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H 7804:2005  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

1. 適用範囲 ························································································································ 1 

2. 引用規格 ························································································································ 1 

3. 定義 ······························································································································ 1 

4. 一般事項 ························································································································ 1 

5. 測定原理 ························································································································ 1 

6. 測定装置 ························································································································ 2 

7. 試料の作製 ····················································································································· 3 

7.1 試料作成用装置及び器具 ································································································· 3 

7.2 分散法による試料の作成  ······························································································ 3 

8. 粒子径測定条件 ··············································································································· 3 

9. 粒子径の計算 ·················································································································· 6 

10. 粒子径及び粒子径分布の測定 ··························································································· 6 

11. 観察像及び測定データの記録 ···························································································· 7 

12. 安全管理 ······················································································································ 7 

13. 報告 ···························································································································· 7 

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日本工業規格          JIS 

H 7804:2005 

電子顕微鏡による金属触媒の粒子径測定方法 

Method for particle size determination in metal catalysts by electron 

microscope 

1. 適用範囲 この規格は,電子顕微鏡による担持金属触媒などの金属触媒の粒子径測定方法について規

定する。この規格は,透過電子顕微鏡(TEM)を用いる場合,粒径が1 nm以上100 nm以下で,走査電子

顕微鏡(SEM)を用いる場合,粒径が2nm以上100 nm以下で、金属含有量が 0.1 %以上の試料に適用す

る。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JISH 7803 金属触媒の粒子径及び結晶子径測定方法通則 

JISK 0132 走査電子顕微鏡試験方法通則 

JISZ 8819-1 粒子径測定結果の表現―第1部:図示方法 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義はJIS H 7803によるほか,次による。 

a) 分解能 顕微鏡においては微小物体を区別できる最少限界値 

b) STEM法 透過電子顕微鏡に走査機能を付加した透過走査像観察法(Scanning Transmission Electron 

Microscopyの略)。 

c) 2次電子像 試料から発生した2次電子を捕獲して可視化した電子顕微鏡像。 

d) 反射電子像 試料から発生した反射電子を捕獲して可視化した電子顕微鏡像。 

e) 2波干渉格子像 試料透過波と回折波との干渉でできる干渉図形。格子間隔と同等の干渉図形になる

ため,2波干渉格子像と呼んでいる。 

f) 

電子レンズ 電磁石によって電子にレンズ作用をさせたもの。 

g) 分散法 試料中の凝集した粒子を細かく分散させて微細な粒子の分散系をつくる方法。 

4. 一般事項 測定方法に共通な一般事項は,JIS H 7803による。 

5. 測定原理 電子顕微鏡を用いて試料を観察し,金属触媒粒子のだ円形の像の長径と短径を測定し,そ

の平均値を求める。 

参考 電子顕微鏡は,物質の形態観察を行う装置である。観察される像は2次元の投影像であるため,

球形は円として,だ円球は一般にだ円で観察される。金属触媒粒子は円形として観察される場

合もあるが,一般にややいびつな円形として観察されることが多い。金属触媒粒子の場合,針

状粒子として観察される例はほとんどないことから,だ円球の粒子と考えてよい場合が多い。

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

したがって,だ円形の像の長径と短径を測定し,その平均径の球状粒子として表すことができ

る。針状粒子や極端に歪な形状である場合を除き,この測定法が適用できる。 

6. 測定装置 測定装置は,次のいずれかを用いる。 

a) 走査電子顕微鏡 最高倍率が50〜100万倍,分解能が1〜2 nmのものを用いる。 

b) 透過電子顕微鏡 最高倍率が50〜150万倍,分解能が0.1〜0.5 nmのものを用いる。 

電子顕微鏡の構成図を図1に,電子顕微鏡の分解能と測定可能な最小粒子径の例を表1に示す。 

参考 電子顕微鏡は,波長の短い電子線を用いることにより,高い分解能で物質の形態観察を行う装

置である。電子が透過できない厚さの物質は上方から電子を照射し,2次電子や反射電子で試

料の表面の状態を観察することが可能で,また,物質が非常に薄く,電子を透過できる場合は

透過像を観察することができる。前者を走査電子顕微鏡,後者を透過電子顕微鏡という。 

図 1 電子顕微鏡の構成図 

表 1 電子顕微鏡の分解能と測定可能な最小粒径 

最高分解能(nm) 

最大倍率 

測定可能な最小粒子径 

走査電子顕微鏡 

(高加速電圧STEM

法では,通常は0.5) 

100万倍 

(CRTモニター上   

300万倍程度) 

通常2 nm程度 
十分に注意して撮影した場合1 nm 

透過電子顕微鏡 

0.1 

150万倍 

(TVモニター上   

2,000万倍程度) 

通常1 nm程度 
部分的にでも金属粒子の格子像が 
観察できる場合 :0.5 nm 
 

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備考 走査電子顕微鏡を用いて粒子径を測定する場合,試料台に試料をそのまま散布して観察するが,試料の分散

がよくないときは,透過電子顕微鏡を用いる場合と同様に試料を分散法で作製するほうがよい場合もある。
一方,透過電子顕微鏡を用いて粒子径を測定する場合には,電子が試料を通過する必要があるので,通常,
分散法で試料を作製する。 

  

7. 試料の作製  

7.1 

試料作成用装置及び器具 試料作成用装置及び器具は,次による。 

a) 超音波洗浄機  

b) マイクログリッド 150メッシュのマイクログリッドを用いると扱いやすい。 

c) メノウ乳鉢及びメノウ乳棒  

7.2 

分散法による試料の作成 分散法による試料の作成は,次の手順によって行う。 

a) 試験管にエタノール(95 %以上)などのアルコール溶媒を1〜5 ml入れる。 

b) 試験管にミクロスパーテル(小型さじ)1杯程度の少量の試料 (1) を入れ,よく振り混ぜ,試料粉体

を溶媒中に分散させ,更に,試験管を5分間超音波洗浄機に入れ,試料粉体を高分散化させる。 

c) 試験管の中の溶液をスポイトで吸い上げ (2) ,ろ紙上に載せたマイクログリッドにその1滴を滴下し,

そのまま自然乾燥させる。 

注(1) 試料が粗い粉状又は粒子状の場合,その少量をメノウ乳鉢と乳棒を用いて入念にすりつぶす。 

(2) 上澄み液を採取すると,より分散された試料を取ることができる場合がある。 

8. 粒子径測定条件 粒子径の測定条件は,次による。 

a) 最低測定視野数 無作為に抽出した代表的な視野5視野以上とする。 

b) 測定範囲と測定個数 粒子径の均一性や担体表面における偏在性によって実際上の測定個数を選定す

る。測定個数が多いほど測定値の信頼性が上がるが,実用的な粒子径の測定範囲と測定個数の目安を

表2に示す。 

表 2 想定される粒子径に対する測定範囲及び測定個数の目安 

およその粒子径 

nm 

粒子径の測定範囲 

nm 

推奨測定個数 

個 

最低測定個数 

個 

走査電子顕微鏡 

2〜5 

1〜10 

300 

150 

4〜20 

2〜50 

200 

100 

15以上 

5以上 

100 

100 

透過電子顕微鏡 

1〜3 

0.5〜10 

1 000 

500 

2〜10 

1〜30 

500 

300 

8以上 

2以上 

300 

200 

c) 撮影倍率 撮影倍率が高いほど測定が容易になるが,一枚の視野の中に含まれる粒子の個数が少なく

なるため,撮影する視野数を多くする必要がある。したがって,測定に支障をきたさない程度の低倍

率像で撮影する。走査電子顕微鏡の場合は画像の引き延ばしができないため,撮影倍率を高くする。

表3及び図2に走査電子顕微鏡像の,表4及び図2に透過電子顕微鏡像の推奨撮影倍率及び最低撮影

倍率を示す。 

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表3 走査像の推奨撮影倍率 

    表4 透過像の推奨撮影倍率 

粒子径(nm)最低撮影倍率 

推奨撮影倍率 

粒子径(nm)最低撮影倍率 

推奨撮影倍率 

500 000 

1 000 000 

200 000 

500 000 

250 000 

500 000 

100 000 

250 000 

170 000 

350 000 

67 000 

170 000 

100 000 

200 000 

40 000 

100 000 

70 000 

150 000 

30 000 

70 000 

10 

50 000 

100 000 

10 

20 000 

50 000 

15 

35 000 

70 000 

15 

13 000 

35 000 

20 

25 000 

50 000 

20 

10 000 

25 000 

50 

10 000 

20 000 

50 

4 000 

10 000 

100 

5 000 

10 000 

100 

2 000 

5 000 

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図 2 想定される粒子径と走査電子顕微鏡像及び透過電子顕微鏡像の推奨撮影倍率との関係 

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9. 粒子径の計算 粒子径は,次の式によって算出する。 

2/)

(

s

lL

L

d

+

=

ここに, 

d: 粒子径(nm) 

Ll: 粒子の長径(nm) 

Ls: 粒子の短径(nm) 

図3に粒子径測定の模式図を示す。 

図 3 測定の模式図 

10. 粒子径及び粒子径分布の測定 測定装置によって撮影した原画像を用いて,粒子径及び粒子径分布の

測定は,次の手順によって行う。 

a) 十分測定が可能な画像(有効数字2けた以上)になるように投影機などで拡大する(引き伸ばし後の

最終画像で,代表的な粒子が3〜5 mmの像として認められるように拡大すると作業はしやすい)。 

b) 測定する粒子に番号を付ける。 

c) 測定値を表計算ソフトにまとめ,平均値でソートする(昇順がよい)。 

d) 極端に大きな粒子や小さな粒子のデータを削除し,平均値を求める。 

e) 最大粒子径群の測定値がm(nm),最小粒子径群の測定値がn(nm)の場合,(m−n)/10±2のステップで

個数を分類する。 

f) 

ヒストグラムを描き(3),粒子径分布とする。 

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g) 平均粒子サイズをΣXi/ΣNiによって計算する(ここで,Xiはヒストグラムにおける各粒子のサイズ,

Niは粒子個数を表す。)。 

h) 必要に応じて積分分布曲線を書く。 

備考 市販の画像解析ソフトの利用が可能な場合(4)は,原画を読み込ませることによって,平均粒子

径の計算,粒子径分布の解析などが自動的,かつ,高スピードに実施可能な場合がある。 

注(3) JISZ 8819-1参照。 

(4) 各粒子の識別を画像のコントラストから人為的に行う場合と解析ソフトに行わせる場合とでは

測定結果が異なる場合があるので十分に注意する必要がある。 

11. 観察像及び測定データの記録 観察像のフィルム又は写真には,次の項目を付記して保管する。撮影

に用いたマイクログリッドも再撮影が可能なように番号を付して保管する。 

a) 電子線加速電圧 

b) 撮影倍率 

c) 番号 

d) 撮影試料名 

e) 撮影日時 

f) 

測定データファイル名 

g) 報告書番号 

備考 通常,a)〜c)の項目は電子顕微鏡像撮影時にフィルム上に自動的に記録される。 

12. 安全管理 試料の観察及び粒子径の測定並びに設備,装置の管理・点検に当たって,各種の動力,電

気,高圧ガスなどによる災害を防止するための教育訓練を行い,適切な安全対策を施す必要がある。安全

の確保には労働安全衛生法,労働安全法施行令,労働安全衛生規則,電離放射線障害予防規則,放射線同

位元素等による放射線障害の予防に関する法律,高圧ガス取締法,一般高圧ガス保安規則,製造物責任法

など,安全に関する法令を熟知し,作業に反映させなければならない。また,試料の取扱に当たっては,

有毒性,放射性,感染性などに留意し,安全確保のために各種の関連法規を熟知し,作業に反映させなけ

ればならない。 

13. 報告 試験報告書が必要な場合は,報告事項を受渡当事者間の協定によって,次の項目の中から選定

する。 

a) 測定年月日 

b) 測定者 

c) 金属触媒粒子試料名,担体物質及び担持率 

d) 装置の名称及び形式 

e) 観察時の装置の状況 

f) 

焼成方法及び焼成日時 

g) フィルム又は写真の番号及びデータファイル名 

h) 平均粒子径及び粒子径分布(5) 

i) 

その他必要な事項 

注(5) 粒子径分布の表示は,特に断らない限り,だ円形粒子の長径と短径の単純平均径によって表す。 

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なお,粒子径分布はヒストグラムで図示し,必要に応じて積分分布曲線を併記する。