/2

ピークを用いたこの規格の 4.7 に示す測定及び JIS K 0145

[2]

の 5.7 に示す測定の両方を,4.54.7 に規定するように同時に済ませることができて効率的で

ある。

注記 2  分光器の構造及びその回路は,個々の装置で異なる。そのうえ,ある分光器の動作条件(レ

ンズの設定,スリット幅,パスエネルギー

[4]

)の組合せで得られるエネルギー対強度応答関

数は,他の動作条件にした場合に必ずしも有効であるとは限らない。多くの分析者は正確な

強度を求めるために,適切な分光器の動作条件を一つに決めて用いている。したがってその

分光条件の組合せだけが評価を必要とする。ここで決めた評価結果は,用いた分光器とその

動作条件との組合せに対してだけ有効である。

注記 3  強度目盛及び強度値の繰返し性及び再現性は,用いた分光器の動作条件によって変化する。

一般に,繰返し性及び再現性は,大きなスリット幅を用いて低エネルギー分解能の条件で測

定する場合に,最もよくなる。


7

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4.5 

装置の操作 

装置製造業者が発行した操作書に従って装置を操作する。ベーキング後であれば全体が完全に常温に戻

るまで待たなければならない。X 線源にかける電力,計数率,分光器の掃引速度,その他装置製造業者が

指定するパラメータなどが,推奨範囲に収まっていることを確認する。検出器マルチプライヤーは正しく

調整されていることを点検する。多チャンネル検出器の場合は,これらの手順を行う前に,装置製造業者

によって指定された必要な最適化項目及び確認項目を全て実施済みであることを確認する。各パラメータ

及びその値を記録したリストを作成する。

注記 1  多くの装置製造業者は,十分な安定性を保証するために,制御部及び高電圧回路の電源を入

れてから少なくとも 4 時間経ってから必要な測定にとりかかることを推奨している。X 線源

においても,ドリフト及び変動を低減するために,測定開始前に一定時間,例えば,1 時間,

作動させることが望ましい。

注記 2  モノクロメータは,予熱を必要とすることがある。単色化された X 線のエネルギーは,装置

周辺の温度又はモノクロメータの周囲の温度に依存することもあり得る。これらの温度を記

録しておけば,強度ドリフトという問題が生じた場合に,原因を調べるのに役に立つことが

ある。

注記 3  高すぎる計数率

[10]

 又は適切でない検出器電圧

[10], [11]

 は,ピークがゆが(歪)む原因となり,

誤ったピーク強度測定につながる。

4.6 

初めて評価測定を行う場合か,二度目以後かの選択 

ある装置について強度目盛の一定性を評価するためには,強度目盛測定の繰返し性及び再現性を決めて

おく必要がある。この値が決まっていなければ,4.7 の測定を実施する。4.7 の手順に従って,関連する全

ての分光器設定条件についての値が測定済みで,しかもその測定以後は装置に変更がなく,装置に影響を

与える可能性のある修理もなく,装置を移動するようなこともなかった場合には,

図 の操作手順に示す

ように 4.9 へと進む。

4.7 

強度目盛,繰返し性及び再現性の測定 

4.7.1

通常行っているのと同じ放出角及び分析位置合わせ手順を用いて,銅試料を分析位置に置く。この

角度を記録しておく。試料位置は分析のために通常行っている手順に従って合わせる。この試料位置合わ

せ手順は,装置製造業者の推奨する方法を考慮した文書に従う。この手順が明瞭で間違いがないことを確

認する。

注記  試料位置合わせ手順は単色化した X 線源を用いる分光器では,殊に厳密であることが要求され

ることもある。

4.7.2

4.4 及び 4.5 で選択した装置動作条件を用いて,Cu 2p

3/2

ピーク及び Cu 3p ピークを

図 2 a) 及び図 2 b)

に示したように両方とも記録する。これらのスペクトルはそれぞれ結合エネルギーで 924 eV∼940 eV まで,

65 eV∼90 eV までの範囲を含むように測定し,測定エネルギー間隔は 0.1 eV 前後,各チャンネル当たりの

計数時間は 1 秒前後としなければならない。これら二つのスペクトルの間で,エネルギー範囲以外のいか

なる測定条件も変更してはならない。Cu 3p ピークの計数値が 100 000 未満である場合には,双方のピーク

とも計数時間を延長して,よりよい結果を得てもよい。最終的に計数時間はデータの質と測定時間との間

の妥協によって決まる。決まったならば,全ての測定パラメータを記録しておく。

注記 1  試料位置合わせ手順は,一貫した矛盾のない強度目盛を得る上で極めて重要である。銅試料

からの電子だけが測定されていると確信できる手順であることが望ましい。

注記 2  計数値によって決まる繰返し性及び再現性については附属書 を参照。


8

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4.7.3

試料を一旦分析位置から別の位置に移動し,4.7.1 の手順に従って分析位置を再設定する。試料を

単純に同じ試料ホルダ位置に戻すことは,それが要求された手順でない限り行ってはならない。試料の移

動,分析位置の再設定及び測定を繰り返し,それぞれのピークについて七つのスペクトルを得る。

4.8 

ピーク面積強度,強度比及び不確かさの計算 

4.8.1 Cu

2p

3/2

ピークの最大強度の結合エネルギーが,932.7 eV±0.1 eV の範囲内であることを確認する。

もし範囲に入っていなければ,測定エネルギーから 932.7 eV を差し引いた,装置の結合エネルギー軸のエ

ネルギーオフセット ΔeV を 0.1 eV の単位で計算するか又は JIS K 0145

[2]

 に従って装置の結合エネルギー軸

を校正し直す。取った処置及び求めた場合は,その Δ 値を記録しておく。

4.8.2 Cu

2p

3/2

及び Cu 3p のピークについて測定した七つのそれぞれのスペクトルについて,測定スペク

トル全体をカーブフィッティングするか,又はピークの両端点の領域を適合させて,

図 に示したように

シャーリー法のバックグラウンドを決定する。カーブフィッティング又はシャーリーバックグラウンドの

差し引きを行って,ピーク面積の数値 A

2j

番目の Cu 2p

3/2

スペクトル)及び A

3j

番目の Cu 3p スペクト

ル)を決定し,記録する。JIS K 0145

[2]

 に従って結合エネルギー軸が校正された分光器に対し,シャーリ

ー法でバックグラウンドを引く場合の端点が

表 に与えられている。4.8.1 で Δ がゼロでない場合は,表 1

の値に Δ を加える。端点の設定時に狭いエネルギー範囲でバックグラウンドを平均化できる場合には,3

∼5 点を選ぶ。それぞれ Cu 2p

3/2

及び Cu 3p のピーク面積である A

2j

及び A

3j

を,端点で平均化した点数とと

もに記録する。

注記 1  シャーリー法バックグラウンドのアルゴリズムの詳細は参考文献

[13]

 に与えられており,JIS 

K 0145

[2]

 の校正の詳細は参考文献

[14]

 に与えられている。

注記 2  データシステムは,データの強度をカウント又は 1 秒当たりのカウントとして表示してもよ

い。その場合,面積の数値は,強度の合算か又は強度とチャネル間隔との積の合算によって

決定してもよい。したがって,面積の数値はカウント,1 秒当たりのカウント,カウントと

eV との積,1 秒当たりのカウントと eV との積などとして提供されてもよい。提供されるデ

ータが 4.7 に従って記録されていれば,それぞれのピークの単位が同じである限り,これら

の違いは重要ではない。面積の数値を決定した単位を記録する。

注記 3  シャーリー法でバックグラウンドを引く場合,端点を求めるための平均化に用いた点数の効

果は

附属書 による。この附属書 では,この平均化処理が強度目盛の繰返し性及び再現性

を著しく向上させることができることが示されている。

表 1−シャーリー法のバックグラウンド差し引きに使用される結合エネルギー値の端点 

単位  eV

[12]

ピーク

X 線源

単色化していない Mg

単色化していない Al

単色化した Al

 Cu

2p

3/2

 926.4 及び 938.4 925.1 及び 938.4 925.1 及び 938.4

 Cu

3p

68.2 及び 84.6 68.2 及び 84.6 67.5 及び 84.6

4.8.3

7 回繰返し測定で求めた二つのピーク面積の数値 7 組分の値が,測定の順序によって系統的に変化

していないかを調べる。そのような系統的変化は,不十分な暖機運転時間,実験室の室温変化,適切でな

い検出器電圧,その他のドリフト源の存在を示す。これらの症状が現れた場合は,適切な対策を講じ(例

えば,暖機運転時間を長くする。

4.7 を繰り返す。


9

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

4.8.4

繰返し測定で得られた Cu 2p

3/2

及び Cu 3p ピーク 7 組のそれぞれに対して,全てのパラメータ P

ij

を得るために,

面積強度比 A

3j

 / A

2j

をそれぞれ計算する。

ここで は,

三つのパラメータ A

2

A

3

及び A

3

 / A

2

1)

 を

表す P

i

のうちの一つを示す識別子,は 7 回測定のうちの何番目であるかを示す指標である。各々のパラ

メータの平均値 P

i

を求め,式(1)を用いて相対標準偏差

σ(P

i

)  を計算する。

[

]

=

=

7

1

2

2

2

)

(

)

(

j

i

i

ij

i

P

P

P

P

σ

  (1)

2)

1)

  対応国際規格では分子と分母とが逆であったので修正。

2)

  式(1)の分母が対応国際規格では P

i

であったものを,相対標準偏差として P

i

2

へ修正した。

三つのパラメータの各々の平均値及び相対標準偏差を記録する。いずれかの相対標準偏差が 3 %の値を

超えた場合,試料位置合わせ手順を見直すことが望ましい。相対標準偏差は装置の繰返し性及び再現性の

測定のことである。

注記  三つのパラメータの相対標準偏差は,試料位置合わせ手順に大きく依存することがある。例え

ば,モノクロメータ搭載の装置では,0.3 mm の試料移動で 10 %の強度変化を生じることがあ

[12]

4.9 

強度目盛の一定性を定期的に評価するための手順 

4.9.1

分光器の強度目盛の一定性を定期的に評価するために,Cu 2p

3/2

及び Cu 3p ピークの測定を 1 組と

して,これを 1 回又は 2 回(j=1,2)測定しなければならない。測定を 2 回行う場合は,測定順序は 2p

3/2

3p,2p

3/2

,3p とし,1 回目及び 2 回目それぞれの組を測定する前に,4.7.1 に記載している試料位置合わせ

の手順に従って位置合わせを行わなければならない。分光器の動作条件は,4.44.5 及び 4.7 で用いて記

録に残したものと同一でなければならない。

注記  対応国際規格には,“試料をセットする向きを記録する。”となっているが,試料の向きを記録

することは,どの箇条にも求められていないので,削除することとした。

4.9.2

4.8.2 及び 4.8.4 に規定しているとおりに A

2

A

3

及び比 A

3

 / A

2

を決める。A

2

及び A

3

の測定を 2 回行

った場合は,A

2

A

3

及び比 A

3

 / A

2

それぞれの平均を求め,これらの平均値を次の解析において A

2

A

3

及び

A

3

 / A

2

として用いる。

4.9.3

パラメータ P

i

の決定において信頼水準 95 %での相対的不確かさ U

95

(P

i

)  は,式(2)及び式(3)で与え

られる。

U

95

(P

i

)=2.6 σ(P

i

)  ピークを 2 回測定した場合   (2)

U

95

(P

i

)=3.6 σ(P

i

)  ピークを 1 回測定した場合   (3)

ここに,

σ(P

i

)  は,式(1)を用いて 4.8.4 で決定した値である。採用する測定回数(j=1 又は 2)について

は,装置の一定性を評価するために必要とされる精度及び一定性の測定を行うために許容される時間に応

じて選択する。

注記  式(2)及び式(3)の導出は,参考文献

[2], [14]

 を参照。

4.9.4

図 に示すように,比 A

3

 / A

2

に対して管理図を作成する。定量分析を行うために要求される一定性

に基づいて許容限界±

δ を定義する。これらの管理限界(許容限界)を比 A

3

 / A

2

に対する変化の百分率と

して,

図 に示すように管理図にプロットする。±0.7

δ と定義する警戒限界も管理図に加え,また,プロ

ットした A

3

 / A

2

の値に対する信頼限界として,式(2)又は式(3)によって与えられる U

95

(A

3

 / A

2

)  の値をエラ

ーバーとして管理図に加える。

注記 1  典型的な許容限界は,2 %∼6 %の範囲である。したがって,例えば,図 では,

δ は 0.004


10

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

   

∼0.012 の間の値をとる。

注記 2  比 A

3

 / A

2

に対する管理図に加えて,A

2

及び A

3

各々の管理図

[15], [16]

 を作成すると,分光器の変

動を判断しやすくなる。もし,比 A

3

 / A

2

が比較的一定に保たれているにもかかわらずこれら

二つの値がともに時間の経過に伴って減少しているのであれば,X 線アノードの汚染が進行

しているか,又は検出器の設定の調整が必要である。これらの項目の点検は,装置製造業者

の定める手順に従って,検出器への印加電圧を増やす,又はディスクリミネータのしきい(閾)

値を下げる必要がある場合もある。

4.10  次期の評価 

装置に顕著な変更又は調整を行った後,又は装置が使用されて 3 か月ごとに,4.44.54.7 及び 4.8 

規定されているものと同じ条件で,4.24.5 及び 4.9 に示されている手順を繰り返し,その結果を管理図

に加える。A

3

 / A

2

と U

95

(A

3

 / A

2

)  との和が警戒限界に達していた場合には,関連する U

95

(A

3

 / A

2

)  を足し合

わせた A

3

 / A

2

の新しい測定が完全に許容域に入るように,装置を確認し調整するか,又は調整手順を変更

しなければならない。この変更が不可能であれば,許容限界(±δ)を大きくするか,又は強度目盛を再度

校正しなければならない。それでも対応できない場合は,相対感度係数を再定義しなければならない。

注記  相対感度係数を決定する手順は,JIS K 0167

[1]

 を参照。


11

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

X:測定時期(月) 
  01 1 月

  04 4 月 
  07 7 月

  10 10 月 
a:警戒限界 
b:95 %  許容限界

プロットされた点は A

3

 / A

2

の値であり,2002 年 1 月に測定を始めて以来,装置は調整されていなかった。2004 年の

1 月に初めて許容(限界)を超えた。そして,2003 年 1 月に警戒限界を超えたとき,この図では校正の手順が取られ
なかったが,実施すべきであった。それぞれの時点での不確かさ,U

95

(A

3

 / A

2

)  は,σ(A

3

 / A

2

)  が 0.6 %である 95 %信頼

性に対応したものである。

図 3−ドリフト 6 %を許容限界と設定した,装置の強度目盛に関する一定性をモニタする管理図

[15], [16]


12

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

   

附属書 A

(規定)

単色化していない Mg K

α X 線源を用いた市販 X 線光電子分光器における

強度目盛の繰返し性及び再現性を求めるための測定及び計算の例

A.1  記号 

この附属書で用いる主な記号及び略語は,次による。

B  :B

q

と B

r

との算術平均値

B

c

  :チャンネル におけるバックグラウンドの計数値

B

q

  :チャンネル におけるバックグラウンドの計数値

B

r

  :チャンネル におけるバックグラウンドの計数値

c

:総和計算のためのチャンネル番号を示す引数で,スタート点を含む。

N

c

  :チャンネル の計数値

q

:着目しているピークの計測に寄与する最も低いチャンネル番号

r

:着目しているピークの計測に寄与する最も高いチャンネル番号

t

:ピークの両端位置のバックグラウンドの平均値を求めるためのチャンネル数

X  :バックグラウンド部を除いた全ピーク面積の数値

σ

における標準不確かさ

σ

B

  :バックグラウンド推定における標準不確かさ

σ(X) :における計算された標準不確かさ

A.2  市販 線光電子分光器における強度目盛の繰返し性及び再現性を求めるための測定及び計算の例 

ここでは,公称エネルギー分解能 0.4 eV,試料表面における分析領域 5 mm×2 mm で計測された,

図 2

のデータに類似したスペクトルを用いる。Cu 2p

3/2

及び Cu 3p のピーク強度はそれぞれ 1.8 M カウント,95

K カウントであった。両者の半値幅は図 の半値幅よりも小さかった。

まず,純粋にポアソン統計に由来する測定の不確かさで決まる繰返し性について考察する。注目するピ

ークが,チャンネル番号 から におけるチャンネル範囲で計測され,チャンネル における計数値 N

c

ピークが定義されるならば(このとき,バックグラウンドの計数値は B

c

で与えられる。

,ピーク面積の数

値 は,式(A.1)のように表すことができる。

=

=

r

q

c

c

c

B

N

X

)

(

(A.1)

同様に,この計測における標準不確かさ σ は,式(A.2)で与えられる。

 

=

=

+

=

r

q

c

r

q

c

c

c

B

N

2

σ

   (A.2)

しかしながら,バックグラウンド B

c

は全てのチャンネルで測定されることはなく,ピーク両端の チャ

ンネルだけで測定される。これら両端の計数値 B

q

及び B

r

はおよそ同じ値であり,バックグラウンド強度

の標準不確かさ σ

B

は,式(A.3)で与えられる。

t

B

B

r

q

B

2

)

(

5

.

0

2

+

=

σ

   (A.3)


13

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

X

を評価する場合の

c

q

から

r

の範囲における各チャンネルのバックグラウンドカウント

B

c

がもつ不確

かさについては,式

(A.2)

に示す求積法のように乱数的なバックグラウンドを全て加算して求めるのではな

く,式

(A.4)

に示すように,同程度の

B

q

及び

B

r

の二つの値で求まる式の線形和で計算する。

+

+

+

=

=

r

q

c

r

q

c

t

B

B

q

r

N

X

4

)

(

)

1

(

)

(

2

2

σ

  (A.4)

t

(r

q

1)/2

まで増加するならば,式

(A.4)

は式

(A.2)

のように簡約化される。

B

q

及び

B

r

をその算術平均値

B

で置き換えれば,式

(A.5)

となる。

[

]

t

B

q

r

N

X

r

q

c

c

2

)

1

(

)

(

2

2

=

+

+

=

σ

  (A.5)

この例で使われる変数値を

表 A.1 に示す。この例で,

Cu 2p

3/2

ピークでは

ΣN

c

はおよそ

200B

Cu 3p

ピー

クではおよそ

300B

となる。つまり,式

(A.5)

における

ΣN

c

項は,第二項の

1/6

以下となり,

t

 6   (A.6)

(A.6)

の場合には,

σ(X)

に対する寄与は

8 %

以下となる。

表 A.1Cu 2p

3/2

及び Cu 3p ピークにおける不確かさの解析のために測定されたパラメータの値 

ピーク

X B 

rq+1

ΣN

c

 Cu

2p

3/2

24 850 000

296 000

121

60 666 000

Cu 3p

3 130 000

23 920

165

7 076 800

一般に

t

1

5

程度の値をとるため,不確かさ

σ

(X)

は式

(A.7)

で近似できる。

( ) (

)

5

.

0

2

1

+

=

t

B

q

r

X

σ

  (A.7)

式(A.7)によって,不確かさが の選択値に強く依存することが明らかである。の値が 11 の場合,が 1

の場合に比べて不確かさは 3.3 倍向上し,これは信号強度の絶対値に依存しない。Cu 2p

3/2

及び Cu 3p ピー

ク強度の測定結果に対して,t=1, 3 及び 11 の場合に式(A.1)及び式(A.5)を用いて計算した相対標準不確か

さを

表 A.2 に示す。表 A.2 には,Cu 2p

3/2

ピークに対する Cu 3p ピークの面積比の測定結果における相対標

準不確かさも示してある。

表 A.2−表 A.1 に示したデータを用いて式(A.5)によって計算した,Cu 2p

3/2

及び Cu 3p ピーク強度,

並びにこれらの強度比に対する t =1, 3 及び 11 の場合の相対標準不確かさ 

ピークのパラメータ

1 3 11

 Cu

2p

3/2

0.19 %

0.11 %

0.06 %

Cu 3p

0.58 %

0.34 %

0.19 %

ピーク強度比 3p/2p

3/2

0.61 %

0.36 %

0.20 %

パスエネルギーを 20 eV,分光器の分解能を 0.4 eV として

表 A.2 と同様の測定を行った結果を表 A.3 

示す。

表 A.2 に示した三つの の値に対して,4.7 及び 4.8 に規定した測定並びに解析手順(すなわち,試

料位置合わせを 7 回行った測定)に従って式(1)を用いて

σ(P

i

)  の値を求めた。表 A.2 に示した不確かさの


14

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

   

計算結果と

表 A.3 に示した不確かさの実験結果とが同程度の値であることから,表 A.3 に示した測定では,

追加的に考慮すべき不確かさの要因は特にないといえる。測定中に入射 X 線強度が変化する場合,又は軸

調整が的確な場合は,Cu 2p

3/2

及び Cu 3p ピーク強度の絶対値は変化するが,強度比の値は上述したポアソ

ン統計で記述されるばらつきの範囲内に入る。

表 A.3 の場合,X 線強度に 0.1 %未満のごく僅かな変化が

起きており,これが Cu 2p

3/2

強度測定における不確かさを決めている。

表 A.3−試料位置合わせを 回行って測定し,式(1)によって計算した,Cu 2p

3/2

及び Cu 3p ピーク強度,

並びにこれらの強度比に対する t 1, 3 及び 11 の場合の相対標準不確かさ 

ピークのパラメータ

1 3 11

 Cu

2p

3/2

0.17 %

0.13 %

0.18 %

Cu 3p

0.65 %

0.33 %

0.12 %

ピーク強度比 3p/2p

3/2

0.78 %

0.40 %

0.24 %

注記  対応国際規格には,表 A.1 の値を用いて計算したとの記載があったが,本文中に“表 A.3 の結果は

測定を行った結果”との記載があることから,記載間違いと判断し削除した。

X 線源の暖機中に起きる X 線強度のドリフトのため,ピーク強度比は一定であるがピーク強度そのもの

は増加する場合がある。強度の減少は,真空度がよくない場合に X 線照射によって誘起される試料表面の

汚染,高い計数率で計測している場合などに起こり得る検出器の効率の劣化によることがある。予想され

るよりもばらつきが大きい結果が得られた場合は,X 線源又は分光器の電源の安定度に予期しない問題が

起きていることが考えられる。


15

K 0152

:2014 (ISO 24237:2005)

参考文献   

[1]

JIS K 0167  表面化学分析−オージェ電子分光法及び X 線光電子分光法−均質物質定量分析のため

の実験的に求められた相対感度係数の使用指針

注記  対応国際規格:ISO 18118,Surface chemical analysis−Auger electron spectroscopy and X-ray

photoelectron spectroscopy−Guide to the use of experimentally determined relative sensitivity 
factors for the quantitative analysis of homogeneous materials(IDT)

[2]

JIS K 0145  (ISO 15472:2001)ISO 24237 では参考文献[2]として記載しているが,引用規格である

ため,この規格では“1A(引用規格)

”に規定した。

[2A]

JIS Z 8103  計測用語

[3]  SEAH, M.P.: A system for the intensity calibration of electron spectrometers, Journal of Electron Spectroscopy,

April 1995, Vol. 71, No. 3, pp. 191-204

[4]  SEAH, M.P.: XPS reference procedure for the accurate intensity calibration of electron spectrometers−Results

of a BCR intercomparison co-sponsored by the VAMAS SCA TWA, Surface and Interface Analysis, March

1992, Vol. 20, No. 3, pp. 243--266

[5]  SEAH, M.P.: VAMAS study of intensity stability of cylindrical mirror analyser based Auger electron

spectrometers, Journal of Electron Spectroscopy, June 1992, Vol. 58, No. 4, pp. 345-357

[6]  BRIGGS, D., and SEAH, M.P.: Practical Surface Analysis − Vol. 1: Auger and X-ray Photoelectron

Spectroscopy, Wiley, 1990

[7]  WAGNER, C.D., RIGGS, W.M., DAVIS, L.E., MOULDER, J.F., and MUILENBERG, G.E.: Handbook of

X-ray Photoelectron Spectroscopy, Perkin Elmer Corp, Eden Prairie, MN, USA, 1979

[8]  IKEO, N., IIJIMA, Y., NIIMURA, N., SIGEMATSU, M., TAZAWA, T., MATSUMOTO, S., KOJIMA, K., and

NAGASAWA, Y.: Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy, JEOL, Tokyo, 1991

[9]  MOULDER, J.F., STICKLE, W.F., SOBOL, P.E., and BOMBEN, K.D.: Handbook of X-ray Photoelectron

Spectroscopy, Perkin Elmer Corp, Eden Prairie, MN, USA, 1992

[10]  SEAH, M.P., and TOSA, M.: Linearity in electron counting and detection systems, Surface and Interface

Analysis, March 1992, Vol. 18, No. 3, pp. 240-246

[11]  SEAH, M.P., LIM, C.S., and TONG, K.L.: Channel electron multiplier efficiencies−The effect of the pulse

height distribution on spectrum shape in Auger electron spectroscopy, Journal of Electron Spectroscopy, March

1989, Vol. 48, No. 3, pp. 209-218

[12]  SEAH, M.P., SPENCER, S.J., BODINO, F., and PIREAUX, J.J.: The alignment of spectrometers and

quantitative measurements in X-ray photoelectron spectroscopy, Journal of Electron Spectroscopy, December

1997, Vol. 87, No. 2, pp. 159-167

[13]  SHIRLEY, D.A.: High resolution X-ray photoemission spectrum of the valence bands of gold, Physical

Review B, June 1972, Vol. 5, No. 12, pp. 4709-4714

[14] SEAH, M.P., GILMORE, I.S., and SPENCER, S.J.: XPS − Binding energy calibration of electron

spectrometers−4: Assessment of effects for different X-ray sources, analyser resolutions, angles of emission

and of the overall uncertainties, Surface and Interface Analysis, August 1998, Vol. 26, No. 9, pp. 617-641

[15]

ISO 7870,Control charts−General guide and introduction

[16]

ISO 7873,Control charts for arithmetic average with warning limits