日本工業規格
JIS
H
5701
-1991
ニッケル及びニッケル合金鋳物
Nickel and nickel alloy castings
1.
適用範囲 この規格は,ニッケル及びニッケル合金鋳物(遠心鋳造品を含む。以下,鋳物という。)に
ついて規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 0412
鋳鋼品普通許容差
JIS G 0581
鋳鋼品の放射線透過試験方法及び透過写真の等級分類方法
JIS G 1281
ニッケルクロム鉄合金分析方法
JIS H 0321
非鉄金属材料の検査通則
JIS H 1270
ニッケル及びニッケル合金鋳物の分析方法通則
JIS H 1271
ニッケル銅合金分析方法
JIS H 1272
ニッケル及びニッケル合金鋳物中の銅定量方法
JIS H 1273
ニッケル及びニッケル合金鋳物中の鉄定量方法
JIS H 1274
ニッケル及びニッケル合金鋳物中のマンガン定量方法
JIS H 1275
ニッケル及びニッケル合金鋳物中の炭素定量方法
JIS H 1276
ニッケル及びニッケル合金鋳物中のけい素定量方法
JIS H 1277
ニッケル及びニッケル合金鋳物中の硫黄定量方法
JIS H 1278
ニッケル及びニッケル合金鋳物中のりん定量方法
JIS H 1279
ニッケル合金鋳物中のクロム定量方法
JIS H 1280
ニッケル合金鋳物中のモリブデン定量方法
JIS H 1281
ニッケル合金鋳物中のバナジウム定量方法
JIS H 1282
ニッケル合金鋳物中のタングステン定量方法
JIS Z 2201
金属材料引張試験片
JIS Z 2241
金属材料引張試験方法
JIS Z 2343
浸透探傷試験方法及び欠陥指示模様の等級分類
2.
種類及び記号 鋳物の種類及び記号は,表 1 のとおりとする。
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H 5701-1991
表 1 種類及び記号
参考
種類
記号
用途例
ニッケル鋳物 NC
水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム及び塩化ア
ンモニウムを取り扱う製造装置のバルブ・ポン
プなど
ニッケル−銅合金鋳物 NCuC
海水及び塩水,中性塩,アルカリ塩及びふつ酸
を取り扱う化学製造装置のバルブ・ポンプなど
ニッケル−モリブデン合
金鋳物
NMC
塩素,硫酸,りん酸,酢酸及び塩化水素ガスを
取り扱う製造装置のバルブ・ポンプなど
ニッケル−モリブデン−
クロム合金鋳物
NMCrC
酸化性酸,ふつ酸,ぎ酸,無水酢酸,海水及び
塩水を取り扱う製造装置のバルブなど
ニッケル−クロム−鉄合
金鋳
NCrFC
硝酸,脂肪酸,アンモニウム水及び酸化性薬品
を取り扱う化学及び食品製造装置のバルブなど
3.
品質
3.1
外観 鋳物は,鋳はだ良好で,使用上有害なきず,割れ,鋳巣などの欠陥があってはならない。た
だし,製品の品質に影響を及ぼすおそれのない場合には,溶接その他の適当な方法によって補修すること
ができる。
なお,補修によって品質に影響を及ぼすおそれのある場合は,受渡当事者間の協定による。
3.2
化学成分 鋳物の化学成分は,表 2 による。
表 2 化学成分
単位 %
種類 Ni(
1
) Cu Fe Mn C Si S Cr P Mo V W
ニッケル鋳物 95.0
以上
1.25
以上
3.00
以上
1.50
以上
1.00
以上
2.00
以上
0.030
以上
− 0.030
以上
−
−
26.0
〜
ニ ッ ケ ル − 銅
合金鋳物
残部
33.0
3.50
以下
1.50
以下
0.35
以下
1.25
以下
0.030
以下
− 0.030
以下
−
−
−
4.0 26.
0.20
〜
〜
〜
ニ ッ ケ ル − モ
リ ブ デ ン 合 金
鋳物
残部
−
6.0
1.00
以下
0.12
以下
1.00
以下
0.030
以下
1.00
以下
0.040
以下
30.0 0.60
−
4.5
15.5
16.0 0.20 3.75
〜
〜
〜
〜
〜
ニ ッ ケ ル − モ
リ ブ デ ン − ク
ロム合金鋳物
残部
−
7.5
1.00
以下
0.12
以下
1.00
以下
0.030
以下
17.5
0.040
以下
18.0 0.40 5.25
14.0
〜
ニ ッ ケ ル − ク
ロ ム ー 鉄 合 金
鋳物
残部
− 11.0
以下
1.50
以下
0.40
以下
3.00
以下
0.030
以下
17.0
0.030
以下
−
−
−
注(
1
) Ni
含有率が規定されているものについては,各規定元素の百分率を各々求めた後,その総計を100から引いて小
数第2位以下を切り捨てた値を採用する。
備考 Co は,Ni として取り扱う。
3.3
機械的性質 鋳物の機械的性質(引張強さ,耐力及び伸び)は,表 3 による。
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H 5701-1991
表 3 機械的性質
引張試験
種類
質別
種類及び質
別の記号
引張強さ
N/mm
2
0.2%
耐力
N/mm
2
伸び
%
ニッケル鋳物
鋳造のまま NC-F
345
以上
125
以上 10 以上
ニッケル−銅合金鋳物
鋳造のまま NCuC-F
450
以上
170
以上 25 以上
ニッケル−モリブデン合金鋳
物
溶体化処理(
2
)
(1 095℃以上から急冷)
NMC-S 525
以上
275
以上
6
以上
ニッケル−モリブデン−クロ
ム合金鋳物
溶体化処理(
2
)
(1 175℃以上から急冷)
NMCrC-S 495
以上
275
以上
4
以上
ニッケル−クロム−鉄合金鋳
物
鋳造のまま NCrFC-F
485
以上
195
以上 10 以上
注(
2
)
急冷とは,強制空冷又は水冷をいう。
4.
形状,寸法及び質量 鋳物の形状,寸法及び質量は,模型又は図面による。寸法許容差は,JIS B 0412
による。ただし,受渡当事者問の協定による場合は,この限りではない。
5.
試験
5.1
分析試験 分析試験は,次のとおり行う。
(1)
化学成分の分析試験は,次のいずれかによる
JIS G 1281
,JIS H 0321,JIS H 1270,JIS H 1271,JIS H 1272,JIS H 1273,JIS H 1274,
JIS H 1275
,JIS H 1276,JIS H 1277,JIS H 1278,JIS H 1279,JIS H 1280,JIS H 1281,
JIS H 1282
(2)
分析試料の取り方及び一般事項は,JIS H 0321 による。
なお,発光分光分析方法,原子吸光光度分析方法又は蛍光 X 線分析方法による場合の分析試料の取
り方は,受渡当事者間の協定による。
5.2
引張試験 引張試験は,次のとおり行う。
(1)
引張試験は,JIS Z 2241 による。この場合の試験片は,JIS Z 2201 に規定する 10 号試験片又は
図 1 の
試験片(10 号サブサイズ試験片)とする。
図 1 10 号サブサイズ試験片
(2)
引張試験片の製作に必要な供試材の取り方は,次のとおりとする。
(a)
供試材は,鋳物を鋳造するときに同時に鋳造する。ただし,遠心鋳造品の場合は,受渡当事者間の
協定による。
(b)
供試材は,特に指定がない限り,1 溶解,同一熱処理ごとに 1 個以上を取る。
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H 5701-1991
(c)
供試材の寸法及び試験片の採取位置は,
図 2 の A 号又は B 号のいずれかによる。この場合,その記
号を試験成績表に付記しなければならない。
(d)
熱処理を必要とする供試材は,鋳物と同時に熱処理を施す。
図 2 供試材
5.3
非破壊試験 非破壊試験は,JIS G 0581 及び JIS Z 2343 による。その場合の合否判定基準について
は,受渡当事者間の協定による。
6.
検査 検査は,次のとおり行う。
(1)
鋳物は,外観,形状,寸法及び質量を検査するとともに,5.によって試験を行い,3.及び 4.の規定に適
合したものを合格とする。
(2)
鋳物は,検査の前に塗装,その他検査の妨げとなるいかなる処理も施してはならない。
7.
表示 検査に合格した鋳物又は梱包には,適当な方法によって,次の事項を表示しなければならない。
ただし,受渡当事者間の協定によってその一部を省略することができる。
(1)
種類及び質別,又は種類及び質別の記号
(2)
製造番号
(3)
製造業者名又はその略号
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H 5701-1991
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
竹 入 俊 樹
三菱金属株式会社
森 茂 充
三菱金属株式会社
浅 見 正 則
三菱金属株式会社
永 瀬 勝 美
三菱金属株式会社
久 世 孝
株式会社東芝
平 井 武 行
住友金属鉱山株式会社
烏 谷 徹
山陽特殊製鋼株式会社
阿久津 三 俊
山陽特殊製鋼株式会社
小谷野 昭 夫
住友特殊金属株式会社
中 西 昭 夫
住友特殊金属株式会社
伊 東 直 也
日本ステンレス株式会社
平 石 久 志
久保田鉄工株式会社
太 田 昭 男
太平金属工業株式会社
松 岡 礼次郎
大同インコアロイ株式会社
茂 木 邦 男
大同インコアロイ株式会社
相 馬 南海雄
ニッケル製品協会
(関係者)
近 藤 弘
工業技術院標準部材料規格課
斉 藤 和 則
工業技術院標準部材料規格課
非鉄金属部会 ニッケル及びニッケル合金専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
椙 山 正 孝
東京大学名誉教授
加 藤 寛
埼玉大学
相 馬 哲 夫
通商産業省機械情報産業局
光 川 寛
通商産業省基礎産業局
池 田 要
工業技術院標準部
中 谷 宏
日本電子材料技術協会
松 本 悌
日本電子材料工業会
大 友 暁
石川島播磨重工業株式会社
小 倉 忠 利
三菱電線工業株式会社
竹 入 俊 樹
三菱金属株式会社
久 世 孝
株式会社東芝
山 本 勝 美
日揮株式会社
森 田 益 夫
株式会社富士電機総合研究所
伊 東 直 也
日本ステンレス株式会社
茂 木 邦 男
大同インコアロイ株式会社
中 西 昭 男
住友特殊金属株式会社
阿具根 三 俊
山陽特殊製鋼株式会社
相 馬 南海雄
ニッケル製品協会
(事務局)
近 藤 弘
工業技術院標準部材料規格課
斉 藤 和 則
工業技術院標準部材料規格課