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K 0116

:2014

(1)

目  次

ページ

1

  適用範囲  

1

2

  引用規格  

1

3

  用語及び定義  

1

4

  ICP 発光分光分析  

4

4.1

  装置の構成  

4

4.2

  附属装置  

8

4.3

  水,試薬類及びガス  

8

4.4

  サンプリング及び試料溶液の調製 

9

4.5

  検量線作成用溶液,検量線校正用溶液及び検量線用ブランク溶液の調製  

11

4.6

  測定条件の設定  

12

4.7

  定量分析  

13

4.8

  データの質の管理(精確さの管理)  

18

4.9

  装置の設置条件  

21

4.10

  安全  

22

4.11

  分析結果に記載すべき事項  

23

5

  スパーク放電発光分光分析  

23

5.1

  装置の構成  

23

5.2

  水,試薬及びガス  

24

5.3

  試料のサンプリング及び調製  

24

5.4

  対電極  

25

5.5

  測定条件の設定  

25

5.6

  定量分析  

25

5.7

  装置の設置条件  

26

5.8

  安全  

26

5.9

  分析結果に記載すべき事項  

27

6

  個別規格で記載すべき事項  

27


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まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,一般社団法人日本

分析機器工業会(JAIMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業

規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業

規格である。

これによって,JIS K 0116:2003 は改正され,この規格に置き換えられた。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


日本工業規格

JIS

 K

0116

:2014

発光分光分析通則

General rules for atomic emission spectrometry

適用範囲 

この規格は,発光分光分析装置を用いて定量分析を行う場合の通則について規定する。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS K 0050

  化学分析方法通則

JIS K 0211

  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0212

  分析化学用語(光学部門)

JIS K 0215

  分析化学用語(分析機器部門)

JIS K 0216

  分析化学用語(環境部門)

JIS K 0553

  超純水中の金属元素試験方法

JIS K 0557

  用水・排水の試験に用いる水

JIS K 0970

  ピストン式ピペット

JIS K 1105

  アルゴン

JIS K 8001

  試薬試験方法通則

JIS Z 8402-1

  測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第 1 部:一般的な原理及び定義

ISO 3696

,Water for analytical laboratory use−Specification and test methods

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0050JIS K 0211JIS K 0212JIS K 0215JIS K 0216

JIS K 0553

JIS K 0557JIS K 1105JIS K 8001 及び JIS Z 8402-1 及び ISO 3696 によるほか,次による。

3.1 

発光分光分析(atomic emission spectrometry)

試料に含まれる測定対象元素を ICP(3.20 参照)

,MIP(3.21 参照)

,スパーク放電などによって気化励

起し,得られる原子スペクトル線の発光強度を測定することによって定量分析を行う方法。また,波長を

同定することによって定性分析を行うこともできる。

3.2 

シーケンシャル形分光器(sequential scanning spectrometer)

入射光を分光し,1 本のスペクトル線の強度,又は一連のスペクトル線の強度を順次測定する装置。


2

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3.3 

同時測定形分光器(simultaneous spectrometer)

入射光を分光し,複数のスペクトル線の強度を同時に測定する装置。

3.4 

積分時間(integration time)

発光強度を一定時間積分して測定する場合の測定時間。

3.5 

分析用試料(analytical sample)

測定にかけられる状態に調製した試料。

3.6 

分析試料(analytical portion)

分析用試料から取り分けた,1 回の分析のために用いられる試料。

3.7 

検量線作成用試料(sample for calibration graph)

検量線を作成するために既知濃度の測定対象元素を含む試料。

3.8 

検量線作成用溶液(solution for calibration graph)

検量線を作成するために既知濃度の測定対象元素を含む溶液。

3.9 

検量線校正用試料(sample for correction of calibration graph)

一定時間又は一定数の試料を測定するごとに検量線を校正するために使用する試料。

3.10 

検量線校正用溶液(solution for correction of calibration graph)

一定時間又は一定数の試料を測定するごとに検量線を校正するために使用する溶液。

3.11 

空試験溶液(blank solution)

測定対象元素又は干渉元素の分析室環境,器具類及び試薬類からの汚染の有無を調べるため,分析操作

に使用するガラスなどの器具類及び装置との接触,並びに溶媒,試薬及び内標準元素の添加を含めて,試

料と全く同様に処理された水,又は他の成分が試料と同一で測定対象元素を含まない溶液。操作ブランク

ともいう。

3.12 

検量線用ブランク溶液(calibration blank solution)

測定対象元素の濃度がゼロで検量線作成用溶液と同じ組成からなる溶液。

3.13 

試料溶液(sample solution)

気体,液体又は固体の試料を前処理して測定にかけられるように調製した溶液。

3.14 

検出下限(detection limit)

試料中に存在する測定対象元素の検出可能な最低の濃度(量)

。バックグラウンド強度の標準偏差の 3

倍の信号を与える濃度とする。検出限界ともいう。


3

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3.15 

装置検出下限,ILOD(instrument limit of detection)

検量線用ブランク溶液を連続 10 回測定したときに得られる信号の標準偏差の 3 倍の信号を与える濃度。

装置検出限界ともいう。

3.16 

方法定量下限,MLOQ(method limit of quantification)

空試験溶液を連続 10 回測定したときに得られる信号の標準偏差の 14.1 倍の信号を与える濃度。

3.17 

短時間安定性(short term stability)

同じ試料を短時間に繰り返し測定したときの発光強度又は強度比の相対標準偏差。

3.18 

長時間安定性(long term stability)

同じ試料を長時間に繰り返し測定したときの発光強度又は強度比の相対標準偏差。

3.19 

分解能(resolution)

分光器が相接近した 2 本のスペクトル線を分離できる能力。

3.20 

ICP

(inductively coupled plasma)

ラジオ波領域の高周波電力を誘導結合させて発生させるプラズマ。誘導結合プラズマの略称。

3.21 

MIP

(microwave induced plasma)

マイクロ波領域の高周波電力によって誘導して発生させるプラズマ。マイクロ波誘導プラズマの略称。

3.22 

トーチ(torch)

プラズマの点灯及び維持に必要なガス流を供給するために使用する管。

3.23 

ネブライザー(nebulizer)

試料溶液を微細な液滴とする器具。

3.24 

スプレーチャンバー(spray chamber)

粒径の大きな液滴を分離除去し,ごく微細な液滴だけを発光部に導入する器具。

3.25 

プラズマガス(plasma gas, coolant gas)

ICP におけるプラズマの主形成ガス。トーチの冷却を兼ねて,トーチの最外周管を通して供給する。冷

却ガスともいう。

3.26 

補助ガス(auxiliary gas)

ICP において,プラズマをトーチに接触するのを防ぐため,補助的に使用するガス。トーチの中間の管

を通して供給する。


4

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3.27 

キャリヤーガス(carrier gas)

ICP において,試料をプラズマに導入するために使用するガス。トーチの中心の管を通して供給する。

3.28 

バックグラウンド等価濃度,BEC(background equivalent concentration)

バックグラウンド強度に等しい信号強度を与える測定対象元素の濃度。

3.29 

スパーク放電(spark discharge)

点火回路によって約 10 kV 程度の高電圧を対電極と試料電極との間に印加して絶縁破壊を生じさせるこ

とによって,主放電回路のコンデンサに蓄えられた電荷を電極間に瞬時に流して起こす放電。この瞬間的

な放電のピーク電流は,数十から 200 A(アンペア)に達し,これによって試料が励起発光する。

3.30 

スパーク光源(spark light source)

スパーク放電によって試料が励起・発光したもの。

3.31 

雰囲気ガス(atmospheric gas)

放電の安定化,試料履歴による影響の除去,空気中の酸素による吸収,バンドスペクトルの除去などの

目的でスパーク放電の電極周囲に流すガス。目的に応じてアルゴン若しくは窒素,又はこれらのガスにそ

れぞれ酸素を混合したガスを使用する。

3.32 

予備放電時間(pre-burn time, pre-discharge time)

スパーク放電発光分光分析において,放電開始から発光強度が安定するまでの間,測光しない期間とし

て設定する時間。

3.33 

時間分解測光法(time resolved photometric method)

放電パルスごとに,かつ,時間分解したときに得られる光電電流を積分し,その個々の積分値を統計処

理し解析して濃度を求める方法。 

4 ICP

発光分光分析 

4.1 

装置の構成 

ICP 発光分光分析装置は,励起源部,試料導入部,発光部,分光測光部,並びにデータ処理部及び制御

部から構成する。装置の基本構成の一例を,

図 に示す。

なお,MIP 発光分光分析装置においても,同様の装置の構成となる。

図 1ICP 発光分光分析装置の構成(例) 

励起源部

発光部

分光測光部

試料導入部

データ処理部及び制御部


5

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4.1.1 

励起源部 

励起源部は,

発光部を維持するために電気エネルギーを供給・制御する電源回路及び制御回路からなる。

4.1.2 

試料導入部 

試料導入部は,発光部に試料を導入するための部分で,ネブライザー及びスプレーチャンバーで構成す

る。試料導入部の構成の一例を,

図 に示す。耐ふっ化水素酸材料を施したものもある。

図 2−試料導入部(例) 

4.1.3 

発光部 

発光部は,試料中の測定対象元素を励起・発光させるための部分で,トーチ及び誘導コイルからなる(

3

参照)

。トーチは三重管からなり,中心の管から試料が導入される。発光部としては ICP が用いられ,プ

ラズマを形成するためのガスにはアルゴンを用いる。

なお,ICP の代わりに MIP が用いられることもあり,その場合には構造も異なり,また,プラズマを形

成するためのガスには主に窒素を用いる。


6

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図 3−発光部(ICP)(例)

発光部からの光の観測方式には,横方向観測方式及び軸方向観測方式(

図 参照)がある。

図 4−光の観測方式 

4.1.4 

分光測光部 

分光測光部は,発光部から放射された光を効率よく分光部に導く集光系,並びにスペクトル線を分離す

る分光部及び検出器で構成する。分光器には,ツェルニ・ターナー形分光器(

図 参照),パッシェン・

ルンゲ形分光器(

図 参照),エシェル形分光器(図 参照)などがある。ツェルニ・ターナー形分光器

はシーケンシャル形分光器として,パッシェン・ルンゲ形分光器及びエシェル形分光器は主として同時測

定形分光器として使用する。検出器は入射した光をその強度に応じた電気信号に変換するもので,光電子

増倍管又は半導体検出器が用いられる。

注記  真空紫外領域(波長 120 nm∼190 nm)のスペクトル線を測定するために,集光系及び分光器を

真空にするための構造,又はアルゴン若しくは窒素で空気を置換する構造がある。


7

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図 5−ツェルニ・ターナー形分光器を用いた分光測光部(例)

図 6−パッシェン・ルンゲ形分光器を用いた分光測光部(例) 

図 7−エシェル形分光器を用いた分光測光部(例) 

 
 


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4.1.5 

データ処理部及び制御部 

データ処理部及び制御部は,次による。

4.1.5.1

データ処理部  データ処理

1)

を行い,検量線,測定結果などを表示する。表示には液晶表示装置

(LCD)

,プリンターなどを使用する。

1)

  データ処理には精確さなどを向上させる目的で,バックグラウンド補正,分光干渉補正,内標

準元素による補正などを行う機能をもつものがある。

4.1.5.2

制御部  最適な条件下で装置を使用するために,ガス流量,トーチ測光位置,励起源部の電力な

どを制御する。

4.2 

附属装置 

附属装置は,次による。

a)

オートサンプラー(又は自動試料導入装置)  多数の試料を自動で順次試料導入部に供給するための

装置。オンラインでの自動希釈,自動内標準液添加及び検量線作成用溶液添加の機能をもつものもあ

る。

b)

超音波ネブライザー  液体試料を超音波振動子によって霧化した後,加熱・冷却して脱溶媒し,キャ

リヤーガスによって発光部に導入する装置。

c)

水素化物発生装置  試料溶液中のひ素,セレン,アンチモンなどの化合物をテトラヒドロほう酸ナト

リウムなどによって揮発性の水素化物に還元した後,気液の分離を行って気体成分だけをキャリヤー

ガスによって発光部に導入する装置。

d)

フローインジェクション装置  細管内を流れるキャリヤー溶液に,バルブを切り替えて一定量の少量

の試料溶液を注入し発光部に導入する装置。オンラインで化学反応させる場合もある。

e)

電気加熱気化導入装置  少量の試料溶液を黒鉛炉又は高融点金属製ヒーターに注入した後,不活性ガ

ス雰囲気中で溶媒及び一部マトリックス成分を選択的に除去した後,残った測定対象元素を瞬時に気

化させて,キャリヤーガスによって発光部に導入する装置。

f)

レーザーアブレーション装置  レーザー光を固体試料に照射したとき試料が気化して生じる微粒子な

どをキャリヤーガスによって発光部に導入する装置。

g)

その他  マトリックス分離カラム,クロマトグラフなどがある。

4.3 

水,試薬類及びガス 

4.3.1 

 

水は,JIS K 0557 に規定する A2 以上又は ISO 3696 に規定する Grade 2 以上を用いる。この水に含まれ

る不純物が,測定対象元素に干渉しないことを確認する。

4.3.2 

試薬類 

試薬類は,次による。

a)

試薬は,該当する日本工業規格(JIS)がある場合には,その種類の最上級又は測定目的に合わせた適

切なものを用い,該当する JIS がない場合には,分析に支障がない品質のものを用いる。

b)

検量線用標準液は,計量計測トレーサビリティが確保された標準液[例えば,計量標準供給制度に基

づき供給されている JCSS(Japan Calibration Service System)のロゴ付き証明書を付した標準液]を用

いる。このような標準液がない場合,又は目的によって計量計測トレーサビリティが確保された標準

液を使用する必要がない場合には,一般的な市販の標準液を用いる。標準液に含まれる不純物が,測

定対象元素に干渉しないことを確認する。

c)

b)

以外を使用する場合には,測定対象の一元素又は複数元素の検量線作成用溶液として,純度 99.99 %


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以上の金属を溶解して調製する。又は純度が測定されて仕様値として確定され,共存物が干渉しない

ことを確認した金属若しくは化合物を用いて検量線作成用溶液を調製する。

4.3.3 

ガス 

ガスは,通常,JIS K 1105 に規定する純度 99.99 %(体積分率)以上のアルゴンを用いる。アルゴン以外

のガスも使用する場合も,JIS で規定するものを用いる。また,JIS によるガスがない場合には,分析に支

障がないものを用いる。

4.4 

サンプリング及び試料溶液の調製 

4.4.1 

サンプリング 

試料採取は,分析目的,試料の性質及び測定項目に最も適した方法で,試料母集団を代表できる,又は

各試料の特性の差を明らかにできるような試料採取を行う。個別規格がある場合にはそれによる。また,

試料の取扱いは,外的要因,経時変化などに対する変質を防ぎ,なるべく速やかに前処理を行う。

4.4.2 

試料溶液の調製 

一般的な試料溶液の調製法を次に示すが,個別規格がある場合には,それに従って調製する。

a)

試料別調製方法  試料別調製方法は,次による。

警告  過塩素酸を使用する場合,単独で有機物の分解を行うと爆発するおそれがあるため,必ず硝

酸を共存させた状態で加熱する。

1)

金属試料  金属試料は,一般に塩酸,硝酸又はこれらの混酸で溶液化する。これらの酸だけで分解

が困難な試料では必要に応じて過塩素酸,りん酸,硫酸などを添加し,白煙が出るまで加熱して残

さを完全に分解する。モリブデン,ニオブ,タングステンなどの難溶性金属及びこれらを含む合金

の場合は,ふっ化水素酸を添加すると分解が促進される。分解時には,塩酸,硫酸などの非酸化性

酸の使用による測定対象元素の揮散(水素化ひ素,水素化りんの生成など)

,酸化性酸による難溶性

酸化物の生成(クロム,アルミニウムの不動態化など)などがあるので,試料の種類及び測定対象

元素に応じて適切な酸を選択する。また,金属試料中には酸に難溶な酸化物(酸化アルミニウム,

二酸化けい素など)及び炭化物(炭化クロム,炭化ニオブなど)が存在することが多いので

2)

,こ

れらの成分,又はこれらと複合酸化物を形成するような成分(カルシウム,マグネシウムなど)を

測定対象とする場合には,酸溶解後の残さを融解又は密閉式の加圧容器

3)

を用いて酸分解すること

によって溶解し,合わせて測定する必要がある。

2)

  ネブライザーを詰まらせるおそれのある懸濁粒子が含まれている場合は,測定前にろ過を

行うのがよい。ただし,ろ過操作からの汚染及び損失に注意する。

3)

  密閉式の加圧容器は,金属製の外容器及びふっ素樹脂製などの内容器から構成されるので,

金属製の外容器からの汚染に注意する必要がある。この場合,ふっ素樹脂製の内容器を二

重にすると汚染は低減できる。また,ふっ素樹脂製などの内容器及び外容器を用いたマイ

クロ波分解装置を利用してもよい。石英製の内容器を用いる場合には,ふっ化水素酸の使

用はできない。

2)   

セラミックス試料  セラミックス試料の分解は,一般に酸分解法又はアルカリ融解法を用いる

4)

酸分解法では,単独の酸又は複数の酸を組み合わせて用いるが,密閉式の加圧容器

3)

を用いると酸

添加量及び分解時間を低減できる。アルカリ融解は酸で分解できない場合に用い,単独の融剤又は

混合融剤と試料とを混合した後,加熱して融解する。

セラミックス試料は組成及び形態によって,分解に用いる酸又は融剤の種類が異なる。けい素を

主成分とする試料は,密閉式の加圧容器

3)

を用いてふっ化水素酸,硝酸及び硫酸で分解するが,酸


10

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分解できない場合は,炭酸ナトリウムなどでアルカリ融解する。アルミニウムを主成分とする試料

は,塩酸,硝酸,硫酸と硝酸との混酸などで分解するが,酸分解できない場合は,炭酸ナトリウム

などでアルカリ融解する。難溶性のセラミックス試料を分解する場合,試料分解前に粉砕する必要

がある。

4)

  粉砕時には,セラミックスの硬度が高いため,粉砕容器の材質の選択,試料による共洗い

など,粉砕容器から混入する汚染元素に注意する。

3)   

生体関連試料  生体試料,医薬品,食品,農作物などは,一般に硝酸を用いて酸分解する。試料に

よっては硝酸だけでも分解できるが,必要に応じて少量の過酸化水素,過塩素酸,ふっ化水素酸,

塩酸,硫酸などを添加することによって分解する。開放系又は密閉系で分解するが,密閉式の加圧

容器

3)

を用いると,環境からの汚染,揮発性元素の損失などが抑制できる。共存元素が高濃度に含

まれる場合には,マトリックスの影響を減らすために試料溶液を希釈して測定するが,測定対象元

素の濃度が低い場合にはマトリックスからの分離及び/又は濃縮操作が必要となる。体液のような

液体試料は,希硝酸,界面活性剤溶液などによる希釈だけで測定できる場合がある。

4)   

水試料  表層水,地下水,雨水,排水などの水試料は,懸濁物質を含んでいることが多い。試料中

の溶存元素を測定するためには,試料を孔径 0.45

μm のフィルターによってろ過した後に,硝酸を

加えて pH 1 以下にして保存する。保存した試料に酸を加えて検量線作成用溶液の酸濃度とできるだ

け一致させたものを分析用試料とする。一方,試料中の溶出可能な元素を測定するためには,試料

をろ過せずに硝酸を加えて pH を約 1 の酸性にして保存する。酸性化保存した試料に,硝酸と塩酸

とを加えてホットプレート上で約 85  ℃で加熱する。溶解していない物質は一晩放置して沈殿させ

るか,又は試料が透明となるまで遠心分離する。沈殿又は遠心分離によって得られた上澄み試料に

水を加え一定の容量にしたものを分析用試料とする。

5)

地質学的試料  岩石,鉱物,土壌,石炭などの地質学的試料に含まれる測定対象元素の全量を定量

する場合には,ふっ化水素酸及び硝酸を用いた酸分解によって溶解する。試料が有機物を含むとき

には,

更に硝酸及び過塩素酸又は過酸化水素水の混酸を追加して溶解する。

試料の組成によっては,

酸分解の過程で元素の揮散又は沈殿を生じる場合がある。密閉式の加圧容器

3)

を用いると,酸添加

量及び分解時間を低減でき,また,元素の揮散を抑制できる。試料が難分解性の鉱物を含むときに

はメタほう酸リチウムなどの融剤を用いる融解法を適用する。融解生成物は,希酸に溶解し,試料

溶液とする。融解生成物を酸に溶解する場合,けい酸の沈殿が生じたときには,ろ過によって沈殿

を除く。試料に含まれる測定対象元素を存在状態に応じて(例えば,酸可溶態など)定量する場合

には,適切な溶媒又は溶液を用いて測定対象元素を溶出する。酸分解液及び溶出液に含まれる粒子

をろ過したものを試料溶液とする。

6)

大気粉じん(塵)試料  ローボリュームエアーサンプラー又はハイボリュームエアーサンプラーを

用いて,大気粉じん(塵)をフィルター

5)

上に捕集する。その際,試料捕集用フィルターと同一の

特性をもつフィルターを試料採取地点に携行し,

空試験用試料とする。

試料はフィルターとともに,

ふっ化水素酸及び硝酸を用いて酸分解する

6)

。粒子状炭素などの有機物の多い試料を分解する場合,

更に硝酸,及び過塩素酸又は過酸化水素の混酸を追加して溶解する。得られた溶液を遠心分離又は

ろ過し,試料溶液とする。

5)

  フィルターの材質は,石英繊維,セルロースエステル,ふっ素樹脂などであり,材質によ

って圧力損失,吸湿率,不純物の含有量などの特性が異なる。

6)

  ふっ素樹脂製フィルターは,酸分解されない。


11

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7)

石油関連試料  石油関連試料は燃焼などによって無機質化した後,酸で分解して溶液化するか,有

機溶媒によって直接試料を溶解又は希釈してもよい。後者の場合には,検量線作成用溶液も同じ有

機溶媒で調製し,全ての溶液ができる限り同じ物理特性をもつように注意しなければならない。有

機溶媒としては蒸気圧の比較的低いキシレン,脂肪族炭化水素の混合溶液,例えば,ケロシンなど

を用いることで,プラズマを安定に維持することができる。また,試料溶液及び検量線作成用溶液

中の測定対象元素は,同じ化学形態であることが望ましい。

8)

高分子関連試料  ポリエチレン,ゴム類などの高分子関連試料に含まれる測定対象元素を定量する

場合は,一般に酸分解法又は乾式灰化法を用いる。酸分解法では,試料によっては硝酸だけでも分

解できるが,必要に応じて過酸化水素水,過塩素酸,ふっ化水素酸,塩酸,硫酸などを添加する

7)

密閉式の加圧容器

3)

を用いると酸添加量及び分解時間を低減できる。乾式灰化法では,試料を白金

るつぼなどに採取し,硫酸を加え,450  ℃∼550  ℃に温度を上げ,有機物を分解除去する。放冷後,

残さを希硝酸などで溶解し,試料溶液とする。

7)

  高分子関連試料に含まれる共存物質の影響によって,測定対象元素の損失が生じることも

あるので,試薬の選択には注意する。

b)

前処理における分離及び濃縮  a)の操作で調製した試料溶液のマトリックス濃度が高く,測定対象元

素の濃度が低い場合は,マトリックスからの測定対象元素の分離及び濃縮を行う。分離・濃縮方法と

しては,イオン交換,溶媒抽出,固相抽出,共沈殿,水素化物発生法などがある。フローインジェク

ション装置によるオンライン方式では所要時間と試薬量とが軽減され,汚染の可能性が小さくなるこ

ともある。測定対象元素の濃縮及び分離を定量的に行うためには,測定対象元素の化学形態をそろえ

る必要がある。

c)

前処理における誤差要因及びその対策  試料の前処理における分析誤差の要因としては,次に示す外

部からの汚染,水及び試薬中の不純物,試料の未分解,測定対象元素の損失がある。前者二つの要因

は,微量元素の測定において特に影響が大きい。

1)   

外部からの汚染  外部からの汚染源としては,作業者の指又は被服との接触,大気浮遊粒子,使用

容器などがあり,これらが複合することもある。密閉式の加圧容器

3)

を用いると大気浮遊粒子の汚

染は軽減される。使用容器からの汚染は,JIS K 0553 に準じた洗浄方法によって軽減できる。

2)

水及び試薬中の不純物  試料の前処理に用いる水及び試薬に不純物として含まれる測定対象元素は,

試料中の濃度に対して無視できない場合がある。また,空試験溶液の測定値を差し引く場合も,分

析値の再現性低下の原因となる。空試験溶液の測定値は,高品質の水及び高純度試薬を用いること

によって軽減できる。

3)

試料の未分解  測定対象元素又は試料によっては,完全に分解しない場合がある。試料が完全に分

解したか否かは,例えば,蛍光 X 線分析法などの非破壊分析法又は標準物質の分析結果との比較か

ら確認することができる。酸分解法で溶解しない試料は,融解法で分解できる場合がある。

4)   

測定対象元素の損失  揮発性の元素,揮発性の酸化物,ハロゲン化物及び有機金属化合物は,乾式

灰化などの開放系分解を用いる場合には,全量又は部分的な損失を起こしやすい。この損失は,密

閉式の加圧容器

3)

又は還流形蒸留器を用いることによって軽減できる。測定対象元素は,沈殿,共

沈殿,容器内壁などへの吸着によっても失われることがある。

4.5 

検量線作成用溶液,検量線校正用溶液及び検量線用ブランク溶液の調製 

4.5.1 

検量線作成用溶液及び検量線校正用溶液 

検量線作成用溶液及び検量線校正用溶液の調製は,次による。


12

K 0116

:2014

a)

調製  検量線作成用溶液又は検量線校正用溶液として,測定対象元素の 1 元素又は複数元素(内標準

元素を含む。

)を含む溶液を調製する。

b)

調製時の注意事項  調製時の注意事項は,次による。

1)

溶液を混合する場合,沈殿を生じないような試薬及び元素の組合せにする。また,使用する標準液

の不純物が測定対象元素の濃度に影響しないことを確認する。

2)

使用する分析線に分光干渉が生じないような元素の組合せにする。

3)

検量線作成用溶液及び試料溶液の液性及び濃度は,試料溶液にできるだけ一致させる。

4.5.2 

検量線用ブランク溶液 

検量線用ブランク溶液の調製は,次による。

a)

調製  測定対象元素を添加せず,検量線作成用溶液と同じ液性及び濃度組成からなる溶液を調製する。

b)

調製時の注意事項  調製時の注意事項は,次による。

1)

測定対象元素による汚染がないように使用する水及び試薬類に注意する。

2)

使用する容器からの汚染に注意する。

4.6 

測定条件の設定 

4.6.1 

測定条件の最適化 

測定条件の最適化は,次による。

a)

調整  波長校正及び光軸の調整は,次による。

1)

波長校正  測定する元素の波長と分光器の波長とを一致させる。全波長範囲を調整することが望ま

しい。調整方法は,分光器が,シーケンシャル形か同時測定形のいずれか,また,真空紫外領域波

長の測定において不活性ガスパージ方式か真空方式の違いによって異なる。装置ごとに定められた

手順に従って実施することが望ましい。一般的には,アルゴンの発光線,水銀ランプからの発光線

又は短・中・長波長の元素を含んだ調整用溶液を用いる。

2)

光軸調整  トーチの取付位置の調整を行うことによって光軸調整を行う。測定対象元素の発光強度

が最大になるようにトーチ位置を移動するか,分光測光部の集光系に設置されたミラーの角度の調

整を行う。

b)

最適条件  15∼30 分の暖機運転によってプラズマが安定した後,分析目的に応じ 4.6.3 を考慮して,

次の最適条件を設定する。

1)

分析線  4.7.1 に従って分析線を選択する。

2)

測定条件  条件の最適化は,高周波出力,キャリヤーガス流量及び測光高さを調整することによっ

て行う。シグナルをバックグラウンドで除した値(SB 比)が最も大きくなる条件が望ましいが,発

光強度も考慮して条件の最適化を行う。一般に,高周波出力を高くすると発光強度が増加するが,

同時にバックグラウンド強度も増加するため SB 比は必ずしも向上しない。キャリヤーガス流量を

上げ過ぎるとプラズマの温度が低下し発光強度は減少する。横方向観測方式のプラズマでは,測光

高さを調整することによって最適化を行う。

4.6.2 

干渉 

干渉は,次による。

a)

分光干渉  測定対象元素の分析線に種々の発光線及びバックグラウンドが重なり分析結果に影響を及

ぼす。分光干渉を及ぼす要因は,次による。

1)   

他の元素の発光線による干渉  アルゴンの発光線又は試料中に含まれる共存元素の発光線が,測定

対象元素と近接した波長をもつ場合に生じる。干渉の割合は,分光器の分解能,二つの発光線の波


13

K 0116

:2014

長差及び強度比によって決まる。干渉を避けるためには,干渉を受けない別の分析線を選択する。

適切な分析線が見つからない場合には,分光干渉補正を行う。

2)

分子バンドによる干渉  NO(波長:200∼240 nm),OH 及び NH(波長:300∼340 nm),CH(波長:

380∼390 nm)などの分子バンドスペクトルが測定対象元素と近接した波長をもつ場合に生じる。

分子バンドスペクトルは空気中又は溶液中の N,O,H,C に起因するため,検量線作成用溶液,試

料溶液の酸の種類及び濃度をできるだけ一致させてバックグラウンド補正を行う。

3)

再結合によるバックグラウンドの増加  試料中に高濃度で含まれる元素の発光によってバックグラ

ウンドが増加する。バックグラウンド補正を行うことで干渉を除去できる。

b)

物理干渉  試料導入系には,通常,ネブライザーが使用されるため,試料溶液の物理的性状の違いに

よって噴霧効率が変化し,誤差の原因となる。物理的性状には,粘度,表面張力,密度などがあり,

試料溶液中の酸の種類,酸の濃度,共存元素濃度などによって変動する。物理干渉を軽減するには,

検量線作成用溶液と試料溶液の液性とをできるだけ一致させることが望ましい。一致させることが困

難な場合には強度比法又は標準添加法を用いる。ペリスタルティックポンプを用いて送液することに

よって干渉を軽減できる。

c)

イオン化干渉  イオン化干渉とは試料溶液中に高濃度の共存元素が存在する場合,これらの元素のイ

オン化のときに発生する電子によって,プラズマ内の電子密度が増加し,イオン化率が変化する現象

をいう。特に,アルカリ金属,アルカリ土類金属などのイオン化エネルギーの低い元素が多量に存在

すると,測定対象元素のイオン化率が大きく変化する。この変化の割合は,軸方向観測方式の方が大

きいために,横方向観測方式を用いることが望ましい。

d)

化学干渉  化学干渉とは,測定の過程において生成する化合物によって生じる干渉であるが,ICP の

場合,プラズマの温度が高いので化合物はすぐに分解されるため,通常の分析条件では,ほとんど問

題にならない。

4.6.3 

使用判定項目 

分析目的に応じて,次に規定する項目を評価する。4.8.4 に従って実施することが望ましい。評価の基準

値は,必要に応じて個別規格で規定する。

a)

バックグラウンド等価濃度(BEC)

b)

短時間安定性

c)

長時間安定性

d)

装置検出下限(ILOD)

e)

方法定量下限(MLOQ)

f)

検量線の直線性

4.7 

定量分析 

4.7.1 

分析線の選定 

分析線の選定に当たっては,次のような項目に注意しなければならない。

なお,特に同時測定形分光器の装置の場合,試料中に含まれる共存元素の発光線が測定対象元素と近接

した波長をもつ場合に分光干渉が生じるので,注意しなければならない。

a)

各元素の発光線の中から,目的とする定量範囲に適する発光強度を与える発光線を選択する。この場

合,検出下限,測定精度などに関する検討を十分に行う。

b)

共存成分による各種の干渉(妨害)がある場合には,干渉のない発光線を選択する。干渉のない適切

な発光線を選択できない場合は,干渉量を適切に補正する。個別規格で分析線が規定されている場合


14

K 0116

:2014

は,それを用いる。

4.7.2 

測定 

4.6.1

で最適化した条件を用い,測定対象元素の発光強度を測定する。

4.7.3 

定量法 

一定時間の積分によって得られた発光強度から,次の方法によって試料溶液中の測定対象元素の濃度を

求める。必要があれば,4.7.4 によって発光強度又は濃度を補正する。

a)

検量線法  検量線法として,発光強度法又は強度比法を用いる。

1)

発光強度法  測定対象元素の濃度が異なる 4 種類以上の検量線作成用溶液を調製する。この検量線

作成用溶液を用い,発光強度と濃度との関係線を作成して検量線とする。この検量線を用いて発光

強度に対応する試料溶液中の測定対象元素の濃度を求める(

図 参照)。

2)   

強度比法(内標準法)  一定濃度の内標準元素を含み,測定対象元素濃度が異なる検量線作成用溶

液を 4 種類以上調製する。新たに添加した元素,又は試料溶液中に主成分として含まれる元素を内

標準元素とする。内標準元素を新たに添加する場合には,その元素が試料溶液中に含まれないこと

を確認しておく。内標準線及び分析線は,中性線同士又はイオン線同士でその励起エネルギー差が

小さく,かつ,分析線に対し分光干渉を生じない発光線を選択する。この検量線作成用溶液を用い,

内標準元素に対する測定対象元素の発光強度比と測定対象元素の濃度との関係線を作成して検量線

とする。この検量線を用いて発光強度比に対応する試料溶液中の測定対象元素の濃度を求める(

9

参照)

注記 1  検量線法では,試料溶液の組成と検量線作成用溶液の組成とが合致していることが望ま

しい。

注記 2  検量線が直線にならない場合には,直線性が得られる範囲となるように,検量線作成用

溶液の希釈などを行い,直線範囲で測定することが望ましい。

注記 3  装置の長時間連続運転,測定数の累積などによって検量線が変動する場合がある。この

ような場合,正確に定量するために,一定時間ごと又は一定測定数ごとに検量線校正用

溶液を測定して,検量線を校正する方法がある。

図 8−検量線法(発光強度法)による濃度の求め方


15

K 0116

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図 9−検量線法(強度比法)による濃度の求め方 

b)

標準添加法  試料溶液から等量に 4 個以上の溶液を採取し,測定対象元素を添加しないもの 1 種類と,

測定対象元素をそれぞれ異なる濃度で添加したもの 3 種類以上とを調製する。それぞれの溶液の発光

強度と濃度との関係線を作成し,

図 10 の横軸(濃度)の切片から試料溶液中の測定対象元素の濃度を

求める。

注記 4  この方法は分光干渉がないか,又はバックグラウンド及び分光干渉が正しく補正されてい

て,かつ,発光強度と濃度との関係線が良好な直線性を保つ場合だけに適用できる。

図 10−標準添加法による濃度の求め方 

4.7.4 

分光干渉の補正 

干渉を受けない別の分析線を選択できない場合は,必要に応じて次の補正を行う。

a)

元素間干渉補正  あらかじめ既知濃度の共存元素の溶液を用いて,分析線に及ぼす影響を共存元素の

発光強度又は濃度の関数として求める。測定対象元素を測定するときに共存元素を同時に測定し,分

析線の発光強度又は濃度に対する共存元素の影響を補正する。

b)

スペクトル分離による補正  分析線に近接する共存元素のスペクトルを試料溶液のスペクトルから差

し引いて,補正する。

図 11 に,近接する共存元素の干渉スペクトル及び分析対象元素のスペクトルが

重なったときのスペクトルの例を示す。A は,測定対象元素のスペクトルに共存元素が重なった試料

溶液のスペクトルである。このようなとき,あらかじめ測定した共存元素のスペクトル B を差し引く


16

K 0116

:2014

と,差スペクトル C が得られる。C のスペクトルの強度から,測定対象元素の濃度を求める。

図 11−共存元素の干渉スペクトル及び差スペクトル

c)

バックグラウンド補正  4.6.2 a) 3)のように,試料溶液の主成分によってバックグラウンドが変化し,

分析線の発光強度(I

x

)に影響を与えるような場合には,バックグラウンド強度(I

x

)を差し引いて

正味の発光強度を求める。

図 12 にバックグラウンドの影響と補正位置との例を示す。図 12  a)はバッ

クグラウンドが波長に対して一様な場合であり,補正位置は A 又は B のいずれか一方で測定されたバ

ックグラウンドによって補正する。

図 12  b)はバックグラウンドが波長とともに変化している場合で,

分析線の両側の補正位置 A 及び B で測定されたバックグラウンドから I

x

を求めて補正する。


17

K 0116

:2014

図 12−バックグラウンド補正 

4.7.5 

定量値の表し方 

試料に含まれる測定対象元素の定量値は,質量分率(ng/kg,

μg/kg,mg/kg など)又は質量濃度(ng/L,

μg/L,mg/L など)で適切と考えられる単位を用いて表示する。

4.7.6 

留意事項 

この分析方法は,

図 に示す基本的な噴霧試料導入部以外に,さまざまな附属装置を接続して使用する

ことが多い。超音波ネブライザー,フローインジェクション装置,水素化物発生装置,クロマトグラフ,

マトリックス分離カラムなどを使用するとプラズマまでの導入時間が長くなる場合があるので,メモリー

効果に留意する。

電気加熱気化導入装置,

フローインジェクション装置などの微小量の試料導入の場合は,

コンタミネーションに留意する。

レーザーアブレーション装置などの固体表面をサンプリングする場合は,

試料の微小領域の均一性に留意する。オートサンプラーなどの自動運転を行う場合は,環境からのコンタ


18

K 0116

:2014

ミネーション,試料の揮散損失,溶媒の蒸発などに留意する。

4.8 

データの質の管理(精確さの管理) 

4.8.1 

一般事項 

データの質の管理のためには,標準物質及び検量線作成用溶液の有効性,定量範囲の確認(上限及び下

限)

,検量線用ブランク溶液の確認,スペクトル形状の確認,定期的な装置性能の点検などを行う必要があ

る。定期点検は標準操作手順書(SOP:Standard Operating Procedure)を作成し,これに従って行う。

これらの結果は,測定記録,スペクトルとともに文書にして保管する。個別分析方法の標準作業手順に

は,必要な項目を選別して記載する。分析値の信頼性を確保するには,適切な精確さの管理を行うととも

に,

計量計測トレーサビリティが確保されていること及び分析値に不確かさを表記することが必要である。

なお,精確さの管理は,試料,測定対象元素,その濃度,測定の目的,必要な精度などを考慮し,管理

目標,確認する頻度などを定めて,必要以上に精確さの管理に時間を費やすことがないようにする。

4.8.2 

分析値の信頼性の確保 

分析値の信頼性を確保するためには,品質管理に用いる試料又は標準物質を用いて実施される内部精度

管理,共同分析,技能試験などの外部精度管理を適切に実施して,その結果を記録し,一定の精確さを維

持することが望ましい。測定機器の校正を,計量計測トレーサビリティが確保された標準物質で行い,測

定値に不確かさを併記すると精確さを示すことができる。

また,調製に用いる全量ピペット,全量フラスコ,ピストン式ピペットなどは,定期的な精確さの確認

を行うことが望ましい。

4.8.3 

計量計測トレーサビリティの確保 

検量線作成では,用いる標準物質及び調製に用いる器具の計量計測トレーサビリティが確保されている

ことが望ましい。

注記  計量計測トレーサビリティソースが明確で,かつ,計量計測トレーサビリティが確保されてい

る標準物質は JCSS 制度又は JIS Q 0034 によって認定された標準物質生産者から供給されてお

り,不確かさが明記されている。

調製に用いる天びん(秤)は,定期的に校正を行い,ピペット類は JIS K 0050 に従って校正を行う。ピ

ストン式ピペットも,校正事業者による定期的な校正,JIS K 0970 及び JIS K 0050 に準じた校正及び性能

確認を行う。計量計測トレーサビリティが確保されている分銅には,JCSS 校正証明書付のもの,全量ピペ

ット及び全量フラスコには,許容誤差が表記されているものが供給されている。また,ピストン式ピペッ

トにも,JCSS 校正証明書付のもの,又は許容誤差が表記されているものが供給されている。

計量証明に用いる場合は,国際単位系(SI)への計量計測トレーサビリティが確保されていることが望

ましい。SI への計量計測トレーサビリティが確保された最上位の標準物質又は計量計測トレーサビリティ

ソースとなる標準物質は,国家計量機関から認証標準物質(CRM)として供給されている。

計量計測トレーサビリティが確保された標準物質を用いて検量線を作成して濃度未知の物質を定量する

場合,検量線の不確かさを算出することが望ましい。これから得られた測定値の不確かさの表記は拡張不

確かさ を用いることが適切である。

その際,包含係数 の値を明記する。化学分析においては の信頼の水準が約 95 %に相当する k=2 を

用いることが一般的である。

なお,SI への計量計測トレーサビリティが確保できない場合は,検量線作成に用いた試薬の純度,検量

線の不確かさ及び未知試料の測定の不確かさから,分析値の不確かさを求めることができる。


19

K 0116

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4.8.4 

管理のための測定 

データの質の管理のために,必要に応じて,バックグラウンド等価濃度,短時間安定性,長時間安定性,

装置検出下限及び方法定量下限,検量線の直線性などを測定し,記録する。

4.8.4.1 

バックグラウンド等価濃度(BEC 

バックグラウンド等価濃度は,次によって求める。

a)

準備  次の溶液を調製する。

1)

測定対象元素の検量線用ブランク溶液

2)

測定対象元素の BEC 予測値からその 10 倍の濃度を含んだ溶液

b)

測定  次の手順で測定する。

1)   a)  2)

の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適

化を図る。

2)   a)  1)

の溶液を噴霧し,安定した後に 10 回連続測定を行い,測定強度の平均値(X

b

)を算出する。

3)   a)  2)

の溶液を噴霧し,安定した後に 10 回連続測定を行い,測定強度の平均値(X

1

)を算出する。

c)

計算  次の式によって算出する。

k

X

B

/

b

=

ここに,

B

BEC

k

検量線の傾き

(X

1

X

b

)/C

1

C

1

: a) 2)の溶液濃度(

mg/L

4.8.4.2 

短時間安定性 

短時間に繰り返し測定を行って得られる結果の一致の程度を推定するために,次の方法によって相対標

準偏差を求めて,判定の指標とする。

a)

準備  次の溶液を調製する。

1)

測定対象元素の検量線用ブランク溶液

2)

測定対象元素の

BEC

予測値の

100

倍濃度を含んだ溶液

b)

測定  次の手順で測定する。

1)

 a)  2)

の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適

化を図る。

2)

あらかじめ定めた積分時間

8)

を設定し,感度調整を行う。

3)

 a)  1)

の溶液を噴霧し,安定した後に

10

回連続測定を行い,強度又は強度比を求めて,その平均値(

X

b

を算出する。

4)

同様に a) 2)の溶液を噴霧し,安定した後に

10

回連続測定を行い,強度又は強度比(

X

i

)を求める。

8)

装置及び測定条件によって異なる。

c)

計算  次の式によって算出する。

100

)

/

(

n1

×

=

X

S

Sr

ここに,

Sr

相対標準偏差

X

n1

X

i

X

b

)の平均値

S

X

i

X

b

)の標準偏差

注記

検出下限の

100

倍から

1 000

倍の濃度域においては,相対標準偏差は

1 %

以下

9)

となることが

望ましい。

9)

分析の目的に応じて規定する。


20

K 0116

:2014

4.8.4.3 

長時間安定性 

長時間安定性は,機器の設置環境及び測定条件によって影響される。この試験で求める長時間安定性の

相対標準偏差から機器の校正又は補正の頻度を決定する。試験方法の一例を,次に示す。

a)

準備  濃度の異なる複数の溶液を準備する。

b)

測定  校正又は補正を行わずに,

3

回の繰り返し測定を,

30

分間隔で

3

時間にわたり計

7

回行う。

c)

計算  各元素の濃度ごとに求めた繰り返し測定の平均値

7

回分から,それぞれ相対標準偏差を算出す

る。

4.8.4.4 

装置検出下限(ILOD 

装置検出下限は,次によって求める。

a)

準備  次の溶液を調製する。

1)

測定対象元素の検量線用ブランク溶液

2)

測定対象元素の

BEC

予測値の

10

倍の濃度を含んだ溶液

b)

測定  次の手順で測定する。

1)

a) 2)

の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適

化を図る。

2)

   3

秒積分

8)

によって

4

桁以上

8)

の積分強度が得られるように感度調整を行う。

3)

 a)  1)

の溶液を噴霧し,安定した後に

10

回連続測定を行い,測定強度の平均値(

X

b

)と標準偏差(

S

b

とを算出する。

4)

 a)  2)

の溶液を噴霧し,安定した後に

10

回連続測定を行い,測定強度の平均値(

X

1

)を算出する。

c)

計算  次の式によって算出する。

k

S

I

/

3

b

×

=

ここに,

I

ILOD

k

検量線の傾き

(X

1

X

b

)/C

1

C

1

: a) 2)の溶液濃度(

mg/L

4.8.4.5 

方法定量下限(MLOQ 

方法定量下限は,次によって求める。

a)

準備  次の溶液を調製する。

1)

空試験溶液

2)

空試験溶液の発光強度の

2

倍以上の発光強度を与える濃度の測定対象元素を含んだ溶液

b)

測定  次の手順で測定する。

1)

 a)  2)

の溶液を噴霧し,発光強度が安定した後に測定波長を最高強度位置に合わせ,測定条件の最適

化を図る。

2)

実際の測定条件によって装置の感度調整を行う。

3)

a) 1)

の溶液を噴霧し,安定した後に

10

回連続測定を行い,測定強度の平均値(

X

lb

)と標準偏差(

S

d

とを算出する。

4)

 a)  2)

の溶液を噴霧し,安定した後に

10

回連続測定を行い,測定強度の平均値(

X

l1

)を算出する。

c)

計算  次の式によって算出する。

k

S

M

/

10

2

d

×

×

=


21

K 0116

:2014

ここに,

M

MLOQ

k

検量線の傾き

(X

l1

X

lb

)/C

2

C

2

a) 2)

の溶液濃度(

mg/L

4.8.4.6 

検量線の直線領域の確認 

検量線の直線性は,測定対象元素の濃度が異なる

5

種類以上の検量線作成用溶液(

1

種類は,その検量

線の上限に相当すると見積もられる濃度の溶液。

)の発光強度を測定し,作成した検量線の直線性を確認す

る。直線関係が認められた場合,最小二乗法によって回帰分析をし,その相関係数が

0.995

以上であるこ

とが望ましい。直線性が得られない場合は,測定波長の変更又は直線性が得られる範囲となるように,試

料溶液及び検量線作成用溶液の希釈などを行い,直線範囲で測定することが望ましい。ただし,装置及び

測定条件によっては,

2

次式等の検量線を用いることもある。

4.8.4.7 

データの質の管理のための分析 

データの質の管理には,検量線作成用溶液とは別途調製した標準液(ロット等計量計測トレーサビリテ

ィソースが異なる検量線作成用溶液から調製し,ほぼ同じマトリックス濃度に調製するのが望ましい。

)を

必要に応じて分析し,検量線作成用溶液の有効性及び装置性能を確認する。

この分析は

3

回以上行い,その平均濃度値が,認証値又は既知濃度値と不確かさとの範囲内で一致する

ことを目安とする。

注記

個別規格に規定されている場合は,その方法による。

4.8.5 

操作ブランクの測定 

試料溶液と類似したマトリックスをもつ空試験溶液を,一連の測定試料ごとに測定する。操作ブランク

の測定によって,実験室環境からの汚染,試料調製の際に用いる試薬及び器具からの汚染,並びに装置の

メモリーによる汚染の程度を評価する。空試験溶液の測定値が,方法定量下限以下であることを目安とす

る。

4.8.6 

定期的な装置性能及び精度の確認 

装置の性能を確認するために,濃度既知の標準物質又は検量線作成用溶液を用意し,規定の発光強度,

バックグラウンド等価濃度,装置検出下限値,繰り返し精度などが得られることを分析での使用前又は定

期的に確認する。また,装置が正確に校正されていることを確認するために,日ごとの検量線作成直後及

び分析試料

10

個ごと,並びに全試料分析終了後に,検出下限の

1 000

倍程度の濃度の検量線作成用溶液及

び検量線用ブランク溶液を,未知試料として測定する。検量線用ブランク溶液の分析値は,方法定量下限

以下であることを目安とする。分析試料

10

個ごとに測定する検量線作成用溶液の分析値が,規定した範囲

10)

に入らない場合には,その前に測定した

10

個の分析試料は,検量線を作成し直して,再び分析する。も

しドリフトが原因で規定した範囲

10)

に入らない場合には,分析試料

5

個ごとに検量線作成用溶液及び検量

線用ブランク溶液を測定することが望ましい。装置性能及び精度の確認記録は,操作条件とともに文書に

して保管する。

注記

個別規格に規定されている場合は,その方法による。

10)

分析の目的,試料,測定対象元素などに応じ,個別に規定する(例えば,±

5 %

以内)

4.9 

装置の設置条件 

装置の設置に当たっては,一般に次の事項に注意する。ただし,機器に応じた設置条件が優先する。

a)

ほこりが少なく,腐食性ガスがない。

b)

装置に直射日光が当たらない。


22

K 0116

:2014

c)

装置仕様に指定された室温(例えば,

18

28

℃)及び湿度(例えば,

70 %

以下)の範囲内であり,

結露しない。また,急激な変化を生じさせない。

d) 

強力な磁場,電場などを発生する装置が近くにない。

e) 

装置を設置する床は,平たんで装置の質量に耐えるだけの強度があり,振動が少ない。

f) 

装置を卓上に設置する場合,卓が装置の質量に耐えるだけの強度がある。地震対策を考慮する。

g)

供給電源は,装置仕様に指定された電圧,電気容量及び周波数であり,電圧変動は

10 %

以内で,周波

数の変動がない。

h)

電気的災害を防ぐため,絶縁及び接地(

30 Ω

以下の

D

種接地が必要。

)を十分に行う。

i)

電気配線は,関連する規格に適合させる。

j)

発光部の上部に専用の換気ダクトを設け,十分な換気ができる。

k)

発光部からの高周波が他の機器に影響を与えない。

l)

所轄の総合通信局へ申請し,事前に許可を得る。

4.10 

安全 

安全は,JIS K 0050 の箇条 15 a)(安全衛生)の規定に従うほか,次の事項に注意しなければならない。

a)

高圧ガス取扱い上の注意  高圧ガス取扱い上の注意は,次による。

1)

高圧ガスの取扱いは,高圧ガス保安法及びそれに関連する諸法令の基準に従う。

2)

液化ガス容器を使う場合,圧力の異常変化,外槽への水滴付着及び液面異常変化に注意する。

3)

高圧ガス容器は,できるだけ戸外に設置し,配管によってガスを装置に導く。

4)

高圧ガス容器は,風通しのよい場所に設置し,直射日光,風雨氷雪などにさらされないようにする

とともに

40

℃以下に保つ。

5)

高圧ガス容器は,

2

か所以上で固定するなど地震対策を考慮する。

6)

配管のガス漏れの点検は,石けん液塗布などの方法によって行う。

7)

高圧ガス供給設備及び装置の円滑な運転及び安全な作業進行のため,

点検項目,

頻度などを定めて,

日常点検及び定期点検を行う。

b)

装置取扱い上の注意  装置取扱い上の注意は,次による。

1)

装置の安全機構は改造しない。

2)

装置の安全機構は,常に正常に作動する状態にする。

3)

トーチ,ネブライザーなどの接続部にガス漏れがないことを確かめるとともに,プラズマ点灯前に

ガス圧力及び流量の設定が適切であることを確認する。

4)

プラズマ点灯時は,換気ダクトを作動し,発生するガス,雰囲気ガスなど使用したガスの排気を十

分に行う。

5)

プラズマ点灯時は,高周波エネルギーの遮蔽には注意する。

6)

プラズマ及び波長校正用低圧水銀灯からの光を直視しない。これらを観察する必要がある場合には,

紫外線防止のための保護具を用いる。

7)

試料溶液の噴霧状態を目視で確認する場合,試料の代わりに水を用いる。

8)

発光部は.装置の運転停止後もしばらく高温であるため,その調整,点検などは温度が低下したこ

とを確認した後に行う。

9)

装置の点検及び修理は,主開閉器を切ってから行う。詳細については,装置の取扱説明書を参照す

る。

c)

試料取扱い上の注意  試料取扱い上の注意は,次による。


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1)

発火性金属の分析用試料調製及び分析では,その切削時の発火に注意する。

2)

試料溶液調製の場合,有毒性,引火性などに十分注意し,必要に応じ保護具を着用する。

3)

試料の残り,切削くず及び廃液は,環境汚染とならない方法で処理する。

4)

放射性同位元素を試料として扱う場合,放射線障害の防止に関する法律の定めに従う。

4.11 

分析結果に記載すべき事項 

分析結果には,次のうち必要な項目について記載する。また,データの質の管理のための分析結果は,

測定対象元素の分析結果の信頼性を示しており,試料の分析結果とともに報告することが望ましい。

a)

一般事項及び装置仕様  一般事項及び装置仕様は,次による。

1)

試料の分析年月日

2)

装置の製造業社名及び形式名

b) 

試料及び試料処理  試料及び試料処理は,次による。

1)

試料名

2)

試料採取場所及び採取方法

3)

試料調製方法(試料分解法,分離濃縮法など)

c)

測定条件  測定条件は,次による。

1)

定量方法[発光強度法,強度比法(内標準法)

,標準添加法]

2)

装置操作条件,測定分析線など

d)

データの質の管理  データの質の管理は,次による。

1)

標準物質などの分析年月日

2)

測定項目とその結果

スパーク放電発光分光分析 

5.1 

装置の構成 

スパーク放電発光分光分析装置は,励起源部,発光部,分光測光部,データ処理部及び制御部から構成

する。装置の基本構成の一例を,

図 13 に示す。

図 13−スパーク放電発光分光分析装置の構成(例)

5.1.1 

励起源部 

励起源部は,スパーク光源を維持するための電気エネルギーを供給・制御する電源回路及び制御回路か

らなる。

5.1.2 

発光部 

発光部は,分析試料を励起し発光させるための部分で,次の試料電極,対電極及び試料支持台からなる。

a)

試料電極  5.3 に示す方法で電極として調製された棒状,平盤状などの分析試料本体。

b)

対電極  試料電極の対極として用いる棒状電極。

c)

試料支持台  励起源部及び電気的に接続された試料電極並びに対電極を支持し,電極間隙及び発光部

高さを調節できる機能をもつもの。

発光部

分光測光部

データ処理部及び制御部

励起源部


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5.1.3 

分光測光部 

分光測光部は,発光部から放射された光を効率よく分光器に導く集光系,スペクトル線を分離する分光

器及び分光器で分離したスペクトル線の検出系で構成する。検出系は,分光器の焦点面に出口スリットを

配置し,その直後に光電子増倍管などの検出器を置いて,スペクトル線強度を電気信号に変換する機能を

もつもの。

5.1.4 

データ処理部及び制御部 

データ処理部及び制御部は,次による。

a)

データ処理部  検出器で得られた信号を増幅処理して必要な信号を分離し,データ処理を行った後,

測定対象元素濃度に対応する信号を必要な様式で表示して,記憶する機能をもつ

11)

11)

データ処理には精確さなどを向上させる目的でバックグラウンド補正,分光干渉補正,内標

準元素による補正などを行う機能のものがある。

b)

制御部  分光器を一定の温度に保つ,分光測光部の真空度を保つなど,装置を安定な状態で使用する

ためのもの。

5.2 

水,試薬及びガス 

5.2.1 

 

水は,4.3.1 による。

5.2.2 

試薬類 

試薬類は,次による。

a)

試薬は,4.3.2 a)による。

b)

標準物質は,検量線作成用試料として用いるもので,標準物質に関する JIS に規定したもの。公共機

関又は民間団体によって成分の確認された標準物質をその指定された用途範囲で用いてもよい。

c)

標準物質の選択のために必要な条件を,次に示す。

1)

化学組成,物理性状

12)

が,分析用試料と類似している。

12)

金属固体試料では,冶金履歴,形状,大きさなど。粉末試料では,比重,粒度分布など。

2)

測定対象元素の濃度が,分析用試料における濃度より広い範囲にわたり,かつ,適切な濃度間隔を

もつ

1

系列の試料群である。

3)

4.3.2 a)

に該当するものがない場合は,測定対象元素濃度が JIS 又はこれに準じる分析方法で確認さ

れている。

d)

標準物質の調製は,5.3 による。

5.2.3 

ガス 

ガス

13)

は,JIS K 1105 で規定するものを用いる。

13)

通常,雰囲気ガスとしてアルゴンガスが用いられ,微量元素を分析する場合には,JIS K 1105

に規定する

99.99 %

(体積分率)以上のものが用いられる。

5.3 

試料のサンプリング及び調製 

5.3.1 

一般事項 

採取した試料は,試料電極に適する形状又は状態に調製し,分析試料とする。

5.3.2 

サンプリング 

サンプリングには,試料採取用金型,定盤などを用いる。

5.3.3 

調製装置 

試料の調製には,例えば,次のものを使用する。


25

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a)

研磨装置(ベルト研磨,カップといし研磨)

b)

切削装置

c)

試料成形用切断機

5.3.4 

試料の調製方法 

試料の調製方法は,次による。

a)

金属固体試料  溶融状態で採取した試料は鋳型に鋳込み,固形物として供される試料は必要に応じて

切断,切削,再溶融及び鋳込みなどによって棒状又は平盤状とする。試料の大きさは通常,棒状試料

では直径

5 mm

14)

以上,長さ

30 mm

以上,平盤状試料では直径

10 mm

以上,厚さ

5 mm

以上又は直径

20 mm

以上,厚さ

3 mm

以上とする。いずれも,これを試料電極として直接用いる。

14)

直径

1 mm

程度の線状の試料も測定可能である。

b)

粉末試料  粒度範囲が通常

100

200

μm

の試料粉末を,必要によってバインダー,希釈剤,内標準剤

などと混合した後,加圧成形し,これを直接試料電極として用いる。

5.4 

対電極 

対電極は,規定の放電条件で測定対象元素が検出されない材質で,結晶化度及び他の物理的性質の均一

性がよく,加工精度の良好な銀,タングステン,黒鉛などの棒

15)

を用いる。

15)

棒状試料では,試料自体を対電極として用いることもできる。

5.5 

測定条件の設定 

測定条件の設定は,次による。

a)

測定条件の最適化 

1)

 5.6.1

に従って分析線を選択する。

2)

分析目的に応じ,励起条件,雰囲気ガス条件,電極間隙,予備放電時間,積分時間などを変化させ,

最適条件を設定する。また,必要に応じて,時間分解測光法を選択する。

b)

装置の使用判定項目  装置使用判定の基準として注意すべき事項は,次のようなものである。

1)

スペクトル線波長の位置が出口スリット又は検出素子に正確に合っている。

2)

放電状態及び放電痕が正常である。

3)

標準物質における各元素の発光強度が規定の範囲内である(分光器の窓の汚れ,検出器の劣化,分

光器の温度調節など)

4)

検量線を再校正した場合,検量線のずれ及び傾きが規定の範囲内である。

5)

短時間安定性及び長時間安定性が個別規格に規定されている場合は,その基準値内にある。

5.6 

定量分析 

5.6.1 

分析線の選定 

分析線の選定に当たっては,次のような項目に注意しなければならない。

a)

各元素の発光線の中から,目的とする定量範囲に適する発光強度を与える発光線を選択する。この場

合,検出下限,測定精度などに関する検討を十分に行う。

b)

共存成分による各種の干渉(妨害)がある場合には,干渉のない別の発光線を選択する。

干渉のない

適切な発光線を選択できない場合は干渉量を適切に補正する。

注記

個別規格で分析線が規定されている場合は,それを用いる。

5.6.2 

測定 

5.5 a)

で最適化した条件を用い,測定対象元素の発光強度を測定する。


26

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5.6.3 

定量法 

定量法は,検量線法(発光強度法又は強度比法)による。

a)

発光強度法  測定対象元素の濃度の異なる

4

種類以上の検量線作成用試料を用い,濃度と発光強度と

の関係線を作成して検量線とする。この検量線を用いて発光強度に対応する試料中の測定対象元素の

濃度を求める(

図 参照)。 

b)

強度比法(内標準法)  測定対象元素の濃度の異なる

4

種類以上の検量線作成用試料を用いて,内標

準元素

16)

に対する測定対象元素の発光強度比と測定対象元素の濃度との関係線を作成し,検量線とす

る。この検量線を用いて発光強度比に対応する試料中の測定対象元素の濃度を求める(

図 参照)。内

標準元素強度と測定対象元素との強度比を求める手法としては,次の方法がある。

16)

内標準元素には,主成分元素又は一定濃度の特定元素を用いることができる。

1)

定時間積分  あらかじめ設定された時間で積分を打ち切り,得られた内標準元素の発光強度と測定

対象元素の発光強度との比を求める。

2)

内標準強度モニター  あらかじめ設定された内標準元素の発光強度にその積分強度が達したときに

積分を打ち切り,得られた対象元素の発光強度を発光強度比として用いる。

c)

校正  装置の運転時間の経過,試料分析数の累積の影響などによって,励起源部,発光部,分光測光

部などの状態が変化して,検量線が変動する。したがって,正確に定量するためには,一定時間ごと

又は一定試料数ごとに検量線校正用試料を測定し,検量線を校正しなければならない。

5.6.4 

分光干渉の補正 

近接するスペクトル線の重なりの影響,試料組成の差によるバックグラウンドの差異の影響などを補正

するために,必要に応じて,次の元素間干渉補正,バックグラウンド補正などを行う。

a)

元素間干渉補正  分析線に近接する共存元素のスペクトル線による影響を補正する。あらかじめ既知

濃度の二元系又は多元系標準物質を用いて,分析線に及ぼす影響を共存元素の発光強度又は濃度の関

数として測定する。分析対象元素を測定するときに,共存元素を同時に測定し,分析線の発光強度又

は濃度に対する共存元素の影響を補正する。

b)

バックグラウンド補正  主成分濃度及び共存成分の変化並びに放電状態によってバックグラウンドが

変化して発光強度に影響を与える。補正方法は,4.7.4 c)による。

5.6.5 

定量値の表し方 

定量値は,質量分率(

%

)などで表す。

5.7 

装置の設置条件 

装置の設置条件は,4.9 による。ただし,j)k)を除く。

5.8 

安全 

安全は,次の事項に注意しなければならない。

a)

高圧ガス取扱い上の注意  高圧ガス取扱い上の注意は,4.10 a)による。

b)

装置取扱い上の注意  装置取扱い上の注意は,次による。

1)

装置の安全機構はみだりに手を加えたり改造したりしない。

2)

装置の安全機構は,常に正常に作動する状態にある。

3)

発光時は,換気ダクトを作動し,発生するガス,粉じん(塵)

,雰囲気ガスなど使用したガスの排気

を十分に行う。

4)

光源からの光を直視しない。

5)

発光終了直後の試料及び電極は高温であるため,温度が低下したことを確認した後,取り扱う。


27

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6)

装置の点検及び修理は,主開閉器を切ってから行う。詳細については,装置の取扱説明書を参照す

る。

c)

試料取扱い上の注意  試料取扱い上の注意は,4.10 c)によるほか,次による。

試料調製装置の取扱いは,十分に習熟しておく。試料成形用切断機,研磨装置,切削装置などには,

安全カバー,集じん(塵)装置を備え,使用時は保護具を着用する。これらの装置の使用には手袋を

着用せず,保護めがねを着用する。

5.9 

分析結果に記載すべき事項 

分析結果には,次のうち必要な項目について記載する。

a)

一般事項及び装置仕様  一般事項及び装置仕様は,4.11 a)による。

b)

試料及び試料処理  試料及び試料処理は,4.11 b)によるほか,次による。

1)

試料履歴

2)

前処理方法

2.1)

研磨剤の種類,粒度

2.2)

切削条件

2.3)

粉砕条件,粒度

3)

組成  溶媒,希釈剤,添加剤の種類

4)

加圧成型品は,その条件

5)

検量線作成用試料及び検量線校正用試料の種類

c)

測定条件  測定条件は,4.11 c)によるほか,次による。

1)

励起源部仕様(装置種類,励起条件,回路定数,電流,出力など)

2)

電極の種類及び形状

3)

電極間隙

4)

予備放電時間,積分時間

5)

雰囲気条件(ガスの種類,流量など)

d)

データの質の管理  データの質の管理は,4.11 d)による。

個別規格で記載すべき事項 

発光分光分析を用いる個別規格では,次のうち必要な項目について記載する。

a)

測定対象元素,定量範囲など

b)

試料採取方法

c)

分析用試料又は試料溶液の調製方法

d)

検量線作成用試料又は検量線作成用溶液の調製方法

e)

測定条件

f)

結果の整理及び表示方法

g)

データの質の管理

4.8

に規定する方法に準じた方法又は個別規格に規定する方法による。

参考文献

JIS Q 0034

  標準物質生産者の能力に関する一般要求事項

ASTM D 1193

Standard Specification for Reagent Water