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K 0117 : 2000

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本

工業規格である。これによって,JIS K 0117-1990 は改正され,この規格と置き換えられる。


日本工業規格

JIS

 K

0117

: 2000

赤外分光分析方法通則

General rules for infrared spectrophotometric analysis

1.

適用範囲  この規格は,赤外分光光度計を用いて無機物及び有機物の定性分析又は定量分析を行う場

合の通則について規定する(

1

)

(

1

)

赤外線は広義には可視光線とマイクロ波の間の波長をもつ電磁波を指すが,この規格では波数4

000

∼400cm

1

(波長2.5∼25

µm)の範囲とする。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用することによって,この規格の規定の一部を構成する。

これらの引用規格は,その最新版を適用する。

JIS C 6802

  レーザ製品の放射安全基準

JIS K 0050

  化学分析方法通則

JIS K 0211

  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0212

  分析化学用語(光学部門)

JIS K 0215

  分析化学用語(分析機器部門)

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0211JIS K 0212 及び JIS K 0215 によるほか,次

による。

a)

干渉図形 (Interferogram)   マイケルソン干渉計からの信号を光の光路差を横軸に,光の強度を縦軸

にとって示した図形。インターフェログラムともいう。

b)

アポダイゼーション (Apodization)   干渉計が有限の走査距離をもつために生じるスペクトルのひず

みなどを軽減するために,干渉図形に適切な関数を重畳する数学的操作。

c)

クベルカ・ムンク変換 (Kubelka-Munk transformation)   拡散反射法で測定したスペクトルを吸収ス

ペクトルに変換する方法。

d)

正反射法 (Specular reflection method)   試料表面での光の正反射(鏡面反射)を用い,反射光の強度

を測定する方法。反射率は複素屈折率の関数となるので吸収スペクトルに直すにはクラマース・クロ

ニッヒ変換が必要である。

e)

ATR

 (Attenuated total reflection method)   光を臨界角以上の角度で入射したときに起こる高屈折

率物質内部での全反射に伴う,全反射面近傍での低屈折率媒質への電磁波のしみ出しを利用した。高

吸収物質,又は物質表面の測定方法。

f)

電気的直接比法  複光束方式の分光分析機器において,試料側光束の光量と対照側光束の光量の比較

を電気的に行う方法。


2

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4.

装置

4.1

装置の概要  通常用いられている赤外分光光度計の構成の例を図 1に示す。赤外分光光度計には

測光方式によってフーリエ変換方式をもつフーリエ変換形赤外分光光度計及び分散方式をもつ分散形赤外

分光光度計に大別できる。

図 に,フーリエ変換形赤外分光光度計の構成の一例を示す。装置は,光源部,試料部,分光測光部(干

渉計,検出器,増幅器,A/D 変換器,サンプリング信号発生器)

,フーリエ変換部,データ処理部,表示・

記録部などで構成する。

図 に,測光方式として光学的零位法を用いた分散形赤外分光光度計の構成の一

例を示す。装置は,光源部,試料部,分光測光部(減光器,セクターミラー,分光器,検出器,増幅器)

データ処理部(

2

)

,表示・記録部などで構成する。

図 に,電気的直接比法を用いた分散形赤外分光光度計

の構成の一例を示す。装置は,光源部,試料部,分光測光部(セクターミラー,分光器,検出器,増幅器,

演算器)

,データ処理部(

2

)

,表示・記録部などで構成する。

(

2

)

データ処理部は,必す(須)の構成要素ではなく,これを備えていない装置もある。

図 1  フーリエ変換形赤外分光光度計の構成の一例

図 2  分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の構成の一例

図 3  分散形赤外分光光度計(電気的直接比法)の構成の一例

4.2

赤外分光光度計

4.2.1

フーリエ変換形赤外分光光度計

a)

光源部  光源部は光源用放射体,光源用電源などで構成する。

1)

光源用放射体は,炭化けい素,ニッケルクロム合金,セラミックなどを放射体材とし,目的とする

赤外線を安定に放射するもの。


3

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2)

光源用電源は,光源に安定した電圧及び電流を供給する機能をもつもの。

b)

試料部  試料部は,試料セル,試料ホルダー,附属装置を取り付けることのできる試料ホルダーなど

で構成する。フーリエ変換形赤外分光光度計は,基本的には単光束分光光度計であるため,1 個の試

料ホルダーを光路中に設置する。複光束赤外分光光度計の場合には,試料用光路及び対照試料用光路

にそれぞれ試料ホルダーを設置する。

c)

分光測光部  分光測光部は,干渉計,検出器,増幅器,A/D 変換器,サンプリング信号発生器などで

構成する。

1)

干渉計  一般に,マイケルソン干渉計を用いる。図 にマイケルソン干渉計の光学系の一例を示す。

2)

検出器  入射光をその強度に応じた電気信号に変換するためのもので,焦電形検出器,半導体検出

器,光音響検出器などを用いる。

3)

増幅器  検出器からのアナログ信号を,以降の信号処理系において処理しやすい大きさに増幅する

もの。

4)

A/D

変換器  増幅器からの信号をコンピュータのメモリ上に格納するために,アナログ信号をデジ

タル信号に変換する機能をもつもの。

5)

サンプリング信号発生器  干渉図形の測定におけるサンプリングパルスとして用いる。通常ヘリウ

ム−ネオンレーザが用いられる。

図 4  マイケルソン干渉計の光学系の一例

d)

フーリエ変換部  フーリエ変換部は,デジタル化された干渉図形を,スペクトルに変換するためのフ

ーリエ変換機能をもつものとする。

e)

データ処理部  データ処理部は,得られたデータを処理し,透過率・吸光度変換,ピーク検出,定量

計算,差スペクトル計算,ベースライン補正,クベルカ・ムンク変換,クラマース・クロニッヒ変換,

スペクトル・データ検索などを行うものとする。

f)

表示・記録部  表示記録部は,分析結果,データ処理結果などを CRT に表示し,また,記録計に表示,


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記録するための部分で,CRT,記録計などで構成する。

4.2.2

分散形赤外分光光度計

a)

光源部  4.2.1a)による。

b)

試料部  4.2.1b)による。

ただし,分散形赤外分光光度計は,通常,複光束分光光度計であり,試料用光路及び対照試料用光

路にそれぞれ試料ホルダーを設置する。

c)

分光測光部  分光測光部は,減光器,分光器,検出器,増幅器,演算器などで構成する。

1)

減光器  光学的零位法において,減光のために使用される光学素子。対照光束中に設置され,試料

を通過した光束の強度と対照試料を通過した光束の強度とが等しくなるように調節するもの。

2)

セクターミラー  試料光束と対照光束を切り換えるための回転鏡。

3)

分光器  スリット,ミラー,分散素子などからなる光学系とする。分散素子にはプリズム,回折格

子,又はそれらを組み合わせた光学系が用いられる。通常は回折格子(

3

)

を用いる。

(

3

)

回折格子形分光器では,高次光を分離するため,通常,波数選択フィルターを組み合わせる。

4)

検出器  入射光をその強度に応じた電気信号に変換するためのもので,真空熱電対,焦電形検出器,

半導体検出器などを用いる。

5)

増幅器  検出器からの信号を,以降の信号処理系において,処理しやすい大きさに増幅する機能を

もつもの。光学的零位法では,前置増幅器,主増幅器,同期整流器,変調器及び電力増幅器からな

る。また,電気的直接比法では,前置増幅器,主増幅器及び同期整流器で構成する。

6)

演算器  電気的直接比法に用いる信号処理系であり,試料光束による電気信号と対照試料による電

気信号とを分離し,両者の信号強度比を算出するもの。

分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の光学系の一例を

図 に示す。


5

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図 5  分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の光学系の一例

d)

データ処理部  透過率の吸光度への変換,検量線の作成,差スペクトルの演算などの機能をもつもの。

e)

表示・記録部  4.2.1f)による。

4.3

附属装置  附属装置には次のものがあり,必要に応じて使用する。

a)

錠剤成形器  透過測定を行うため,粉末とした試料を臭化カリウムなどのハロゲン化アルカリと混合

し,加圧・成形し,錠剤とする装置。

b)

偏光装置  偏光測定を行うため,赤外光に偏光特性をもたせる装置。

c)

液体セル  液体試料の測定を行うために使用するセル。

d)

ガスセル  ガス試料の測定を行うために使用するセル。

e)

多重反射ガスセル  低濃度のガス成分を測定するために,多重反射を用いて光路長を長くしたガスセ

ル。

f)

温度可変セル  種々の温度における試料の赤外吸収を測定するため,試料の温度を変えることを可能

としたセル。

g)

ATR

測定装置  試料表面の測定又は非常に強い吸収をもつ試料の測定をするために用いる装置。

h)

拡散反射測定装置  微粉として試料を錠剤を作成することなくそのままの形で測定するために用いる

装置。

i)

反射測定装置  反射スペクトルを測定するための装置で,次のものがある。

1)

反射測定装置  正反射スペクトル,赤外反射物質表面の膜などを反射吸収法によって測定するため

の装置。


6

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2)

高感度反射測定装置  反射率が高く平滑な試料表面の薄膜などを,高感度で測定するための反射測

定装置。

j)

放射測定装置  加熱された試料のふく(輻)射スペクトルを測定する装置。

k)

光音響測定装置  赤外吸収が非常に強く他の測定方法で測定することが困難な試料を測定するために

光音響検出器を使用した装置。

l)

顕微赤外測定装置  試料の微少部分を測定する装置。光路及び対物鏡の切替えによって透過,反射,

ATR

及び高感度反射測定が可能な装置もある。

m)

ガスクロマトグラフ  ガスクロマトグラフで分離された成分の分析を赤外吸収を用いて行う装置。

n)

液体クロマトグラフ  液体クロマトグラフで分離された成分の分析を赤外吸収を用いて行う装置。

o)

熱重量測定装置  熱重量測定装置からの発生ガスの成分の分析を赤外吸収を用いて行う装置。

4.4

付加機能  付加機能には次のようなものがあり,必要に応じて選択して使用する。

a)

スペクトルの拡大縮小表示  CRT 上で,スペクトルの任意の部分を拡大又は縮小表示させる機能。

b)

スムージング  ノイズを軽減させるために,高周波成分を除去しピーク形状を滑らかにする機能。

c)

ピーク検出  スペクトルのピーク位置を自動的に検出する機能。

d)  ATR

補正  ATR 測定装置を用いて測定したスペクトルのピーク強度の波数依存性を補正する機能。

e)

クラマース・クロニッヒ変換  反射測定装置を使用して測定した正反射スペクトルを吸収スペクトル

に変換する機能。

f)

軸単位の変換  スペクトルの軸の単位を,必要に応じて種々の単位に変換する機能。

1)

Y

軸単位の変換  Y 軸を透過パーセント,吸光度単位などに変換する機能。

2)

X

軸単位の変換  X 軸を波数,波長単位などに変換する機能。

g)

カーブフィッティング  重畳したピークを,複数のピークに分離する機能。

h)

面積計算  波数,波長などの範囲を指定して,ピークの面積を計算する機能。

i)

微分計算  微分変換スペクトルを作成する機能。

j)

ベースライン補正  スペクトルのベースラインの傾き及び湾曲を補正する機能。

k)

差スペクトル  二つのスペクトルの差スペクトルを計算する機能。

l)

スペクトルデータ検索  得られたスペクトルを,スペクトルデータベースの既知のスペクトルと比較

し,同定を行う機能。

m)

データベース作成  スペクトルデータ検索のためのデータベースを作成する機能。

n)

定量計算  スペクトルの吸収の強さから成分濃度を計算する機能。

o)

データの保存  測定結果又はデータ処理の結果を保存する機能。

5.

試料調製方法  固体,粉体,液体及び気体試料の測定における試料調製方法の一般的事項について規

定する。ただし,個別規格に規定されている場合には,それによる。

附属装置などを用いて,反射,放射,光音響,TG-IR,GC-IR,LC-IR などの測定を行う場合の試料調製

については個別規格によるか,装置の取扱説明書による。

5.1

一般的注意  赤外分光分析を行う際には,分析の目的,分析試料の状態,分析手法,使用測定附属

装置の性能など種々の条件を考慮して,

目的に合った結果が得られる試料調製方法を選択する必要がある。

定性分析においては,最も強い吸収バンドの透過パーセントが数%程度になるように試料濃度を調節する

ことが望ましい。定量分析においては,測定しようとする吸収バンドの吸光度と試料濃度との関係が,直

線となる範囲に入るよう,適切な試料濃度,試料の厚さ又はセルの光路長を選ぶことが望ましい。


7

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5.2

固体  固体試料の調製には,次の方法がある。

a)

フィルム法

1)

固体試料をメタノール,アセトン,クロロホルムなどの揮発性が高く,溶解性の大きい溶媒に溶解

し,その溶液を赤外透過性材料の板上に滴下し,広く拡げ,溶媒を蒸発させて薄膜とする。

2)

熱に安定で熱可塑性の固体試料は 2 枚の加熱板に試料を挟み,加圧・成形して薄膜とする。

3)

試料の状態をできるだけ変えずに測定したい場合,ミクロトームなどを用いて薄膜切片とする。

4)

ゴム状物質,発泡スチロールのように弾力のある試料の場合は,ダイヤモンド,アンビルセルを用

いて圧力をかけたまま薄膜の状態に保って測定する。

b)

錠剤法  塊状,か(顆)粒状の試料は,乳鉢,粉砕機などを用いて試料を微粉化し,微粉試料を臭化

カリウムなどの粉末と混合し,錠剤成形器を用いて,常圧又は減圧下で加圧・成形し,透明な錠剤と

する。

c)

溶液法  試料を二硫化炭素,シクロヘキサンなどの赤外吸収が少ない溶媒に溶解し,溶液とする。

d)

その他の方法  附属装置などを用いる場合には,次によるほか,附属装置の取扱説明書による。

1)

ATR

法  粉末になりにくく,適切な溶媒がない物質(例えば,ゴム状物質),厚い板状試料上の表

面処理層などの測定には,試料表面を十分平滑にし,ATR プリズムに試料を載せ,試料の裏面から

圧力を加えてプリズムに均一に密着させる。また,試料の屈折率を考慮し,適切なプリズム材質,

赤外光の入射角を選ぶ必要がある。対照試料としてはプリズムだけを用いる。

2)

正反射法  試料の照射面を平滑にする。また,試料の裏面からの反射が試料スペクトルに影響を与

えないよう厚い試料を用いるか,適切な試料ホルダーを用いるなどの考慮が必要である。対照試料

としてはステンレス板,反射鏡が最も適している。

3)

高感度反射吸収法  金属板など,高反射率の基板上の薄膜(約 100nm 以下)試料の測定に用いる。

基板金属の平面性を考慮して,赤外光の照射面積をできる限り大きくとるようにする。適切な赤外

光入射角は基板金属の種類や表面状態によって異なるので,幾つかの入射角で測定を行う。対照試

料としては,測定試料の薄膜の付いていない金属板が望ましいが,それが得られないときは,ステ

ンレス鋼板又は反射鏡を用いる。

4)

放射法  試料の平面性の影響は少ないが,試料が厚すぎると自己吸収が起こり,スペクトルに歪み

が生じるので,試料の厚さを十数

µm 以下にする。試料ホルダーなどからの放射が重ならないよう,

反射率の高い金属の上に試料を置く。スペクトル強度は,試料と同一温度の黒体放射を測定して強

度補正する必要がある。

5)

光音響分光法  試料の形態の影響は少ないが,セル内に空間が多いとスペクトルの SN 比が悪くな

るので試料をセルに密に充てんする必要がある。試料の量が少ない場合には,臭化カリウムなどの

マトリックス粉末を用いてデッドスペースを埋める。

6)

GC-IR

法  試料の溶解に使用する溶媒は,試料の極性に合った溶解性の高いものを選択することが

望ましい。

7)

LC-IR

法  LC に用いる移動相としての溶媒は,赤外吸収が少なく,試料の極性に合った溶解性の

高いものを選択することが望ましい。

8)

TG-IR

法  試料が塊状又はか粒状の場合,より正確な測定を行うために微粉末にする。

5.3

粉体  粉体試料の調製方法には,次の方法がある。

a)

錠剤法  微粉とした試料を 5.2b)と同様に処理し,錠剤とする。

b)

溶液法  5.2c)による。


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c)

ペースト法  微粉とした試料を流動パラフィンと練り合わせ,2 枚の窓板の間に挟み薄く押し延ばす。

d)

その他の方法  附属装置などを用いる場合,次によるほか,附属装置の取扱説明書による。

1)

拡散反射法  試料を粒径数十

µm 以下の微粉とし,試料皿に平らに盛る。一般に,正反射光による

影響を減少させるため,臭化カリウム,塩化カリウム又はふっ化カルシウムの粉末と混合する。

2)

光音響分光法  5.2d)5)による。

3)

GC-IR

法  5.2d)6)による。

4)

LC-IR

法  5.2d)7)による。

5)

TG-IR

法  5.2d)8)による。

5.4

液体  液体試料の調製方法には,次の方法がある。

a)

液膜法  試料の 1∼2 滴を 2 枚の窓板の間に挟み,液層を形成させる。液層を厚くする場合は,適切な

厚さのスペーサーを用いる。

b)

溶液法  5.2c)による。

c)

その他の方法  附属装置などを用いる場合,次によるほか,附属装置の取扱説明書による。

1)

ATR

法  プリズムの表面が覆われるように試料を入れる。

2)

GC-IR

法  5.2d)6)による。

3)

LC-IR

法  5.2d)7)による。

5.5

気体  ガスセルを 10

1

Pa

以下に排気するか,不活性ガス又は所定のガスで置換した後,0.06∼1.0kPa

の適切な圧力で試料を導入する。気体中の微量ガス成分を測定する場合には,光路長 1m 以上の多重反射

ガスセルを用いることもある。

6.

操作方法

6.1

装置の設置  装置の設置条件は,次のとおりとする。ただし,製造業者などによって装置の設置条

件が定められている場合にはそれに従う。

a)

腐食性ガスがなく,ほこりが少ない。

b)

測定波数範囲において,吸収を示すガスが少ない。

c)

相対湿度は,60%以下で,結露しない。

d)

設置場所の温度は,15∼30℃で,温度変化が少ない。

e)

直射日光が当たらない。

f)

振動が少ない。

g)

電源の電圧及び周波数の変動が少ない。

h)

電源に高周波及びスパイク状雑音が少ない。

i)

電磁誘導の影響を与える装置が近くにない。

j)

設置場所が傾斜していない。

k)

空調機からの風が直接当たらない。

l)

装置周囲に保守のためのスペースを確保する。

6.2

測定操作  装置の取扱いは,取扱説明書などによる。装置の使用に当たっては,あらかじめ定めら

れた手順に従って点検を行い,異常のないことを確認した後,電源を入れ,暖気運転を行って安定化を図

る。また,必要に応じ,標準物質を用いて測定を行い,測定値,繰返し性などが所定の値の範囲内にある

ことを確認する。装置の操作条件の設定は,次による。


9

K 0117 : 2000

6.2.1

フーリエ変換形赤外分光光度計  次の事項のうち,必要なものについて装置の調整,条件設定など

を行う。

a)

操作プログラムの起動  操作パラメータには次のものがあり,必要に応じて適切に設定する(

4

)

1)

波数範囲

2)

分解能

3)

積算回数

4)

増幅器のゲイン

5)

検出器

6)

移動鏡の移動速度

7)

アポダイゼーション関数

(

4

)

操作パラメータの設定が自動化されている装置もある。

b)

透過率,透過パーセント,吸光度などの計算(

5

)

(

5

)

分光器の形式が単光束方式か,複光束方式かによって操作は異なる。

c)

スペクトルの CRT 表示,データの保存,記録紙への記録

d)

データ処理  4.4 による。

6.2.2

分散形赤外分光光度計  次の事項のうち,必要なものについて装置の調整,条件設定などを行う。

a)

光源電流の確認又は調節

b)

スリットプログラムの設定

c)

測定波数範囲

d)

走査速度

e)

表示・記録計の調整

f)

データ処理  4.4 による。

6.3

分光光度計の補正及び検査方法  次の項目について,補正又は性能の確認を行う。

6.3.1

波数  装置の波数目盛又は指示値の正確さは,吸収ピークの波数が確定された物質(

6

)

の吸収ピーク

の位置と装置の指示値とのかたよりから求める。ヘリウム−ネオンレーザを用いてデータサンプリングし

ている通常のフーリエ変換形赤外分光光度計では,一つの波数で波数の正確さが確認されれば全波数領域

でも波数の正確さは原理的に保証される。

(

6

)

波数の標準となる物質としては,二酸化炭素,水蒸気,ポリスチレン,アンモニア,イン

デンなどがある。

6.3.2

透過%0  測定波数範囲で,光を透過しない物質を試料として透過率を測定し,透過%0 とする(

7

)

表 に透過%0 測定に用いる物質を示す。

(

7

)

迷光及び試料の二次放射スペクトルによる誤差の検査。

表 1  透過%0 測定用物質

物質名

適用波数範囲 (cm

1

)

厚さ (mm)

金属板 4

000

∼2 000

ガラス板 2

000

∼1 000

2

ふっ化リチウム

1 000

∼ 700

5

ふっ化カルシウム

    700

∼ 400

5

6.3.3

透過%100  試料を入れずに透過率を測定し,透過%100 とする。


10

K 0117 : 2000

6.3.4

直線性  赤外域に吸収をもつ成分の濃度が段階的となるように試料を調製し,吸光度と濃度との関

係線を作成し,その直線性を調べる。

6.3.5

分解能  アンモニア,二酸化炭素などを用い,吸収ピークの中から透過パーセント 20∼80 %の範

囲にある近接した二つの吸収ピークの分離の度合から求める。

6.3.6

繰返し性  安定な試料を,同一条件で短い時間内に 2 回以上測定し,波数又は透過率の測定値のば

らつきが規定の範囲内にあることを確認する。

7.

定性分析  この通則では,吸収スペクトルを用いる定性分析方法について規定する。

赤外分光分析による定性分析においては,吸収スペクトルの解析によって行う方法と既知化合物のスペ

クトルとの比較による方法がある。これらを併用することによってより詳細な解析ができる。

吸収スペクトルの解析による方法は,官能基及び原子団は,特定の波数範囲に吸収をもち,測定された

吸収スペクトルは,それらの吸収の重ね合わせとして示されることから,特定波数領域における吸収(特

性吸収バンド)の有無によって解析対象物中の官能基及び原子団の存在を推定する。

この方法による化学物質の確認又は官能基,原子団などの情報による部分構造の推定は,次の事項に注

意して行う。

a)

特性吸収表,データ集(電子媒体に記録されているものもある)などを用いて解析を行う。

対象とする官能基,原子団などの赤外吸収は,それらの近傍に結合又は隣接している原子,分子な

どの影響によって,ピーク位置,強度,形状などが変化するため,これらに注意して推定を行う。

b)

化学的性質,物理化学的性質,分析化学的知見などの情報を利用する。

c)

混合物の定性分析を赤外吸収スペクトルの解析だけで行うことは困難である。この場合には,混合物

成分のクロマトグラフによる単離,他の分析化学的手段によって得られた情報などを総合して,解析

を行う。

化合物の確認又は部分構造から得られた推定化合物の確認は,同様な条件で測定した吸収スペクトルと

比較するか,又は,既知の純粋な化合物,製品などの標準スペクトルと比較して行う。

多くのスペクトルデータと比較し,化合物の推定を行う場合は,これらの操作をコンピュータによって

行うことが多い。

8.

定量分析  定量分析には,吸収,ATR,拡散反射スペクトルなどを用いることができる(

8

)

定量分析においては,吸収スペクトルを用いることが多いため,この規格では,吸収スペクトルを用い

る方法についてだけ規定する。その他の方法については,個別規格又は装置の取扱説明書による。

(

8

)

定量分析に利用できる赤外スペクトルには,吸収,ATR,クベルカ・ムンク補正を行った拡散

反射,金属板上に形成されたフィルム状試料の反射吸収スペクトル及び高感度反射法で得られ

たスペクトル,光音響,放射スペクトルなどがある。正反射スペクトルは,定量分析に利用し

難い。

赤外吸収スペクトルを用いる定量分析は,濃度既知の試料の吸収強度と測定試料の吸収強度とを比較し

て行う。

8.1

定量方法  定量方法は,次による。

8.1.1

検量線法  濃度既知の検量線用試料を用いて,ある一定の波数(

9

)

における吸光度又はそれに比例す

る数値で表したピーク高さ,面積強度などと濃度との関係線を作成して検量線とする。この検量線を用い

て,被検試料の分析対象成分の濃度を算出する。


11

K 0117 : 2000

ランバート・ブーゲ・ベアーの法則が成り立つ場合には,連立方程式を解くことによって多成分系の定

量分析を行うことができる。

(

9

)

吸収強度が大きく,共存物質による影響が少なく,検量線の曲がりが少ない吸収ピークを選ぶ

こと。また,基準線の引き方によって,検量線が曲がることがあるので,種々の基準線の引き

方によって,吸収強度を求め,検量線を作成して比較・検討することが望ましい。

8.1.2

多変量解析法  解析には,測定した波数領域の一部又はすべてのスペクトル強度データを用いる。

a)

重回帰分析法  標準となる試料のスペクトルデータ群を用い,最小二乗法によって被検試料のスペク

トルデータに関連づける計算式を求め,各成分の濃度を算出する。

b)

因子解析法  主成分回帰分析法又は,PLS 回帰分析法によってスペクトルデータ群からマトリックス

変換によって,定量に必要なスペクトル情報をもつ少数の因子だけを抽出し,ノイズなどによる不必

要な情報を除き,濃度と因子との関係を求め,各成分の濃度を算出する。

8.2

定量値の表示  JIS K 0050 による。

9.

安全・保守

9.1

安全  使用上の安全確保のため製造業者の取扱説明書,関連する法令及び規則などに関する知識の

熟知,化学物質の特性の把握,作業者の教育訓練などの対策を施さなければならない。

特に,次の事項については,十分に注意する必要がある。

a)

電気  通電状態で高電圧部分や通電部には手を触れない。また,絶縁及び接地が十分に行われていな

ければならない。

b)

レーザ  レーザ光が直接目に入らないように注意する。

c)

高圧ガス  高圧ガス取締法及びそれに関連する諸法規の基準に従う。

d)

液化窒素  必ず保護具を着用して取り扱う。また,高濃度のガスを吸い込まないよう注意する。

e)

有害物質  窓材などに使用されるタリウム,セレン,ひ素化合物,溶媒に用いる各種ハロゲン化物,

二硫化炭素,測定試料などの取扱いについては十分注意する。また,これの廃棄については,適切な

処理を行う。

備考  レーザ取扱いの安全に関しては,JIS C 6802 を参照する。

9.2

保守  装置の保守に関しては,6.1 の設置条件を満たす場所であることを確認し,点検・保守の項目,

内容,期間などに関する基準(

10

)

を設けて装置の点検を行う。

(

10

)

製造業者の提供する取扱説明書などによる。

10.

測定結果の整理  測定結果には,次の事項のうち必要なものについて記録する。

a)

測定年月日

b)

測定者名

c)

試料名

d)

データファイル名

e)

測定モード/測定方法

f)

測定条件

g)

データ処理条件

h)

対照物質

i)

装置の名称及び形式


12

K 0117 : 2000

11.

個別規格に記載すべき事項  赤外分光分析方法を用いる個別規格には,必要に応じて次の項目を規定

する。

11.1

定性分析

a)

試料採取方法

b)

試料調製方法

c)

附属装置の種類

d)

測定条件

e)

データ処理方法

f)

対照試料の種類

g)

分析結果の表示方法

11.2

定量分析

a)

試料採取方法

b)

分析対象成分の濃度範囲

c)

試料調製方法

d)

附属装置の種類

e)

測定条件

f)

定量方法の種類

g)

対照試料の種類

h)

検量線作成方法

i)

測定回数

j)

分析結果の表示方法


13

K 0117 : 2000

JIS K 0117

(赤外分光分析方法通則)原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

川  瀬      晃

千葉大学教育学部(セイコー電子工業株式会社科学機器事業部)

大  嶋  清  治

工業技術院標準部材料規格課

馬  場  秀  俊

通商産業省計量行政室

中  永  泰  介

工業技術院物質工学工業技術研究所

石  橋  無味雄

厚生省国立衛生試験所

山  村  修  蔵

財団法人日本規格協会

嶋  貫      孝

社団法人日本分析化学会

高  野  虞美子

日本試薬連合会(東京化成工業株式会社)

岩  岡  貞  樹

三共株式会社総合研究所

小  池  康  夫

三菱化学株式会社横浜総合研究所

山  科      清

株式会社住化分析センター千葉事業所

市  村  克  彦

株式会社島津製作所分析機器事業部

名  越  利  之

日本分光株式会社第一技術部

村  石  修  一

日本電子株式会社分析機器技術本部

佐  藤  栄  司

株式会社パーキンエルマージャパン応用技術部

右  近  寿一郎

株式会社堀場製作所生産本部

林      信一朗

ニコレージャパン株式会社

伊  藤  尚  美

社団法人日本分析機器工業会(株式会社島津製作所分析機器事業部)

宮  川  清  孝

社団法人日本分析機器工業会

(事務局)

戸野塚  房  男

社団法人日本分析機器工業会

なお,所属は委員会発足当時の名称を用いた。

◎:小委員会委員長を兼ねる。

○:小委員会委員を兼ねる。