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K 0119:2008

(1) 

目  次

ページ

1  適用範囲

1

2  引用規格

1

3  用語及び定義 

1

4  概要

3

5  装置

3

5.1  装置の構成 

3

5.2  線発生部 

7

5.3  試料室

8

5.4  分光・検出・計数部

8

5.5  装置制御・データ処理部 

9

5.6  附属装置 

10

6  試料及びその調製方法 

10

6.1  定性分析及びスクリーニング用試料 

10

6.2  定量分析用試料の調製 

10

6.3  検量線用試料の調製

11

6.4  装置校正用試料

11

7  測定操作

12

8  定性分析

13

9  スクリーニング 

14

10  定量分析 

14

10.1  定量方法の種類

14

10.2  定量値の精度

15

10.3  定量値の精確さ

15

10.4  半定量分析 

15

10.5  検出下限の求め方

15

11  膜厚測定

15

12  元素マッピング

16

13  測定結果の整理

16

14  データの質の管理

17

15  装置の点検 

18

16  装置の設置条件

19

17  安全管理 

19

18  個別規格で記載すべき事項 

19


 
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(2) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本分析

機器工業会(JAIMA)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべ

きとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。

これによって,JIS K 0119:1997 は改正され,この規格に置き換えられた。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は

もたない。


 

   

日本工業規格

JIS

 K

0119

:2008

蛍光 X 線分析通則

General rules for X-ray fluorescence analysis

適用範囲 

この規格は,蛍光 X 線分析装置を用いて試料から発生する蛍光 X 線を測定し,試料中に含まれる元素の

定性分析・定量分析を行う場合の一般的事項について規定する。適用範囲には,膜厚測定及びマッピング

分析を含む。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS K 0211  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0212  分析化学用語(光学部門)

JIS K 0215  分析化学用語(分析機器部門)

JIS Q 0030  標準物質に関連して用いられる用語及び定義

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0211JIS K 0212JIS K 0215 及び JIS Q 0030 によるほ

か,次による。

なお,括弧内の対応英語は参考のために示す。

3.1 

蛍光   (fluorescent X-ray) 

X 線,γ 線などを物質に照射することによって,その物質を構成する原子の内殻の電子が励起されて生

じた空孔に,外殻の電子が遷移するときに放出される X 線。

物質を構成する元素に固有のエネルギーをもつ(JIS K0212  参照)

3.2 

一次   (primary X-rays) 

蛍光 X 線を発生させるために試料に照射する X 線。

3.3   

波長分散方式 (wavelength dispersive method)

試料から発生する X 線を分光結晶,人工多層膜などの波長分散分光素子を用いて分光する方式(JIS K 

0212 及び JIS K 0215  参照)。



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3.4 

エネルギー分散方式 (energy dispersive method)   

X 線エネルギーに比例した電気信号を発生する検出器を使用して,分光(エネルギー選別)する方式(JIS 

K 0212 及び JIS K 0215  参照)。 

3.5  

全反射現象 (total reflection)

平滑な表面に X 線を入射したとき,視射角が一定の値(臨界角)以下になると,入射した X 線がほとん

どすべて反射する現象。

3.6  

全反射方式 (total reflection method)

全反射現象を利用して表面を分析する方式。

3.7  

元素マッピング (elemental mapping) 

試料の元素分布を画像として得る分析方法。

3.8 

二次ターゲット方式 (secondary target method)

分析線を効果的に励起するため,管球などからの X 線を適切なターゲットに照射して,そこから発生す

る蛍光 X 線を励起に使用する方法(JIS K 0215  参照)

3.9 

一次フィルター (primary beam filter)

一次 X 線のスペクトル分布を変えるために,一次 X 線源と試料との間に入れるフィルター。

3.10 

二次フィルター (secondary beam filter)

分析目的の元素以外に起因する X 線を効果的に減衰させるために,試料と検出器との間に入れるフィル

ター。

3.11 

エネルギー分解能 (energy resolution)

単色X線に対するエネルギー識別能力。得られたピークの半値幅[full width at half maximum (FWHM)]

(単位の次元はエネルギー)又は半値幅のピークエネルギーに対する比  (%)で表す。

3.12 

数え落とし (counting loss)

高計数率で X 線を測定する場合,不感時間(検出器が一つの光子を検出した後,次の光子を認識できる

ようになるまでの時間)中に次の X 線光子が入射するため,入射 X 線強度と測定された計数との比例関係

が崩れる現象(JIS K 0215  参照)

3.13 

スクリーニング (screening)

試料中の特定の元素の濃度又は量について,あらかじめ定められた基準値との大小関係だけに着目して

分析し,試料を選別する方法。


3

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3.14 

ファンダメンタルパラメーター法,FP 法 (fundamental parameter method)

一次 X 線のスペクトル分布,装置の幾何学的配置,物質の X 線吸収係数などの定数を用い,測定によっ

て得られた蛍光 X 線強度から理論的に分析結果を得る方法。

3.15 

検量線用試料 (specimen for calibration curve)

検量線を作成するための試料。目的元素の濃度が既知で,組成が測定試料と類似した一連の試料群。 

3.16 

装置校正用試料 (specimen for calibration of instrument) 

装置から発生する X 線強度が許容範囲内にあることを確かめ,装置の正常化を図るための試料。

3.17 

バックグラウンド (background)

検出器で検出される信号のうち,試料から発生する分析線以外の成分。

3.18 

エスケープピーク (escape peak)

入射 X 線のエネルギーより検出器に固有なエネルギー分だけ低く現れるピーク。例えば,シリコン半導

体検出器では 1.74 keV,アルゴン比例計数管では 2.96 keV 低エネルギー側に現れる。

3.19 

サムピーク (sum peak)

単一光子エネルギーの整数倍のエネルギー位置に現れるピーク。2 個以上の光子が極めて短時間に検出

器に入射するとき,パルス波高が各光子のエネルギーの和となって観察される。 

3.20 

統計変動 (statistical error of counting)

放射線計数における計数値の変動。この変動は,ポアソン分布に従い,計数値の平方根で表す(JIS K 0215

参照)

 

3.21 

膜厚測定  (thickness determination)

蛍光 X 線強度と膜の質量厚さ(単位面積当たりの質量)との関係式から,膜の厚さを求める分析方法。

3.22 

膜厚測定の限界厚さ  (maximum limit of thickness determination)

膜厚測定において,測定可能な試料の最大膜厚。

概要 

蛍光 X 線分析法は,一次 X 線を試料に照射したときに放出される元素に固有な蛍光 X 線を測定して,

試料の構成元素を分析する様々な方法の総称である。蛍光 X 線の波長又はエネルギーを測定することによ

って試料に含まれる元素の組成に関する定性分析,また,蛍光 X 線の強度を測定することによって定量分

析及び半定量分析ができる。蛍光 X 線の波長を分光結晶などを用いて測定する波長分散方式と,蛍光 X 線

のエネルギーを高いエネルギー分解能をもつ検出器を用いて測定するエネルギー分散方式とに大別される。

後者の中には,微量分析又は表面分析を主な目的とする全反射蛍光 X 線分析法専用の装置もある。また,

微小部の分析,二次元又は三次元元素マッピングも行われる。バッテリー駆動の装置,小形の X 線源など



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を搭載し,容易に持ち運びができるように小形化及び軽量化を図った可搬形装置も使用され,高性能化と

ともに応用分野が広がっている。

装置 

5.1 

装置の構成 

蛍光 X 線分析装置の基本構成の例を,

図 に示す。

X 線発生部

試料室

分光・検出・計数部

装置制御部

データ処理部

図 1−蛍光 線分析装置の基本構成(例)

装置の各部の構成は,

用いる分光方式と一次 X 線の試料への照射方式とによって異なる。

分光方式には,

分光器を用いる波長分散方式と,X 線のエネルギーに対し分解能の高い検出器を用いるエネルギー分散方

式とがある。エネルギー分散方式には,通常の照射方式と,一次 X 線を試料に臨界角以下で照射して X 線

の試料表面での全反射現象を利用する全反射方式とがある。通常の照射方式の装置は,試料中の元素の分

析をすることを目的とし,全反射方式の装置は,試料表面の元素分析を行う装置であり,試料表面の汚染

物質の測定などに用いる。装置としては,大形及び卓上形の装置が一般的であるが,可搬形装置もある。

可搬形装置には,携帯形と据置形とがある。また,試料上の指定した位置の分析及び試料の元素マッピン

グ像を得るための装置もある。これらの方法別に,各部の構成及び機能を示す。

a)  波長分散方式  X 線発生部は,一次 X 線を発生させるための X 線管,これに電力を供給する高圧電源

及びその調節などを行うための制御部からなる。試料室では,一次 X 線を試料に照射して蛍光 X 線を

発生させる。分光・検出部は,蛍光 X 線から分析線を選別するための分光器,分析線の X 線強度を強

度に比例した電気信号(パルス)に変換するための検出器などからなる。分光器には,ソーラスリッ

トと平面分光素子とを組み合わせた平行法[

図 の a)]によるもの及びスリットとわん曲分光素子と

を組み合わせた集中法[

図 の b)]によるものがある。検出器には,比例計数管,シンチレーション

計数器などを用いる。分光器及び検出器の配置方式には,一つの分光器を用い分析元素ごとに一つの

検出器を手動又は自動で設定する走査方式と,分析元素ごとにそれぞれの検出器を設定する固定方式

とがある。後者の場合,一つの分光器をもつものと複数の分光器をもつものとがある。計数部は検出

器からのパルスを増幅するための比例増幅器,特定の波高範囲のパルスを選別するための波高分析器

(シングルチャンネル形)

,パルスを計数するためのスケーラーなどから成る。装置制御部は,X 線発

生部及び分光・検出・計数部に制御信号を出力する。データ処理部は,補正などの各種の計算を行う

ためのコンピュータなどからなる。

b)  エネルギー分散方式  X 線発生部は,X 線管のほかにラジオアイソトープ線源を用いる。試料室は,

目的によって大気,ガス置換,真空にすることができる。分光・検出部は,検出器,その前置増幅器

などからなる(

図 参照)。検出器には,エネルギー分解能の高い半導体検出器,比例計数管などを用

いる。計数部は,比例増幅器,波高分析器,スケーラー,マルチチャンネル波高分析器などからなる。

マルチチャンネル波高分析器の場合には,波高範囲を区分してチャンネル別に同時にパルスを計数し,

その値をメモリーに記憶させることができる。シングルチャンネル波高分析器の場合も,波高値を走

査して波高分布を測定することができる。データ処理部は,計数部の一部と共用するものが多い。可

搬形蛍光 X 線分析装置は,装置が小形化されており,試料室を設けないものもある。


5

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全反射方式においては,X 線が物質表面で全反射するようなごく低角度で X 線を入射させなければ

ならない。そのため,X 線入射角度を精密に制御することができる機構と,平たん度が高い試料台と

が必要である。全反射方式蛍光 X 線分析装置の構成例を,

図 に示す。この例では,X 線管から発生

した X 線をモノクロメーターで単色化して試料に照射している。

元素マッピング機能をもつ装置は,試料台に試料台制御装置を装備し,試料上の測定位置を制御可能な

構成になっていて,波長分散方式及びエネルギー分散方式のいずれの場合もある。試料台周辺の具体的な

装置構成例を,

図 に示す。元素マッピングを行うため,測定径を小さくするための集光素子又はコリメ

ーターを装備している。

図 では,試料に照射する X 線を絞っている例を示したが,検出側から試料上の

検出する径を小さくする方法もある。

図 2−波長分散方式蛍光 線分析装置の構成(例)



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図 3−エネルギー分散方式蛍光 線分析装置の構成(例) 


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図 4−全反射方式蛍光X線分析装置の構成(例) 

図 5−マッピング分析装置の構成(例) 

5.2 X 線発生部 

X 線管,高圧電源及び制御部で構成する。必要に応じて単色化のための機構を附属させる。試料中の分

析元素から蛍光 X 線を発生させるための一次 X 線源であり,一般的には X 線管を使用する。

注記  ラジオアイソトープ線源又はシンクロトロン放射光を使用する場合もある。

5.2.1 X 線管

分析元素の蛍光 X 線を発生させるために十分なエネルギーをもつ一次 X 線を発生し,かつ,分析元素に

ついて,

測定に適する強度の蛍光 X 線が得られる容量をもつもの。

封入管方式と回転対陰極方式とがある。

a)  封入管方式  ターゲット及びフィラメントが高真空の封入管に密封されている。 
b)  回転対陰極方式  ターゲットが高速回転し,冷却されたターゲット面に電子ビームを当てることによ

って強い X 線が得られるようになっていて,真空ポンプで排気しながら使う。

5.2.2 

単色化機構 

分析元素を効果的に励起し,同時にバックグラウンドを小さくするために,X 線管からの X 線を単色化

する。二次ターゲット方式,一次フィルター方式及びモノクロメーター方式がある。



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5.2.3 

高圧電源 

X 線管に電圧及び電流を供給する。

5.2.4 

制御部 

X 線管に印加する電圧及び電流の制御を行う。構成は,次のとおりである。

a)  管電圧及び管電流の調節器 
b)  管電圧及び管電流の安定機構 
c)  安全機構 
5.3 

試料室 

試料の照射面と X 線管及び検出器との距離,照射面積などの繰返し性が高くなるような構造とする。試

料回転機構をもつものもある。元素マッピングを行う場合は,測定位置に試料を移動させる試料位置制御

装置を設ける。元素マッピングには,二次元分析,又は三次元分析がある。また,これらの装置では,CCD

カメラなどによって試料の観察及び測定位置の確認をする試料観察機構をもつ場合がある。オンライン用

及び可搬形の装置には,試料室のないものがある。

5.4 

分光・検出・計数部 

試料から放射される蛍光 X 線スペクトルの中から必要な蛍光 X 線を取り出し,その強度に比例したパル

スに変換し,分析に必要なパルスを分離及び計数する部分である。

5.4.1 

波長分散方式 

分光器,検出器,比例増幅器,波高分析器,スケーラーなどで構成する。

a)  視野制限装置  試料上の測定領域を制限するものでコリメーター又は集光素子を用いる。それぞれ一

次 X 線で制限する方式と試料から発生した X 線で制限する方式とがある。

1)  コリメーター  アパーチャーなどを用いて一次 X 線の照射領域又は検出領域を制限する。 
2)  集光素子  X 線を集光させて試料上の測定領域を制限する。モノキャピラリー方式,ポリキャピラ

リー方式,わん曲分光素子方式などがある。

b)  分光器  試料から放射される蛍光 X 線から分析に必要な蛍光 X 線を取り出すもので,ソーラスリット,

スリット,分光素子及び集光素子とからなる。必要に応じて恒温にできる機構をもたせる。分光器は,

長期にわたり高い繰返し性が保持できる機構とする。

1)  ソーラスリット  平面結晶を分光素子とする場合には,ソーラスリットを用いて平行線束とする。 
2)  スリット  発散 X 線を分光するために,わん曲分光素子を用いるときには,スリットを用いて集光

する。

3)  分光素子  X 線を分光するための素子で,単結晶,人工多層膜,回折格子,ミラーなどがある。材

質は,温度変化及び時間経過に対し安定なものとする。

c)  検出器  蛍光 X 線強度を,その強度に比例したパルスに変換するためのもので,比例計数管(ガスフ

ロー形及び封入形)

,シンチレーション計数管などを用いる。

d)  検出器用高圧電源  検出器に印加する電圧を安定に供給する。 
e)  線通路  必要に応じて雰囲気を真空,ヘリウム又は窒素に置換する。大気で測定する場合もある。 
f)  比例増幅器  検出器からのパルスを一定の割合で増幅する。 
g)  波高分析器  比例増幅器の出力信号の波高の差を識別し,エネルギーを選別する。 
h)  スケーラー  パルスを計数する装置で,十分な計数容量をもつ。 
5.4.2 

エネルギー分散方式 

検出器,比例増幅器,マルチチャンネル波高分析器などで構成する。


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a)  視野制限装置  5.4.1 a)と同じ。 
b)  検出器  エネルギー分散方式に用いる検出器には,半導体検出器,比例計数管などがある。これらの

検出器は,X 線による電離現象を利用した検出器であり,多元素の同時分析が可能である。半導体検

出器は,比例計数管に比べ分解能が高い。半導体検出器を使用する場合は,必要に応じて液化窒素,

ペルチェ素子,冷凍機などで冷却する。

c)  検出器用高圧電源  5.4.1 d)と同じ。 
d)  二次フィルター  試料と検出器との間に挿入する。分析目的以外の元素からの蛍光 X 線を減衰させ,

サムピークなどの影響を軽減する。

e)  線通路  5.4.1 e)と同じ。 
f)  比例増幅器  5.4.1 f)と同じ。 
g)  マルチチャンネル波高分析器

注記  比例計数管の場合は,シングルチャンネル波高分析器を用いる場合もある。

5.5 

装置制御・データ処理部 

コンピュータを備えており,その内蔵ソフトウェアによって,X 線発生部及び分光・検出・計数部に対

して測定のための制御信号を出したり,計数部からの X 線強度及びそれに付随するデータを入力したりし

て,定性分析及び定量分析のための各種のデータ処理を行う部分である。

コンピュータにはディスプレイなどの表示装置,プリンターなどの記録装置,及びハードディスクなど

の記憶装置を備えているものがある。

a)  装置制御機能  測定条件に合わせて装置の制御を行うための信号を出力する。コンピュータから,直

接,その信号で制御するものと,その信号を別に装置に内蔵している制御コンピュータに入力して制

御するものとがある。

b)  データ処理機能

1)  定性分析 
1.1)  
測定結果の表示  波長 (2θ)  又はエネルギーごとの X 線強度を,X 線スペクトルとして表示装置

又は記録装置に出力する。

1.2)  データ処理  スムージング,ピーク検出,スペクトル分離,自動同定解析などの定性分析のため

の処理を行う。

1.3)  分析結果の表示  定性分析の結果を,表示装置及び記録装置に出力する。 
2)  定量分析 
2.1)  
測定結果の表示  各スペクトル線及び散乱線の X 線強度を,表示装置及び記録装置に出力する。 
2.2)  データ処理  バックグラウンド除去,スペクトル分離,重複線の補正,内標準法,検量線法,フ

ァンダメンタルパラメーター法(FP 法)などの定量分析のための処理を行う。

2.3)  分析結果の表示  定量分析の結果を,表示装置及び記録装置に出力する。 
3)  元素マッピング 
3.1)  
測定結果の表示  X 線強度の二次元元素分布像を,表示装置及び記録装置に出力する。 
3.2)  データ処理  元素分布像のコントラスト,ブライトネス調節,画像間演算,画像重ね合わせなど

の各種画像処理を行う。

3.3)  分析結果の表示  元素マッピングの結果を,表示装置及び記録装置に出力する。 
4)  付加機能 
4.1)  
分析結果の記憶  測定結果及び分析結果を,記憶装置に保存し,必要に応じて再出力する。


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4.2)  分析結果の作表  分析結果をまとめて作表する。 
4.3)  分析結果の伝送  測定結果及び分析結果を,必要に応じて外部へ伝送する。

5.6 

附属装置 

附属装置には,次のものがあり,必要に応じて使用する。

5.6.1 

試料調製装置 

a)  固体試料 

−  切断機

−  研磨機

b)  粉体試料 

−  破砕機及び粉砕機

−  混合機

−  加圧成形機

−  ガラスビード作製機

−  乾燥機

5.6.2 

自動試料供給装置 

5.6.3 

電源安定装置 

試料及びその調製方法 

6.1 

定性分析及びスクリーニング用試料 

いずれの形態の試料も 6.2 に準じて調製するが,十分な X 線強度が得られる場合には,試料の形状,平

たん性などを厳密に規定する必要はない。

6.2 

定量分析用試料の調製   

試料は,照射面の形状が平滑で平たんであり,均質で,所定の厚さをもち,測定面が一次 X 線照射面よ

り大きくなるように調製する。個別規格に規定されている場合は,それに従う。

a)  粉体 

1)  粒状,粉状又は不均一な組成の塊状の試料は,破砕機,粉砕機などで所定の粒度まで粉砕する。必

要に応じて結合剤を加える。

2)  粉砕した試料は,測定に適した平たんな面が得られるように加圧成形し,平板状の試料とする。

3)  粉砕及び混合操作によっても必要とする均質性が得られない場合,又はマトリックス効果の軽減を

図る場合には,四ほう酸リチウムなどの溶融剤で試料を融解し,均質化したガラスビード試料とす

るか,又はガラスビードを再び粉砕して加圧成形する。融解時の分析元素の揮散による損失に注意

する。

4)  大気中の浮遊粒子状物質などの気体中に分散している物質は,フィルターに吸引捕集し,平たんな

試料とする。

b)  固体 

1)  鋳込み試料,塊状などの不定形試料は,試料容器に装てんできるように切断機,打ち抜き機などで

所定の形状に成形する。

2)  旋盤,研磨機などで照射面を平滑で平たんな面に仕上げる。蛍光 X 線強度に繰返し性があれば,一

定の粗さの面に仕上げてもよい。

3)  固体表面を分析する場合は,表面が測定時及び保存時に汚染されず,変質しない環境に置かなけれ


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ばならない。

4)  フィルムなどの薄膜試料は,切断機,打ち抜き機などで所定の形状に成形する。

c)  液体 

1)  所定量の試料を,液体試料容器に入れる。

2)  測定時に試料の揮散,気泡の発生,沈殿生成などが起こらないようにする。

3)  目的元素の濃度が低く,液体試料を直接分析することが困難な場合には,プラスチックフィルム又

はろ紙上に試料を滴下し乾燥する点滴法,沈殿させてメンブレンフィルターなどでろ過,捕集する

沈殿法,イオン交換樹脂に吸着し濃縮するイオン交換樹脂法などを用いる。

d)  試料の汚染  試料は種々の原因で汚染し,分析誤差を招くので注意が必要である。蛍光 X 線分析法で

は,特に表面の汚染は大きな誤差を生じる。試料調製時に注意が必要な汚染は,次のとおりである。

1)  粉砕機,研磨機からの汚染

2)  前に粉砕,研磨した試料からの汚染

3)  試料の融解時の容器からの汚染

4)  試薬からの汚染

5)  試料表面への手などの接触による汚染

6)  試料室の汚れによる汚染

7)  試料容器の汚れからの汚染

8)  裏打ち材と試料との接触による汚染

6.3 

検量線用試料の調製 

6.1 及び 6.2 と同様の調製を行う。ただし,次の点に注意する。

a)  検量線用試料には,目的元素の濃度が既知の認証標準物質,標準物質,試薬及びこれらの混合物で,

試料の組成と類似したものを用い,それらの選定に当たり留意すべき点は,次のとおりである。

1)  組成の均質性及び安定性が保証されている。

2)  固体の場合は,X 線の照射面が平滑かつ平たんであり,十分な広さと厚さとをもっている。

3)  液体の場合は,6.2 c) 1)  及び 2)  と同様の注意を払う。

b)  測定試料が液状又は粉状である場合には,高純度物質を測定試料と類似した組成になるように調合及

び混合し,測定試料と同様の調製を行い,検量線用試料とすることができる。ただし,十分に均質で

なければならない。

c)  標準添加法では,試料に一定量の高純度物質を添加し,均質となるように十分に混合し,測定試料と

同様な調製を行う。

6.4 

装置校正用試料 

装置の長・短期変動を校正するために用いる装置校正用試料は,十分な X 線強度が得られ,かつ,経時

変化のない物質を 1 点以上選ぶ。

a)  装置校正用試料で長期的に使用するものは,X 線の照射に対して耐性のあるものを用いるか,又は耐

性をもつように調製する。

b)  表面は,十分に平滑で汚染がないようにする。

c)  保存する場合は,汚染及び変質を防ぐ。

測定操作 

分析の目的に適した測定条件を設定し,装置が正常であることを確認した後,適切な調製を行った試料


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を測定位置に置いて,試料から発生する蛍光 X 線を測定する。

a)  測定準備  装置を起動し,一定の基準に従って装置の点検を行う。異常のないことを確認してから,

暖機運転を行って装置の安定化を図る。適切な測定条件を設定し,標準物質などを用いて予備測定を

行う。測定値及び繰返し性が所定の範囲内にあることを確かめる。

1)  波長分散方式 
1.1)  
暖機運転  所定の手順に従って装置の暖機運転を行い,装置の安定化を図る。 
1.2)  測定条件の設定  試料の種類,分析元素及びその濃度,必要とする測定精度,測定部位の大小,

装置の種類などを考慮して測定条件を設定する。個別規格に定められている場合にはそれに従う。

1.2.1)  分析線  バックグラウンドが低くピーク強度が大きいことと,他の元素の蛍光 X 線,散乱線及

び回折線に起因するピークとの重なりが少ないこととを基準として選定する。

1.2.2)  一次 線の発生条件  X 線管は,分析目的に適したものを選ぶ。管電圧は,目的元素の分析線

を十分に励起できる電圧とする。電流は,数え落としが少ない範囲で大きくする。

注記 1  散乱線が測定の妨害となる場合には,一次 X 線フィルターを使用する。

1.2.3)  測定面積  試料の大きさ又は分析部位の大きさに合わせて,試料マスク又は視野制限装置を用い

て測定面積を設定する。

1.2.4)  分光器及び検出器  分析線に応じて,分光器及び検出器を選定する。 
1.2.5)  波高分析器  分析信号を取り出すために,波高値を設定する。 
1.2.6) X 線通路  長波長の蛍光 X 線は,大気による吸収を受けやすく X 線強度が減衰するため,必要

に応じて雰囲気を真空,ヘリウム又は窒素に置換する。

1.2.7)  測定時間  必要とする測定精度から,X 線を計数する時間を設定する。 
1.3)  装置校正  装置校正用試料などを測定して,装置の X 線強度のドリフトを補正し,また,測定値

及び測定の繰返し性が,所定の範囲内であることを確認する。定期的に,2θ値及び波高値の校正

を行う。

2)  エネルギー分散方式 
2.1)  
暖機運転  所定の手順に従って装置の暖機運転を行い,装置の安定化を図る。 
2.2)  測定条件の設定  試料の種類,試料の大きさ,分析元素及びその濃度並びに必要とする測定精度

を考慮して測定条件を設定する。個別規格で定められている場合には,それに従う。

2.2.1)  一次 線の発生条件  分析目的に適した線源を選ぶ。管電圧は,目的元素の分析線を十分に励

起できる電圧とする。管電流は,数え落としが少ない範囲で大きくする。ラジオアイソトープで

は,目的元素の分析線を十分に励起できるものを選ぶ。

注記 2  散乱線が測定の妨害になる場合は,一次 X 線フィルターを使用して低減させることが

できる。二次ターゲット方式又はモノクロメーター方式を用いる場合は,目的元素の

検出に適したものを選択する。

2.2.2)  照射面積  試料面積に応じて適切な照射径を選択する。照射径は,コリメーターを変えることで

変更する。

2.2.3)  マルチチャンネル波高分析器  エネルギー分解能及び計数率に応じて時定数を設定する。

注記 3  シングルチャンネル波高分析器を用いる場合は,分析信号を取り出すための波高値を

設定する。

2.2.4)  二次フィルター  サムピークが分析線に重なる場合は,二次フィルターを使用する。二次フィル

ターは,試料と検出器との間に入れる。


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2.2.5)  線通路  長波長の蛍光 X 線は,大気による吸収を受けやすく X 線強度が減衰するため,必要

に応じて雰囲気を真空,ヘリウム又は窒素に置換する。

2.2.6)  測定時間  必要とする測定精度から,X 線を計数する時間を設定する。 
2.3)  装置校正  装置校正用試料などを測定し,測定値及び測定の繰返し性が所定の範囲内にあること

を確認する。定期的にエネルギー値及び分解能の校正を行う。また,装置校正用試料などの測定

によって得られた X 線スペクトルが正常であることを確認する。全反射方式の場合は,使用する

一次 X 線及び測定試料に応じて,全反射臨界角よりも低い角度で一次 X 線の入射角を選ぶ。

b)  試料の測定位置指定  元素マッピングを行うときは,試料上の測定位置指定を行う。微小部測定を行

うときは,試料上の目的位置を 1 点又は複数点指定する。二次元分析を行うときは,試料上の領域を,

例えば,等間隔で測定位置を指定する。CCD カメラなどの試料観察機構をもつ装置では,試料画像を

観察しながら測定位置を指定する。

c)  操作 

1)  必要に応じて試料調製を行う。

2)  試料を,個々の装置で定められている方法で,測定位置に置く。

3)  必要に応じて試料室の雰囲気を真空,ヘリウム又は窒素に置換する。

4)  一定時間 X 線を計測し,蛍光 X 線スペクトル又は特定エネルギー値での蛍光 X 線強度を測定する。

5)  定性分析を行う。

6)  定量分析を行う。

7)  解析,結果を確認する。

8)  分析結果を記録する。

定性分析 

定性分析は,蛍光 X 線ピーク位置の回折角(2θ)又はエネルギーで判定する。ただし,分光方式及び検出

器の種類によってスペクトル分解能が異なるため,分解能を考慮して定性分析を実施する。

a)  定性分析に必要な回折角(2θ)の範囲又はエネルギーの範囲で蛍光 X 線スペクトルを測定し,記録する。

b)  K 系列 X 線で定性分析を行う場合には,K

α

線を検索し,

K

α

線と K

β

線との強度比を考慮して判定する。

c)  L 系列 X 線で定性分析を行う場合には,L

α1

線,L

β1

線,L

β2

線,L

γ1

線などのスペクトルとその強度比

とを考慮して判定する。

d)  軽元素の定性分析では,重元素の L 系列及び M 系列 X 線の存在に留意する。

e)  コンプトン散乱線,レイリー散乱線,回折線及び X 線管からの不純 X 線の存在に留意する。波長分散

方式では,短波長 X 線,高次線などの存在に,エネルギー分散方式では,エスケープピーク及びサム

ピークの存在にも留意する。また,大気雰囲気で測定する場合は,アルゴンスペクトルにも留意する。

注記  固有(特性,蛍光)X 線スペクトルの記号は,Sigbahn 方式及び IUPAC 方式がある。Sigbahn

方式では K

α

線,K

β

線のように,IUPAC 方式では KLⅡⅢ,KMⅡⅢのように表記される。

スクリーニング 

試料中の対象元素の濃度又は量が,ある定められた基準値に対して,

基準値以上か又は以下かを測定し,

試料を選別する方法である。一般的には,測定値に含まれる測定誤差を考慮し,基準値に誤差を加えた値

又は差し引いた値をそれぞれ管理基準値(A),管理基準値(B)として,管理基準値に対する測定値の大小に

よって選別する。測定誤差は,測定装置,試料の状態,測定方法などによって異なる。


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選別は,次の三つの場合に分かれる。

a)  測定値が管理基準値(A)より大きい場合,基準値以上とする。

b)  測定値が管理基準値(B)より小さい場合,基準値以下とする。

c)  測定値が管理基準値(A)と(B)との間にある場合,測定誤差の影響によって,基準値以上か以下かの判

断ができないため,選別不能とする。

10  定量分析 
10.1  
定量方法の種類 

蛍光 X 線分析法による定量分析は,相対分析であり,濃度又は量が既知の試料からの蛍光 X 線強度と測

定試料からの蛍光 X 線強度とを比較し,定量を行う。

蛍光 X 線分析法による定量方法には,検量線に基づく検量線法,内標準法,標準添加法及び検量線を作

成しないファンダメンタルパラメーター法(FP 法)がある。

a)  検量線法  検量線用試料を用いて,分析元素の濃度又は量と X 線強度との関係を求めて検量線を作成

する。測定試料の X 線強度を測定して,検量線から測定試料中の分析元素の濃度又は量を求める。検

量線用試料は,測定試料と組成が類似したものを用いる。この方法において共存元素の影響が無視で

きない場合には,数式によって計算,補正を行う。

b)  内標準法  添加及び混合が容易な試料では,内標準元素を加えて,X 線強度に対する試料量及び共存

元素の影響を補正する。一定量の内標準元素を含む濃度既知の試料を検量線用試料として,分析元素

の X 線強度と内標準元素の X 線強度との比を求めておき,その比と濃度との関係から検量線を作成す

る。測定試料にも検量線用試料と同じ内標準物質を同量加えて,X 線強度を測定し,同様に X 線強度

比を求めて検量線から濃度を求める。内標準元素の X 線強度に代えて散乱 X 線強度を使用することも

できる。

この方法において,共存元素の影響が無視できない場合には,数式によって計算,補正を行う。

c)  標準添加法  測定試料から等分量を 4 個以上採取し,1 個を除いた残りについて,分析対象元素をそ

れぞれ異なる量添加し,添加しないものも含めて各試料を一定量に調製して,各試料の分析元素の X

線強度を測定する。それぞれに加えた分析元素の量と X 線強度とをグラフにプロットし,両者の関係

線を求める。関係線を外挿して,バックグラウンド強度又は成分ゼロ量での強度における分析元素量

を求め,そのマイナス値を試料中の分析元素量とする。この方法は,低濃度の試料に適用され,濃度

と X 線強度との関係線が直線で,かつ,バックグラウンド強度又は成分ゼロ量での強度が既知の場合

にだけ適用される。

d)  ファンダメンタルパラメーター (FP) 法  試料の組成,厚さ,一次 X 線のスペクトル分布,質量吸収

係数などの数値から計算して得られた理論 X 線強度と,測定して得られた X 線強度とを対比して逐次

近似法によって測定試料の組成を求める。理論 X 線強度と測定 X 線強度との相関は,あらかじめ元素

ごとに組成が既知の試料 1 点以上で求めておく。この方法は,いったん分析元素ごとの相関を決定し

ておけば,広い濃度範囲にわたって適用できる。標準物質を使用せずに未知試料の定量分析を行うこ

とのできる数少ない技術である。

10.2  定量値の精度   

十分な定量値の精度を得るため,次の事項に留意する。

a)  X 線強度の統計変動

b)  バックグラウンド強度


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c)  装置の安定性

d)  計数値の数え落とし

e)  試料の分析面積の大小及び分析面の状態

10.3  定量値の精確さ   

精確な定量値を得るために,次の事項に留意する。

a)  一定時間ごとに検量線用試料の測定を行い,新たに測定された X 線強度を用いて検量線の校正を行う。

b)  共存元素の影響が無視できないほど大きい場合は,必要に応じて適切な共存元素除去のための前処理,

適切な装置条件の設定又は適切な分析結果の補正を行う。

c)  検量線は,その定量範囲を定め,定量範囲を超えた試料には,その検量線は適用しない。

d)  組成が類似した検量線用試料によって検量線を作成した場合は,試料組成の範囲を定めて適用する。

e)  試料は,試料面が平滑,かつ,平たんで,測定面積及び厚さが十分大きいか,一定になるように調製

する。

10.4  半定量分析 

10.3 に規定した事項の処置が不十分なために,精確さの低い定量値しか得られない分析又は精確さの高

い定量値を必要としない分析は,半定量分析と呼び,定量分析に含めてもよい。測定結果には,半定量分

析である旨を記載する。

10.5  検出下限の求め方 

検出下限は,ブランク試料強度又はバックグラウンド強度の標準偏差の 3 倍の強度に相当する濃度とす

る。ブランク試料は,組成が同じで目的成分を含まないものが望ましい。ブランク試料がない場合は,検

量線から濃度ゼロの位置の強度 (N)を求め,強度 (N)の平方根  ( N )の 3 倍を検出下限としてもよい。

検出下限は,測定時間の長さによって変わるため,検出下限の表示には,測定時間を明示する必要があ

る。

11  膜厚測定 

蛍光 X 線分析法による膜厚測定は,膜の質量厚さ(単位面積当たりの質量)と蛍光 X 線強度との関係を

検量線とする定量方法である。膜の組成が一定で,膜厚測定の限界厚さよりも薄い場合に,膜試料の膜厚

を測定することができる。ただし,蛍光 X 線分析法によって測定される膜厚は,形状膜厚(長さ)ではな

く質量膜厚である。蛍光 X 線分析法で求めた質量膜厚を,膜の密度で除せば,形状膜厚に変換できる。

a)  測定方法  測定には,次の方法がある。

1)  直接法  膜を構成する元素の蛍光 X 線強度を測定し,膜厚既知の検量線用試料で作成した膜厚と X

線強度との検量線から,膜厚を求める。

2)  吸収法  膜の下地素材から発生した蛍光 X 線強度の膜による減衰を測定し,膜厚既知の検量線用試

料で作成した膜厚と X 線強度との検量線から,膜厚を求める。直接法と吸収法とを組み合わせた方

法で膜厚を測定する場合がある。

3) FP 法  FP 法を用いて膜厚及び組成を同時に求める方法で,検量線法を適用するのが困難な,多層

膜及び多元系の膜厚測定で,有効である。ただし,各層に存在する元素の種類があらかじめ分かっ

ている必要がある。

b)  試料調製  薄膜試料の調製に当たり,留意すべき点は,次のとおりである。

1)  試料は,膜厚及び組成が均一となるように調製する。 

2)  表面処理材,フィルムなどの試料は,切断機,打ち抜き機などで所定の形状に成形する。


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3)  試料は,ジグなどを用いて容器に固定し,測定面に凹凸が起こらないようにする。

4)  照射時に試料が平たんとなるように,必要に応じて裏打ち材で補強しておく。

裏打ち材は,分析元素を含まず,バックグラウンドの少ないものを選ぶ。

12  元素マッピング 

一次 X 線の照射領域を微小な領域に制限するか,又は試料からの二次 X 線をコリメーターなどで視野制

限し,試料位置制御装置を用いて,試料を走査しながら各位置の蛍光 X 線情報を取り込むことによって,

元素分布を示す画像を得ることができる。元素マッピングは,次の事項に留意して実施する。

a)  元素分布画像の位置分解能は,一次 X 線照射領域の大きさ,元素分布画像の画素数及び走査範囲によ

って決まるため,これらの条件を考慮して測定を実施する。

b)  元素マッピング時の一画素当たりの測定時間は,通常の測定に比べて短くなるため,X 線強度の統計

変動を考慮に入れて十分な測定時間に設定する。

c)  元素マッピングに用いる蛍光 X 線は,できるだけ共存元素の重なりのないピークを選択する。

d)  試料の組成が大きく変わる場所では,散乱 X 線の強度変化がコントラストとして現れることがあるの

で注意する。

13  測定結果の整理 

測定結果には,次の事項のうち必要なものを記載する。

a)  測定年月日

b)  測定者

c)  装置の名称及び形式

d)  試料名

e)  分析元素及びスペクトルの種類

f)  スペクトルの波長又はエネルギー

g)  試料調製方法

1)  研磨剤及び研磨方法

2)  粉砕方法及び粒度

3)  乾燥方法及び乾燥時間

4)  成形圧力及び加圧時間

5)  結合剤の名称

6)  融解剤の種類及び融解条件

7)  分離法又は濃縮法

h)  測定方法及びその条件

1)  X 線管の種類

2)  X 線管ターゲットの種類

3)  X 線管窓材及び厚さ

4)  X 線管作動条件

5)  ラジオアイソトープ線源の種類及び線量

6)  一次フィルターの種類及び厚さ

7)  二次フィルターの種類及び厚さ


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8)  二次ターゲットの種類

9)  X 線通路の雰囲気

10)  試料室,試料セルの窓材及び厚さ

11)  マスクの種類及び径

12)  分析径

13)  分析部位

14)  試料回転の有無

15)  分光素子

16)  光学系の条件

17)  試料照射角,取り出し角及び視射角

18)  波高分析器の条件

19)  計数回路の種類

20)  検出器の種類

i) 

定量方法の種類

j)  検量線用試料の名称

k)  検量線作成結果

1)  検量線の式

2)  精確さ

3)  濃度範囲

4)  補正の有無

l)

定量結果

m)  個別規格のある場合には,その事項

n)  その他,必要な事項

14  データの質の管理 

データの質は,日常の装置管理,測定前の事前準備,試料の前処理などに大きく左右される。そこで,

データの質を管理するための測定を,定期的又は測定の前に実施する。検量線用試料及び装置校正用試料

は,均質で安定なことが前提である。

a)  繰返し性の確認及び検量線の校正  測定の前に検量線用試料又は装置校正用試料を測定し,測定値(強

度)とその繰返し性とを確認する。分析内容によっては,検量線を校正する。校正は,1 点の試料で

補正する場合,2 点で補正する場合など,要求される分析の精確さに合わせて行う。さらに,一日の

中でも一定時間ごと,又は一定測定ごとに検量線の校正を実施する場合もある。

b)  ブランクの測定  ガラスビード又は成形助剤を用いる場合には,試薬及び操作からの汚染が考えられ

るため,試料を含まない操作ブランク試料を測定する必要がある。試料と組成が異なるブランクの場

合には,目的元素の感度が異なる可能性があるので,濃度の算出には注意を要する。

c)  定期的な装置性能の確認  装置性能を維持するために,定期的に確認のための測定を実施する。測定

に当たってはすべての検出器,分光素子及び X 線管球を考慮する。測定項目としては,ピーク位置(2

θ又はエネルギー)

,ピーク位置での分解能,波高分析器の波形,ピーク強度の繰返し性などがある。

これらが所定の範囲内に入っていることを確認し,問題のある場合には,装置の点検整備を行う。点

検整備後は,再度,装置性能確認のための測定を行う。確認のための測定結果は,記録として残す。


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15  装置の点検 

点検を必要とする事項は,装置によって異なるが,主な事項を次に示す。

a)  波長分散方式 

1)  電源電圧

2)  X 線通路の減圧又はガス置換

3)  X 線管の印加電圧及び電流

4)  X 線発生部の安全機構

5)  冷却装置の作動状況

6)  分光器の設定条件

7)  検出器の作動状況

8)  計数部の作動状況

9)  データ処理・計算機能

10)  漏えい X 線のレベル

b)  エネルギー分散方式 

1)  電源電圧

2)  X 線通路の減圧又はガス置換

3)  X 線管の印加電圧及び電流,又はラジオアイソトープの種類

4)  X 線発生部又は放射線発生部の安全機構

5)  一次フィルター,二次フィルター及び二次ターゲットの効果

6)  冷却装置の作動状況

7)  検出器の作動状況又は液化窒素の残量

8)  検出器用高電圧電源

9)  波高分析器及び信号処理機能

10)  データ処理・計算機能

11)  漏えい X 線又は漏えい放射線のレベル

c)  全反射方式 

1)  電源電圧

2)  X 線通路の減圧又はガス置換

3)  X 線管の印加電圧及び電流

4)  X 線発生部の安全機構

5)  冷却装置の作動状況

6)  分光器の設定状況

7)  検出器の作動状況又は液化窒素の残量

8)  検出器用高電圧電源

9)  波高分析器及び信号処理機能

10)  試料位置制御機構

11)  データ処理・計算機能

12)  漏えい X 線又は漏えい放射線のレベル


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16  装置の設置条件 

装置の設置に当たっては,機種に応じた設置条件を満たすことが必要であるが,一般には,次のとおり

とする。

a)  ほこりが少なく,有害又は腐食性ガスがない。

b)  日光が装置に直接当たらない。

c)  装置仕様に指定された温度(例えば,15∼30  ℃)及び湿度(例えば,相対湿度 70  %以下)の範囲を

維持し,それらに急激な変化が生じない。また,結露しない。

d)  強力な磁場,高周波などを発生する装置が近くにない。

e)  装置を設置する床は,平たんで,装置の重さに耐えるだけの強度があり,振動が少ない。

f)  換気がよい。

g)  電源電圧の変動は±10  %以下で,かつ,電源ラインにノイズがなく,瞬時電圧低下がない。

h)  装置の接地端子は,専用とし,接地抵抗は,30  Ω以下のものが望ましい。

i)

冷却水は,水質が良く,十分な水圧及び水量のものを用いる。

17  安全管理 

分析作業及び設備の保守に当たっては,装置の取扱説明書及び装置にはられた警告ラベルに記載された

安全上の注意事項を遵守する。また,各種の動力,電気,高圧ガスなどによる災害を防止するために,教

育訓練を行い,適切な安全対策を施す必要がある。特に放射線による被ばくを防止するため,法令に基づ

く安全管理に留意しなければならない。

安全の確保には労働安全衛生法,労働安全衛生法施行令,労働安全衛生規則,電離放射線障害防止規則,

放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律,高圧ガス保安法,製造物責任法など,安全に関

する法令を熟知し,作業に反映させなければならない。 

18  個別規格で記載すべき事項 

蛍光 X 線分析法による分析方法を規定する個別規格には,少なくとも次の事項を記載しなければならな

い。

a)  規格番号及び規格名称

b)  規格の適用範囲

c)  分析装置の構成及び測定条件

d)  定量方法の種類

e)  分析元素及び定量範囲

f)  測定試料の調製方法

g)  分析結果の整理及び表示