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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H1664-1988 

ジルコニウム及びジルコニウム 

合金中の水素定量方法 

Methods for Determination of Hydrogen in Zirconium 

and Zirconium Alloys 

1. 適用範囲 この規格は,ジルコニウム及びジルコニウム合金中の水素定量方法について規定する。 

備考 この規格の中で{ }を付けて示してある単位は,国際単位系 (SI) によるものであって参考

として併記したものである。 

なお,この規格の中で従来単位と,その後に{ }を付けてSIによる単位が示してある部分

は,昭和66年1月1日以降,附属書に規定する単位に切り換える。 

引用規格: 

JIS H 1650 ジルコニウム及びジルコニウム合金の分析方法通則 

JIS Z 2614 金属材料の水素定量方法通則 

2. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1650(ジルコニウム及びジルコニウム合金の分析方

法通則)及びJIS Z 2614(金属材料の水素定量方法通則)による。 

3. 定量方法の区分 水素の定量方法は,次のいずれかによる。 

(1) 真空加熱−定容測圧法 この方法は,水素含有率0.000 1wt%以上0.005wt%未満の試料に適用する。 

(2) 不活性ガス融解−ガスクロマトグラフ法 この方法は,水素含有率0.000 1wt%以上0.005wt%未満の試

料に適用する。 

4. 試料の調製 試料の調製は,次のいずれかによる。 

(1) やすり研磨 やすり研磨は,JIS Z 2614の4.5.1(1)による。 

(2) 化学研磨 硝酸 (1+1) 100mlとふっ化水素酸5mlの混合溶液に浸した後,超音波洗浄器を用いて,水,

エタノール及びアセトンで1分間ずつ順次洗浄し,送風して乾燥する。 

5. 試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.3gとする。 

6. 真空加熱−定容測圧法 

6.1 

要旨 真空中で,試料を電気抵抗加熱炉によって加熱して水素を他のガスと共に抽出し,一定体積

中に捕集してその圧力を測定する。この捕集ガス中の水素を,加熱した酸化銅(II)で酸化して水とし,それ

を五酸化二りんに吸収させた後,圧力を測定する。 

H1664-1988  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.2 

材料及び試薬 材料及び試薬は,JIS Z 2614の3.2.2(1)による。 

6.3 

装置 装置は,JIS Z 2614の3.2.2(2)のガス抽出部(1)(2)とJIS Z 2614の3.3.1(2)のガス分析部とを接続

して用いる。 

注(1) 加熱装置には,管状電気抵抗加熱炉を用い,高周波誘導加熱方式は用いない。 

(2) 抽出炉には,内径25〜40mm,長さ300〜400mmの透明石英管の一端を封じ,他端を水冷式ガ

ラスキャップとすり合わせた炉管を用いる。炉管には,炉管をガス抽出ポンプに接続するため

の側管と,試料充てん用側管とを付ける。抽出炉の例を付図1に示す。 

6.4 

操作 

6.4.1 

準備操作 準備操作は,次の手順によって行う。 

(1) 炉管と水冷式ガラスキャップとを真空用グリースを用いて接続し,炉管を管状電気抵抗加熱炉の加熱

部に挿入し,炉管の底部が加熱部の中央に位置するように加熱炉を固定する。 

(2) JIS Z 2614の5.1.3(1)(b)〜5.1.3(2)(d)の手順(3)に従って操作する。 

注(3) JIS Z 2614の5.1.3(2)(c)〜(d)の操作においては,高周波誘導発振装置及び送風機を作動させて,

黒鉛るつぼを脱ガス温度に加熱して数時間脱ガスした後,ガス抽出温度に下げているが,その

代わりに管状電気抵抗加熱炉に通電して炉管をガス抽出温度1 100〜1 150℃に加熱する。 

6.4.2 

定量操作 定量操作は,JIS Z 2614の5.1.4(2)による。ただし,JIS Z 2614の5.1.4(2)(a-1)の操作に

おいては,黒鉛るつぼをガス抽出温度に加熱しているが,その代わりに炉管をガス抽出温度に保持する。

ガス抽出温度は1 100〜1 150℃,ガス捕集時間は15分間とする。 

6.5 

空試験 試料を用いないで,6.4.2の定量操作を行う。 

6.6 

計算 計算は,JIS Z 2614の5.1.4(3)による。ただし,JIS Z 2614の5.1.4(4)によって換算係数を算出

しておく。 

7. 不活性ガス融解−ガスクロマトグラフ法 

7.1 

要旨 不活性ガス気流中で,黒鉛るつぼを用いて,試料をすずと共にインパルス方式によって加熱

融解し,水素を他のガスと共に抽出する。抽出したガスをそのまま分離カラムに通すか,抽出したガス中

の水素を酸化して水に変換した後,分離カラムに通して水素又は水を他のガスと分離し,これを熱伝導度

検出器に導き,水素又は水による熱伝導度の変化を測定する。 

7.2 

材料及び試薬 材料及び試薬は,次による。 

(1) すず(粒状又は円盤状) 

(2) アルゴン又はヘリウム(4) 99.99vol%以上のもの。 

(3) 水素 99.99vo1%以上のもの。 

(4) 黒鉛るつぼ インパルス炉に適合するもの。その例を付図2に示す。 

注(4) 抽出した水素をそのまま測定する場合にはアルゴンを,水に変換後測定する場合にはヘリウム

を用いる。 

7.3 

装置 装置は,不活性ガス清浄部,ガス抽出部,ガス分離部,ガス測定部,検量用水素清浄部,ガ

ス検量部などで構成する(付図3及び付図4)(5)。 

注(5) 装置の構成,構造及び使用条件は,使用する装置によって異なる。 

(1) 不活性ガス清浄部 不活性ガス清浄部は,酸化管,二酸化炭素吸収管,脱水管,電気抵抗加熱炉など

で構成する。 

(a) 酸化管 ステンレス鋼管に酸化銅(II)(粒状)を詰めたもの。電気抵抗加熱炉で加熱して使用する。 

H1664-1988  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(b) 二酸化炭素吸収管 ガラス管にソーダ石灰,ソーダ石綿又は水酸化ナトリウムを詰めたもの。 

(c) 脱水管 ガラス管に過塩素酸マグネシウム又は五酸化二りんを詰めたもの。 

(2) ガス抽出部 ガス抽出部は,試料投入器,インパルス炉などで構成する。 

(a) 試料投入器 不活性ガス雰囲気中で試料をインパルス炉に投入できるもの。 

(b) インパルス炉 銅製の固定された上部水冷電極,上下に移動ができる下部水冷電極などで構成し,

両電極の間に挟んだ黒鉛るつぼ[7.2(4)]を通電によって数秒間で1 700〜2 500℃に昇温できるもの。 

(3) ガス分離部 ガス分離部は,抽出した水素をそのまま測定する場合と,水に変換後測定する場合とで

構成が異なる。 

(3.1) 水素のまま測定する場合 ガス分離部は,収じん管,酸化管,二酸化炭素吸収管,脱水管,分離カ

ラムなどで構成する(付図3)。 

(a) 収じん管 ガラス管にガラスウールを詰めたもの。 

(b) 酸化管 ガラス管にシュッツェ試薬(主成分は,五酸化二よう素)を詰めたもの。 

(c) 二酸化炭素吸収管 7.3(1)(b)による。 

(d) 脱水管 7.3(1)(c)による。 

(e) 分離カラム ステンレス鋼管又は四ふっ化エチレン樹脂管に,合成ゼオライト又はシリカゲルを詰

めたもの。 

(3.2) 水に変換後測定する場合 ガス分離部は,収じん管,酸化管,分離カラムなどで構成する(付図4)。 

(a) 収じん管 7.3(3)(3.1)(a)による。 

(b) 酸化管 7.3(1)(a)による。 

(c) 分離カラム ステンレス鋼管又は四ふっ化エチレン樹脂管に,ポーラスポリマー系の充てん剤を詰

めたもの。 

(4) ガス測定部 ガス測定部は,熱伝導度検出器,指示計などで構成する。 

(a) 熱伝導度検出器 特性のそろったサーミスタを挿入した対照セル,試料セルなどで構成する。 

(b) 指示計 熱伝導度検出器で検出された水素又は水に基づく電気信号を読み取ることのできるもの。 

(5) 検量用水素清浄部 検量用水素清浄部は,二酸化炭素吸収管,脱水管などで構成する。 

(a) 二酸化炭素吸収管 7.3(1)(b)による。 

(b) 脱水管 7.3(1)(c)による。 

(6) ガス検量部 ガス検量部は,ガス検量管,その他で構成する(5)。 

ガス検量管 体積既知のステンレス鋼管。 

7.4 

操作(6) 

7.4.1 

準備操作 準備操作は,次の手順によって行う。 

(1) 装置に冷却水及びアルゴン又はヘリウム[7.2(2)]を供給した後,電源を入れる。装置各部を所定の条件

に設定し,装置の各部を安定させる。 

(2) 新しい黒鉛るつぼ[7.2(4)]を所定の位置に設置し,インパルス炉に通電して黒鉛るつぼを脱ガス温度に

加熱する(7)。 

(3) (2)の黒鉛るつぼをガス抽出温度に加熱し(8),指示計の値を読み取る。安定した指示計の値が得られる

までこの操作を繰り返す(9)。 

注(6) 操作の細かい手順は,使用する装置によって異なるので,その装置の指定する手順に従う。 

(7) 黒鉛るつぼ温度のパラメータとして,黒鉛るつぼに流れる電流値を読み,ガス抽出の電流値よ

り高いことを確認する。 

H1664-1988  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(8) あらかじめ水素含有率既知のジルコニウム又はジルコニウム合金試料を用いて,最適なガス抽

出の電流値を求めておく。 

(9) 7.4.1(2)で脱ガスした黒鉛るつぼを繰り返し用いる。 

7.4.2 

定量操作 定量操作は,準備操作,空試験及び検量線の作成に引き続き,次の手順によって行う。 

(1) 試料をはかり取り,試料投入器に入れる。 

(2) 新しい黒鉛るつぼ[7.2(4)]にすず(10)を入れて所定の位置に設置する。インパルス炉に通電して黒鉛るつ

ぼを脱ガス温度に加熱し(7),黒鉛るつぼ及びすずの脱ガスを行う。 

(3) 試料を黒鉛るつぼに投入し,インパルス炉に通電して黒鉛るつぼをガス抽出温度に加熱し(8),指示計

の値を読み取る。 

注(10) すずの添加量は,使用する装置によって異なるので,あらかじめ水素含有率既知のジルコニウ

ム又はジルコニウム合金試料を用いて,その装置に適した量を求めておく。 

7.5 

空試験 空試験は,準備操作に引き続き次の手順(6)によって行う。 

(1) 新しい黒鉛るつぼ[7.2(4)]に7.4.2(2)で用いるすずと同量のすずを入れて所定の位置に設置する。

7.4.2(2)と同じ条件でインパルス炉に通電して黒鉛るつぼを脱ガス温度に加熱し,黒鉛るつぼ及びすず

の脱ガスを行う。 

(2) 7.4.2(3)と同じ条件でインパルス炉に通電して黒鉛るつぼをガス抽出温度に加熱し,指示計の値を読み

取る。 

(3) (1)及び(2)の操作を数回繰り返し,読み取った値の平均値を求める。 

7.6 

検量線の作成 検量線の作成は,準備操作及び空試験に引き続き次の手順(6)によって行う。 

(1) 新しい黒鉛るつぼ[7.2(4)]を所定の位置に設置する。7.4.2(2)と同じ条件でインパルス炉に通電して黒鉛

るつぼを脱ガス温度に加熱する。 

(2) ガス検量部を使用して,一定体積の水素[7.2(3)]を供給し,指示計の値を読み取る。 

(3) 大気圧及び供給した水素の温度を測定する。 

(4) (2)の操作を数回繰り返し,読み取った値の平均値を求める。 

(5) (2)で供給した水素の体積から換算した水素の質量(11)に対して(4)の平均値をプロットする。プロット

した点と原点とを結ぶ直線を作成し,検量線とする。 

注(11) 水素の体積から水素の質量への換算は,次の式による(昭和65年12月31日まで適用)。 

)

273

(

10

236

.6

016

.2

(g)

4

t

V

P

+

×

×

×

×

=

水素の質量

ここに, P: (3)で測定した大気圧 (mmHg) {kPa}  
 

V: ガス検量管の体積 (ml)  

t: (3)で測定した水素の温度 (℃)  

ただし,国際単位系 (SI) による場合には,6.236×104の部分は8.314×103とする。 

7.7 

計算 7.4.2(3)で読み取った値及び7.5(3)で得た平均値と7.6で作成した検量線とから水素の質量を求

め,試料中の水素含有率を次の式によって算出する。 

100

)

(

wt%

2

1

×

=

m

A

A

水素含有率

ここに, A1: 7.4.2(3)で読み取った値から求めた水素の質量 (g)  
 

A2: 7.5(3)の平均値から求めた水素の質量 (g)  

m: 試料はかり取り量 (g)  

background image

H1664-1988  

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付図1 抽出炉の例 

付図2 黒鉛るつぼの例 

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H1664-1988  

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付図3 不活性ガス融解−ガスクロマトグラフ法によって水素のまま測定する装置の概略 

付図4 不活性ガス融解−ガスクロマトグラフ法によって水素を水に変換後測定する装置の概略 

H1664-1988  

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附属書 

規格本体の7.6の注(11)に規定の従来単位による水素の質量への換算式は,昭和66年1月1日以降は,

ここに記載するSI単位による換算式を適用するものとする。 

注(11) 水素の体積から水素の質量への換算は,次の式による(昭和66年1月1日から適用)。 

)

273

(

10

8.314

016

.2

(g)

3

t

V

P

+

×

×

×

×

=

水素の質量

ここに, P: (3)で測定した大気圧 (kPa)  
 

V: ガス検量管の体積 (ml)  

t: (3)で測定した水素の温度 (℃)  

H1664-1988  

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ジルコニウム及びジルコニウム合金中の水素定量方法改正 

JIS原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

多 田 格 三 

日本原子力研究所 

橋 谷   博 

島根大学 

吉 森 孝 良 

東京理科大学 

名 井   肇 

通商産業省基礎産業局 

安 部   恵 

工業技術院標準部 

大河内 春 乃 

科学技術庁金属材料技術研究所 

澤 口 健 治 

社団法人新金属協会 

谷 口 政 行 

株式会社神戸製鋼所 

中 村   靖 

日本鉱業株式会社 

仲 山   剛 

住友金属工業株式会社 

野 村 紘 一 

三菱金属株式会社 

秋 山 孝 夫 

動力炉・核燃料開発事業団 

岡 下   弘 

日本原子力研究所 

小 川 欣 也 

日本ニュクリア・フュエル株式会社 

束 原   巌 

古河電気工業株式会社 

(事務局) 

今 井 康 弘 

社団法人新金属協会