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H 1683 : 2002  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人新金属協会 (JSNM) /財団法人日

本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準

調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS H 1683 : 1996は

改正され,また,JIS H 1684 : 1976, JIS H 1686 : 1996, JIS H 1687 : 1976及びJIS H 1688 : 1976は廃止統合

され,この規格に置き換えられる。 

今回の規格制定のポイントは,タンタル分析の現状を的確に反映し,その利便性を図るために,定量元

素ごとの個別規格の中で,一つの分析方法として規定されていた各陰イオン交換分離原子吸光分析法を統

一し,タンタル−原子吸光分析方法として改正したことである。

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 1683 : 2002 

タンタル−原子吸光分析方法 

Tantalum−Method for atomic absorption spectrometric analysis 

1. 適用範囲 この規格は,タンタルの原子吸光分析方法について規定する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS H 1680 タンタル−分析方法通則 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0121 原子吸光分析通則 

3. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1680, JIS K 0050及びJIS K 0121による。 

4. 定量元素及び定量範囲 定量元素及び定量範囲は,表1による。 

表1 定量元素及び定量範囲 

定量元素 

定量範囲 

% (m/m)  

クロム 

0.000 5以上0.020以下 

銅 

0.000 5以上0.020以下 

鉄 

0.000 5以上0.020以下 

マンガン 0.000 5以上0.020以下 
ニッケル 0.000 5以上0.020以下 

5. 定量方法 

5.1 

要旨 試料をふっ化水素酸と硝酸とで分解し,陰イオン交換カラムに通してタンタルを吸着して除

去した後,流出液に硫酸を加えて加熱し,白煙を発生させる。水を加えて塩類を溶解した後一定量に薄め,

原子吸光分析装置のフレーム中に噴霧し,定量元素の吸光度を測定する。 

5.2 

試薬 試薬は,次による。 

a) 硝酸 (1+1)  

b) ふっ化水素酸 (1+1)  

c) 硫酸 (1+1)  

d) 硝酸・ふっ化水素酸溶液 硝酸77mlにふっ化水素酸185mlを加え,水で液量を1 000mlとする。溶液

は,清浄な栓付のポリエチレン容器に保存する。 

e) 水酸化カリウム溶液 (112g/l)  

f) 

硝酸アンモニウム・ふっ化アンモニウム溶液 硝酸アンモニウム240g,ふっ化アンモニウム18g及び

H 1683 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ふっ化水素アンモニウム14gを水に溶解し,水で液量を1 000mlとする。溶液は,清浄な栓付のポリ

エチレン容器に保存する。 

g) 標準クロム溶液 (100μgCr/ml)  クロム[99.9% (m/m) 以上]0.100gをはかり取り,ビーカー (200ml) 

に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸 (1+1) 30mlを加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで冷却し

た後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000mlの全量フ

ラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準クロム溶液とする。 

h) 標準銅溶液 (100μgCu/ml)  銅[99.9% (m/m) 以上]0.100gをはかり取り,ビーカー (200ml) に移し

入れ,時計皿で覆い,硝酸 (1+1) 20mlを加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで冷却した後,

時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000mlの全量フラスコ

に水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準銅溶液とする。 

i) 

標準鉄溶液 (100μgFe/ml)  鉄[99.9% (m/m) 以上]0.100gをはかり取り,ビーカー (200ml) に移し

入れ,時計皿で覆い,硝酸 (1+1) 20mlを加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで冷却した後,

時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000mlの全量フラスコ

に水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準鉄溶液とする。 

j) 

標準マンガン溶液 (100μgMn/ml)  マンガン[99.9% (m/m) 以上]0.100gをはかり取り,ビーカー 

(200ml) に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸 (1+1) 20mlを加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで

冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000mlの

全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準マンガン溶液とする。 

k) 標準ニッケル溶液 (100μgNi/ml)  ニッケル[99.9% (m/m) 以上]0.100gをはかり取り,ビーカー 

(200ml) に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸 (1+1) 10mlを加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで

冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000mlの

全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準ニッケル溶液とする。 

5.3 

装置,器具及び測定条件 

5.3.1 

フレーム原子吸光分析装置 フレーム原子吸光分析装置は,JIS K 0121に規定されたものとし,表

1の各定量元素についてそれぞれの定量下限を測定するのに十分な感度をもつものとする。 

5.3.2 

陰イオン交換カラム 陰イオン交換カラムは,次による。 

一端を細くしたポリエチレン管(長さ約250mm,内径10mm)に水でほぐした脱脂綿又は合成繊維綿を

約5mmの厚さに緩く詰め,水で膨潤させた強塩基性陰イオン交換樹脂(粒径75〜150μm)10ml(1)をスラ

リー状にして流し入れ,沈降させた後,その上に水でほぐした脱脂綿又は合成繊維綿を約5mmの厚さに

緩く詰める。このカラムは,脱脂綿又は合成繊維綿の詰め方を調節するなどして,流出液の流速を毎分1.0

〜1.5mlになるようにしておく。 

注(1) 同種の陰イオン交換樹脂でも交換特性,粒径,適正使用量などの違いがあり,タンタルの吸着,

溶離などの状況が異なることもある。 

したがって,あらかじめ分析試料と同量の金属タンタルを用いて5.5.2〜5.5.3a)の操作を行い,

得られた溶液中に漏えい付随するタンタル量をピロガロール吸光光度法又はICP発光分光分析

法で測定し,タンタルの流出量が1mg以下であることを確認して使用する陰イオン交換樹脂の

分離性能を把握しておく。 

5.3.3 

分析線の選定 定量元素の吸光度の測定に用いる分析線は,表2に示す波長を使用する(2)。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表2 分析線波長 

定量元素 分析線波長 

nm 

クロム 

357.9 

銅 

324.8 

鉄 

248.3 

マンガン 

279.5 

ニッケル 

232.0 

注(2) バックグランド補正機能がついている装置では,バックグランド補正機能を用いてもよい。 

5.4 

試料はかり取り量 試料はかり取り量は,1.00gとし,1mgのけたまではかる。 

5.5 

操作 

5.5.1 

準備操作 準備操作は,次の手順によって行う。 

a) 陰イオン交換カラム [5.3.2] に水酸化カリウム溶液20ml, 水20mlを順次通す。 

b) 硝酸・ふっ化水素酸溶液 [5.2d)] 100mlを通す。 

5.5.2 

試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。 

a) 試料をはかり取ってポリエチレンビーカー (100ml)(3)に移し入れ,ふっ化水素酸 (1+1) 8mlを加えた

後,ポリエチレン時計皿(4)で覆い,硝酸 (1+1) 2mlを少量ずつ加えて水浴上で加熱して分解する。 

b) 時計皿の下面を硝酸・ふっ化水素酸溶液 [5.2d)] 5mlで洗浄して,時計皿を取り除く。 

注(3) 四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (100ml) を使用することができる。その場合,水浴の代わりに

ホットプレートなどによる加熱をすることができる。 

(4) 四ふっ化エチレン樹脂時計皿を使用することができる。 

5.5.3 

定量成分の分離 定量成分の分離は,次の手順によって行う。 

a) 5.5.2b)で得た溶液を,5.5.1で準備操作の終った陰イオン交換カラムに通す。次に硝酸・ふっ化水素酸

溶液 [5.2d)] 10mlでビーカーを洗ってカラムに通し,この操作を更に2回繰り返す。流出液はすべて

ポリエチレンビーカー (200ml)(5)に受ける。 

b) 四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (100ml) に流出液の一部を移し入れ,硫酸 (1+1) 1.0mlを加え,ホッ

トプレート上で弱く加熱して濃縮しながら,残りの流出液を数回に分けて移し入れ,最後は少量の水

を用いてすべての流出液を移し入れ,濃縮を続ける(6)。濃縮した後は,徐々に温度を上げて硫酸の白

煙を認めたら加熱をやめる。放冷した後,水4mlを加え,加熱して蒸発残留物を溶解する。 

c) 溶液を50mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。 

注(5) 四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (200ml) を使用することができる。 

(6) 注(5)を適用して四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (200ml) を使用した場合は,流出液に硫酸 (1

+1) 1.0mlを加えた後,流出液の全量をホットプレート上で加熱して濃縮を行うことができる。 

参考 陰イオン交換カラムは,硝酸アンモニウム・ふっ化アンモニウム溶液 [5.2f)] 100ml,次いで水

20ml,水酸化カリウム溶液20ml,水20ml及び硝酸・ふっ化水素酸溶液 [5.2d)] 100mlを順次通

すことによって,再使用することができる。 

5.5.4 

吸光度の測定 5.5.3c)で得た溶液の一部を原子吸光分析装置のアセチレン・空気フレーム中へ噴霧

し,5.3.3で選定した分析線の波長における各定量元素の吸光度を測定する(7)。 

なお,クロムの吸光度測定では,アセチレン・一酸化二窒素フレームを用いる(8)。 

注(7) ランプ電流値,分光器のスリット幅,ガスの圧力と流量,バーナーと光束の位置,増幅部,記

録部などの測定条件は,装置によって異なるので5.7に示す濃度範囲が測定できるようにあらか

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

じめ最適条件を求めておく。 

(8) 陰イオン交換分離でタンタルの漏えい量が0.2mg以下であることを確認してあれば,アセチレ

ン・空気フレームを用いることができる。 

5.6 

空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。 

5.7 

検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。 

a) 定量元素ごとに数個の50mlの全量フラスコに,硫酸 (1+1) 1.0mlを取り,各定量元素の標準溶液[5.2

のg)〜k)]をそれぞれ表3に従って正確に加え(9),水で標線まで薄める。 

b) これらの溶液の一部を原子吸光分析装置のアセチレンフレーム中に噴霧し,5.3.3で選定した分析線の

波長における各定量元素の吸光度を,試料溶液及び空試験溶液と並行して測定し,得た各定量元素の

吸光度と検量線用溶液中の量との関係線を作成し,検量線とする。 

注(9) 複数の定量元素の標準溶液を混合して検量線用元素複合溶液を調製してもよい。ただし,検量

線用元素複合溶液は,各定量元素の吸光度に対して他の共存元素の影響がないことを確認した

うえで用いなければならない。 

表3 検量線用溶液の定量成分添加量 

分析成分 標準溶液 

の 

適用箇条 

検量線用溶液1 

検量線用溶液2 

検量線用溶液3 

検量線用溶液4 

標準溶液
添加量 

ml 

定量成分
添加量 

μg 

標準溶液
添加量 

ml 

定量成分
添加量 

μg 

標準溶液
添加量 

ml 

定量成分
添加量 

μg 

標準溶液
添加量 

ml 

定量成分
添加量 

μg 

クロム 

5.2g) 

0.50 

50 

1.00 

100 

2.00 

200 

銅 

5.2h) 

0.50 

50 

1.00 

100 

2.00 

200 

鉄 

5.2i) 

0.50 

50 

1.00 

100 

2.00 

200 

マンガン 

5.2j) 

0.50 

50 

1.00 

100 

2.00 

200 

ニッケル 

5.2k) 

0.50 

50 

1.00 

100 

2.00 

200 

5.8 

計算 5.5.4及び5.6で得た吸光度と,5.7で作成した検量線とから,各定量元素量を求め,試料中の

定量元素含有率を次の式によって算出する。 

100

2

1

×

=

m

A

A

E

ここに, 

E: 定量元素の含有率 [% (m/m)]  

A1: 試料溶液中の定量元素検出量 (g)  

A2: 空試験液中の定量元素検出量 (g)  

m: 試料はかり取り量 (g)  

H 1683 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

JIS H 1683 タンタル−原子吸光分析方法原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

水 池   敦 

東京理科大学 

(委員) 

塚 本   修 

通商産業省基礎産業局 

橋 本   進 

財団法人日本規格協会 

小 林   剛 

科学技術庁金属材料技術研究所 

稲 本   勇 

株式会社日鐵テクノリサーチ 

前 田 繁 則 

株式会社トクヤマ 

渡 辺 勝 明 

住友金属鉱山株式会社 

高 橋 真 人 

東芝セラミックス株式会社 

豊 田 宜 俊 

社団法人新金属協会(平成12年7月31日まで) 

島 田 和 明 

社団法人新金属協会(平成12年8月1日から) 

水 口 紀 元 

昭和キャボットスーパーメタル株式会社 

磯 田 伸 二 

真空冶金株式会社 

井 出 光 良 

三井金属鉱業株式会社 

河 本 光 喜 

株式会社オハラ 

山 内 良 夫 

株式会社高純度物質研究所 

西   武 志 

松下電子部品株式会社 

(事務局) 

今 井 康 弘 

社団法人新金属協会