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H 7805

:2005

(1)

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。


H 7805

:2005

(2)

目  次

ページ

序文 

1

1.

  適用範囲

1

2.

  引用規格

1

3.

  定義

1

4.

  一般事項

1

5.

  原理

1

6.

  測定装置

1

7.

  試料の調製及びサンプリング

2

8.

  標準物質

2

9.

  測定方法

2

9.1

  装置の光学系 

3

9.2

  装置の方式 

3

9.3

  測定条件 

3

10.

  結晶子径の算出

4

10.1

  結晶子径の測定

4

10.2

  結晶子径の算出における限界

5

11.

  装置の点検 

5

12.

  安全管理 

5

13.

  報告

6

 


日本工業規格

JIS

 H

7805

:2005

X

線回折法による金属触媒の結晶子径測定方法

Method for crystallite size determination in metal catalysts by X-ray

diffractometry

1. 

適用範囲  この規格は, X 線回折法による担持金属解媒などの金属触媒の結晶子径測定方法について

規定する。この規格は,結晶子径 2 nm 以上 100 nm 以下で,金属含有量が 1 %  以上の試料に適用する。

2. 

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS H 7803

  金属触媒の粒子径及び結晶子径測定方法通則

JIS K 0131    X

線回折分析通則

JIS K 0211

  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0215

  分析化学用語(分析機器部門)

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 7803JIS K 0131JIS K 0211 及び JIS K 0215  に

よる。

4.

一般事項  測定方法に共通な一般事項は,JIS H 7803  による。

5. 

原理  試料に X 線を照射して得られる回析 X 線を測定し,結晶子が微細(100 nm 以下)な場合に回

折 X 線の幅が拡がることを利用し,回折線幅の拡がりと結晶子径との関係式から結晶子径を算出する。

6.

測定装置  測定装置は,標準試料回析線幅が被検試料の回析線幅よりも狭くなる高分解能の光学系を

もつ粉末 X 線回析装置を使用する。

  1  X 線回折装置の基本構成の例

X線発生部

ゴニオメータ部

計数・指示記録部

制御・データ処理部


2

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7. 

試料のサンプリング及び調製  試料のサンプリングは試料の量や形態(粉末状,塊状など)によって,

その方法を変える必要がある。次に代表的な試料についてのサンプリング方法を示す。

a) 

量が十分ある粉末試料

1) 

粒子径の大きい粉末試料は,必要に応じて乳鉢などを用い手動又は専用の機械によって粉砕して 10

µm 以下の粒子径になるようにする。ただし,粉砕によって生じる化学変化,構造変化,又は粉砕
機などからの汚染に注意する。

2) 

担持金属触媒の場合,担体からの回折線が分析線である担持金属粒子の回折線に重なり,十分な精

度の解析ができない場合がある。この場合には,担体だけのブランク試料を用いて測定を行う必要

がある。

b) 

配向性のある試料  試料ホルダーに充てんする際に,選択配向を起こしやすい試料の場合は,次によ

る。

1)

非晶質物質(シリカガラス粉末など)を希釈材として試料粉末に混合する。

2)

回転振動試料台を使用する。

c) 

量が少ない粉末試料  枠型試料板や凹型試料板の試料充てん部が埋まるほど十分な試料量がない場合

は,次による。

1)

固定剤(コロジオンなど)を用いる。

2)

無反射試料板(回折線が出ないシリコンや石英などの単結晶を利用した試料板)を用いる。

d)

極少量試料

1)

ガラスキャピラリーに充てんする。

2)

溶媒に分散させ,ろ過することによって,ろ紙上に固定する(この場合には,ろ紙からの回折 X 線

が被検物質の回折 X 線と混在するので,その判別を必要とする)

e) 

塊状試料  測定面が平たんであることが前提となるので,平たんでない場合は,加工して平たん面を

測定面とする。

f) 

コロイド状又は液体中に分散された試料

1)

粘性が高く,比較的形状を安定に保持できる試料の場合は,粉末試料と同じように取り扱う。

2)

粘性が低く,形状が保持できない試料の場合は,ガラスキャピラリーなどに試料を充てんするか,

又は目的粒子からの回折 X 線を妨害しない高分子フィルムやアルミニウムなどの金属箔を用いて試

料が流れ出さないようにシールなどをして試料を固定する(この場合は,固定に使用した材料だけ

でブランク測定を行なって,

固定に使用した回析 X 線のプロファイルを確認しておく必要がある)

8. 

標準物質  標準物質は,次による。

a)

回折線幅から結晶子径を算出する目的のための標準物質としては,試料による回折線の拡がりがなく,

装置によってだけ回折線幅が拡がる物質を用いる。

b)

理想的には,粒子径として 25

µm 程度で結晶子径が十分に大きく,かつ,不均一ひずみのない物質を

用いる。可能であれば被検物質と同じ物質が望ましい。

c)

被検物質と同じ物質からなる標準物質が入手できない場合は別の物質で代用してもよい。例えば,25

µm 程度に粒子径をそろえたけい(珪)素粉末を焼鈍して使用する。


3

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9. 

測定方法

9.1 

装置の光学系  通常  (

1

) 

,X 線ビームの幅を制限するスリットを用いて X 線の発散と集中によって

測定する(Bragg-Brentano の)集中方式による光学系を用いる。

注(

1

) 

選択配向の影響や試料の充てんによる影響で再現性のよいプロファイルが得られないことがあ

り,このことが原因となって,ブランク試料の測定プロファイルを差し引いても担持金属だけ

の良好な回折線が得られないことがある。このような場合には,X 線ビームを平行にする光学

素子や平行スリットを用いる平行ビーム方式を用いることも可能である。

9.2 

装置の方式  通常  (

2

) 

,反射式を用いる。

注(

2

) 

集中方式の光学系を用いた場合,反射式による測定では,選択配向の影響や試料の充てんによ

る影響で再現性のよい回析プロファイルが得られないことがある。この場合は,選択配向を緩

和させる方法や透過式平行ビームの光学系を用いる方法によって,再現性のよい,良好なデー

タを得ることができる。

9.3 

測定条件  再現性のある良好なデータを得るためには,必要十分な条件で測定する必要がある。良

好なデータを得るために必要な条件項目及び推奨条件を次に示す。

a) 

走査軸  用いる光学系と走査軸との関係を表 に示す。Bragg-Brentano の集中方式による光学系の場

合は,2θ/θ走査で測定する。

なお,平行ビーム方式による光学系では,2θ

/θ走査,2θ単独走査のいずれでも測定可能である。

ただし,反射式や透過式の違いによって,試料を固定している試料ホルダーと干渉することがあるの

で,注意する必要がある。

  1  光学系と測定に用いる走査軸との組合せ

光学系

走査軸

集中方式

2θ-θ(連動走査)

平行ビーム方式

2θ-θ(連動走査)又は 2θ(単独走査)

b)

走査方法  X 線回折測定による結晶子径の測定には,連続測定又は FT(Fixed Time)測定のいずれか

を使う。連続測定は一定速度で走査軸を駆動させながら強度を測定する方法であり,回折 X 線強度が

強い場合に用いる。FT 測定は一定角度間隔ごとに各軸を停止して,強度を一定時間計数する方法であ

り,回折 X 線強度が弱い場合に用いる。

c)

サンプリング間隔・ステップ幅  強度を記録する角度の間隔をサンプリング間隔又はステップ幅とい

う。

  2 に推奨サンプリング間隔(

3

) 

を示す。標準的なサンプリング間隔(又は,ステップ幅,以下,

“サンプリング間隔”という。

)の値は,一般的な回折線の半値幅

(0.1°程度)から算出した。

注(

3

) 

一定の走査速度では,サンプリング間隔を狭くすると,一間隔当たりの計数時間が短くなり,

統計変動が大きくなる。一方,サンプリング間隔が広すぎる場合には,統計変動は小さくなる

が,ピークを再現するに必要な測定点数が不足し,正確な回折角度が求められない。

  2  測定目的と標準的なサンプリング間隔

測定目的

サンプリング間隔算出の目安

標準的なサンプリング間隔

定性分析

半値幅の 1/5 程度

0.02°

結晶子の大きさなどの

精密測定

半値幅の 1/7∼1/10 程度

0.014

∼0.01°

d)

走査速度・計数時間  連続測定では走査速度,FT 測定では計数時間によって,測定データの再現性が


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決まる。走査速度が速いと測定時間を短縮できるが,各測定点当たりの計数値が低くなるために統計

変動が大きくなり,解析結果の再現性が乏しくなる。したがって,結晶子測定に必要な走査条件(計

数時間)は,計数値の統計変動を考慮して,必要とする相対標準偏差に収まるように決定する。

e)

計数値の統計変動  相対標準偏差を 1  %とするために必要な計数値と P/B(Peak/Background)比との関

係を

  3 示す(

4

)

  3  相対標準偏差を 1 %とするために必要なピーク強度 I

P

に対する P/B 比の影響

P/B

∞ 10  5  2  1

回折線の高さ

I

P

(counts)

10 000

12 000

14 000

20 000

30 000

注(

4

) 

結晶子径算出のもととなる回折ピーク幅を算出する際に再現性良く測定するには,相対標準偏

差を数%程度に押さえることが必要である。統計変動による影響はピーク幅やバックグラウン

ド強度によっても異なるので,最低でも数千 counts 程度の強度となるように,走査速度や計数

時間を設定する必要がある。可能ならば 10 000 counts 以上の強度が得られる条件で測定する。

f)

スリットの選択  測定光学系に,Bragg-Brentano の集中方式光学系を使用する場合は,特に受光スリ

ットの選択に留意する必要がある。最も高い分解能を必要とするので,受光スリットは最も狭いもの

を選択する。発散スリットは,測定角度によって照射幅が異なるので,これらと考慮して,試料から

X

線ビームがはみ出さないように設定することが理想である。

平行ビーム光学系を利用する場合は,分解能に寄与するビームの平行度を可能な限り高くする必要

がある。

10. 

結晶子径の算出

10.1 

結晶子径の測定  結晶子径の測定は,JIS K 0131 の 12.(結晶子の大きさと不均一ひずみの測定)に

よる。これら補正を行って結晶子径を算出するに至るまでの計算には,市販の解析プログラムに一連の手

順として盛り込まれているので,これらを利用してもよい。次に代表的な算出方法を示す。

a) 

得られる回折 線が複数(3 本以上)の場合  結晶子径を測定する物質の回折 X 線が 3 本以上得られる

場合には,式(1)によって結晶子径を算出する。この方法は,結晶子径と不均一ひずみによる回折 X 線

の幅の拡がりとを分離して,結晶子径を求める。

β· cosθ/λと sinθ/λとの関係をプロットし,独立に得られる 1/D(切片)とη(こう配)とから,結晶

子径と不均一ひずみとを求めることができる。

b) 

得られる回折 線が 本以下の場合  回折線強度が弱いため,担体の影響などによって,得られる被

検物質の回折 X 線が 2 本以下の場合に用いる方法である。この方法は,補正された回折 X 線の幅の拡

がりから,Scherrer が導き出した式 (2) を用いて結晶子径を算出する。式 (2) は回折関数の強度を表

すラウエ関数の代わりに,計算に便利なガウス型指数関数を用い,ある条件のもとで更にこれを簡略

化して導き出されている。算出された結晶子径は,不均一ひずみによる回折 X 線の幅の拡がりをもつ

物質に関しては,不均一ひずみの程度に応じた誤差をもつ。

一般的には,回折 X 線の幅が結晶子径だけに依存する場合に,式(2)によって,その回折 X 線の面

指数方向の結晶子径を求める。

λ

θ

η

λ

θ

β

sin

2

1

cos

+

=

D

 (1)


5

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θ

β

λ

cos

=

K

D

 (2)

ここに,

β

(

5

)

回折 X 線の拡がり(rad)

D

結晶子の大きさ(nm)

θ

回折 X 線のブラッグ角(degree)

λ

測定 X 線の波長(nm)

η

不均一ひずみ(%)

K

定数(注)

(

5

βに半値幅  (β

2

1

)

を用いる場合は 0.94 を,積分幅を用いる場合は 1.05 と設定する。

10.2 

結晶子径の算出における限界  X 線回折法を用いて算出できる結晶子径の限界は,結晶子径と金属

担持量とによって決まる。一般的に,回折 X 線が明りょうに確認できなくなる結晶子径 2 nm が算出下限

値であり,原理的な問題などによって結晶子径 100 nm が算出上限値である。ただし,担体などの目的物

質以外の回折 X 線の影響によってこの限界値は異なることがある。また,金属担持量に基づく算出下限値

は,同様に担体などの影響を受けなければ,金属担持量 1  %  であり,これ以上であれば算出できる。

11. 

装置の点検  装置の点検は,JIS K 0131 の 19.(装置の点検)による。

12. 

安全管理  安全管理は,JIS K 0131 の 20.(安全管理)による。

13. 

報告  試験報告書が必要な場合は,報告事項を受渡当事者間の協定によって次の項目の中から選択す

る。

a)

測定年月日

b)

測定者

c)

試料名

d)

標準物質名

e)

分析項目

f)

装置の名称及び形式

g)

試料調製方法

h)

測定方法とその条件

1)  X

線管球の種類

2)  X

線管球の作動条件

3)  X

線の単色化の方法

4)

ゴニオメータの走査条件

5)

スリット及びコリメータの条件

6)

検出器の種類

7)

試料の温度

8)

附属装置の作動条件

i)

解析方法とその条件


6

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1)

結晶子径算出に用いた計算式,定数など

2)

測定面(hkl)

j)

結果

1)

結晶子径の値(複数の測定面から算出される平均値などの値又は個々の測定面によって算出された

値)

2)

偏差(複数の測定面から算出される平均値などの場合)

k)

その他必要な事項