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日本工業規格

JIS

 H

0604

-1995

シリコン単結晶の光導電減衰法

によるライフタイム測定方法

Measuring of minority-carrier lifetime in silicon single

crystal by photoconductive decay method

1.

適用範囲  この規格は,シリコン単結晶中の少数キャリアのバルク再結合ライフタイム(以下,バル

クライフタイム又は

τ

B

という。

)を直流回路を用いた光導電減衰法によって測定する方法について規定する。

なお,測定する単結晶は均一な組成をもち,抵抗率が 1

Ω・cm 以上のものとする。

2.

試料

2.1

試料結晶及び形状  試料は単結晶とし,形状は表 に示す 4 種類の角柱とする。

表 1  試料の大きさ

単位 cm

試料の種類

長さ l

断面 a×b

1 5

0.5

×0.5

2 5

1.0

×1.0

3 8

1.5

×1.5

4 8

2.0

×2.0

2.2

測定可能なバルクライフタイム  測定可能なバルクライフタイムは,表 に示す表面再結合速度係

数 R

S

に関して

2

1

S

B

R

τ

を満足しなければならない。

各種試料での測定可能なバルクライフタイム

τ

B

の上限を

表 に示す。

表 2  測定可能なバルクライフタイムの上限

単位

µs

試料の種類

試料の導電形

1 2 3 4

p

710

2 800

6 300

11 000

n

2 000

7 900

18 000

31 000

2.3

試料の加工  試料表面は,アズスライス面,サンドブラスト面又はラッピング面とする。

2.4

試料の電極付け  試料の両端面をサンドブラスト又はラッピング加工後,超音波洗浄し,乾燥させ

る。その後,約 400℃のはんだごてを使用しインジウムを擦り込み,ぬれが良くなるまで両端面全面にイ

ンジウムをなじませる。

3.

測定環境  測定装置は十分に電磁遮へいされ,測定は,24±1℃,相対湿度 60%以下,気圧 860∼1 060hPa

の状態で行う。


2

H 0604-1995

4.

測定装置  測定装置は,図 に示すように,光パルス発生装置,光学系,試料への電流供給回路,前

置増幅器及びディジタルオシロスコープによって構成する。これらの各装置は,次に示す性能のものを用

いる。

図 1  測定装置

(1)

光パルス発生装置  光源としては(A)キセノン放電管又は火花放電,(B)電流パルス発生装置と 0.9∼

1.1

µm の間に最大光度をもつ発光ダイオードアレイの組合せのいずれかを使用する。

いずれも繰返し周波数は 5∼60Hz で光パルス消灯時の光強度の減衰時間(立ち下がり時間)が測定

ライフタイム

τ

F

5

1

以下のもの。

(2)

光学系  レンズによる集光系,フィルタ及び電極部を遮光するためのマスクで構成する。

フィルタは光源(A)の場合にだけ使用し,0.99

µm 以下の短波長光をカットオフする近赤外透過フィ

ルタ又は両面を鏡面仕上げした厚さ 0.5∼2mm の単結晶シリコンウェーハを使用する。

マスクは l

2

1

(

1

)

× l

2

1

(

1

)cm

の角形窓孔をもつもので試料の中央部直前に設置する。

(

1

)  l

は,

1に示した試料の長さ。

(3)

電流供給回路  試料に電流を供給するための定電圧供給電源であり,試料の抵抗値と電極接触抵抗値

を含む全抵抗値の 20 倍以上の固定抵抗器を通して,試料に 0.1∼5V の電圧を印加できるもの。

(4)

前置増幅器  DC∼1MHz の周波数範囲にわたって増幅度が一様で最大利得 1 万倍で入力換算雑音

30

µV 以下のもの。

(5)

ディジタルオシロスコープ  トリガー掃引式ディジタルオシロスコープで 10Hz∼1MHz の周波数範囲

にわたり増幅度が一様であり,サンプリングレイト 2.5MS/s 以上,メモリ容量 10k ワード以上,垂直

軸分解能 8 ビット以上のもの。


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H 0604-1995

5.

測定方法  試料を測定器の試料台に載せ試料両端面を電流供給端子と圧着又ははんだ付けする。試料

両端面に電圧を印加し,光パルスによる試料両端面間の電圧変化をオシロスコープで観測し,

図 のよう

に指数関数的減衰部分の信号電圧

e

1

(

=0.367)  に減衰する時間

τ

'

F

を読み取って一次モードライフタイ

ムの近似値とする。次にこの曲線をコンピュータなどによって片対数スケール 1n

VU  (t)

に変換すると

図 のような直線状のプロットが得られる。この直線の傾斜から

τ

F

を決定する。

図 

e

1

の減衰時間

τ

'

F

求めた時間領域が,

図 の片対数プロットの直線部分の時間領域に含まれている場合は,

τ

'

F

τ

F

と一致す

る。

この測定に当たり,次の事項に注意する。

図 2  指数関数的減衰曲線

図 3  片対数に変換した減衰曲線

(1)

試料取付け後,電流方向を切り換えて測定し,電極接触部に整流性のないことを確認する。

(2)

オシロスコープ画面上の減衰曲線が指数関数的に減少することを確認する。

(a)

減衰の初期に急な傾斜が見られる場合は減衰曲線の後部を用いて測定する[1n

VU  (t)  の直線部

分]

(b)

減衰曲線が長く尾を引いて基線に戻らない場合は 10 ワット以下の直流点灯の白熱灯によって試料

を照射しトラップ効果を消して測定する。

(3)

試料端電圧を V

0

,光照射によるキャリア注入時の電圧変化分を

としたとき,

0

V

∆V

<0.01 となるよう

に光強度を下げ注入キャリア密度を少なくする。

(4)

ライフタイム測定のとき,試料中の電界強度 によるキャリアの掃き流しの効果が無視できるように

するため,次の条件を満足すること。

( )

F

F

D

E

E

τ

µ

µ

τ

1

4

10

320

2

6

又は

ここに,

E: 電界強度 (V/cm)

τ

F

一次モードライフタイム (s)

µ

移動度であり p 形試料には

µ

n

=1 400cm

2

/V

・s,n 形試料には

µ

p

=470cm

2

/V

・s を使用する。

D: 少数キャリアの拡散係数であり,p 形結晶には D

n

35.5cm

2

/s

,n 形結晶には D

p

=12.5cm

2

/s

を使用する。

上の不等式に適合しているかどうかを確かめ,不適合の場合は印加電圧 V

0

を下げる。

(5)

 1n

VU (t)  変換で直線性が得られない試料の場合は,ライフタイムの測定には不適当である。

(6)

バルクライフタイムの算出  バルクライフタイム

τ

B

の算出は,次による。


4

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s

F

F

B

R

l

b

a

D

=

÷

ø

ö

ç

è

æ

+

+

=

τ

π

τ

τ

1

1

1

1

1

1

2

2

2

2

は抵抗率や欠陥密度などによって多少変動するので,より正確なライフタイムを求めるためには

各種試料での の実測が必要になる。

R

s

は,表面再結合速度係数であり,

表 による。

表 3  表面再結合速度係数  R

s

単位 l/s

試料の種類

試料の導電形

1 2 3 4

p

形 2

810

715

317

181

n

形 991

252

112

64

(7)

バルクライフタイム算出値が

表 中の測定可能なバルクライフタイムの上限を超えるとき,又は

τ

B

出値が実測値

τ

F

の 3 倍を超えるときには,正確な測定は不可能で試料寸法  (a×b)(

2

)

を更に大きくしな

ければならない。

(

2

)

  (a

×

b)  は,表1に示した試料断面。