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K 0123

:2006

(1)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本分析

機器工業会 (JAIMA)/財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正す

べきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。

これによって,JIS K 0123 : 1995 は改正され,この規格に置き換えられる。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は

もたない。


K 0123

:2006

(2)

目  次

ページ

1.

  適用範囲

1

2.

  引用規格

1

3.

  定義

1

4.

  概要

2

5.

  装置

3

5.1

  装置の構成

3

6.

  安全

14

7.

  装置の設置

15

8.

  装置の運転

15

8.1

  運転の手順

15

8.2

  ガスクロマトグラフィーの準備

15

8.3

  質量分析計の準備

16

8.4

  始動

16

8.5

  調整

16

8.6

  測定条件の設定

16

8.7

  試料の導入

17

8.8

  測定(質量スペクトルの採取)

17

8.9

  データ処理

18

9.

  定性分析

18

9.1

  測定試料の調製及び測定

18

9.2

  定性又は同定

19

10.

  定量分析

20

10.1

  試料の前処理

20

10.2

  内標準法

20

10.3

  絶対検量線法

21

10.4

  標準添加法

21

10.5

  検量線又は関係線の作成

21

10.6

  定量操作

22

11.

  データの質の管理

23

12.

  分析結果に記載すべき事項

24

13.

  個別規格に記述すべき事項

25


日本工業規格

JIS

 K

0123

:2006

ガスクロマトグラフィー質量分析通則

General rules for gas chromatography / mass spectrometry

1.

適用範囲  この規格は,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて,主として微量の有機化合物[常温

で気体又は 350  ℃程度以下で十分な蒸気圧をもつ安定な有機化合物(誘導体を含む。

,有機金属化合物,

無機化合物などの定性分析及び定量分析を行う場合の通則について規定する。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS K 0050

  化学分析方法通則

JIS K 0114

  ガスクロマトグラフ分析通則

JIS K 0133

  高周波プラズマ質量分析通則

JIS K 0211

  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0214

  分析化学用語(クロマトグラフィー部門)

JIS K 0215

  分析化学用語(分析機器部門)

JIS Z 8202-8

  量及び単位−第 8 部:物理化学及び分子物理学

JIS Z 8203

  国際単位系 (SI) 及びその使い方

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0050JIS K 0114JIS K 0133JIS K 0211JIS K 

0214

JIS K 0215JIS Z 8202-8 及び JIS Z 8203 によるほか,次による。

なお,括弧内の対応英語は参考のために示す。

a)

分析種  (analyte)  分析試料又は試料溶液中の被験成分。分析対象成分ともいう。

b)

質量電荷比  (mass-to-charge ratio : m/z)  原子質量単位を用いて表したイオンの質量とその電荷数と

の比。質量スペクトルの横軸に用いられる。

c)

全イオンクロマトグラム  (total ion chromatogram : TIC)  ある範囲の質量電荷比  (m/z)  のイオン電流

の総和を連続的に検出・記録した図。

d)

マスクロマトグラム  (mass chromatogram)  一定の時間間隔で質量スペクトルを測定し,コンピュー

タに記憶させた後,特定の質量電荷比  (m/z)  のイオン強度を取り出して表示した図。

e)

選択イオン検出  (selected ion monitoring : SIM)  特定の質量電荷比  (m/z)  のイオンを連続的に検出す

る方法。

f)

衝突誘起解離  (collision induced dissociation : CID)  運動エネルギーをもったイオンがターゲットガ

スと衝突し,衝突エネルギーの一部が内部エネルギーに変換され励起されることでイオンの解離が起

こる現象。


2

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g)

フラグメンテーション  (fragmentation)  イオンを構成する一つ又は複数の結合が開裂することによ

って,そのイオンより小さい質量のイオンを生じる反応。

h)

フラグメントイオン  (fragment ion)  フラグメンテーションで生じたイオン。

i)

プリカーサーイオン  (precursor ion)  あるイオンから別のイオンが生じるときのイオン。前駆イオン

ともいう。

j)

プロダクトイオン  (product ion)  特定のイオンから生成したすべてのイオン。生成イオンともいう。

k)

相対感度  基準にする成分(内標準物質)の単位量当たりのピーク面積(又はピーク高さ)に対する

分析種の単位量当たりのピーク面積(又はピーク高さ)との比。相対感度の逆数を相対応答係数 (RRF :

relative response factor)  という。

l)

SOP  (standard operating procedure)

  標準作業手順書。試験,検査などの実施方法及び手順について

詳細に規定した文書。

m)

イオン源  (ion source)  質量分析計を構成する一部分で,試料成分のイオン化及び生成したイオンのア

ナライザーへの移送を行う箇所。イオン化室,フィラメント,イオンの加速,収束などを行う電極群

などからなる。

n)

イオン化室  (ionization chamber)  イオン源内で,試料分子が電子及び反応イオンと相互作用を起こし,

イオンが生成する場所。

o)

試薬ガス  (reagent gas)  化学イオン化法において試料分子をイオン化するために用いるガス。通常,

高純度のメタン,2-メチルプロパン(イソブタン)

,アンモニアなどが用いられる。

p)

反応イオン  (reaction ion)  試薬ガス自身のイオン−分子反応によって生じるイオンのうち,試料分子

のイオン化に直接かかわるイオン。試料分子との間でプロトンの授受などを行う。

q)

擬分子イオン  (quasi-molecular ion)  分子にプロトン又はヒドリドが付加したイオン,及び分子から

プロトン又はヒドリドが引き抜かれたイオン。(M±H)

及び (M±H)

が相当する。

r)

リンク走査  (linked scan)  二重収束形の磁場形質量分析計において,電場及び磁場の強さを一定の関

係に保って同時に走査し,CID におけるイオン及び準安定イオンが関与する特定のイオンを検出する

方法。

s)

アナライザー  (analyzer)  質量分離部の総称。分析管ともいう。

t)

サンプリング時間  (sampling time)  質量分析計を操作し,1 データを採取する時間。

u)

走査  (scan)  ある範囲の質量電荷比  (m/z)  のイオンを検出するために,磁場及び電場強度並びに四重

極ロッドへの電圧を変化させることをいう。

v)

分解能  (resolution)  質量分析計が質量スペクトル上の近接した 2 本のピークを分離できる能力。質量

分析計で,任意の質量電荷比  m/z=M と m/z=[M+

Δ

M]  との 2 本のピークは区別できるが,m/z の差

Δ

M より小さい 2 本のピークは区別できないとき,R=M/

Δ

M をこの装置の分解能という。ここで

ピークが区別できるということは,磁場形ではピーク高さの 10 %位置,その他のアナライザーではピ

ーク高さの 50 %位置で分離していることを指す。

4.

概要  ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS 法)は,混合物試料の分離分析に優れているガス

クロマトグラフ (GC) と,試料成分の構造解析及びごく微量分析に優れている質量分析計 (MS) とを直結

した装置であるガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS 装置)を用いて,それぞれの特徴を生かして試料

に関する物質情報を高感度に得るための分析方法である。

気体又は液体の混合物試料を GC/MS 装置に導入すると,分析種はガスクロマトグラフで分離され,連


3

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続的に質量分析計のイオン源に導かれてイオン化される。生じた正又は負のイオンは,アナライザー(質

量分離部)に入り,質量電荷比  (m/z)  に応じて分離される。分離されたイオンは,順次,検出部でその量

に対応する電気信号に変換され,各種クロマトグラム及び質量スペクトルとして記録される。このクロマ

トグラム上の分析種の保持時間及び質量スペクトルから定性分析を行い,クロマトグラム上のピーク面積

(又はピーク高さ)から定量分析を行う。

5.

装置

5.1

装置の構成  図 に示すように,装置の構成は,ガスクロマトグラフ,インターフェース(GC/MS

接続部)及び質量分析計からなる。

  1  装置の構成図(一例)

5.1.1

ガスクロマトグラフ  ガスクロマトグラフは,次による。

a)

キャリヤーガス流量制御部  キャリヤーガス流量を制御するための部分である。圧力調節弁,流量調

節弁,圧力計などで構成する。キャリヤーガスを流量,圧力,線速度などで自動的に制御可能なもの

もある。

b)

試料導入部  試料をキャリヤーガス流路中に導入する部分である。気体試料を計量管などで採取し,

弁操作で導入するもの及び液体又は気体試料をシリンジで導入するものがある。また,キャピラリー

カラム用の試料導入部には,分割導入方式と非分割導入方式とがある。分割導入方式には,注入気化

した試料の一部だけをカラムに導入するスプリット方式がある。非分割導入方式には,開閉可能な排

気口を利用して溶媒処理を工夫し,そのピークの大きなテーリングを生じることなく試料をほぼ全量

導入するスプリットレス方式,大口径キャピラリーカラムを用いて気化した試料の全量を導入する全

量導入方式(直接注入方式)

,試料導入部の温度を溶媒の沸点温度以下に設定し,注入口を通してカラ

ムに直接試料を導入するコールドオンカラム方式,試料導入部の温度を溶媒の沸点温度以下に設定し,

試料導入後,低温で溶媒を排出した後,急速加熱して試料をカラムに導入する温度プログラム気化導

入方式などがある。

c)

カラム  カラムは,キャピラリーカラムと充てんカラムとの 2 種類に大別できる。目的に応じて長さ,

内径,固定相の種類などを選ぶ。キャピラリーカラムは,材質が金属,ガラス,石英ガラス,合成樹

キャリヤーガス流量制御

カラム

(分離部)

検出部

アナライザー

(質量分離部)

インターフェース

(GC/MS 接続部)

真空排気部

システム制御部

ガスクロマトグラフ

質量分析計

イオン化部

試薬ガス導入部

直接試料導入部

校正用標準物質導入

試料導入部


4

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脂などで,内径が 0.1∼1.2 mm,長さが 5∼100 m,及び固定相の膜厚が 0.1∼10 µm のものが使われる。

吸着形キャピラリーカラムは,吸着剤が数 10 µm 程度カラム内壁に塗布され,各種のバインダーを用

いて固定化されたものである。分配形キャピラリーカラムは,固定相液体をカラム内壁に化学結合又

は塗布したものである。

充てんカラムは,

材質が金属,

ガラス,

合成樹脂などでできた内径が 2∼6 mm,

長さが 0.5∼5 m の管に充てん剤を充てんしたものである。充てん剤には,吸着形充てん剤,分配形充

てん剤,多孔性高分子形充てん剤又はこれらを組み合わせたものがある。

d)

カラム槽  カラム槽は,内部を設定された温度に保持し,かつ,温度分布を一定に保つことが可能な

加熱機構をもつ。また,適切な分離が行え,分離にかかる時間を調節可能な昇温分析を行う場合,初

期温度,継続時間(ホールド時間)

,昇温速度,最終温度及び継続時間(ホールド時間)の設定が可能

であること及び温度制御精度は±0.5  ℃以内で,また,電源電圧の 10 %変動に対する温度変化が±0.5  ℃

以内であることが望ましい。

5.1.2

インターフェース(GC/MS 接続部)  インターフェースは,GC と MS との接続部をいう。大気

圧となっているガスクロマトグラフのカラム出口と高真空になっている質量分析計のイオン源とを接続す

る部分で,カラムの種類及び真空ポンプの排気速度によって,次のいずれかを用いる。

a)

キャピラリーカラムの場合  内径が約 0.3 mm 以下のキャピラリーカラムの場合は,その出口側の一

端が質量分析計のイオン源のごく近くに位置するように接続する。また,内径が約 0.3 mm 以上の大

口径キャピラリーカラムの場合は,キャピラリーカラムの前段又は後段に抵抗管を接続して使用する

こともある。また,b)  に示すような接続方法を用いる場合もある。GC/MS 接続部は,小形の恒温槽

又は加熱管によって,カラム槽と同じかそれ以上の温度に保つことができる加熱・温度制御機構及び

温度測定機構をもつ。

図 にキャピラリーカラムの接続部の例を示す。

  2  キャピラリーカラムの接続部(一例)

b)

充てんカラム及び大口径キャピラリーカラムの場合  充てんカラム及び大口径キャピラリーカラムの

キャリヤーガス流量は 5∼10 ml/min であり,a)  で示した方式では真空維持が困難となる。そのため,

キャリヤーガスの分離除去及び分析種の濃縮のためのジェットセパレーターを用いる。セパレーター

の材質はガラス製が一般的で,加熱・温度制御・温度測定機構及び排気系をもつ。構造の例を,

図 3

に示す。この原理は,キャリヤーガスであるヘリウムと分析種との拡散係数の差を利用するもので,

図 の A 部のようにガラス管の先端を細くする。この先端部でキャリヤーガスと分析種とは拡散する

が,キャリヤーガスは分析種より拡散係数が大きく,より拡散して油回転ポンプで吸引される。一方,

分析種の拡散係数は小さいため直進し,質量の大きい分子ほど損失することなく質量分析計に導入さ

れる。


5

K 0123

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  3  セパレーターの一例

また,オープンスプリットカップリングによって接続する場合もある。この方法は,

図 に示すように

カラムから流出するキャリヤーガス及び試料成分を単にスプリットさせて質量分析計に導入する。セパレ

ーター方式では,低質量のキャリヤーガスを除去し,高質量の試料成分を通過させる濃縮効果があるが,

この方法では,スプリットするだけで,濃縮効果はない。しかし,分析種が,水素,メタン,窒素,酸素

などの低質量の成分を対象とする場合,セパレーターを用いるとこのような拡散係数の大きい分析種は,

ほとんど除かれてしまうが,オープンスプリットカップリングの場合は,常に一定量が質量分析計に導か

れるため,低質量の気体の分析には有効である。

  4  オープンスプリットカップリングの一例

5.1.3

質量分析計  質量分析計は,ガスクロマトグラフによって分離された分析種をイオン化し,質量電

荷比  (m/z)  に応じて分離した後,これを検出し,更に,各種データ処理などを行う部分で,イオン化部,

アナライザー(質量分離部)

,検出部,真空排気部及びシステム制御部からなる。

a)

イオン化部  イオン化部は,ガスクロマトグラフカラムから溶出した分析種をイオン化し,アナライ

ザーに導く部分である。用いられるイオン化法には,電子イオン化 (EI) 法,正イオン化学イオン化

(PCI)  法,負イオン化学イオン化 (NCI) 法,その他の方法がある。最も一般的な EI 法でのイオン源

は,アナライザーの形式が四重極形及び磁場形の場合,イオン化室,イオン化のための電子を供給す

るフィラメント(陰極)

,電子トラップ(陽極)

,イオンの押し出し又は引き出し電極,イオンの加速,

イオンビームの収束などを行う電極群からなり,外側に電子流に沿って磁場をかけるための磁石が装

着されている。また,イオン化室内壁への分析種の吸着を軽減させるため及び空気成分の脱ガスを行

うためのヒーターを備える。化学イオン化 (CI) のイオン源は,イオン化室の密閉度が高く,イオン

化時には,試薬ガスの導入が行われる。アナライザーの形式が四重極形及び磁場形以外の場合には,

イオン光学系が異なるため,イオン源の構造は上記とは異なる[b)  参照]

1)

電子イオン化  (EI)  法  真空下でフィラメントから放出された数 10 eV 以上のエネルギーをもつ電

子をイオン化室内の気体状の分析種に照射し,その運動エネルギーの一部を電子エネルギーの形で

付与してイオン化する方法。最初に分子イオン (M

)  を生じるが,一般に過剰な内部エネルギーに

よって分子構造に依存したフラグメンテーションが起こり,フラグメントイオンを生じる。分子構

造によっては,分子イオンが残らない場合もある。GC/MS 装置で最もはん用されているイオン化法

である。


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2)

正イオン化学イオン化  (PCI)  法  イオン化室を高純度メタンなどの試薬ガスを用いて 100 Pa 程度

の圧力で満たし,電子線などを照射して試薬ガス由来の反応イオン(例えば,メタンの場合,CH

5

C

2

H

5

など)を生成させる。次に,これらの反応イオンと分析種との間のイオン−分子反応によっ

て分析種をイオン化する。構造的に安定な偶数電子イオンである擬分子イオン (M±H)

を生じやす

い。また,反応熱の一部が過剰な内部エネルギーとして蓄えられるが,反応エネルギーの小さいソ

フトなイオン化のため,フラグメンテーションの量は EI と比較して少ない。PCI 法によって分子量

の推定が容易な場合が多い。

なお,試薬ガスの純度は,メタンの場合 99.99 %,その他の場合でも 99.9 %以上の純度のものが

用いられる。

3)

負イオン化学イオン化  (NCI)  法  イオン化室をメタンなどの試薬ガスで満たすことは PCI 法と同

じであるが,イオン化の機構は,反応イオン形と電子捕獲形との 2 種類に大別される。前者は,試

薬ガス又は系内に存在する水から生じた反応イオン (OH

)  と試料分子との間のイオン−分子反応

によってイオン化し,(M−H)

などのイオンを生じさせる。後者は,イオン化室内で運動エネルギ

ーを失った熱電子が試料分子と共鳴捕獲反応とを起こしてイオン化するもので,電子親和性の高い

化合物に対して分子イオン (M

)  などを極めて効率よく生成する。

4)

その他のイオン化法  GC/MS 装置で用いられるその他のイオン化法としては,フィールドイオン化

(FI)  法,レーザーイオン化法,誘導結合プラズマによるイオン化 (ICP) 法などがある。ICP-MS 法

は本来,無機元素の分析に用いられるが,GC/MS 装置では有機化合物の測定などに用いられる。

b)

アナライザー(質量分離部)  イオン化部で生じた分析種由来のイオンをその質量電荷比  (m/z)  に従

って分離する部分で,分離方式の違いによって四重極形 (Q),三次元四重極形(イオントラップ形)

(IT),磁場形(電場を E,磁場を B としたとき,EB 及び BE 形がある。),飛行時間形 (TOF),その他

の形がある。

1)

四重極形  四重極形質量分析計の概略図を,図 に示す。

  5  四重極形質量分析計の概略図

金属又は金属を蒸着したガラス製の 4 本の円柱若しくは双曲面をもつロッドをお互いに平行にイ

オン源の後方に設置する。この四重極ロッドの模式図を,

図 に示す。対向するロッドには同じ電

圧[高周波電圧  (Vcosωt)  に直流電圧  (U)  を重ね合わせたもの]を,隣り合うロッドには正負逆電

位をかけ,高速で切り替える。イオン源内で発生したイオンを中心軸に沿って入射させると,イオ

ンは,x 軸又は y 軸方向に振動しながら z 軸方向に進む。しかも,特定の質量電荷比  (m/z)  のイオ

ンだけが安定に振動しながら進行し,検出器に到達する。四重極ロッドの前方にプレロッドを設置

した装置もある。


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  6  四重極ロッドの模式図

四重極ロッドを通過後,検出器に到達するイオンは,式 (1) による。

ロッドまでの半径及び周波数を一定にすると,式 (1) は式 (2) となる。検出器に到達するイオン

は,ロッド電位に比例する。このロッド電位を走査することで,マススペクトルが得られる。

2

2

f

r

V

K

z

m

×

=

 (1)

=

z

m

K

× V   (2)

ここに,

  m:  式 (3) イオンの質量

z

:  電荷数

K

:  定数

K

:  定数

V

:  ロッド電圧

r

:  ロッドまでの半径

f

:  周波数

2)

三次元四重極形  三次元四重極形質量分析計は,イオン化部で生成されたイオンを,高周波を加え

られた電場によって三次元方向に強制振動させながら閉じ込めた後,質量電荷比  (m/z)  の大きさの

順にイオンを排出して質量分離する装置である。

図 に三次元四重極形質量分析計の模式図を示す。アナライザーは,双曲面をもった z 軸対称の

3 個の回転体の電極から構成される。上下 2 個の電極をエンドキャップ電極,中央の 1 個の電極を

リング電極と呼ぶ。

三次元四重極形質量分析計には,イオン化方式によって二つの方式がある。エンドキャップ電極

及びリング電極で囲まれる空間に GC カラムから溶出した分析対象成分を直接導入し,フィラメン

トからの熱電子照射によってイオン化を行う方式を内部イオン化方式,GC カラムから溶出した試

料をアナライザーの外側に設けられたイオン化室でイオン化した後に,エンドキャップ電極及びリ

ング電極で囲まれた空間に導入する方式を外部イオン化方式と呼ぶ。

リング電極に 1 MHz 程度の周波数で,小さな振幅 の高周波電圧を印加しておくことによって,

イオンの安定な振動の条件が作られ,ある値以上の質量電荷比  (m/z)  をもったイオンが振動空間の

中心部に集まって閉じ込められる。次に,この高周波電圧の振幅を徐々に増大させると,閉じ込め

られたイオンは質量電荷比  (m/z)  の小さい順にエンドキャップにある孔を通過して排出され,検出

器に到達してマススペクトルが測定される。


8

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  7  三次元四重極形質量分析計の模式図

3)

磁場形質量分析計  磁場形質量分析計は,通常,加速電圧一定で磁場強度(磁束密度)を変化させ

ることによって広い範囲の質量電荷比  (m/z)  をもつイオンを分離,検出する装置である(

図 8)。

一様の磁場の中を移動する電荷をもった粒子(イオン)は,イオンの進行方向と磁場の向きとの

両方に対して垂直方向に力(ローレンツ力)を与えるため,その平面内で円運動する。したがって,

一定な回転半径の磁場においては,式 (3) を満足する質量 のイオンだけが通過することができる。

a

2

2

2V

B

eR

z

m

=

 (3)

ここに,  m:  イオンの質量 

V

a

:  加速電圧

z

:  電荷数

e

:  電気素量

R

:  磁場の回転半径

B

:  磁場強度(磁束密度)

備考  磁場形質量分析計は,測定の目的に応じて,磁場強度一定で加速電圧(及び電場電圧)を変

化させて質量分離する方法を用いることがある。

  8  磁場形アナライザーにおけるイオンの分離

ここで,一般に,ほとんどの磁場形質量分析計は,磁場のほかに電場をもっている。磁場と電場


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K 0123

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とを組み合わせることによって,イオンの方向収束とエネルギー収束との二つの収束作用をもつこ

ととなり,高感度,高質量分解能を実現している。磁場形質量分析計には,磁場と電場との順序の

違いによって,正配置形(電場−磁場)と逆配置形(磁場−電場)とがある(

図 9)。

  9  正配置形及び逆配置形の構成図

磁場形質量分析計では,スリットなどを調節することによって,分解能を調節することが可能で

ある。磁場形質量分析計は,SIM による定量,マススペクトルによる定性などの日常的な質量分析

のほか,高分解能 SIM 測定などが可能である。

4)

飛行時間形  飛行時間形質量分析計 (TOF-MS) は,イオン源で発生した分析種由来のイオンがパル

ス電圧によって加速され,検出器まで到達する時間によって質量スペクトルを得る装置である。

イオン化室で生成する試料由来のイオンは,加速された後,検出器までフライトチューブ(無電

界空間)内を質量電荷比  (m/z)  に対応する速度で飛行し検出器に到達する。

このときの飛行速度,加速電圧,質量及び電荷数の間には,式 (4) のような関係が成り立つ。し

たがって,飛行速度は式 (5) で,飛行時間は式 (6) で求められる。式 (6) を書き替えると m/を与

える式 (7) となる。

V

z

v

m

=

2

2

 (4)

m

V

z

v

=

2

 (5)

V

z

m

L

v

L

t

×

=

=

2

 (6)

2

2

2

/

L

Vt

z

m

=

 (7)

ここに,

V

:  加速電圧

v

:  飛行速度

m

:  イオンの質量

z

:  電荷数

t

:  飛行時間

L

:  飛行距離

飛行時間形質量分析計には,イオンが直進し,検出器に到達するリニア形(

図 10)と,リフレク

イオン源

電場

磁場

検出器

イオン源

磁場

電場

検出器

a)

  正配置形 

b)

  逆配置形 


10

K 0123

:2006

ターによって折り返し,検出器に到達するリフレクトロン形(

図 11)とがある。リフレクトロン形

では,振り子の原理を応用し,大きな運動エネルギーをもつイオンほどリフレクトロンの深部まで

進行して反転させることで,同じ質量をもつイオンを初期運動エネルギーと関係なく検出器へ同時

に到達させて分解能を向上できる。TOF-MS は,生成したイオンのほとんどが検出器に到達するた

め感度が高い。

 10  リニア形飛行時間形質量分析計の模式図(一例)

 11  リフレクトロン形飛行時間形質量分析計の模式図(一例)

5)

その他の形式のアナライザー  その他の形式のアナライザーとしてイオンサイクロトロン (ICR)

形がある。ICR は,一様の高磁場中で回転運動するイオンに高周波電場を印加すると,その周波数

に一致する回転周波数をもつ特定の質量電荷比  (m/z)  値のイオンだけが共鳴的にエネルギーを吸

収し,回転半径を増大させて検出電極に誘導電流を生じる現象を利用する。イオンの検出には,通

常,誘導電流のフーリエ変換が用いられる。

MS/MS 法には原理的に幾つかの走査方法があるが,通常は特定のプリカーサーイオンだけを第一

のアナライザー (MS1) で選択し,そのイオンを不活性ガスと衝突させて活性化し,フラグメンテ

ーションを起こさせる[衝突誘起解離 (CID)]

。生成したプロダクトイオンは,第二のアナライザー

(MS2)  で分離検出する。装置の形式としては,空間的に分離したアナライザーを用いて行われる空

間形と,同一のアナライザー内で時間経過とともに連続的に行われる時間形とがある。また,主に


11

K 0123

:2006

空間形では,形式の異なるアナライザーを組み合わせることが多く,ハイブリット形とも呼ばれる。

GC/MS/MS として使用される装置としては,空間形は,三連四重極 (QqQ) 形(中央の q は CID

を行う場所)が代表的であるが,ハイブリット形として磁場二重収束形と四重極形とを組み合わせ

た EBqQ などがある。また,時間形としては,三次元四重極形が代表的でその他 ICR があるが,2

回以上の CID が可能なため MS

n

とも表記される。

また,

磁場二重収束形は磁場と電場とをもつので,

これらをリンク走査することによって単独の装置での MS/MS が可能である。

c)

検出部

1)

二次電子増倍管形検出器

1.1)

チャンネル形二次電子増倍管検出器  図 12 に概略図を示す。チャンネル形二次電子増倍管はガラ

ス又はセラミックス製の曲がったパイプ状で,その内側表面は,数十 MΩ の高抵抗をもつ連続体

であり,二次電子放出面を形成する。入口部分に入射したイオンの衝突によって数個の二次電子

が放出され,これらはパイプ出口に向かう電位こう(勾)配に沿って加速され,近傍の内壁に衝

突して再度二次電子が放出される。この衝突及び二次電子放出の繰返しによって,最終的に 10

6

∼10

8

倍に増幅された電流がアノードを通じて検出回路に入力される。

1.2)

ディスクリート形二次電子増倍管検出器  図 13 に概略図を示す。ディスクリート形二次電子増倍

管は,14∼20 段連続して並べられたダイノードに二次電子放出面が取り付けられている。各ダイ

ノード間の電位差(最大 200 V 程度)によって,二次電子が次段の二次電子放出面に衝突して再

度二次電子が放出される。この衝突及び二次電子放出の繰返しによって,最終的に 10

6

∼10

8

倍に

増幅された電流がアノードを通じて検出回路に入力される。

 12  チャンネル形二次電子増倍管検出器(一例)

JIS K 0133

図 を転載)

 13  ディスクリート形二次電子増倍管検出器(一例)

JIS K 0133

図 を転載)

2)

光電子増倍管形検出器(フォトマルチプライア形検出器)  図 14 に概略図を示す。光電子増倍管形

検出器は,変換ダイノード,シンチレーター及び光電子増倍管によって構成される。


12

K 0123

:2006

高電圧(最大 5 kV 程度)を印加された変換ダイノードによって分離されたイオンが衝突すると,

電子が放出される。この電子は高電圧(最大 10 kV 程度)を印加されたシンチレーターに衝突し,

光子が放出される。光子は,光導管を通過して光電子増倍管に入射する。

光電子増倍管では,外部光電効果によって光電面から光電子が放出される。光電子は,集束電極

によって,電子増幅部の第一ダイノードに収束される。第一ダイノードからは二次電子が放出され,

次段のダイノードに衝突して二次電子が放出される。この衝突と二次電子放出との繰返しによって,

最終的に 10

6

∼10

8

倍に増幅された電流がアノードを通じて検出回路に入力される。

 14  光電子増倍管形検出器(一例)

3)

その他の検出器

3.1)

マイクロチャンネルプレート  マイクロチャンネルプレート  (Micro Channel Plate : MCP)  は薄い

ガラス板に,チャンネルと呼ばれる内径約 10 µm の孔がはち(蜂)の巣状にあけられたものであ

る(

図 15)。MCP の両面は,金属被覆されており,電極となっている。電極間に電圧を印加する

と,チャンネル内に電場こう配が生じる。この状態でチャンネル内壁の入力側に近い位置にイオ

ンが衝突すると,複数の二次電子が放出される。これらの二次電子は,チャンネル内の電場こう

配によって加速され,反対側の壁に衝突して再度二次電子を放出する。こうして電子はチャンネ

ルの内壁に何度も衝突しながら出力側へ進んで行き,結果として指数関数的に増倍された電子流

が取り出される(

図 16)。この電子がアノードに捕集され,電気信号となる。MCP の増幅率(入

力側に一つのイオンが入射したときに,出口側から放出される電子の数)は最高数千である。MCP

は,大きな面積をもつため,広がったイオンを同時にとら(捉)えることができる。このため,

飛行時間形質量分析計の検出器として広く用いられている。

 15  マイクロチャンネルプレート  (MCP)


13

K 0123

:2006

(矢印の大きさは,発生二次電子量を示す。

 16  チャンネル内での電子の増幅の概略図

3.2)

ポストアクセル検出器  イオンが二次電子増倍管などの検出器に衝突したときの二次電子の発生

効率は,イオンの速度に依存する。したがって,イオンを一定電位で加速した場合,低質量イオ

ンと高質量イオンとは同じ運動エネルギー  (mv

2

/2)  をもつが,低質量イオンに比べて高質量イ

オンのもつ速度は小さくなるため,高質量イオンの検出感度は低くなる。したがって,高質量イ

オンの検出感度を向上させるために,高い電圧を印加した変換ダイノードを用いて二次電子など

を発生させ,これを再加速させて二次電子増倍管形又は光電子増倍管形検出器などに導く方法が

広く用いられている。この機能をもつ検出器をポストアクセル検出器と呼ぶ。変換ダイノードを

用いることで,特に高質量イオンに対する感度,又は負イオンの検出感度が向上する(

図 17)。

(矢印の大きさは,発生二次電子量を示す。

 17  ポストアクセル検出器の概略図

d)

真空排気部  真空排気部は,イオン化部及びアナライザーを真空に保つためのもので,前段に油回転

ポンプ,後段に油拡散ポンプ又はターボ分子ポンプが用いられることが多い。イオン化部は,通常,

EI 法の場合 0.01 Pa 以下,CI 法の場合 10∼100 Pa 程度,アナライザーは 0.01∼1 mPa 以下に保たれる。

イオン化部とアナライザーとは別々の前段ポンプを用い,後段のポンプを共通に使用するシステム及

び各部の間に隔壁を設け,それぞれ異なる排気系で差動排気を行うシステムがある。また,これらの

排気システムは附属の校正用標準ガス,CI 用試薬ガス,直接試料導入部などの排気にも用いられる。

e)

システム制御部  システム制御部は,装置各部の制御,質量スペクトル,クロマトグラムの採取,記


14

K 0123

:2006

録,処理,表示などを主に行う部分で,中央演算ユニット (CPU),記録媒体などから構成され,オペ

レーティングシステム及び各種ソフトウェアが組み込まれたコンピュータ本体,キーボード,ディス

プレイなどからなる。通信機能をもち,LAN などを通して装置の遠隔制御,測定データへの接続が可

能な装置もある。また,GC/MS 装置本体に接続した各種前処理,試料導入装置を同時に制御できるも

のも多い。

5.1.4

附属装置  附属装置は,次による。

a)

ガスクロマトグラフ部附属装置

1)

試料導入装置  一定量の試料を採取し,ガスクロマトグラフの気化室に導入する。

2)

ヘッドスペースガス試料導入装置  試料の一定量をバイアルにとり,アルミニウムキャップで密封

する。溶媒の沸点の 20  ℃以下程度に加熱し,30∼60 分間静置して,一定量のヘッドスペースの気

体をガスクロマトグラフに導入する。

3)

加熱脱着形試料導入装置  揮発性有機化合物を吸着剤に吸着させ,自動でバルブを切り替えて加熱

脱着し,ガスクロマトグラフに導入する。

4)

パージアンドトラップ試料導入装置  主として,水中の揮発性有機化合物を測定する場合に用いら

れる。測定原理は,加熱脱着形と同じであるが,試料水を直接導入装置に入れるだけで目的成分を

自動的にガスクロマトグラフに導入する。

5)

ガス自動濃縮導入装置  主として,大気中の揮発性有機化合物を測定する場合に用いられる。キャ

ニスターなどによって捕集されたガスを導入装置に接続するだけで,目的成分を自動的にガスクロ

マトグラフに導入する。

6)

熱分解試料導入装置  ポリマーなどを高温度まで急速加熱し,熱分解によって生成した物質又は熱

抽出した物質をガスクロマトグラフに導入する。

7)

その他  ファイバーの先端に吸着剤を塗布し,その部分で試料を濃縮し,自動的に導入するマイク

ロ固相抽出試料導入装置などがある。

b)

質量分析部附属装置

1)

試薬ガス導入装置  化学イオン化に用いる試薬ガスを供給する装置で,圧力(流量)制御機構,開

閉弁及び排気機構からなる。

2)

直接試料導入装置  試料を直接イオン化室へ導入するための装置で,プローブ,加熱機構,開閉弁

及び排気機構からなる。

3)

校正用標準物質導入装置  校正用標準物質をイオン化室へ導入するための装置で,圧力(流量)制

御機構,開閉弁,排気機構などからなる。

6.

安全  安全のために,次の事項に十分注意しなければならない。

a)

試料及び分析に用いる薬品の取扱いは,爆発性,引火性,毒性又は有害性に十分注意して行う。それ

らの廃棄については,安全化及び無害化の配慮を行い,環境汚染防止の諸規定に従う  (

1

)。

注(

1

)  毒性,有害性のある薬品の取扱いに当たっては,必要に応じた保護具(保護めがね,ゴム手袋,

防毒マスクなど)を着用する。

b)

装置は,接地点に接地する。

c)

高圧容器詰のガスを利用するときは,

“高圧ガス保安法”の諸規定に従う。

なお,高圧ガス保安法に規定する圧力以下の容器を装置の近くで用いる場合にも,容器が転倒しな

いように,架台,壁,実験台などに固定しなければならない。


15

K 0123

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d)

装置の運転に先立ち,配管の接続部,流路などからのガス漏れがないことを確認する。

e)

電源が入っている状態で,装置の内部に直接触れると感電するおそれがあるので,装置の点検,修理

は,やむを得ない場合以外は,電源を切って行う  (

2

)。

注(

2

)  装置にリチウム電池が内蔵されている場合は,取扱いを誤ると破裂する危険があるため注意す

る。

f)

装置がほかの機器に電磁波障害を与えたり,ほかの機器から電磁波妨害を受ける場合があるので注意

する。

g)

生体試料(血清,血しょう,組織,尿など)は,ウイルス,細菌などの感染のおそれがあるため,素

手で取り扱ってはならない。生体試料の取扱いについては,皮膚への直接接触,ピペット操作による

誤飲,針刺しなどに注意し,保護具(保護めがね,ゴム手袋,マスクなど)を着用する。

なお,生体試料は,必要に応じて所定の場所で取り扱う。

7.

装置の設置  装置は,次の条件を備えた部屋に設置することが望ましい。

a)

指定された温度(例えば,15∼25  ℃)及び湿度(例えば,相対湿度 70 %以下)の範囲内であって,

それらに急激な変化が生じない。

b)

振動がない。

c)

使用する有機溶媒及び有害物質を安全に排出処理でき,換気がよく,また,ほこりが少ない。油回転

ポンプ及びスプリットベントからの排気ガス並びにガスクロマトグラフから発生する熱を排出するた

めのダクトを,設置する。

d)

装置に直接日光が当たらない。

e)

供給電源は,指定された電圧,電気容量及び周波数とし,電圧変動は 10 %以内で周波数の変動がない。

f)

大形変圧器,高周波加熱炉,発信機などから電磁誘導を受けない。

g)

指定された接地抵抗を満足する接地端子をもつ。

h)

油拡散ポンプなどに冷却水を使用する場合は,指定された水圧,水量及び水温で,ごみ及び異物を含

まず,スケールが生成しない。

i)

高圧ガスの配管が可能で,その接続部などに漏れがない。

8.

装置の運転

8.1

運転の手順  装置の運転に当たっては,取扱説明書に従って始動した後,調整を行う。図 18 に装置

の始動から測定,データ管理までの手順の一例を示す。

 18  装置の始動から測定,データ管理までの手順(一例)

8.2

ガスクロマトグラフィーの準備  ガスクロマトグラフの準備は,次による。

a)

カラム  分析目的に適したカラムを用いる。あらかじめカラムの性能を確認し,必要に応じてカラム

装置

始動

調整

測定条件の設定

測定

定性

データ管理

定量

試料

前処理

試料導入

装置


16

K 0123

:2006

交換,空焼き  (

3

)  などを行う。注入口側及び質量分析計側にカラムを取り付ける直前に,カラム両端

部を必要に応じて切り取る。

カラムナットから出すカラムの長さは,

取扱説明書に従って取り付ける。

その場合,注入口に分析目的に適したライナー,セプタムを取り付ける。

注(

3

)  カラムを空焼きする場合には,カラム槽はこれに必要な温度(カラムの最高使用温度より 20  ℃

程度低い温度)とする。

b)

キャリヤーガス  一般に,キャリヤーガスとして高純度ヘリウムを用いる。分析に用いるカラム内径,

長さなどに応じて,十分な感度が得られるように最適なキャリヤーガスの流量を設定する。また,ガ

ス漏れのないことを確認する。

8.3

質量分析計の準備  質量分析計の準備は,次による。

a)

校正用標準物質  分析目的に適した校正用標準物質を用いる。一例として,ペルフルオロトリブチル

アミン (PFTBA),ペルフルオロケロセン (PFK) などを用いる。操作は,取扱説明書に従う。

b)

試薬ガス  試薬ガスは,一般的に純度の高いメタン,2-メチルプロパン(イソブタン)などを用いる。

分析対象物質に応じて,十分な感度が得られるように最適な試薬ガスの流量を設定する。

8.4

始動  装置の運転に当たっては,取扱説明書に従って始動する。まず,ガスクロマトグラフを始動

させる。分析試料の性質,注入方法(スプリット/スプリットレス)などに応じて,分析目的に適した注

入口温度,オーブン温度,昇温条件などを設定する。

質量分析計は,前段の粗引き真空ポンプ(通常,油回転ポンプ)を稼動させ,ある程度の真空度になっ

てから,後段の油拡散ポンプ又はターボ分子ポンプを稼動させる。イオン化部,アナライザー,インター

フェースの温度などを設定する。イオン化部及びアナライザーが所定の真空度に達するまで待機する。イ

オン化部の変更又は取付け,若しくはカラムの交換などを行った後に真空系を立ち上げたときは,各部真

空度を確認する。空気及び水のリークがないことを確認する。

8.5

調整  調整は,装置の据付け時,一時停止後の始動時のほか,特に必要な場合に調整を行う  (

4

)。ま

た,装置が作動している状態で必要な項目の条件設定を行った後,主として次の項目について実施する。

この操作は,装置によって異なるので,各装置の取扱説明書を参照する。

注(

4

)  最近の装置では,システム制御部のオートチューンと呼ぶ機能によって,調整を自動的に行う

ことが多い。

a)

質量電荷比  (m/z)  目盛  校正用標準物質を用いて校正する。分析目的に適した標準物質を選択する。

校正方法は,取扱説明書に従う。

b)

分解能  分析目的に応じて必要な分解能が得られるように,取扱説明書に従って調節する。

c)

感度  必要に応じて各装置で指定された試料(例えば,ステアリン酸メチル)を用いて,所定の感度

が得られるようにレンズ,検出器などを調節する。

8.6

測定条件の設定  測定条件の設定は,分析目的・内容によって異なる。次に示す項目などがあり,

必要に応じて手動又はシステム制御部によって設定する。装置によっては設定項目が異なるので,各装置

の取扱説明書を参照する。長時間使用しなかった装置は,必要に応じた調整を行い,性能を確認する。

a)

ガスクロマトグラフ

−  キャリヤーガスの種類及び流量又は圧力

−  カラムの種類

−  注入方法

b)

質量分析計

1)

イオン化部


17

K 0123

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−  電子イオン化法:イオン化電流,イオン化電圧及びイオン源温度

−  化学イオン化法:試薬ガスの種類,イオン化電流,イオン化電圧及びイオン源温度

−  装置全体の調整として,質量分解能及び感度の最適化を行う。この操作は装置によって異なるの

で,各装置の取扱説明書を参照する。

2)

アナライザー

−  イオン加速電圧

−  分解能

−  走査速度及び走査質量範囲(質量スペクトル測定の場合)

−  検出イオンの種類(正イオン又は負イオン)

−  検出イオン及びサンプリング時間(選択イオン検出の場合)

−  検出器への印加電圧

−  データシステムへのスペクトル取込み条件

−  リンク走査の条件(MS/MS 法の場合)

−  プリカーサーイオン,プロダクトイオン,衝突誘起解離電圧並びにガスの種類及び圧力(MS/MS

法の場合)

8.7

試料の導入  試料の導入量に応じて適切な容量の計量器具(マイクロシリンジ又はガスタイトシリ

ンジ)を用いて注入口から試料を導入する。又は 6.  に規定するガスクロマトグラフ試料導入装置を,適切

な条件に設定して試料を導入する。

8.8

測定(質量スペクトルの採取)  ガスクロマトグラフで分離された化合物はイオン化部でイオン化

され,アナライザーで分離された後,検出されて質量スペクトルが取得される。データの採取・記録方法

には,次に示す各種の手法がある。

なお,測定終了後は,設定時のガス流量及び温度のままの状態で装置を待機させる。測定を長時間行わ

ないのであれば,質量分析計及びガスクロマトグラフの温度を常温にしてもよい。また,装置を停止させ

る場合は,各装置の取扱説明書に従い,装置を停止する。そのとき,キャリヤーガスは必要最小限の流量

で流し,冷却水循環装置などは停止してもよい。

a)

全イオン検出法  設定した質量範囲を設定した走査速度で繰り返し走査し,走査ごとに質量スペクト

ルを採取,

記録して保存する手法。

各走査ごとのイオン量の積算値を記録して得たクロマトグラムを,

全イオンクロマトグラム (TIC) と称する。各走査ごとに得られる質量スペクトルを時系列に並べ,特

定の質量電荷比  (m/z)  のイオンについてそれらのイオン強度を時間軸に沿って表したものがマスク

ロマトグラムである。質量スペクトルとマスクロマトグラムとの関係(一例)を,

図 19 に示す。


18

K 0123

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 19  質量スペクトルとマスクロマトグラムとの関係(一例)

b)

選択イオン検出法  (SIM : Selected Ion Monitoring)  分析種に応じて,あらかじめ決めた特定の質量電

荷比のイオンを検出する手法。選択イオン検出によって,1∼数十の特定質量電荷比  (m/z)  のイオン

量に対応する電気信号量を連続的に記録したものは,特定分析種の高感度定量分析に利用される。選

択したイオンだけを測定するので SN 比が向上し,感度はマスクロマトグラフィーによる方法に比べ

て 1∼2 けた優れている。

c)

選択反応検出法  (SRM : Selected Reaction Monitoring)  特定のプリカーサーイオンを第一のアナライ

ザー (MS1) で選択し,そのイオンを不活性ガスと衝突させて活性化しフラグメンテーションを起こ

させた[衝突誘起解離 (CID) 又は衝突活性化解離 (CAD) という。

]後,生じたプロダクトイオンの

幾つかを選んで第二のアナライザー (MS2) で分離,検出する手法。一般に,SIM と比べて選択性が

向上する。

8.9

データ処理  取得されたデータは,試料ごとのクロマトグラム及びスペクトルとしてシステム制御

部のデータシステムに保存される。必要に応じて,バックグランドの差し引きを行い,スペクトルとして

表示する。マスクロマトグラム及び全イオンクロマトグラムを利用して定量を行う場合,一般的には標準

物質を用いて得られるクロマトグラム上のピーク面積を測定し,検量線を作成する。高分解能条件下で求

められた精密質量から,未知化合物の組成式を推定することができる。

9.

定性分析

9.1

測定試料の調製及び測定  測定試料の調製及び測定は,次による。

a)

必要に応じて,試料の溶解,精製,濃縮,希釈,誘導体化などを行う。

b)  8.1

8.5 によって,目的に適したイオン化のモード,カラムなどを選択して測定準備を行った後,8.6

及び 8.7 によって測定条件を設定する  (

5

)。

注(

5

)  カラムの種類・長さ・温度条件の選定及び走査速度の設定は,カラムの液相から生じるバック

グラウンドが試料の質量スペクトルに影響を与えないように,また,一つの成分ピークについ

て少なくとも 5 回程度の走査を行うようにする。

c)

8.8

及び 8.9 によって,必要な測定及びデータ処理を行う。次に示した測定データのうち,必要なもの

を整える。

1)

質量スペクトル  バックグラウンドを差し引き,GC ピークの頂点付近における数回の走査の平均


19

K 0123

:2006

スペクトルを求めておく。

2)

全イオンクロマトグラム (TIC) 及びマスクロマトグラム

3)

選択イオン検出 (SIM) のクロマトグラム(低分解能)

4)

選択イオン検出 (SIM) のクロマトグラム(高分解能)

5)

選択反応検出 (SRM) のクロマトグラム

6)

特定イオンの精密質量

7)

衝突誘起解離 (CID) スペクトル

9.2

定性又は同定  定性又は同定は,次のいずれかの方法,又はそれらの組合せによって得られた情報

を総合して行う  (

6

)。

注(

6

)  質量分析法だけでは,異性体の区別が付けにくい場合がある。赤外吸収スペクトル,核磁気共

鳴スペクトルなど,他の分析手段によるデータも有用な情報を与える。

a)

質量スペクトルの解析による方法

1)

分子量  分子イオン,擬分子イオン,付加イオン(CI の場合)などを利用して分子量を推定する  (

7

)。

注(

7

) EI 法では,分子イオンが出現しない場合もある。CI 法では擬分子イオンが生じやすいので分子

量の推定に役立つことが多いが,その生成は試薬ガスの種類などに依存して変化するため,注

意しなければならない。

2)

特定元素の種類及びその原子数  炭素,けい素,硫黄,塩素,臭素など同位体が存在する特定元素

について,それらの同位体イオンを確認し,その同位体存在比(相対強度比)から原子数を推定す

る  (

8

)。

注(

8

)  存在が予想される元素の安定同位体を含む標識化合物の一定量を試料に混合し,その質量スペ

クトルにおける特定イオンの同位体存在比の変化から,特定元素の存在を確認する方法も用い

られる。

3)

官能基の種類,数及び部分構造  開裂の経験則に基づいてフラグメントイオン,準安定イオンなど

から官能基の種類,数及び部分構造を推定する  (

9

)。この場合,特定プリカーサーイオンの衝突誘起

解離 (CID) スペクトルなどを利用し,プリカーサーイオンからプロダクトイオンへの開裂様式を知

ることができる。

注(

9

)  シリル化剤,アシル化剤,エステル化剤などの誘導体化剤を用いて,試料を誘導体化し,質量

スペクトル中の特性イオンについて求めた元の化合物と誘導体間の質量シフトとから,官能基

の種類及びその数を推定する方法も用いられる。

4)

分子式及びイオンの組成式  分子イオン又はフラグメントイオンについて高分解能測定を行える場

合は,精密質量を求め,データシステムによって分子式又はイオンの組成式を推定することができ

る。

b)

ライブラリー検索による方法  データシステムによって,未知化合物の質量スペクトルとデータファ

イルされている既知の標準スペクトルとを比較し,類似する質量スペクトルをもつ化合物名を順序付

きで選び出し,同定を行う  (

10

)。

注(

10

)  この方法では,該当する化合物がファイルされていない場合でも,結果が表示されるので,検

索結果を参考にして分析者が最終判断をする必要がある。

なお,未知化合物の CI スペクトルから分子量が推定できる場合には,これと検索結果とを照

合するとよい。

c)

特定イオンの検出による方法  測定試料(分析種)の絶対量が少なく,質量スペクトルの測定が困難


20

K 0123

:2006

な場合には,存在する可能性がある複数のイオンを選択イオン検出法によって検出し,そのイオンの

相対強度又は同位体存在比を求めて同定を行う。また,この方法は既知の成分の有無を調べる場合に

も用いられ,特徴的なイオン 1∼数個を選んで同様にその有無を検出する。いずれの場合もイオンの

相対強度又は同位体存在比が,推定された化合物の値と一致することを確認する。

d)

クロマトグラムの保持時間による方法  この方法は,a)∼c)  の方法と併用する。同一条件下で測定し

た未知化合物と推定化合物とのクロマトグラム[マスクロマトグラム又は選択イオン検出 (SIM) のク

ロマトグラム]の保持時間との一致を確認する  (

11

)。また,保持指標データとの比較によってもよい。

注(

11

)  内標準物質を用いれば,保持時間(保持比)の再現性は非常によくなる。

10.

定量分析

10.1

試料の前処理  試料の前処理は,分析種の溶解・分離・濃縮,妨害成分の除去,揮発性・安定性の

向上,高感度化のための誘導体化などを目的として行う。分析種が極微量の場合には,前処理操作中にお

ける損失及びコンタミネーションに特に注意し,また,光,熱,酸化などの影響を避けなければならない。

主な前処理操作を,次に示す。

a)

試料からの分析種の抽出  溶液試料では,溶媒抽出,固相抽出,ヘッドスペース法などを用い,固体

試料では微粉とした後,適切な溶媒を用いてソックスレー抽出,超音波抽出などの方法を用いる。直

接熱抽出を行うこともある  (

12

)。

注(

12

)  ガスクロマトグラフへの導入まで,自動的に連続して行う場合もある。

b)

妨害成分の除去(クリーン・アップ)  溶媒抽出,酸・塩基による抽出,アルミナ(酸性又は塩基性)・

シリカ・活性けい酸マグネシウムなどによるカラム分離,高速液体クロマトグラフによる分画などの方

法を用いる。

c)

分析種の濃縮  溶液試料では,エバポレーター,クデルナダニッシュ形 (KD) 濃縮器などによる常圧

又は減圧下の蒸発濃縮,気体試料では吸着剤による常温,低温濃縮などの方法を用いる。

d)

誘導体化  分析種の揮発性及び熱安定性を高めるために,アセチル化,メチル化,トリメチルシリル

化,エステル化などを行い,また,電子親和性を高めて負イオンによる検出感度を向上させるために,

含ふっ素誘導体化などを行うこともある。

10.2

内標準法  前処理時における回収率の変動,試料導入量の変動など,測定時における各種の変動の

影響を避け,正確な定量値を得るためには,内標準法を用いるとよい。特に,分析種がごく微量の場合に

は,この方法によることが必要である。

内標準物質には,ガスクロマトグラフ分析及び質量分析における挙動が分析種と類似している物質を選

び,ガスクロマトグラフ質量分析では,分析種と同じか又はその異性体で,それらの同位体標識化合物(d

体,

13

C 体など)を用いることが望ましい  (

13

)。内標準物質を添加する時期は,試料採取から測定の直前ま

で,目的及び状態によって異なるが  (

14

),同位体標識化合物の場合には,できるだけ早い段階で添加する

ほうがよく,定量値の正確さも向上する。

注(

13

)  ごく微量の多数の同族体又は異性体を分別定量する場合(例えば,ダイオキシンなど)には,

複数の同位体標識化合物を内標準物質として使用する。

なお,ある成分の分析に,その同位体標識化合物を添加して行う場合,特に,同位体希釈法

ということがある。

(

14

)  内標準物質には,抽出からクリーンアップまでの前処理操作の全体の結果を確認し,分析種を

定量するための基準とするために添加するクリーンアップスパイク用内標準物質,試料採取か


21

K 0123

:2006

ら抽出前までの操作の結果を確認するために添加するサンプリングスパイク用内標準物質,ガ

スクロマトグラフ質量分析計への試料液の注入を確認するために添加するシリンジスパイク用

内標準物質などがある。

10.3

絶対検量線法  再現性のよい結果が得られる場合又は適切な内標準物質がないときに用いる。

10.4

標準添加法  適切な内標準物質がなく,試料に由来する妨害物質による影響が無視できないときに

用いる。

10.5

検量線又は関係線の作成

10.5.1

検量線又は検量線作成用試料の調製  検量線又は関係線作成用の試料は,次のように調製する

(

15

)。検量線又は関係線作成に用いる試薬などは,可能な限りトレーサビリティの確保された標準物質を使

用する。

注(

15

)  検量線作成用試料の濃度範囲は,直線性が得られる範囲内で必要以上に広くしないほうがよい。

上限は,実際試料中の予想濃度の数十倍程度までとする。また,下限は装置及びその整備状態,

測定条件,検出に利用するイオンの種類,バックグラウンドなどによって著しく変わることが

あるが,およそ pg 前後で,fg レベルまで可能な場合もある。一般に,定量下限は,検出下限の

数倍程度と考えてよい。

a)

内標準法及び絶対検量線法

1)

液体又は固体成分の場合  分析種の高純度試薬などを一定量正確にはかりとり,適切な溶媒に溶解

した後,一定濃度に調製する。その一部を段階的に採取し,内標準法の場合は内標準物質を一定量

になるように加え,溶媒で希釈して数個の検量線作成用試料を調製した後,密栓して保存する。

なお,分析種の濃度変化がないように,保存方法及び期間に注意が必要である。

2)

気体成分の場合  シリコーンゴム栓などの付いた内容量既知のガラス製捕集瓶数本を,あらかじめ

十分に洗浄し,乾燥する。これに分析種を含まない精製した不活性ガスなどを満たす。シリコーン

ゴム栓を通して,気体試料用シリンジで分析種の高純度ガス又は濃度既知のガスを段階的にとり,

注入する。内標準法の場合は,内標準物質のガスを一定量注入する。分析種がガラス内壁に吸着す

るおそれがある場合には,分析種が吸着しない素材の捕集バックなどを用いて同様の操作をする。

いずれの場合も数段階の希釈を行ってよく,また,調製にパーミエーション管及びガス自動濃縮導

入装置を用いてもよい。低濃度に希釈した検量線作成用試料は,調製後,直ちに測定を行い  (

16

),

長期間保存してはならない。

注(

16

)  使用時,容器を加熱し,内壁へ吸着した分析種を脱離させる場合もあるが,再現性に十分注意

する。

b) 

標準添加法  試料溶液から一定量を複数採取する。採取した試料溶液のそれぞれに既知量の分析種を

濃度が段階的に異なるように添加し,均一に混合する。そのとき,1 個は分析種を添加しないものと

する。これらの溶液をそのまま,又はそれぞれ一定量に希釈して検量線又は関係線作成用試料とする。

なお,添加量は,分析種を添加した試料の分析種のピーク面積(又はピーク高さ)が分析種を添加

しない試料の分析種のピーク面積(又はピーク高さ)の 2 倍程度以内になるように調製する。

10.5.2

検量線又は関係線の作り方  検量線又は関係線は,次のいずれかの方法によって作成する。

a)

内標準法  8.  によって,装置を試料の場合と同条件  (

17

)  に設定しておき,あらかじめ,内標準物質

の一定量を加えておいた一連の検量線作成用試料の一定量を,順次装置に導入する。選択イオン検出

法又は全イオン検出法によって分析種及び内標準物質に特徴的なイオンを検出し,得られたそれぞれ

のクロマトグラムのピーク面積(又はピーク高さ)を測定する。分析種の量と内標準物質の量との比


22

K 0123

:2006

を横軸に,分析種のピーク面積(又はピーク高さ)と内標準物質のピーク面積(又はピーク高さ)と

の比を縦軸にとって,検量線を作成する。

注(

17

)  10.6.1 参照。

b)

検量線法  一連の検量線作成用試料の一定量を,10.5.2 a)  と同様に測定し,分析種の量又は濃度を横

軸に,ピーク面積(又はピーク高さ)を縦軸にとり,検量線を作成する。

c)

標準添加法  一連の関係線作成用試料の一定量を,10.5.2 a)  と同様に測定し,添加した分析種の量又

は濃度を横軸に,ピーク面積(又はピーク高さ)を縦軸にとり,関係線を作成する。分析種を添加し

ない試料から得られるピーク面積(又はピーク高さ)に相当する分析種の量又は濃度は,関係線と横

軸との交点から求めることができる。

なお,関係線は,直線でなければならない。

10.6

定量操作

10.6.1

測定条件の選定  定量のための測定条件は,次のとおり選定する。

a)

イオンの検出及びイオン化の方式  目的に応じ,感度,選択性,測定の精度などを考慮して,正・負

イオンの別,検出の方式及びイオン化の方式を選択する。

b)

カラム  分析種の望ましい分離が行われるように選定する  (

18

)。この場合,カラム温度は,最高使用

温度を超えないように,また,バックグラウンドが大きくならないようにする。

注(

18

)  カラムの選定は,SIM の選択性とも関連する。検出の選択性が優れていれば,カラムによる分

析種の完全分離を必要としない場合もある。また,このことは内標準物質についても同様であ

る。

c)

選択イオン  分析種検出のために選択するイオンは,その成分に特徴的でイオン強度が大きく,共存

成分,カラム,質量分析計に起因するバックグラウンドなどの影響がないものを選定する。内標準物

質についても同様にして選定する。場合によっては,1 成分について二つ以上の質量電荷比  (m/z)  で

選択イオン検出を行うことがある。

d)

選択イオン検出  (SIM)  のサンプリング時間  一つの成分のピークに対して,なるべく 10 点以上の測

定点が得られるように設定する。サンプリング時間は,選択イオンの 1 測定当たり,通常,10∼100 ms

とするが,同時に検出する選択イオンの数を多くとると一つの成分ピーク当たりの測定点が減少する

ので注意しなければならない。

e) 

分解能  通常の測定では低分解能(磁場形では 1 000 程度)でよいが,分析種がごく微量の場合で,

特に妨害となる共存成分がクリーン・アップ操作で十分に除けない場合,又はバックグラウンドの影

響を除けない場合には,高分解能(約 5 000∼10 000 以上)で測定したほうがよい  (

19

)。

注(

19

)  分解能を高くしていくとバックグラウンド及び不明ピーク(ケミカルノイズ)が徐々に小さく

なり SN 比は向上するが,分解能を高くし過ぎると絶対感度が低下するので,あらかじめ最適

の分解能を経験的に求めておく。また,分解能を高くしても共存成分,ケミカルノイズなどの

影響が除けない場合には,GC/MS/MS 法によって,通常の選択イオン検出法で用いるイオンを

衝突・解離させ,そのプロダクトイオンを検出する方法 (SRM) を用いるとよい場合がある。

f)

試料導入部(インジェクター)  溶媒と分析種との沸点差などを考慮し,適切な試料導入部を選択す

る。

10.6.2

測定  実際試料の測定は,次による  (

20

)。

注(

20

)  ごく微量測定を行う場合には,例えば,濃度の高い検量線作成用試料を装置から遠ざけ,シリ

ンジも高濃度試料を扱ったものは使わないなど,コンタミネーションには特に注意して操作し


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K 0123

:2006

なければならない。また,流路系及び注入口ゴム栓(セプタム)からの汚染並びにカラム接続

部のわずかな漏れによる感度の低下にも注意しなければならない。

a)  10.1

によって試料に応じた適切な前処理を行った後,溶液試料では最終液量を調節し,密栓のできる

容器に保存する。

b)

検量線作成と同一条件で,一定量を装置に導入する。

c)

選択イオン検出法によって得られた分析種(内標準法の場合には,分析種及び内標準物質)のクロマ

トグラム又は全イオン検出法によって得られた分析種(内標準法の場合には,分析種及び内標準物質)

のマスクロマトグラムについて,ピーク面積又はピーク高さ(内標準法の場合には,ピーク面積の比

又はピーク高さの比)を求め,検量線又はその回帰式から定量値を求める  (

21

)。標準添加法の場合は,

10.5.2 c) 

による。

注(

21

)  必要に応じて,同様に操作して得られた空試験値を差し引く。

d)

必要に応じて,同一の測定試料について 2 回以上又は別に処理した測定試料について測定を繰り返し,

平均値を算出する。

11.

データの質の管理  データの質の管理のために,GC 部では保持時間の確認,ピーク形状の確認,装

置に起因する汚染及び分解物発生の確認などが必要であり,MS 部では既知濃度の標準試料を測定しスペ

クトルの質の確認,検出限界の確認,装置に起因する汚染及び分解物発生の確認などについて定期的な装

置性能の点検が必要である。

評価結果は,測定記録及びクロマトグラムとともに文書にして保管する。この項の内容は,個別分析方

法の SOP に書き込むことが適切であると考えられる内容を網羅しているので,適切なものを選別して規定

する。

a)

データの質の管理のための測定  質量分析計は測定ごとに感度と質量スペクトルとが変化するおそれ

があるので,定量操作を行う場合は,測定試料に内標準物質を添加し,測定ごとに感度変化の確認と

スペクトルの変化とを確認するとよい。比較的高濃度で,かつ,質量スペクトルが安定して得られる

場合は,毎日の測定において測定開始時及び終了時に感度及びスペクトル確認用標準物質を測定する

ことが必要である。

ガスクロマトグラフの部分では,既知濃度の標準物質又は検量線用標準物質を用いて平均保持値,

理論段数,分離度などを求め,安定性を確認する。測定対象物質の一部をこの目的に用いることがで

きる。

b)

検出下限の求め方(JIS K 0114 : 2000 を参照。)  検出下限は,次の方法によって求める。

1)

シグナル対ノイズ比に基づく方法  既知の低濃度の分析対象物を含む試料の一定量をガスクロマト

グラフ質量分析計に導入し,SN 比が 2 又は 3 となる分析種の量を検出下限とする。

図 20 に,SN

比が 2 のピーク例を示す。


24

K 0123

:2006

 20  SN 比が のピーク例

JIS K 0114

  図 11 を転載)

2)

定量値の標準偏差及び検量線又は関係線の傾きに基づく方法  検出下限 は,次の式から求めるこ

とができる。

検出下限 D=3.3σ/a

ここに,  σ:  定量値の標準偏差 

a

:  検量線又は関係線の傾き

相対感度法では,上で得られた検出下限値を,更に相対感度 で除する,又は相対応答係数を乗

じる。検出下限付近の濃度の分析対象成分を含む試料を用いて,検量線又は関係線を作成する。得

られた検量線又は関係線から傾き を求める。回帰直線の残差の標準偏差又は回帰直線から推定し

た濃度ゼロにおけるシグナルの標準偏差を標準偏差σとして利用できる。

c)

空試験値の測定(JIS K 0114 を参照。)  ガスクロマトグラフ質量分析計では,昇温操作を含む高感度

分析時には,特に試料気化室,カラムの汚れ,注入口ゴム栓(セプタム)からの溶出成分に起因する

ピーク(ゴーストピーク)

,インターフェース部,イオン源及び質量分析計内部の汚染などに起因する

バックグラウンドノイズの出現によって正確なデータが得られない場合がある。このため同一条件で

試料を導入せずに空昇温を行い,空試験値を測定し,ゴーストピークの有無とともに,ベースライン

ノイズを確認する。ゴーストピークがでる場合は,注入口インサートの交換,セプタムのエージング

(コンディショニング)

,カラムのエージング(コンディショニング)などの適切な処置を行う。バッ

クグラウンドノイズが大きい場合は,イオン源の洗浄,ロータリーポンプのオイル交換,インターフ

ェース部の洗浄又はこの部分に挿入されているカラムを切除して取り付け直すなどの適切な処置を行

う。

d)

定期的な装置性能の点検(JIS K 0114 を参照。)  装置の性能点検のため,定期的に濃度既知の標準物

質又は検量作成用試料を用意し,測定開始時に設定した所定の感度,所定の保持時間,所定のマスス

ペクトルが得られることを確認する。

測定ごとに内標準物質を添加している場合は,これを用いてもよいが,測定対象成分の範囲が広い

場合には複数の内標準物質を用いることが望ましい。

装置性能の点検記録は,操作条件とともに文書にして保管する。

12.

分析結果に記載すべき事項  分析結果には,次のうち必要な項目について記述する  (

22

)。

注(

22

)  分析結果の単位は,JIS Z 8202-8 及び JIS Z 8203 の規定に従って表示する。

a)

一般的な事項

1)

分析年月日


25

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:2006

2)

分析者名

3)

分析装置の製造会社名及び形式名

4)

分析種及び対象成分

5)

試料採取場所及び採集方法

6)

定性及び定量結果

b)

ガスクロマトグラフの操作条件

1)

キャリヤーガスの種類及び流量又は圧力

2)

カラムの種類

2.1)

キャピラリーカラムの場合

−  固定相液体名及び固定相液体の膜厚。

−  カラム用キャピラリーの材質,内径及び長さ

−  試料の量及び試料導入方法

2.2)

充てんカラムの場合

−  カラム充てん剤の種類及び粒径範囲(分配形充てん剤の場合は,担体名,処理方法,固定相

液体名及び保持量)

−  カラム用管の材質,内径及び長さ

−  試料の量及び試料導入方法

3)

試料気化室温度

4)

カラム槽温度(昇温法を用いる場合は,初期温度,昇温速度及び最終温度)

c)

質量分析計操作条件

1)

イオン化法の種類及び正・負イオンの別

2)

試薬ガスの種類及び流量又は圧力(化学イオン化の場合)

3)

データの種類(質量スペクトル,全イオンクロマトグラム,選択イオンクロマトグラム,マスクロ

マトグラム,などの別)

4)

インターフェース(GC/MS 接続部)の温度

5)

校正用標準物質の種類及び使用条件

d)

定量法

1)

ピーク面積又は高さの測定方法

2)

定量方法の種別及び測定回数

3)

検出の方式及び選択イオン

4)

被検成分及び内標準物質名

13.

個別規格に記述すべき事項  ガスクロマトグラフィー/質量分析法 (GC/MS) を用いる個別規格では,

少なくとも,次の事項を記述しなければならない。

a)

適用範囲

b)

試料の調製方法

c)

検量線及び関係線作成用試料の調製方法

d)

測定条件

e)

結果の整理及び表示方法

f)

データの質の管理


26

K 0123

:2006

関連規格  JIS K 0088  排ガス中のベンゼン分析方法

JIS K 0125

  用水・排水中の揮発性有機化合物試験方法

JIS K 0128

  用水・排水中の農薬試験方法

JIS K 0136

  高速液体クロマトグラフィー質量分析通則

JIS K 0311

  排ガス中のダイオキシン類の測定方法

JIS K 0312

  工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定方法

JIS K 0450-10-10

  工業用水・工場排水中のビスフェノール A 試験方法

JIS K 0450-20-10

  工業用水・工場排水中のアルキルフェノール類試験方法

JIS K 0450-30-10

  工業用水・工場排水中のフタル酸エステル類試験方法

JIS K 0450-40-10

  用水・排水中のアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)試験方法

JIS K 0450-50-10

  用水・排水中のベンゾフェノン試験方法

JIS S 3200-7

  水道用器具−浸出性能試験方法