H 7505
:2004
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人大阪科学技術センター付属ニューマ
テリアルセンター(OSTEC)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定
すべきとの申出があり,
日本工業標準調査会の審議を経て,
経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
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(2)
目 次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
3.
定義
1
4.
試験片
2
5.
試験装置
2
5.1
引張試験機
2
5.2
加熱装置
2
5.3
温度測定装置
3
6.
試験方法
3
6.1
試験温度
3
6.2
試験手順
3
7.
超塑性伸び及び m 値の求め方
3
7.1
超塑性伸び
3
7.2
ひずみ速度感受性指数(m 値)
3
8.
報告
5
8.1
記載事項
5
8.2
付記事項
5
日本工業規格
JIS
H
7505
:2004
金属系超塑性材料の R 型試験片による
引張特性評価方法
Method for evaluation of tensile properties of metallic superplastic materials
using R-type specimen
序文 金属系超塑性材料を超塑性成形するためには,その力学的性質を把握することが必要となる。この
規格で定める R 型試験片を用いた引張試験は,超塑性材料の破断伸び及び m 値を,標準的な加熱炉を用い
て簡便に評価できる方法である。
1.
適用範囲 この規格は,微細結晶粒超塑性を示す板厚 1∼3mm の金属系超塑性材料を,超塑性発現条
件の下で引張試験を行い,その引張特性を評価する方法について規定する。
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS B 7721
引張・圧縮試験機―力計測系の校正・検証方法
JIS C 1602
熱電対
JIS H 7007
金属系超塑性材料用語
JIS Z 2201
金属材料引張試験片
JIS Z 8401
数値の丸め方
JIS Z 8704
温度測定方法−電気的方法
3.
定義 この規格で用いる用語及び記号の定義は,JIS H 7007 によるほか,次による。
a) R
型試験片 JIS Z 2201 に規定される通常の引張試験片から平行部を取り除いた形状の試験片。
b) R
部 R 型試験片の主要な変形部分で,つかみ部の間に設ける円弧部分。
c)
R
部長さ(L
R
) R 型試験片のつかみ部間に設ける円弧部分の長さ(mm)
d) R
部伸び量(
∆
L
R
) R 部長さの伸び量(mm)
e)
超塑性伸び(
δ
) 超塑性変形で得られた破断伸び(%)
f)
標点距離(l
0
) R 部中央に付けた試験前の 2 標点間の距離で,超塑性伸び及び公称ひずみ速度の基
準となる長さ(mm)
。適切な測定器によって少なくとも 0.05mm の精度で測定する。
g)
破断後の標点間の長さ(l) 破断後,試験片の両破断片の中心線が一直線上にあるように破断面を突
き合わせて測定した標点間の距離(mm)
。
h)
真ひずみ速度(
ε
&) 単位時間当たりの真ひずみの増加量(s
-1
)
i)
公称ひずみ速度(
N
ε
& ) 引張速度を標点距離(l
0
)で除した値(s
-1
)
2
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j)
公称応力(
N
σ
)変形中の引張力を試験前の R 部最小断面積で除した値(N/mm
2
又は MPa)
k)
変形応力(
σ
) 変形中の引張力をそのときの R 部各断面における断面積で除した値(N/mm
2
又は
MPa
)
4.
試験片 試験片は,板状定形とし,形状及び寸法は,図 1 による。L
R
, R, W
及び l
0
の許容誤差は±
0.05 mm
とする。つかみ部の長さ L
C
は 20 mm 以上とする。加工に際し,両側の R 底の位置が合致するよ
うに特に注意する。
単位 mm
つかみ部幅
B
R
部最小幅
W
R
部長さ
L
R
R
部半径
R
標点距離
l
0
板厚
t
16 6 30 25 6
もとのまま
図 1 試験片の形状
5.
試験装置
5.1
引張試験機 引張試験機は,次による。
a)
試験機は,JIS B 7721 を満たすもののなかから,引張速度一定の条件を満足するものを用いる。
b)
試験機は,強固な基礎台に据え付け,つかみ装置取付部を結ぶ直線を正しく鉛直又は水平において使
用しなければならない。
c)
試験は,試験片及びつかみ装置の酸化の影響を防止できる雰囲気で行う。
5.2
加熱装置 試験片の加熱には,温度調節装置を備えた加熱炉を用い,試験中常に試験片及びチャック
間の全範囲にわたり,
表 1 の許容範囲内で,一様かつ一定に加熱することができるものを用いる。
ただし,473 K 以下の温度又は 1 273 K を超える温度の許容範囲は,受渡当事者間の協定による。
3
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表 1 試験温度の許容範囲
単位 K
試験温度 473 を超え
873
以下
873
を超え
1 073
以下
1 073
を超え
1 273
以下
許容範囲
±3
±4
±5
5.3
温度測定装置 温度測定装置は,計測器と熱電対とからなり,次による。
a)
計測器 計測器は,測定温度の全範囲にわたって試験温度が 5.2 の許容範囲内にあることを保証する
のに十分なものを用いる。
b)
熱電対 熱電対は JIS C 1602 に規定されているものを使用する。また,熱電対は使用温度に十分に耐
えるものを使用する。
熱電対以外の測温体を使用する場合は,熱電対による場合と同等以上の精度をもつものを使用する。
6.
試験方法
6.1
試験温度 温度測定は,JIS Z 8704 による。試験中の試験片の温度は,5.2 の許容範囲内に保持しな
ければならない。昇温時間,均熱保持時間は受渡当事者間の協定による。
6.2
試験手順 試験手順は,次による。
a)
試験片寸法は,少なくとも 0.01 mm の精度で測定しなければならない。
b)
超塑性伸びを求めるための標点距離は,
図 1 に示すようにR部中央の 6 mm とする。試験前の標点距
離は,0.01 mm の精度で測定しなければならない。
c)
試験片はつかみ装置によって固定する。また,試験中,試験片には軸方向の引張力だけが加わるよう
にしなければならない。
d)
引張試験は,通常引張速度一定の条件で行う。
e)
試験中,適切な測定器によって引張力の変化を測定する。
7.
超塑性伸び及び m 値の求め方
7.1
超塑性伸び 超塑性伸びは,次の式によって求める。有効数字は JIS Z 8401 によって 2 けたに丸め
る。
100
0
0
×
−
=
l
l
l
δ
ここに,
δ
:
超塑性伸び(破断伸び)
(%)
l
:
破断後の標点間の長さ
0
l
:
標点距離
7.2
ひずみ速度感受性指数(m 値) m 値は,
2
本以上の試験片を用いてそれぞれ異なる引張速度におい
てなされた中断試験の結果から次のように決定する。試験を中断するR部伸び量は,
∆
L
R
=3 mm
±
0.5 mm
と規定する。また,最小及び最大の引張速度は,
2
倍から
10
倍程度異なるように選択する。各試験につい
て,次に示す a
)
から g
)
の手順によって,各目盛における変形応力
]
[i
σ
,真ひずみ速度
]
[i
ε
& を求める。
備考
一般に変形応力
σ
(
N/mm
2
又は
MPa
)は,ひずみ速度
ε&
(
s
-1
)の増加によって上昇する。その
関係が,
m
K
ε
σ
&
=
によって表されるとき,m をひずみ速度感受性指数,又は単に m 値という。
ここに,K は定数であり,m は,
ε
σ
&
log
/
log
∂
∂
=
m
で定義される。
4
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図 2 R 部に設ける目盛
a
) R
部中央に引張軸方向に 3 mm 間隔の五つの目盛を設ける。便宜上
図 2 のように試験片を引張軸が水
平となるようにおき,中央の最小断面積位置の目盛を目盛[0],左側の目盛を目盛[-6],[-3],右側の目
盛を目盛[+3],[+6]と呼ぶ。
b
)
各目盛における試験前のR部幅 W
0
[i](i=-6, -3, 0, +3, +6)
及び板厚 t
0
[i]
を測定する。これらの値から,各
目盛における断面積 A
0
[i]
を算出する。
c
)
引張試験を行い,R部伸び量
∆
L
R
3 mm
で中断し,試験中断直前の引張力 P を求める。
d
)
各目盛における試験後のR部幅 W[i]及び板厚 t[i]を測定する。これらの値から,各目盛における断面積
A[i]
を算出する。
e
)
各目盛における変形応力
]
[i
σ
及び真ひずみ
]
[i
ε
は,次の式で算出する。
]
[
]
[
i
A
P
i
=
σ
[ ]
[ ]
[ ]
i
A
i
A
i
0
ln
=
ε
f
)
各目盛における真ひずみ速度
]
[i
ε
&
は,e)で求めた真ひずみ
[ ]
i
ε
を試験開始から中断までの時間τで除
した値とする。
g
) 2
種類以上の異なる引張速度における試験について,各目盛における変形応力
[ ]
i
σ
,真ひずみ速度
]
[i
ε
&
を
図 3 のように両対数軸上に図示して最小二乗法によって直線回帰し,その傾きとして m 値を小数点
以下 2 けたまで算出する。その際,各断面積のデータを等価に扱うため,目盛
[ ]
0
のデータに 2 倍の重
みをつけて回帰直線を求める。
5
H 7505
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図 3 変形応力─真ひずみ速度関係の一例
8.
報告
8.1
記載事項 試験報告書には,受渡当事者間の協定によって,次の項目から一部又は全部を選択して
記載する。
a
)
試験材料
1
)
製造業者名
2
)
材料の名称
3
)
種類又は記号
4
)
製造番号
b
)
試験片の寸法
c
)
試験装置の概要
d
)
試験条件
1
)
試験温度
2
)
引張速度
3
)
試験雰囲気
e
)
試験結果
1
)
超塑性伸び
2
)
最大公称応力
3
)
公称応力−R 部伸び量関係
4
) m
値(測定した真ひずみ速度範囲)
8.2
付記事項 試験報告書には,次の事項を付記することが望ましい。
a
)
試験材料
1
)
加工条件
2
)
熱処理条件
6
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3
)
化学成分
b
)
素材の結晶粒度
c
)
素材の室温における機械的性質
d
)
素材からの試験片採取条件
e
)
試験条件
1
)
昇温速度
2
)
均熱保持時間