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K0133:2007

(1) 

目  次

ページ

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

1

3

  用語及び定義 

1

4

  概要

3

5

  装置

3

5.1

  装置の構成 

3

5.2

  附属装置 

16

6

  水,試薬類及びガス

25

6.1

  水 

25

6.2

  試薬類

25

6.3

  ガス

25

7

  安全及び装置の設置

25

7.1

  安全

25

7.2

  装置の設置 

26

8

  分析装置の最適化

26

8.1

  装置の始動 

26

8.2

  調整

26

8.3

  使用判定項目 

28

9

  分析条件の決定 

29

9.1

  スペクトル干渉

29

9.2

  スペクトル干渉の確認及び測定質量数の選択

29

9.3

  非スペクトル干渉

30

9.4

  非スペクトル干渉の有無確認及び補正法 

30

9.5

  メモリー効果 

30

10

  試料溶液の調製

30

11

  定性分析

34

12

  定量分析 

35

12.1

  検量線用標準液の調製 

35

12.2

  定量法

35

12.3

  データの質の管理

38

12.4

  測定データの解析(濃度算出)

39

13

  同位体比測定 

39

14

  分析結果に記載すべき事項 

41

15

  個別規格で記載すべき事項 

41

附属書 A(規定)高周波プラズマ質量分析計の使用判定項目

43


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(2) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本分析

機器工業会(JAIMA)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべ

きとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。

これによって,JIS K 0133:2000 は改正され,この規格に置き換えられた。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は

もたない。


   

日本工業規格

JIS

 K

0133

:2007

高周波プラズマ質量分析通則

General rules for high frequency plasma mass spectrometry

適用範囲 

この規格は,高周波プラズマ質量分析計を用いて測定対象元素の定性分析,定量分析及び同位体比測定

を行う場合の通則について規定する。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS B 9920

  クリーンルームの空気清浄度の評価方法

JIS K 0116

  発光分光分析通則

JIS K 0211

  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0215

  分析化学用語(分析機器部門)

JIS K 0553

  超純水中の金属元素試験方法

JIS K 0557

  用水・排水の試験に用いる水

JIS Z 8402-1

  測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第 1 部:一般的な原理及び定義

JIS Z 8402-2

  測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第 2 部:標準測定方法の併行精度及

び再現精度を求めるための基本的方法

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0116JIS K 0211JIS K 0215JIS Z 8402-1 及び JIS Z8402-2

によるほか,次による。

なお,括弧内の対応英語は,参考のために示す。

3.1

高周波プラズマ  (high frequency plasma)

ラジオ波領域の高周波電力を誘導結合させて発生する誘導結合プラズマ(ICP)及びマイクロ波領域の

高周波電力によって誘導されて発生するマイクロ波誘導プラズマ(MIP)

3.2

高周波プラズマ質量分析計  (high frequency plasma mass spectrometer)

試料に含まれる測定対象元素を高周波プラズマによってイオン化し,生成したイオンを質量分析計に導

入し,測定対象元素の質量/電荷数(m/z)におけるイオンの個数を測定することによって元素又は同位体

を分析する装置。


2

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3.3

イオン化部  (ionization source)

測定対象元素をイオン化するための高エネルギー源である高周波プラズマ及び高周波プラズマに電気エ

ネルギーを供給するための電源から構成する部分。

3.4

インターフェース部  (interface)

大気圧の高周波プラズマ中で生成したイオンを,高真空状態の質量分析計に効率よく導入するために差

動排気された,サンプリングコーン,スキマーコーンなどから構成する部分。

3.5

質量分離部  (mass separator)

イオンを電場及び/又は磁場の中を通過させることによって,質量/電荷数(m/z)の値に応じて分離す

る部分。

3.6

スペクトル干渉  (spectral interference)

測定対象元素の質量/電荷数(m/z)に近い m/の値をもつ原子又は多原子イオンによる質量スペクトル

の重なりに起因する干渉。

3.7

非スペクトル干渉  (non-spectral interference)

高周波プラズマ質量分析計を用いて測定するときに生じる干渉のうち,スペクトル干渉を除くすべての

干渉。

3.8

メモリー効果  (memory effect)

以前に分析した試料又は検量線用標準液に含まれていた元素が,高周波プラズマ質量分析計又はその附

属装置内に残留し,その一部が現在分析中の試料の測定対象元素の信号に重なって現れる現象。

3.9

分解能  (resolution)

質量分析計が近接した 2 本のスペクトルを分離できる限界の能力。

3.10

装置検出下限  (instrument limit of detection,ILOD)

検量線用ブランク液を 10 回測定したときに得られる信号の標準偏差の 3 倍の信号を与える濃度。

3.11

方法検出下限  (method limit of detection,MLOD)

操作ブランクを連続 10 回測定したときに得られる信号の標準偏差の 3 倍の信号を与える濃度。

3.12

定量下限  (limit of quantification,LOQ)

操作ブランクを連続 10 回測定したときに得られる信号の標準偏差の 10 倍の信号を与える濃度。操作ブ

ランクを差し引いて分析値を求めた場合には,標準偏差の 14.1(= 2 ×10)倍の信号を与える濃度。

3.13

アバンダンス感度  (abundance sensitivity)

質量スペクトルのピークのすそ(裾)が隣接する質量数の位置に重なる割合を,ピーク高さとの比で表


3

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した値。

3.14

検量線用標準液  (calibration standard)

検量線を作成するために用いる既知濃度の測定対象元素を含む溶液。

3.15

検量線用ブランク液  (calibration blank)

測定対象元素の濃度がゼロで,検量線用標準液と同じ組成から成る溶液。

3.16

内標準元素  (internal standard element)

高周波プラズマ質量分析計における非スペクトル干渉及び感度の時間変動を補正するため,検量線用標

準液,検量線用ブランク液及び測定用試料溶液に同量添加する元素。

3.17

データの質の管理  (quality control)

データの信頼性を確保するため,分析が所定の基準に従って正しく行われていることを保証する手続き。

3.18

データの質の管理用溶液  (quality control solution)

希釈及び/又は混合して調製した検量線用標準液の安定性及び有効性の確認,装置性能の初期検査並び

に定期検査のために用いる既知濃度の測定対象元素を含む溶液。

3.19

操作ブランク  (laboratory reagent blank)

測定対象元素又は干渉元素の分析室環境,試薬類及び器具類からの汚染の有無を調べるため,分析操作

中に使用するガラスなどの器具類及び装置との接触,並びに溶媒,試薬及び内標準元素の添加を含めて,

試料と全く同様に処理した水,又は測定対象元素を含まないマトリックスが与える信号。

概要 

高周波プラズマ質量分析法では,液体試料は,試料導入部のネブライザーで霧状にした後,キャリヤー

ガスによって高周波プラズマに導入する。気体試料は,直接キャリヤーガスに混合して導入する。固体試

料の場合は,酸分解によって溶液化後,液体試料と同様に扱うか,又はレーザーアブレーションなどで微

粒子化後,高周波プラズマに導入する。導入した試料は,大気圧下のプラズマで加熱分解され,試料中の

測定対象元素はイオン化される。イオン化された元素は,真空排気したインターフェース部を通りイオン

レンズ光学系で収束された後,質量分離部へ導かれ,質量/電荷数(m/z)に応じて分離されて検出器に入

り,電気信号として出力される。ここで,出力信号に関しては,質量スペクトルの表示,検量線の作成,

測定対象元素の濃度換算などのデータ処理が行われ,ディスプレイ,プリンターなどに分析結果として表

示される。

装置 

5.1 

装置の構成 

高周波プラズマ質量分析計は,試料導入部,イオン化部,インターフェース部,イオンレンズ部,質量

分離部,検出部,ガス制御部,真空排気部,システム制御部及びデータ出力部から構成する。

図 に装置

の基本的な構成の一例を示す。


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図 1−装置の基本構成(一例)

5.1.1 

試料導入部 

試料導入部は,高周波プラズマに液体試料を導入するための部分で,ネブライザー及びスプレーチャン

バーから構成する。送液用のポンプを併用することもある。

図 に試料導入部の例を示す。試料導入に用

いるキャリヤーガスの流量又は圧力は,ガス制御部によって精度よく制御する必要がある。


5

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図 2−試料導入部(一例)

a) 

送液ポンプ  送液ポンプは,構造的に自然吸引できないネブライザーに一定流量の試料を導入するた

めに用いる。自然吸引が可能なネブライザーにおいても,特に,粘性による影響を抑制する目的で用

いる。ペリスタルティックポンプがよく用いられるが,シリンジポンプ又はガス圧を利用した送液法

を用いることもある。

b) 

ネブライザー  ネブライザーは,液体試料を高圧高速のガス流によって霧に変えるための装置である。

先端ノズル近傍で生じる負圧によって,液体試料の自然吸引が可能なものと,送液用のポンプを必要

とするものとがある。前者は同軸形,クロスフロー形などがあり,後者は V 溝形,パラレル形などが

ある。同軸形はガラス製又は石英製のものがよく使われるが,PFA(パーフルオロアルコキシエチレ

ン・テトラフルオロエチレン共重合体)などの樹脂製のものもある。クロスフロー形のノズルはガラ

ス,石英,白金又はサファイア製のものが多い。V 溝形,パラレル形のネブライザーは樹脂製のもの


6

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がよく使われる。液体試料の導入量は毎分 20 µL∼2 mL 程度となる。導入量が高いと感度も高くなる

が,霧同士が衝突・合体して粒径が大きくなり c)のスプレーチャンバーで捕集されてしまうため,実

際にプラズマへ運ばれる量は,ネブライザーの導入量に比例しない。低流量のネブライザーは一般的

に効率が高い。

図 にネブライザーの例を示す。

図 3−ネブライザー(一例)

c) 

スプレーチャンバー  ネブライザーから粒径の大きい霧をプラズマに導入すると十分に分解されない

ので,粒径の小さい霧だけを選別する必要がある。スプレーチャンバーはその目的のために設けるも

ので,二重管形,サイクロン形,ホーン形などがある。5∼20 µm より大きい霧をスプレーチャンバー


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の器壁に凝集させて小さい霧だけを通過させるが,インパクターを設けて積極的に大きい霧を粉砕す

るものもある。スプレーチャンバーは,霧の選別,輸送のほかに,ネブライザーで生じるガス流の揺

らぎに対する緩衝(ダンパー)の機能を果たす。

図 にスプレーチャンバーの例を示す。

図 4−スプレーチャンバー(一例)

5.1.2 

イオン化部 

イオン化部は,試料を原子に分解し,更に励起・イオン化するためのイオン化源(高周波プラズマ)と,

これを維持するための電源及びその制御回路とから成る。高周波プラズマは,誘導結合プラズマ(ICP)

とマイクロ波誘導プラズマ(MIP)とがある。電源周波数は,ICP において 27.12 MHz 又は 40.68 MHz で


8

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あり,MIP においては 2.45 GHz を適用する。これらの周波数は,水晶発振子で制御するか,自励式発振で

制御する。

a) 

誘導結合プラズマ(ICP)  ICP は,図 に示すように,高周波誘導コイルで囲った石英製のトーチ

内で生成する。トーチは三重管から成り,中心管(インジェクター)は石英のほかにアルミナ,サフ

ァイア,白金製などもある。インジェクターからキャリヤーガスとともに試料を導入する。プラズマ

を形成するガスにはアルゴンを用いるが,窒素,ヘリウム,酸素又はこれらのガスとアルゴンとの混

合ガスを用いることもある。ガスの流量又は圧力は,精度よく制御する必要がある。

図 5−誘導結合プラズマ(一例)

b) 

マイクロ波誘導プラズマ(MIP)  MIP は,図 に示すように,キャビティーを装備したトーチ内で

生成する。通常,トーチは,二重管から成り,中心管からキャリヤーガスとともに試料を導入する。

プラズマを形成するガスには窒素をよく用いるが,アルゴン,ヘリウム,酸素又はこれらのガスと窒

素との混合ガスを用いることもある。ガスの流量又は圧力は,精度よく制御する必要がある。

図 6−マイクロ波誘導プラズマ(一例)

5.1.3 

インターフェース部 

インターフェース部は,大気圧下のプラズマと真空状態の質量分離部とを結ぶ境界を形成し,サンプリ

ングコーン及びスキマーコーン並びにゲートバルブから成る 200∼400 Pa 程度の準真空領域である。プラ


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ズマで生成するイオンを効率よく質量分離部へ導く役割を果たす。

a) 

サンプリングコーン  サンプリングコーンは,先端に直径 1 mm 程度のオリフィスをもった円すい形

のもので,水又はガスで冷却する。ニッケル又は銅がよく用いられ,オリフィス近傍が白金製のもの

もある。白金製のものは,硫酸,りん酸及び有機溶媒の導入に用いる

b) 

スキマーコーン  スキマーコーンは,先端に直径 0.3∼1 mm 程度のオリフィスをもった円すい形をし

ている。円すい角は,一般にサンプリングコーンより小さい。サンプリングコーンと同様,ニッケル,

銅,白金などで作られる。スキマーコーンの円すい角とオリフィス径とは分析感度に重要な影響を与

えるので,一定に維持する必要がある。

c) 

ゲートバルブ  ゲートバルブは,装置が休止状態にあるときに,質量分離部の真空状態を保つための

機構である。休止状態においては,インターフェース部は大気圧下にある。

5.1.4 

イオンレンズ部 

イオンレンズ部は,プラズマからイオンを効率よく引き出し,質量分離部へ導くための部分である。同

時に,中性粒子及び紫外光を遮断して検出されないようにする役割も果たす。これらの粒子及び光子は,

バックグラウンドの原因となる。1 枚又は 2 枚の引出し電極,粒子及び光子の遮へい装置,収束電極から

成る。特に,引出し電極をもたず収束電極と兼ねる装置もある。遮へい装置(

図 参照)は,遮光板,軸

ずらしイオンレンズ,90 度偏向電極,90 度偏向ミラー,斜めイオンガイドなどがある。


10

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図 7−種々の遮へい装置を用いたイオンレンズ部

5.1.5 

質量分離部 

質量分離部は,イオンレンズ部から入射したイオンを,真空中のイオンに対する電場・磁場の電磁場作

用を利用して,質量ごとに時間的・空間的に分離する部分であり,四重極形質量分析計,磁場形二重収束

質量分析計,飛行時間形質量分析計,三次元四重極形質量分析計などがある。代表的なものについて,次

a)遮光板遮へい装置

b)軸ずらしイオンレンズ遮へい装置

c)90度偏向電極装置

d)90度偏向ミラー装置

e)斜めイオンガイド装置


11

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に示す。

a) 

四重極形質量分析計  四重極形質量分析計は,四重極電極を通過するフィルター作用によって測定対

象元素のイオンだけを質量分離する。

図 に分離の原理を示す。四重極電極に印加された正及び負の

直流電圧(U)並びに高周波電圧(Vcosωt)によって,四重極電極で囲まれた空間にイオンを強制振

動させる双曲面の高周波電界が形成される。高周波電界の周波数,電圧,内接円の半径(r)の関係に

対応した測定対象元素のイオンだけを,安定な振動で高周波電界の中心に沿って移動させ,そのほか

のイオンの振動振幅を大きくして排除する。その結果,測定対象元素のイオンだけが四重極電極を通

過することができる。通過イオンの質量は,印加電圧に対して直線関係にあるため印加電圧を変化さ

せて質量スペクトルを測定する。

図 8−四重極形質量分析計の分離の原理

b) 

磁場形二重収束質量分析計  磁場形二重収束質量分析計は,磁場及び電場セクタを用いてイオンをそ

の質量に応じて分離する。このとき,イオンがたどる軌道は,イオンの質量及び運動エネルギー(速

度)によって決まる。したがって,イオンをその質量に応じて分離するにはイオンがもつ運動エネル

ギーの違いが問題となる。磁場形質量分析計では,イオンのもつ運動エネルギーの違いは質量分解能

低下の直接的な原因となるため,より高い質量分解能を得るためには,電場によるエネルギー選別が

必要となる。この電場と磁場とを組み合わせた質量分析計を磁場形二重収束質量分析計という。イオ

ンの初期方位の広がりとエネルギーの広がりとの二つを収束させることができるのでこの名称がつい

た。イオン源から,電場−磁場の順に配列したものを正配置形二重収束といい,磁場−電場の順に配

列したものを逆配置形二重収束(

図 9)という。いずれの配置も市販されているが,高分解能を得る

目的では,一般に逆配置形が用いられている。逆配置形が有利な理由は,電場とイオン検出器との間

の距離を短縮できる点にある。イオンと残留ガスとが衝突すると,イオンは運動エネルギーの一部を

損失し,質量分解能が低下する。つまり,逆配置形を採用することによって,検出器により近い位置

でのエネルギーを分別することができ,エネルギー損失の頻度が下がり,質量分解能を高めることが

できる。磁場形質量分析計では,一般的にオブジェクトスリットとイメージスリットの幅によって質

量分解能を調整することができ,スリットを絞り込むほど高分解能が得られるが,その分,分析感度


12

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は低下する。

1)

  単一検出器形質量分析計  検出器を一つしかもたない単一検出器形質量分析計は,検出器に入射す

るイオンの質量を順次走査することで逐次的に分析対象元素を測定する。質量走査は,磁場強度を

変化させて質量数の異なる元素を順次検出する場合と,イオンの加速エネルギーを変化させて,イ

オンの質量数を変化させる場合とがある。前者は,イオンの運動エネルギーを変化させないため,

質量分析計内でのイオンの透過効率が,イオンの質量の違いに応じて大きく変動しないという特徴

をもつが,四重極形質量分析計と比較して質量走査速度は一けた以上遅い。後者の方式の場合は,

磁場強度を固定するため高速な質量走査・逐次検出が可能である。その反面,対応質量数範囲は特

定質量数の±30  %程度であり,質量数全域(質量数 6∼260)を測定するには磁場強度を数回変更

する必要がある。また,イオンの加速エネルギーを変化させて質量走査を行う方式では,逆配置形

の配列が必要となる。同位体比測定を行う場合には,磁場強度又はイオンのエネルギーを変化させ

ながら,順次,同位体信号強度を計測する。二重収束形ではフラット形のピークが観測可能なため,

四重極形と比較して計測精度の向上が期待できるものの,分析元素信号が過渡的な場合,時間的な

変化が大きい場合などでは,同位体分析精度の低下は避けられない。

図 9−磁場形二重収束質量分析計(一例)

2)

  多重検出器形質量分析計  同位体比測定の繰返し精度を更に向上させるためには,測定対象となる

すべての同位体信号を同時に検出することが必要である。イオン源で生成した測定対象元素のイオ

ンを,質量走査することなく同時に検出するためには,磁場セクタ後方に複数の検出器を配置する

手法(多重検出法)が有効である。多重検出には,正配置形のセクタ配列(

図 10 参照)が不可欠で

あり(逆配置形の二重収束には適用できない。

図 参照。),最もイオン検出効率が高く,また,正

確な同位体データを提供する手法となっている。装置によって異なるが,磁場又はイオンのエネル

ギーを変化させることなく,同時に 5∼16 個程度の同位体信号を検出することができる。

なお,電場セクタの替わりにコリジョン・リアクションセル(5.2.1 参照)を用いてイオンのエネ

ルギー収束を行う場合もある。


13

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図 10−多重検出器形質量分析計(一例)

5.1.6 

検出部 

検出部は,質量分離部で分離されたイオンを検出し,読み取り可能な信号に変換する部分である。検出

方式は,パルス検出方式及びアナログ検出方式がある。

パルス検出方式は,測定対象元素のイオンを一つ一つ二次電子増倍管検出器で 10

6

∼10

8

倍の数の電子,

すなわち,電流パルスに増幅し,その電流パルスを検出回路で電圧パルスに変換した後,電圧パルスを一

定時間計数してイオンカウント数とする方法である。

アナログ検出方式は,測定対象元素のイオン電流を二次電子増倍管検出器で 10

3

∼10

6

  倍の電流に増幅し

た後,検出回路で直流電圧に変換し,その電圧を一定時間測定してイオンカウント数とする方式と,イオ

ン電流をファラデーカップ検出器によって直接電流測定する方式とがある。

パルス検出方式の最大計数率は,数 Mcps(counts per second)である。それ以上のイオン電流を検出す

る場合は,アナログ検出方式と組み合わせて用いることもある。アナログ検出方式で二次電子増倍管検出

器を用いる場合は,電流増幅率を変化させて測定できるので,ダイナミックレンジを広く取ることが容易

である。代表的な二次電子増倍管検出器及びファラデーカップ検出器を,次に示す。

a) 

チャンネル形二次電子増倍管検出器  図 11 に概略を示す。チャンネル形二次電子増倍管は,ガラス又

はセラミック製の曲がったパイプ状で,その内側表面は,数十 MΩ の高抵抗をもった連続抵抗体であ

り,二次電子放出面を形成する。入口部分に入射したイオンの衝突によって数個の二次電子が放出さ

れ,これらは,パイプ出口に向かう電位こう配に沿って加速され,近傍の内壁に衝突して再度,二次

電子が放出される。この衝突と二次電子放出との繰返しによって最終的に 10

6

∼10

8

  倍の電流がアノー

ドを通じて検出回路に入力される。

b) 

ディスクリート形二次電子増倍管検出器  図 12 に概略を示す。ディスクリート形二次電子増倍管は,

14∼26 段連続して並べたダイノードに二次電子放出面が取り付けられている。各ダイノード間の電圧

差(最大 200 V 程度)で,二次電子を次の段の二次電子放出面に衝突させ,この繰返しによって最終

的に 10

6

∼10

8

  倍の電流がアノードを通じて検出回路に入力される。


14

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図 11−チャンネル形二次電子増倍管検出器(一例)

図 12−ディスクリート形二次電子増倍管検出器(一例)

c) 

ファラデーカップ検出器  ファラデーカップ検出器は,カップ状の電極と微小電流計とで構成する。

図 13 に概略を示す。カップの底に衝突したイオンを電流(イオン電流)として微小電流計で計測する。

このとき,二次電子が発生するが,奥行きを深くするとともにサプレッサー電極に−200 V 程度の電

圧を印加し,二次電子が外に出ないようにしている。微小電流計の電流感度は,おおよそ 1 fA(10

15

A)程度である。したがって,イオン電流に比例する測定対象元素の濃度は 1∼10 fA(10

15

∼10

14

A)

以上のイオン電流を生成できる濃度が必要である。一般に,ファラデーカップ検出器は,測定対象元

素の濃度が 1∼1 000 µg/L 程度の場合に有効である。

図 13−ファラデーカップ検出器(一例)

5.1.7 

ガス制御部 

ガス制御部は,プラズマを形成するためのアルゴン,窒素,ヘリウム,酸素などのプラズマガス及び補

助ガス並びにネブライザーから試料を導入するキャリヤーガスの流量又は圧力を制御するために用いる。


15

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マスフローコントローラがよく用いられるが,オリフィス式の流量制御によることもある。

5.1.8 

真空排気部 

真空排気部は,インターフェース部,イオンレンズ部,質量分離部及び検出部を真空状態に保つために

用い,通常 3 段の差動排気が行われる。インターフェース部の圧力は 200∼400 Pa 程度で,油回転ポンプ

図 14 参照)をよく用いるが,特に,クリーンルーム内での使用には油汚染のないドライポンプ(図 15

参照)

を用いることが多い。

四重極形質量分析計では,

イオンレンズ部から検出部までの圧力は 0.1∼10 mPa

程度まで下げる必要があり,2 段階の排気を行う。この排気には,油回転ポンプ,ドライポンプなどの粗

排気ポンプと,ターボ分子ポンプ(

図 16 参照),油拡散ポンプ,クライオポンプなどの高排気ポンプとを

組み合わせて使用する。インターフェース部の真空は,通常,ピラニーゲージでモニターし,質量分離部

の真空計には,ペニングゲージを用いる。

図 14−油回転ポンプの断面図(一例)

図 15−ドライポンプ(ルーツ式)の例


16

K0133:2007

   

図 16−水平軸方式のターボ分子ポンプ(一例)

5.1.9 

システム制御部 

システム制御部は,装置の各部の動作を制御する部分である。試料導入部では,ペリスタルティックポ

ンプの回転数などの制御,イオン化部では,高周波出力,ガス流量・サンプリング位置などの制御,イン

ターフェース部及びイオンレンズ部では,バルブの開閉,イオンレンズへの印加電圧の制御,真空排気装

置の作動など,質量分離部では,質量走査に関する制御,並びに検出部では,検出器の感度設定,データ

取込み条件などの制御を行う。また,オートサンプラーなどの附属装置の制御を行うこともある。

5.1.10 

データ出力部 

データ出力部は,検出部から制御部を通じて得られた信号を処理し,分析データとして検量線,測定結

果などを表示・出力する部分である。表示は,ディスプレイ及びプリンターで行うが,ラン(LAN)を通

じて上位のデータ制御部へ転送することもある。

5.2 

附属装置 

5.2.1 

コリジョン・リアクションセル 

コリジョン・リアクションセルは,

測定対象元素以外のイオンが引き起こすスペクトル干渉を除去又は低

減するための装置であり,質量分離部の前に設ける。スペクトル干渉を生じるイオンとは,プラズマを構

成するアルゴン,その不純物,大気の構成成分,試料溶液の構成成分及び共存成分並びにこれらの化合物

によるイオンを意味する。外部から気体分子を導入したセルと呼ぶ箱の中をプラズマからのイオンが通過

するときに,気体分子とイオンとの間で相互作用が生じる。この相互作用の結果,測定対象元素イオンと

スペクトル干渉イオンとの選別が行われ,後者のイオン量は,前者に比べて大幅に低減する。セルの中に

は,複数の電極から成るイオンガイドが設けられる。電極の本数によって,四重極,六重極,八重極など

と分類される。セルには,水素,メタン,アンモニア,ヘリウム,キセノン又はこれらの混合ガスなどが

導入される。

図 17 にコリジョン・リアクションセルの例を示す。コリジョン・リアクションセル装置は,

スペクトル干渉除去のために四重極形質量分析計と組み合わせて用いることが多いが,相互作用の結果と

してイオンの運動エネルギーの収束も生じるので,

磁場形の質量分析計と組み合わせて用いることもある。


17

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図 17−コリジョン・リアクションセル(一例)

5.2.2 

オートサンプラー(又は自動試料供給装置) 

オートサンプラー(又は自動試料供給装置)は,多数の試料を自動的に,順次試料導入部に供給するた

めの装置である。オンラインでの自動希釈,自動内標準液添加及び検量線用標準液添加の機能をもつもの

もある。

5.2.3 

レーザーアブレーション装置 

レーザーアブレーション装置は,レーザー光を固体試料に照射して生じた微粒子と気化した試料とを,

キャリヤーガスによってプラズマ(イオン化部)に搬送する試料導入装置である。レーザーアブレーショ

ン装置の例を

図 18 に示す。この装置を用いると,固体試料を直接分析できる,形状に対する制約が比較

的少ない,導電性に関する制約がない,局所分析を可能にするなどの特長がある。一方で,試料によるレ

ーザー光反射の影響を受けることもある。

レーザーは,Nd:YAG の高調波レーザー,エキシマーなどのパルスレーザーがよく用いられる。パル

スレーザーの照射ごとに生成する微粒子及び気化試料の量が変動しやすく,ネブライザー[5.1.1 b)参照]

を用いる場合に比べて再現性に乏しい。そのため,内標準法をよく用いる。検量線の作成には,共存成分

の類似した標準物質が望ましい。

キャリヤーガスにはアルゴンを用いるが,ヘリウムを用いることもある。この場合には,レーザー照射

直後の微粒子が急速冷却するので,

粒子の成長が抑制されて搬送効率が上がり,

より高い感度が得られる。


18

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図 18−レーザーアブレーション装置(一例)

5.2.4 

電気加熱気化試料導入装置 

電気加熱気化試料導入装置は,少量の試料溶液(例えば,20 µL)を黒鉛炉又は高融点金属製のヒーター

に注入した後,不活性ガス雰囲気中で溶媒,一部マトリックス成分などを選択的に除去した後,残った測

定対象物質を瞬時に気化させて,キャリヤーガスによって高周波プラズマ質量分析計に導入する装置であ

る。電気加熱気化試料導入装置の例を,

図 19 に示す。

ネブライザーを用いる場合に比べて導入効率が高いため,試料量が少なくてもほとんどの元素で約 10

倍以上感度が向上する。さらに,酸及び溶媒並びに揮発性成分を蒸発除去できるため,これらに起因する

スペクトル干渉を除くことができる。しかし,加熱気化導入では,データが短時間の過渡的な信号として

得られるため,1 回の分析で測定できる元素数に制約がある。また,測定対象元素が広い質量範囲にわた

っている場合には,測定条件の最適化が難しい。


19

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図 19−電気加熱気化試料導入装置(一例)

5.2.5 

水素化物発生装置(水素化合物発生装置) 

水素化物発生装置は,試料溶液中のひ素,セレン,アンチモン,ゲルマニウムなどをテトラヒドロほう

酸ナトリウムによって揮発性の水素化物に還元した後,気液の分離を行って気体成分だけをキャリヤーガ

スによって高周波プラズマ質量分析計に導入する装置である。水素化物発生装置の例を,

図 20 に示す。

ネブライザーを用いる場合に比べて,試料導入効率が向上するため,10 倍程度感度が向上する。さらに,

水素化物が気体として分離されるため,溶液中のマトリックスによるスペクトル干渉及び非スペクトル干

渉を除くことができる。しかし,水素化物発生過程で生成する水素が高周波プラズマに導入されると,高

周波プラズマが不安定になる場合があるので,導入初期には水素量が多くなりすぎないように注意する必

要がある。水素化物発生効率は共存する酸及び遷移金属の影響を大きく受けたり,また,水素化物生成元

素相互の干渉が大きいため,注意する必要がある。


20

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図 20−水素化物発生装置(一例)

5.2.6 

超音波ネブライザー 

超音波ネブライザーは,液体試料を超音波振動子によって霧化した後,加熱・冷却して脱溶媒した試料

をキャリヤーガスによって高周波プラズマ質量分析計に導入する装置である。

超音波ネブライザーの例を,

図 21 に示す。ネブライザーを用いる場合に比べて試料導入効率が高いため,ほとんどの元素で約 10 倍以

上感度が向上する。しかし,マトリックス成分も測定対象元素と同様に導入効率が上がり,干渉が大きく

なる可能性があるため,内標準法と併用することが望ましい。また,メモリー効果が大きいため,高濃度

の成分を含む試料溶液を分析した後は,洗浄時間を十分にとる必要がある。

図 21−超音波ネブライザー(一例)

5.2.7 

脱溶媒試料導入装置 

脱溶媒試料導入装置は,ネブライザーによって霧化した液体試料を加熱し,続いて冷却又はメンブラン

フィルターで脱溶媒した後,キャリヤーガスによって高周波プラズマ質量分析計に導入する装置である。

脱溶媒試料導入装置の例を,

図 22 に示す。ネブライザーを単独で用いる場合に比べ,試料導入効率が良


21

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くなるため,ほとんどの元素で約 5 倍以上感度が向上する。また,脱溶媒の効果で,酸化物生成比(CeO

+

/Ce

+

など)も減少する。超音波ネブライザー(5.2.6 参照)を用いる場合に比べて,試料導入量を少なく(例え

ば,100 µL/min 程度)できることから微少量試料にも適用できる。しかし,マトリックス成分も測定対象

元素と同様に導入効率が上がり,干渉が大きくなる可能性があるため,注意する必要がある。

図 22−脱溶媒試料導入装置(一例)

5.2.8 

フローインジェクション装置 

フローインジェクション装置は,試料導入系の細管内に流れる試薬溶液(キャリヤー溶液)に,バルブ

を切り替えて一定量の少量の測定用試料溶液を注入し,オンラインで化学反応させた後,高周波プラズマ

質量分析計に導入する装置である。ただし,化学反応を伴わずに,キャリヤー溶液による洗浄機能を利用

する場合もある。フローインジェクション装置の例を,

図 23 に示す。

この装置は,閉鎖系なので分析室内環境からの汚染が少ない,注入する試料量が通常 500 µL 以下と少な

い,短時間に多数の試料を分析できるなどの利点がある。さらに,試料を断続的に導入するので高濃度試

料の測定後でもメモリー効果が小さいなどの利点もある。試料を導入しないときは,キャリヤー溶液によ

って試料導入系が常に洗浄されているため,サンプリングコーンの目詰まり及び腐食が少なく長時間安定

して測定できる。

マイクロサンプリング,オンライン希釈,水素化物発生法,マトリックス分離カラム法などと組み合わ

せることもできる。


22

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図 23−フローインジェクション装置(一例)

5.2.9 

耐ふっ化水素酸試料導入装置 

耐ふっ化水素酸試料導入装置は,ふっ化水素酸を含む試料の直接導入を目的として,試料導入部(ネブ

ライザー及びスプレーチャンバー)

5.1.1 参照)及びイオン化部(トーチ)

5.1.2 参照)に不活性化処理

を施したものである。ネブライザーの先端ノズルは,白金,サファイア又は PFA 製のものがよく用いられ,

またスプレーチャンバー[5.1.1 c)参照]には PFA,ポリプロピレン又は PTFE(ポリテトラフルオロエチ

レン)などの不活性樹脂が用いられる。トーチの中心管(サンプルインジェクター)は白金,アルミナ又

はサファイア製のものがよく用いられる。

5.2.10 

マトリックス分離カラム装置 

マトリックス分離カラム装置は,まずオンラインで試料溶液の pH を調整した後,測定対象元素をカラ

ム充てん剤(イオン交換樹脂,キレート樹脂など)に捕そくすることによってマトリックスからの分離又

は濃縮を行い,次に,溶離液によってカラムに捕そくした測定対象元素を溶出させて高周波プラズマ質量

分析計に導入する装置である。マトリックス分離カラム装置の例を,

図 24 に示す。マトリックス(アル

カリ金属など)から測定対象元素を分離して測定できるため,これらに起因する干渉を軽減でき,また,

濃縮によって高感度化を図ることができる利点がある。

なお,試料溶液中に充てん剤の吸着容量を超える成分が含まれている場合及び試料溶液のpHが緩衝液の

pH調整能力を超えている場合には,測定対象元素の吸着が不十分になり,測定誤差を生じることがある。

充てん剤の表面積が大きいためにメモリー効果が大きくなることがあるので,カラム充てん剤の洗浄は十

分に行う必要がある。

図 24−マトリックス分離カラム装置(一例)


23

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5.2.11 

クロマトグラフ 

クロマトグラフは,固定相と移動相間との試料成分の吸着,又は分配平衡の違いを利用して試料成分を

分離する装置で,高周波プラズマ質量分析計と組み合わせることによって,元素を化学形態(化学種)別

に分析する(スペシエーション分析とも呼ばれる。

)ことが可能となる。例として,Cr(Ⅲ)及び Cr(Ⅵ)

のような酸化数別に定量する場合と,Hg

2

及び CH

3

Hg

のような有機置換基の有無別に定量する場合とが

ある。元素は化学形態が異なると物性及び作用が大きく異なることから,近年は,環境及び生命科学の分

野でこの手法を用いることが多い。液体クロマトグラフ(LC)の場合,移動相流量が高周波プラズマ質量

分析計の試料導入量とほぼ等しいため,両者を PTFE チューブなどで接続するものが多い。液体クロマト

グラフの例を,

図 25 に示す。移動相が有機溶媒又は塩類の濃度が高いと,高周波プラズマが不安定にな

ったり,感度が低下したり,サンプリングコーン及びスキマーコーンに炭化物又は塩類が析出したりする

ため注意が必要である。また,金属による汚染を避けるためには,液体クロマトグラフの流路及び接液部

に金属面が露出しない構造の送液ポンプ,バルブ,カラムなどが必要である。ガスクロマトグラフ(GC)

の場合,特に,キャピラリーGC では,キャリヤーガス流量が少ないため,メイクアップガスなどを追加

して,高周波プラズマに導入するためのインターフェースが必要である。また,両者を接続する流路は,

化合物が凝縮しないように高温に保持しておかなければならない。

なお,クロマトグラフは,化学形態別分析以外にも,測定対象元素とマトリックス成分との分離,測定

対象元素同士の分離(例えば,希土類元素相互の分離)によるスペクトル干渉の低減などにも用いられる。

図 25−液体クロマトグラフ(一例)

5.2.12 

キャピラリー電気泳動装置 

キャピラリー電気泳動装置(CE)は,分離媒体を満たしたキャピラリーの両端間に高電圧を印加して分

離する装置の総称である。分離媒体として,緩衝溶液(泳動液)を用いる。キャピラリーの両端間に高電

圧を印加すると,正電荷をもつ成分は泳動液中を陰極方向に,負電荷をもつ成分は陽極方向に,それぞれ

の電荷と分子の大きさによって決められる速度で泳動する。同時に,キャピラリー内面に固定された負電


24

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荷のため電気浸透流が発生し,泳動液全体は陰極方向に移動する。このため,通常の CE では,最初に正

電荷をもつ成分,次に中性成分,最後に負電荷をもつ成分がキャピラリーの陰極側から排出される。泳動

液の流量(電気浸透流)はごく少量であるため,高周波プラズマ質量分析計のネブライザーの吸引圧力に

よって乱され,CE の分離効率が低下するおそれがある。CE と高周波プラズマ質量分析計とを接続するた

めのインターフェースは,電気浸透流の乱れを抑制するためのメイクアップ溶液流路,CE の導通をとる

ための電極,微少量ネブライザーなどから構成する。インターフェースの例を,

図 26 に示す。

図 26−キャピラリー電気泳動装置のインターフェース(一例)

5.2.13 

有機溶媒導入装置 

有機溶媒導入装置は,有機溶媒をプラズマ内で燃焼して排出するために,酸素の供給口とその酸素の流

量制御系とから成る。酸素は,キャリヤーガス又は補助ガスに加える。酸素をキャリヤーガスに加える装

置の例を,

図 27 に示す。ドレンは,耐有機溶媒性の材質を用いる。試料の揮発性が高い場合には,イン

ジェクター径が特に小さいトーチ(5.1.2 参照)を用いてプラズマ内での線速度を高め,炭素がプラズマ外

に回り込んで高周波マッチングが乱れることを防ぐ必要がある。低流量形のネブライザー[5.1.1 b)参照]

をよく用いる。ペリスタルティックポンプ[5.1.1 a)参照]のチューブは有機溶媒に対する耐性が低いため,

試料溶液の送液は,

自然吸引によって行うことが多い。

活性の高い酸素及び炭素による劣化を防ぐために,

サンプリングコーン及びスキマーコーンには白金製のオリフィスのものを用いる必要がある。


25

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図 27−キャリヤーガスに酸素を導入する位置(一例)

水,試薬類及びガス 

6.1 

 

高周波プラズマ質量分析に用いる水は,JIS K 0557 に規定する A3 又は A4 を用いる。この水に含まれる

不純物が,測定対象元素に干渉しないことを確認しておく。

6.2 

試薬類 

試薬類は,次による。

a)

試薬は,

該当する日本工業規格がある場合には,

その種類の最上級品質又は適切な用途のものを用い,

該当する日本工業規格がない場合には,分析に支障がない品質のものを用いる。

b)

検量線用標準液は,国家標準にトレーサブルな標準液[計量標準供給制度に基づき供給されている

JCSS

(Japan Calibration Service System)のロゴ付き証明書を付した標準液]又はこのような標準液が

ない場合には,一般的な市販の標準液を用いる。

c)

検量線作成用の試薬は,日本工業規格の最上級又はこれと同等の品質のものを用いて調製する。

6.3 

ガス 

ガスは,通常,日本工業規格に規定する純度 99.99  %(体積分率)以上のものを用いる。また,日本工

業規格にない場合には,試験に支障がないものを用いる。

安全及び装置の設置   

7.1 

安全 

次の事項に注意しなければならない。ただし,安全に関するすべての問題の処置を述べているものでは

ない。安全に関する適切な基準の制定,及びすべての規制への適合の確保は,使用者の責務である。

7.1.1 

高圧ガス 

特に,次の事項に注意する。

a)

高圧ガスの取扱いは,諸法令の基準に従う。

b)

液化ガス容器を使う場合,圧力の異常変化,外槽への水滴付着及び液面異常変化に注意する。

c)

高圧ガス容器は,できるだけ戸外に設置し,配管によってガスを装置に導く。

d)

高圧ガス容器は,風通しの良い場所に設置し,直射日光,風雨氷雪などにさらされないようにすると

ともに 40  ℃以下に保つ。


26

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e)

高圧ガス容器は,2 か所以上で固定するなどの地震対策を考慮する。

f)

配管のガス漏れの点検は,石けん液塗布などの方法によって行う。

7.1.2 

装置の取扱い 

装置の取扱いは,次による。

a)

高周波プラズマは,有害な紫外線を放射するので,直視すると目を傷める。装置の修理などで保護カ

バーを外すときは,高周波電源を切って行う。止むを得ずプラズマを観察する場合には,遮光用保護

眼鏡などを使用する。また,手及び顔の皮膚に紫外線照射を受けないように注意する。

b)

磁場形質量分析計を備えた装置では,装置の一部に数千ボルトの高電圧が印加されている。装置作動

中には,質量分析計本体にむやみに触れない。止むを得ず質量分析計に触れる場合は,高圧電源を切

るとともに,必ず残留電圧がないことを確認する。詳細については,各製造業者の取扱説明書を参照

する。

c)

トーチ周りの誘導コイルは,高周波出力が小さい場合でも,生体細胞を傷める高周波を放射している

ので,高周波の遮へいには注意する。

d)

プラズマ点灯中及びプラズマ消灯直後は,トーチボックス及びインターフェース部周辺は高温になっ

ているので,やけどしないように注意する。

e)

試料を噴霧していないときでも,プラズマによってオゾン及び窒素酸化物の有毒ガスが発生すること

がある。

したがって,

十分な排気装置及びその排気装置の故障を知らせる警報装置の設置が望ましい。

f)

プラズマ中でホスゲンなどの有毒ガスを発生する可能性がある塩素系の有機化合物(クロロホルム,

四塩化炭素など)の噴霧は,控える。

7.2 

装置の設置 

装置を設置する部屋は,次の条件を備えなければならない。

a)

装置仕様に指定された温度(例えば,15∼30  ℃)及び相対湿度(例えば,70  %以下)の範囲内であ

り,それらに急激な変化を生じない。

b)

装置を設置する床は,平たんで装置の質量に耐えるだけの強度があり,振動が少ない。

c)

使用する有機溶媒及び有害物質が安全に排出処理でき,部屋の換気が良く,また,ほこりが少ない。

d)

装置に直接日光が当たらない。

e)

供給電源は,装置仕様に指定された電圧,電気容量及び周波数を用いる。

f)

大形変圧器,高周波加熱炉,発振器などからの電磁気誘導を受けないようにする。

g)

所轄の総合通信局へ申請し,事前に許可を得ている。

h)

装置仕様に指定された設置抵抗値以下(例えば,100 Ω 以下)の接地端子がある。

i)

油拡散ポンプなどに冷却水を使用する場合は,装置仕様に指定された水圧,水温で,ごみ及び異物を

含まない軟水を使用できる。冷却水循環装置を使用して,水を循環使用することが望ましい。

分析装置の最適化 

8.1 

装置の始動 

プラズマを点灯し,暖機運転を 15∼30 分間実施する。

8.2 

調整 

装置が安定した後,イオン化部,イオンレンズ部及び質量分離部について,次の調整を行う。

a) 

プラズマ位置  プラズマの中心とサンプリングコーンのオリフィスとの相対位置を調整する。調整は,

測定対象元素のイオンカウント数が最大になるように,トーチ位置を移動して行う。


27

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b) 

質量軸  測定する元素の質量数と質量分離部の質量軸とを一致させる。全質量範囲を調整することが

望ましく,調整には低・中・高質量数の元素を含んだ調整用溶液(取扱説明書参照)を用い,3 質量

数程度を同時にモニターしながら調整する。四重極形質量分析計の場合には,測定質量数に対して,

±0.1 amu(原子質量単位)以内を目安とする。

c) 

分解能  ある質量 のピーク高さの 5  %の高さにおけるピーク幅(amu)を ∆m としたとき,分解能

は m/∆m で表される。磁場形二重収束質量分析計では,m/∆m は質量に無関係な定分解能となる。四重

極形質量分析計では,m/∆m は質量に比例する。すなわち ∆m は質量によらず一定となる。

全質量範囲を調整する必要があるため,調整には質量軸の調整に用いた調整用溶液を用い,質量軸

の調整と同一質量数で行う。四重極形質量分析計の場合には,各スペクトルの ∆m が 0.65∼0.8 amu の

範囲内を目安とする。

図 28 に分解能の概念図を示す。

図 28−分解能

d) 

アバンダンス感度  測定対象元素(質量 m)のピークのすそが隣接した質量(m−1,m+1)の位置に

重なる高さ(C

1

又は C

2

)をピーク高さ(d)で除した値。四重極形質量分析計の場合には,アバンダ

ンス感度は 10

6

∼10

7

である。

図 29 にアバンダンス感度の計算例を示す。


28

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図 29−アバンダンス感度の計算例

e) 

感度  感度の最適化は,イオン化部及びイオンレンズ部のパラメータを調整することによって行う。

全質量範囲にわたって調整することが望ましく,調整には,低・中・高質量数の元素を含んだ調整用

溶液を用い,3 質量数程度を同時にモニターしながら調整する。一般的には,質量軸の調整に使用し

た調整用溶液を用いて同じ質量数における感度の調整を行う。各質量数における感度が高くなるよう

調整し,必要に応じて,酸化物イオン及び二価イオンの生成比が小さくなるように,イオン化部のパ

ラメータを調整する。一般的には,高周波出力を高くすると感度が増加し,酸化物イオンの生成比を

抑制することができるが,高くしすぎると感度が減少することがある。また,キャリヤーガス流量を

上げすぎると,感度が低下し,酸化物イオンの生成比が増加する。トーチとサンプリングコーンとの

距離を短くすると,感度は増加するが,酸化物イオンの生成比も増加する。イオンレンズ部には様々

な方式があるため,装置製造業者が指定する方法で調整を行う。

8.3 

使用判定項目 

分析目的に応じて,次に定める項目を評価する。評価の基準は,必要に応じ個別規格で規定する。

附属

書 に従って実施することが望ましい。

a) 

感度  積分時間 1 秒間当たりのイオンカウント数(cps)

1)

  で判定する。一般的には,1 µg/L 当たりの

イオンカウント数で判定する。測定対象元素の検量線用ブランク液及び測定対象元素の検量線用標準

液をそれぞれ測定し,計算する。

1)

  装置によっては,相対強度で表示する場合がある。

b) 

バックグラウンド  装置に試料を導入しないときに観測される信号で,電気的なノイズ及び高周波プ

ラズマからの光に起因する。1 秒間当たりのイオンカウント数(cps)で,通常は存在しない元素の質

量数で測定する。通常,質量数 8 又は 220 で測定する。

c) 

酸化物イオン及び二価イオンの生成比  セリウム又はバリウム溶液を用い,それぞれの酸化物イオン,

二価イオン及び一価イオンのカウント数を測定し,酸化物イオン及び二価イオンのカウント数を一価


29

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イオンのカウント数で除して求める。

d) 

装置検出下限  装置検出下限は,検量線の傾き及び検量線用ブランク液の繰返し精度から求める。

e) 

短時間安定性  短時間に繰返し測定を行って得られる結果の一致の程度を推定するために,相対標準

偏差を求めて判定する。

f) 

長時間安定性  機器の設置環境及び測定条件によって影響を受ける。この試験で求めた相対標準偏差

から機器の校正の頻度を決定する。

g) 

検量線の直線性  直線性は,測定濃度領域において 4 点以上の検量線用標準液によって確認する。

分析条件の決定 

9.1 

スペクトル干渉 

高周波プラズマ質量分析計では,次に示すスペクトルの重なりによる干渉が生じる。特に,四重極形質

量分析計による測定のときには注意を払うべきである。

a) 

同重体干渉  測定対象元素と妨害元素の原子量が近接している場合には,同重体イオンによる干渉が

発生する。代表的な例としてはアルゴンプラズマをイオン化源とした場合の

40

Ca に対する

40

Ar の重な

り及び鉛同位体分析を行うときの

204

Pb に対する

204

Hg の重なりなどがある。

b) 

多原子イオン  アルゴンプラズマをイオン化源とする場合には,純水を試料として導入した場合でも

ArO,ArOH,Ar

2

などのアルゴンに起因する多原子イオンのスペクトルが現れる。塩酸を添加した場

合には,ClO,Cl

2

,ArCl などの塩素原子を含む多原子イオンが生成し,硫酸を添加した場合には,硫

黄原子を含む多原子イオンが,

りん酸を添加した場合には,りん原子を含む多原子イオンが生成する。

これに対して,硝酸を添加した場合には,多原子イオンが純水の場合と比較して著しく増加すること

はない。したがって,止むを得ない場合以外は,試料処理に硝酸を使用することが望ましい。また,

共存元素を含む多原子イオンが測定対象元素に干渉する場合もある。特に,アルカリ土類,希土類元

素などは酸化物を生成しやすく,このため,これらの元素の質量数に 16 を加えた m/z の位置にスペク

トルが現れる。  共存元素によるその他の多原子イオンとしては,共存元素の二量体,アルゴン又は酸

の構成元素との間で生成する多原子イオンのスペクトルがある。これらの多原子イオンの生成割合は,

試料導入部,イオン化部及びインターフェース部の設定条件によって大きく変動するので,設定条件

を最適化することで干渉を軽減できる。

c) 

二価イオン  二価イオンは,当該の一価イオンの 1/2 の m/z の位置にスペクトルが現れる。試料中に

測定対象元素の 2 倍の質量数の同位体をもつ共存元素が存在する場合に問題となる。二価イオンは第

二イオン化エネルギーの低い元素で生成しやすく,酸化物同様,アルカリ土類及び希土類元素で顕著

である。

9.2 

スペクトル干渉の確認及び測定質量数の選択 

測定対象元素に二つ以上の同位体が存在する場合には,それぞれの同位体濃度又は同位体比を調べるこ

とによってスペクトル干渉の有無を確認できる。測定対象元素の同位体比が既知(天然)の値と異なる場

合には,何らかのスペクトル干渉が存在する可能性が高い。測定対象元素が単核種の場合には,酸及びマ

トリックス元素に起因する多原子イオン,二価イオンなどがスペクトル干渉を与えないか否かを考慮する

必要がある。このため,測定対象元素の m/z から 16 を引いた m/z の位置と 2 倍の m/z の位置に大きなピー

クが存在しないかを確認する必要がある。

スペクトル干渉の有無を確認した後,同位体存在比と干渉の程度とを考慮して測定質量数の選択を行う。

スペクトル干渉を受けない質量数が選択できない場合でも,干渉スペクトルのイオン種が明確であり,そ


30

K0133:2007

   

の強度が他の質量数の強度から計算できる場合には,補正計算によって定量を行うことができる。

プラズマの温度によって,干渉を引き起こす各種イオンの発生量は変化する。このため,プラズマ観測

の条件を選択することによって,スペクトル干渉を軽減することができる。この場合,測定元素のイオン

化率も変化することがあるので,注意が必要である。また,プラズマ電位を下げることによって,干渉イ

オンの発生量を軽減することができる。

コリジョン・リアクションセルをもつ装置では,セル内で干渉イオンを減少させることができる。

9.3 

非スペクトル干渉 

非スペクトル干渉には,次のものがある。

a) 

物理干渉  高周波プラズマ質量分析計では,通常,ネブライザーを試料導入部に使用しており,測定

用試料溶液中の酸濃度,共存元素濃度が変動すると,測定用試料溶液の霧化効率が変動し,イオンカ

ウント数の変動の要因となる。このため,検量線用標準液及び測定用試料溶液は液性をできるだけ一

致させる。また,測定用試料溶液中の塩類の濃度が高いと,サンプリングコーン及びスキマーコーン

のオリフィスに不溶性物質が析出してオリフィス径が小さくなるため感度が低下する。このため,塩

類の総濃度を 1 g/L 以内に抑えることが望ましい。

b) 

イオン化干渉及び化学干渉  プラズマ内での測定対象元素のイオン化率は,プラズマ内の温度及び電

子密度によって決まる。したがって,測定用試料溶液中に高濃度の共存元素が存在すると,これらの

元素がイオン化されるときに発生する電子によってプラズマ中の電子密度が増加し,イオン化率が変

化する。特に,アルカリ金属及びアルカリ土類金属などのイオン化エネルギーの低い元素が多量に存

在すると,測定対象元素のイオン化率が大きく変化する。化学干渉は,測定対象元素が高沸点の難解

離性塩を形成することによって原子化及びイオン化が抑えられ,感度が低下する現象であるが,プラ

ズマの温度が高いため,通常の分析条件ではほとんど問題とならない。

c) 

マトリックス干渉(空間電荷効果)  多量の共存元素が存在すると測定対象元素のイオンカウント数が

一般に減少する。この傾向は,共存元素と測定対象元素との相対原子量の差が大きいほど顕著に現れ

る。この原因としては,イオンレンズ部における空間電荷効果,サンプリングコーンとスキマーコー

ンとの間で生じる原子間の衝突と拡散などが考えられる。

9.4 

非スペクトル干渉の有無確認及び補正法 

非スペクトル干渉の大きさは,未知試料に対して一定量の測定対象元素を添加し,その回収率から推定

する。回収率が低く,分析値の信頼性が確保されないと判断される場合には,干渉の種類に応じて内標準

法又は標準添加法によって補正を行う。  また,同位体希釈法を用いれば非スペクトル干渉の影響を低減で

きる。

9.5 

メモリー効果 

高周波プラズマ質量分析法の装置検出下限は,多くの元素に対して 1 ng/L 以下である。このため,主要

元素の濃度が数 100 mg/L レベルであっても,装置検出下限の 10

7

∼10

9

倍に相当する濃度にもなる。特に

ごく微量分析を行う場合には,現在分析中の試料中には,ごく微量しか含まれない測定対象元素が,過去

に分析した試料中に高濃度に含まれることもあるため,注意が必要である。このような場合には,検量線

ブランク液を分析して装置におけるメモリー効果の有無を確認する必要がある。メモリーのレベルが許容

しがたい場合には,試料導入部,トーチ,コーン類などの洗浄又は交換を行う。

10 

試料溶液の調製 

試料を分析に適した状態にする。固体試料を直接分析する場合もあるが,多くの場合は,溶液化する。


31

K0133:2007

この場合には,測定対象元素が損失しないように留意し,測定に適した溶液に調製する必要がある。次に,

一般的な試料溶液の調製法を示す。個別規格がある場合には,それに従って調製する。

a)

試料調製方法  試料調製方法は,次による。

1) 

超純水試料  イオン交換樹脂,逆浸透膜などを用いて調製した超純水試料は,試料に酸を直接添加

して測定用試料溶液とする。添加する酸は,検量線用標準液の調製に用いた酸と同じ酸を用い,等

しい酸濃度に調製する。

超純水試料の測定対象元素濃度が検量線用ブランク液の濃度と比較して十分に高くない場合は,

超純水試料をでき得る限り汚染がないと考えられる方法で濃縮して測定する。 操作ブランクを測定

して試料の測定結果を補正する。濃縮時の汚染の有無は,濃縮倍率を変えて試料及び標準液の測定

を行って確認することができ,測定結果と濃縮倍率との比例関係及び標準液の回収率から判断する。

汚染の程度が濃縮倍率と比例関係にある場合もあるので,注意する。すべての操作は,環境からの

汚染を避けるため,クリーンルームなど清浄空間で行い,複数個の操作ブランクを測定することが

望ましい。

2) 

高純度試薬  硝酸,塩酸,過塩素酸,硫酸,アンモニア水などの溶液では,成分元素から生成する

多原子イオンの干渉が大きい。試料を純水で希釈した溶液中の測定対象元素濃度が検量線用ブラン

ク液の濃度と比較して十分に高い場合は,試料を純水で一定量に薄め測定用試料溶液とする。試料

の測定対象元素濃度が検量線用ブランク液の濃度と比較して十分に高くない場合は,試料を蒸発乾

固させ,蒸発残留物に少量の硝酸を加え,加熱して溶解した後,純水で一定量に薄め測定用試料溶

液とする。ただし,硝酸で再溶解しない元素に対して別の酸を用いることもある。例えば,チタン

及びすずの定量の場合には,硝酸に代えて塩酸を用い,金の定量の場合には,硝酸に代えて王水を

用いる。

試料を蒸発させるとき,完全に乾固してしまうと揮散したり,酸で再溶解できなくなったりする

元素があるが,このような元素を測定する場合には,少量の試料を残すと回収率が良くなるときも

ある。加熱温度が高すぎると揮散する元素があるので,注意が必要である。また,酸性溶液で揮散

しやすい元素を定量する場合は,ほう素を定量するための D(−)-マンニトールのように揮散しに

くくする試薬を試料に添加し,蒸発乾固するなどの工夫が必要である。すべての操作は環境からの

汚染を避けるため,クリーンルームなど清浄空間で行い,複数個の操作ブランクを測定することが

望ましい。

固体状の高純度試薬は,4)に示す金属試料の溶解方法を参考に,純水又は硝酸などの酸を用い,

適宜,溶解して測定用試料溶液とする。

3) 

半導体関連試料  一般に半導体材料の分解には,酸分解法を用いる。酸化けい素薄膜は,ふっ化水

素酸蒸気で分解後,基板表面に溶解した液滴をふっ化水素酸及び過酸化水素水などを用いて回収し,

試料溶液とする。けい素は,ふっ化水素酸及び硝酸で分解し,硫酸,過塩素酸などを加え,加熱す

ることによってけい素を揮散除去できる。化合物半導体,ゲルマニウムは,王水で分解できる。特

に,微量の元素を分析するため,必要に応じてイオン交換,溶媒抽出などでマトリックス成分を分

離除去してもよい

2)

。フォトレジスト材,封止樹脂など有機物材料の分解には,主に硝酸を用いた

酸分解法を用い,分解困難な場合は,硫酸又は過塩素酸を加えて

3) 

加熱分解する。また,有機溶媒

によって直接試料を溶解又は希釈してもよい。後者の場合には,検量線用標準液も同じ有機溶媒で

調製し,すべての溶液ができる限り同じ物理的特性をもつように注意しなければならない。すべて

の操作は,環境からの汚染を避けるため,クリーンルームなど清浄空間で行い,複数個の操作ブラ


32

K0133:2007

   

ンクを測定することが望ましい。

2)

  コリジョン・リアクションセルをもつ場合は,水素,ヘリウム,アンモニアなどの各種ガ

スを装置内に導入して,多原子イオンを分解し,マトリックスによるスペクトル干渉を低

減させてもよい。

3)

  過塩素酸単独で有機物の分解を行うと爆発するおそれがあるため,必ず硝酸を共存させた

状態で加熱する。

4) 

金属試料  金属試料は,一般に塩酸及び硝酸の混酸で溶液化する。塩酸及び硝酸の混酸だけで分解

が困難な試料では,必要に応じて過塩素酸,りん酸,硫酸などを添加し,高温で白煙処理を行って

残さを完全に分解する。モリブデン,ニオブ,タングステンなどを含む合金の場合は,ふっ化水素

酸の添加が効果がある。分解時には,塩酸,硫酸などの非酸化性酸の使用による測定対象元素の揮

散(水素化ひ素,水素化りんの生成など)

,酸化性酸による難溶性酸化物の生成(クロム,アルミニ

ウムの不動態化など)などに留意し,対象及び目的元素に応じて適切な酸を選択しなければならな

い。特に,微量の元素を分析するため,必要に応じてイオン交換,溶媒抽出などでマトリックス成

分を分離除去してもよい

2)

。また,金属試料中には,酸に難溶な酸化物(酸化アルミニウム,二酸

化けい素など)が存在することが多いので

4)

,これらの成分,又はこれらと複合酸化物を形成する

ような成分(カルシウム,マグネシウムなど)を測定対象とする場合には,酸溶解後の残さを融解

5)

又は密閉式の加圧容器

6)

を用いて酸分解することによって溶解し,合わせて測定する必要がある。

4)

  ネブライザーを詰まらせるおそれのある懸濁粒子が含まれている場合は,分析前にろ過を

行った方がよい。ただし,ろ過操作からの汚染に注意する。

5)

  融解法では試料溶液に融剤由来の塩が混入するため,高倍率に希釈した後,測定する必要

がある。試料の分解はできる限り酸分解法がよい。

6)

  金属製の外容器からの汚染に注意する必要がある。この場合,ふっ素樹脂製の内容器を二

重にすると汚染は低減できる。また,ふっ素樹脂製などの内容器を用いたマイクロ波分解

装置を利用してもよい。石英製の内容器を用いる場合には,ふっ化水素酸の使用はできな

い。

5) 

セラミックス試料  セラミックス試料の分解は,一般に酸分解法又はアルカリ融解法を用いる

7)

酸分解法では,単独の酸又は複数の酸を組み合わせて用いるが,密閉式の加圧容器

6)

を用いると酸

添加量及び分解時間を低減できる。アルカリ融解

5)

は,酸で分解できない場合に用い,単独又は複

数の融剤を組み合わせた融剤と試料とを混合した後,加熱して分解する。セラミックス試料は組成

及び形態によって,分解に用いる酸又は融剤の種類が異なる。けい素系の試料は,密閉式の加圧容

器を用いてふっ化水素酸,硝酸及び硫酸の混酸で分解できる。アルミニウム系の試料は,塩酸,硝

酸,硫酸と硝酸との混酸などで分解するが,酸分解できない場合は,炭酸ナトリウム,ほう酸など

でアルカリ融解

5)

する。

7)

  難溶性のセラミックス試料を分解する場合,試料分解前に粉砕する必要がある。粉砕時に

は,セラミックスの硬度が高いため,粉砕容器から混入する汚染物質に注意する。粉砕容

器の材質を慎重に選択して,試料による共洗いなどの洗浄を十分に行う。

6) 

高分子関連試料  ポリエチレン,ゴム類などの高分子関連試料に含まれる測定対象元素を定量する

場合は,一般に酸分解法又は乾式灰化法を用いる。酸分解法では,試料によっては硝酸だけでも分

解できるが,必要に応じて過酸化水素,過塩素酸

3)

,ふっ化水素酸,塩酸又は硫酸などを添加する

8)

。密閉式の加圧容器

6)

を用いると酸添加量及び分解時間を低減できる。乾式灰化法では,試料を白


33

K0133:2007

金るつぼなどに採取し,硫酸を加え,450  ℃∼550  ℃に温度を上げ,有機物を分解除去する。放冷

後,残さを希硝酸などで溶解し,試料溶液とする。

8)

  高分子関連の試料中に含まれる共存物質の影響によって,測定対象元素の損失が生じるこ

ともあるので,試薬の選択には注意する。

7) 

生体関連試料  生体試料,医薬品,食品,農作物などは,一般に硝酸を用いて酸分解する。試料に

よっては硝酸だけでも分解できるが,必要に応じて少量の過酸化水素,過塩素酸

3)

,ふっ化水素酸,

塩酸,硫酸などを添加する。開放系又は密閉系で分解するが,密閉式の加圧容器

6)

を用いると,環

境からの汚染及び揮発しやすい元素の損失が抑制できる。通常,試料溶液は硝酸溶液とするが,含

有元素によっては塩酸を用いないと溶解しない場合がある。ナトリウム,カリウム,カルシウム,

りん,塩素などを高濃度に含む場合には,マトリックスの影響を減らすために試料溶液を希釈して

測定するが,測定対象元素濃度が低い場合には,マトリックスの分離及び濃縮操作が必要となる。

体液のような液体試料は,希硝酸,界面活性剤溶液などによる希釈だけで測定できる場合がある。

8) 

環境水試料  表層水,地下水,雨水,排水などの環境水試料は,懸濁物を含んでいることが多い。

試料中の溶存元素を測定するためには,試料を孔径 0.45 µm のフィルターなどによってろ過した後

に,硝酸を加えて pH を約 1 の酸性にして保存する。酸性化保存した試料に酸を加えて検量線用標

準液の酸濃度とできるだけ一致させたものを測定用試料溶液とする。一方,試料中の溶出可能な元

素を測定するためには,試料をろ過せずに硝酸を加えて pH を約 1 の酸性にして保存する。酸性化

保存した試料に,硝酸と塩酸とを加えてホットプレート上で約 85  ℃で加熱する

9)

。溶解していな

い物質は一晩放置して沈殿させるか,又は試料が透明となるまで遠心分離する。前処理した試料に

水を加え一定容にしたものを測定用試料溶液とする。

9)

  ホットプレートはクリーンなドラフト内などに設置し,溶液の温度が約 85  ℃より高くな

らないように温度調節する。

9) 

地質学的試料  岩石,鉱物,土壌,石炭などの地質学的試料に含まれる測定対象元素の全量を定量

する場合には,ふっ化水素酸及び硝酸を用いて酸分解する。試料が有機物を含むときには,更に硝

酸及び過塩素酸

3)

又は過酸化水素水の混酸を追加して分解する。試料の組成によっては,酸分解の

過程で元素の揮散又は沈殿を生じる場合がある。密閉式の加圧容器

6)

を用いて分解することによっ

て元素の揮散を抑制できる。試料が難分解性の鉱物を含むときには,メタほう酸リチウムなどの融

剤を用いる融解法

5)

を適用する。融解生成物は,希酸に溶解し試料溶液とする

10)

。試料に含まれる

測定対象元素を存在状態に応じて(例えば,酸可溶態など)定量する場合には,適切な溶媒又は溶

液を用いて測定対象元素を溶出する。酸分解液又は溶出液に含まれる粒子をろ過したものを試料溶

液とする。

10)

  アルカリ融解法による融解生成物を酸に溶解する場合,けい酸の沈殿が生じたときには,

ろ過によって沈殿を除く。

10) 

大気粉じん(塵)試料  ロウボリウムエアサンプラー又はハイボリウムエアサンプラーを用いて,

大気粉じんをフィルター

11)

上に捕集する。このとき,試料捕集用フィルターと同一の特性をもつフ

ィルターを試料採取地点に携行し,操作ブランクを求める。試料はフィルターとともに,ふっ化水

素酸及び硝酸を用いて酸分解する

12)

。粒子状炭素などの有機物の多い試料を分解する場合,更に硝

酸及び過塩素酸

3)

又は過酸化水素水の混酸を追加して溶解する。得られた溶液をろ過し,試料溶液

とする。

11)

  高周波プラズマ質量分析法に適したフィルターの材質は,石英繊維,セルロースエステル,


34

K0133:2007

   

ふっ素樹脂などであり,それぞれ圧力損失,吸湿率,不純物の含有量などの特性が異なる。

12)

  ふっ素樹脂製フィルターは,酸分解されない。

11) 

石油関連試料  石油関連試料は,燃焼などによって無機質化した後,酸で分解して溶液とするか,

有機溶媒によって直接試料を溶解又は希釈してもよい。後者の場合には,検量線用標準液も同じ有

機溶媒で調製し,すべての溶液ができる限り同じ物理的特性をもつように注意しなければならない。

プラズマを安定に維持するためには,有機溶媒としては蒸気圧の比較的低いキシレン,脂肪族炭化

水素の混合溶液,例えば,ケロシンなどを用いることができる。また,試料溶液及び検量線用標準

液中の測定対象元素は,同じ化学形態であることが望ましい。

b) 

前処理における分離と濃縮  a)の操作で調製した試料溶液のマトリックス濃度が高く,測定対象元素

の濃度が低い場合は,マトリックスからの測定対象元素の分離及び濃縮を行う。分離・濃縮方法とし

ては,イオン交換,溶媒抽出,共沈殿,水素化合物発生法などがある。フローインジェクション法に

よるオンライン方式では,オフライン方式によって所要時間と試薬量が軽減され,汚染の可能性が小

さくなることもある。測定対象元素の濃縮及び分離を定量的に行うためには,測定対象元素の化学形

態をそろえる必要がある。

また,コリジョン・リアクションセルをもつ場合は,水素,ヘリウム,アンモニアなどの各種ガス

を装置内に導入して,多原子イオンを分解し,マトリックス成分を低減させてもよい。

c) 

前処理における誤差要因及びその対策  試料の前処理における分析誤差には,次の要因がある。前者

の二つの要因は,微量元素の分析において特に影響が大きい。

1) 

外部からの汚染  外部からの汚染源としては,作業者の指又は被服との接触,大気浮遊粒子,使用

容器などがあり,これらが複合することもある。密閉式の加圧容器

6)

を用いると大気浮遊粒子の汚

染は軽減される。容器の洗浄は,JIS K 0553 による。汚染を更に軽減するには,試料調製,容器の

洗浄などの操作を,JIS B 9920 で規定するクラス 7 以上の清浄度の環境(例えば,クリーンルーム)

で行う。

2) 

水,試薬中の不純物  試料の前処理に用いる水及び試薬に不純物として含まれる測定対象元素は,

試料中の濃度に対して無視できない場合がある。また,操作ブランクとして差し引く場合も,分析

値の再現性低下の原因となる。操作ブランクは,高品質の水及び高純度試薬を用いることによって

軽減できる。

3) 

分析試料の未分解  測定対象元素又は試料によっては,完全に分解しない場合がある。試料が完全

に分解したか否かは,例えば,蛍光 X 線分析法などの非破壊分析法又は標準物質の分析結果との比

較から確認することができる。酸分解法で溶解しない試料は,融解法

5)

で分解できる場合がある。

4) 

測定対象元素の損失  揮発性の元素,揮発性の酸化物,ハロゲン化物及び有機金属化合物は,乾式

灰化などの開放系分解を用いる場合には,全量又は部分的な損失を起こしやすい。この損失は,密

閉式の加圧容器

6)

又は還流形蒸留器を用いることによって軽減できる。測定対象元素は沈殿,共沈

殿,容器内壁への吸着によっても失われることがある。

11 

定性分析 

高周波プラズマ質量分析法では,比較的短時間に全元素の質量領域を走査できるため,試料に対するス

ペクトルの m/z の値から試料中に含有する元素を定性分析できる。また,その強度から濃度を推定するこ

ともできる。定性分析は,次による。

a) 

試料調製における注意  定性分析に供する試料では,干渉を極力抑えることによって,より正確な濃


35

K0133:2007

度値の推定が可能となる。このため,測定用試料溶液中の塩類の総濃度を 1 g/L 以内になるように希

釈して測定を行うことが望ましい。装置の検出感度が高いため,試料調製に用いる試薬,水からの汚

染が検出される可能性が大きく,このため操作ブランクの確認を行う必要がある。

b) 

定性又は同定  定性又は同定は,次による。

1) 

質量スペクトルの解析による方法  質量スペクトル上の m/z から各元素を同定する場合には,マト

リックス及び酸に起因するスペクトル干渉を考慮する必要がある。測定対象元素が複数の同位体を

もつ場合には,各元素の測定同位体比の測定結果が天然同位体比と一致するか否かを確認すること

によって,試料中に存在する元素によるものか,又はスペクトル干渉によるものかを見極める必要

がある。測定対象元素が単核種の場合には,既知のスペクトル干渉を最低限考慮する必要がある。

2) 

質量演算による方法  磁場形二重収束質量分析計を用いて分解能 5 000 以上の高分解能条件で精密

に質量を測定することによって,スペクトル(特に干渉多原子イオン)の同定が可能となる。すべ

ての同位体は少数点以下 5 けたから 9 けたの精度で原子量が分かっている。したがって,測定した

ピークの質量が精密に分かれば質量の隣接する干渉イオンの組成を正確に計算できる。干渉イオン

の精密質量は,既知の元素ピークからの質量差から求める。例えば,質量数 28 には

28

Si があるが,

スペクトル干渉として

12

C

16

O,

14

N

2

などがある。これらのピークは,分解能 5 000 で分離検出が可

能である。

28

Si(原子量 27.976 928 4)を既知ピークとすれば,その質量差からそれぞれ次の質量及

び干渉イオン組成が得られる。

12

C

16

O  =27.994 914

14

N

2

  =28.006 147

このように質量を精密に測定することによって,測定対象元素と多原子イオンとを区別して同定

できる。

12 

定量分析 

12.1 

検量線用標準液の調製 

検量線用標準液の調製は,次による。

a) 

調製  検量線作成又は検量線校正のための溶液として,測定対象元素の 1 元素又は複数元素(内標準

測定用の元素を含む。

)を含む溶液を調製する。

b) 

調製時の注意事項  調製時の注意事項は,次による。

1)

溶液を混合した場合に,沈殿を生じないような試薬と元素との組合せにする。

2)

使用する質量数にスペクトル干渉が生じないような元素の組合せにする。

3)

検量線用標準液と測定用試料溶液との液性は,できるだけ一致させる。液性が酸である場合は,少

なくとも酸の濃度は一致させる。

12.2 

定量法 

定量法は,次による。

a) 

検量線法  測定対象元素の濃度が異なる 3 種類以上の検量線用標準液を調製する。この検量線用標準

液及び検量線用ブランク液を用い,

イオンカウント数と濃度との関係線を作成して検量線

図 30 参照)

とする。この検量線を用いて,イオンカウント数に対応する測定用試料溶液中の測定対象元素の濃度

を求める。この方法は,共存物による非スペクトル干渉が無視できるほど小さいときに有効であり,

    検量線の直線領域で測定することが望ましい。また,装置の長時間連続運転,試料測定数の累積など

によって検量線が変動する場合があるので,正確に定量するためには,一定時間ごと又は一定測定数ご


36

K0133:2007

   

とに検量線用標準液を測定して,検量線を校正しなければならない。

図 30−検量線法による濃度の求め方

b) 

内標準法  一定濃度の内標準元素

13)

を添加した測定対象元素濃度が異なる 3 種類以上の検量線用標準

液を調製する。この検量線用標準液及び同一濃度の内標準元素を添加した検量線用ブランク液を用い,

内標準元素に対する測定対象元素のイオンカウント数の比と測定対象元素の濃度との関係線を

図 31

のように作成して検量線とする。この検量線を用いて,イオンカウント数の比に対応する試料溶液中

の測定対象元素の濃度を求める。内標準法は,測定対象元素の信号と内標準元素の信号との比をとる

ため,試料溶液中の共存物質による非スペクトル干渉の補正及び感度の経時的な変動を補正する点で

有効であり,検量線の直線領域で測定することが望ましい。また,装置の長時間連続運転,試料測定

数の累積などによって検量線が変動する場合があるので,正確に定量するためには,一定時間ごと又は

一定測定数ごとに検量線用標準液を測定して,検量線を校正しなければならない。

13)

  内標準元素としては,測定対象元素と質量数が近く,質量スペクトルの重なりがなく,プラ

ズマ中で同様な挙動を示し,試料溶液中に含まれていないことが望ましい。また,内標準元

素は必要に応じて,単一又は複数で使用する。

図 31−内標準法による濃度の求め方

c) 

標準添加法  試料溶液から等量に 4 個以上の溶液を採取し,測定対象元素を添加しないもの 1 種類,


37

K0133:2007

及び測定対象元素をそれぞれ異なる濃度で添加したもの 3 種類以上を調製する。それぞれの溶液のイ

オンカウント数と濃度との関係線を作成し,

図 32 の横軸(濃度)の切片から試料溶液中の測定対象元

素の濃度を求める。標準添加法は,試料溶液中の共存物質による非スペクトル干渉を補正する点で有

効である。この方法は,スペクトル干渉が正しく補正されていて,かつ,イオンカウント数と濃度と

の関係線が低濃度域まで良好な直線性を保つ場合にだけ適用できる。

図 32−標準添加法による濃度の求め方

d) 

同位体希釈分析法  同位体希釈分析法は,天然と異なる同位体組成をもつ濃縮同位体(以後,

“スパイ

ク”という。

)を試料に添加し同位体平衡に達せしめた後,測定対象元素の同位体組成の変化から濃度

を求める方法である。質量のひょう(秤)量及び同位体比の測定だけで定量可能であるため,分析値

の精確さを確保する点で有効な分析法である。また,前処理における測定対象元素の回収率及び非ス

ペクトル干渉が定量値に影響を与えないなどの利点がある。この方法は,二つ以上の同位体をもつ元

素についてだけ適用され,試料の同位体組成及びスパイクの同位体組成が正確に分かっている必要が

ある。測定同位体の質量数にスペクトル干渉がないことを確認し,試料にスパイク(溶液)を添加し

た混合物は,通常,溶液化して測定する。試料中の測定対象元素濃度 C

n

は,次の式(1)で求める。

n

n

s

s

n

s

s

n

A

B

R

B

R

A

W

W

C

C

×

×

×

×

=

 (1)

ここに,

C

n

C

s

14)

試料(n)及びスパイク(溶液)

(s)中の測定対象元

素濃度(mol/g)

A

n

A

s

試料(n)及びスパイク(溶液)

(s)中の同位体 a の

存在度(mol%)

B

n

B

s

試料(n)及びスパイク(溶液)

(s)中の同位体 b の

存在度(mol%)

W

n

W

s

試料(n)及びスパイク(溶液)

(s)の質量(g)

R

混合溶液の同位体比

C

n

C

s

を濃度の表示に通常用いる質量濃度

X

n

X

s

(g/g)に換算するには,試料及びスパイク(溶液)

中の測定対象元素の相対原子質量

A

r

(n)

A

r

(s)をモル濃度に乗じる。質量分析計に質量差別効果(元

素の質量数によって元素イオンの透過効率が異なること)がある場合には,13 e)によって測定同位体

比を同位体比既知の溶液を用いて補正しなければならない。


38

K0133:2007

   

14)

  スパイク(溶液)中の測定対象元素濃度

C

s

は,濃度が既知の溶液を用いて定量する。定量法

としては,原子吸光分析法,発光分光分析法などでもよいが,測定精度を上げるためには逆

同位体希釈分析法による定量が望ましい。

12.3 

データの質の管理 

データの質の管理は,次による。

a) 

データの質の管理用溶液の分析  データの質の管理用溶液は,検量線用標準液とは別の機関が調製し

たものを入手し,検量線用標準液とほぼ同じマトリックス濃度に調製することが望ましい。年 4 回又

は必要に応じてそれ以上の回数でデータの質の管理用溶液の分析を行い,検量線用標準液の有効性及

び装置性能を検査する。3 回以上分析して,その平均濃度値が既知濃度値の±10  %以内に入ることを

目安とする。分析試料に組成の類似した標準物質が手に入る場合には,その標準物質からデータの質

の管理用溶液を調製してもよい。

b) 

定量下限の算出  操作ブランクを 10 回繰り返して測定し,イオンカウント数の標準偏差(

s

D

)を算出

する。定量下限(LOQ)は,10

s

D

の信号を与える濃度であり,次の式によって求める。

LOQ=10

s

D

/

k

ここに,

k

:  単位濃度当たりのイオンカウント数(検量線の傾き)

附属書

A

参照)

c) 

ブランクの測定  類似したマトリックスをもつ一連の試料を分析するごとに,1 個以上の操作ブラン

クを測定するようにする。操作ブランクの測定を行って,実験室環境からの汚染並びに試料調製のと

きに使用される試薬及び器具からの汚染の程度を評価する。操作ブランクの測定値は,試料の分析値

の 10  %又は定量下限よりも大きくないことを目安とする。

d) 

定期的な装置性能の確認  装置が正確に校正されていることを確認するために,日ごとの検量線作成

直後及び分析試料 10 個ごと,並びに全試料の分析終了後に,中間濃度の検量線用標準液及び検量線用

ブランク液を未知試料として測定する。検量線作成後の検量線用標準液の分析値は,既知濃度±10  %

以内であることを目安とする。一方,検量線用ブランク液の分析値はゼロ±定量下限(LOQ)以内で

あることを目安とする。分析試料 10 個ごとに測定する検量線用標準液の分析値が,既知濃度±10  %

以内に入らない場合には,その前に測定した 10 試料は,検量線を作成し直して再び分析する。もし,

試料マトリックスが装置のドリフトの原因となっていると考えられる場合には,分析試料 5 個ごとに,

検量線用標準液及び検量線用ブランク液を測定するのが望ましい。非スペクトル干渉を補正するため

内標準法を適用する場合には,検量線用標準液及び測定用試料溶液の内標準元素のイオンカウント数

は,検量線用ブランク液の内標準元素イオンカウント数の 60∼125  %以内であることを目安とする。

12.4 

測定データの解析(濃度算出) 

同一試料に対して,全く同じ分析操作を 3 回以上行い,操作ブランクを差し引いた後,試料中の測定対

象元素の平均濃度,標準偏差,変動係数を算出する。分析結果は,溶液試料に対しては体積に対する質量

比(ng/L,µg/L,mg/L など)又は質量に対する質量比(ng/kg,µg/kg,mg/kg など)で,固体試料に対し

ては質量に対する質量比(ng/kg,µg/kg,mg/kg など)で適切と考えられる単位を用いて濃度を報告する。

溶液試料の場合は,測定用試料溶液の濃度に希釈倍数を乗じて,元の溶液濃度を求める。一方,固体試

料を分解した試料溶液を希釈して測定用試料溶液を調製した場合は,測定用試料溶液の濃度に希釈倍数を

乗じて,試料溶液濃度を求めた後,次の式(2)によって濃度を求める。

W

V

C

X

×

 (2)


39

K0133:2007

ここに,

X:  濃度

C:  試料溶液濃度

V:  試料溶液の体積

W:  分析に使用した固体試料の質量

13 

同位体比測定 

高周波プラズマ質量分析法では,同位体比の測定が簡便,かつ,迅速にできる。同位体比測定精度は,

四重極形質量分析計で 0.1∼1  %程度,多重検出器形質量分析計で,0.005∼0.1  %程度である。同位体比

測定精度及び真度を向上するには,次の点に留意する必要がある。

a) 

質量スペクトル干渉  高周波プラズマ質量分析法では,複数の元素の同位体比を同時に測定でき,必

ずしも目的元素を単離するための試料前処理を必要としないなどの特徴があるが,測定前に目的同位

体がスペクトル干渉(多原子イオン,同重体イオン)を受けていないことを確認する必要がある。

b) 

積分条件  単一検出器を用いた質量分析計で複数の同位体の信号を順次測定する場合は,得られる精

度は信号の安定性に制約される。試料導入ネブライザー及びプラズマ由来の信号変動ノイズの影響を

減らすように,1 同位体当たりの滞留時間(dwell time)

,測定ポイント数,積算回数などの積分条件を

最適化する。多重検出器形質量分析計では,このような信号の不安定性の影響を低減でき,同位体比

測定精度を向上できる。

c) 

統計的な計数誤差  イオン信号強度を測定するとき,得られるイオンカウント数には,必ず統計的な

揺らぎ(計数誤差)が付随する。統計誤差は,カウントの信号に対して±

N

程度となる。0.1  %

の精度で測定するには,

N

N

<0.1  %,つまり

N

>10

6

のイオンカウント数が必要となる。同位体

比測定を行うときには,二つの同位体のそれぞれに統計誤差が付随するが,実際には,統計誤差の総

計は,存在度の小さい同位体のイオンカウント数の誤差に支配される。このため,同位体の存在度が

大きく異なる場合には,小さい同位体に対して十分なカウントを得るように目的元素濃度,積分時間

及び滞留時間を設定する。

d) 

検出器の不感時間による計数誤差  パルス検出方式で計数率を大きくしすぎると,検出器の不感時間

に起因するイオンの数え落としが問題となる。不感時間に由来する計数誤差を抑えるためには,計数

率を必要な精度に見合う直線性の得られる範囲に収めるように目的同位体の試料中濃度を調整し,必

要に応じて検出器の不感時間に対する補正を行う。また,パルス検出及びアナログ検出にまたがらな

いことが望ましい。多重検出器形質量分析計では,ファラデーカップ検出器を用いるため,計数誤差

は生じないが,検出器間の感度補正が必要である。

e) 

質量差別効果の補正  同位体比測定を行う場合,質量差別効果(元素の質量によって元素イオンの透

過効率が異なる。

)によって測定される信号強度比は,そのまま同位体比を示すわけではない。この質

量差別効果を補正するには,測定する同位体比を同位体比既知の溶液を用いて補正しなければならな

い。高周波プラズマ質量分析では,主として次の 3 通りの補正法が用いられている。

1)

目的とする同位体比が保証された標準物質がある場合は,未知試料の前後に標準物質を同一の測定

条件で測定し,質量差別効果の補正係数を算出する[比較標準補正法又は相対標準補正法(relative

standardization method)。図 33 参照。]。

2)

安定同位体が複数ある元素の場合,安定同位体のペアの測定値を用いて,目的同位体を含む比を補

正する[内部補正法(internal correction method)

図 34 参照。]。

3)

補正に用いることができる安定同位体が一つしかない元素の場合には,目的元素に対し,質量数又


40

K0133:2007

   

はイオン化ポテンシャルが近い第二の元素(外部補正元素)を添加し,その測定値から質量差別効

果を推定する[外部補正法(external correction method)

図 35 参照。]。この補正法では,あらかじ

め添加する元素が未知試料に含まれていないことを確認する必要がある。

図 33−比較標準補正法又は相対標準補正法の一例(銅の場合)

図 34−内部補正法の一例(ハフニウムの場合)

図 35−外部補正法の一例(鉛の測定にタリウムを添加する場合)

14 

分析結果に記載すべき事項 

分析結果には,次のうち必要な項目について記載する。また,データの質の管理用溶液の分析結果は,

測定対象元素の分析結果の信頼性を示しており,試料の分析結果とともに報告することが望ましい。

a)

分析結果  分析結果は,溶液試料に対しては体積に対する質量比(ng/L,µg/L,mg/L など)又は質量


41

K0133:2007

に対する質量比(ng/kg,µg/kg,mg/kg など)で,固体試料に対しては質量に対する質量比(ng/kg,µg/kg,

mg/kg など)で適切と考えられる単位を用いて濃度を表示する。

b)

データの質の管理用溶液の種類と分析結果(分析年月日)

c)

試料の分析年月日

d)

装置の製造会社名及び形式名

e)

試料名

f)

試料採取場所及び採取方法

g)

試料調製方法(試料分解法,分離濃縮法など)

h)

分析方法(定性分析,定量分析及び/又は同位体比測定)

i)

定量方法[検量線法,内標準法(内標準元素)

,標準添加法,及び/又は同位体希釈分析法]

j)

測定条件(装置操作条件,質量分析計操作条件,測定電荷数など)

k)

その他

15 

個別規格で記載すべき事項 

高周波プラズマ質量分析法を用いる個別規格では,少なくとも,次の事項を記載しなければならない。

a)

測定対象元素及び定量範囲など

b)

試料採取方法

c)

分析試料又は試料溶液の調製方法

d)

検量線用試料又は検量線用標準液の調製方法

e)

測定条件

f)

結果の整理及び表示方法

g)

データの質の管理

15)

15)

  12.3 に規定する方法又は個別規格に規定する方法による。

参考文献  JIS K 0050  化学分析方法通則

JIS K 0212

  分析化学用語(光学部門)

JIS K 0400-52-30

  水質−誘導結合プラズマ発光分光分析による 33 元素の定量

ISO 11885:1996,MOD)

JIS K 8001

  試薬試験方法通則

JIS K 8007

  高純度試薬試験方法通則

JIS K 9901

  高純度試薬−硝酸

JIS K 9902

  高純度試薬−塩酸

JIS K 9903

  高純度試薬−アンモニア水

JIS K 9904

  高純度試薬−過塩素酸

JIS K 9905

  高純度試薬−硫酸

JIS K 9906

  高純度試薬−水酸化ナトリウム溶液


42

K0133:2007

   

附属書 A

(規定)

高周波プラズマ質量分析計の使用判定項目

A.1 

適用範囲 

この附属書は,高周波プラズマ質量分析計の使用判定項目について規定する。

A.2 

使用判定項目 

高周波プラズマ質量分析計を使用するとき,感度,バックグラウンド,酸化物イオン・二価イオン生成

比,検出下限,短期安定性,長期安定性及び検量線の直線性について,装置の使用判定の基準となる値を

あらかじめ実験によって求めておくことが望ましい。

A.2.1 

感度(S 

次の操作を行う。

a) 

準備  次の判定用試験液を調製する。

1)

測定対象元素の検量線用ブランク液で,0.1∼0.2 mol/L 硝酸溶液

2)

測定対象元素の検量線用標準液(溶液濃度

C

 µg/L)で,0.1∼0.2 mol/L 硝酸溶液

b)

測定  次の測定を行う。

1)

装置製造業者から指定された方法によって装置の最適化を行う。

2)

検量線用ブランク液  a) 1)を噴霧し,安定した後,積分時間 1 秒に設定して 3 回以上測定し,イオン

カウント数の平均値(

B

)を算出する。

3)

次に,検量線用標準液  a) 2)を噴霧し,安定した後,積分時間 1 秒に設定して 3 回以上測定し,イオ

ンカウント数の平均値(

I

)を算出する。

c) 

計算  感度(S)は 1

µg/L 当たりのイオンカウント数(単位 cps)で表し,次の式によって算出する。

(

)

C

X

X

S

/

B

I

=

ここに,

S: 感度

I

: b) 3)による。

B

: b) 2)による。

C: a) 2)による。

A.2.2 

バックグラウンド 

次の操作を行う。

a) 

準備  測定対象元素の検量線用ブランク液で,0.1∼0.2 mol/L 硝酸溶液を準備する。

b)

測定  次の測定を行う。

1)

装置は,A.2.1 と同じ条件に設定する。

2)

装置の測定質量/電荷数を 8 又は 220 に設定する。

3)

検量線用ブランク液を噴霧し,安定した後,積分時間 10 秒に設定してそれぞれの質量/電荷数にお

けるイオンカウント数を 3 回以上測定し,その平均値(

220

8

X

又は

)を算出する。

c) 

計算  バックグラウンドは単位時間当たりのイオンカウント数(単位 cps)で表し,次の式によって

算出する。

10

/

10

/

220

8

X

X

B

又は

=

1)

ここに,

B: バックグラウンド(bkg)


43

K0133:2007

8

: b) 3)の測定を行ったときの装置の質量/電荷比が 8 の平均

220

X

b) 3)

の測定を行ったときの装置の質量/電荷比が 220 の平

均値

1)

  装置によっては,積分時間によらず単位時間当たりのイオンカウント数で測定結果が出力さ

れる場合もある。このような場合には測定値そのものがバックグラウンド(bkg)となる。

A.2.3 

酸化物イオン及び二価イオン生成比 

次の操作を行う。

a) 

準備  次の判定用試験液を調製する(ここでは,セリウムを例にする。)。

セリウムの検量線用標準液で,0.1∼0.2 mol/L 硝酸溶液を準備する。

b)

測定  次の測定を行う。

1)

装置は,A.2.1 と同じ条件に設定する。

2)

装置の測定質量/電荷数を 70,140,156 に設定する。

3)

検量線用標準液を噴霧し,安定した後,積分時間 1 秒に設定してそれぞれの質量/電荷数におけるイ

オンカウント数を 3 回以上測定し,その平均値を算出する。

c) 

計算  イオン生成比は,次の式によって算出する。

酸化物イオン生成比

140

156

/

)

/

(

X

X

Ce

CeO

=

+

+

二価イオン生成比

140

70

/

)

/

(

X

X

Ce

Ce

=

+

+

+

ここに,

70

X

質量/電荷数

70

でのイオンカウント数の平均値

140

X

質量/電荷数

140

でのイオンカウント数の平均値

156

X

質量/電荷数

156

でのイオンカウント数の平均値

A.2.4 

装置検出下限(ILOD)   

次の操作を行う。

a) 

準備  次の判定用試験液を調製する。

1)

測定対象元素の検量線用ブランク液で,

0.1

0.2 mol/L

硝酸溶液

2)

測定対象元素の検量線用標準液(溶液濃度 C

 µg/L

)で,

0.1

0.2 mol/L

硝酸溶液

b)

測定  次の測定を行う。

1)

装置製造業者の指定する方法によって,装置の最適化を行う。

2)

検量線用ブランク液

a) 1)

を噴霧し,安定した後,積分時間

1

秒に設定して

10

回連続測定を行い,

イオンカウント数の平均値(

B

)と標準偏差(S

B

)を算出する。

3)

検量線用標準液

a) 2)

を噴霧し,安定した後,積分時間

1

秒に設定して

3

回以上測定し,イオンカウ

ント数の平均値(

I

)を算出する。

c) 

計算  装置検出下限は,次の式によって算出する(単位

 µg/L

ILOD

3

S

B

/

k

ここに,

k

検量線の傾き=

(

)

C

X

X

/

B

I

で,A.2.1 c)の感度(S)に相当す

る。

S

B

標準偏差

A.2.5 

短時間安定性 

短時間に繰返し測定を行って得られる結果の一致の程度を推定するために,次の操作によって相対標準

偏差を求めて判定の指標とする。

a) 

準備  測定対象元素の検量線用標準液で,

0.1

0.2 mol/L

硝酸溶液を準備する。


44

K0133:2007

   

b)

測定  次の測定を行う。

1)

装置製造業者から指定された方法によって装置の最適化を行う。

2)

検量線用標準液を噴霧し,安定した後,積分時間

1

秒に設定して

10

回連続測定を行い,イオンカウ

ント数の平均値(

I

)と標準偏差(S

I

)とを算出する。

c) 

計算  相対標準偏差は,次の式によって算出する。

100

)

/

(

I

I

rel

×

=

X

S

S

ここに,

rel

: 相対標準偏差(%)

I

: イオンカウント数の平均値

S

I

標準偏差

A.2.6 

長時間安定性 

長期安定性は,機器の設置環境及び測定条件によって影響される。この試験で求めた相対標準偏差から

機器の校正の頻度を決定する。試験方法の操作の例を,次に示す。

a) 

準備  濃度の異なる複数の溶液を準備する。

b)

測定  次の測定を行う。

1)

装置製造業者から指定された方法によって装置の最適化を行う。

2)

標準化などの校正を行わずに,

30

分間間隔で

3

回の繰返し測定を

3

時間にわたり計

7

回行う。

c) 

計算  各繰返し測定の平均値

7

回分について,相対標準偏差を元素,濃度ごとに計算する。

A.2.7 

検量線の直線性 

検量線の直線性は,測定対象元素の濃度が異なる

3

種類以上の検量線用標準液(

1

種類は,その検量線

の上限に相当すると見積もられる濃度の溶液)のイオンカウント数で確認する。直線領域の上限では,イ

オンカウント数が,濃度の低い溶液から推定されるイオンカウント数に対し

10

%以上減少していないこ

とを確認する。