H 7312
:2007 ( IEC 61788-11:2003 )
(1)
目 次
ページ
序文
1
1
適用範囲
1
2
引用規格
1
3
用語及び定義
1
4
要求事項
2
5
装置
2
5.1
測定用基板の材質
2
5.2
測定用基板の寸法
2
5.3
抵抗 R
2
測定用クライオスタット
2
6
試料
3
7
測定
3
7.1
室温 293 K における抵抗 R
1
の測定
3
7.2
超電導転移直上抵抗 R
2
の測定
3
7.3
残留抵抗比 RRR の算出
5
8
試験方法の精確さ及び安定度
5
8.1
室温
5
8.2
電圧測定
5
8.3
試験電流
5
9
試験報告
5
附属書 A(参考)残留抵抗比 RRR 測定に関する追加参考事項
7
H 7312
:2007 ( IEC 61788-11:2003 )
(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人国際超電導産業技術研究センター
(ISTEC)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は
もたない。
日本工業規格
JIS
H
7312
:2007
(IEC 61788-11
:2003
)
超電導−残留抵抗比試験方法−
ニオブ 3 すず複合超電導導体の残留抵抗比
Superconductivity
Residual resistance ratio measurement
Residual resistance ratio of Nb
3
Sn composite superconductors
序文
この規格は,2003 年に第 1 版として発行された IEC 61788-11 を基に,技術的内容及び対応国際規格の構
成を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,ニオブ 3 すず複合超電導導体の残留抵抗比を求めるための試験方法について規定する。
この試験方法は,く(矩)形又は円形の断面で一体的な構造をもち,残留抵抗比が 350 未満,総断面積
が 3 mm
2
未満,かつ,反応熱処理を行った超電導導体に適用する。試料はできるだけ真っ直ぐなものが望
ましいが,そうでない場合は,試料を熱処理後の形に保ったまま測定するように注意する。すべての測定
は,磁界を加えないで行う。
この規格の本体に規定する方法を主試験方法とし,参考として,その他の試験方法を,まとめて
附属書
A
に示す。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61788-11:2003
,Superconductivity−Part 11: Residual resistance ratio measurement−Residual
resistance ratio of Nb
3
Sn composite superconductors (IDT)
なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,一致していることを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS H 7005
超電導関連用語
注記 対 応 国 際 規 格 : IEC 60050-815 , International Electrotechnical Vocabulary − Part 815:
Superconductivity (MOD)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS H 7005 によるほか,次による。
2
H 7312
:2007 ( IEC 61788-11:2003 )
3.1
残留抵抗比,RRR
室温の抵抗と超電導転移直上での抵抗との比。
ニオブ 3 すず複合超電導導体の残留抵抗比(RRR)は,式(1)によるものとし,室温 293 K における抵抗
R
1
を超電導転移直上での抵抗 R
2
で除したものである。
図 1 による。
2
1
R
R
RRR
=
(1)
注記 超電導転移直上とは,温度が上昇して抵抗が急に増加する領域の接線(a)と,更に温度が上昇し
て抵抗がゆるやかに上昇する領域の接線(b)との交点 A を指す(
図 1 参照)。
図 1−温度と電圧との関係
4
要求事項
室温及び低温における抵抗測定は,四端子法によって実施しなければならない。
この方法による目標精度は,比較試験における変動係数(COV)で 5 %以下とする(A.3 参照)
。
注記 比較試験とは,1 本のニオブ 3 すず複合超電導導体から数個の測定試料を採取して,同様に行
う残留抵抗比試験を指す。
5
装置
5.1
測定用基板の材質
測定用基板の材質は,銅,アルミニウム,銀,又は液体ヘリウム温度(4.2 K)において熱伝導率が 100 W/(m・
K)以上のものとする。0.1 mm 以下の厚さの絶縁層(ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリテ
トラフルオロエチレンなどからなるテープ又は層)でその表面を覆わなければならない。
5.2
測定用基板の寸法
測定用基板の長さ又は幅のいずれか一方向は,少なくとも 30 mm の長さとする。
5.3
抵抗 R
2
測定用クライオスタット
クライオスタットは,抵抗
R
2
の測定のため,支持具によって試料を支持し,液体ヘリウムを貯液できる
構造をもつものとする。試料支持具は,測定用基板に取り付けた試料を下げて液体ヘリウムの中に入れた
(b)
(温度)
︵電圧
︶
A
(a)
3
H 7312
:2007 ( IEC 61788-11:2003 )
り,試料を上げて液体ヘリウムから出す操作を行うことができ,かつ,試料に電流を流して試料の両端に
生じる電圧が測定できる構造でなければならない。
6
試料
測定用試料は,継ぎ目又はねじ(捻)り接合がないものとし,30 mm 以上の長さでなければならない。
電圧端子間距離は 25 mm 以上とする。低温測定用の温度計は,試料の近傍に取り付ける。
試料は,何らかの機械的な方法によって測定用基板の絶縁層の上に取り付ける。そのとき試料に過度な
力を加えて曲げひずみ,引張りひずみなどが生じないように特別な注意を払わなければならない。
測定のために,試料には,両端部に電流端子及び中央部に電圧端子を取り付け,更にそれを測定用基板
の上に取り付ける。
R
1
及び
R
2
の抵抗測定は,同じ試料を用い,同じ取付け方によって実施しなければなら
ない。
7
測定
7.1
室温 293 K における抵抗 R
1
の測定
室温 293 K における抵抗
R
1
の測定は,次の手順によって行う。
a)
測定は,273 K 以上 308 K 以下の室温[
T
m
(K)]で行う。試料に電流[
I
1
(A)]を,電流密度が試料の総断面
積当たり 0.1〜1 A/mm
2
の範囲になるように流し,そのときに発生する電圧[
U
1
(V)],電流[
I
1
(A)]及び
室温[
T
m
(K)]を記録する。
b)
室温[
T
m
(K)]での抵抗
R
m
を式(2)によって算出する。
1
1
m
I
U
R
=
(2)
c)
銅マトリックスをもつ線材については,室温 293 K における抵抗
R
1
を式(3)によって算出する。
なお,純銅部材を含まない線材の場合は,
R
1
の値は
R
m
と同等とみなし,温度補正は行わない。
(
)
[
]
293
93
003
0
1
m
m
1
−
+
=
T
.
R
R
(3)
7.2
超電導転移直上抵抗 R
2
の測定
超電導転移直上抵抗 R
2
の測定は,次の手順によって行う。
a)
室温で取り付け,室温で測定した試料を,そのままクライオスタット内に入れる。
注記 試料の温度を掃引するための加熱機能を備えたクライオスタットについては,参考として,
A.1
に示す。
b)
試料をゆっくりと液体ヘリウムの中に漬け,少なくとも 5 分以上の時間をかけて液体ヘリウム温度ま
で冷却する。
c)
試料に電流[I
2
(A)]を,電流密度が試料の総断面積当たり 0.1〜10 A/mm
2
の範囲になるように流し,そ
のときに発生する電圧[U (V)],試料温度[T (K)]を記録する。SN 比(信号雑音比)を十分に高くするた
めに超電導転移直上の電圧が 10 µV を超える条件で測定を行う。温度に対する電圧曲線及び各電圧の
定義の説明図を
図 2 に示す。
4
H 7312
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注記 下付き
+
及び
−
を付けた電圧は,正電流を流した 1 回目の測定及び負電流を流した 2 回目の測定で得られる値に
それぞれ対応し,U
20
+
及び U
20
−
は,電流を流さない状態で得られる電圧である。明確にするために,U
0rev
は
U
0
−
と一致させないで示す。
図 2−温度に対する電圧曲線及び各電圧の定義
d) c)
の超電導状態にある試料に電流[I
2
(A)]を流したとき,ほとんど同時に二つの電圧,U
0
+
(正の電流極
性での初期電圧)及び U
0rev
(電流極性を短時間に反転させたときの電圧)を測定する。正確な超電導
転移直上抵抗 R
2
の測定には,測定の妨げになる過大な電圧が存在せず,かつ,試料の初期状態が超電
導状態でなければならない。そのため,式(4)の条件を満たさなければならない。
%
1
2
rev
0
0
<
−
+
U
U
U
(4)
ここに,
2
U
: 試料の低温における常電導状態の平均電圧。式(5)によって与え
られる。
e)
試料をクライオスタットの液体ヘリウムの液面から適正な位置に引き上げることによって,ゆっくり
と昇温し,完全に試料を常電導状態にする。昇温速度を 0.1 K/min から 10 K/min の間に維持しながら,
試料の温度−電圧曲線を測定する。
f)
試料の温度−電圧曲線の測定を,試料が転移して常電導状態になり,25 K 近くの温度になるまで行っ
た後,引き続いて,25 K を超えない温度で試料通電電流をゼロに下げ,そのときの電圧 U
20
+
を記録す
る。
g)
試料をゆっくりと液体ヘリウム中に下げていき,d)で初期電圧 U
0+
を測定したときと±1 K の温度まで
冷却した後,その温度で,試料に c)で測定を行ったときの逆極性で同じ大きさの試料電流[I
2
(A)]を通
電し,電圧
U
0
−
を記録する。次いで,この負の電流で e)及び f)の操作を行って,温度−電圧曲線を測
定し,更に,f)で電圧 U
20
+
を記録したときの温度±1 K の温度で電圧 U
20
−
を記録する。
h)
正及び負の極性で得た 2 本の温度−電圧曲線において,電圧が温度の増加とともに急激に変化する領
域で第 1 の直線(a)を引き(
図 2 参照),電圧が温度の増加に対して傾きの緩やかなほぼ直線になる領
域で第 2 の直線(b)を引き,正及び負の極性でそれぞれの交点の電圧を求め,U*
2
+
と U*
2
−
を決定する。
i)
補正された電圧 U
2
+
及び U
2
−
は,U
2
+
=U*
2
+
−U
0
+
及び U
2
−
=U*
2
−
−U
0
−
で算出し,平均電圧
2
U を式(5)
によって求める。
(b)
(温度)
︵電圧︶
5
H 7312
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2
2
2
2
−
−U
U
U
+
=
(5)
j)
正確な超電導転移直上抵抗
R
2
の測定には,
U
2
+
及び
U
2
−
の測定中の熱起電力による変動が許容限界内
でなければならない。そのため,∆
+
=
U
20
+
−
U
0
+
及び ∆
−
=
U
20
−
−
U
0
−
として式(6)の条件を満たさなけ
ればならない。
超電導転移直上抵抗
R
2
を式(7)によって算出する。
%
−
−
+
3
2
<
U
∆
∆
(6)
2
2
2
I
U
R
=
(7)
k)
超電導転移直上抵抗
R
2
の測定において,式(4)及び式(6)の条件が満たされない場合には,測定結果を
報告する前に,各条件が満たされるように装置及び測定方法を改良して測定しなければならない。
7.3
残留抵抗比 RRR の算出
残留抵抗比
RRR
は,式(1)によって算出する。
8
試験方法の精確さ及び安定度
8.1
室温
測定基板に取り付けた試料を室温環境に保持している間,その室温を±1 K の精確さで測定する。
8.2
電圧測定
抵抗を測定するときの電圧は,0.5 %の精確さで測定する。
8.3
試験電流
試料に流す試験電流は,四端子法によって標準抵抗器の電圧−電流特性から決定する。
標準抵抗器は,少なくとも 0.5 %の精確さをもつ四端子型抵抗器を用いなければならない。
試料に流す直流試験電流は,直流電源から供給し,その変動は,抵抗測定中において 0.5 %未満でなけ
ればならない。
9
試験報告
試験報告書には,
b)
のほか,
a)
及び
c)
の項目のうちで知り得た項目を記載する。
a)
試料
1)
製造業者名
2)
試料の識別番号
3)
断面の形状及び面積
4)
断面寸法
5)
ニオブ 3 すずのフィラメント数
6)
ニオブ 3 すずのフィラメント直径
7)
銅と非銅部との比
b)
残留抵抗比
RRR
の値(試験試料から得られた値)
c)
試験条件
1)
電流及び電圧並びにその他の条件
1.1)
試験用試料の長さ
6
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1.2)
電圧端子間距離
1.3)
電流端子間距離
1.4)
室温時の試料電流 (
I
1
),及び液体ヘリウム温度の試料電流 (
I
2
)
1.5)
室温時の電流密度,及び液体ヘリウム温度時の電流密度
1.6)
電圧(
U
1
,
U
0
+
,
U
0rev
,
U
*
2
+
,
U
20
+
,
U
0
−
,
U
*
2
−
,
U
20
−
,及び
2
U
)
1.7)
抵抗(
R
m
,
R
1
及び
R
2
)
1.8)
基板の材質,形状及び寸法
1.9)
基板に取り付けた試料の絶縁方法
1.10)
基板の絶縁材料
2)
R
1
の測定条件
2.1)
温度設定と試料の保持方法
2.2)
R
m
測定時の室温 [
T
m
(K)]
3)
R
2
の測定条件
3.1)
昇温速度
3.2)
冷却及び昇温方法
7
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附属書 A
(参考)
残留抵抗比 RRR 測定に関する追加参考事項
序文
この附属書は,残留抵抗比
RRR
測定に関する追加参考事項について記載するものであって,規定の一部
ではない。
A.1
超電導転移直上抵抗 R
2
の測定方法
次に示す方法は,試料を超電導転移直上温度に昇温させる方法として,参考にするとよい。試料の昇温
速度は 0.1〜10 K/min にすることが望ましい。大きな温度こう配を避けて,ゆっくりと昇温するためには,
ヒータ出力,熱容量(試料及び測定基板)
,ヒータと試料との距離を注意深く選ぶことが望ましい。
a)
ヒータ法
クライオスタット内の液体ヘリウム浴から試料を取り出した後,測定基板に組み込んだヒ
ータによって試料を超電導転移直上温度に加熱する。
b)
断熱法
1)
断熱法
この方法では,クライオスタットには試料,試料ホルダ,ヒータなどが入った小室を設置
する。小室を液体ヘリウム浴に浸す前に,小室内の空気をポンプで排気し,ヘリウムガスを送り込
む。その後,小室を液体ヘリウム浴に浸し,試料を 5 K 以下の温度に冷やす。ヘリウムガスを排気
した後,断熱条件下でヒータによって試料を超電導転移直上温度に加熱する。
2)
準断熱法
この方法では,低温測定全般において,試料を液体ヘリウム浴からある距離だけ離して
保持する。測定基板と液体ヘリウム浴とを熱的につないだサーマル・アンカによって試料を 5 K 以
下の温度に冷やす。測定基板に取り付けたヒータによって準断熱条件下で試料を超電導転移直上温
度に加熱する。
c)
冷凍機法
この方法では,測定基板に装着した試料を 5 K 以下の温度に電気機械装置(冷凍機)を使
って冷却する。ヒータ又は冷凍能力を制御して試料を超電導転移直上温度に加熱する。
A.2
R
2
代替測定方法
R
2
の測定には,任意に,次の方法も参考にするとよい。
a)
固定温度法
この方法においては,
7.2
で規定した方法と異なり,超電導転移直上温度又はその近傍に
おいて
R
2
を直接測定する。この場合,試料全体が均一,かつ,一定の温度(固定温度)になっている
ことを確認することが望ましい。この方法で採用される固定温度は,試験報告書に記載することが望
ましい。また,本体で定義される電圧
U
0+
及び
U
0−
は,固定温度におけるゼロ電圧レベルとして試験
報告書に記載しなければならない。熱起電力の影響を排除するために,短時間に電流極性を反転して
電圧
U
2+
及び
U
2−
を測定する。そうすれば,この
R
2
測定方法においては,熱起電力の影響を効果的
に排除することができる。
b)
コンピュータ援用法
この方法では,電流方向及び試料温度の制御並びに電圧−温度特性の測定にコ
ンピュータを用いる。試料温度を変えて 1 サイクルの測定を行う場合には,周期的な電流反転又は電
流の入・切を行うことによって,オフセット電圧を矯正する。この方法は,常電導転移がそれほど早
くないときに有効である。熱起電力の影響をあらかじめ確認しておくことが望ましい。
8
H 7312
:2007 ( IEC 61788-11:2003 )
c)
定期的な検査での簡易測定方法
十分な測定経験をもった測定者が,定められた測定器を用い,かつ,
定期的な検査によって,定められた不確かさの範囲内で,この規格本体の測定方法と同じ結果が得ら
れることが証明できる場合には,温度の測定を行わない簡易測定方法による結果は,この規格の測定
方法の結果の代わりとして採用することが可能である。
なお,定期的な検査は,次のいずれかとする。
1)
二つの機関の間における簡易測定方法及びこの規格本体の測定方法との比較検査。
2)
一つの機関における簡易測定方法及びこの規格本体の測定方法との比較検査。
3)
残留抵抗比
RRR
の値が既知の試料を用いて行う簡易測定方法による定期的検査。
A.3
測定における変動係数
12 本のニオブ 3 すず試料線材を用いて,並列方式による残留抵抗比
RRR
のラウンド・ロビン測定試験
が日本で実施された(参考文献参照)
。幹事機関によって測定された各試料線材は,ほかの 2 か所の参加機
関に配布され,各参加機関によって測定された。幹事機関とそれぞれの参加機関との測定値の比を求めた。
同等な 7 個の試料線材の残留抵抗比
RRR
値の比の変動係数は 6.07 %であった。各機関の測定誤差は互い
に独立で分散 σ
2
の正規分布をし,かつ,線材が本質的に均一で,その測定値の平均(又は真値)が µ であ
る場合には,誤差伝ぱ(播)の法則によって,これらの比の標準偏差は 2 σ/µ と表される。したがって,
残留抵抗比
RRR
測定の変動係数,すなわち,σ/µ は,1/ 2 だけ小さくなり,4.3 %となる。この結果から,
目標変動係数を 5 %に定めることは,妥当である。
比較試験において,同じニオブ 3 すず試料線材でも,残留抵抗比
RRR
は大きくばらついた(参考文献参
照)
。このばらつきの原因は,熱処理条件に非常に敏感であることに起因するか,又は拡散バリアにランダ
ムに存在する欠陥若しくは破れによるものと考えられる。このような不均一性が存在するので,残留抵抗
比
RRR
の仕様を決める場合に実態値より低い値を表示することを避けるため,1 本の線材から数個の試料
線材を抽出して測定し,それらの値を報告することが望ましい。
A.4
参考文献
[1] MURASE S.,SAITOH T., MORIAI H.,MATSUSHITA T.,OSAMURA K.,Adv. in Superconductivity XI,
Tokyo: Springer,1999,pp.1511.