日本工業規格 JIS
H
1552
-1976
りん銅地金分析方法
Methods of Chemical Analysis for Phosphor Copper Ingots
1.
総則
1.1
適用範囲 この規格は,JIS H 2501(りん銅地金)に規定された化学成分(銅,りん,鉄,鉛,すず)
の分析方法について規定する。
引用規格:
JIS H 1012
銅製品及び銅合金分析方法の通則
JIS H 2501
りん銅地金
1.2
りん銅地金分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1012(銅製品及び銅合金分析方法の通則)による。
1.3
分析試料の採り方
1.3.1
分析試験に必要な試料を採取する場合の鋳塊の採取方法は,当事者間の協定による。
1.3.2
1.3.1
によって抜き取った鋳塊の表面の付着物を適当な方法により完全に除去した後,化学分析試
験に供する。
1.3.3
1.3.2
によって得た試料は,鉄乳ばち又は適当な器具を用いて手早く径 0.5〜3.0mm 程度の大きさに
破砕し,強力な磁石を用いて鉄粉などを注意深く除き,デシケーター中に保存した後はかり取る。
2.
銅定量方法
2.1
要旨 試料を硝酸に溶解した後加熱蒸発してシラップ状とし,温水と少量の硝酸とを加えて可溶性
塩を溶解する。これに硫酸を加えて電解する(電解残液は,りん又は鉄の定量に用いることができる)
。
2.2
操作 試料 1g を電解用ビーカー(付図 1 参照)にはかり取り,時計ざらで覆い,硝酸 (1+1) 15ml
を加えて加熱溶解する。時計ざらの下面及びビーカーの内壁を洗った後,
更に加熱してシラップ状とする。
これに硝酸 (1+1) 3ml と温水 50ml を加えて加熱し,可溶性塩を溶解する(
1
)
。溶液に硫酸 (1+1) 10ml を加
え,水で約 150ml とした後,円筒状白金陰極(
付図 2 参照)らせん状白金陽極(付図 3 参照)を用い,2
個の半円形時計ざら(
付図 4 参照)で覆い,室温で 0.3〜0.5A の電流を通じて 1 夜間電解する。電解が終
われば,洗びんで時計ざらの下面,ビーカーの内壁及び電極の柄の液面に露出した部分を水洗し,その洗
浄水によって電解液面を約 5mm 上昇させて,
更に約 30 分間電解を続け,
新しく液中になった陰極の柄に,
もはや銅が析出しなくなれば,電流を通じたまま両極を水洗しながら引き上げる(電解残液は,りん又は
鉄の定量に用いることができる)
。
始めは水で,次にアルコールで洗った後,約 80℃で速やかに乾燥し,デシケーター中で約 30 分間冷却
後はかり,その増量から銅含有率を次の式によって算出する。
100
(g)
(g)
(%)
×
=
試料
折出銅量
銅
注(
1
)
もし沈殿があるときは,温所に1〜2時間静置後直ちに少量のろ紙パルプを入れた細密なろ紙を
2
H 1552-1976
用いてこし分け,温硝酸 (2+100) を用いて洗浄する。
3.
りん定量方法 りんの定量方法は,重量法又は滴定法のいずれかの方法による。
3.1
重量法
3.1.1
要旨 試料を硝酸に溶解し,過塩素酸でりんを酸化した後アンモニア水で中和後硝酸性とし,硝酸
アンモニウム及びモリブデン酸アンモニウムを加えてりんを沈殿させる。これをアンモニア水に溶解した
後,マグネシア合剤で沈殿を生成させる。沈殿をこし分け,強熱後ピロリン酸マグネシウムとしてはかる。
3.1.2
操作 試料 1g をビーカー (300ml) にはかり取り,硝酸 (1+1) 20ml を加えて静かに加熱して溶解
させる。次に過塩素酸 20ml を加えて加熱蒸発し,白煙の発生後約 5 分間加熱を続ける。冷却後温水 100ml
を加え,溶液を 250ml のメスフラスコに移し,冷却後水で標線まで薄める。
この溶液 25ml をビーカー (500ml) に分取し,アンモニア水を用いて中和後硝酸 (1+1) を用いて酸性と
し,更に 10m1 を過剰に加える。硝酸アンモニウム 10g を加え,約 60℃に保ち,あらかじめ約 60℃に加温
したモリブデン酸アンモニウム溶液(
2
)
100ml
を加え,5 分間十分にかき混ぜた後約 50℃に保温し,約 2 時
間静置して沈殿を沈降させる。
沈殿は少量のろ紙パルプを入れた細密なろ紙を用いてろ過し,銅イオンのなくなるまで硝酸 (1+100)
で,次に硝酸 (1+500) で数回洗浄した後アンモニア水 (1+1) 20ml に溶解し,ろ紙はアンモニア水 (1+
20)
で数回洗浄する。
溶液を塩酸で弱酸性とし,液量を 60ml 以下に保ちマグネシア合剤(
3
)
20ml
を加え,水中で冷却しながら
アンモニア水を加えてアルカリ性とし,5 分間以上激しくかき混ぜて沈殿を生成させ,最後にアンモニア
水 10ml を加えて良くかき混ぜ,約 2 時間後細密なろ紙を用いてこし分ける。
沈殿をアンモニア水 (1+20) で塩素イオンのなくなるまで洗浄し,ろ紙と共に磁器るつぼに移し入れ,
乾燥後低温で灰化し,最後に 1050〜1100℃で強熱して恒量とし,デシケーター中で放冷後ピロリン酸マグ
ネシウムとしてはかり,りんの含有率を次の式によって算出する。
100
10
1
(g)
2787
.
0
)
g
(
(%)
2
2
2
×
×
×
=
試料
りん
O
P
Mg
注(
2
)
モリブデン酸アンモニウム溶液は,モリ,ブデン酸アンモニウム40g を水300ml とアンモニア水
80ml
とを用いて溶解し,冷却した後少量ずつこれを硝酸 (1+1) 600ml 中にかき混ぜながら加え
る。この溶液は,使用の都度,こし分けて用いる。
(
3
)
マグネシア合剤は塩化マグネシウム 50g と塩化アンモニウム 100g を水 800ml に溶解し,フェノ
ールフタレイン溶液を指示薬としてアンモニア水を加えてアルカリ性とし,2 昼夜放置する。
沈殿が生じたときはこし分け,塩酸で微酸性とし水で 1
l
とする。この溶液は
P
−ニトロフェノ
ールを指示薬とし,アンモニア水と塩酸を用いて pH5〜6 に調整して保存する。
3.2
滴定法
3.2.1
要旨
試料を硝酸と塩酸に溶解し,加熱してりんを酸化した後溶液の適当量を分取する。
酒石酸と塩化アンモニウムを加えた後アンモニア性とし,マグネシア合剤を加え沈殿を生成させてこし
分ける。沈殿は熱塩酸に溶解後 EDTA 標準溶液の過剰を加え,シアン化カリウム溶液を加えた後アンモニ
ア性とし,塩化マグネシウム標準溶液を用いて滴定する(
2.
銅定量方法
の電解残液を用いることができる)
。
3
H 1552-1976
3.2.2
操作
試料 1g をビーカー (200ml) にはかり取り,硝酸 (1+1) 20ml と塩酸 (1+1) 10ml とを加え
て時計ざらで覆い,静かに加熱して溶解し,引き続き約 5 分間加熱してりんを完全に酸化する
(
4
)
。常温に
冷却後 250ml のメスフラスコに移し入れ,水で標線まで薄めて良く振り混ぜた後,その 50ml
(
5
)
をビーカー
(300ml)
に分取する
(
6
)
。水約 50ml を加えて薄め,酒石酸溶液 (20w/v%) 20ml と塩化アンモニウム溶液
(20w/v%) 20ml
とを加え,アンモニア水を用いて,生成する水酸化銅の沈殿が完全に消失するまで加えて
アルカリ性とし,更にその過剰 20ml を加える。次にマグネシア合剤
(
3
)
20ml
を加えて約 5 分間激しくかき
混ぜて沈殿を生成させ,約 2 時間静置して沈殿を熟成させる。沈殿は細密なろ紙を用いてこし分け,塩化
アンモニウム洗液
(
7
)
で十分に洗浄する。沈殿は元のビーカーに熱塩酸 (1+3) 15ml を用いて溶解し,ろ紙
は水で十分に洗浄する。次に EDTA 標準溶液
(
8
)
の過剰量
(
9
)
を正しく加えた後約 80ml に薄め,シアン化カ
リウム溶液 (20w/v%) 5ml
(
10
)
を加え,次にアンモニア水
(
11
)
を用いて pH9.5〜10.0 に調節する。EBT 指示薬
(
12
)
0.3ml
を加え,塩化マグネシウム標準溶液
(
13
)
を用いて滴定し
(
14
)
,赤紫色になったときを終点とし,りん
の含有率を次の式によって算出する。
100
5
1
(g)
001548
.
0
(ml)
(ml)
EDTA
(%)
×
×
×
þ
ý
ü
î
í
ì
−
þ
ý
ü
î
í
ì
=
試 料
準溶液使用量
塩化マグネシウム標
使用量
標準溶液
りん
注(
4
)
試料の溶解及び酸化方法は,
3.1.2
重量法の操作によることができる。
(
5
)
りん含有量が 10〜50mg になるように分取する。
(
6
)
2.2
銅定量方法の電解残液を用いることができる。電解残液に過酸化水素水 (30%) 5ml 又は飽和
臭素水 10ml を加えてりんを酸化し,加熱煮沸して過剰の酸化剤を分解した後,溶液の一部を分
取する。
(
7
)
塩化アンモニウム洗液は,アンモニア水(1+20)1
l
に塩化アンモニウム溶液 (20%) 10ml を加え
る。
(
8
)
EDTA
標準溶液 (0.05M) は,エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(特級)18.613g をはかり
取り,水に溶解して正しく 1
l
とし,ポリエチレンビンに保存する。この溶液は,塩化マグネシ
ウム標準溶液(
注(
13
)
参照)を用い標定して使用する。EDTA 標準溶液は,0.02M 溶液を用いる
ことができる。
(
9
)
りん予想含有量に応じて,次のように加える。
りん予想含有量 (mg)
0.05M EDTA
標準溶液使用量 (ml)
10 10
20 20
30 30
40 40
(
10
)
前記
注(
6
)
の電解残液を用いるときは,シアン化カリウム溶液を加えなくてもよい。
(
11
)
このときのアンモニア水は,通常 20ml を要する。
(
12
)
EBT
指示薬は,エリオクロムブラック T(特級)0.5g をメチルアルコール 100ml に溶解し,塩
酸ヒドロキシルアミン 4g を加える。
(
13
)
塩化マグネシウム標準溶液 (0.05M) の調製
マグネシウム(99.9%以上)1.2160g をはかり取り,
塩酸 (1+1) 30ml に溶解し,加熱蒸発してシラップ状とし,放冷後温水を加えて加熱溶解し,
冷却後水を加えて正しく 1
l
とする。
この溶液 1ml は 1.216mg のマグネシウムを含有し,
1.5488mg
のりんに相当する。EDTA 標準溶液 (0.02M) を使用する場合は 0.02M 溶液を用いる。
4
H 1552-1976
(
14
)
このときの液温は,約 30℃とする。
4.
鉄定量方法
4.1
要旨
試料を硝酸と硫酸に溶解した後電解を行い,銅を除去する(
2.
銅定量方法
の電解残液を用いる
こともできる)
。
電解残液は加熱蒸発して硫酸の白煙を発生させ,放冷後水を加えて塩類を溶解し,塩酸ヒドロキシルア
ミンと酢酸ナトリウムを加えて鉄を還元する。アンモニア水を用いて溶液の pH を調節後,
o
−フェナント
ロリンを加えて呈色させ,吸光度を測定する。
4.2
操作
試料 1g をビーカー (300ml) にはかり取り,硝酸 (1+1) 10ml と硫酸 (1+1) 10ml とを加えて
静かに加熱溶解させる。
試料が全く溶解した後ビーカーの内壁などを洗い,加熱して酸化窒素を追い出し,冷却後水で約 150ml
に薄め,常法により電解を行い銅を除去する。電解残液は加熱蒸発して硫酸の白煙を発生させ,放冷後水
約 50ml を加え,加温して可溶性塩を溶解し
(
15
)
,塩酸ヒドロキシルアミン溶液 (10w/v%) 5ml と酢酸ナトリ
ウム溶液 (50w/v%) 10ml とを加えて良く振り混ぜた後,アンモニア水 (1+1) を用いて pH を約 3.5 に調節
し,100ml のメスフラスコに移し入れる。次に
o
−フェナントロリン溶液 (0.2%) 5ml を加え,水を用いて
標線まで薄めて良く振り混ぜた後,室温で約 30 分間放置後溶液の一部を光度計の吸収セルに取り,波長
510nm
附近の吸光度を測定し,あらかじめ作成してある検量線
(
16
)
により,その吸光度に相当する鉄量を求
め試料中の鉄含有率を算出する。
注(
15
)
鉄の含有量が0.6mg を超えるときは,0.6mg 以下となるように溶液を分取する。
(
16
)
検量線の作成
硫酸 (1+1) 10ml とりん酸 (1+2) 1ml をそれぞれ数個のビーカーに取り,標準
鉄溶液の各種液量を正しく加えた後硫酸の白煙を発生させ,以下,本文の操作に準じて塩酸ヒ
ドロキシルアミンなどを加えて呈色させ,その吸光度を測定し,鉄量と吸光度との関係線を作
成し,これを検量線とする。
標準鉄溶液の調製
電解鉄 0.1g を硝酸 (1+3) 10ml に加熱して溶解し,酸化窒素を追い出し
た後,水を用いて正しく 1000ml とする。この溶液 1ml は,鉄 0.1mg を含有する。
5.
鉛定量方法
5.1
要旨
試料を硝酸に溶解し,くえん酸アンモニウムを加え,アンモニア水とシアン化カリウムを用
いて銅をシアン錯塩とし,
亜硫酸ナトリウムを加えた後,
ジチゾン−ベンゼン溶液を加えて鉛を抽出する。
抽出液はシアン化カリウム洗浄液を用いて洗浄後,吸光度を測定する。
5.2
操作
試料 1g をビーカー (300ml) にはかり取り時計ざらで覆い,硝酸 (1+1) 15ml を加え,静かに
加熱して完全に溶解した後,100ml のメスフラスコに移し入れ,水を用いて標線まで薄める。溶液の一定
量
(
17
)
をビーカー (200ml) に分取し,これにくえん酸アンモニウム溶液 (25w/v%)
(
18
)
2ml
を加え,次にアン
モニア水 (1+1) を銅アンミン錯塩が完成するまで加え,更にシアン化カリウム溶液 (20w/v%)
(
19
)
を加え
て銅をシアン錯塩とし,その過剰 5ml を加える。これに亜硫酸ナトリウム溶液 (25%) 20ml を加えたのち
(
20
)
,
分液漏斗(約 150ml)に移し入れ,ジチゾン−ベンゼン溶液
(
21
)
20ml
を加え,約 1 分間激しく振り混ぜて鉛
を抽出し,しばらく静置後水溶液層を分離し,ベンゼン層にシアン化カリウム洗浄液
(
22
)
20ml
を加え,約
30
秒間振り混ぜる。しばらく静置後再たび水溶液層を分離する。ベンゼン層の一部を光度計の吸収セルに
取り,波長 520nm 附近の吸光度を測定し,あらかじめ作成してある検量線
(
23
)
により,その吸光度に相当
する鉛量を求め,試料中の鉛含有率を算出する。
5
H 1552-1976
注(
17
)
鉛量が40
µ
g
以内となるように分取する。
(
18
)
くえん酸アンモニウム溶液は,ジチゾンで鉛を抽出除去したものを用いる。
(
19
)
陽イオン交換樹脂又はジチゾンで精製を行ったものを用いる。
(
20
)
このとき溶液の pH は,9〜10 となっている。
(
21
)
ジチゾン−ベンゼン溶液は,ジチゾン(特級)30mg をベンゼン 100ml に溶解し,アンモニア水
(1
+100) 及び塩酸 (1+10) とで抽出洗浄を繰り返して精製した後,ベンゼンを加えて 500ml と
する。
(
22
)
シアン化カリウム(特級)0.5g を水 100ml に溶解する。
(
23
)
検量線の作成
鉛地金 1 種 0.1g を硝酸 (1+4) 10〜15ml に溶解し,冷却後水を加えて,正しく
1000ml
とし,その 25ml を 500ml のメスフラスコに正しく分取し,水で標線まで薄める(この
溶液 1ml は,
鉛 5
µ
g
を含有する)
。
この溶液の各種液量をそれぞれ数個のビーカーに正しく取り,
本文操作に準じて呈色させてその吸光度を測定し,鉛量と吸光度との関係線を作り,これを検
量線とする。
6.
すず定量方法
6.1
要旨
試料を硝酸に溶解し,硝酸マンガンと過マンガン酸カリウムとを加えて加熱煮沸し,すずを
共沈させた後こし分ける。沈殿は温塩酸と過酸化水素水を用いて溶解し,酸濃度を調節した後,ゼラチン
及びヘマティン(ヘマトキシリンを酸化したもの)を加えて呈色させ,吸光度を測定する。
6.2
操作
試料 1g をビーカー (300ml) にはかり取り,硝酸 (1+1) 10ml を加えて静かに加熱溶解し,酸
化窒素を除去した後水で約 200ml に薄める
(
24
)
。これを静かに加熱煮沸しながら,硝酸マンガン溶液 (5%)
5ml
と過マンガン酸カリウム溶液 (1%) 5ml とを加えて数分間煮沸を続け,沈殿を熟成させる約 30 分間静
置後こし分け,温水で数回洗浄する。
沈殿は少量の温水を用いて,できるだけ元のビーカーに移し入れ,ろ紙に付着した沈殿は,温塩酸(1+
3)20ml
と少量の過酸化水素水 (3%) とを用いて,元のビーカーに溶かし入れ,温塩酸 (1+3) で洗浄する。
ビーカー内の沈殿を溶解後
(
25
)(
26
)
静かに加熱して 5〜10ml に濃縮した後冷却し,水で約 20ml に薄める。
次に水酸化ナトリウム溶液 (10%) を滴下してマンガンの沈殿を生成させた後,
過酸化水素水 (3%) 数滴
と塩酸 (1+9) を少量ずつ加えて透明溶液とし
(
27
)
,更にその過剰 5ml
(
28
)
を正しく加える。
この溶液を 100ml のメスフラスコに移し入れ,ゼラチン溶液 (0.25%) 5ml 及びヘマティン溶液
(
29
)
30ml
を加え,水で標線まで薄めて良く振り混ぜ,水浴上で約 30℃
(
30
)
に約 30 分間保持して呈色させる。
常温に冷却後溶液の一部を光度計の吸収セルに取り,波長 570nm 附近の吸光度を測定し,あらかじめ作
成してある検量線
(
31
)
により,その吸光度に相当するすず量を求め,試料中のすず含有率を算出する。
注(
24
)
このときの遊離硝酸の濃度は,溶液100ml 中に1〜2ml とする。
(
25
)
このときりんが 0.2mg 以上残留しているおそれがあるときは,溶液を硝酸酸性とした後過マン
ガン酸カリウム溶液を加えて共沈操作を繰り返す。
(
26
)
すずの予想含有量が多いときは,0.01〜0.20mg となるように溶液を分取する。
(
27
)
このときの溶液の pH は,2〜3 とする。
(
28
)
呈色時の溶液 100ml 中に,遊離塩酸として 0.5ml になるように加える。
(
29
)
ヘマティン溶液は,ヘマトキシリン 0.25g をエチルアルコール(95%以上)50ml に溶解し,250ml
のメスフラスコに移し入れ,水 150ml と過酸化水素水 (3%) 2ml を加えてしばらく良く振り混ぜ
た後,煮沸水中で約 15 分間加熱し,冷却後,水で標線まで薄める。
6
H 1552-1976
(
30
)
20
〜40℃で呈色させることができる。20℃では呈色に約 30 分を要する。
(
31
)
検量線の作成
標準すず溶液の各種液量(すずとして 0〜0.2mg)をとり,以下,本文に準じて
操作して呈色させ,それぞれの吸光度を測定し,すず量と吸光度との関係線を作成する。ただ
し,ヘマティン溶液を調製したときは,その都度検量線を作成する。
標準スズ溶液の調整
すず地金 1 種 0.5000g を塩酸 (1+1) 約 200ml に加熱溶解し,塩酸 (1
+1) を用いて正しく 500ml とし,原液とする。使用に当たっては,この溶液 20ml を正しく分
取し,塩酸 (1+1) 30ml を加えて正しく 1000ml とする。この溶液 1ml は,0.02mg のすずを含有
する。
参考
次に記載する方法は,参考として示したもので,規格の一部ではない。
りん銅地金中のすずの定量方法(吸光光度法)
1.
要旨
試料を硝酸に溶解し,硝酸マンガン及び過マンガン酸カリウムを加え,沈殿したすずをこし分
け,沈殿は塩酸及び過酸化水素水で溶解し,煮沸分解後一定量を分取し,アンモニア水で酸濃度を調節後,
ポリビニルアルコール溶液,くえん酸溶液,塩酸及びアスコルビン酸,フェニルフルオロン溶液などを加
えて呈色させ,吸光度を測定する。
2.
操作
試料
(
1
)
をビーカー (300ml) にはかり取り時計ざらで覆い,硝酸 (1+1) 約 10ml を徐々に加え,
反応が終われば加熱して完全に溶解させて酸化窒素を追い出し,時計ざらを水洗して取り除き,冷水で約
170ml
に薄める(このとき硝酸濃度 1〜2N に調節する。
)
。これに硝酸マンガン溶液 (5%) 5ml を加え,加
熱沸騰させながら過マンガン酸カリウム溶液 (1%) 5ml を少量ずつ添加し,すずを二酸化マンガンと共に
沈殿させ,5〜10 分間保温後こし分け,温水で十分に洗浄する。
沈殿は元のビーカーに移し入れ,塩酸 (1+1) 10ml と少量の過酸化水素水 (10%) で溶解し,加熱煮沸し
て過酸化水素を分解した後 50ml のメスフラスコに移し入れ,水で標線まで薄めた後,そのうち 10ml ずつ
2
個を分取する。
そのうち 1 個はフラスコ (200ml) に取り,水を加えて 80ml に薄め,混合指示薬
(
2
)
1
〜2 滴を加え,アン
モニア水 (1+8) で中和滴定し,滴定量
T
ml
を求める。
他の 1 個は 50ml のメスフラスコに取り,これにポリビニルアルコール溶液 (0.5%) 5ml,くえん酸溶液
(10%) 5ml
及び塩酸 (1N) 1.5ml と前記アンモニア水 (1+8)
T
ml
を加え,水を用いて 35ml とし,アスコル
ビン酸の極少量を加えた後,フェニルフルオロン溶液
(
3
)
10ml
を正確に加え,水を用いて標線まで薄め,約
40
分間放置して呈色させる。光度計を用いて波長 517nm 付近の吸光度を測定し,空試験値を差し引き,
あらかじめ作成してある検量線
(
4
)
を用いてすずの含有率を決定する。
注(
1
)
試料は,原則として次の
表
によりはかり取る。
すず含有率 %
試料はかり取り量 g
0.0001
〜0.005 5
0.005
〜0.01 2
0.01
〜0.04 0.5
0.04
〜0.10 0.2
0.10
〜0.25 0.1
(
2
)
混合指示薬は,0.1%メタニール黄水溶液と 0.1%プロムクレゾールグリーン (BCG) の 20%アル
コール溶液とを等量に混合したものを用いる。
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H 1552-1976
(
3
)
フェニルフルオロン溶液は,
フェニルフルオロン溶液 50mg を適量のアルコールと 6N 塩酸 20ml
に溶解した後,アルコールを用いて 500ml としたものを用いる。
(
4
)
検量線の作成
電気銅を取り,本文の操作に従って硝酸で分解し,硝酸マンガン溶液及び過マ
ンガン酸カリウム溶液を加え,共沈したすずをこし分け,塩酸と過酸化水素水で溶解し,煮沸
分解後 100ml のメスフラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。この溶液 20ml を 50ml のメス
フラスコ数個に正しく分取し,標準塩化すず溶液の各液量を取り,それぞれに加え,水で標準
まで薄める。
そのうち 10ml ずつ 2 個を分取し,以下本文の操作に従って呈色させてその吸光度を測定し,
空試験値を差し引いた後,すず量と吸光度との関係線を作成して検量線とする。
標準すず溶液は,金属すず (
JIS K 8580
) 0.500g
を塩酸 (1+1) の適量に加熱溶解し,塩酸 (1
+1) を用いて正しく 500ml とする。この溶液 10ml を 1000ml のメスフラスコに分取し,水で標
線まで薄める。この溶液 1ml は,すず 0.01mg を含有する。
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H 1552-1976
付図 1 電気用ビーカー
付図 2 円筒状白金陰極
付図 3 らせん状白金陽極
付図 4 半円形時計ざら