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H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

(1)

目  次

ページ

序文  

1

1

  適用範囲  

1

2

  引用規格  

2

3

  用語及び定義  

2

4

  原理 

5

5

  装置 

5

5.1

  試験装置  

5

5.2

  ピックアップコイル  

5

5.3

  補償回路  

6

6

  試料 

6

6.1

  コイル状試料  

6

6.2

  試料の巻枠  

7

7

  試験条件  

7

7.1

  外部印加磁界  

7

7.2

  試料の配置  

7

7.3

  測定温度  

7

7.4

  試験手順  

7

8

  結果の計算  

8

8.1

  印加磁界の振幅  

8

8.2

  磁化  

9

8.3

  磁化曲線  

9

8.4

  交流損失(AC loss  

9

8.5

  ヒステリシス損失  

9

8.6

  結合損失及び結合時定数[4][5]  

10

9

  試験方法の不確かさ  

10

9.1

  概要  

10

9.2

  測定装置の不確かさ  

11

9.3

  印加磁界の不確かさ  

11

9.4

  測定温度の不確かさ  

11

10

  試験報告  

11

10.1

  試料の識別  

11

10.2

  コイル状試料の形状  

11

10.3

  試験条件  

12

10.4

  試験結果  

12

10.5

  測定装置  

12


H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)  目次

(2)

ページ

附属書 A(参考)箇条 1∼箇条 10 に関する付加的情報  

13

附属書 B(参考)ポインティングベクトルによる交流損失測定[9]  

15

附属書 C(参考)ピックアップコイル法による幾何学的誤差の評価  

16

附属書 D(参考)磁化及び交流損失の推奨校正方法  

17

附属書 E(参考)種々の印加磁界波形に対する結合損失  

19

附属書 F(参考)不確かさの考察  

20

附属書 G(参考)ピックアップコイル法による交流損失測定における不確かさの評価[12]  

21

参考文献  

24


H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

(3)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,公益財団法人国際

超電導産業技術研究センター(ISTEC)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具し

て日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正し

た日本工業規格である。

これによって,JIS H 7310:2006 は改正され,この規格に置き換えられた。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


日本工業規格

JIS

 H

7310

:2013

(IEC 61788-8

:2010

)

超電導−交流損失試験方法−

ピックアップコイル法による液体ヘリウム温度・ 
交流横磁界中の円断面超電導線の全交流損失測定

Superconductivity-AC loss measurements-

Total AC loss measurement of round superconducting wires

exposed to a transverse alternating magnetic field

at liquid helium temperature by a pickup coil method

序文 

この規格は,2010 年に第 2 版として発行された IEC 61788-8 を基に,技術的内容及び構成を変更するこ

となく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。

適用範囲 

この規格は,液体ヘリウム温度で変動磁界周波数領域が 0.005 Hz∼60 Hz の交流横磁界中にある円断面

の金属系及び酸化物超電導線における全交流損失を,ピックアップコイル法で測定する方法について規定

する。全交流損失には,ヒステリシス損失,結合損失及び渦電流損失が含まれる。厚い常電導金属外皮が

ない通常の超電導線では,主要な損失成分は,ヒステリシス損失及び結合損失である。

注記 1  横磁界とは,線材の長手方向に垂直な磁界をいう。テープ状線材について,横磁界のうちテ

ープ幅広面に対して平行な場合を平行横磁界,垂直な場合を垂直横磁界と呼ぶことがある。

線材の長手方向に平行な磁界を,縦磁界という。

注記 2  この規格は,60 Hz までの周波数で動作する交流コイルへの適用を想定している。7.4.4 及び

附属書 に示す交流損失測定のための校正法が利用できる限り,原理的には,附属書 に示

す円断面の超電導線に適用できる。

注記 3  変動磁界周波数領域が 0.005∼0.06 Hz におけるヒステリシス損失測定は,JIS H 7311 [1]

1)

よってもよい。

1)

  角括弧の数字は,参考文献を意味する。ただし,[1]及び[2]の文献番号は,対応国際

規格と異なる。

注記 4  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

IEC 61788-8:2010

,Superconductivity−Part 8: AC loss measurements−Total AC loss measurement

of round superconducting wires exposed to a transverse alternating magnetic field at liquid

helium temperature by a pickup coil method(IDT)

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,

“一致している”


2

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

ことを示す。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS H 7005

  超電導関連用語

注記  対応国際規格:IEC 60050-815,International Electrotechnical Vocabulary (IEV)−Part 815:

Superconductivity(MOD)

JIS R 6252

  研磨紙

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 7005 によるほか,次による。

3.1 

交流損失,P(AC loss)

時間的に変動する磁界又は電流印加によって,複合超電導導体中で消費される電力(JIS H 7005 

815-04-54)。

注記  この規格において,時間的に変動する磁界印加によって複合超電導導体中で消費される電力が

全交流損失であり,ヒステリシス損失,結合損失及び渦電流損失を含むが,試料に交流電流を

流したときに発生する損失(通電損失)は,含まない。

3.2 

ヒステリシス損失,P

h

(hysteresis loss)

変動磁界中において超電導体中に発生し,1 周期当たりの値が周波数に依存しない損失(JIS H 7005 

815-04-55)。

注記  ヒステリシス損失は,磁束ピンニングによる超電導材料の不可逆な磁気的性質に起因する。

3.3 

渦電流損失,P

e

(eddy current loss)

印加変動磁界又は自己変動磁界にさらされたとき,複合超電導導体の常電導母材又は構造材で発生する

損失。

注記  JIS H 7005 の 815-04-56 を修正している。

3.4 

(フィラメント間)結合(電流)損失,P

c

[(filament) coupling (current) loss]

常電導母材を含む多心超電導線において結合電流によって発生する損失(JIS H 7005 の 815-04-59)

3.5 

結合時定数,τ[(filament) coupling time constant]

低周波数領域でのフィラメントに直交方向を向いた結合電流の特性時定数。

注記  JIS H 7005 の 815-04-60 を修正している。

3.6 

遮蔽電流(shielding current)

超電導体に印加した外部磁界の変化によって生じる電流。複合超電導導体中では,結合電流及び渦電流

を含む。


3

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

3.7 

臨界磁界,H

c

[critical (magnetic) field strength]

外部磁界強度がゼロのときの超電導凝縮エネルギーに対応する磁界強度(JIS H 7005 の 815-01-21)

3.8 

超電導体の磁化(magnetization of a superconductor)

磁気モーメントを超電導体の体積で除したもの。

注記  複合超電導導体の場合,巨視的な磁気モーメントは,遮蔽電流と閉路の面積との積に,侵入捕

捉された磁束による磁気モーメントを加えたものに等しい。

3.9 

磁化法による交流損失測定(magnetization method for AC loss)

磁化曲線のループの面積から,その材料の交流損失を求める方法。

注記  JIS H 7005 の 815-08-15 を修正している。

3.10 

ピックアップコイル法(pickup coil method)

ピックアップコイルを用いて,材料への単位時間当たりの電磁エネルギーの流れを測定することによっ

て,その材料の交流損失を決定する方法。

注記  ピックアップコイルを用いて磁束の変化を測定し,それを積分して静止したコイル状試料の磁

化を求めることができるので,ピックアップコイル法は磁化法の一種である。ピックアップコ

イル法では,基本的に,一次巻線(時間的に変動する電流を供給する超電導マグネット)及び

一対の二次巻線(ピックアップコイル)を配置する。二次巻線の一つである主ピックアップコ

イルは,測定試料を囲んでおり,もう一つの巻線である補償コイルには,次の二つの役割があ

る。

a)

試料がない場合の主ピックアップコイルからの信号の補償

b)

磁界掃引情報の提供

ピックアップコイル(以下,主ピックアップコイル及び補償コイルを指す。

)の基本的な配置

は,

図 に示すように,同軸状,かつ,同心状である。測定線材試料の十分な体積を確保する

と同時に,試料に横磁界を印加するために,試料をコイル形状に巻線する。この試料を“コイ

ル状試料”という。

なお,磁界掃引を検出する磁界検出コイルを別途用いることもある。


4

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

a

コイル状試料と各々のピックアップコイルの半径との差

R

コイル状試料の半径

2h

c

  補償コイルの高さ

2h

p

  主ピックアップコイルの高さ

2h

s

  コイル状試料の高さ

2r  試料の厚さ

図 1−ピックアップコイル及び試料の標準的な配置 

3.11 

バックグラウンド損失(background loss)

ピックアップコイル内に試料がない状況で,ピックアップコイル法によって計測される見掛けの損失。

注記  バックグラウンド損失は,ピックアップコイル法による交流損失測定装置による誤差である。

この損失は,補償処理過程で発生する電気信号の位相シフト,測定装置に含まれる多くの部品

によって誘起される付加的な磁気モーメント及び外部ノイズに起因する。バックグラウンド損

失は,測定装置の調整によって抑制することができ,7.4.2 に示すように,交流損失の測定値か

らバックグラウンド損失を減じることによってその影響を補償することができる。

3.12 

コイル状試料の有効断面積(effective cross-sectional area of the coiled specimen)

試料全体積を,試料コイル長さ又はピックアップコイル長さのうち大きい方の値で除したもの。

3.13 

曲げひずみ,

ε

b

(bending strain)

単純曲げによって生じるひずみ。を試料厚さの半分,を曲げ半径として

ε

b

=100  r/で定義され,百

分率で表す(JIS H 7005 の 815-08-03)

注記  リアクト・アンド・ワインド法によってコイル状試料を作製するときには,曲げひずみに対す

る許容値に注意をする必要がある。


5

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

3.14 

(超電導体の)n-値[n-value (of a superconductor)]

電界又は抵抗率のある特定の範囲で,電圧(U)−電流(I)特性が近似的に UI

 n

で表されるときの指

数(JIS H 7005 の 815-03-10)

原理 

試験では,試料に交流横磁界を印加して,試料に誘起される遮蔽電流の磁気モーメントをピックアップ

コイルによって検出し,これをもって,3.1 で定義される交流損失を測定する。

装置 

5.1 

試験装置 

試験装置は,ピックアップコイル及びコイル状試料を,超電導マグネットが発生する均一な交流磁界の

中に配置しなければならない。

試験装置のピックアップコイルは,主ピックアップコイル及び補償コイルを,試料コイルの外側及び内

側に,それぞれ同軸状に配置する。

印加する交流磁界は,7.1.5 に規定する均一性を確保しなければならない。

試験装置は,ピックアップコイルの信号を積分し,試料の磁化及び交流損失を計算できるサブシステム

を保有する。典型的な交流損失の測定回路の例を,

図 に示す。

U

p-c

  主ピックアップコイルの補償後の電圧

U

c

補償コイルからの測定電圧

図 2−ピックアップコイルによる交流損失測定の典型的な回路 

5.2 

ピックアップコイル 

ピックアップコイルは,低温における渦電流を避けるために,直径 0.1 mm の絶縁被覆銅線などの非常

に細い絶縁した線材で製作する。


6

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

ピックアップコイルの巻枠は,ガラス繊維強化プラスチック(以下,GFRP という。

,フェノール樹脂

などの非金属,かつ,非磁性材料で製作する。

主ピックアップコイルは,補償コイルの外側に同軸状に,かつ,同心円状に調整して配置する。標準的

な配置例を,

図 に示す。ここで,補償コイル長さは,主ピックアップコイル長さと同じとする。補償コ

イルの巻数は,補償コイル中の印加磁界の全鎖交磁束が,主ピックアップコイル中の全鎖交磁束よりも少

し大きくなるように調整しなければならない。

ピックアップコイルは,コイル状試料を容易に出し入れできるような構造でなければならない。

ピックアップコイル法では,コイル状試料とピックアップコイルとの位置関係で,幾何学的な誤差を生

じる。この幾何学的な誤差については,参考として

附属書 に示す。幾何学的な誤差を 1 %未満に小さく

するために,コイル状試料,主ピックアップコイル及び補償コイルは,次に示す配置を標準的な配置とす

る。すなわち,コイル状試料の長さを 30.0 mm,ピックアップコイルの長さを 10.0 mm,コイル状試料の

半径を 18.0 mm,及び試料と各々のピックアップコイルとの半径差を 2.0 mm にする。試料とピックアップ

コイルとの配置が,上記の標準配置から僅かにずれる場合には,配置に関わる幾何学的誤差を,

附属書 C

に示すようにして見積もる。もし,幾何学的誤差を定量的に見積もることができなければ,

附属書 に示

す補正が必要になる。

5.3 

補償回路 

補償回路は,補償係数と呼ばれる低減率の微妙な調整をするために,位相シフトなしに信号を変更でき

るように低減率の調整最小桁が 10

5

∼10

4

の精確さをもつものとする。このため,補償回路は,通常,抵

抗分圧器を備える。

補償コイル中の印加磁界による全鎖交磁束は,通常,巻数調整によって作製された主ピックアップコイ

ル中の全鎖交磁束よりも少し多い。このため,主ピックアップコイルからの信号を,補償回路を使って低

減した補償コイルの信号によって相殺する必要がある。

試料 

6.1 

コイル状試料 

6.1.1 

試料の巻線 

巻枠に試料を単層ソレノイド状に巻線する。試料が絶縁されている場合は,コイルの各ターンは,隣接

ターンに沿わせて隙間なく巻く。試料が絶縁されていない場合は,ターン間の絶縁のため,釣り糸のよう

な非金属・非磁性のスペーサを各ターン間に等間隔に入れる。スペーサの直径は,試料の直径の半分程度

とする。隣接ターンによる消磁効果を取り除く必要があるときは,ターン間に適切なスペーサを配置しな

がら巻線すればよい。

6.1.2 

コイル状試料の形状 

コイル状試料の端部効果による幾何学的な誤差を減少させるため,コイルの高さは,ピックアップコイ

ルの高さの 3 倍以上とする。

6.1.3 

最大曲げひずみ 

コイル状試料は,曲げひずみの許容度を考慮して作製し,同軸状に配置した主ピックアップコイルと補

償コイルとの間に配置する。ニオブ・チタン複合超電導線の試料に対しては,最大曲げひずみは,直流臨

界電流測定時の許容値を超えてはならない。

注記  ニオブ・チタン複合超電導線の直流臨界電流測定においては,許容値が 3 %であることが IEC 

61788-1 (2006) [2]

に示してある。


7

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

6.1.4 

試料の端部断面の処理 

試料の両端を開放し,フィラメント間の接触を防ぐ。両端は,JIS R 6252 の研磨材の粒度 P800 又は P1000

の研磨紙で磨く。

6.2 

試料の巻枠 

試料の巻枠は,GFRP,フェノール樹脂など,非金属・非磁性材料で製作する。試料をコイル巻枠に接着

して円柱状コイル形状を保つために,シアノアクリレート系,エポキシ樹脂などの接着剤を用いる。

試験条件 

7.1 

外部印加磁界 

7.1.1 

印加磁界振幅 

印加磁界の振幅の標準は,結合時定数を評価する周波数領域を考慮して,0.1 T(テスラ)付近から 1 T

の領域にとる。

注記  これまでのラウンド・ロビン・テストでは,A.2 に示すように,印加磁界の測定振幅は,ニオ

ブ・チタン複合超電導線については 0.005 Hz∼1 Hz の範囲で 1 T であり,三層構造超電導線に

ついては,0.005 Hz∼10 Hz の範囲で 0.5 T であった。

7.1.2 

磁界の印加方向 

印加磁界は,試料のコイル軸に沿うよう印加する。

7.1.3 

印加磁界の波形 

印加磁界の波形は,正弦波又は三角波のいずれかとする。

7.1.4 

印加磁界の周波数 

この測定法は,50 Hz 又は 60 Hz の商用周波数までの範囲における全交流損失の測定に使用される。さ

らに,高い周波数領域においては,

附属書 に示すように,ピックアップコイルの周りの金属部からの電

磁気的なノイズを低減するように注意を要する。

通常の多心超電線では,8.6 で示すように,

(1 周期当たりの)結合損失が周波数に比例する領域で結合

時定数を計算するので,対数表示する定められた周波数の範囲で測定点数は 5 点以上とする。交流損失の

周波数依存性の測定においては,印加磁界の振幅は一定とする。

注記  結合損失の線形の周波数依存性は,印加磁界の周波数が比較的低く,振幅が比較的小さな領域

で観測される[3]。ある所定の印加磁界振幅において結合損失の周波数依存性が線形ではない場

合には,測定周波数の領域を更に低周波数側に移動させる。ニオブ・チタン複合超電導線及び

三層構造超電導線については,推奨の周波数領域を A.2 に示している。

7.1.5 

印加磁界の均一性 

印加磁界は,試料コイルの全長にわたって 5 %以下,ピックアップコイルの長さにわたって 1 %以下の

均一性を確保する。

7.2 

試料の配置 

コイル状試料は,主ピックアップコイルと補償コイルとの間に,同軸状,かつ,同心円状に配置する。

7.3 

測定温度 

試料及びピックアップコイルは,液体ヘリウム中に浸せきする。測定温度は,校正してある温度計又は

大気圧測定によって決定する。

7.4 

試験手順 

7.4.1 

補償 


8

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

補償は,次の手順によって行う。

a)

最初に,ある決まった印加磁界振幅に対する試料の磁化の履歴曲線を,主ピックアップコイルの全信

号から補償コイルの全信号を減じて測る。印加磁界の補償コイルへの全鎖交磁束は,ピックアップコ

イルの鎖交磁束よりも若干大きいので,磁化曲線は,印加磁界の水平軸に対して斜めに傾く。

b)

次に,磁化曲線の傾きを減少させるように,補償コイルからの信号を,補償回路を用いて 1 より僅か

に小さな補償係数を乗じることによって,大まかに修正する。

c)

最後に,外部印加磁界の最大値付近で,磁化曲線の増減磁界の両方の軌跡が水平軸に関して対称にな

るように,補償係数を微妙に調整する。

7.4.2 

バックグラウンド損失の測定 

ピックアップコイルの中に試料を入れないときの損失を測定し,ピックアップコイル,補償回路,増幅

器などの交流損失測定システムに由来するバックグラウンド損失を見積もる。測定手順は,7.4.3 に規定す

る通常の試料の測定方法と同様とする。

7.4.3 

損失測定 

ピックアップコイル法では,交流損失は,式(3)によって,主ピックアップコイルの補償後の(モーメン

トに関連する)電圧と補償コイルからの(印加磁界に関連する)信号との積を積分することによって,算

出する。

なお,交流損失測定システムに由来するバックグラウンド損失が無視できない場合には,試料の交流損

失は,測定値からバックグラウンド損失値を減じて求める。この場合,バックグラウンド損失の補正にお

いては,バックグラウンド損失の符号に留意しなければならない。

交流損失は,

附属書 の式(B.4)に示すように,磁化 を印加磁界について 1 周期積分して見積もるこ

とも可能である。

7.4.4 

校正 

校正は,一般に,不完全な信号検出による交流損失測定では,基本的な手順として行う。推奨する校正

方法を,参考として

附属書 に示す。

箇条 5,箇条 及び

附属書 に示すようなピックアップコイル及びコイル状試料の配置である場合に限

り,交流損失及び磁化の測定は,校正なしでも数パーセント未満の誤差で行うことが可能である。

結果の計算 

8.1 

印加磁界の振幅 

印加磁界 H

e

(t)  は,補償コイルからの測定電圧 U

c

(t)  を式(1)に代入することによって算出する。

( )

( )

=

t

t

t

U

S

N

t

H

0

c

c

c

0

e

d

1

μ

  (1)

ここに,

H

e

印加磁界(

A/m

N

c

補償コイルの巻数(回)

S

c

補償コイルのターン当たりの鎖交面積(

m

2

μ

0

真空の透磁率(

H/m

U

c

補償コイルからの測定電圧(

V

t

時間(

s

t'

時間(積分変数)

s

積分の開始時間は,

U

c

(t)

のゼロ基点である。磁界のゼロレベルは,式

(1)

における

H

e

(t)

の最大値と最小

値との中間値とする。振幅は,

H

e

(t)

の最大値と最小値との差の半分として求める。


9

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

8.2 

磁化 

試料の磁化は,主ピックアップコイルの補償後の電圧

U

p-c

(t)

を,式

(2)

に代入して計算する。

( )

( )

=

t

t

t

U

S

N

t

M

0

c

-

p

s

p

0

d

1

μ

  (2)

ここに,

M: 磁化(A/m)

N

p

主ピックアップコイルの巻数(回)

 

S

s

全試料体積をコイル状試料の高さで除して得られる
コイル状試料の有効断面積(m

2

μ

0

真空の透磁率(H/m)

U

p-c

主ピックアップコイルの補償後の電圧(V)

t: 時間(s)

t': 時間(積分変数)(s)

積分の開始時間は,U

c

(t)  のゼロ基点である。磁化のゼロレベルは,式(2)における M(t)  の最大値と最小

値との中間値に等しい。

8.3 

磁化曲線 

磁化のヒステリシス曲線は,印加磁界の 1 周期にわたって磁化を印加磁界に対してプロットすることに

よって得る。磁化及び印加磁界のゼロレベルは,8.1 及び 8.2 に示す手順で得る。

8.4 

交流損失(AC loss 

附属書 に示すように,超電導線の 1 周期当たりの全交流損失は,交流電磁界の 1 周期 にわたって,

線材を取り囲む閉曲面上のポインティングベクトル E×を積分することによって見積もる。この場合,

単位体積当たりの全交流損失 P

[W/m

3

]  は,主ピックアップコイルの補償後の電圧 U

p-c

及び印加磁界 H

e

式(3)に代入して算出する。

( ) ( )

=

T

t

t

H

t

U

S

N

f

P

0

e

c

-

p

s

p

d   (3)

ここに,

P: 全交流損失(W/m

3

f: 印加磁界の周波数(1/s),1/に等しい。

N

p

主ピックアップコイルの巻数(回)

S

s

全試料体積をコイル状試料の高さで除して得られる
コイル状試料の有効断面積(m

2

T: 交流電磁界の一周期(s)

U

p-c

主ピックアップコイルの補償後の電圧(V)

t: 時間(s)

H

e

印加磁界(A/m)

附属書 に示すように,式(3)は,定常的周期的条件下で,式(2)によって定義される磁化を,印加磁界の

1 周期にわたって積分する式(B.4)と等価である。

試料の常電導金属部分に生じる渦電流損失が小さい場合には,全交流損失は,固定された印加磁界振幅

に対する交流損失の周波数依存性を測定することによって,ヒステリシス損失 P

h

と結合損失 P

c

との二つ

の主要成分に分けることが可能である。

バックグラウンド損失が無視できない場合には,全交流損失 P

[W/m

3

]  は,式(3)の算出値からバックグ

ラウンド損失を減じなければならない。

8.5 

ヒステリシス損失 

単位体積当たりのヒステリシス損失 P

h

は,単位体積当たりの交流損失を f

=0 へ外挿することによって


10

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

求める。その外挿は,1 周期当たりの交流損失(P

h

/f

)の周波数依存性を最小二乗法によって線形化して

行う。

n-値が小さな試料の場合のように,交流損失がヒステリシス損失と結合損失とに分けられない測定では,

全交流損失の結果だけを報告すればよい。

8.6 

結合損失及び結合時定数[4],[5] 

フィラメント間の結合損失は,見積もった 1 周期当たりの結合損失が周波数に比例する比較的低周波数

の領域では全交流損失からヒステリシス損失を減じることによって求める。

印加磁界が正弦波であるとき,

丸線での単位体積当たりの結合損失 P

c

は,理論的に式(4)で予測することが可能である。

2

m

0

2

c

π

4

f

H

P

τμ

=

  (4)

ここに,

P

c

単位体積当たりの結合損失(

W/m

3

τ

結合時定数(

s

H

m

印加磁界の振幅(

A/m

μ

0

真空の透磁率(

H/m

f

交流電磁界の周波数(

Hz

結合時定数は,周波数に対する

1

周期当たりの結合損失の比例係数から計算することができる。様々な

種類の波形の印加磁界に対する丸線の結合損失の式を,

附属書 に示す。

注記

結合時定数は,ツイストピッチの二乗,フィラメントの体積率などを考慮したフィラメント間

の等価的な導電率に比例する。実際には,ツイストピッチを

L

s

,フィラメントの体積率を

λ

sc

とすると,結合時定数

τ

は,式

(5)

によって求めることができる。

i

0

2

s

2

1

σ

μ

τ

=

L

  (5)

ここに,

σ

i

フィラメント間の等価的な導電率(

S/m

L

s

ツイストピッチ(

m

フィラメント間の等価的な導電率

σ

i

は,母材の導電率

σ

m

を用い,ニオブ・チタン複合超電導

線の場合は式

(6)

で,フィラメント周囲に高抵抗層が配置された三層構造超電導線の場合は式

(7)

で与えられる。

m

sc

sc

i

1

1

σ

λ

λ

σ

+

=

  (6)

ここに,

λ

sc

フィラメント体積率

σ

m

母材の導電率(

S/m

m

sc

sc

i

1

1

σ

λ

λ

σ

+

=

  (7)

ここに,

λ

sc

フィラメント体積率

σ

m

母材の導電率(

S/m

試験方法の不確かさ 

9.1 

概要 

不確かさの導入の背景,定義及びピックアップコイル法への適用については

附属書 にまとめている。

附属書 では,典型的な事例として,測定周波数領域の上限において全交流損失に対するヒステリシス損

失の割合が平均として

0.5

となる条件の下でのニオブ・チタン複合超電導線について,相対合成標準不確

かさを評価している。その結果のヒステリシス損失及び結合損失(結合時定数)の相対合成標準不確かさ


11

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

は,それぞれ

3.8 %

及び

5.4 %

5.5 %

)である。この測定法の目標相対合成標準不確かさは,包含係数を

2

とした拡張不確かさとして定義する。上の事例では,それぞれ

7.6 %

及び

10.8 %

11.0 %

)を超えない。

注記

この不確かさ評価事例では,測定試料によらない測定装置自体に由来する不確かさに加えて,

試料の特性を介した測定条件に由来する不確かさ及び全損失から損失成分への分離に由来する

不確かさを含む測定手順全体の不確かさ評価を行っている。得られた評価結果は,ピックアッ

プコイルによる損失測定における不確かさの上限を示すと解釈する。

9.2 

測定装置の不確かさ 

相対標準不確かさが

0.5 %

を超えない測定装置を用いる。寸法測定の設備も,相対標準不確かさが

0.5 %

を超えないものとする。

9.3 

印加磁界の不確かさ 

磁界印加装置は,相対標準不確かさが

0.5 %

を超えない磁界を供給できるものを用いる。印加磁界の均

一性は,7.1.5 による。

9.4 

測定温度の不確かさ 

クライオスタットを用いて,交流損失測定に必要な環境を用意し,試料を液体ヘリウムに浸せきした状

態で測定する。試料温度は,液体ヘリウムの温度と同じとみなす。冷媒温度は,

0.05 K

を超えない標準不

確かさで報告する。クライオスタット内の雰囲気圧力を温度値に換算するために,ヘリウムの相図を用い

る。雰囲気圧力測定は,温度測定に必要な不確かさを得るのに十分小さな不確かさで行わなければならな

い。液体ヘリウムの深さが

1 m

以上の場合は,ヘッド(液体ヘリウム柱の圧力)校正を行う必要がある。

10 

試験報告 

10.1 

試料の識別 

可能な限り,次の事項によって試料の識別を行う。

a)

製造業者名

b)

種別

c)

ロット番号

d)

母材の材料

e)

線材の断面形状及び寸法

f)

フィラメント径

g)

フィラメント本数

h)

フィラメント間隔

i)

銅/非銅比

j)

ツイストピッチ

k)

残留抵抗比(

RRR

l)

絶縁層の厚さ

10.2 

コイル状試料の形状 

次のコイル状試料の形状を報告する。

a)

内径

b)

外径

c)

長さ

d)

巻数


12

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

e)

コイル状試料の有効断面積

f)

ピックアップコイルの長さ以内にあるコイル状試料体積の,ピックアップコイル間の空間体積に対す

る体積比

10.3 

試験条件 

次の試験条件を報告する。

a)

印加磁界振幅

b)

印加磁界の波形

c)

印加磁界の周波数

d)

印加磁界の均一度

e)

測定温度

f)

温度測定方法

g)

ピックアップコイルの誘起電圧のサンプリング時間

h)

バックグラウンド損失の大きさ

10.4 

試験結果 

次の結果を報告する。全交流損失,ヒステリシス損失及び結合損失(結合時定数)について繰り返し測

定の場合には,それらの平均値及び包含係数を

2

とした相対拡張不確かさを測定の繰り返し回数

n

ととも

に報告する。

a)

ヒステリシス損失と結合損失とを含む全交流損失

b)

ヒステリシス損失

c)

結合時定数又は結合損失

d)

磁化曲線

全交流損失がヒステリシス損失と結合損失とに分離できない測定においては,試験結果は a)

及び d)

項目だけを報告する。

なお,生じる誤差が,コントロール可能な誤差(例えば,5.2 及び

附属書 に示すピックアップコイル

の幾何学的配置に起因するような誤差)を低減できる場合でも,e)g)

の項目について報告することが望

ましい。

e)

鉛参照試料のヒステリシス損失及び磁化曲線

f)

磁界振幅が,

0.1 T

の外部磁界下での,鉛参照試料の磁化の最大値及び最小値

g)

鉛参照試料の臨界磁界

10.5 

測定装置 

試験報告書は,次の情報を含む。

10.5.1 

ピックアップコイル 

a)

ピックアップコイルとコイル状試料との位置関係

b)

主ピックアップコイルの諸元(内径,外径,長さ,巻数,線材の材質及び線径並びにコイル巻枠の材質)

c)

補償コイルの諸元(内径,外径,長さ,巻数,線材の材質及び線径並びにコイル巻枠の材質)

10.5.2 

測定系 

a)

測定回路

b)

クライオスタットの材質


13

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

附属書 A

(参考)

箇条 1∼箇条 10 に関する付加的情報

A.1

  適用範囲 

このピックアップコイル法は,一般に,液体ヘリウム温度中,周波数及び磁界振幅の幅広い領域におい

て,6.1 に示すコイル状試料の超電導線の全交流損失測定に適用できる。7.1.4 に示す測定周波数の上限は,

ニオブ・チタン複合超電導線及び三層構造超電導線の交流損失測定のためのラウンド・ロビン・テストに

おいて採用された周波数の最高値である。非金属製クライオスタット内のスーパーインシュレーションを

含むピックアップコイル付近の金属部に誘起される渦電流及び磁界発生用マグネットの巻線内の遮蔽電流

による電磁気的なノイズを更に抑制するように注意を払うことができれば,より周波数が高い領域での交

流損失の測定も可能である。

このピックアップコイル法は,ニオブ・チタン複合超電導線及び三層構造超電導線の交流損失測定に適

用できるばかりでなく,7.4.4 及び

附属書 に示す交流損失測定のための校正法が利用できる限り,原理的

には,

Nb

3

Sn

Nb

3

Al

MgB

2

Bi

2

 Sr

2

 CaCu

2

 O

8

等の円断面の超電導線にも拡張される。

A.2

  結合時定数 

多心超電導線では,交流横磁界中での結合損失を抑制するためにフィラメントをツイストする。市販の

金属系超電導線については,周波数及び磁界振幅の実用領域で結合損失がヒステリシス損失と同等の大き

さになるように,ツイストに対する機械的許容範囲を考慮しつつ,ツイストピッチは設計される。

1

周期当たりの結合損失が周波数に比例する領域において,8.6 に示すように,結合時定数は,

1

周期当

たりの結合損失の周波数に対する比例係数から計算できる。結合時定数の評価において不確かさを小さく

するには,測定点を対数表示で幅広い周波数領域で分散させる。その際,妥当な周波数領域とは,その領

域の一端の最低周波数での測定ではヒステリシス損失が優勢な成分であり,他端の最高周波数での測定で

は,ヒステリシス損失及び結合損失が互いに相当する主要な

2

成分となる領域である。例えば,過去のラ

ウンド・ロビン・テストでは,ニオブ・チタン複合超電導線については

[6]

,測定周波数の範囲は印加磁界

振幅

1 T

において

0.005 Hz

1 Hz

であり,三層構造超電導線については

[7]

,印加磁界振幅

0.5 T

において

0.005 Hz

10 Hz

であった。

A.3

  コイル状試料の作製 

それぞれの超電導線について,曲げひずみの許容値に注意を払ってコイル状試料を作製し,

2

個の同軸

状のピックアップコイル間に配置する。許容値は,臨界電流測定における機械的ひずみへの条件から算出

する。大きな試料に対する幾何学的誤差も,

附属書 に示している係数

G

を考慮して評価できる。コイル

状試料の半径が

図 C.1 に示す範囲から外れている場合には,コイル状試料及びピックアップコイルの寸法

については,例示されている寸法に対して相似形となる寸法を用いる。一方で,ワインド・アンド・リア

クト法によって作製されたコイル状試料に対しては,

Nb

3

Sn

超電導線の臨界電流測定について IEC 61788-2

[8]

に示しているように,コイル半径を熱処理前に調整すればよい。コイル状試料の隣接ターン間の電気絶

縁も確実にする。


14

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

A.4

  低温補償コイル法 

図 に示すピックアップコイルの誘起電圧を補償するもう一つの選択肢は,クライオスタット内での補

償である。この補償法においては,主ピックアップコイル及び補償コイルからの信号をそれぞれクライオ

スタット内から室温まで引き出すのではなく,

それらを低温内で直接に互いに打ち消す方向に直列接続し,

その信号をアンプに入力する。

主ピックアップコイルと補償コイルとの巻数を等しくすることによって,互いに打ち消す方向に直列接

続したときの信号に含まれる誘導成分を最小化する。補償は,必ずしも完璧でないであろうから,巻乱れ

及び巻数を管理した巻線が必要である。この巻線は,7.4 及び

図 に記載されている補償法と同様にして

アンプによって室温で補償しながら行う。

低温補償法の優れている点は,主ピックアップコイル及び補償コイルの信号をそのまま室温に持ち上げ

てアンプに入力することを避けていることである。

2

個のアンプによる信号の位相差は,バックグラウン

ドロス(主ピックアップコイル内に試料がないときの損失)の増加につながる。誘導性信号の一部が交流

損失信号(同相成分)に加わるからである。主ピックアップコイル及び補償コイルと室温にあるアンプ間

の結線との信号の乱れも,

それぞれの回路が等価でないために,

バックグラウンドロスの増加につながる。

低温補償法では,補償の大半が低温空間で行われる。ややもすると異なった位相をもつ大きな誘導信号が

アンプに入力されることはなく,低温と室温との間で生じる信号の乱れを最小化する。室温まで引き出す

誘導成分を最小化でき,測定感度を改善できる。


15

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

附属書 B

(参考)

ポインティングベクトルによる交流損失測定[9]

通常,周期的な電磁環境下(参考  この場合,常に定常である。

)にある超電導線における

1

周期当たり

の交流損失は,その

1

周期にわたって,線材を取り囲むある閉曲面

A

の面上でポインティングベクトル E

×を積分することで評価できる。試料の単位体積当たりの交流損失

P

は式

(B.1)

による。

H

E

A

×

=

A

T

t

V

f

P

d

d

0

s

   (B.1)

ここに,

E

閉曲面

A

上での電界(

V/m

H

閉曲面

A

上での磁界(

A/m

V

s

A

によって取り囲まれる試料の体積(

m

3

試料が均一な交流磁界

H

e

中におかれたとき,交流損失は次のようにピックアップコイルによって測定で

きる。例えば,

図 に示す試料とピックアップコイルとの配置では,式

(B.1)

は,式

(B.2)

のように変形され

る。

=

=

T

Γ

T

U

tH

V

n

f

sE

tH

V

fd

P

0

c

p

e

s

p

0

e

s

p

d

d

d

   (B.2)

ここに,

d

p

ピックアップコイルの平均巻きピッチ(m)

n

p

主ピックアップコイルの単位長さ当たりの巻数(回)

Γ: 一層内で巻線に沿った経路(m)

このように,交流損失は,交流 1 周期にわたって,印加磁界 H

e

とピックアップコイルからの補償信号

U

p

c

との積を積分することによって評価できる。

図 において,閉曲面によって囲まれる試料の部分は,

陰影によって示されている。式(2)によって定義される磁化 を用いると,式(B.2)は,式(B.3)のようにな

る。

=

=

M

H

f

t

t

M

H

f

P

T

d

d

e

0

0

e

0

μ

μ

  (B.3)

定常な周期的条件下では 1 周期の磁化曲線が閉じるので,定常周期条件下では,式(B.3)は,式(B.4)のよ

うに変形できる。

=

e

0

dH

M

f

P

μ

  (B.4)

試料又はピックアップコイルの配置による幾何学的誤差は,ここでの閉曲面

A

を,

(円筒状)ピックア

ップコイルの側面によって近似することからきている。その定量的考察を,

附属書 に示す。


16

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

附属書 C

(参考)

ピックアップコイル法による幾何学的誤差の評価

附属書 に示すように,ピックアップコイル法では,ピックアップコイルによる不完全な検出による幾

何学的誤差を伴う。式

(2)

から得られる見掛け上の磁化

M

が,試料に誘起される実際の磁化

M

0

に対して

G

h

p

h

c

h

s

Ra

M

0

に等しいとすると,式

(B.4)

は,式

(C.1)

のようになる。

(

)

=

e

0

s

c

p

0

d

,

,

,

,

H

M

a

R

h

h

h

G

f

P

μ

  (C.1)

係数

G

は,幾何学的な誤差(の尺度)を与えるもので,主ピックアップコイルの高さ

2h

p

,補償コイル

の高さ

2h

c

,コイル状試料の高さ

2h

s

,コイル状試料の半径

R

及びコイル状試料と各々のピックアップコイ

ルの半径との差

a

だけに依存する

[10]

係数

G

1

に近づくほど正確な交流損失測定ができることになる。

この幾何学的な誤差の評価によると,

5.2

に示すコイル状試料及びピックアップコイルとの標準配置では,

|G

1.00|

0.01

となる。

図 C.1 から,この標準から少し外れた配置における幾何学的な誤差が読み取れる

(参考  誤差率は,

G

1.00

で定義される。

図 C.1−計算された係数

G

の等高線の例 


17

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

附属書 D

(参考)

磁化及び交流損失の推奨校正方法

D.1

  校正の概要 

例えば,

附属書 に記載したピックアップコイルの幾何学的配置に起因するようなコントロール可能な

誤差を低減できる場合でも,試料に誘起される磁気モーメントの時間変化の不完全な測定を補償するため

に,磁化の校正をすることが望ましい。

鉛線のような第一種超電導体を,参照試料として,磁化の校正に用いる。

D.4

に示すような可逆な磁化曲線のピーク値を用いて磁化を校正することができる。

参照試料の磁化測定の手順は,次のコイル形状及び試験条件を除いて,原理的には通常の試料線材の手

順と同じである。

D.2

  参照試料のコイル形状 

参照試料は,ターン間の絶縁のために,釣り糸のような非金属・非磁性のスペーサと一緒に単層コイル

状に疎に巻く。

参照試料のコイル高さの条件は,通常の試料の条件と同じである。

D.3

  参照試料の試験条件 

推奨のスペーサ直径は,おおよそ試料直径の半分とする。

参照試料線材の両端は,開放する。

D.4

  参照試料の磁化を用いた校正 

有限な反磁界効果をもつ第一種超電導体で測定される磁化曲線の傾きは,反磁界係数の大きさに依存す

るが,最大磁化は,いつも同じ値で臨界磁界

H

c

に等しい,ということはよく知られている。

このことは,

図 D.1 a)  に示すような

SQUID

磁力計法によって得られた実験結果によって確かめられる。

もし磁化曲線の丸みを直線外挿で近似すると,実験的なピーク値はいつも同じであり,

5 %

の誤差で臨

界磁界

39.8 kA/m

に等しく,磁化が消失する直接測定した磁界と非常によく一致する。また,ピックアッ

プコイル法を用いた純粋な鉛に対する二つの実験結果を,

図 D.1 b)  に示す。

この図で,実線及び破線は,それぞれ

0.006 Hz

及び

0.06 Hz

の周波数に対する結果を表している。

補償コイル,コイル状試料,及び主ピックアップコイルの形状(半径,長さ)は,それぞれ(

19.3 mm

14.7 mm

21.6 mm

43.9 mm

,及び(

23.4 mm

14.7 mm

)である(この場合の係数

G

の値を,

図 C.1

の右図において,

R

22

a

2

として読み取ると,

1.004

となる。

磁化曲線には,周波数に依存するヒステリシス現象がある。

上記の周波数範囲において,増磁過程の軌跡は再現可能であるのに対して,減磁過程の軌跡は周波数に

対して非常に敏感である

[11]

図中の矢印で示すように,磁化のピーク値を増磁過程で見積もると,

43.8 kA/m

の値は±数パーセント

の範囲で臨界磁界

42.2 kA/m

に等しい。

測定値に対するピークの予測値の比が,ピックアップコイルによる磁化及び交流損失測定の校正係数と


18

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

なる。

この規格に示すピックアップコイルの条件の下では,交流損失測定は校正なしでも数パーセント未満の

誤差で行うことができる。

a)

  純粋な鉛参照試料の磁化曲線(SQUID 磁力計法) 

b)

  純粋な鉛参照試料の磁化曲線(ピックアップコイル法) 

図 D.1−磁化曲線による臨界磁界の評価 


19

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

附属書 E

(参考)

種々の印加磁界波形に対する結合損失

8.6

に規定する電磁環境下において,

2

種類の印加磁界波形に対する単位体積当たりの結合損失の式は,

次の式によって求められる。

正弦波

2

2

m

0

2

c

π

4

f

H

P

τμ

=

  (E.1)

三角波

2

2

m

0

c

64

f

H

P

τμ

=

  (E.2)

それぞれの波形のパラメータは,

図 E.1 による。

a)

  正弦波 

b)

  三角波 

図 E.1−周期

T

の印加磁界波形 


20

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

附属書 F

(参考)

不確かさの考察

(対応国際規格の規定を不採用とした。

参考文献

JIS Z 8103

  計測用語


21

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

附属書 G 
(参考)

ピックアップコイル法による交流損失測定における不確かさの評価[12]

注記

この附属書に示している不確かさの評価の事例は,不確かさの定義とともに,更に分かりやす

い構成にして解説に記載している。

ピックアップコイル法による交流損失測定における不確かさは,主に,測定条件,ピックアップコイル

による全交流損失測定時の信号処理,及び交流損失の成分への分解のステップに影響を受ける。測定条件

の影響は,交流損失の二つの主要成分,ヒステリシス損失

P

h

及び結合損失

P

c

の理論式から評価される。

信号処理は,式

(1)

及び式

(2)

によって測定する信号から交流損失を計算する基本となるステップである。三

番目の影響は,8.5 及び 8.6 に示す手順に沿って交流損失を二つの成分に分けることによる付加的なもので

ある。典型的な事例として,ニオブ・チタン複合超電導線について,これらの手続きにおける二つの損失

成分に対する相対合成標準不確かさの主な結果を

表 G.1 にまとめている。以下では,測定法における基本

的な標準不確かさが,測定の結果として得られるヒステリシス損失及び結合損失(結合時定数)との合成

標準不確かさにどのように伝ぱ(播)するのか,その骨子をまとめている。詳細な不確かさの評価につい

ては,参考文献

[12]

を参照されたい。

測定条件の影響に対する不確かさの評価は,寸法測定,温度及び磁界に関する基本的な標準不確かさが

出発点となる。これらの規定値を本体(9.29.4)及び

表 G.1 に示している。これらの基本的な標準不確か

さから

P

h

及び

P

c

の不確かさへの伝ぱは,次の式によって評価できる。

f

H

H

P

m

p

0

h

3

8

μ

=

  (G.1)

2

2

m

0

2

c

π

4

f

H

P

τμ

=

   (G.2)

ここに,

H

p

中心到達磁界(A/m)

τ: 結合時定数(s)

交流損失は,測定領域において低周波数側端ではほとんどヒステリシス損失に相当し(PP

h

),また,

高周波数側端では同等程度の 2 成分に分けられる[α を定数として,PαP

h

+(1−α)P

c

]と考えてみよう。

そのとき,交流損失の相対合成標準不確かさは,次のように表される。

低周波数側端

(

)

( )

h

1

r

c

lower

1

r

c

P

u

P

u

,

,

=

   (G.3)

高周波数側端

( )

( ) (

)

( )

c

2

1

r

c

2

h

2

1

r

c

2

upper

1

r

c

1

P

u

P

u

P

u

,

,

,

α

α

+

=

   (G.4)

ここに,

u

c,r1

(P

h

): 式(G.1)から得られる P

h

の相対合成標準不確かさ

u

c,r1

(P

c

): 式(G.2)から得られる P

c

の相対合成標準不確かさ

α: 高周波数側端での全損失 に対する P

h

の比

式(G.4)では,u

c,r1

(P

h

)と u

c,r1

(P

c

)とは互いに独立としている。また,α の値は 0.3 から 0.5 の範囲で調整す

ることを推奨する。

表 G.1 では,典型的な例として,α=0.5 とした不確かさの評価を示している。

信号処理に対しては,式(1)及び式(2)を使って不確かさを評価する。このステップでは,ピックアップコ

イルの巻数及び断面積並びにデジタル増幅器の標準不確かさが基本となる不確かさであり,

表 G.1 に列記

している。この場合,全損失の相対合成標準不確かさ u

c,r2

(P)だけが評価できる。


22

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

測定結果の相対合成標準不確かさ u

c,r

(P)は,上述の測定条件と信号処理の影響との合成になるとして,

求めると,次のようになる。

低周波数側端

( )

(

)

(

)

( )

P

u

P

u

P

u

P

u

2

r2

,

c

lower

2

r1

,

c

lower

r

,

c

r

,

c

+

=

=

   (G.5)

高周波数側端

( )

( )

( )

P

u

P

u

P

u

2

r2

,

c

upper

2

r1

,

c

upper

r

,

c

+

=

=

  (G.6)

全交流損失 は,測定周波数領域において低周波数側端ではほとんどヒステリシス損失 P

h

に相当し,ま

た,高周波数側端では同等程度の 2 成分(P

h

及び P

c

)からなることを利用して,最後に,低周波数側端及

び高周波数側端における全交流損失の相対合成標準不確かさによって,その成分 P

h

及び P

c

との相対合成

標準不確かさを求める。つまり,P

h

の相対合成標準不確かさ u

c,r

(P

h

)は,低周波数側端での全交流損失の相

対合成標準不確かさに等しいと考える。また,P

c

の相対合成標準不確かさ u

c,r

(P

c

)についても,高周波数側

端の全交流損失から次のように求まる。

( )

(

)

lower

r

,

u

h

r

,

c

P

u

P

u

=

   (G.7)

( )

( )

( )

upper

2

r

,

c

2

h

2

r

,

c

2

c

r

,

c

1

1

1

P

u

P

u

P

u

+

=

α

α

α

(

)

( )

upper

2

r

,

c

2

lower

2

r

,

c

2

1

1

1

P

u

P

u

+

=

α

α

α

  (G.8)

また,結合時定数の相対合成標準不確かさも,式(G.2)を用いて同様に評価できる。

表 G.1 の各ステップにおける不確かさの推移を見てみると,ヒステリシス損失については,主に測定温

度の不確かさの影響が大きく,また,結合損失及び結合時定数については,測定温度の不確かさに加えて

最後の成分分離の影響も大きいことが分かる。一方,ピックアップコイルによる測定法自体(信号処理)

の相対合成不確かさは,他の要因を含んだ結果と比べて 1/4∼1/5 程度の小さな値になっている。

この測定手法におけるヒステリシス損失又は結合損失(結合時定数)の目標相対合成標準不確かさを,

それぞれの相対合成標準不確かさ u

c,r

に対して,次式の包含係数を 2 とする相対拡張不確かさ u

r

によって

定義して,

表 G.1 に示す。

r

,

c

r

2u

u

=

   (G.9)

過去のラウンド・ロビン・テスト[6],[7]において,結果の国際的比較には COV を用いている。得られ

た COV 及び

附属書 の手続きで計算した各損失成分の相対合成標準不確かさとの関係については,両者

が整合していることが参考文献[11]で議論されている。


23

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

表 G.1−ピックアップコイル法における相対不確かさの伝ぱ(

α

0.5 

測定条件の影響

信号処理の影響

実験装置

磁界 
温度

5.0×10

3

5.0×10

3

1.2×10

2

ピックアップコイルの巻数

ピックアップコイルの断面積 
サンプリング間隔

 1.5×10

3

 1.0×10

2

 1.4×10

6

中心到達磁界 H

p

結合時定数 τ 
ヒステリシス損失

結合損失

3.6×10

2

1.4×10

2

3.7×10

2

2.0×10

2

ピックアップコイルの端子電圧 
磁界の計算 
全交流損失の計算

 3.2×10

6

 1.0×10

2

 1.0×10

2

測定条件及び信号処理の影響の合成

低周波数側端交流損失 
高周波数側端交流損失

3.7×10

2

2.1×10

2

低周波数側端交流損失 
高周波数側端交流損失

 3.8×10

2

 2.3×10

2

損失成分分離

ヒステリシス損失 
結合損失

結合時定数

 3.8×10

2

 5.4×10

2

 5.5×10

2

相対拡張不確かさ(包含係数 2)

ヒステリシス損失 
結合損失

結合時定数

 7.6×10

2

10.8×10

2

11.0×10

2


24

H 7310

:2013 (IEC 61788-8:2010)

参考文献

[1]  JIS H 7311  超電導−交流損失試験方法−磁力計法によるニオブ−チタン複合超電導線のヒステリシ

ス損失測定

注記  対応国際規格:IEC 61788-13,Superconductivity−Part 13: AC loss measurements−Magnetometer

methods for hysteresis loss in Cu/Nb-Ti multifilamentary composites(IDT)

[2]  JIS H 7301  超電導−第 1 部:臨界電流の試験方法−ニオブ・チタン合金複合超電導線

注記  対応国際規格:IEC 61788-1,Superconductivity−Part 1: Critical current measurement−DC critical

current of Nb-Ti composite superconductors(IDT)

[3]  SUMIYOSHI, F., IRIE, F., YOSHIDA, K., FUNAKOSHI, H., ac loss of a multifilamentary superconducting

composite in a transverse ac magnetic field with large amplitude. J. Appl. Phys., 1979, Vol.50, No.11,

p.7044-7050

[4]  CARR Jr., W. J., ac loss in a twisted filamentary superconducting wire. J. Appl. Phys., 1974, Vol.45, No.2,

p.929-934

[5]  CAMPBELL, A. M., A general treatment of losses in multifilamentary superconductors. Cryogenics, 1982,

Vol.22, No.1, p.3-16

[6]  FUNAKI, K., YUMURA, H., KAWABATA, A., SUGIMOTO, M., ITO, K., OSAMURA, K., Standardization of

AC loss measurement of Cu/Nb-Ti composites exposed to alternating transverse magnetic field by pickup coil

method. Advances in Superconductivity XII (Springer-Verlag, Tokyo), 2000, p.706-708

[7]  KAWABATA, S., TSUZURA, H., FUKUDA, Y., FUNAKI, K., OSAMURA, K., Standardization of the pickup

coil method for AC loss measurement of three-component superconducting wires. PHYSICA C:

Superconductivity, 2003, Vol. 392-396, p.1129-1133

[8]  IEC 61788-2,Superconductivity−Part 2: Critical current measurement−DC critical current of Nb3Sn

composite superconductors

[9]  KAJIKAWA, K., NAKAMURA, M., IWAKUMA, M., FUNAKI, K., Theoretical evaluation of geometrical

errors in AC loss measurements using pickup coil methods. Advances in Superconductivity X (Springer-Verlag,

Tokyo), 1998, p.1413-1416

[10] KAJIKAWA, K., IWAKUMA, M., FUNAKI, K., WADA, M., TAKENAKA, A., Influences of geometrical

configuration on AC loss measurement with pickup coil method. IEEE Trans. Appl. Supercond., 1999, Vol.9,

No.2, p.746-749

[11] MENDELSSOHN, K., PONTIUS, R.B.:"Time effects in supra-conductors", Nature, 1936, July 4, p.29-30

[12] FUNAKI, K., FUJIKAMI, J., IWAKUMA, M., KASAHARA, H., KAWABATA, S., TANAKA, Y., EHARA, K.,

Uncertainty consideration in AC loss measurement of multifilamentary superconducting wires performed via a

pickup coil method. Cryogenics, 2010, Vol.50, p.111-117

(和訳)船木和夫,藤上純,岩熊成卓,笠原奉文,川畑秋馬,田中靖三,榎原研正,

“ピックアップ

コイル法による超電導多芯線の交流損失測定における不確かさ評価”低温工学,2010, Vol.45, p.43-49