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H 7803:2005  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1. 適用範囲 ························································································································ 1 

2. 引用規格 ························································································································ 1 

3. 定義 ······························································································································ 1 

4. 一般事項 ························································································································ 2 

5. 粒子径測定方法 ··············································································································· 2 

6. 計測対象試料 ·················································································································· 5 

7. 測定可能な粒子径の範囲 ··································································································· 5 

8. 測定結果の表示 ··············································································································· 5 

9. 測定結果の図示 ··············································································································· 5 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 7803:2005 

金属触媒の粒子径及び結晶子径測定方法通則 

General rules for the determination of particle size and crystallite size 

 in metal catalysts 

1. 適用範囲 この規格は,担体上に分散・固定化された状態(例えば,担持金属触媒)及び金属コロイ

ドとして単独又は媒体中に分散している状態(例えば,金属コロイド懸濁液)で存在する1nm以上100nm

以下の粒子径をもつ金属元素からなる金属触媒の粒子径を電子顕微鏡法で、結晶子径をX線回折法を用い

て測定する際に共通な事項について規定する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS H 7008 金属超微粒子用語 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0131 X線回折分析通則 

JIS K 0132 走査電子顕微鏡試験方法通則 

JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門) 

JIS K 0215 分析化学用語(分析機器部門) 

JIS R 1633 ファインセラミックス及びファインセラミックス粉体用の走査電子顕微鏡(SEM)観察

のための試料調製方法 

JIS Z 8819-1 粒子径測定結果の表現―第1部:図示方法 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 7008,JIS K 0050,JIS K 0131,JIS K 0132,JIS K 

0211,JIS K 0215 及びJIS Z 8819-1によるほか,次による。 

a) 粒子径測定方法に関する用語  

1) 電子顕微鏡法 試料の電子顕微鏡観察像をもとに,個々の金属粒子の粒子径を計測し,統計処理に

よって平均粒子径及び粒子径分布を求める方法。 

2) X線回折法 X線を試料に照射し,得られる金属粒子に由来するX線回折ピークの線幅をもとに結

晶子径を算出する方法。 

b) 粒子径評価法に関する用語  

1) 金属粒子 直径がおおむね1nm以上100nm以下の範囲の金属微粒子。概念として超微粒子及びク

ラスタを包含する(JIS H 7008参照)。 

2) 担体 金属微粒子を安定に保持するための支持体。 

3) 担持金属触媒 触媒活性をもつ金属の微粒子を担体表面上に分散固定させた形態の触媒。 

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4) 金属コロイド分散体 金属コロイドが固体又は液体の媒体中に分散している物体。 

5) 金属含有量 試料中に含まれる金属粒子の質量百分率。担持金属触媒の場合には金属担持量とも呼

ばれる。 

6)  粒子径 測定した粒子の長径及び短径の加算平均値。粒子が球状の場合はその直径(JIS H 7008

参照)。 

7) 平均粒子径 粒子径が異なる多数の粒子で構成される粒子群の個々の粒子径の加算平均値。 

8) 粒子径分布 粒子群中の個々の粒子の粒子径の分布(JIS H 7008参照)。 

9) 一次粒子 単一の結晶核の成長によって生成した粒子(JIS H 7008参照)。 

10) 凝集粒子 複数の粒子が凝集し,見かけ上1個の粒子として振舞う粒子の集合体(JIS H 7008参照)。 

11) 結晶子径 多結晶の中において,完全な単結晶として存在する微小結晶の大きさ(JIS H 7008参照)。 

12) シングルモーダル 特定の統計分布関数に沿った単一のピークを示す分布。 

13) マルチモーダル 特定の統計分布関数に沿わない分布。シングルモーダルでない分布。 

14) 偏在 粒子の存在する頻度が試料中の部分によって異なる状態。 

15) 統計分布関数 統計的分布を記述する関数。例えば,ガウス分布関数がある。 

4. 一般事項 粒子径測定方法に関する一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0131,JIS K 0132,JIS K 0211,

JIS K 0215,JIS R 1633及びJIS Z 8819-1による。 

5. 粒子径測定方法 粒子径測定方法は,電子顕微鏡法又はX線回折法によるものとし,その選定は,次

による。 

a) 金属触媒粒子の存在状態に基づく測定法の選定 金属触媒粒子の試料中での存在状態(粒子径の分布

状態,粒子の偏在状態など)が不明な場合の粒子径測定方法は,電子顕微鏡法及び X線回折法の両者

を併用することがもっとも望ましい。あらかじめ試料中の粒子の存在状態が既知の場合又は信頼性高

く予測される場合は,表1によって測定方法を選定してもよい。 

参考 計測される粒子径は,X線回折法では試料中の粒子全体を対象に導出されるのに対し,電子顕微鏡法で

は限定された観察視野から得られる試料の局所情報が強調されるという特徴がある。試料中の金属触媒
粒子の平均粒子径と粒子径分布を測定する目的のためには,電子顕微鏡法が必要である。一方,X線回
折法は装置及び手法のはん(汎)用性が高いこととともに,試料中の粒子に偏在がある場合でもそれら
を包含する全体の値を与える点,電子顕微鏡法にはない特徴をもっている。このように両法は粒子径の
計測法として相互に補完的であり,正確な粒径を把握するためには両法を併用することが望ましい。 

なお,X線回折法で計測される量は結晶子径であり,粒子径分布がシングルモーダルの場合でも,結

晶子径が2 nm以下の小さな粒子ではX線の回析ピークが広がりノイズと判別されにくくなるので,大
きな結晶子をもつ粒子が強調される傾向があることに注意が必要である 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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表 1 測定試料中の金属触媒粒子の存在状態の分類と測定方法の選定 

試料中の粒子の偏在 

粒子径の分布 

測定法の適用性 (1) 

無 

シングルモーダル 

マルチモーダル 

有 

シングルモーダル 

マルチモーダル 

注(1) 記号A,B及びCの意味は次による。 

A:試料中の粒子径分布がシングルモーダルであり,X線回折法の解析の前提

条件が保証されるので,X線回折法単独でも粒子径の見積もりが可能。 

B:X線回折法の前提条件が保証されていないので,両法の適用を推奨。 
C:両法の適用を強く推奨。特に,電子顕微鏡法においても,試料中の粒子の

存在に偏在があるため,観察視野を変えた注意深い測定が必須。 

b) 測定法の検出限界に基づく測定方法の選定 金属触媒の粒子径測定方法における検出限界(検出感度)

は,測定方法,粒子径及び金属含有量によって異なるので,その検出限界によって測定方法を選定す

る。通常の測定条件における電子顕微鏡法及び X線回折法それぞれの適用可能範囲を,図1に示す。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

                  TEM    :  透過電子顕微鏡 

          SEM  :  走査電子顕微鏡 

          XRD  :  X線回折法 

    : 適用範囲  

           : 条件が許せば適用可能な範囲 

           : 1次粒子か1次粒子の集合体かの判断を要する範囲 

           : 測定の信頼性に関する大まかな境界線 

図 1 電子顕微鏡法及びX線回折法による粒子径測定の適用範囲 

金属含有率(%) 

金属含有率(%) 

(n

m

) 

(n

m

) 

金属含有率(%) 

(n

m

) 

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6. 計測対象試料 計測対象試料は,次による。 

a) 試料の形状 測定試料の形状は,通常,粉末状の固体又は液状とする。 

b) 試料量 電子顕微鏡法では,測定試料を分散法で作成するので,mg程度の試料量があればよい。X線

回折法では,試料ホルダーの充てんに必要な100 mg以上の試料量があることが望ましい。ただし,

測定による試料の変質がない場合には,測定後に試料を回収することができる。 

c) 試料の金属含有量 正確な測定のためには,1 %以上の金属含有量であることが望ましい (²) 。 

注(2) 電子顕微鏡法では,条件によって,0.1 %の金属含有量まで測定可能である。 

d) 試料の取り扱い及び保管 金属微粒子は粒子径が小さくなるほど粒子構成全金属原子数に対する表面

露出金属原子数の比が増大し,そのために粒子表面が酸化されたり,粒子間の凝集が引き起こされや

すくなる。このような微粒子に特有な不安定さを考慮して,測定中及び保管中の試料の変質には十分

な注意が必要である。 

7. 測定可能な粒子径の範囲 電子顕微鏡法では,透過電子顕微鏡(TEM)を用いる場合,測定可能な粒

子径の範囲は,おおむね1 nm以上である。ただし,10 nmを超えると1次粒子であるか,1次粒子の凝集

体であるかの判別が必要である。一方,走査電子顕微鏡(SEM)を用いる場合,測定可能な粒子径の範囲

は,おおむね2 nm以上である。 

X線回折法(XRD)では,おおむね2 nm以上100 nm以下の測定範囲について適用可能である。 

8. 測定結果の表示 測定結果の表示は,次による。 

a) 電子顕微鏡法による測定結果の表示は,特に断らない限り,測定によって得られた個々の粒子径の統

計的処理によって求めた平均粒子径及び粒子径分布(標準偏差)とする。 

b) X線回折法では,適切な解析式を用いて導出された結晶子径を粒子径として表示する。 

備考 通常,電子顕微鏡法及びⅩ線回折法を併用する。両者の測定結果が一致した場合は,測定値の

信頼性は高い。 

9. 測定結果の図示 測定結果の図示は, JIS Z 8819-1 による。