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H 1695 : 2000  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する同法第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本

規格協会 (JSA) から工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査

会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS H 1695 : 1976は改正

され,この規格に置き換えられる。 

今回の改正は,タンタルの製品分析の現状を的確に反映し,その利便化を図るために改正した。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 1695 : 2000 

タンタル中の酸素定量方法 

Method for determination of oxygen in tantalum 

序文 この規格は,タンタル製品の品質,分析装置及び分析技術の推移に対応するために必要な改正を行

った。 

なお,この規格に対応するISO規格は,発行されていない。 

1. 適用範囲 この規格は,タンタル中の酸素定量方法について規定する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。 

JIS H 1680 タンタルの分析方法通則 

JIS Z 2613 金属材料の酸素定量方法通則 

3. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS H 1680及びJIS Z 2613による。 

4. 定量方法 酸素の定量方法は,不活性ガス融解-赤外線吸収法による。この方法は,酸素含有率0.001% 

(m/m) 以上0.5% (m/m) 以下の試料に適用する。 

5. 不活性ガス融解-赤外線吸収法 

5.1 

要旨 不活性ガス気流中で黒鉛るつぼを用いて試料を浴金属とともにインパルス方式によって加熱

して融解し,酸素を一酸化炭素として他のガスとともに抽出する。抽出ガス中の一酸化炭素をそのまま赤

外線検出器に導くか,加熱した酸化銅(II)で一酸化炭素を二酸化炭素に酸化した後,赤外線検出器に導き,

抽出ガス中の一酸化炭素又は二酸化炭素による赤外線吸収量の変化を測定する。 

5.2 

材料及び試薬 材料及び試薬は,次による。 

a) ニッケル 酸素含有率が0.005% (m/m) 以下のカプセル,バスケット又ははく状のもの(1)。 

b) 不活性ガス 99.99% (v/v) 以上のヘリウム,窒素又はアルゴンを用いる。 

c) 黒鉛るつぼ 使用するインパルス炉に適合するもの。その例を付図1に示す。 

d) 検量線作成用試料 鉄鋼標準物質を用いる。 

注(1) 酸素含有率が定量下限に近い試料を測定する場合は,ニッケルバスケットを用いて,使用前の

約80℃に加熱した混酸(酢酸75,硝酸25,塩酸2),水及びエタノール又はアセトンで順次約30

秒間ずつ洗浄した後,送風して乾燥して使用する。 

H 1695 : 2000  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.3 

装置 装置は,不活性ガス精製部,ガス抽出部,抽出ガス変換部又は抽出ガス精製部,ガス測定部

などで構成する。ガス抽出部以外の各部の構成は,装置に用いられている赤外線検出器及び使用する不活

性ガスの種類によって異なる。装置の概略を付図2〜4に示す。 

a) ヘリウムと二酸化炭素用赤外線検出器とを使用する装置(付図2) 

1) 不活性ガス精製部 不活性ガス精製部は,二酸化炭素吸収管,脱水管などで構成する。 

1.1) 二酸化炭素吸収管 ガラス管にソーダ石灰又は水酸化ナトリウムを詰めたもの。 

1.2) 脱水管 ガラス管に過塩素酸マグネシウムを詰めたもの。 

2) ガス抽出部 ガス抽出部は,試料投入器,インパルス炉などで構成する。 

2.1) 試料投入器 不活性ガス雰囲気中で試料をインパルス炉に投入できるもの。 

2.2) インパルス炉 固定された上部水冷電極及び上下に移動ができる下部水冷電極で構成し,両電極

の間に挟んだ黒鉛るつぼ[5.2 c)]を通電によって数秒間で2 000〜2 500℃に昇温できるもの。 

3) 抽出ガス変換部 抽出ガス変換部は,収じん管,酸化管などで構成する。 

3.1) 収じん管 ガラス管にガラスウールを詰めたもの。 

3.2) 酸化管 ステンレス鋼管又はガラス管に酸化銅(II)を詰めたもの。電気抵抗加熱炉によって加熱し

て使用する。 

4) ガス測定部 ガス測定部は,赤外線検出器,指示計などで構成する。 

4.1) 赤外線検出器 固体センサー形の二酸化炭素用赤外線検出器で,二酸化炭素による赤外線吸収量

の変化を測定できるもの。 

4.2) 指示計 赤外線検出器で検出された二酸化炭素に基づく信号を読み取ることのできるもの。 

b) 窒素と一酸化炭素用赤外線検出器とを使用する装置(付図3) 

1) 不活性ガス精製部 a)の1)による。 

2) ガス抽出部 a)の2)による。 

3) 抽出ガス精製部 抽出ガス精製部は,収じん管,ジシアン吸収管などで構成する。 

3.1) 収じん管 a)の3)の3.1による。 

3.2) ジシアン吸収管 ガラス管にソーダ石綿を詰めたもの。 

4) ガス測定部 ガス測定部は,赤外線検出器,指示計などで構成する。 

4.1) 赤外線検出器 固体センサー形又は内部に一酸化炭素を封入した静電容量形の一酸化炭素用赤外

線検出器で,一酸化炭素による赤外線吸収量の変化を測定できるもの。 

4.2) 指示計 赤外線検出器で検出された一酸化炭素に基づく信号を読み取ることのできるもの。 

c) アルゴンと一酸化炭素用赤外線検出器とを使用する装置(付図4) 

1) 不活性ガス精製部 不活性ガス精製部は,還元管,二酸化炭素吸収管,脱水管などで構成する。 

1.1) 還元管 ステンレス鋼管に金属銅(粒状)又は活性炭を詰めたもの。電気抵抗加熱炉で加熱して

使用する。 

1.2) 二酸化炭素吸収管 a)の1)の1.1)による。 

1.3) 脱水管 a)の1)の1.2)による。 

2) ガス抽出部 a)の2)による。 

3) 抽出ガス精製部 抽出ガス精製部は,収じん管,脱水管などで構成する。 

3.1) 収じん管 a)の3)の3.1)による。 

3.2) 脱水管 a)の1)の1.2)による。 

4) ガス測定部 b)の4)による。 

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H 1695 : 2000  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.4 

試料はかり取り量 試料はかり取り量は,試料中の酸素量が検量線の範囲内になる量とし,含有量

によって検量線の範囲内で,有効数字が3けたまではかる(2)。 

注(2) 鉄鋼標準物質の認証値又は推奨値が0.0125%を1.0g使用する場合の試料はかり取り量の例を表1

に示す。 

表1 試料はかり取り量の例 

酸素含有率 

% (m/m)  

試料はかり取り量 

0.001以上0.02未満 

0.5 

0.02 以上0.05未満 

0.2 

0.05 以上0.1 未満 

0.1 

0.1  以上0.2 未満 

 0.05 

0.2  以上0.5 以下 

 0.02 

5.5 

操作(3) 

注(3) 操作の細かい手順は,装置によって異なるので,その装置の指定する手順に従う。 

5.5.1 

準備操作 準備操作は,次の手順によって行う。 

a) 装置に冷却水及び不活性ガス[5.2 b)]を供給した後電源を入れ,装置各部を所定の条件に設定し,装置

の各部を安定させる。 

b) 新しい黒鉛るつぼ[5.2 c)]を所定の位置に設置し,インパルス炉に通電して黒鉛るつぼを脱ガス温度に

加熱する(4)。 

c) b)の黒鉛るつぼをガス抽出温度に加熱し(5),指示計の値を読み取る。 

d) 安定した値が得られるまでc)の操作を繰り返す(6)。 

注(4) 脱ガス温度のパラメータとして,黒鉛るつぼに流れる電流又は電力の値を読み,ガス抽出の温

度に対応する電流又は電力の値より高いことを確認する。 

(5) ガス抽出温度のパラメータとして,試料を用いて電流又は電力の値を変えて抽出量が最高とな

る電流又は電力の値を求めておく。 

(6) b)で脱ガスした黒鉛るつぼを繰り返して用いる。 

5.5.2 

定量操作 定量操作は,準備操作,空試験及び検量線の作成に引き続き,次の手順(3)によって行う。 

a) 新しい黒鉛るつぼ[5.2 c)]を所定の位置に設置する。 

b) 試料及びニッケル[5.2 a)]をはかり取る(7)。 

c) はかり取った試料をニッケルで包んで(8)試料投入器に入れる。 

d) インパルス炉に通電して黒鉛るつぼを脱ガス温度に加熱し(4),黒鉛るつぼの脱ガスを行う。 

e) c)のニッケルで包んだ試料を黒鉛るつぼに投入し,インパルス炉に通電して黒鉛るつぼをガス抽出温

度に加熱し(5),指示計の値を読み取る。 

注(7) ニッケルの使用量は,試料はかり取り量の2倍以上とし,使用する装置によって異なるので,あ

らかじめ試料を用いて,抽出量が最高となる量を求め,その装置に適した使用量を求めておく。 

(8) 試料とニッケルとは,できるだけ密着させる。 

5.6 

空試験 空試験は,次の手順(3)によって行う。 

a) 新しい黒鉛るつぼ[5.2 c)]を所定の位置に設置し,ニッケル[5.2 a)]を5.5.2のb)と同じ量を試料投入器

に入れる。 

b) 5.5.2のd)と同じ条件でインパルス炉に通電して黒鉛るつぼを脱ガス温度に加熱し(4),黒鉛るつぼの脱

ガスを行う。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) a)のニッケルを黒鉛るつぼに投入し,5.5.2のe)と同じ条件でインパルス炉に通電して黒鉛るつぼをガ

ス抽出温度に加熱し(5),指示計の値を読み取る。 

d) a)〜c)の操作を数回繰り返し,読み取った値の平均値を求める。 

5.7 

検量線の作成 検量線の作成は,次の手順(3)によって行う。 

a) 新しい黒鉛るつぼ[5.2 c)]を所定の位置に設置する。 

b) 検量線作成用試料[5.2 d)]を1mgのけたまではかり取る(9)。 

c) はかり取った検量線作成用試料を試料投入器に入れる。 

d) 5.5.2のd)と同じ条件でインパルス炉に通電して黒鉛るつぼを脱ガス温度に加熱し(4),黒鉛るつぼの脱

ガスを行う。 

e) 検量線作成用試料を黒鉛るつぼに投入し,インパルス炉に通電して黒鉛るつぼをガス抽出温度に加熱

する(5)。指示計の値を読み取る。 

f) 

検量線作成用試料の酸素含有率とはかり取った量から酸素量(10)を求め,酸素量とe)で得た指示計の値

との関係をプロットする。プロットした点と原点とを通る直線を作成し,その直線(酸素量と指示計

の値との関係線)を検量線とする。 

注(9) 例として,検量線作成用試料に0.012 5%の鉄鋼標準物質を用いる場合は1.0gをはかり取る。 

(10) 酸素の量は,次の式によって算出する。 

100

P

G

M

×

=

ここに, M: はかり取った検量線作成用試料中の酸素量 (g)  
 

G: はかり取った検量線作成用試料の量 (g)  

P: 検量線作成用試料中の酸素含有率 [% (m/m)]  

5.8 

計算 計算は,5.5.2のe)で読み取った値及び5.6d)で得た平均値と5.7で作成した検量線とから酸素

量を求め,試料中の酸素含有率を次の式によって算出する。 

100

)

(

2

1

×

=

m

A

A

O

ここに, 

O: 試料中の酸素含有率 [% (m/m)]  

A1: 5.5.2のe)で読み取った値から求めた酸素量 (g)  

A2: 5.6 d)の平均値から求めた酸素量 (g)  

m: 試料はかり取り量 (g)  

付図1 黒鉛るつぼの例 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

付図2 不活性ガス融解-赤外線吸収法 ヘリウムと二酸化炭素用赤外線検出器とを使用する装置の概略 

付図3 不活性ガス融解-赤外線吸収法 窒素と一酸化炭素用赤外線検出器とを使用する装置の概略 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

付図4 不活性ガス融解-赤外線吸収法 アルゴンと一酸化炭素用赤外線検出器とを使用する装置の概略 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

JIS H 1695改正原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

水 池   敦 

東京理科大学 

村 山 拓 己 

通商産業省基礎産業局 

八 田   勲 

工業技術院標準部 

橋 本   進 

財団法人日本規格協会技術部 

吉 岡 孝 之 

科学技術庁金属材料技術研究所物性解析研究部 

稲 本   勇 

社団法人日本チタン協会(株式会社日鐵テクノリサーチ) 

前 田 繁 則 

株式会社ジャパンエナジー分析センター 

塚 原 涼 一 

住友金属鉱山株式会社技術本部 

徳 岳 文 夫 

東芝セラミックス株式会社開発研究所評価技術部 

河 本 光 喜 

株式会社オハラ品質管理部 

山 内 良 夫 

株式会社高純度物質研究所 

西   武 志 

松下電子部品株式会社コンデンサ事業部 

水 口 紀 元 

昭和キャボットスーパーメタル株式会社開発技術部 

磯 田 伸 二 

真空冶金株式会社 

井 出 光 良 

三井金属鉱業株式会社総合研究所上尾分析センター 

(事務局) 

豊 田 宣 俊 

社団法人新金属協会 

今 井 康 弘 

社団法人新金属協会