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H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

(1)

目  次

ページ

序文 

1

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

1

3

  用語及び定義 

1

4

  要求事項

2

5

  装置

2

5.1

  測定用マンドレル又は測定用基板の材質 

2

5.2

  測定用マンドレルの直径及び測定用基板の長さ 

2

5.3

  抵抗 R

2

測定用クライオスタット 

2

6

  試料

3

7

  測定及び解析 

3

7.1

  室温抵抗(R

1

)の測定 

3

7.2

  ひずみ補正前の超電導転移直上での抵抗(R

2

*)の測定

3

7.3

  曲げひずみに伴う R

2

*の補正

5

7.4

  残留抵抗比(RRR

5

8

  試験方法の不確かさ及び安定度

5

8.1

  温度

5

8.2

  電圧測定 

5

8.3

  電流

6

8.4

  寸法

6

9

  試験報告

6

9.1

  残留抵抗比の値

6

9.2

  試料

6

9.3

  試験条件 

6

附属書 A(参考)RRR 測定に関する追加参考事項

8

附属書 B(参考)統計に関する定義 

15


H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人国際超電

導産業技術研究センター(ISTEC)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工

業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工

業規格である。

これによって,JIS H 7306:2005 は改正され,この規格に置き換えられた。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。


日本工業規格

JIS

 H

7306

:2012

(IEC 61788-4

:2007

)

超電導−残留抵抗比試験方法−

ニオブ・チタン複合超電導導体の残留抵抗比

Superconductivity-Residual resistance ratio measurement-

Residual resistance ratio of Nb-Ti composite superconductors

序文 

この規格は,2007 年に第 2 版として発行された IEC 61788-4 を基に,技術的内容及び構成を変更するこ

となく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施した参考事項は,対応国際規格にない事項である。

適用範囲 

この規格は,ニオブ・チタン合金のフィラメントと母材からなる複合超電導導体との残留抵抗比(RRR

を決めるための試験方法について規定するもので,母材は,銅,銅・ニッケル合金又は両方の複合からな

るものを対象とする。この試験方法は,長方形又は円断面をもち,RRR が 350 未満で断面積が 3 mm

2

未満

のモノリス構造の超電導導体に適用する。全ての測定においては,磁界を加えないものとする。

この規格の本体に述べた方法を主方法とし,その他の測定法をまとめて A.4 に記載する。

注記  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

IEC 61788-4:2007

,Superconductivity−Part 4: Residual resistance ratio measurement−Residual

resistance ratio of Nb-Ti composite superconductors(IDT)

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,

“一致している”こ

とを示す。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS H 7005

  超電導関連用語

注記  対 応 国 際 規 格 : IEC 60050-815:2000 , International Electrotechnical Vocabulary − Part 815:

Superconductivity(MOD)

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS H 7005 によるほか,次による。

3.1 

残留抵抗比(RRR 

室温抵抗と超電導転移直上での抵抗との比。


2

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

この規格において,室温抵抗とは,20  ℃における抵抗と定義する。ニオブ・チタン複合超電導導体の残

留抵抗比は,式(1)によるものとし,20  ℃での抵抗 R

1

を超電導転移直上での抵抗 R

2

で除したものである。

2

1

R

R

RRR

 (1)

図 は,低温での抵抗測定中の際に得られる試料の抵抗と温度との関係を模式的に示す。図 において,

抵抗が急に増加する部分(a)に接線を引き,また,温度が増加して抵抗がほとんど一定となる領域(b)に接線

を引く。二つの接線の交点 A における抵抗の値を超電導転移直上での抵抗 R

2

と定義する。

図 1−温度と抵抗との関係 

要求事項 

室温抵抗及び低温における抵抗測定は,4 端子法によって実施する。

この方法による相対合成標準不確かさは,変動係数(COV)として 5 %以下を目標とする。

試料を取り付けるときの最大曲げひずみは,2 %を超えてはならない。

注記  変動係数(COV)は,実験標準偏差を平均値で除した値の 100 倍である。

装置 

5.1 

測定用マンドレル又は測定用基板の材質 

コイル状試料用の測定用マンドレル又は直線状試料用の測定用基板の材質は,銅,アルミニウム,銀又

は液体ヘリウム温度(4.2 K)において熱伝導率が 100 W/(m・K)以上のものとし,0.1 mm 以下の厚さの

絶縁層(ポリエステル,ポリ四ふっ化エチレンなどからなるテープ又は層)でその材料の表面を覆うもの

とする。

5.2 

測定用マンドレルの直径及び測定用基板の長さ 

測定用マンドレルの直径は,試料の曲げひずみを 2 %以下にするために十分な大きさとする。

測定用基板は,一方向に少なくとも 30 mm の長さとする。

5.3 

抵抗 R

2

測定用クライオスタット 

クライオスタットは,抵抗 R

2

測定のため,試料を支持し,液体ヘリウムを貯液できる構造とする。また,


3

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

試料支持具によって,測定用マンドレル又は測定用基板に取り付けた試料を下げて液体ヘリウムの中に入

れたり,上げて液体ヘリウムから出すことができる構造とする。さらに,試料支持具は,試料に電流を流

して,試料に発生する電圧を測定できるものとする。

試料 

測定用試料は,継ぎ目又はねじ(捻)れがないこととし,30 mm 以上の長さのものとする。電圧端子間

距離(L)は,25 mm 以上とする。低温測定用の温度計は,試料の近傍に取り付けるものとする。

試料は,両端部に電流端子及び中央部に電圧端子を取り付け,何らかの機械的な方法によって,測定用

マンドレル又は測定用基板の絶縁層の上に試料を取り付けるものとする。そのとき,試料に余計な力がか

かって,曲げひずみ,引張ひずみなどがかからないように,特別な注意を払わなければならない。

R

1

及び R

2

の抵抗測定は,同じ試料,同じ取付け方によって実施する。

測定及び解析 

7.1 

室温抵抗(R

1

)の測定 

室温抵抗は,0  ℃以上 35  ℃以下の室温[T

m

  (℃)]で測定する。試料電流[I

1

(A)]は,電流密度が超電

導導体総断面積当たり 0.1 A/mm

2

∼1 A/mm

2

の範囲で通電し,そのときに発生する電圧[U

1

 (V)],I

1

T

m

を記録し,式(2)によって室温抵抗(R

m

)を算出する。

なお,銅マトリックスをもつ複合超電導導体については,20  ℃での抵抗(R

1

)を式(3)によって算出す

る。純銅部材を含まない複合超電導導体については,R

1

の値は R

m

と同等とみなして温度補正は行わない。

1

1

m

I

U

R

=

 (2)

)]

20

(

93

003

.

0

1

[

m

m

1

+

=

T

R

R

 (3)

7.2 

ひずみ補正前の超電導転移直上での抵抗(R

2

*)の測定 

7.2.1

  ひずみが加えられた試料において,低温で測定された抵抗(R

2

*)は R

2

の正しい値とはならないの

で,ひずみの影響に対する補正が必要である。ひずみの影響の補正方法については,7.3 に記載する。

7.2.2

  室温での抵抗測定が終了した試料を,5.3 に規定した R

2

測定用クライオスタット内にそのまま入れ

る。試料の温度を変化させるための加熱機能を備えたクライオスタットについては,A.2 に記載する。

7.2.3

  試料をゆっくりと液体ヘリウムの中に漬け,5 分間以上の時間をかけて液体ヘリウム温度まで冷却

する。

7.2.4

  試料電流[I

2

 (A)]は,電流密度が超電導導体総断面積当たり 0.1 A/mm

2

∼10 A/mm

2

の範囲で通電

し,そのときに発生する電圧[U (V)]

I

2

 (A),試料温度 T (K)を記録するものとする。SN 比を十分に高く

するために,超電導転移直上の電圧の絶対値が 10 µV を超える条件で測定を実施する。測定したデータの

イラスト及びその解析方法を

図 に示す。


4

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

下付きの+及び−を付けた電圧は,正電流を流した 1 回目の測定及び負電流を流した 2 回目

の測定で得られた値にそれぞれ対応し,U

20

及び U

20

は,電流を流さない状態で得られたも

のである。明確にするために,U

0rev

は U

0

と一致させないで示す。

図 2−温度に対する電圧曲線及び各電圧の定義 

7.2.5

  超電導状態にある試料に試験電流(I

2

)を印加し,ほとんど同時に二つの電圧 U

0

(正の電流極性

での初期電圧)及び U

0rev

(電流極性を短時間に反転させたときの電圧)を測定する。正確な R

2

*の測定に

は,測定の妨げになる過大な電圧が存在しないこと及び試料の初期状態が超電導状態であることが要求さ

れ,そのため,次の条件が満たされていなければならない。

01

.

0

2

rev

0

0

<

+

U

U

U

 (4)

ここで,

¯

U

2

は,試料の低温における常電導状態の平均電圧で,7.2.11 で定義される。

7.2.6

  0.1 K/min∼10 K/min の速度で試料をゆっくりと昇温し,完全に常電導状態にする。5.3 に規定した

R

2

測定用クライオスタットを使用し,試料の位置を液体ヘリウムの液面から適正な位置まで上げた場合,

簡単にこの昇温を行うことができる。

7.2.7

  この昇温の間,試料の温度に対する電圧曲線を記録する。

7.2.8

  温度に対する電圧曲線は,転移して常電導状態になった後,15 K 近くまで測定する。引き続いて,

15 K を超えない温度で試料通電電流をゼロとし,そのときの電圧 U

20

を記録する。

7.2.9

  試料をゆっくりと液体ヘリウム中に下げていき,初期電圧 U

0

を記録したときと±1 K 以内の温度

まで冷却する。この温度で,逆極性(最初に記録したときの逆の極性)で同じ大きさの試料電流 I

2

を通電

し,電圧 U

0

を記録する。この負電流で 7.2.67.2.8 の手順を繰り返し,温度に対する電圧曲線を記録し,

さらに,U

20

の電圧を記録したときと±1 K 以内の温度において,U

20

の電圧を記録する。


5

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

7.2.10

  各 2 本の温度に対する電圧曲線において,電圧の絶対値が温度とともに急激に増加する領域で第 1

の接線(a)を引き(

図 参照),電圧が温度に対してほぼ一定になる領域で第 2 の接線(b)を引く。U*

2

及び

U*

2

は,正極性,負極性における各々これら(a)及び(b)2 本の接線の交点での値として決定する。

7.2.11

  補正された電圧 U

2

及び U

2

は,

それぞれ U

2

U*

2

U

0

及び U

2

U*

2

U

0

として算出する。

平均電圧

¯

U

2

は,式(5)で定義する。 

2

2

2

2

+

U

U

 (5)

7.2.12

  R

2

*の正確な測定には,U

2

及び U

2

の測定中に熱起電力によるシフトが許容限界内にあることが要

求され,次の条件を満たさなければならない。

03

.

0

2

<

Δ

Δ

+

U

 (6)

ここで,Δ

及び Δ

は,それぞれ Δ

U

20

U

0

及び Δ

U

20

U

0

で定義される。R

2

*の測定が

7.2.5

及びこの細分箇条における条件を満たさなければ,条件を満たすように装置及び測定方法の改良を実施し

なければならない。

7.2.13

  超電導転移直上の抵抗値(R

2

*)は,式(7)によって算出する。

2

2

2

I

U

*

 (7)

7.3 

曲げひずみに伴う R

2

*

の補正 

複合超電導導体の中に純銅部材が含まれない場合,R

2

は R

2

*に等しいものとする。

純銅部材を含む長方形又は円形の断面の試料については,曲げひずみ ε

b

を ε

b

h/で定義し,補正を行

う。ここで,は試料の厚さの 1/2 又は半径,は曲げ半径である。曲げひずみが 0.3 %未満なら,補正の

必要はなく,R

2

は R

2

*に等しいものとする。

純銅部材を含み,かつ,曲げひずみが 0.3 %以上の場合,曲げひずみがない状態における超電導転移直

上での抵抗 R

2

は,式(8)によって算出する。

Cu

2

2

S

L

ρ

*

R

R

Δ

 (8)

ここで,Δρ は,4.2 K における引張ひずみ ε(%)に伴う純銅の抵抗率の増加であり,式(9)によって求め

る。ただし,引張ひずみは,ε≦0.02 の範囲とする。S

Cu

及び は,

8.4

に規定する。

Δρ(Ωm)=6.24×10

12

ε−5.11×10

14

ε

2

 (9)

式(9)の計算では,等価引張ひずみ ε を,平角超電導導体では(1/2)  ε

b

,丸形超電導導体では[4/(3π)]ε

b

とみなす。純銅の残留抵抗比の曲げひずみ依存性を,

附属書 A

に示す。

7.4 

残留抵抗比(RRR 

残留抵抗比は,式(1)を用いて算出する。

試験方法の不確かさ及び安定度 

8.1 

温度 

室温(T

m

)は,試料を測定用マンドレル又は測定用基板に取り付けた状態で測定されるが,式(3)を用い

て室温抵抗の温度補正を行う場合,その標準不確かさは,0.6  ℃を超えてはならない。

8.2 

電圧測定 

抵抗測定において,測定電圧の相対標準不確かさが 0.5 %を超えてはならない。


6

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

注記

  対応国際規格では,“相対合成標準不確かさ”と表記していたものを“相対標準不確かさ”とし

た。

8.3 

電流 

試料に流す試験電流は,4 端子法によって,標準抵抗器の電圧−電流特性から決定する。

使用する標準抵抗器は,相対標準不確かさが 0.3 %を超えないものとする。

直流電源から供給し,試料に流す直流試験電流の変動は,各抵抗測定中において 0.5 %未満とする。

注記

  対応国際規格では,“相対合成標準不確かさ”と表記していたものを“相対標準不確かさ”とし

た。

8.4 

寸法 

試料の長手方向に沿った電圧端子間距離(L)の測定は,その相対合成標準不確かさが 5 %を超えないも

のとする。純銅マトリックスを含む超電導導体では,純銅マトリックスの断面積(S

Cu

)を試料の公称銅比

及び公称寸法を用いて決定する。

試験報告 

9.1 

残留抵抗比の値 

得られた残留抵抗比(RRR)の値を記載する。

9.2 

試料 

測定結果の試験報告には,分かる範囲で次の項目を記述する。

a)

  製造業者名

b)

  等級及び/又は記号

c)

  断面の形状及び面積

d)

  断面寸法

e)

  フィラメント数

f)

  フィラメント直径

g)

  銅とニオブ・チタンとの体積比,銅・ニッケルとニオブ・チタンとの体積比又は銅と銅・ニッケルと

ニオブ・チタンとの構成の体積比,若しくは銅・ニッケルと銅とニオブ・チタンとの構成の体積比

h)

  純銅マトリックスの断面積(S

Cu

9.3 

試験条件 

9.3.1 

試験条件の報告 

R

1

及び R

2

の測定では,次の試験条件を報告する

a)

  試料の全長

b)

  電圧測定端子間距離(L

c)

  電流端子の接触長さ

d)

  通電電流(I

1

  及び  I

2

e)

  電流密度(I

1

及び I

2

を線全体の断面積で除したもの)

f)

  電圧(U

1

U

0

U

0rev

U*

2

U

20

U

0

U*

2

U

20

,及び

¯

U

2

g)

  抵抗(R

m

R

1

R

2

*及び R

2

h)

  純銅部材をもつ試料の抵抗率[ρ

1

=(R

1

×S

Cu

)/L  及び ρ

2

=(R

2

×S

Cu

)/L

i)

測定用マンドレル又は測定用基板の材料,形状及び寸法

j)

  測定用マンドレル又は測定用基板への試料の取付方法


7

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

k)

  測定用マンドレル又は測定用基板の絶縁材料

9.3.2 

R

1

の報告 

R

1

の測定では,次の試験条件を報告する。

a)

  温度設定及び試料の保存方法

b)

  T

m

R

m

測定の温度

9.3.3 

R

2

の報告 

R

2

の測定では,次の試験条件を報告する。

a)

  昇温速度

b)

  冷却及び昇温の方法


8

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

附属書 A

(参考)

RRR

測定に関する追加参考事項

A.1 

RRR

の曲げひずみ依存性

一般に,銅のような純金属の抵抗率(ρ)は,極低温において加えるひずみの増加とともに増加し,この

増加率は,低い ρ をもつ超電導導体の方が,高い ρ をもつ超電導導体よりも大きい。室温では,金属の抵

抗率に及ぼすひずみの影響はほとんどない。これは,高い RRR をもつ材料では,ひずみに伴う RRR の変

化がより顕著であることを意味する。参考文献[1]のラウンドロビン試験の結果によれば,低い RRR をもつ

試料の曲げひずみの依存性は小さい。曲げひずみは,試料を測定用基板又は測定用マンドレルに取り付け

るときに加わる。曲げひずみは,曲率半径に反比例するので,測定用マンドレルの直径が小さいほど,試

料に加わる曲げひずみは大きい。

純銅の 4 K における抵抗率の増加分 Δρ は,参考文献[2]の第 8 章に示されるように,冷間加工率 CW(%)

の関数で表される。CW の値は,引張ひずみ ε の値にほぼ等しいので,ε の小さいときにおいて,Δρ は式(9)

で表される。曲げひずみによる銅の抵抗率増加の依存性は,曲げひずみを等価的な引張ひずみに置き換え

ることによって得られる。

図 A.1

は,1993 年及び 1994 年に実施されたラウンドロビン試験の測定値から得られた,純銅マトリッ

クスをもつニオブ・チタン複合超電導導体の RRR と曲げひずみとの関係を示す。図中に,各試料の,式(9)

に従って計算して得られた線を示す。測定値は,計算値と基本的に一致し,高い RRR をもつ材料では,曲

げひずみに敏感である。

図 A.2

は,ひずみゼロで 50∼350 の RRR をもつ丸銅線の,式(9)によって得られた

依存性である。

図 A.3

には,ひずみゼロの値で規格化した RRR のひずみ依存性を示す。平角銅線の同様の

依存性を,

図 A.4

及び

図 A.5

に示す。この規格の上限である 350 の RRR をもつ銅では,ひずみゼロに比べ

て 2 %の曲げひずみで RRR が 10 %低下した。

高い RRR をもつ材料を評価するためには,加える曲げひずみをできるだけ小さくする。すなわち,直線

状の基板を用いるか大きな曲げ径をもったマンドレルを用いて評価することが望ましい。さらに,試料の

取付け時にハンドリングによって余計なひずみを加えないように特別に注意を払うのがよい。


9

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

図 A.1

純銅マトリックスのニオブ

チタン複合超電導導体の曲げひずみ依存性 

(計算値と実測値との比較) 

図 A.2

丸銅線の RRR の曲げひずみ依存性 


10

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

図 A.3

丸銅線の規格化した RRR (0)の曲げひずみ依存性 

図 A.4

平角銅線の RRR の曲げひずみ依存性 


11

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

図 A.5

平角銅線の規格化した RRR (0)の曲げひずみ依存性 

A.2 

超電導転移温度以上に試料温度を上げる別の方法 

次に示す方法を試料を超電導転移温度以上に昇温させる方法として推奨する。試料全体の昇温速度は,

0.1 K/min∼10 K/min にするのがよい。大きな温度勾配を避けて,ゆっくりと昇温するためには,ヒータ出

力,熱容量(測定用マンドレル又は測定用基板を含む試料)

,ヒータと試料との間の距離を注意深く選ぶ。

a)

ヒータ法

  クライオスタット内の液体ヘリウム浴から試料を取り出した後,測定用マンドレル又は測

定用基板に組み込んだヒータによって,超電導転移温度以上に試料を加熱する。

b)

断熱法

1)

断熱法

  この方法では,試料,試料ホルダ,ヒータなどをもつチャンバをクライオスタット内に保

持する。チャンバを液体ヘリウム浴に浸し(漬)する前に,チャンバ内の空気を真空引きし,ヘリ

ウムガスを充填する。次に,チャンバを液体ヘリウム浴に浸し(漬)し,試料を 5 K 以下に冷却す

る。その後,ヘリウムガスを真空引きして,ヒータ加熱によって試料を断熱状態で超電導転移温度

以上に昇温させる。

2)

準断熱法

  この方法では,極低温測定の間を通じて,クライオスタット内に試料を液体ヘリウム浴

からある高さに保持する。測定用マンドレル又は基板に冷媒と通じた熱アンカーを付けることによ

って,試料があらかじめ極低温に冷えるようにする。試料は,準断熱状態にある測定用マンドレル

又は基板に組み込まれたヒータによって,超電導転移温度以上に加熱する。

c)

冷凍機法

  この方法では,測定用マンドレル又は測定用基板に装着した試料を 5 K 以下の温度に冷凍

機を使って冷却する。試料は,ヒータ又は冷凍能力を制御して超電導転移温度以上に加熱する。

A.3 

RRR

のラウンドロビン試験の要約 

ニオブ・チタン複合超電導導体の RRR のラウンドロビン試験が実施された。供試用超電導導体の諸元は,

次のとおりである。

a)

  直径:0.8 mm(裸線径),0.86 mm(含絶縁被覆)

b)

  銅/ニオブ・チタン比:6.5


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H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

c)

  平均フィラメント径:約 70 μm

d)

  フィラメント数:16

e)

  ツイストピッチ:30 mm

f)

  臨界電流:185 A  以上(3 T,4.2 K)

g)

  RRR:150  以上

試料は,直線に近い状態で参加した機関に提供された。受け取ったままの状態で測定された試料もあれ

ば,マンドレルに巻かれひずみが印加された状態で測定された試料もある。5 か国から 13 機関が参加し,

得られたデータ数は 77 個であった。R

2

は,

7.2

7.3

及び

A.4

で規定した方法で測定した。測定の詳細は,

参考文献[3]に述べられている。ひずみの影響は,式(8)及び式(9)を用いて補正した。測定された RRR の分

布を

図 A.6

に示す。3 データを除いて解析した。ほとんどのデータは,かなりシャープに収れん(斂)し

た。平均値は 178.5,標準偏差は 4.4,COV は 2.44 %であった。外れた 3 データを除けば,平均値は 178.2,

標準偏差は 3.1,COV は 1.73 %であった。目標 COV は 5 %なので,この結果は,この規格において記載さ

れた幾つかの方法による RRR 測定の妥当性を示している。

図 A.6

ニオブ

チタン複合超電導導体の RRR の測定値の分布 

A.4 

R

2

*

の別の測定方法 

R

2

*の測定手段として,次の方法を適用することができる。

a)

標準方法の簡便法

  これは,電圧−温度曲線を 1 回だけ測定する簡便な方法である。超電導状態にあ

る試料の電圧をある方向に電流(I

2

)を通電して測定した後,反対方向に流して測定する。これらの

電圧を,

図 A.7

に示される U

0

及び U

0rev

とする。そして,電流を初期の方向に戻して通電する。常電

導転移した後,転移温度より約 4 K 高い曲線上の平たん(坦)域で電圧 U'

2

を測定する。そして,電

流をゼロにして,電圧値(U

20

)を読み取る。再び電流方向を逆にして,電圧(U'

2

)を測定する。低

温での抵抗は,次の式から得られる。

2

2

2

I

U

*


13

H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

及び

2

2

2

2

U

U

U

この式は,熱起電圧の影響を補償する。R

2

*

測定において,妨害電圧及び熱起電圧の影響が大きくな

いということを保証するために,次の条件を満足するものとする。

01

.

0

2

rev

0

0

<

U

U

03

.

0

2

2

2

<

U

U"

U"

ここで,U"

2

及び U"

2

は,U"

2

|

U'

2

U

20

|

及び U"

2

|

U'

2

U

20

|

で,それぞれ定義する。

図 A.7−電圧の定義 

b)

恒温法  この方法は,7.2 で規定した方法の代わりに,転移温度より約

4 K

高い平たんな領域において,

温度を固定して直接 R

2

*

を決定する。この場合,試料全体が均一,かつ,一定温度であることを確認

することが望ましい。また,7.2.9 で定義されるような電圧 U

0

及び U

0

は,この方法においてゼロレ

ベルの電圧として記録しなければならない。熱起電圧の影響を除くため,試験電流を反転させて試料

の二つの電圧信号(U

2

及び U

2

)をほぼ同時に測定する。この方法では,低温での抵抗 R

2

*

を決定す

るときに,熱起電圧の影響を十分取り除くことができる。

c)

コンピュータ制御方法  コンピュータを用いて,電流方向及び試料の昇温を制御したり,電圧−温度

曲線を測定することができる。周期的に電流を反転したり,電流のオン,オフを繰り返すことによっ

て,電流の方向を変化させ,オフセット電圧を補正すれば,試料温度を変化させる

1

周期の間に測定

できる。この方法は,常電導状態への転移速度がそれほど速くないときに有効である。熱起電圧もま

た確認する必要がある。


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H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

d)

定期的な確認を前提としたその他の簡便な方法  十分な経験をもったオペレータが特定の装置を使

ったり,次に示す条件を満足すれば,温度を測定しない簡便な方法もまた許容される。簡便な試験機

関の測定が定期的な検定を通して,この標準方法と同じ結果,すなわち,決められた不確かさ以下の

値が得られることが示されれば,この標準方法に代わって実施することができる。これらの定期的な

確認作業は,次に示す方法のいずれかによって達成できる。

1)

ある標準方法を用いた試験機関と簡便な方法を用いた試験機関との比較

2)

単一試験機関における方法と標準方法との比較

3)

既知の RRR の参照試料を用いた定期的な簡便測定方法の確認

A.5 

曲げひずみ効果の補正の方法 

この箇条では,7.3 に規定する低温における抵抗の曲げひずみ効果の補正方法について述べる。

半径 のマンドレルに装着されている厚さ

2

の試料の曲げひずみは,次の式で与えられる。

ε

b

h

/

r 

等価的な引張ひずみは,平角超電導導体では,

ε

(1/2)

 ε

b

丸形超電導導体では,

ε

[4/(3π)]

 ε

b

となる。純銅の

4.2 K

における抵抗の増加は,式

(9)

にこの ε を代入して計算でき,式

(8)

を用いて極低温

での抵抗の補正ができる。

A.6 

試料の取付け方向の推奨方法 

試料が直線状の線の場合,水平方向の取付けは垂直方向の取付けに比べて温度勾配を減らすことができ

るので,線が水平になるように基板に取り付けるよう推奨する。ここで,水平方向の取付けとは,線の方

向が液体ヘリウム面に平行であることをいう。


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H 7306

:2012 (IEC 61788-4:2007)

附属書 B

(参考)

統計に関する定義

(対応国際規格の規定を不採用とした。

参考文献   

[1]  MURASE S., SAITOH T., MATSUSHITA T., and OSAMURA K., Proc. of ICEC16/ICMC, Kitakyushu, May

1996, p1795.

[2]  SIMON N.J., DREXLER E.S, and REED R.P., Properties of Copper and Copper Alloys at Cryogenic

Temperatures, NIST Monograph, 1992, p177.

[3]  MATSUSHITA T, OTABE E.S., MURASE S., OSAMURA K, and HUA C.Y., Adv. in Superconductivity XI,

Tokyo: Springer, 1999, p1507.

[4]

JIS Z 8103

  計測用語