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K 0117:2017  

(1) 

目 次 

ページ 

1 適用範囲 1 

2 引用規格 1 

3 用語及び定義  1 

4 装置 2 

4.1 装置の概要  2 

4.2 赤外分光光度計  3 

4.3 附属装置  7 

4.4 付加機能  14 

5 試料調製方法  16 

5.1 一般的注意  16 

5.2 固体  17 

5.3 粉体  18 

5.4 液体  18 

5.5 気体  18 

6 操作方法 19 

6.1 装置の設置  19 

6.2 測定操作  19 

6.3 分光光度計の補正及び検査方法  20 

7 定性分析 21 

7.1 吸収スペクトルの解析によって行う方法 21 

7.2 既知化合物のスペクトル比較による方法 22 

8 定量分析 22 

8.1 定量方法  22 

8.2 定量値の表示  24 

9 データの質の保証  24 

9.1 一般  24 

9.2 装置の診断  24 

9.3 装置の性能確認  24 

9.4 適切な試料の調製  25 

9.5 定量分析におけるデータの質の管理 25 

10 安全・保守  25 

10.1 安全  25 

10.2 保守  26 

11 測定結果の整理  26 

12 個別規格に記載すべき事項  26 


 

K 0117:2017 目次 

(2) 

ページ 

12.1 定性分析  26 

12.2 定量分析  26 

 

 


 

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(3) 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本

分析機器工業会(JAIMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業

規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業

規格である。 

これによって,JIS K 0117:2000は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

 

 


 

  

日本工業規格          JIS 

 

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赤外分光分析通則 

General rules for infrared spectrophotometric analysis 

 

適用範囲 

この規格は,赤外分光光度計を用いて無機物及び有機物の定性分析又は定量分析を行う場合の通則につ

いて規定する1)。 

注1) 赤外線は広義には可視光線とマイクロ波との間の波長をもつ電磁波を指すが,この規格では波

数4 000 cm−1〜400 cm−1(波長2.5 

の範囲とする。 

 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門) 

JIS K 0212 分析化学用語(光学部門) 

JIS K 0215 分析化学用語(分析機器部門) 

 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0211,JIS K 0212及びJIS K 0215によるほか,次による。 

3.1 

インターフェログラム(interferogram) 

マイケルソン干渉計からの信号を光の光路差を横軸に,光の強度を縦軸にとって示した図形。干渉図形

ともいう。 

3.2 

アポダイゼーション(apodization) 

干渉計が有限の走査距離をもつために生じるスペクトルのひずみなどを軽減するために,インターフェ

ログラムに適切な関数を重畳する数学的操作。 

3.3 

吸光度(absorbance) 

試料を透過した光の強度(I)と,透過前の光の強度(I0)との比を常用対数で表した数値2)。 

注2) 吸光度(Abs)は,次による。 

 

吸光度(Abs)=−log10(I/I0) 

3.4 

ランバート・ブーゲの法則及びベールの法則 


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媒質に光束を透過させたとき,入射光束の強度と透過光束の強度との関係を示す法則3)。ランバート-ベ

ールの法則,ランバート-ベアーの法則(Lambert-Beerʼs law)ともいう。 

注3) 強度I0の単色の入射光束が,媒質を通過したとき,光の強度がIに減少する。このときI0とI

との間に成り立つ,次の関係式で表される法則をいう。 

I=I0×10−εcl 

ε:モル吸光係数(cm−1 mol−1 L) 

c:濃度(mol L−1) 

l:光路長(cm) 

3.5 

クベルカ・ムンク変換(Kubelka-Munk transformation) 

拡散反射法で測定したスペクトルを吸収スペクトルに変換する方法。 

3.6 

正反射法(specular reflection method) 

試料表面での光の正反射(鏡面反射)を用い,反射光の強度を測定する方法。反射率は複素屈折率の関

数となるので吸収スペクトルに直すにはクラマース・クローニッヒ変換が必要である。 

3.7 

ATR法(attenuated total reflection method) 

光を臨界角以上の角度で入射したときに起こる高屈折率物質内部での全反射に伴う全反射面近傍での低

屈折率媒質への電磁波のしみ出しを利用した高吸収物質又は物質表面の測定方法。 

3.8 

電気的直接比法 

複光束方式の分光分析機器において,試料側光束の光量と対照側光束との光量の比較を電気的に行う方

法。 

 

装置 

4.1 

装置の概要 

通常用いられている赤外分光光度計の構成の例を図1〜図3に示す。赤外分光光度計には測光方式によ

って,干渉方式のフーリエ変換形赤外分光光度計(図1)及び分散方式の分散形赤外分光光度計(図2及

び図3)に大別できる。 

図1に,フーリエ変換形赤外分光光度計の構成の一例を示す。装置は,光源部,試料部,分光測光部(干

渉計,検出器,増幅器,A/D変換器,サンプリング信号発生器),フーリエ変換部,データ処理部,表示・

記録部などで構成する。図2に,測光方式として光学的零位法を用いた分散形赤外分光光度計の構成の一

例を示す。装置は,光源部,試料部,分光測光部(減光器,セクターミラー,分光器,検出器,増幅器),

データ処理部4),表示・記録部などで構成する。図3に,電気的直接比法を用いた分散形赤外分光光度計

の構成の一例を示す。装置は,光源部,試料部,分光測光部(セクターミラー,分光器,検出器,増幅器,

演算器),データ処理部4),表示・記録部などで構成する。 

注4) データ処理部は,必須の構成要素ではなく,これを備えていない装置もある。 


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図1−フーリエ変換形赤外分光光度計の構成の一例 

 

 

図2−分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の構成の一例 

 

 

図3−分散形赤外分光光度計(電気的直接比法)の構成の一例 

 

4.2 

赤外分光光度計 

4.2.1 

フーリエ変換形赤外分光光度計 

図4にフーリエ変換形赤外分光光度計の光学系の一例を示す。赤外光源から放射された赤外線はだ(楕)

円面鏡で反射,集光されてアパーチャーを通り,放物面鏡で平行光に変換されてマイケルソン干渉計に入

射する。マイケルソン干渉計で干渉された赤外線は試料室前の放物面鏡で集光され試料に照射される。 

試料を通過し,試料によって吸収された残りの赤外線は検出器前のだ(楕)円鏡で集光されて検出器で

電気信号に変換される。 


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1 赤外光源 

2 だ(楕)円面鏡 

3 アパーチャー 

4 放物面鏡 

5 マイケルソン干渉計 

6 ビームスプリッター 

7 補償板 

8 固定鏡 

9 移動鏡 

10 放物面鏡 

11 試料室 

12 試料 

13 だ(楕)円面鏡 

14 検出器 

15 レーザー 

16〜○

18 レーザーミラー 

19 レーザー検出器 

20 バリデーション用フィルター 

図4−フーリエ変換形赤外分光光度計の光学系の一例 

 

a) 光源部 光源部は次に示す赤外線の放射体,光源用電源,集光用の凹面鏡などで構成する。 

1) 赤外線の放射体は,炭化けい素,セラミックなどを放射体材とし,目的とする赤外線を安定に放射

するものを用いる。 

2) 光源用電源は,安定した赤外線を放射させるために,変動の少ない電圧及び電流を供給する機能を

もつものを用いる。 

3) 集光用の凹面鏡は,放射体から放射された赤外線をアパーチャーに集光又はマイケルソン干渉計に

入光させるための平行光に変換するもの。集光鏡にはだ(楕)円鏡,放物面鏡,又は球面鏡などを

用いる。 

b) 試料部 試料部は,次に示す試料セル,試料ホルダー,附属装置を取り付けることのできるジグなど

で構成する。フーリエ変換形赤外分光光度計の多くは単光束分光光度計である。複光束赤外分光光度

計の場合には,試料用光路及び対照試料用光路にそれぞれ試料ホルダーを設置する。 

1) 試料部は,通常,赤外線光路及び試料を周囲の環境から隔離するための隔壁及びドアが備えられて

おり,乾燥ガスの導入口が設置され,試料部をガス置換することができるものもある。 

2) 試料部の入り口には,マイケルソン干渉計から出射された平行光を試料部内で集光させるための放

物面鏡が配置されている。 

3) 赤外線光路中にポリスチレンフィルム,ニュートラルフィルターなどを挿入し,装置の性能確認を

容易に,かつ,確実に行うためのバリデーション機構が備えられているものもある。 

c) 分光測光部 分光測光部は,次に示す干渉計,検出器,増幅器,A/D変換器,サンプリング信号発生

器などで構成する。 

1) 干渉計 一般に,マイケルソン干渉計を用いる。マイケルソン干渉計は,入射された平行光がビー

ムスプリッターによって透過光と反射光とに2分割され,それぞれ固定鏡及び移動鏡と呼ばれる2

枚の平面鏡で反射されて再びビームスプリッターに入射され,お互いの光が重なり合って干渉を生


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じる。移動鏡は2分割された二つの光束が重なり合い干渉を生じるように,常にビームスプリッタ

ーと一定の角度を保つように走査される。ビームスプリッターから固定鏡までの距離と移動鏡まで

の距離とが等しい場合に全ての波長の光が強め合い,移動鏡の走査に従って特定の波長の光が強め

合うように干渉し,その結果,インターフェログラムと呼ばれる干渉パターンが得られる。 

フーリエ変換形赤外分光光度計では,スペクトルの分解能は移動鏡の移動距離によって決定され,

移動鏡と固定鏡との光路差をLとしたとき,分解能は1/Lで得られる。例えば,光路差が0.5 cmで

あれば分解能は2 cm−1になる。 

ビームスプリッターは,一般的に中赤外の領域においてはKBr基板に蒸着させたゲルマニウム薄

膜が用いられ,測定する全ての波長において固定鏡側と移動鏡側との光路長が等しくなるように,

薄膜を蒸着していない同じ厚さのKBr基板を補償板として配置している。ビームスプリッターの基

板をCsIに換えることによって測定領域を長波長領域に拡張でき,ZnSeの薄膜を蒸着させたCaF2

基板などを用いることによって短波長領域に拡張することができる。 

インターフェログラムの信号は,干渉計に組み込まれたHe-Neレーザー光の干渉によって生じる

正弦波から得られる信号を用いて正確に等しい距離間隔でサンプリングを行い,A/Dコンバータで

デジタル信号に変換してコンピューター上に取り込む。このHe-Neレーザー光の干渉信号は移動鏡

を一定速度で走査するための制御にも利用される。 

干渉計では,ビームスプリッターに対する固定鏡と移動鏡との角度を常に一定に保つことが重要

であり,高品質のデータを収集するためには測定時にビームスプリッター又は鏡の角度調整を行う

必要がある。He-Neレーザー光のインターフェログラムの位相をモニターし,鏡を電気的に調整す

ることなどによって干渉計の調整を連続的に自動で行うものもある。 

通常の測定では,移動鏡を一定速度で動かしながらデータを収集するリニアスキャン測定モード

が用いられるが,試料のサブミリ秒以下での時間変化を測定する時間分解測定又はパルス変調され

ている試料を測定することのできる装置では,移動鏡を各サンプリング位置で停止させてデータを

収集するステップスキャン測定モードを備えたものもある。 

マイケルソン干渉計の入り口には,光源からの放射光をマイケルソン干渉計で必要とする平行光

に変換するための放物面鏡などを配置する。 

また,高分解能の測定時に入射孔の大きさを制限するためのアパーチャーを備えたものもある。 

2) 検出器 入射光をその強度に応じた電気信号に変換するためのもので,焦電形検出器,半導体検出

器,光音響検出器などを用いる。フーリエ変換形赤外分光光度計に用いられる検出器は,次に示す

条件などを満たす必要があるが,これら全ての条件を満たす検出器はないので,目的によって使い

分ける。 

− 高感度である。 

− 波長感度特性が測定波数範囲内で平たん(坦)である。 

− 周波数特性が測定するフーリエ周波数内で平たん(坦)である。 

− 入射光の強度に対する信号出力強度が広い範囲にわたり直線性をもつ。 

− 光学系のビーム径に見合う大きさの受光面をもつ。 

− 取扱いが簡単である。 

検出器の前には,試料部からの赤外線を検出器に集光させるためのだ(楕)円面鏡などを配置す

る。 

3) 増幅器 検出器からの電気信号を,以降の信号処理系において処理しやすい大きさに増幅するもの。 


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4) A/D変換器 増幅器からのアナログ電気信号を,コンピューター上でデータ処理するためのデジタ

ル信号に変換する機能をもつもの。 

フーリエ変換形赤外分光光度計の検出器で検出されるインターフェログラム信号を取り扱うには大

きなダイナミックレンジが要求されるため,24 bit程度の高い分解能のA/D変換器が用いられてい

るものもある。 

5) サンプリング信号発生器 インターフェログラムの測定におけるデータサンプリングのリファレン

ス信号として用いる信号発生器。リファレンス信号のインターフェログラムを得るための単色光源

には,通常ヘリウム−ネオンレーザーが用いられる。その他,固体レーザーが用いられているもの

もある。 

d) フーリエ変換部 デジタル化されたインターフェログラムをフーリエ変換によってスペクトルに変換

するための機能をもつ部分。 

e) データ処理部 得られたスペクトルデータの変換及び分析を行うもの。赤外顕微鏡などのイメージン

グ計測機能によって収集された2次元データは,個々のスペクトルのデータ処理に加え,主成分分析,

多変量スペクトル分解などの多変量解析及び測定された各成分が占める領域の位置,個数,面積の計

測などのイメージングデータの画像解析を行う部分。 

f) 

表示・記録部 表示・記録部は,分析結果,データ処理結果などをモニターに表示,プリンターによ

って印刷し,外部記憶装置に保存するための部分で,通常フーリエ変換,データ処理などと合わせて

コンピューターで行う。 

4.2.2 

分散形赤外分光光度計 

a) 光源部 4.2.1 a) による。 

b) 試料部 4.2.1 b) による。ただし,分散形赤外分光光度計は,通常,複光束分光光度計であり,試料

用光路及び対照試料用光路にそれぞれ試料ホルダーを設置する。 

c) 分光測光部 分光測光部は,次に示す減光器,分光器,検出器,増幅器,演算器などで構成する。 

1) 減光器 光学的零位法において,減光のために使用される光学素子。対照光束中に設置され,試料

を通過した光束の強度と対照試料を通過した光束の強度とが等しくなるように調節するもの。 

2) セクターミラー 試料光束と対照光束とを切り換えるための回転鏡。 

3) 分光器 スリット,ミラー,分散素子などから構成する。一つの光源からの光を分散させて一つの

焦点面上に波長順にスリット像を結ばせる機器でスペクトルを観察できるようにしたもの。分散素

子にはプリズム,回折格子又はそれらを組み合わせた光学系から構成され,特定の波長の単色光を

取り出すモノクロメーター及び多波長の光を同時に取り出すポリクロメーターがある。通常は回折

格子5) を用いる。 

注5) 回折格子形分光器では,高次光を分離するため,通常,波数選択フィルターを組み合わせ

る。 

4) 検出器 入射光をその強度に応じた電気信号に変換するためのもので,真空熱電対,焦電形検出器,

半導体検出器などを用いる。 

5) 増幅器 検出器からの信号を,以降の信号処理系において,処理しやすい大きさに増幅するもの。

光学的零位法では,前置増幅器,主増幅器,同期整流器,変調器及び電力増幅器からなる。また,

電気的直接比法では,前置増幅器,主増幅器及び同期整流器で構成する。 

6) 演算器 電気的直接比法に用いる信号処理系であり,試料光束による電気信号と対照試料による電

気信号とを分離し,両者の信号強度比を算出するもの。 


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分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の光学系の一例を図5に示す。 

 

 

 

 

1 赤外光源 

7 回折格子 

 

2 凹面鏡 

8 検出器 

 

3 平面鏡 

9 対照試料 

 

4 集光鏡 

10 試料 

 

5 入射スリット 

11 セクターミラー 

 

6 出射スリット 

12 減光器 

 

図5−分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の光学系の一例 

 

d) データ処理部 透過率の吸光度への変換,検量線の作成,差スペクトルの演算などの機能をもつもの。 

e) 表示・記録部 4.2.1 f) による。 

4.3 

附属装置 

附属装置には次のものがあり,必要に応じて使用する。 

a) 錠剤成型器 粉末とした試料を臭化カリウムなどのハロゲン化アルカリとを混合し,加圧・成型して

錠剤とする装置。錠剤成型器には減圧下で加圧して錠剤を作製する装置及び加圧して錠剤を作製する

簡易形装置がある。図6 a) に減圧下で作製する錠剤成型器,図6 b) に簡易形錠剤成型器の例を示す。 

 

 

1 基台 

2 Oリング 

3 排気口 

4 Oリング 

5 ばね 

6 試料台 

7 試料 

8 錠剤枠 

9 プランジャー案内金具 

10 プランジャー 

a) 減圧下で作製する錠剤成型器の例 

図6−錠剤成型器の例 


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1 ハンドル 

2 圧縮棒 

3 基台 

4 上部ダイス 

5 錠剤枠 

6 下部ダイス 

b) 簡易形錠剤成型器の例 

図6−錠剤成型器の例(続き) 

 

b) 偏光附属装置 偏光測定を行うため,赤外線に偏光特性をもたせる附属装置。延伸したフィルムのよ

うな配向特性をもった試料の配向解析,金属表面の薄膜などの測定に用いる高感度反射法などで使用

する。 

赤外領域で使用する偏光子には,赤外線透過材料の表面に細いワイヤーグリッドを付けたもの,赤

外線透過材料の表面に山形の刻線を施し,片斜面に金属を蒸着したものなどが用いられる。偏光面が

変えられるように回転機構をもったものが一般的である。 

c) 液体セル 液体試料を測定するために使用するセル。2枚の赤外線透過性の窓板材の間に液体試料を

サンドイッチ状に挟んで透過測定を行うためのセル。窓板材の間にスペーサーを挟み光路長を長くす

ることができ,試料の吸収強度を増大させることができる。また,あらかじめスペーサーが組み込ま

れ,光路長が固定された液体セルがある。窓板材としてハロゲン化アルカリ,KRS-5(よう化タリウ

ムと臭化タリウムとの混晶体),セレン化亜鉛などがある。ハロゲン化アルカリは水に溶解するため,

水を含んだ試料には適さない。このような場合には,難水溶性のKRS-5,水に溶けないセレン化亜鉛

などの窓板材を用いる。 

図7に液体セルの一例を示す。 

 

 

1 下部セル金具 

2 窓板 

3 スペーサー 

4 上部セル金具 

5 止めねじ 

 

組み立てた液体セル 

分解した液体セル 

 

図7−液体セルの一例 

 

d) ガスセル ガス試料を測定するために使用するセル。 


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ガラス製又は金属製のきょう(筐)体にガス試料の導入及び排出のためのコックを取り付け,きょ

う(筐)体の両側に赤外線透過性の窓板材を取り付けたセル。光路長は50 mm〜100 mmが一般的で

ある。測定は大気圧下で行うこともできるが,高分解測定を行う場合は,気体分子間の相互作用の影

響を避けるために試料を減圧して測定することが望ましい。 

図8にガスセルの一例を示す。 

 

 

1 保護管 

2 コック付き吸排気弁 

3 きょう(筐)体 

4 ガスケット 

5 窓板 

6 Oリング 

7 キャップ 

図8−ガスセルの一例 

 

e) 多重反射ガスセル 低濃度のガス成分を測定するため,多重反射を用いて光路長を長くしたガスセル。 

ガスセルの内部に反射鏡を組み込み,セルの中で赤外線を多重反射させることによって光路長を長

くしたガスセル。光路長は数メートルから数十メートルのものが一般的である。低濃度ガス成分の測

定に用いる。図9に多重反射ガスセルの一例を示す。 

 

 

1 コック付き吸排気弁 

2 凹面鏡 

3 窓板 

図9−多重反射ガスセルの一例 

 

f) 

温度可変セル 試料を加熱又は冷却して,赤外スペクトルを測定するためのセル。定温又は温度を変

化させながら試料の赤外スペクトルを測定するときに使用する加熱又は冷却が可能なセル。 


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g) ATR測定附属装置 試料表層部の測定又は非常に強い吸収をもつ試料の測定を行うために用いる附

属装置。 

赤外線透過性の高屈折率媒体に試料を密着させ,臨界角以上の入射角で赤外線を高屈折率媒体から

入射させると,高屈折率媒体と試料との界面で赤外線が全反射する。全反射した赤外線は界面で試料

中にしみ出し(エバネッセント波),試料によって吸収されるが,全反射光を測定することによって試

料表層部の赤外スペクトルを測定することができる。しみ出し深さは,赤外線の波長,高屈折率媒体

及び試料の屈折率,入射角に依存し,低波数(長波長)域が高波数(短波長)域に比べて深くなり,

吸収強度も大きくなる。ATR法は,プラスチック,フィルム,ゴム,粉末,薄膜,液体試料などの測

定及び表層部の分析などに用いられる。赤外線透過性の高屈折率媒体として,セレン化亜鉛,ゲルマ

ニウム,ダイヤモンド,KRS-5(よう化タリウムと臭化タリウムとの混晶体)などが用いられる。 

全反射の回数が1回のものと多数回のものとがある。また,高屈折率媒体への入射角が可変のもの

がある。図10に1回反射形ATR測定附属装置の一例を示す。 

 

 

1 試料クランプ 

2 試料 

3 高屈折率媒体 

4 平面鏡 

図10−1回反射形ATR測定附属装置の一例 

 

h) 拡散反射測定附属装置 粉末試料を錠剤に成型せずに測定するために用いる附属装置。粉末試料に赤

外線を入射させ,試料からの拡散反射光を測定する。ハロゲン化アルカリなどの赤外領域で吸収の少

ない粉末で試料を希釈することによって試料からの表面反射光の影響を抑えることができる。拡散反

射測定附属装置で測定した赤外スペクトルは,透過スペクトルに比べて微弱な吸収が強められる。ま

た,粉末試料の他に,圧力を加えることを避けたい試料,表面が粗な固体試料などの測定に使用する

こともできる。 

図11に拡散反射測定附属装置の一例を示す。 


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1 試料 

2 平面鏡 

3 だ(楕)円面鏡 

図11−拡散反射測定附属装置の一例 

 

i) 

反射測定附属装置 反射光を測定するための附属装置。反射測定には,樹脂などの平たん(坦)な試

料の表面で反射した赤外線を測定する正反射法,金属などの赤外線反射物質表面上に塗布されたコー

ティング材のように,入射した赤外線が試料を透過した後,赤外線反射面で反射し,再び試料を透過

して出射した赤外線を測定する反射吸収法,入射面と平行に偏光させた赤外線を70°〜85°の大きな

入射角で赤外線反射物質表面上の薄膜に入射させ,薄膜との相互作用を大きくさせて感度を高めて赤

外スペクトルを測定する高感度反射法がある。 

1) 反射測定附属装置 正反射スペクトル測定及び反射吸収法による赤外線反射物質表面のコーティン

グ材などのスペクトル測定に用いる附属装置。偏光の影響を抑えるために入射角を10°程度に設定

した附属装置が多い。また,入射角を変えて反射スペクトルが測定できる附属装置もある。図12

に反射測定附属装置の一例を示す。 

 

 

1 試料 

2 平面鏡 

3 球面鏡 

図12−反射測定附属装置の一例 

 

2) 高感度反射測定附属装置 金属などの赤外線反射物質表面上の薄膜などを高感度で測定するための


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反射測定附属装置。入射面と平行に偏光させた赤外線を70°〜85°の大きな入射角で赤外線反射物

質表面上の薄膜に入射させ,その反射スペクトルを測定する。無偏光の赤外線を試料に入射させ,

試料からの反射光を偏光子に導く場合もある。図13に高感度反射測定附属装置の一例を示す。 

 

 

1 平面鏡 

2 試料 

3 偏光子 

図13−高感度反射測定附属装置の一例 

 

j) 

放射測定附属装置 加熱された試料のふく(輻)射スペクトルを測定するために用いる附属装置。試

料を加熱するための加熱炉,黒体炉,温度コントローラなどから構成されている。一般的には,黒体

からのふく(輻)射を基準とし,そのふく(輻)射と試料からのふく(輻)射との比を計算してスペ

クトルを求める。フーリエ変換形赤外分光光度計(FTIR)と組み合わせて使用する場合は,導入光学

系を使って黒体炉及び試料からのふく(輻)射をFTIRの干渉計に導入し干渉させて検出する。図14

に放射測定附属装置の一例を示す。 

 

 

1 黒体炉 

2 切替ミラー 

3 試料加熱炉 

4 試料 

図14−放射測定附属装置の一例 

 

k) 光音響測定附属装置 試料に振幅変調させた光を照射して,試料内に生じた周期的な熱変化を最終的

に圧力変化として検出する附属装置。試料の形状に依存せず,前処理なしで測定できる。赤外線が透

過又は反射しないような試料でも測定できる。熱が物質内を拡散するとき,その距離の指標となる熱

拡散長は入射光の変調周波数の関数として表される。変調周波数はフーリエ変換形赤外分光光度計の

移動鏡の速度と関係付けられ,移動鏡の速度を変えることによって試料の異なった表面深さのスペク

トルを得ることができる。図15に光音響測定附属装置の一例を示す。 

 

 


13 

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1 凹面鏡 

2 窓板 

3 試料 

4 マイクロホン 

図15−光音響測定附属装置の一例 

 

l) 

顕微赤外測定附属装置 試料の微小部分を測定する附属装置。光路及び対物鏡の切替えによって透過,

反射,ATR及び高感度反射測定が可能な附属装置もある。試料の測定部位をアパーチャーでマスクし,

測定部位内だけの透過光又は反射光を測定することで目的部位の赤外スペクトルを測定することがで

きる。光路を切り替えることによって透過測定及び反射測定が行える附属装置が一般的である。測定

の空間分解能は,約10 µmである。フーリエ変換形赤外分光光度計の移動鏡の速度を高速にし,また,

複数の素子から成る検出器を用いて,個々の素子に割り当てられた測定部位を一度に,かつ,高速で

測定することによって,短時間で広い領域の試料のイメージング測定が行える附属装置もある。図16

に顕微赤外測定附属装置の一例を示す。 

 

 

1 赤外線導入口 

2 透過集光鏡 

3 試料ステージ 

4 反射対物鏡 

5 アパーチャー 

6 検出器 

7 反射測定光路 

図16−顕微赤外測定附属装置の一例 

 

m) GC-IR測定装置 ガスクロマトグラフ(GC)で分離された成分の赤外スペクトルを測定し,分析を

行う装置。GCのカラム出口からのガスをフローセルに導き,赤外域全体の吸収スペクトルの吸収又

は単一波数における吸収を測定し,時間軸に対して吸収強度を目盛ることでフローセルを通過する溶

離物のクロマトグラムを得ることができる。溶離物の赤外スペクトルを求めることができる装置もあ

る。 


14 

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図17にGC-IR測定装置のフローセルの一例を示す。 

 

 

1 凹面鏡 

2 窓板 

3 フローセル 

4 ヒーター 

5 ガス導入口 

6 検出器 

図17−GC-IR測定装置のフローセルの一例 

 

n) LC-IR測定装置 液体クロマトグラフ(LC)で分離された成分の赤外スペクトルを測定し,分析を行

う装置。LC出口からの液をフローセルに導入して測定を行う。フローセルの代わりにATRを用いる

こともある。液体クロマトグラフの移動相として,求める赤外スペクトルの波数領域における吸収の

少ないものを選択する必要があり,フローセルに導入する方法は,主にゲル浸透クロマトグラフィー

(GPC)に応用される。 

o) TG-IR測定装置 熱重量測定装置(TG)からの発生ガスの成分の赤外スペクトルを測定する装置。 

熱重量測定装置からの発生ガスを加熱保温されたフローセルに導入し,発生ガスの分析を行う。 

4.4 

付加機能 測定したスペクトルを処理,解析するため,次のデータ処理機能がある。 

a) データの保存 測定したスペクトル,処理を加えたスペクトルなどをコンピューターの記憶装置に保

存しておく機能。各装置独自の保存形式のほかに,特定の製造業者によらない形式,スペクトルの各

データポイントの値をテキスト形式で保存できる装置もある。また,2次元測定データ,3次元測定デ

ータ,プロファイリング測定試料の画像データなどをスペクトルデータとリンクさせて保存できる装

置もある。 

b) スペクトルの拡大縮小表示 モニター上で,スペクトルの任意の部分を詳しく解析するために特定の

領域を拡大表示又は全体を調べるために縮小表示を行う機能。 

c) スペクトルの重ね描き表示 データエリアにある複数のスペクトルを同じ画面上に重ねて表示する機

能。スペクトルの比較を行うときに用いる。スペクトルを縦にずらして表示する機能をもつ装置もあ

る。 

d) スペクトル検索 測定したスペクトルと既知物質の標準スペクトルデータベースとを比較し,同定を

行うための機能。多くのデータベースが用意されており,使用目的に応じて使い分けることができる。

また,構造式,沸点などの情報も含めて検索できる装置もある。 

e) データベース作成 スペクトル検索のためのデータベースを作成する機能。通常,スペクトルデータ

の検索は市販のスペクトルデータベースを使用して行うことができるが,使用目的によってはこれが

使用できない場合もある。このような場合,独自にデータベースの作成を行う必要がある。 

f) 

四則演算 スペクトルに対して指定した定数を加減乗除する機能。スペクトルの拡大,縮小,規格化

などに用いられる。 

g) ベースライン補正 ベースラインが傾いていたり,湾曲しているスペクトルのベースラインを平らに


15 

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する機能。補正点と補正量とを指定することによってスペクトルを補正する。自動的にベースライン

を補正する機能をもつ装置もある。 

h) スムージング ノイズの多いスペクトルについて,ピーク形状を滑らかにするため,データの高周波

成分を除去し,スペクトルのノイズを軽減する機能。スムージングには,データ点ごとにその前後の

数点のデータの平均値を求め,新たなデータポイントとする移動平均法,サビツキー・ゴーレイ法な

どが用いられる。必要以上にスムージングを行うと,ピークの変形又は分解能の低下があるので注意

しなければならない。 

i) 

微分 微分変換したスペクトルを作成する機能。微分を求める方法として,データ点及びその前後の

データと微分の次数に対応する重み係数とを使って計算的に求めるサビツキー・ゴーレイ法などが使

われている。大きなピークのショルダーとなったピーク,鋭いピークの裾に隠れた弱いピークなど,

明瞭でないピークを検出する場合に用いる。散乱などの影響でベースラインが変動しているスペクト

ルを用いて定量を行う場合にも用いられることがある。 

j) 

データ補正 スペクトル上の不要な部分を直線で結んでスペクトルを補正する機能。スペクトル上の

補正ができない二酸化炭素ピークの除去などに用いられる。 

k) 軸単位の変換 スペクトルの軸の単位を,必要に応じて種々の単位に変換する機能。 

1) Y軸単位の変換 スペクトルのY軸(縦軸)の単位を変換する機能。単位としては,透過パーセン

ト,吸光度,反射パーセント,クベルカ・ムンク変換などがある。ランバート・ブーゲの法則及び

ベールの法則を用いて定量分析を行う場合には,吸光度単位に変換する必要がある。 

2) X軸単位の変換 スペクトルのX軸(横軸)の単位を変換する機能。単位としては,波数(cm−1),

波長(µm)などがある。また,指紋領域(2 000 cm−1〜400 cm−1)を拡大表示できる装置もある。 

通常,赤外領域のスペクトルを表示するための単位には波数が用いられている。しかし,光学分

野などでは波長単位でスペクトルが表示されていることがあり,比較のために波長単位に変換する

必要のある場合がある。 

l) 

ピーク検出 スペクトルの各吸収ピークの波数及び吸収強度を検出する機能。モニター上又は印刷さ

れたスペクトルのピーク位置に表示するもの,波数,吸収強度などの数値をリストとして表示する装

置もある。 

m) 面積計算 波数,波長などの範囲を指定して面積を計算する機能。モニター上又は印刷されたスペク

トル上に表示するもの,波数範囲,面積などの数値をリストとして表示する装置もある。 

n) 膜厚計算 薄膜の試料内部での反射によってできる干渉スペクトルから,その試料の厚さを計算する

機能。ただし,測定光の入射角,試料の屈折率が既知で,計算する波長範囲で屈折率が一定であると

仮定する必要がある。 

o) 差スペクトル 二つのスペクトルの差スペクトルを計算する機能。二つのスペクトルの微小な差の検

出,主成分のスペクトルの差引きによる不純物の測定,溶媒スペクトルの除去,大気中の水分,二酸

化炭素のピークに起因するスペクトルの除去などに用いられる。 

p) データ演算 二つのスペクトルの加減乗除を計算する機能。加算は,二つのスペクトルの合成に使わ

れることがある。除算は,バックグラウンドのパワースペクトルと試料のパワースペクトルとを除算

することで透過率スペクトルを得るのに使われることがある。 

q) 一致度 二つのスペクトルの類似性を示す機能。一致度は二つのスペクトルがどの程度似ているかを

相関係数,強度比などを用いて示すことができる。 

r) フーリエ変換 測定したインターフェログラムに対して周波数分解を行い,パワースペクトルを出力


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する機能。一度測定したインターフェログラムから,波数範囲及びアポダイゼーションを変更してス

ペクトルを得たい場合などに用いられる。 

s) 

クベルカ・ムンク変換 拡散反射法で測定したスペクトルを試料濃度に相関した縦軸に変換する機能。 

t) 

ATR補正 ATR測定装置を用いて測定したスペクトルピークの強度の波数依存性を補正する機能。

ATR測定装置を使用して測定したスペクトルの強度には,波数依存性がある。透過スペクトルと比較

した場合,高波数(短波長)側の吸収に比べて低波数(長波長)側の吸収強度が大きくなる。さらに,

試料とプリズムの屈折率,光の入射角,反射回数とを設定することで,光の異常分散の影響によるピ

ークの低波数(長波長)側へのシフト,入射光の潜り込み深さの変化を同時に補正する装置もある。 

u) クラマース・クローニッヒ解析 反射測定装置を使用して測定したスペクトルを吸収スペクトルに変

換する機能。測定装置に得られるスペクトルは,吸収ピークのある波数位置において光の異常分散に

よって起きる屈折率の変化が原因で,透過スペクトルとは異なった形状のスペクトルとなる。 

v) 波形分離 重畳したピークを,複数のピークに分離する機能。複数のピークが近接しているため分離

されず,一つのピーク又は変形したピークとして表示される場合がある。 

w) 大気補正 測定したスペクトルから大気中の水蒸気及び二酸化炭素の影響を除去する機能。中赤外領

域には水蒸気及び二酸化炭素の各々で二波数域ずつ,計四波数域に吸収があり,各々の領域に対して

特定のパラメータを設定することによって補正処理が行える装置もある。 

x) 定量計算 スペクトルの吸収の強さから成分濃度を計算する機能。ある波数における,吸光度で表し

た吸収ピークの高さ又は面積と濃度とは比例関係にあり,ランバート・ブーゲの法則及びベールの法

則が成立し,定量分析を行うことができる。また,ベールの法則に従わない場合でも,統計学的手法

によって定量分析を行うことができる装置もある。 

y) フォトメトリック測定 スペクトルの指定された波数の吸光度,透過率,ピーク高さ,ピーク面積な

どを読み取り,式に当てはめて計算できる機能。反応率,成分比などの計算ができる装置もある。 

z) 時間変化測定 試料を一定の時間間隔で継続して測定し,スペクトルの形状の変化を確認することが

できる機能。特定のピークの大きさの変化で試料の反応追跡,時間変化などのグラフを表示できる装

置もある。 

aa) マッピング測定 試料の表面の吸収分布を測定する機能。ラインマッピング,エリアマッピングがで

きる装置もある。 

ab) 自動検査 測定結果と規格値とを比較し,装置の基本性能が規定を満たしているかどうかを自動で確

認する機能。 

ac) マクロ編集 定型操作を自動化する機能。登録する一連の操作手順を自由に選択できる。画面上でコ

マンドを編集して手順を指定する装置,コマンドを表すアイテムをマウスでドラッグアンドドロップ

して,操作を実行する順に並べることでマクロプログラムが完成するような簡単マクロをもつ装置も

ある。 

 

試料調製方法 

5.1 

一般的注意 

赤外分光分析を行う際には,分析の目的,分析試料の状態,分析手法,使用測定附属装置の性能など種々

の条件を考慮して,目的に合った結果が得られる試料調製方法を選択する必要がある。定性分析において

は,最も強い吸収バンドの透過パーセントが5 %以上になるように試料濃度を調節することが望ましい。

定量分析においては,測定しようとする吸収バンドの吸光度と試料濃度との関係が,直線となる範囲に入


17 

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るよう,適切な試料濃度,試料の厚さ又はセルの光路長を選ぶことが望ましい。ただし,個別規格に規定

されている場合には,それによる。附属装置などを用いて,反射,放射,光音響,TG-IR,GC-IR,LC-IR

などの測定を行う場合の試料調製については個別規格によるほか,装置の取扱説明書による。 

5.2 

固体 

固体試料の調製には,次の方法がある。附属装置などを用いる場合には,次によるほか,附属装置の取

扱説明書による。 

a) フィルム法 フィルム法は,次による。 

1) 固体試料をメタノール,アセトンなどの揮発性が高く,溶解性の大きい溶媒に溶解し,その溶液を

赤外線透過性材料の板上,ガラス基板又はアルミホイル上に滴下して広げ,溶媒を蒸発させて薄膜

とし,そのまま又は剝がして測定する。 

2) 熱に安定で熱可塑性の固体試料は2枚の加熱板に試料を挟み,加圧・成型して薄膜とする。 

3) 試料の状態をできるだけ変えずに測定したい場合,ミクロトームなどを用いて薄膜切片とする。 

4) ゴム状物質,発泡スチロールのように弾力のある試料の場合は,ダイヤモンドなどの赤外線透過性

材料を使用したアンビルセルによって圧力をかけたまま薄膜の状態に保って測定する。 

b) 錠剤法 塊状及びか(顆)粒状の試料は,乳鉢,粉砕機などを用いて試料を微粉化し,微粉試料を臭

化カリウム,塩化カリウムなどの粉末と混合し,錠剤成型器を用いて,大気圧又は減圧下で加圧・成

型し,均一な錠剤とする。 

c) 溶液法 測定対象と吸収バンドとが重複しない溶媒,例えば二硫化炭素,シクロヘキサンなどに試料

を溶解し,溶液とする。 

d) 熱分解法 試料を試験管などに入れ不活性ガス(窒素)などで空気を置換後,試験管の外側から試料

部分を加熱し,熱分解を行い試験管上部で液状化した熱分解試料を赤外線透過材料に塗布して測定す

る。 

e) ATR法 粉末になりにくく,適切な溶媒がない物質(例えば,ゴム状物質),厚い板状試料上の表面

処理層などの測定には,試料表面を十分平滑にし,ATRプリズムに試料を載せ,試料の裏面から圧力

を加えてプリズムに均一に密着させる。また,試料の屈折率を考慮し,適切なプリズム材質,赤外線

の入射角を選ぶ必要がある。対照試料としてはプリズムだけを用いる。 

f) 

正反射法 試料の照射面を平滑にする。また,試料の裏面からの反射が試料スペクトルに影響を与え

ないよう厚い試料を用いるか,適切な試料ホルダーを用いるなどの考慮が必要である。対照試料とし

てはステンレス板,又は反射鏡が最も適している。 

g) 高感度反射吸収法 高反射率の金属基板上の薄膜(約100 nm以下)試料の測定に用いる。基板金属

の平面性を考慮して,赤外線の照射面積をできる限り大きくとるようにする。適切な赤外線入射角は

基板金属の種類及び表面状態によって異なるので,幾つかの入射角で測定を行う。対照試料としては,

測定試料の薄膜の付いていない金属板が望ましいが,それが得られないときは,ステンレス鋼板又は

反射鏡を用いる。高感度反射吸収法では,入射面に対して平行な偏光を利用するため,適切な偏光子

を使用することが望ましい。 

h) 放射法 試料の平面性の影響は少ないが,試料が厚すぎると自己吸収が起こり,スペクトルにひずみ

が生じるので,試料の厚さを十数 

下にする。試料ホルダーなどからの放射が重ならないよう,

反射率の高い金属の上に試料を置く。スペクトル強度は,試料と同一温度の黒体放射を測定して強度

補正する必要がある。 

i) 

光音響分光法 試料の形態の影響は少ないが,セル内に空間が多いとスペクトルのSN比が悪くなる


18 

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ので試料をセルに密に充塡する必要がある。試料の量が少ない場合には,臭化カリウムなどのマトリ

ックス粉末を用いてデッドスペースを埋めるか,セルの大きさを試料量に合わせて選定する。対照試

料としてはカーボンブラックを用いる。 

j) 

顕微鏡法 微小な試料の場合,赤外線の照射領域を絞り込めることができる赤外顕微鏡を使用する。

顕微鏡法では,主にフィルム法,ATR法,正反射法による測定ができる。試料が厚い場合,金属板又

は赤外線透過材料と金属の棒材とで挟んでプレスし,薄膜化してから測定する。 

k) GC-IR法 試料の溶解に使用する溶媒は,試料の極性に合った溶解性の高いものを選択することが望

ましい。 

l) 

LC-IR法 LCに用いる移動相としての溶媒は,赤外吸収が少なく,試料の極性に合った溶解性の高

いものを選択することが望ましい。 

m) TG-IR法 試料が塊状又は粒状の場合,より正確な測定を行うために微粉末にする。 

5.3 

粉体 

粉体試料の調製方法には,次の方法がある。附属装置などを用いる場合には,次によるほか,附属装置

の取扱説明書による。 

a) 錠剤法 微粉とした試料を5.2 b) と同様に処理し,錠剤とする。 

b) 溶液法 5.2 c) による。 

c) ペースト法 乳鉢,乳棒のような器具を用いて微粉とした試料に適量の流動パラフィンを加えて,均

一に混ぜ合わせ,2枚の窓板の間に挟み薄く押し延ばす。 

d) ATR法 粒径が大きいもの及び硬いものは微粉末にしてATR結晶に平らに載せ,粉末上から圧力を

加えてATR結晶に十分に密着させる。ATR附属品はATR結晶の試料接触面積が小さい1回反射形を

用いる。ATR結晶にはダイヤモンドを使用するのが望ましい。 

e) 拡散反射法 試料を粒径数十

下の微粉とし,試料皿に平らに盛る。一般に,正反射光による影

響を減少させるため,臭化カリウム,塩化カリウム又はふっ化カルシウムの粉末と混合する。 

f) 

光音響分光法 5.2 i) による。 

g) 顕微鏡法 5.2 j) による。 

h) GC-IR法 5.2 k) による。 

i) 

LC-IR法 5.2 l) による。 

j) 

TG-IR法 5.2 m) による。 

5.4 

液体 

液体試料の調製方法には,次の方法がある。附属装置などを用いる場合,次によるほか,附属装置の取

扱説明書による。 

a) 液膜法 試料の1〜2滴を2枚の窓板の間に挟み,液層を形成させる。液層を厚くする場合は,適切な

厚さのスペーサーを用いる。 

b) 溶液法 5.2 c) による。 

c) ATR法 プリズムの表面が覆われるように試料を設置する。 

d) GC-IR法 5.2 k) による。 

e) LC-IR法 5.2 l) による。 

5.5 

気体 

ガスセルを10−1 Pa以下に排気するか,不活性ガス又は所定のガスで置換した後,ゲージ圧0.06 kPa〜1.0 

kPaの適切な圧力で試料を導入する。気体中の微量ガス成分を測定する場合には,光路長1 m以上の多重


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反射ガスセルを用いることもある。精確に定量する場合には,セル温度及びセル内圧力を正確にコントロ

ールすることが望ましい。コントロールできない場合は,圧力及び温度を計測し,定量結果に対して別途

求めた補正式によって補正してもよい。 

 

操作方法 

6.1 

装置の設置 

装置の設置条件は,次のとおりとする。ただし,製造業者などによって装置の設置条件が定められてい

る場合にはそれに従う。 

a) 腐食性ガスがなく,ほこりが少ない。 

b) 測定波数範囲において,吸収を示すガスが少ない。 

c) 相対湿度は,60 %以下で,結露しない。 

d) 設置場所の温度は,15 ℃〜30 ℃で,温度変化が少ない。 

e) 直射日光が当たらない。 

f) 

振動が少ない。 

g) 電源の電圧及び周波数の変動が少ない。 

h) 電源に高周波及びスパイク状雑音が少ない。 

i) 

電磁誘導の影響を与える装置が近くにない。 

j) 

設置場所が傾斜していない。 

k) 空調機からの風が直接当たらない。 

l) 

装置周囲に保守のためのスペースを確保する。 

6.2 

測定操作 

装置の取扱いは,取扱説明書などによる。装置の使用に当たっては,あらかじめ定められた手順に従っ

て点検を行い,異常のないことを確認した後,電源を入れ,暖気運転を行って安定化を図る。また,必要

に応じ,標準物質を用いて測定を行い,測定値,繰返し性などが所定の値の範囲内にあることを確認する。

装置の操作条件の設定は,次による。 

6.2.1 

フーリエ変換形赤外分光光度計 

次の事項のうち,必要なものについて装置の調整,条件設定などを行う。 

a) 操作プログラムの起動 操作パラメータには次のものがあり,必要に応じて適切に設定する6)。 

1) 波数範囲 

2) 分解能 

3) 積算回数 

4) 増幅器のゲイン 

5) 検出器 

6) 移動鏡の移動速度 

7) アポダイゼーション 

注6) 操作パラメータの設定が自動化されている装置もある。装置においては,波数範囲,分解能,

積算回数,増幅器のゲイン,検出器,移動鏡の移動速度,アポダイゼーションなどが任意に

設定できる。しかし,正しい測定を行うには,これらの条件を任意に設定するのではなく,

諸条件の間には定まった関係が保たれていなければならない。諸条件のうち幾つかが決まれ

ば,ほかはおのずと決まる。分解能などの主要な条件を設定すれば,ほかの条件は目的に応


20 

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じて自動的に設定されるようになっている装置もある。 

一般に,液体,固体などの試料では,吸収バンドの幅が広いので,分解能を高く設定する

必要がない。気体の場合には,吸収バンドの幅が狭いので,高い分解能が得られるように設

定を行う。 

b) 透過率,透過パーセント,吸光度などの計算 フーリエ変換形赤外分光光度計は,単光束方式7) であ

るため,試料及び対照スペクトルを測定し,試料側及び対照側の両スペクトルの演算処理によって試

料スペクトルを得なければならない。多くの場合,空気中の水蒸気及び二酸化炭素のスペクトル領域

の変動が大きく,試料スペクトルの演算の妨害となるため,分光光度計内部を乾燥空気又は乾燥窒素

で置換することが必要である。 

注7) 分散形赤外分光光度計では,セクターミラーを用いて光束を試料側及び対照側に短時間に相

互に切り換え測定する複光束方式が多い。 

c) スペクトルのモニターへの表示,データの保存及び記録紙への記録 スペクトルを記録紙上に描かせ

る場合は,スペクトルの横軸,縦軸共に,測定目的に応じて自由にスケールを設定することができる

ため,必ずスケールの幅及び単位を,確認及び記録しておかなければならない。 

d) データ処理 4.4による。 

6.2.2 

分散形赤外分光光度計 

次の事項のうち,必要なものについて装置の調整,条件設定などを行う。 

a) 光源電流の確認又は調節 

b) スリットプログラムの設定 

c) 測定波数範囲 

d) 走査速度 

e) 表示・記録計の調整 

f) 

データ処理 4.4による。 

6.3 

分光光度計の補正及び検査方法 

6.3.1 

波数 

装置の波数目盛又は指示値の正確さは,吸収ピークの波数が確定された物質8) の吸収ピークの位置と装

置の指示値とのかたよりから求める。ヘリウム−ネオンレーザー,ダイオードレーザーなどの単色光を用

いてデータサンプリングしている通常のフーリエ変換形赤外分光光度計では,一つの波数で波数の正確さ

が確認されれば全波数領域でも波数の正確さは原理的に保証される。 

注8) 波数の標準となる物質としては,二酸化炭素,水蒸気,ポリスチレン,アンモニア,インデン

などがある。 

6.3.2 

透過%0 

測定波数範囲で,光を透過しない物質を試料として透過率を測定し,透過%0とする9)。表1に透過%0

測定に用いる物質を示す。 

注9) 迷光及び試料の二次放射スペクトルによる誤差の検査。 

 


21 

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表1−透過%0測定用物質 

物質名 

適用波数範囲 cm−1 

厚さ mm 

金属板 

 

4 000 〜 2 000 

− 

ガラス板 

 

2 000 〜 1 000 

ふっ化リチウム 

 

1 000 〜 700 

ふっ化カルシウム 

 

700 〜 400 

 

6.3.3 

透過%100 

試料を入れずに透過率を測定し,透過%100とする。 

6.3.4 

直線性 

赤外域に吸収をもつ成分の濃度が段階的となるように試料を調製し,吸光度と濃度との関係線を作成し,

その直線性を調べる。 

6.3.5 

分解能 

アンモニア,二酸化炭素などを用い,吸収ピークの中から透過%が20 %〜80 %の範囲にある近接した二

つの吸収ピークの分離の度合いから求める。 

6.3.6 

繰返し性 

安定な試料を,同一条件で短い時間内に2回以上測定し,波数又は透過率の測定値のばらつきが規定の

範囲内にあることを確認する。 

 

定性分析 

この通則では,吸収スペクトルを用いる定性分析方法について規定する。赤外吸収スペクトルは分子の

振動に基づくものである。分子内の官能基及び原子団(以下,部分構造という。)は特有の振動モードに基

づく特性吸収バンド(以下,バンドという。)をもつ。分子全体のスペクトルはそれらの吸収の重ね合わせ

として示されるため,スペクトル全体を既知化合物のデータと比較し,その類似性を見い出すことによっ

て分析試料の化学構造を推定することができる。また,混合物の場合は必要に応じて分別操作によって分

画した後,各画分の赤外吸収スペクトルを測定することによって,各成分の官能基又は原子団の判別を行

う。これは波数領域によって,異なる官能基又は原子団が類似した波数にバンドをもつため,解析が困難

なことが多いためである。分別の手段にはクロマトグラフによる分画,沸点,融点などの物理的性質,溶

解度及び化学反応性の違いを利用した方法などが用いられる。定性分析においては,大別して二つの方法,

すなわち,吸収スペクトルの解析によって行う方法と,既知化合物のスペクトル比較による方法とがある。

これらを併用することによって詳細な解析ができる。 

7.1 

吸収スペクトルの解析によって行う方法 

この方法では,バンドの有無によって分析対象物中の官能基及び原子団の存在を推定する。定性分析で

は,部分構造とバンドの既知の関係から推定された種々の部分構造を組み合わせて物質全体の構造を推定

する。部分構造とバンドの吸収位置との関係を集め,図表化したデータベースには,市販されているもの,

Web上に公開されている公共のもの,装置に内蔵されているものなど多数ある。実際の定性分析ではこれ

らの情報に加え,関連化合物のスペクトルとの比較及び他の分析方法による知見も加えて未知化合物の構

造の確認を行う。この方法では次の事項に注意する必要がある。 

a) 定性分析においては官能基及び原子団と特性吸収基との関係を一覧できるデータ集などを用いるが,

対象とする官能基,原子団などの赤外吸収の波数はそれらの近傍に結合している原子,分子などの影


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響によってピーク波数,強度,形状などが異なることを考慮に入れる必要がある。 

b) 一般に,同じ物質でも,測定時の状態が気体,液体(又は溶液)又は固体(又は固溶体)のいずれで

あるかによって,バンドの位置,形状が変化することが多い。これは低圧の気体,無極性溶媒中の希

薄溶液のスペクトルは,分子間相互作用がない本来のスペクトルといえるが,その他の状態における

測定では,分子間相互作用の影響を無視できないためである。例えば,溶液状態の測定では,試料分

子と溶媒分子との相互作用(溶媒効果)のため,試料のバンドの位置がずれることがある。このよう

な場合には,2種類以上の異なる溶媒を用いた溶液についてスペクトルを測定し,検討することが望

ましい。 

c) 回転異性体をもった有機化合物などでは,気体,液体又は固体状態で異性体存在比が変化することが

多く,各状態で測定されたスペクトルに顕著な相違が認められることがあるので注意する必要がある。

また,錯体化合物の場合,固体状態と溶液状態とでは構造が異なることがあるため,両者のスペクト

ルに差異が認められることがある。これらの点については,解析の目的と取り扱う試料の性質とに応

じて注意を払う必要がある。 

d) 吸収スペクトル以外の情報,例えば,物理化学的性質,分析化学的知見などの情報も利用して,吸収

の帰属の妥当性を確認する。 

7.2 

既知化合物のスペクトル比較による方法 

この方法は,測定によって得られたスペクトルを既知化合物のスペクトルと比較することによって解析

を行う。データベース化された大量の既存データが必要となる。吸収スペクトルの解析による方法及び既

知化合物のスペクトル比較による方法のいずれもコンピューターが用いられることが多い。コンピュータ

ーによるデータ比較のためには測定データと既存データとを共通のフォーマットで取り扱えることが望ま

しい。 

 

定量分析 

定量分析には,吸収,ATR,拡散反射スペクトルなどを用いることができる10)。 

定量分析においては,吸収スペクトルを用いることが多いため,この規格では,吸収スペクトルを用い

る方法についてだけ規定する。その他の方法については,個別規格又は装置の取扱説明書による。 

注10) 定量分析に利用できる赤外スペクトルには,吸収,ATR,クベルカ・ムンク変換を行った拡散

反射,金属板上に形成されたフィルム状試料の反射吸収スペクトル,及び高感度反射法で得ら

れたスペクトル,光音響スペクトル,放射スペクトルなどがある。正反射スペクトルは,定量

分析に利用し難い。 

赤外吸収スペクトルを用いる定量分析は,吸光度又はそれに比例した値について,濃度既知の試料と測

定試料の吸収スペクトルとを比較して行う。 

なお,精度よく定量するためには濃度既知の試料と測定試料との間で,表面の粗さ,粒度,厚さなどの

試料性状,手法,分解能などの測定条件を合わせることが必要である。 

8.1 

定量方法 

8.1.1 

検量線法 

濃度既知の検量線用試料を用いて,次の手順で,ある一定の波数における吸光度又はそれに比例する数

値で表したピーク高さ,面積強度などと濃度との関係線を作成して検量線とする。この検量線を用いて,

被検試料の分析種の濃度を算出する。 

a) 吸収バンドの選択 事前に定量に用いる各成分の標準物質のスペクトルを取得し,定量に用いる吸収


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バンドを選択する。吸収強度が大きくシャープで,共存物質による影響が少なく,立体構造及び分子

間相互作用に依存せず,ピーク高さ又は面積強度と濃度との関係線の直線性が高くなるような吸収バ

ンドが望ましい。 

b) ベースラインの決定 ピーク高さは,ベースラインを引きピークとベースラインとの距離から求める。

面積強度の場合もピーク高さと同様であるが,必要に応じて強度が小さくノイズの寄与が大きくなる

吸収バンドの両端を切り捨て,積分範囲を限定する。ベースラインの引き方の良否は検量線の直線性

で評価する。ベースラインの引き方によって,検量線が曲がることがあるので,種々のベースライン

の引き方によって,吸収強度を求め,検量線を作成して比較・検討することが望ましい。主なベース

ラインの引き方を図18に例示する。 

 

 

図18−ベースラインの引き方の一例 

 

c) 定量計算 ランバート・ブーゲの法則及びベールの法則が成り立つ場合には,連立方程式を解くこと

によって多成分系の定量分析を行うことができる。成分数が多いなど手計算が困難な場合はコンピュ

ーターを用いることが多い。また,必要に応じて,波形分離などの4.4の付加機能を用いる。 

なお,標準試料と測定試料とで厚みが異なる試料に検量線法を活用する場合は,共存物質及び立体

構造に依存しない吸収バンドを基準としてピーク高さ又はピーク面積の比率を算出し,定量する方法

もある。 


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8.1.2 

多変量解析法 

検量線法のように特定のピークではなく,多成分の吸収が重なり合っているスペクトルの形状と濃度デ

ータとの関連性から解析する。解析には,測定した波数領域の一部又は全てのスペクトル強度データを用

いる。次に示す方法がある。 

a) 重回帰分析法 標準となる試料のスペクトルデータ群を用い,最小二乗法によって被検試料のスペク

トルデータに関連付ける計算式を求め,各成分の濃度を算出する。 

b) 因子解析法 主成分回帰分析法又はPLS回帰分析法(部分最小二乗法)によってスペクトルデータ群

から行列演算によって,定量に必要なスペクトル情報をもつ少数の因子だけを抽出し,濃度と因子と

の関係を求め,各成分の濃度を算出する。 

8.2 

定量値の表示 

JIS K 0050による。 

 

データの質の保証 

9.1 

一般 

データの質の保証においては,装置の性能確認,試料の適切な調製,定量分析におけるデータの質の管

理を行う必要がある。 

9.2 

装置の診断 

装置の診断項目は,製造業者による。診断項目が定められていない場合は,電源電圧,装置温度,レー

ザー出力などを確認する。 

9.3 

装置の性能確認 

必要に応じて,次に示す全て又は一部の項目について装置の評価を行い,あらかじめ定めた評価基準と

比較することによって性能を確認する。 

a) 波数の正確さ 波数の正確さの確認には,水蒸気,二酸化炭素,アンモニア,インデン,ポリスチレ

ン膜など吸収ピークの波数が確定された物質を用いることができる。波数の正確さは吸収ピークの波

数の文献値と実測値との差によって評価する。 

b) 波数繰返し性 吸収ピークの波数が確定された物質を用いて評価する。2回以上測定し,吸収波数の

差又は標準偏差が規定以内であることを確認する。 

c) 透過%0スペクトルの平たん(坦)度 6.3.2に記載された試料を測定することによって得られる透

過%0のスペクトルの平均2乗根(RMS)を用いて評価する。RMSは,4 000 cm−1〜400 cm−1の間の

いくつかの範囲を用いて算出する。 

d) 透過%100スペクトルの平たん(坦)度 6.3.3に記載された方法によって得られる透過%100のスペ

クトルのRMSによって評価する。RMSは,4 000 cm−1〜400 cm−1の間の幾つかの範囲を用いて算出

する。 

e) 検出器の直線性 透過率が10 %〜90 %の範囲の3種類以上の濃度レベルのニュートラルフィルター

又は適切な試料を測定し,付与された吸光度と実測値とを用いて直線回帰を行い,相関係数の二乗(決

定係数)によって検出器の直線性を評価する。 

f) 

分解 透過率スペクトルにおいて,近接する極大と極小との透過率の差を用いて評価する。厚さ約0.04 

mmのポリスチレン膜を用いる時の評価指標は,2 870 cm−1付近の極小と2 850 cm−1付近の極大との

透過%の差が18 %以上,1 580 cm−1付近の極小と1 583 cm−1付近の極大との透過%の差が12 %以上と

する。 


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g) 透過率繰返し性 3 000 cm−1〜1 000 cm−1の範囲の吸収ピークを複数回測定し,その透過率の標準偏差

によって評価する。 

9.4 

適切な試料の調製 

測定によって得られるスペクトルは,試料の調製方法によって変動することがあるので,測定対象,測

定方法に応じて箇条5に示す方法によって適切に調製する。 

9.5 

定量分析におけるデータの質の管理 

9.5.1 

一般 

定量分析においては,計量計測トレーサビリティが確保された標準物質を用いることが望ましい。計量

計測トレーサビリティが確保された標準物質を用いて分析を行った場合,分析値の不確かさの表記は拡張

不確かさを用いることが適切である。その際包含係数k及び信頼の水準を明記する。化学分析においては,

信頼の水準に95 %を用いるのが一般的であり,有効自由度が十分に大きい場合,kの値は2である。 

9.5.2 

検量線法におけるデータの質の管理 

ある一定の波数における吸光度又はそれに比例する数値で表したピーク高さ,ピーク面積などと濃度と

の関係線を8.1.1の方法に従って求める場合には,データの質の管理として,次に示す検量線の確認,検

出下限の確認,繰返し性の確認を必要に応じて行う。検出下限の確認,検量線の確認,繰返し性の確認は,

あらかじめ定めた評価基準値と比較して行う。基準に達しない場合は,装置の性能,試料の調製方法など

の再検討を行う。 

a) 検量線の確認 検量線の確認は,試料中の測定対象物質の濃度近傍で,数種類の異なる濃度の検量線

作成用試料を測定し,最小二乗法によって回帰分析をしたときの決定係数などによって行う。4種類

以上の異なる濃度で行うことが望ましい。 

b) 検出下限の確認 検出下限の確認は,次のいずれかの値によって行う。 

1) シグナル対ノイズ比に基づく方法 既知の低濃度の分析対象物を含む試料を測定し,SN比が2又

は3となる分析種の量を検出下限とする。 

2) 定量値の標準偏差と検量線の傾きに基づく方法 検出下限(D)を次の式から求める。 

D=3.3 σ/a 

ここに, 

σ: 低濃度試料を測定したときの測定値の標準偏差 

 

a: 検量線の傾き 

c) 繰返し性の確認 繰返し性の確認は,測定対象の典型的な濃度の試料を複数回測定し,その測定値の

変動係数を用いて行う。 

9.5.3 

多変量解析法におけるデータの質の管理 

8.1.2の方法に従ってスペクトルの形状と濃度データとの関係式を多変量解析によって求める場合には,

関係式の妥当性を必要に応じて確認する。妥当性の確認は,濃度が付与された標準物質の測定結果を関係

式に代入して濃度を算出し,算出した濃度と付与された濃度との差によって行う。 

 

10 

安全・保守 

10.1 

安全 

使用上の安全確保のため製造業者の取扱説明書,関連する法令及び規則などに関する知識の熟知,化学

物質の特性の把握,作業者の教育訓練などの対策を施さなければならない。 

特に,次の事項については,十分に注意する必要がある。 

a) 電気 通電状態で高電圧部分及び通電部には手を触れない。また,感電のおそれがあるため絶縁及び


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接地が十分に行われていなければならない。 

b) レーザー 目を損傷するおそれがあるため,レーザー光を直視しないように注意する。 

c) 高圧ガス 高圧ガス保安法及びそれに関連する諸法規の基準に従う。 

d) パージガス 乾燥した空気,窒素ガスなどを用いる。可燃性ガスを用いてはならない。 

e) 有害物質 窓材などに使用されるタリウム,セレン,ひ素化合物,溶媒に用いる各種ハロゲン化物,

二硫化炭素,測定試料などの取扱いについては十分注意する。また,これの廃棄については,適切な

処理を行う。 

警告 有害物質の利用者は,SDS(安全データシート)を参考にして各自の責任において安全及び健

康に対する適切な措置をとらなければならない。 

注記 レーザー取扱いの安全に関しては,JIS C 6802を参照する。 

10.2 

保守 

装置の保守に関しては,6.1の設置条件を満たす場所であることを確認し,点検・保守の項目,内容,期

間などに関する基準11) を設けて装置の点検を行う。 

注11) 製造業者の提供する取扱説明書などによる。 

 

11 

測定結果の整理 

測定結果は,次の事項のうち必要なものについて記録する。 

a) 測定年月日 

b) 測定者名 

c) 試料名 

d) データファイル名 

e) 測定モード/測定方法 

f) 

測定条件 

g) データ処理条件 

h) 対照物質 

i) 

装置の名称及び形式 

 

12 

個別規格に記載すべき事項 

赤外分光分析方法を用いる個別規格には,必要に応じて次の項目を規定する。 

12.1 

定性分析 

a) 試料採取方法 

b) 試料調製方法 

c) 附属装置の種類 

d) 測定条件 

e) データ処理方法 

f) 

対照試料の種類 

g) 分析結果の表示方法 

12.2 

定量分析 

a) 試料採取方法 

b) 分析種の濃度範囲 


27 

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c) 試料調製方法 

d) 附属装置の種類 

e) 測定条件 

f) 

定量方法の種類 

g) 対照試料の種類 

h) 検量線作成方法 

i) 

測定回数 

j) 

分析結果の表示方法 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献 JIS C 6802 レーザ製品の安全基準