日本工業規格
JIS
H
1303
-1976
アルミニウム地金の発光分光
分析方法
Method for Emission Spectrochemical Analysis of Aluminium Ingot
1.
適用範囲 この規格は,JIS H 2102(アルミニウム地金),JIS H 2110(電気用アルミニウム地金)及
び JIS H 2111(精製アルミニウム地金)などに規定された化学成分(けい素,鉄,銅,チタン及びマンガ
ン)の写真測光法による発光分光分析方法について規定する。
引用規格:
JIS H 2102
アルミニウム地金
JIS H 2110
電気用アルミニウム地金
JIS H 2111
精製アルミニウム地金
JIS K 0050
化学分析通則
JIS Z 2612
金属材料の写真測光法による発光分光分析方法通則
JIS Z 8401
数値の丸め方
2.
一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050(化学分析通則)及び JIS Z 2612(金属材料の
写真測光法による発光分光分析方法通則)による。
3.
試料の採り方及び取り扱い方 試料は,この規格の 5.2.2 又は JIS Z 2612 によって調製されたものと
する。
4.
分析値の表し方 分析値は百分率で表し,次によって数値をまとめる。
(1)
不純物については JIS H 2102,JIS H 2110 及び JIS H 2111 に規定された次の位まで求め,JIS Z 8401
(数値の丸め方)によって規定された位に丸める。
(2)
アルミニウム分については JIS H 2102,JIS H 2110 及び JIS H 2111 で規定された各不純物を(1)によっ
て算出した後,その総計を 100 から差し引いた残部として求め,規定された位以下の数値は切り捨て
る。
5.
定量方法
5.1
方法の区分 定量方法は,スパーク法による。
5.2
スパーク法
5.2.1
要旨 一定の形状・寸法に調製した金属固体試料をスパーク法によって発光する。この光を分光写
真器を用いて撮影し,スペクトル線の強度を測定する。
2
H 1303-1976
5.2.2
試料の調製方法 試料の調製方法は,次による。
(1)
分析試料 調製方法は,次による。
(a)
溶融状態の場合 金属地金が溶融状態の場合は JIS Z 2612 の 7.1 に従って円柱形(
1
)
の鋳塊試料を数
個採り,
図 1 の形状・寸法に調製(
2
)
する。
注(
1
)
精製アルミニウム地金又は偏析の影響がない試料の場合は,円板形の試料を使用してよい。
(
2
)
鋳塊試料は,切削工具とともにアルコールなどによって清浄にし,酸化させないように試料を
調製する。
図 1 円柱状の場合
(b)
鋳塊の場合 金属地金が鋳塊の場合は,地金に記載された融解番号ごとに地金を抜き採り,JIS Z
2612
の 7.1 に従って,試料地金の代表部分をのこぎりなどを用いて数個切り取り,小形旋盤などを
用いて(a)に従って電極試料を調製する。
(2)
標準試料 JIS Z 2612 の 6.2.1 に従って各種段階の純度を有するもの数組を鋳造し,各鋳塊試料の一部
を取り,日本工業規格のアルミニウム及びアルミニウム合金の化学分析方法によって各種不純物を正
確に定量し,これらの標準試料の不純物含有率とする。この際各種段階の純度を有する金属地金数種
が容易に得られる場合は,この地金の均質部分を切り取り成形し,標準試料として用いることができ
る。
5.2.3
装置及び操作条件 装置及び操作条件は,次による。
(1)
分光装置(
3
)
中間結像法の光学系を有する中形水晶分光器を使用する場合は,分光器のスリット幅は
20
〜40
µm とし,スリットの直前には階段フィルター又は回転セクターを設置する。
注(
3
)
分光装置は,水晶プリズム分光写真器と同等以上の性能を有する回折格子式などのものを使用
することができる。
(2)
発光方法(
4
)
5.2.2 によって調製した金属極は,電極支持台に保持し,分析間げきを 2mm に調節する。
ホイスナー式スパーク電源装置を使用し,二次回路の自己誘導 0.8mH,コンデンサの容量 0.0033〜
0.0066
µF,電圧 12〜15kV で,同期回転断続器を使用して発光する。発光直後一定時間(1〜2 分間)
は予備放電とし,スパークが安定した後一定時間(30 秒〜1 分間)の露光を与える。
注(
4
)
発光方法としては,JIS H 2111の場合は低圧コンデンサ放電電源装置,JIS H 2102の4種及び JIS
H 2110
のマンガンの場合は,直流高圧スパーク電源装置あるいはこれらと同等以上の性能をも
つものを使用することが望ましい。
(3)
撮影条件 分析試料と標準試料とは同一条件で撮影し,その順序は,標準試料が乾板の一方だけに偏
らないように分析試料の間にそう入して撮影する。
(4)
乾板処理方法 撮影した乾板は JIS Z 2612 の 8.3 に従い,それぞれ指定の現像操作によって現像,現
像停止,定着,水洗後,乾燥する。
3
H 1303-1976
(5)
光度測定方法 分光分析用線対は,所要のスペクトル線の黒度が直線範囲(通常 0.5〜2.0)のもので
なければならない。黒度が直線範囲外の場合には,階段フィルター又は回転セクターによって得られ
たスペクトル列中から適当なものを選定する。
黒度は安定な電源を有するミクロホトメーターを用い,一定した光源からの光を乾板上のスペクト
ル線像に当てて,透過した光の強さを測定して求める。
5.2.4
分析線対 分析線対は原則として表 1 のものを用いる。ただし,不純物元素の含有率若しくはその
他の条件によっては,他の適当なものを選ぶことができる。
表 1 分析線対
単位 nm
分析線
/
内標準線
Si I 288.158
Fe I 275.574
Fe I 302.064
Fe II 259.940
Cu I 324.754
Ti II 334.904
Mn II 259.373
Al II 281.618
/
/
/
/
/
/
/
/
Al II 305.007
Al II 305.007
Al II 305.007
Al II 305.007
Al II 305.007
Al II 305.007
Al II 305.007
Al I365.248
5.2.5
定量値の求め方 JIS Z 2612 の 8.5 に従って試料中の不純物元素(けい素,銅,鉄,チタン及びマ
ンガン)の含有率を求める。
備考 この方法は,中形水晶分光写真器及びホイスナー式スパーク電源装置によるものである。しか
し分光写真器及び励起電源装置にはいろいろのものがあるので,他の形式の装置を用いる場合
にはこの方法を基準とし,これに劣らない正確さ,精密さが得られる条件を慎重に求めた後使
用してもよい。
4
H 1303-1976
非鉄金属部会 アルミニウム合金分析方法専門委員会 構成表(昭和 47 年 10 月 1 日改正のとき)
氏名
所属
(委員会長)
後 藤 秀 弘
富山大学
青 木 文 雄
工業技術院東京工業試験所
須 藤 恵美子
科学技術庁金属材料技術研究所
服 部 只 雄
日本分析化学研究所
阿 部 方 朋
住友化学工業株式会社
井 上 邦之介
古河鋳造株式会社
上 野 良 一
日軽アルミニウム工業株式会社
潮 田 豊 治
昭和アルミニウム株式会社
榎 並 豊一郎
日産自動車株式会社
片 山 英太郎
軽金属製錬会
久 野 宗 彦
日本国有鉄道鉄道技術研究所
酒 井 猛
トヨタ自動車工業株式会社
沢 田 敏 男
住友軽金属工業株式会社
高 久 通 夫
古河電気工業株式会社
田 口 利 一
昭和電工株式会社
中 村 正 直
三菱化成工業株式会社
橋 本 鹿 雄
大和軽合金株式会社
平 松 剛 毅
株式会社神戸製鋼所
前 田 新 午
古河アルミニウム工業株式会社
三 田 裕
三菱アルミニウム株式会社
向 井 孝 一
日本軽金属株式会社
村 上 信 行
軽金属圧延工業会
(事務局)
石 井 清 次
工業技術院標準部材料規格課
細 井 敏 明
工業技術院標準部材料規格課
(事務局)
石 井 清 次
工業技術院標準部材料規格課(昭和 51 年 1 月 1 日改正のとき)
土 居 修 身
工業技術院標準部材料規格課(昭和 51 年 1 月 1 日改正のとき)