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H 8453

:2010

(1) 

目  次

ページ

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

1

3

  用語及び定義 

1

4

  原理

4

5

  測定装置

5

5.1

  一般

5

5.2

  示差方式による熱拡散率測定装置 

5

5.3

  試料交換方式による熱拡散率測定装置 

6

6

  試料

6

6.1

  形状及び寸法 

6

6.2

  表面処理 

7

7

  測定手順

7

7.1

  試料厚さ及び温度上昇曲線の測定 

7

7.2

  比熱容量の測定

8

7.3

  かさ密度の測定

8

8

  計算

8

8.1

  BC 及び TC の熱拡散率の算出

8

9

  TBC 各層の熱伝導率並びに TBC の見掛けの熱伝導率及び熱抵抗率

11

9.1

  BC 及び TC の熱伝導率 

11

9.2

  TBC の見掛けの熱伝導率

11

9.3

  TBC の熱抵抗率

11

10

  報告

11

10.1

  報告事項 

11

10.2

  報告選択事項 

12

附属書 A(参考)フラッシュ法による熱拡散率測定の原理 

13

附属書 B(参考)基材と TBC とからなる試料の温度上昇曲線

14

附属書 C(参考)不均一加熱に対する補正係数の算出方法 

15

附属書 D(参考)熱損失に対する補正係数の算出方法 

16

附属書 E(参考)等面積法による面積熱拡散時間の算出方法 

17


H 8453

:2010

(2) 

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本

工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権にかかわる確認について,責任はもたない。


   

日本工業規格

JIS

 H

8453

:2010

遮熱コーティングの熱伝導率測定方法

Measurement method for thermal conductivity of thermal barrier coatings

適用範囲 

この規格は,火力発電所などで使用する発電用ガスタービンの燃焼器,動翼,静翼などの高温部品に被

覆する遮熱コーティングの,コーティング面に垂直方向の常温における熱伝導率を測定する方法について

規定する。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS B 0621

  幾何偏差の定義及び表示

JIS B 7502

  マイクロメータ

JIS B 7507

  ノギス

JIS C 1602

  熱電対

JIS H 7801

  金属のレーザフラッシュ法による熱拡散率の測定方法

JIS H 8401

  溶射皮膜の厚さ試験方法

JIS H 8451

  遮熱コーティングの耐はく離性試験方法

JIS R 1611

  ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法

JIS R 1672

  長繊維強化セラミックス複合材料の示差走査熱量法による比熱容量測定方法

JIS Z 8401

  数値の丸め方

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS H 7801 及び JIS H 8451 によるほか,次による。

3.1 

遮熱コーティング(thermal barrier coating)

燃焼ガスによる高温部品の温度上昇を抑制するために,高温部品を構成する耐熱性に優れた超合金など

の基材の表面のボンドコートと界面酸化物の上に高融点,かつ,低熱伝導率のセラミックスを物理蒸着,

化学蒸着,溶射などの方法によって被覆した高ふく射率のトップコートからなる多層コーティング(JIS H 

8451

参照)

3.2 

温度上昇の割合 

試料裏面温度 と常温 T

s

との差を,試料裏面温度が最高に達した温度 T

max

と常温 T

s

との差で除した値

[(TT

s

) / (T

max

T

s

)


2

H 8453

:2010

   

3.3 

温度上昇曲線 

温度上昇の割合の時間変化を表示した曲線(

図 の太い実線)。熱損失などがない理想条件における温度

上昇曲線は,式(A.1)で表される。

3.4 

ハーフタイム(t

1/2

図 の温度上昇曲線において,温度上昇の割合が 0.5 まで達するのに要する時間(s)。

3.5 

面積熱拡散時間(A

図 において温度上昇曲線(太い実線)と,時間 0 s,温度上昇の割合 1.0 で囲まれるハッチング部分の

面積(=A)として表される時間(s)

3.6 

熱拡散時間(

τ

 0

試料の表面をパルス加熱してから裏面まで熱が拡散して試料全体の温度が均一になるまでに要する時間

(s)

。平板状試料の場合には,次の式で表される。

α

τ

2

0

d

=

ここに,

τ

 0

熱拡散時間(s)

d

厚さ(m)

α

熱拡散率(m

2

/s

図 1−温度上昇曲線 

3.7 

見掛けの熱拡散率 

基材と遮熱コーティングとからなる多層材料の温度上昇曲線によって算出した試料全体の熱拡散率

(m

2

/s

3.8 

比較試料 

遮熱コーティングの熱拡散率を求めるために測定試料と比較するための試料。


3

H 8453

:2010

3.9 

比熱容量(c

材料の単位質量当たりの熱容量[J/(kg・K)]

3.10 

遮熱コーティングの見掛けの熱伝導率(

λ

 TBC

遮熱コーティングを構成する部分の見掛けの熱伝導率[W/(m・K)]

3.11 

熱抵抗率(R

遮熱コーティングの見掛けの熱伝導率の逆数[(m・K)/W]で,熱の伝わりにくさを表す特性値。

遮熱コーティングの遮熱効果を評価する指標として用いる。

3.12 

フラッシュ法 

パルス加熱源としてレーザ,キセノンランプなどを用いる固体材料の熱拡散率測定方法。

3.13 

示差方式 

図 に示すように,フラッシュ法において比較試料及び測定試料の 2 個の試料に対して,常温において

同時に温度上昇曲線を測定する方式。

3.14 

試料交換方式 

図 に示すように,フラッシュ法において比較試料及び測定試料の 2 個の試料に対して,それぞれ常温

において個別に温度上昇曲線を測定する方式。

図 2−示差方式 


4

H 8453

:2010

   

図 3−試料交換方式 

原理 

この測定方法は,ボンドコート(以下,BC という。

)を基材上に被覆したままで評価した熱拡散率と BC

及びトップコート(以下,TC という。

)を基材上に被覆したままで評価した熱拡散率とを用い,別途求め

た比熱容量及びかさ密度から遮熱コーティング(以下,TBC という。

)の見掛けの熱伝導率を求める方法

である。

a) BC

及び TC の熱拡散率は,次の方法で求める。

図 に示す 3 種類の試料の温度上昇曲線をフラッシュ法によって測定し,面積熱拡散時間及び見掛

けの熱拡散率を求める。

図 の a)  と b)  との比較から BC の熱拡散率が得られる。

また,

図 の b)  と c)  との比較から TC の熱拡散率を得る。

a) 

基材(比較試料)  

b) 

基材の上に BC を形成
した試料(測定試料)
(基材+BC 

c) 

基材の上に BC を形成
し,その上に TC を形成
し た 試 料 ( 測 定 試 料 )
(基材+BCTC 

図 4−熱拡散率測定用試料の断面図 

b) BC

及び TC の熱伝導率は,式(1)及び式(2)のように,それぞれの熱拡散率,比熱容量及びかさ密度の

積によって求める。

BC

BC

BC

BC

ρ

α

λ

×

×

=

c

 (1)

TC

TC

TC

TC

ρ

α

λ

×

×

=

c

 (2)


5

H 8453

:2010

ここに,

λ

BC

BC

の熱伝導率[W/(m・K)]

λ

TC

TC

の熱伝導率[W/(m・K)]

α

BC

BC

の熱拡散率(m

2

/s

α

TC

TC

の熱拡散率(m

2

/s

c

BC

BC

の比熱容量[J/(kg・K)]

c

TC

TC

の比熱容量[J/(kg・K)]

ρ

BC

BC

のかさ密度(kg/m

3

ρ

TC

TC

のかさ密度(kg/m

3

c) TBC

の見掛けの熱伝導率は,次によって求めることができる。

TBC

の見掛けの熱伝導率

λ

TBC

は,式(3)で求める。

式(1)及び式(2)で求めた

λ

BC

λ

TC

を用いて,

TC

TC

BC

BC

TBC

TC

BC

λ

λ

λ

d

d

d

d

+

=

+

 (3)

ここに,

d

BC

BC

の厚さ(m)

d

TC

TC

の厚さ(m)

λ

BC

BC

の熱伝導率[W/(m・K)]

λ

TC

TC

の熱伝導率[W/(m・K)]

式(3)を

λ

TBC

について整理した式(4)から TBC の見掛けの熱伝導率を求める。

(

)

BC

TC

TC

BC

TC

BC

TC

BC

TBC

λ

λ

λ

λ

λ

×

+

×

×

×

+

=

d

d

d

d

 (4)

測定装置 

5.1 

一般 

熱拡散率の測定装置は,次のいずれかを用いる。

a)

示差方式

b)

試料交換方式

5.2 

示差方式による熱拡散率測定装置 

図 に示すように,試料保持具,二標的温度応答測定装置,パルス加熱光源,測定回路,記録装置,測

定容器,接触温度計及び温度表示器で構成する。

a)

試料保持具は,比較試料と測定試料とを近接して保持できる構造とする。

b)

二標的温度応答測定装置は,比較試料と測定試料との温度上昇曲線を同時に観測するために二つの検

出器をもつ構造とする。


6

H 8453

:2010

   

図 5−示差方式フラッシュ法熱拡散率測定装置の構成例 

5.3 

試料交換方式による熱拡散率測定装置 

試料交換方式による熱拡散率測定装置は,JIS H 7801 の 4.(測定装置)及び JIS R 1611 の 5.1(装置及

び器具)による。

試料 

6.1 

形状及び寸法 

試料の形状及び寸法は,次による。寸法については,受渡当事者間の協定に基づいて決定してもよい。

a)

試料の形状の例を,

図 に示す。

試料の形状は,円形,正方形又は多角形の平板とする。円形及び正方形については直径又は一辺の

長さが 5 mm 以上 10 mm 以下,多角形については外接円の直径が 5 mm 以上 10 mm 以下とする。

b)

試料の厚さは 1.0 mm 以上 3.0 mm 以下が望ましい。試料の厚さの最大値と最小値との差は,厚さ

d

 mm

に対して,0.1

d

 mm

以下が望ましい。

図 6−試料形状の例 

c)

試料は,

図 に示す 3 種類を,比較試料及び測定試料として用いる。

d)

基材,BC 及び TC 各層の厚さの適用範囲を,

表 に示す。


7

H 8453

:2010

表 1−基材,BC 及び TC 各層の厚さの適用範囲 

厚さ

基材

1.0

mm

以上, 2.0 mm 以下

BC

0.10

mm

以上, 0.30  mm 以下

TC

0.10

mm

以上, 0.70  mm 以下

e)

基材表面の平面度(JIS B 0621 に規定。

)は,板厚を

d

 mm

として 0.02

d

 mm

以下が望ましい。

6.2 

表面処理 

基材及び BC の表面処理(黒化処理)は,JIS H 7801 による。

TC

に対する表面処理(黒化処理)は,JIS R 1611 による。

測定手順 

7.1 

試料厚さ及び温度上昇曲線の測定 

7.1.1 

一般事項 

図 の試料 a)[以下,試料 a)  という。],図 の試料 b)[以下,試料 b)  という。]及び図 の試料 c)[以

下,試料 c)  という。

]の 3 種類の試料を一組として次の測定を行う。

7.1.2 

試料厚さの測定 

試料厚さの測定は,次による。

a)

試料厚さの測定は,JIS H 7801 に規定する方法に従い,JIS B 7502 に規定するマイクロメータによっ

て測定する。

b) BC

及び TC の厚さは,JIS H 8401 によって求める。

7.1.3 

温度上昇曲線の測定 

温度上昇曲線(

図 1)の測定は,JIS H 7801 による。

a)

試料の設置  試料を測定容器内に設置する。測定容器の内部は,1 気圧の空気又は 1 Pa 以下の真空と

する。空気中及び真空中で測定される温度上昇曲線からはそれぞれの雰囲気における熱物性値が算出

されるので,測定容器内の雰囲気は,受渡当事者間の協定に基づいて決定する。

b)

試料温度の測定  温度上昇曲線を測定する前に,JIS C 1602 に規定する熱電対によって試料温度(常

温)を測定する。

c)

温度上昇曲線の測定  パルス加熱前の試料温度の変動が小さく(1 分間当たり 0.2 K 以下),かつ,赤

外線検出素子の出力が安定している状態で,試料をパルス加熱して,温度上昇の割合を測定する。

1) 

示差方式  示差方式の装置を用いる場合には,次のように測定する。

1.1)

試料 a)  を比較試料とし,試料 b)  を測定試料として同時に測定する。

1.2)

試料 b)  を比較試料とし,試料 c)  を測定試料として同時に測定する。

2) 

試料交換方式  試料交換方式の装置を用いる場合には,次のように測定する。

試料 a)∼試料 c)  を,順次,測定する。

なお,示差方式又は試料交換方式のいずれの方式でも,BC の厚さが基材の厚さの 1/10 以下の場

合は,受渡当事者間の協定によって試料 a)  及び試料 c)  の 2 種類の試料を一組として測定してもよ

1)

1)

基材と BC との熱物性値の相違は小さく,

基材厚さに対して BC の厚さが 1/10 以下の場合,

BC

の有無に起因する温度上昇曲線への影響は無視できるほど小さい(

附属書 B)。


8

H 8453

:2010

   

7.2 

比熱容量の測定 

比熱容量は,JIS R 1672 によって測定する。

BC

及び TC の比熱容量測定では,コーティングの原料粉末又は基材からはがした試料を用いる。

BC

の厚さが基材の厚さの 1/10 以下の場合には,受渡当事者間の協定に基づいて TC についてだけ測定

してもよい。

同一組成の材料に関する比熱容量の文献値を使用することもできる。

7.3 

かさ密度の測定 

BC

及び TC のかさ密度の測定の一例として,試料 b)  及び試料 c)  を用い,次による。

a)

基材を含んだ試料全体の質量を測定する。

b)

基材を含んだ試料全体の寸法を JIS B 7502 に規定するマイクロメータで厚さを測定し,JIS B 7507 

規定するノギスで形状を測定し,体積を算出する。

c) BC

及び TC の厚さは,JIS H 8401 によって求める。

d)

上記の質量,体積及び試料 a)  から求めた基材のかさ密度を用い,BC のかさ密度は,式(5)によって求

める。

(

)

[

]

BC

s

s

BC

s

BC

d

d

d

d

×

+

=

ρ

ρ

ρ

 (5)

ここに,

ρ

試料全体のかさ密度(kg/m

3

s

ρ

基材のかさ密度(kg/m

3

BC

ρ

BC

のかさ密度(kg/m

3

d

s

基材の厚さ(m)

d

BC

BC

の厚さ(m)

TC

のかさ密度は,式(6)によって求める。

(

)

[

]

TC

BC

BC

s

s

TC

BC

s

TC

d

d

d

d

d

d

×

×

+

+

=

ρ

ρ

ρ

ρ

 (6)

ここに,

TC

ρ

TC

のかさ密度(kg/m

3

d

TC

TC

の厚さ(m)

BC

の厚さが基材の厚さの 1/10 以下の場合には,受渡当事者間の協定によって TC についてだけ測

定してもよい。

計算 

8.1 BC

及び TC の熱拡散率の算出 

BC

及び TC の熱拡散率は,7.1.3 で測定した温度上昇曲線の面積熱拡散時間から算出する。計算は,JIS 

Z 8401

によって有効数字 2 けたに丸める。

注記  大気中で測定された温度上昇曲線からは大気中の熱物性値が算出され,真空中で測定された温

度上昇曲線からは真空中の熱物性値が算出される。

比較試料と測定試料との面積熱拡散時間から TBC の熱拡散率を算出する手順を示す。

a) BC

の熱拡散率は,試料 a)  を比較試料,試料 b)  を測定試料として測定を行い,式(7)及び式(8)によっ

て算出する。

BC

の熱拡散率は,

BC

2

BC

BC

τ

α

d

=

 (7)


9

H 8453

:2010

ここに,

α

 BC

BC

の熱拡散率(m

2

/s

d

 BC

BC

の厚さ(m)

τ

 BC

BC

の熱拡散時間(s)

であり,

(

)

(

)

BC

Sa

s

BC

Sa

BC

Sa

BC

3

3

6

6

C

C

A

C

C

A

C

C

+

×

+

×

+

=

τ

 (8)

ここに,

A

測定試料の面積熱拡散時間(s)

A

s

比較試料の面積熱拡散時間(s)

式(8)における

C

BC

及び

C

Sa

は,式(9)及び式(10)で求める。

BC

BC

BC

BC

d

c

C

ρ

=

 (9)

s

s

s

Sa

d

c

C

ρ

=

 (10)

ここに,

c

 BC

BC

の比熱容量[J/(kg・K)]

ρ

 BC

BC

のかさ密度(kg/m

3

d

 BC

BC

の厚さ(m)

c

s

基材の比熱容量[J/(kg・K)]

ρ

s

基材のかさ密度(kg/m

3

d

s

基材の厚さ(m)

b)

 TC

の熱拡散率は,試料 b)  を比較試料,試料 c)  を測定試料として測定を行い,式(11)及び式(12)によ

って算出する。

TC

の熱拡散率は,

TC

2

TC

TC

τ

α

d

=

(11)

ここに,

τ

 TC

TC

の熱拡散時間(s)

であり,

(

)

(

)

TC

Sb

s

TC

Sb

TC

Sb

TC

3

3

6

6

C

C

A

C

C

A

C

C

+

×

+

×

+

=

τ

 (12)

式(12)における

C

TC

及び

C

Sb

は,式(13)及び式(14)で表される。

TC

TC

TC

TC

d

c

C

ρ

=

 (13)

BC

BC

BC

s

s

s

Sb

d

c

d

c

C

ρ

ρ

+

=

 (14)

ここに,

c

TC

TC

の比熱容量[J/(kg・K)]

ρ

 TC

TC

のかさ密度(kg/m

3

d

TC

TC

の厚さ(m)

BC

の厚さが基材の厚さの 1/10 以下の場合には,受渡当事者間の協定によって TC についてだけ測

定してもよい。

8.1.1 

面積熱拡散時間の算出 

各試料の面積熱拡散時間の算出は,次のいずれかの方法による。


10

H 8453

:2010

   

a) 

等面積法による算出  附属書 に従って求められた試料の厚さ方向の熱拡散時間

aapp

2

0

α

τ

d

=

を用い,

面積熱拡散時間

A

は,式(15)によって算出する。

aapp

2

0

6

6

α

τ

d

A

=

=

 (15)

ここに,

τ

 0

等面積法で求めた試料の厚さ方向の熱拡散時間(s)

d

試料厚さ(m)

α

 aapp

等面積法によって求めた見掛け熱拡散率(m

2

/s

b) 

ハーフタイム法で求めた見掛けの熱拡散率による算出  簡易的に,面積熱拡散時間

A

は,式(16)によ

って算出する。

happ

2

6

α

d

A

=

 (16)

ここに,

d

試料厚さ(m)

α

 happ

試料の見掛けの熱拡散率(m

2

/s

ここで,試料の見掛けの熱拡散率

α

 happ

は,式(17)によって算出する。

2

/

1

2

m

bc

happ

8

138

.

0

t

d

k

k

×

=

α

 (17)

ここに,

t

1/2

温度上昇曲線によって得られるハーフタイム(s)

k

bc

黒化膜に対する補正係数

k

m

測定条件に伴う補正係数

注記  黒化膜に対する補正係数 k

bc

及び測定条件に伴う補正係数 k

m

は,JIS H 7801 の金属のレーザフ

ラッシュ法による熱拡散率の測定方法に定義される。

熱損失が無視できる測定条件下においては,k

m

k

nuh

(不均一加熱に対する補正係数:

附属書

C

)として補正することができる。ただし,k

nuh

が 0.98 より大きく 1.02 未満の場合は,この補

正は不要である。

加熱源が均一化された装置においては,k

m

k

rhl

(熱損失に対する補正係数:

附属書 D)とし

て補正することができる。k

rhl

は,温度上昇曲線においてハーフタイムに対する冷却の時定数の

γ

 rhl

の関数である。ただし,k

rhl

が 0.98 より大きい場合は,この補正は不要である。

c) 

温度上昇曲線の数値データによる算出  面積熱拡散時間 A(図 のハッチングの部分)を,温度上昇

曲線のデータから直接求める。算出は次による。

図 において,時間 0 から

τ

  0

まで,及び温度上昇の割合が 0.0 から 1.0 までの領域で表現される長

方形の面積を求める。

次に,時間 0 から

τ

 0

までの温度上昇曲線のデータよりも下側の部分(

図 の白い領域)の面積を求

める。

面積熱拡散時間 は,前者(長方形)から後者(図の白い部分)を差し引いて得られる。

ここで,温度上昇曲線のデータは,測定したデータそのものを用いる。又は,測定データに式(A.1),

式(E.2)などを最小二乗法で適用させて得た曲線のデータを用いてもよい。


11

H 8453

:2010

9 TBC

各層の熱伝導率並びに TBC の見掛けの熱伝導率及び熱抵抗率 

9.1 BC

及び TC の熱伝導率 

式(1)及び式(2)によって算出する。

9.2 TBC

の見掛けの熱伝導率 

TBC

の見掛けの熱伝導率

λ

 TBC

は,式(4)によって算出する。

なお,BC の厚さが基材の厚さの 1/10 以下の場合は,BC を無視して式(18)から求めてもよい。

TC

TBC

λ

λ

=

 (18)

9.3 TBC

の熱抵抗率 

TBC

の熱抵抗率 R

TBC

は,式(19)によって算出する。

TBC

TBC

1

λ

=

R

 (19)

10 

報告 

10.1 

報告事項 

測定結果報告書には,次の事項を記入する。

なお,既知の値を用いる場合には,測定結果にその旨記載する。

a) 

試料 

1)

基材材料名(製品名,規格番号,種類など)

2)

コーティング材料名(製品名,規格番号,種類など)及びコーティング方法

3)

試料形状,寸法並びに TBC 各層及び基材の厚さ

b) 

測定条件 

1) 

熱拡散率の測定方法(規格番号など)

2) 

熱拡散率の測定装置の形式

3) 

熱拡散率測定時の雰囲気

4) 

熱拡散率測定用試料の表面処理(有無,ありの場合は膜の種類)

5) 

面積熱拡散時間の算出方法

6) 

比熱容量の測定方法

7) 

比熱容量の測定時の雰囲気

8) 

比熱容量の測定時の試料容器

9) 

比熱容量の測定時の昇温速度

c) 

測定結果 

1)

 TBC

各層及び基材の密度

2) 

TBC

各層及び基材の比熱容量

3)

 TBC

各層及び基材の熱拡散率

4)

 TBC

各層及び基材の熱伝導率

5)

 TBC

の見掛けの熱伝導率

6) 

TBC

の熱抵抗率

7)

試料温度(常温)


12

H 8453

:2010

   

10.2 

報告選択事項 

報告事項以外で,必要のある事項を選択する。

c)

j)  は,熱拡散率測定における事項である。

a) 

測定年月日及び測定機関

b) 

測定装置の製造業者

c) 

補正(箇条 の補正項目に従って行った補正及びその補正係数)

d)

試料温度測定(熱電対の種類及び熱電対と試料との位置関係)

e) 

温度上昇曲線測定(赤外線検出素子の種類及び温度目盛の有無)

f)

パルス加熱光源(種類,強度,パルス幅,パルス光の重心及びその求め方)

g) 

測定回数(1 回又は複数回)

h)

温度上昇曲線(必要な場合に代表データについて示す。

i)

ハーフタイム又は面積熱拡散時間

j)

不確かさ

k)

受渡当事者間で協定した事項


13

H 8453

:2010

附属書 A

(参考)

フラッシュ法による熱拡散率測定の原理

A.1

  理想条件 

フラッシュ法による熱拡散率測定の解析解は,次の条件の下,Parker らによって与えられている。

a)

パルス幅が,熱拡散時間と比べて十分短く無視できるほど短い。

b)

試料の表面がパルス光によって均一に加熱される。

c)

試料は,光によるパルス加熱後の測定中に断熱状態である。

d)

試料は,異方性がなく均質である。

e)

試料は,パルス光及びふく(輻)射に対して透過性がない。

これらの条件が満たされるとき,1 次元の熱拡散現象となり,試料裏面の温度上昇の割合 T

(t)/

Δは,式

(A.1)

で表される。

( )

( )

( )

=

⎟⎟

⎜⎜

+

=

Δ

1

0

2

exp

1

2

1

n

n

t

n

T

t

T

τ

π

(A.1)

ここに,

T(t)

試料裏面の温度(K)

t

時間(s)

(パルス加熱時を t=0 とする)

ΔTQ/C: 断熱温度上昇(K)

Q

試料に与えられた総エネルギー(J)

C

試料の熱容量(J/K)

τ

 0

試料の熱拡散時間(s)

このとき,熱拡散率は,式(A.2)で表される。

0

2

τ

α

d

=

(A.2)

ここに,

α

試料の熱拡散率(m

2

/s

d

試料の厚さ(m)


14

H 8453

:2010

   

附属書 B

(参考)

基材と TBC とからなる試料の温度上昇曲線

この測定方法では,TBC の見掛けの熱伝導率を得るために必要な BC の熱拡散率は,

図 の試料 a)  と

試料 b)  との比較から,TC の熱拡散率は,試料 b)  と試料 c)  との比較から求めることができる。

図 B.1 に,Ni 基超合金の基材(厚さ約 2 mm),基材に BC(CoNiCrAlY)を 0.1 mm,0.3 mm,0.5 mm 厚

さで溶射した試料及び基材に BC を 0.1 mm 溶射した上に TC(YSZ:イットリア安定化ジルコニア)を 0.3

mm

,0.5 mm,0.7 mm 厚さで溶射した試料について測定された温度上昇曲線を示す。

図 B.1 a)  から,基材

と(基材+BC 0.1 mm)との試料の温度上昇曲線はほぼ一致していて区別が難しい。

(基材+BC 0.3 mm)

の試料では,基材だけの場合と比較して差が確認できる。この結果から,7.1.3 c) 2)  に規定する,示差方

式又は試料交換方式のいずれの方式でも,BC の厚さが基材の厚さの 1/10 以下の場合には,受渡当事者間

の協定によって試料 a)  及び試料 c)  の 2 種類の試料を一組として測定してもよいと判断した。

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

基材(smooth)
基材+BC01(smooth)
基材+BC03(smooth)
基材+BC05(smooth)

温度

上昇

割合

時間 / s

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

基材+BC01(smooth)
基材+BC01+TC03(smooth)
基材+BC01+TC05(smooth)
基材+BC01+TC07(smooth)

温度上昇の割合

時間 / s

a)

  BCCoNiCrAlY)だけを溶射 b)  BCCoNiCrAlY)及び TCYSZ)を溶射 

図 B.1Ni 基超合金の基材に BC だけを溶射,並びに BC 及び TC を溶射した試料の温度上昇曲線 


15

H 8453

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附属書 C 
(参考)

不均一加熱に対する補正係数の算出方法

不均一加熱に対する補正係数の求め方には種々の方法がある。ここでは,その中で比較的適用が容易な

方法について記載する。これ以外の方法によって補正係数を算出した場合にはその算出方法について報告

しなければならない。

試料との熱接触が小さい構造の試料ホルダを用い,真空中で保持された試料について,室温において温

度上昇曲線を測定する。測定された温度上昇曲線に対して,式(C.1)を最小二乗法又は等面積法によって適

合させ,不均一加熱の相対振幅 x,熱拡散の特性時間

τ

 0

,及び

τ

 0

に対する不均一加熱の時定数

τ

 nuh

との比

γ

 nuh

を求める。

温度上昇の割合=

( )

( )

⎟⎟

⎜⎜

+

×

⎟⎟

⎜⎜

×

+

=1

0

2

0

nuh

exp

1

2

1

exp

1

n

n

t

n

t

x

τ

π

τ

γ

(C.1)

ここに,

x

不均一加熱の相対振幅

t

時間(

s

(パルス加熱時を

t

0

とする)

τ

 0

熱拡散の特性時間(

s

τ

 nuh

τ

 0

に対する不均一加熱の時定数(

s

γ

 nuh

熱拡散の特性時間と不均一加熱の時定数との比

γ

 nuh

τ

 nuh

/

τ

 0

次に,同じ温度上昇曲線に対してハーフタイム法を適用してハーフタイム

t

1/2

を求める。

不均一加熱に対する補正係数

k

nuh

は,式

(C.2)

に示すように,ハーフタイム

t

1/2

と,式

(C.1)

を用いて得ら

れた

τ

 0

で与えられる。

0

2

/

1

nuh

8

138

.

0

τ

×

=

t

k

(C.2)


16

H 8453

:2010

   

附属書 D 
(参考)

熱損失に対する補正係数の算出方法

熱損失に対する補正係数の求め方には種々の方法がある。ここでは,その中で比較的適用が容易な方法

について記載する。これ以外の方法によって補正係数を算出した場合には,その算出方法について報告し

なければならない。

ハーフタイム法で求める熱拡散率に対する熱損失補正係数

k

rhl

は,温度上昇曲線から得られるハーフタ

イム

t

1/2

と冷却の時定数

τ

 c

との比

γ

 rhl

を用いて,式

(D.1)

によって算出する。

4

rhl

4

3

rhl

3

2

rhl

2

rhl

1

0

rhl

γ

γ

γ

γ

a

a

a

a

a

k

+

+

+

+

=

(D.1)

ここに,

t

1/2

ハーフタイム(

s

τ

 c

冷却の時定数(

s

γ

 rhl

ハーフタイムと冷却の時定数との比=

t

1/2

/

τ

 c

a

i

a

0

1.00

a

1

=−

2.79

a

2

9.86

a

3

=−

23.22

a

4

20.21

熱損失が生じている場合,温度上昇曲線は,長時間にわたって記録すると,最大値を経て低下に転じ,

最終的にはパルス加熱以前の温度に収束する。この降温領域を指数関数で適合させたときの緩和の時定数

が,冷却の時定数

τ

 c

である(

図 E.1 参照)。


17

H 8453

:2010

附属書 E

(参考)

等面積法による面積熱拡散時間の算出方法

この附属書は,等面積法による面積熱拡散時間の算出方法について記載するものであり,規定の一部で

はない。

E.1

  等面積法による面積熱拡散時間の算出方法 

等面積法による熱拡散率の算出は,

図 E.1 に示すように,最初に,温度上昇曲線の降温領域に対して,

最小二乗法によって定常温度に収束する指数関数[

exp(

t/

τ

 c

)

に比例する関数]をフィットさせて冷却の

時定数

τ

 c

を決定する。

次いで,固定された時間範囲(

t

1

t

t

2

)において,測定した温度上昇曲線の下側の面積とモデル関数の

下側の面積とが等しくなるように式

(E.1)

によって面積熱拡散時間

A

を決定する。

α

τ

6

6

2

0

d

A

=

=

 (E.1)

ここに,

α

τ

2

0

d

=

: 試料の厚さ方向の熱拡散時間(

s

d

試料の厚さ(

m

α

試料の熱拡散率(

m

2

/s

等面積算出の下限時刻

t

1

は初期ノイズの影響を受けず,かつ,可能な限り速い時刻に設定する。等面積

算出の上限時刻

t

2

は温度上昇曲線が最高値に達する時刻に設定する。

図 E.1−等面積法による面積熱拡散時間算出の原理図 

試料裏面の温度上昇の割合

T

(t)/

ΔT

は,試料裏面の温度変化を表すモデル関数

T

(t)

を用いて,式

(E.2)

よって表される。


18

H 8453

:2010

   

( )

=

×

×

=

Δ

0

m

0

2

m

m

exp

τ

t

X

A

T

t

T

 (E.2)

( )

(

)

1

2

2

m

2

m

m

2

1

2

+

+

×

=

Y

Y

X

X

A

m

 (E.3)

( )

(

)

440

1

11

12

1

2

2

2

/

1

0

Y

Y

Y

X

+

=

 (E.4)

( )

( )

( )

( )

( )

(

)

1

3

16

80

3

2

16

4

2

4

5

7

3

3

5

3

2

m

m

Y

m

m

Y

m

m

m

Y

m

Y

m

X

+

+

+

+

=

π

π

π

π

π

π

π

 (E.5)

ここに,

α

τ

2

0

d

=

試料の厚さ方向の熱拡散時間(s)

d

試料の厚さ(m)

( )

ρ

λ

α

c

=

試料の熱拡散率(m

2

/s

λ : 試料の熱伝導率[W/(m・K)]

c

試料の比熱容量[J/(kg・K)]

ρ

試料のかさ密度(kg/m

3

( )

t

T

試料裏面の温度(K)

t

時間(s)

(パルス加熱時を t=0 とする。

( )

d

c

Q

T

ρ

=

Δ

熱損失がない場合の温度上昇である断熱温度上昇(K)

Q

試料が単位面積当たりに吸収する熱量(J)

Y

ビオ数(試料の熱損失を表す無次元数) 
試料の側面からの熱損失が無視でき,試料の表裏面か
らの熱損失が支配的な場合に YKd

/ 

λ

K

試料と外界との熱伝達係数

参考文献  W. J. Parker, R. J. Jenkins, C. P. Butler, G. L. Abott, Flash Method of Determining Thermal Diffusivity,

Heat Capacity, and Thermal Conductivity, J. Appl., Phys., 32 (1961) pp.1679-1684.