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F 8102:2015  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 1 

4 単電池及び電池システム ···································································································· 4 

4.1 安全性要求事項 ············································································································· 4 

4.2 電池システムの構造・材料及び周囲条件············································································· 4 

4.3 表示 ···························································································································· 5 

5 蓄電池設備 ······················································································································ 5 

5.1 充電器 ························································································································· 5 

5.2 保護装置 ······················································································································ 5 

5.3 電力変換装置 ················································································································ 6 

5.4 警報及び安全装置 ·········································································································· 6 

6 設置場所及び区画 ············································································································· 6 

6.1 周囲条件 ······················································································································ 6 

6.2 設置区画 ······················································································································ 6 

6.3 居住区画内への設置の禁止 ······························································································ 6 

6.4 通風装置 ······················································································································ 7 

7 火災探知器及び消火設備 ···································································································· 7 

7.1 火災探知器 ··················································································································· 7 

7.2 消火設備 ······················································································································ 7 

附属書A(参考)船内給電にリチウム二次電池を使用する場合の要件 ············································· 8 

附属書B(参考)リチウム二次電池を用いる蓄電池設備のリスク軽減 ············································ 13 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本船舶技術研究協会(JSTRA)

から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経

て,国土交通大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

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船用電気設備− 

リチウム二次電池を用いた蓄電池設備 

Electrical installations in ships-Electric energy storage equipment using 

secondary lithium cells and batteries 

適用範囲 

この規格は,船内に,恒久的に装備するリチウム二次電池の単電池及び電池システム(以下,それぞれ

単電池,電池システムという。)並びにそれらに接続する充放電システムの安全性要求事項について規定す

る。ただし,総トン数20 t未満の船舶,又は総トン数20 t以上であってスポーツ若しくはレクリエーショ

ンの用だけに供する船体の長さが24 m未満の船舶に装備する設備には適用しない。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 8715-1 産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム−第1部:性能要求事項 

JIS C 8715-2 産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム−第2部:安全性要求事項 

JIS F 8061 船用電気設備−第101部:定義及び一般要求事項 

JIS F 8067 船用電気設備 第304部 機器−半導体コンバータ 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

3.1 

安全性 

受入れ不可能なリスクがない状態。 

3.2 

リスク 

危害の発生する確率と危害の程度との組合せ。 

3.3 

危害 

人体の受ける物理的障害若しくは健康障害,又は財産若しくは環境が受ける害。 

注記 財産又は環境が受ける害とは,船の航海に影響を与える害,乗船者の居住に著しい影響を与え

る害などが考えられる。 

3.4 

蓄電池 

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充電して繰り返して使うことができるリチウム二次電池。 

3.5 

(リチウム二次)単電池 

リチウムの酸化・還元で電気的エネルギーを供給する充電式の電池。単電池は,端子配置及び電子制御

装置を備えていないため,すぐに使用できる状態にはない。 

3.6 

モジュール 

直列及び/又は並列接続した単電池群。温度上昇から回路を保護するためのPTC(positive temperature 

coefficient)素子,ヒューズなどの保護素子(保護装置),及び監視回路をもっていてもよい。 

3.7 

電池パック 

一つ以上の単電池又はモジュールを組み込んだユニット。端子構造をもち,保護装置又は保護回路を含

み,かつ,単電池の電圧を元に電池システムに制御情報(信号)の出力機能をもつ。 

3.8 

電池システム 

一つ以上の単電池,モジュール又は電池パックを組み込んだシステム。単電池が使用範囲内となるよう

に監視し制御するバッテリーマネジメントユニット(BMU)をもつ。また,電池システムは,冷却装置及

び/又は加温装置をもつ場合もある。複数の電池システムが更に大きな電池システムを構成することもあ

る。 

3.9 

公称電圧 

単電池又は電池システムの電圧を指定又は同定するために使用する適切な電圧値。公称電圧は,単電池

及び電池システム製造業者(以下,製造業者という。)が指定する。 

3.10 

バッテリーマネジメントユニット,BMU(battery management unit) 

全ての単電池が使用範囲内となるように,単電池及び電池システムを監視し制御するもの。BMUの機

能は,電池パック内に割り当てるほか,電池システムを使用する機器・装置側に割り当てることもできる

(図1参照)。その場合,電池システムは,機器・装置側にあるBMUの機能を含むものとする。BMUを,

バッテリーマネジメントシステム(BMS)という場合もある。 

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図1−BMU機能の割当ての例 

3.11 

定格容量 

製造業者が指定する電気容量(アンペア時)。 

3.12 

充放電システム 

充電器,コンバータ,インバータなどで構成される充放電設備であって,電池システムを含まないシス

テム。舶用以外では,パワーコンディショナ,系統連系装置などと呼ばれている装置類がこれに該当する。 

3.13 

蓄電池設備 

電池システム及び充放電システムを含む設備全体(図2参照)。 

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a) インバータ・コンバータで構成される充放電システムを用いる例 

b) 充電装置と電力変換装置とを分割した構成例 

図2−蓄電池設備の構成例 

3.14 

通風装置 

通風機を用いて行う強制冷却装置。 

単電池及び電池システム 

4.1 

安全性要求事項 

単電池又は電池システムは,JIS C 8715-2で規定した安全性要求事項に適合しなければならない。 

4.2 

電池システムの構造・材料及び周囲条件 

4.2.1 

設置環境に関する安全性要求事項 

電池システムは,通常の取扱方法によって操作又は接触したとき,人体に傷害を生じさせないように作

り,装備しなければならない。また,電池システムは,機械的傷害の危険にさらされることなく,かつ,

水,蒸気,油などによって損傷を受けないような,照明された近寄りやすい場所に装備しなければならな

い。やむを得ず,機械的傷害の危険,又は水,蒸気,油などによって損傷を受ける危険にさらされる場合

には,電池システムの構造は設置場所に適したものとしなければならない。 

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4.2.2 

材料に関する安全性要求事項 

電池システムに使用する絶縁材料,配線材料などは,耐湿性,耐塩性及び耐油性をもち,難燃性材料で

なければならない。電池システムに使用するボルト,ナット,端子などの部品は,耐食材料を用いるか,

又は適切な防食処理を施したものでなければならない。 

注記 この規格で要求される耐湿性,耐塩性及び耐油性をもつ材料並びに難燃性材料とは,JIS F 8061

又はこれと同等の規格によって選定された材料である。 

4.2.3 

据付けに関する安全性要求事項 

電池システムは,堅固な構造で,適切な難燃性材料のきょう(筐)体(キャビネット,ラック,ケース

など)にまとめて配置しなければならない。複数のきょう体を2段以上に配列する場合,強制冷却装置を

設ける場合を除き,きょう体の前後部は,通風のため50 mm以上の空所を設けなければならない。さらに,

電池システムを船舶に設置する据付け位置が,JIS C 8715-2で規定した耐落下特性試験の高さを上回る場

合は,ボルト及びナットで電池システムを強固な船体構造部材に固定するなど,据付け位置から電池シス

テムが落下することを防ぐための適切な手段を施さなければならない。 

4.2.4 

ボルト・ナットの緩み止めに関する安全性要求事項 

電池システムに用いるボルト,ナットなどには,有効な緩み止めを施さなければならない。 

注記 有効な緩み止めとは,JIS F 8006の規定による振動検査,又はJIS C 60068-2-6において,プロ

ペラ及び機関によって船体に誘導された振動の影響に耐え得る対策を施したものである。 

4.2.5 

傾斜及び振動に関する安全性要求事項 

単電池又は電池システムは,設置する船舶において想定される傾斜角度(静的傾斜及び動的傾斜を含む。)

及び振動に耐え得るよう,適切な手段で据え付けられていなければならず,かつ,支障なく動作するもの

でなければならない。 

4.2.6 

周囲温度条件 

電池システムは,周囲温度0 ℃〜45 ℃で安全性に支障なく動作するものでなければならない。この温

度を超える区域又は下回る区域内に設置する場合は,想定される条件に従って,適切な単電池又は電池シ

ステムを選定するか,又は同区域を適切に環境制御しなければならない。 

なお,JIS C 8715-2の附属書Aでは,リチウム二次電池の一般的な標準温度範囲は10 ℃〜45 ℃である

と規定されている。標準温度範囲よりも低温側の温度域においてリチウム二次電池を充電する場合,負極

表面上への金属リチウムの析出が生じ,発熱・熱暴走に至る可能性がある。したがって,電池システムは,

低温度域における安全性の低下に留意した設計をしなければならない。 

4.3 

表示 

単電池又は電池システムの本体,取扱説明書などの表示は,JIS C 8715-1の箇条11(表示)による。 

蓄電池設備 

5.1 

充電器 

充電器は,単電池及び電池システムの製造業者が指定する仕様に従って設計したものであり,単電池及

び電池システムの特性に応じて適正な充電電流及び充電電圧を維持できるものでなければならない。また,

充電設備の中に充電電圧を示す指示計を設けなければならない。 

5.2 

保護装置 

単電池及び電池システムの危機的状態を招くおそれのある設定値(充電終止電圧,最大充電電流,並び

に単電池及び電池システムの使用上限温度及び使用下限温度など)の変更については,使用者によって容

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易に変更されないようにパスワードなどで保護しなければならない。 

リチウム二次電池は,熱暴走によって発火するおそれがあるため,電池システムの直近又は電池システ

ムの内部にヒューズを設けるか,又は短絡事故によって発火しないための十分な耐性が求められる。さら

に,単電池ごとの電圧,温度などを計測するために,計測用の信号線が単電池に接続される場合にも,信

号線の短絡によって,信号線の発火又は単電池の熱暴走を引き起こすおそれがあるので,例えば,ヒュー

ズ又は電流ブレーカによる保護,信号線及び接続端子の難燃化,信号線の分離配置などを考慮する必要が

ある。 

5.3 

電力変換装置 

船内給電のためにコンバータ,インバータなどの電力変換装置を使用する場合は,JIS F 8061の給電系

統の特性に記載された要件及びJIS F 8067の半導体コンバータに関する要件を満たすものでなければなら

ない。また,蓄電池設備及び船内発電機の両方をもつ船舶においては,安全な並列運転を行うために適切

な措置を施さなければならない(附属書A参照)。 

その他の電気設備については,必要に応じて,JIS又はIEC規格の該当規定を準用する。例えば,電気

推進装置については,JIS F 8073で規定している。 

5.4 

警報及び安全装置 

蓄電池設備には,単電池又は電池システムの温度,電圧,電流などを監視する装置を設けることとし,

これらの監視装置により異常値が検知された場合には自動的に充放電を停止する装置を設けなければなら

ない。また,複数の単電池を組み合わせて電池システムを構成する場合は,単電池,電池パック又はモジ

ュール単位で電池間の充電不均衡を補正する機能を設けなければならない。 

5 kWを超える出力をもつ充電器に接続する電池システム又は定格容量(Ah)に公称電圧(V)を乗じた

値が100 kW・hを超える電池システムにおいては,異常発生時に船橋,機関制御室など通常人のいる場所

に警報を発しなければならない。この場合の警報は,一括警報として差し支えない。 

設置場所及び区画 

6.1 

周囲条件 

単電池及び電池システムの設置場所は,4.2.6の周囲温度条件を満足しなければならない。 

6.2 

設置区画 

定格容量(Ah)に公称電圧(V)を乗じた値が100 kW・hを超える電池システムは,次の要件を満足し

なければならない。 

a) 電池システムは,専用の区画に設置しなければならない。充放電システムは電池システムの専用の区

画外に設置しなければならないが,リスク評価などに基づき安全性の確認された蓄電池設備の場合は,

この限りでない(附属書B参照)。 

b) 電池システムを設置する区画は,適切な防火構造をもち,床面は容易に発火しない性質,天井張り及

び壁の露出面は炎の広がりが遅い性質のものでなければならない。 

注記 この規格で要求される防火構造とは,船舶防火構造規則又は一般財団法人日本海事協会が発

行している鋼船規則・同検査要領 R編 防火構造,脱出設備及び消火設備に基づき,適切に

設計された構造である。 

6.3 

居住区画内への設置の禁止 

コンピュータ又は制御機器の保護に用いるための無停電電源装置(UPS)などに使用される小容量の蓄

電池を除き,電池システムを居住区画内に設置してはならない。 

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6.4 

通風装置 

リチウム二次電池は,通常の充放電で爆発性ガス,可燃性蒸気などを放出しないが,過充電などの異常

状態において,これらのガス,蒸気などを放出するおそれがある。したがって,電池システムを設置する

蓄電池設置区画は,次の要件を満足しなければならない。 

a) 定格容量(Ah)に公称電圧(V)を乗じた値が100 kW・hを超える電池システムを設置する場合は,

過充電などの異常状態を経て火災が発生した場合に効果的な消火を行うため,通常,専用の区画を密

閉できる構造とするとともに,初期火災消火後の煙を排出するための手段(可燃性ガスを放出する電

池システムにあっては,可燃性ガス排出手段を兼ねる。)を設ける。煙排出手段は,通常時に使用する

通風装置と兼用のものとして差し支えないが,通風装置への給電は専用の区画外の電源を用いなけれ

ばならない。また,この通風装置は同区画開口からの自然排気として差し支えないが,機械式とする

場合であって鎮火後に可燃性ガスを放出する可能性のある電池システムにあっては,外装形とするか

又は防爆形とし,かつ,通風装置は無火花構造とする。 

b) リチウム二次電池は,通常の充放電時にも発熱することから,電池システムの作動温度範囲と船舶の

周囲温度とを考慮し,必要に応じて適切な容量の通風装置を設置する。 

c) 5 kWを超える出力をもつ充電器に接続する電池システムを設置する区画に通風装置を設置する場合

は,通風が喪失した場合に通常乗組員がいる場所に警報を発しなければならない。 

火災探知器及び消火設備 

7.1 

火災探知器 

定格容量(Ah)に公称電圧(V)を乗じた値が100 kW・hを超える電池システムを設置する区画には,

通常,可燃性ガスの発生及び火災を探知するための独立した固定式火災探知器を設けることとし,安全な

脱出及び消火活動のため,船橋,機関制御室など通常人のいる場所に警報を発しなければならない。 

なお,用いられる火災探知器は単電池及び電池システムの特性に応じ,早期に探知可能な方式(煙式,

熱式,光電式など)としなければならない。 

7.2 

消火設備 

電池システムの設置場所には,次の要件を満足する消火設備を備えなければならない。 

a) 消火設備は,電池システムの特性に応じた効果的な設備でなければならない。 

b) 定格容量(Ah)に公称電圧(V)を乗じた値が100 kW・hを超える電池システムを設置する区画につ

いては,火災の発生場所において火災を鎮圧し,迅速に消火するために,当該場所における火災の発

達の可能性を考慮した固定式消火装置を設置しなければならない。当該固定式消火装置は,電池シス

テムの火災に対して,二酸化炭素,窒素などの不活性ガスで消火するものとし,水又は海水を用いて

はならない。固定式消火装置の操作は蓄電池設置区画外から行うことができなければならない。 

c) a)及びb)で規定する効果的な消火装置が設置できない場合は,蓄電池火災を局所化する措置(難燃性

又は耐火性の仕切りを設けたきょう体への収納,密封箱形容器への収納など)を講じなければならな

い。その仕様については電池製造業者などを含む受渡当事者間の協議による。 

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附属書A 

(参考) 

船内給電にリチウム二次電池を使用する場合の要件 

A.1 用語及び定義 

この附属書で用いる主な用語及び定義は,次に示す。 

A.1.1 

単独運転 

電力系統事故時などにおいて,分離して単独系統に送電を行う運転。 

A.1.2 

並列運転 

電力系統,同期機などが並列した状態で運転している状態。 

A.1.3 

主電源(装置) 

船を正常な稼働状態及び居住状態に維持するために,必要な全ての設備に配電する主電源盤へ電力を供

給する電源。 

A.1.4 

非常電源 

主電源からの給電が故障の場合,非常配電盤に給電する電力源。 

A.1.5 

主発電機 

主電源の電力を発生する発電機。 

A.1.6 

フェールセーフ(の原則) 

機器又は装置に故障が生じても安全側に作動する機能。 

A.1.7 

デッドシップ状態 

動力の欠如のため,主推進装置,ボイラ及び補機類が稼働していない状態。 

A.1.8 

選択遮断 

配電系統中,回路に短絡事故が発生した場合,それらの事故の影響を限定するため故障点に最も近い保

護遮断器だけが遮断する動作。 

A.1.9 

重要負荷 

船の航海,推進及び人命の安全のため,快適な居住性のため,又は船の特殊設備のため欠くことができ

ない機器。 

A.2 蓄電池設備の一般要件 

A.2.1 蓄電池設備と船内発電機との両方をもつ船舶における蓄電池設備の要件 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

蓄電池設備と船内発電機との両方をもつ船舶において,蓄電池設備と船内発電機とを並列運転して同一

の船内給電系統に接続する場合,次に掲げる要件を満たしていることが望ましい。 

a) 蓄電池設備の保護装置並びに充放電システムに接続する船内給電側回路の周波数変動特性及び電圧変

動特性は,主発電機と同等の性能をもつ。 

b) 蓄電池設備が,船内発電機又は他の蓄電池設備との負荷分担を確実に行える。 

c) 蓄電池設備から給電する場合,充放電システムの船内給電側回路には,自動電圧調整機能を備える。 

d) 蓄電池設備及びその制御システム,警報システム並びに安全システムは,フェールセーフの原則に基

づいて設計する。 

A.2.2 主電源装置として蓄電池設備を設ける場合の要件 

船舶設備規程,SOLAS条約などで要求される主電源装置の代替として蓄電池設備を設ける場合,次に掲

げる要件を満足していることが望ましい。 

a) 蓄電池の経年劣化,船舶の航行時間などを考慮し,十分な容量をもつ蓄電池を用いる。 

b) 蓄電池設備が船舶の推進及び操だ(舵)に必要な場合,蓄電池設備は,船舶の安全を維持するために,

推進及び操だに必要な機器への給電を維持するか,又は船舶設備は速やかに電源を復旧できるように

している。 

c) 主電源装置が停止した場合においても,デッドシップ状態から主推進装置を始動させるために必要な

設備を設けている。 

d) 蓄電池設備が,A.2.1及びA.3.1の要件を満たしている。 

A.3 給電方法別の蓄電池設備の構成及び要件 

A.3.1 単独運転を行う蓄電池設備の要件 

船内発電機との並列運転だけでなく,船内発電機を使用せずに蓄電池設備単独で船内負荷へ給電するこ

とがある蓄電池設備(以下,単独運転を行う蓄電池設備という。)の場合,次に示す要件を満足しているこ

とが望ましい。 

a) 負荷側で短絡事故が発生した場合に事故点を給電回路から切り離すために,直近の保護装置[MCCB

(Molded-Case Circuit Breaker)など]を動作させるための短絡電流を供給できるなどの能力をもつ(図

A.1参照)。 

b) 蓄電池設備は,短絡を含む全ての過電流に対して保護している。 

c) これらの過電流に対する保護装置は,故障回路を遮断することによって,回路の損傷及び火災の危険

を減じるとともに,他の回路をできる限り連続して使用できる。 

d) 蓄電池設備は,故障電流によって負荷を選択遮断する場合,保護装置が限時動作するまで,故障電流

による機械的影響及び熱的影響に耐えられる。 

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図A.1−単独運転を行う蓄電池設備 

A.3.2 船内発電機との並列運転を条件とする蓄電池設備の要件 

船内発電機との並列運転を条件とし,蓄電池設備単独で船内負荷に給電しない蓄電池設備(以下,船内

発電機との並列運転を条件とする蓄電池設備という。)の場合は,A.3.1に示す事故時の短絡電流供給能力

は必要としない。ただし,全ての並列運転をする船内発電機が異常によって停止した場合には,蓄電池設

備も自動的に停止するように,船内発電機と蓄電池設備との間にインタロック機能(単独運転防止措置)

を設けることが望ましい(図A.2参照)。 

図A.2−船内発電機との並列運転を条件とする蓄電池設備 

A.3.3 非常負荷へ給電する蓄電池設備 

SOLAS条約などで要求される非常電源(非常発電機など)に代えて,蓄電池設備から非常負荷に給電す

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る場合には,A.3.1に示す単独運転を行う蓄電池設備の要件を含め,蓄電池設備は全ての非常電源装置に関

する要件を満足することが要求される(図A.3参照)。さらに,非常負荷に給電する蓄電池設備については,

次の要件を満たすことが望ましい。 

a) 蓄電池設備の容量は,同時に運転しなければならない負荷を考慮に入れ,非常時の安全上不可欠な全

ての負荷に対して,十分な時間,給電できる。 

b) 蓄電池設備は,使用時の状況を十分に考慮し,配置する。 

図A.3−非常負荷へ給電する蓄電池設備 

A.3.4 重要用途の負荷へ給電する蓄電池設備 

単独運転を行う蓄電池設備において,船内の重要負荷へ給電する蓄電池設備の場合には,船内発電機と

同等のシステムの冗長性をもつことが望ましい(図A.4参照)。さらに,蓄電池設備の故障,容量低下,経

年劣化などを考慮し,あらかじめ設定した航路,又は航行時間においてだけ給電することが望ましい。 

図A.4−重要負荷へ給電する蓄電池設備 

A.3.5 非重要負荷だけに給電する蓄電池設備 

非重要負荷だけに給電する場合には,システムの冗長性を考慮する必要はない。また,充放電システム

から供給される電圧,周波数などについても,機器に影響を与えない範囲であれば,A.2.1の要件を満足し

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ないものであってもよい(図A.5参照)。 

図A.5−非重要負荷へ給電する蓄電池設備 

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F 8102:2015  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書B 

(参考) 

リチウム二次電池を用いる蓄電池設備のリスク軽減 

5 kW未満の出力をもつ充電器に接続する蓄電池設備を除き,リチウム二次電池を用いる蓄電池設備につ

いては,FTA(Fault Tree Analysis),FMEA(Failure Mode and Effects Analysis),SIL(Safety Integrity Level)

などを用いて,蓄電池設備を使用する際の危険源の分析及びリスク評価を行い,そのリスクを軽減するこ

とが望ましい。 

危険源の分析,リスク評価及びリスク軽減の手順を次に示す。 

注記 FTAの手順についてはJIS C 5750-4-4,FMEAの手順についてはJIS C 5750-4-3,及びSILの定

義についてはJIS C 0508-4に記載されている。 

B.1 

危険源の抽出 

危険源として,想定される要素を抽出する。電池システム及び充放電システムが発火に至る危険源とし

て,過放電後の充電,EMC(電磁障害),感電,振動,浸水,外部短絡,内部短絡,過充電,過熱,落下,

圧壊,漏液,排出ガスへの引火,火災などがある。 

B.2 

リスク評価 

危険源から発生する影響の大きさ,発生確率などから,リスクを評価する。 

B.3 

安全水準の目標の設定及びリスク軽減活動の実施 

安全水準の目標を設定し,リスク軽減活動を実施する。その際,状態検知,制御,異常検知,回路遮断

など,リスク軽減に寄与する全ての部品,構造及び機構を考慮する。また,電池システム又は充放電シス

テムが発火に至った後の消火設備又は鎮火へ導く機構,防火設備などを含めて,リスク軽減活動を実施す

ることが望ましい。 

参考文献 JIS C 0508-4 電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全−第4部:用語の定義及

び略語 

JIS C 5750-4-3 ディペンダビリティ マネジメント−第4-3部:システム信頼性のための解析

技法−故障モード・影響解析(FMEA)の手順 

JIS C 5750-4-4 ディペンダビリティ マネジメント−第4-4部:システム信頼性のための解析

技法−故障の木解析(FTA) 

JIS C 60068-2-6 環境試験方法−電気・電子−第2-6部:正弦波振動試験方法(試験記号:Fc) 

JIS F 8006 船用電気器具の振動検査通則 

JIS F 8073 船用電気設備−第501部:個別規定−電気推進装置 

船舶防火構造規則 

船舶設備規程 

一般財団法人日本海事協会 鋼船規則・同検査要領 R編 防火構造,脱出設備及び消火設備