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H 7311:2018 (IEC 61788-13:2012) 

(1) 

目 次 

ページ 

序文  1 

1 適用範囲 1 

2 引用規格 1 

3 用語及び定義  2 

4 一般事項 3 

4.1 目標の不確かさ  3 

4.2 印加磁界の不確かさ及び均一性  4 

4.3 VSMの校正  4 

4.4 温度  4 

4.5 試料の長さ  4 

4.6 試料の向き及び反磁界効果  4 

4.7 超電導体体積による正規化  5 

4.8 磁界の繰返し及び掃引モード  5 

5 VSMの測定法  5 

5.1 概要  5 

5.2 VSMの測定原理  5 

5.3 VSM用試料の調整  5 

5.4 測定条件及び校正  7 

6 試験報告書  8 

6.1 概要  8 

6.2 試験責任者  8 

6.3 技術的詳細項目  8 

附属書A(参考)SQUIDによるヒステリシス損失測定法  9 

附属書B(規定)超電導体一般の測定への規格の拡張について  11 

附属書C(参考)不確かさの考察  13 

附属書JA(参考)不確かさについて  14 

 

 


 

H 7311:2018 (IEC 61788-13:2012) 

(2) 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本

電線工業会(JCMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を

改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格で

ある。これによって,JIS H 7311:2006は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任をもたない。 

 

 


 

  

日本工業規格          JIS 

 

H 7311:2018 

 

(IEC 61788-13:2012) 

超電導−交流損失試験方法− 

磁力計法による 

複合超電導線のヒステリシス損失測定 

Superconductivity-AC loss measurements- 

Magnetometer methods for hysteresis loss in superconducting 

multifilamentary composites 

 

序文 

この規格は,2012年に第2版として発行されたIEC 61788-13を基に,技術的内容及び対応国際規格の

構成を変更することなく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある参考事項及び附属書JAは,対応国際規格にはない

事項である。 

 

適用範囲 

この規格は,直流又は十分に遅い掃引速度の磁力計法による複合超電導線におけるヒステリシス損失測

定方法について規定する。複合超電導線は,丸線とする。この規格では,箇条5の振動試料磁力計(以下,

VSMという。)による測定方法及び附属書Aの超電導量子干渉計(以下,SQUIDという。)による測定方

法を示す。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

IEC 61788-13:2012,Superconductivity−Part 13: AC loss measurements−Magnetometer methods for 

hysteresis loss in superconducting multifilamentary composites(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS H 7005 超電導関連用語 

注記 対応国際規格:IEC 60050-815,International Electrotechnical Vocabulary−Part 815: 

Superconductivity 

JIS H 7304 超電導−超電導体のマトリックス比試験方法−銅安定化ニオブ・チタン複合超電導線の

銅比 

注記 対応国際規格:IEC 61788-5,Superconductivity−Part 5: Matrix to superconductor volume ratio 


H 7311:2018 (IEC 61788-13:2012) 

  

measurement−Copper to superconductor volume ratio of Cu/Nb-Ti composite superconducting wires 

 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 7005によるほか,次による。 

3.1 

交流損失,P(AC loss) 

時間的に変動する磁界又は電流の印加によって,複合超電導線中で消費される電力(JIS H 7005の

815-04-54を修正。)。 

注記 磁界1周期当たりの交流損失を,Qで表す。全ての磁気的損失は,一般的な認識では,必ずヒ

ステリシス現象を示すが,複数の複合超電導線で構成される超電導導体における交流損失には,

ヒステリシス損失,渦電流損失及び結合損失が含まれる(JIS H 7005の815-04-54の備考1. 及

び備考2. 参照)。 

3.2 

ヒステリシス損失,Ph(hysteresis loss) 

変動磁界中において超電導体中に発生し,1周期当たりの値が周波数に依存しない損失(JIS H 7005の

815-04-55)。 

注記1 ヒステリシス損失は,磁束線のピン止めによる超電導材料の不可逆な磁気的性質に起因する。 

注記2 ヒステリシス損失は,複合超電導線の超電導領域内だけに生じる。したがって,母材がない

場合においても存在する。Qhで表す1周期当たりのヒステリシス損失は,M-H曲線の面積に

関連付けられる。対応する磁化Mは,“永久電流磁化”と呼ばれることがある。 

3.3 

渦電流損失,Pe(eddy current loss) 

印加変動磁界又は自己変動磁界にさらされたとき,複合超電導線の常電導母材又は構造材で発生する損

失(JIS H 7005の815-04-56を修正。)。 

注記 1周期当たりの渦電流損失は,Qeで表す。 

3.4 

結合損失,Pc(coupling loss) 

常電導母材内に複数本の超電導フィラメントが埋め込まれた構造の複合超電導線(以下,多心超電導線

という。)において,結合電流によって発生する損失(JIS H 7005の815-04-59を修正。)。 

注記 1周期当たりの結合損失は,Qcで表す。 

3.5 

近接効果結合損失,Ppe(proximity effect coupling loss) 

多心超電導線において,超電導フィラメントに沿って流れる電流及び超電導性を与えられた常電導母材

を横切って循環する電流に由来する損失。 

注記 近接結合電流(JIS H 7005の815-04-58)は,結合電流と同じ経路をたどる。近接効果の電流経

路は,全て超電導であるので,Ppeは永久電流の効果であり,近接効果電流が存在すると,ヒス

テリシス損失Phを増大させる役目をする。近接効果は,フィラメント領域の構成,スタック数

などの構造によって,フィラメント間の間隔が約1 μmを下回る複合超電導線に現れる。1周期

当たりの近接効果結合損失は,Qpeで表す。 


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3.6 

反磁界(demagnetization) 

超電導体を等価的な磁性体とみなしたとき,磁化された超電導体が超電導体内外に作る磁界のこと。 

注記 反磁界は,試料の幾何学的形状,印加磁界の方向及び試料の磁化の強さに依存する。4.2 Kで高

磁界にある複合超電導線においては,反磁界は,通常,無視してもよい。 

3.7 

磁束クリープ(flux creep) 

磁束線がピンニング・センタから他のピンニング・センタへと移動する熱的活性化運動(JIS H 7005の

815-03-20)。 

注記 磁束クリープは(一定の印加磁界の強さ及び試料温度で),超電導体の永久電流磁化の減衰の対

数的な時間依存性に関連している。磁束クリープが著しい場合は,ヒステリシス損失に周波数

依存性が生じる。磁束クリープの効果は,複合超電導線において近接効果結合が存在している

場合を除き,無視できる。 

3.8 

フラックス・ジャンプ(flux jump) 

機械的,熱的,又は電気的なじょう(擾)乱によって生じる磁気的不安定性に基づく,ピン止めされて

いる磁束線の不連続な集団運動(JIS H 7005の815-03-22を修正。)。 

注記 フラックス・ジャンプは,超電導体の磁化の突発的な減少として観測される。 

3.9 

(削除) 

注記 対応国際規格で定義する“フィラメント体積(filamentary volume)”は,この規格では用いてい

ないため不採用とした。 

3.10 

(削除) 

注記 対応国際規格で定義する“線材体積(composite volume)”は,この規格では用いていないため

不採用とした。 

3.11 

掃引振幅,Hmax(sweep amplitude) 

印加磁界の最大値。 

3.12 

磁化曲線(magnetization loop) 

磁界が+Hmaxから−Hmax,更に−Hmaxから+Hmaxまで1周期変化するときの,印加磁界強度の関数とし

ての試料磁化の軌跡。 

注記 試料の磁化の軌跡はヒステリシス・ループを描き,そのループの面積Qは,“1周期当たりのエ

ネルギー損失”を表す。磁界1周期当たりのエネルギー損失Qは,ヒステリシス損失Qh,渦電

流損失Qe,結合損失Qc及び近接効果損失Qpeの成分をもっている。 

 

一般事項 

4.1 

目標の不確かさ 

この方法の目標の不確かさは,変動係数COV(標準偏差を平均値で除した値)で定義する。COVは,5 %


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以下とする。測定結果の不確かさに影響を与える重要な変数及び要因を,次に示す。 

注記 不確かさについての概要は,附属書JAに示す。 

4.2 

印加磁界の不確かさ及び均一性 

磁界発生装置は,相対標準不確かさが0.5 %を超えない磁界を印加できるものを用いる。また,印加磁

界は,試料全域にわたって0.1 %以下の均一性を確保する。 

4.3 

VSMの校正 

VSMの校正の目標は,試料のモーメントが1 %未満の相対合成標準不確かさで測定できるようにするこ

とである。校正は,全てのクライオスタット及び他の金属部品を定位置(実際の測定時と同じ位置)に設

置して行う。 

VSMは,米国標準技術局[National Institute of Standards and Technology(NIST)]の標準参照材772aとの

トレーサビリティをもつニッケル球を用いて校正する。これは,高純度ニッケル線材から作った直径2.383 

mmのニッケル球である。このニッケル球の磁気モーメントmの保証値は,298 Kにおいて,398 kA/m(μ0H

=0.5 T)の磁界中で3.47±0.01 mA・m2である。このニッケル球に対する校正において,磁界及び温度の補

正は,次の式によって行う。便宜上,校正磁界は400 kA/mを推奨する。 

m=3.47[1+0.002 6 ln(H/398)][1−0.000 47(T−298)]  (mA・m2) 

ここに, 

H: 磁界強さ(kA/m) 

 

T: 温度(K) 

 

m: 磁気モーメント(mA・m2) 

ここで,1 kA/m=12.56 Oeである。 

4.4 

温度 

温度は,相対標準不確かさが1.2 %を超えないように測定する。液体ヘリウムの定常沸点4.2 K又は4.2 K

近傍の温度では,合成標準不確かさは0.05 Kに相当する。4.2 K以外の温度における超電導体の測定は,

附属書Bによる。 

4.5 

試料の長さ 

試料の長さは,磁界1周期当たりのヒステリシス損失Qhに及ぼす影響を排除するため,次のように適切

に処理する。 

a) 試料とする複合超電導線(以下,複合超電導線試料片という。)は,長さ/直径の比が20以上とする。 

注記1 比較的短い試料では,臨界電流密度の長さ方向及び垂直方向の異方性が,測定可能な“端

部効果”として測定され,磁界1周期当たりのヒステリシス損失Qhに影響することがある。 

b) 複合超電導線試料片のフィラメント間隔dsが1 μmよりも小さい場合は,次による。 

1) フィラメントがツイストされていない場合は,磁界1周期当たりのヒステリシス損失QhをLの関数

として測定し,その結果をL=0まで外挿する。 

2) フィラメントがツイストされている場合は,試料の長さは,ツイストピッチの長さLpの5倍よりも

長くする。 

注記2 複合超電導線試料片のフィラメント間隔dsが1 μmよりも小さい場合は,“近接効果”が

現れ,この条件下で,近接効果の磁化に対する影響は,試料の長さL及びツイストピッ

チの長さLpに依存する。 

4.6 

試料の向き及び反磁界効果 

損失測定は,垂直磁界中の複合超電導線試料片について行う。十分に磁束が侵入した複合超電導線の細

いフィラメント群では,反磁界は無視できる。また,このような複合超電導線を丸,へん平又は四角の断


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面形状に束ねたものについても,反磁界効果は無視できる。 

4.7 

超電導体体積による正規化 

ヒステリシス損失は,JIS H 7304によって複合超電導線の銅比を求め,超電導体の体積当たりの値にし

て報告する。体積は,相対合成標準不確かさが0.5 %を超えないように測定することが望ましい。 

4.8 

磁界の繰返し及び掃引モード 

印加磁界は,+Hmaxから−Hmax,更に−Hmaxから+Hmaxに至る1周期において,磁気モーメントの測定

時に逐一印加磁界を固定する方式(以下,逐一モードという。)を用いて,変化させてもよい。SQUIDで

はこの逐一モードに制限されるが,VSMではそれは任意選択であり,準連続的に操作してもよい。VSM

のM-H曲線は,およそ200組の(M,H)データから成っている。 

 

VSMの測定法 

5.1 

概要 

VSM測定法の適用に関する詳細は,Collingsらの論文(参考文献[1])を参照することが望ましい。 

5.2 

VSMの測定原理 

測定試料(以下,試料という。)が磁化するように一様な磁界中に置き,一組のピックアップコイル近傍

で機械的に振動させる。磁気モーメントの振動によって磁界の振動を引き起こし,ピックアップコイルに

誘起した交流電圧を電気回路によって検出し,磁気モーメントに変換するというのが,VSMの基本原理(参

考文献[2])である。 

VSMは比較測定器であり,その出力信号は,標準試料(ニッケル球及び焼鈍したニッケル)に対して校

正を必要とする。一般的に,市販品のVSMは,試料を設置するための,長さ方向に(鉛直方向に)約1 mm

の振幅で適切な低周波振動する鉛直ロッドをもっている。 

磁界印加装置には,水平に置いた鉄心入り電磁石(EM),又は鉛直に置いた超電導ソレノイド(SCS)

があり,試料を,各々の磁界方向に対し垂直,又は平行に,振動させることができる。ピックアップコイ

ルは,あらゆる外部磁界振動(磁気ノイズ)をキャンセルでき,試料が発生する磁界振動だけを検知する

ように,適正に配置され,ペアで構成されている。VSM測定の典型的な試験設定を,図1に示す。 

エネルギー損失は,M-Hループを面積積分することで求める。 

試料の設置場所は,“スイートスポット”,すなわち,試料が鉛直又は水平に移動しても信号が僅かしか

変化しないピックアップコイル内の狭い領域となっている。ニッケルなどの小さな校正用試料を用いて,

試料の設置場所を探してスイートスポットを決定する。このとき,応答信号が2 %を超えて変動しないよ

うにする。Z軸を鉛直方向,Y軸を磁界方向,及びX軸を磁界と垂直な方向とすると,スイートスポット

の中心は,“サドリング”手法,すなわち,Z軸移動に対して最大信号,X軸移動に対しても最大信号,及

びY軸移動に対しては最小信号がそれぞれ得られる場所を探す手法で求める。 

5.3 

VSM用試料の調整 

試料体積は,VSMの典型的なスイートスポット寸法によって,約30 mm3未満に制限する。超電導線の

VSM測定の場合,試料形状は,図2に示すように,次のいずれでもよい。 

a) 直線状短尺試料 約1 cmの長さの超電導線を,1本以上で構成する(試料束の本数は,必要な信号の

強さによって決めてもよい。)。試料の両端部は,滑らかに平たん(坦)に研磨する(参考文献[1]の例

を参照)。 

b) 多ターンコイル 長尺の細線については,多ターンコイルの形状にしてもよい(参考文献[3]の例を参

照)。例えば,EMを用いたVSMでは,コイルは,だ(楕)円形状で,長軸は,振動軸に平行に設置


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している。コイル面は,磁界に垂直にする。SCSを用いたVSMでは,コイルは,円形状でコイル面

を振動軸に垂直にすることが望ましい。試料が直線状短尺試料を束ねる場合及び多ターンコイルの場

合は,線間結合の影響を最小化するために,線間をワニス,樹脂などで電気的に分離する。 

c) らせん状コイル らせん状コイルは,直線状短尺試料と多ターンコイルとの中間に相当する試料形状

である。らせん状コイルは,参考文献[4]でGoldfarbらが推奨している,ねじ状の溝に沿って単独の1

本の超電導線が巻かれた形状の試料である。らせん状コイルの軸は磁界方向に平行である。らせんの

ピッチ角が8度未満の場合,磁界方向は,試料軸に横方向とみなすことができる。らせん状コイルの

場合,比較的長く適度に太い超電導線であっても,試料として収納できる。 

 

 

図1−VSM測定の典型的な試験設定 

 

 

図2−試料形状 


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5.4 

測定条件及び校正 

5.4.1 

磁界振幅 

測定する磁界振幅は,用途に応じて指定する(箇条6参照)。 

5.4.2 

磁界の印加方向 

磁界は,直線状短尺試料では長手方向の軸に垂直に,多ターンコイルではコイル面に垂直に,らせん状

コイルではコイル軸に平行に印加する。 

5.4.3 

印加磁界の変化率(掃引速度) 

5.4.3.1 

結合の効果 

印加磁界の掃引速度は,交流損失に対して結合損失Pcが無視できるように,十分遅くすることが望まし

い。ただし,逐一モードでの測定も含めて非常に遅い掃引速度においても,強い結合による効果が渦電流

減衰(指数関数型磁束クリープ)の形で再び現れる場合には,結合損失を考慮する必要がある。VSMの掃

引速度で行う測定において,結合の影響が検出される場合は,事前の測定によってQがdH/dtに対して線

形であることを確かめたうえで,磁界1周期当たりのヒステリシス損失Qhを,磁界1周期当たりの交流損

失QのdH/dt=0への外挿値として決定する。より高い温度での電流−電圧の関係において,低いn-値を

もつ試料についても,磁界1周期当たりのヒステリシス損失Qhは,同様の外挿によって決定する。 

5.4.3.2 

近接効果 

非常に細いフィラメントの複合超電導線での損失測定は,近接効果に寄与する可能性があることに注意

する。近接効果への寄与によって,個々のフィラメントに対して予測される値を超えてヒステリシス損失

を増やす。これは,全ヒステリシス損失への有効な寄与であるため,全ヒステリシス損失に含めることが

望ましい。 

5.4.3.3 

フラックス・ジャンプ 

太いフィラメントの複合超電導線の測定では,フラックス・ジャンプの可能性があることに注意する。

フラックス・ジャンプは,本質的な磁化の測定を妨げる。試験報告書には,フラックス・ジャンプに関す

る注記を記載する[6.3 d) 参照]。 

5.4.4 

印加磁界の波形 

印加磁界は,磁界の最小値−Hmaxと最大値+Hmaxとの間を,一定速度で掃引する。 

5.4.5 

試料の寸法及び形状の補正 

VSMの校正は,4.3による。試料を,VSMのスイートスポットの中央に取り付け,試料が校正試料より

も大きい場合は,次のいずれかによって補正を行う。 

なお,校正用試料よりも小さい試料については,寸法の補正は行わなくてもよい。 

a) ニッケル製の試料レプリカを第2標準として用意する。 

b) VSMのスイートスポットの場所を厳密に示し,測定結果に基づき,試料の寸法及び形状の補正を行う。 

5.4.6 

追加損失成分の補正(バックグラウンド損失の除去) 

測定では,試料ホルダ,関連の部品(例えば,温度センサ)などが,損失測定結果に影響を与える可能

性があることに注意する。その影響が認められる場合には,必ず補正を行う。 

5.4.7 

測定点密度 

M-H曲線を構成する測定点において,逐一モードでの測定の場合,測定点は100以上とする。磁化曲線

に微細構造(例えば,近接効果が様々な形態で磁化曲線に影響する。)がある場合,必要に応じて測定点数

を増やして測定することが望ましい。 

なお,コンピュータ制御のVSM測定であっても,M-H曲線を構成する測定点は100以上とする。 


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試験報告書 

6.1 

概要 

交流損失測定試験報告書には,次の事項を記載する。 

6.2 

試験責任者 

a) 試験を実施した試験所名 

b) 試験を依頼した組織名又は依頼者名 

c) その他,試験の支援に関する詳細 

6.3 

技術的詳細項目 

a) 複合超電導素線(入手可能な詳細) 

1) 製造業者名及び複合超電導線ロット番号 

2) 複合超電導線の組成 

3) 複合超電導線の構成,例えば,スタック数 

4) フィラメント領域当たりの銅比及び複合超電導線当たりの銅比 

5) 母材残留抵抗比 

6) ツイストピッチ 

7) フィラメントの本数 

8) フィラメントの直径 

b) 試料 

1) 複合超電導線試料片の形状(束かコイルかを記載する。) 

− 束の寸法 

− 束の複合超電導線の本数 

2) コイルの寸法 

3) 複合超電導線試料片の総長 

4) 複合超電導線試料片の配置状況(印加磁界となす角度) 

c) 試験設備−装置及び使用条件 

1) 磁力計の校正手順及び関連事項の詳細 

2) 磁界校正の不確かさ及び校正手順 

3) 温度測定の不確かさ及びその手順 

4) 磁界の印加手順(逐一モードでの測定か連続掃引測定かを記載し,連続掃引測定の場合は,掃引速

度を記載する。) 

5) M-H曲線(1周期当たりの測定点数) 

d) 試験結果(最終報告及び解析結果) 

1) 複合超電導線単位体積当たりのヒステリシス損失Qhの測定値(必要であれば4.2 K換算値) 

2) 磁界の掃引振幅 

3) 測定温度 

4) 代表的なM-H曲線ループ 

5) 近接効果の有無 

6) フラックス・ジャンプの有無 

7) 損失にdH/dt依存性がある場合,静的なQhをdH/dt=0への外挿から求める手順及び結果 

8) 必要に応じて,低掃引率における損失に対する磁束クリープの影響及び補正の報告 


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附属書A 

(参考) 

SQUIDによるヒステリシス損失測定法 

 

A.1 SQUIDの測定原理 

SQUIDは,基本的には一つの超電導リングであって,リングの一部に超電導性の著しく劣る“弱結合”

部があり,弱結合部が1か所のものをr.f. SQUID,2か所のものをd.c. SQUIDという。これらのSQUID素

子は,リング内の磁束と強く関係し,巨視的に観察できる量子干渉効果を示す。このうちr.f. SQUIDは,

適切な電子回路と組み合わせることによって,リング内磁束を極めて正確な測定に用いることができる。

試料からの全磁束は,複雑な形をした超電導ピックアップコイルによって検出され,超電導磁束トランス

によって,SQUIDセンサのリングに導かれる(図A.1A参照)。SQUIDセンサの基礎となる物理,電子回

路及び一般的な誤差要因については,参考文献[5]に詳しく述べられている。 

 

 

 

注記 図中の×部分が“弱結合”,すなわち,ジョセフソン接合部である。また,リングと接合とを含めてSQUID素

子と呼ぶことがある。さらに,検出コイルなど周辺回路を加えてSQUIDセンサと呼ぶことがある。 

 

図A.1A−r.f. SQUIDの概略図 

 

SQUIDでは,試料の磁気モーメントは,試料がピックアップコイル内に作る磁束を,SQUIDセンサに

よって正確に測定することができる。測定結果の良否は,VSMによる測定と同様に,磁力計の校正が適切

かどうかに依存している。校正は,一般に,測定する磁束が1個の双極子モーメントから生じるとの解釈

に基づいている。ピックアップコイルは,磁界のノイズ及び外部磁界による大きな磁束を抑制するために,

1次微分型又は2次微分型のグラジオメータの形をしたコイルシステムとなっている(図A.2A参照)。試

料の磁気モーメントは,試料をコイルシステム内で動かし,SQUIDセンサの出力電圧をコイル内での試料

位置の関数として測定して求めることができる。試料を周期的に動かすのは,検出回路のドリフト効果を

回避するためで,長時間にわたる磁気モーメントの変化を観察するのに有効である。 

 

 


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a) 1次微分型グラジオメータ 

b) 2次微分型グラジオメータ 

図A.2A−ピックアップコイルの形状 

 

市販されているSQUIDは,ピックアップコイルの直径が数cmで,ピックアップコイルの間隔も数cm

であることが多い。また,最大の信号強度を得るために,試料の移動距離も同様に数cmであるが,最近

の幾つかの機種では,それよりかなり小さいものもある。試料を磁化するのに必要な磁界の発生には超電

導マグネットを用いており,磁界の方向は試料の移動方向と平行としている。 

 

A.2 試料の準備 

試料の標準的な寸法及び形状は,5.3による。ピックアップコイルの軸に対して垂直方向の試料寸法が概

して5 mmよりも大きい場合(測定装置のピックアップコイルの設計によるが),試料の寸法及び形状(5.4.5

参照)の補正のために測定器の再校正(4.2参照)が必要となる。 

 

A.3 SQUID特有の測定条件及び校正 

測定条件及び校正は,5.4の規定と同様とする。ただし,SQUIDでは,逐一モードで測定するが,測定

に要する時間が長くなるため,測定点の数を十分に減らす必要がある。一つの全磁化ループを描くのに必

要な測定点の数は,SQUIDのデータ取込み速度が遅いことを考慮して,50以上とする。磁化曲線に微細

構造がある場合の測定点の数は,50よりもはるかに多くするのがよい。 

 

A.4 試験結果の報告 

試験結果の報告は,箇条6による。 


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H 7311:2018 (IEC 61788-13:2012) 

 

附属書B 

(規定) 

超電導体一般の測定への規格の拡張について 

 

B.1 

概要 

ニオブ-チタン複合超電導線の低周波交流損失測定のための磁化測定手順を,4.2 K以外の温度における

超電導体一般の測定へ拡張する方法を示す。 

 

B.2 

超電導体一般 

この規格に記載する方法を,安定化されていないニオブ-チタン,すなわち,銅なしのニオブ-チタン,

又は銅をエッチングによって取り去ったニオブ-チタン複合超電導線の測定に拡張する。後者の場合,フィ

ラメントバンドルは樹脂含浸によって支持してもよい。 

また,この規格に記載する方法を,円断面形状をした次に示すような,他の種類の安定化又は安定化さ

れていない超電導線の測定に拡張する。 

a) 低温超電導体(LTSC) ニオブ-チタン-タンタル,ニオブすず(ブロンズ法,パウダーインチューブ

法,内部拡散法などによる。)及びニオブアルミニウム 

b) 中間温度超電導体 二ほう化マグネシウム 

c) 高温超電導体(HTSC) Bi-2212,Bi-2223及びYBCO 

 

B.3 

試料形状 

全種類の線材は,短尺直線試料の形状で測定してもよい。しなやかな線材は,らせん状コイル又は多タ

ーンコイルとして測定してもよい。 

 

B.4 

試料サイズ 

試料は,スイートスポットの範囲内に収まるサイズであることが望ましい。収まらないようなサイズの

大きな試料の場合は,補正が必要である。 

補正方法には,次の二つの方法がある。 

a) 小さい標準校正試料(小さいニッケル球)を用いてスイートスポットの内側及び外側の両方の試料空

間において調査して数値補正する。 

b) 実際に測定する試料と同じ形状の標準ニッケル試料を用いて磁力計を再校正する。 

 

B.5 

4.2 K以外の温度での測定 

B.5.1 測定温度 

VSMでの磁化測定は,次に示す幅広い温度領域で測定する。冷却源は,液体ヘリウム又は冷凍機のどち

らでもよい。 

a) 液体ヘリウムの沸点である4.2 K 

b) 液体ヘリウムをポンピングして4.2 K未満の温度状態 

c) 温度制御されたヘリウムガスによる4.2 Kを超える温度状態(例えば,ニードルバルブ及びヒータア

レンジ) 


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H 7311:2018 (IEC 61788-13:2012) 

  

B.5.2 校正 

VSMの全ての計測用構成要素は,冷却空間の外側に配置する。これによって,あらゆる温度での測定の

実行も標準ニッケル試料を用いることで室温での装置の校正が可能になる。 


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附属書C 
(参考) 

不確かさの考察 

 

(対応国際規格の規定を不採用とした。) 


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附属書JA 

(参考) 

不確かさについて 

 

JA.1 試験方法の不確かさについて 

不確かさに関する参考情報を,次に示す。 

a) 不確かさの起因 不確かさの起因としては,測定対象,測定機器,測定方法,測定環境など様々であ

る。これらの中で,不確かさには,観測結果の統計解析によって評価されるAタイプのものと,統計

解析以外の方法によって評価されるBタイプのものとがある。例えば,電圧を測定する場合に計測器

による不確かさがあるが,これは通常,その製造業者が指定する計測器の不確かさ(仕様)によって

評価され,Bタイプの不確かさである。 

b) 不確かさに関する用語 不確かさに関する用語については,JIS Z 8103(計測用語)及びGUM(参考

文献[6], [7])を参照するとよいが,主な用語は,次のとおりである。 

1) 標準不確かさ 標準偏差として表された測定結果の不確かさ。 

2) 合成標準不確かさ 測定結果が多数の他の量から得られる場合の標準不確かさ。他の量について重

み付けをした(それらの変化が測定結果の変化に及ぼす影響を反映した)分散又は共分散の和の平

方根の正に等しい。 

3) 相対標準不確かさ u(x) が測定結果xに関する標準不確かさであるとき,u(x)/|x|(ただし,x≠0)で

与えられる。 

4) 相対合成標準不確かさ u(y) が測定結果yに関する合成標準不確かさであるとき,u(y)/|y|(ただし,

y≠0)。 

5) 拡張不確かさ(相対拡張不確かさ) 分布する正当な測定値の大部分が含まれると期待される範囲を

定める量。標準不確かさ(相対拡張不確かさ)をu(ur),包含係数をkとすると,ku(ur)で与えられる。

この規格では,k=2とし,正規分布の場合測定値の95 %がその範囲に含まれる。 

なお,測定値が含まれる割合は,k=1の場合は68 %,k=3の場合は99 %である。 

c) 工業計測における不確かさ 製品を市場に出荷するに当たっては,その製品の品質を保証するための

計測が必要である。しかし,その計測に十分な時間をかければよいとは限らない。それは製品の価格

に跳ね返るため,そうした工業計測は十分な品質の保証ができる場合,できるだけ簡便な方法を採用

することが望まれる。また,品質の保証を与えるという点からすれば,性能を示す値についての不確

かさについては,最悪の場合を想定し,それでも品質を保証するというものが求められる。 


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参考文献  

[1] COLLINGS, E.W., SUMPTION, M.D., ITOH, K., WADA, H. and TACHIKAWA, K. Cryogenics 37, 1997, 

p.49-60. 

[2] FONER, S., Rev. Sci. Instrum. 30, 1959, p.548. 

[3] SUMPTION, M.D. and COLLINGS, E.W. Adv. Cryo. Eng. (Materials) 38 (1992) p.783-790 (see also 

SUMPTION, M.D., PYON, D.S. and COLLINGS, E.W. IEEE Trans. Appl. Supercond. 3, 1993, p. 859-862.) 

[4] GOLDFARB, R.B. and ITOH, K., J. Appl. Phys. 75, 1994, p.2115. 

[5] GALLOP, J.C. SQUIDs, the Josephson Effects and Superconducting Electronics. IOP Publishing Ltd., 1991 

[6] ISO/IEC Guide 98-3:2008,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in 

measurement (GUM:1995) 

[7] International Organization for Standardization (Geneva, Switzerland),“Guide to the Expression of Uncertainty 

in Measurement”(初版1993,修正版1995),飯塚 幸三 監修:ISO国際文章“計測における不確かさ

の表現のガイド”財団法人日本規格協会(1996)