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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

F 0801-1989 

海上試運転機関部試験方法 

Test Code of Propelling Machinery at Sea Trials 

1. 適用範囲 この規格は,船を新造して注文者に引き渡す前に,船の速力,性能などを試験するために

行う海上試運転(以下,試運転という。)のうち,機関部の試験方法について規定する。 

備考1. この規格は,一般的な海上試運転試験方法について規定したもので,船種,船形,機関の種

類などによって,この規格により難い場合は,関係者(検査員,注文者,製造業者など)協

議のうえ,この規格に準じ,試験を行うものとする。 

2. この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,

参考として併記したものである。 

引用規格: 

JIS B 8002 往復動内燃機関の性能試験方法通則 

JIS F 0401 船に装備された主機の出力の呼び方及びその定義 

JIS F 7003 圧力計の船内装備基準 

JIS F 7004 船舶機関部温度計装備基準 

2. 試運転及び海上試運転成績表 試運転は,あらかじめ定められた試運転方案に従って行い,その結果

を海上試運転成績表に取りまとめる。 

なお,試運転に先立ち,試験の種類,次第,試運転諸元(出力などの計測方法),その他必要な項目を関

係者協議のうえ決定したものを試運転方案という。 

3. 試運転の種類及び方法 

3.1 

係留運転 係留運転は,航走に先立ち,主機及びこれに関連する各部の異状の有無を確認するのを

目的とし,接岸係留のまま行う試運転で,主機及びこれに関連する各部について,綿密に検査し,運転に

差し支えがないことを確認した後,次のいずれかの方法によって行う。 

なお,この運転は予行運転を行う船では省略することができる。 

(1) プロペラと主機とを切り離すことなく運転する場合 

適当な出力(又は回転速度)で,前進及び後進方向にあらかじめ定められた時間連続運転を行う。

ただし,出力(又は回転速度)は係留索(又はアンカーチェーン),係留金物,軸系の強度及び推力な

どを考慮して決定する。 

(2) プロペラと主機とを切り離して運転する場合 

適当な回転速度で前進及び後進方向にあらかじめ定められた時間連続運転を行う。 

F 0801-1989  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.2 

すり合わせ調整運転 すり合わせ調整運転は,主機を初めて長時間運転するのに先立ち,適当な出

力(又は回転速度)で適当な時間連続して行う試運転で,この運転では,主機及びこれに関連する各部に

異状がないことを確認しながら次第に出力(又は回転速度)を上げて行う。 

なお,この運転は,予行運転中に行うことができる。 

3.3 

予行運転 予行運転は公試運転に先立ち,公試運転の参考に供するため,機関の状態,性能及び試

運転諸元をあらかじめ確認する予備的な試運転で,この予行運転は,製造業者の判断で省略することがで

きる。 

3.4 

公試運転 公試運転は,機関の信頼性,性能,出力(又は回転速度)と船の速力との関係,その他

特に定められた契約条件などを調査確認するために行う公式の試運転で,次による。 

なお,公試運転の一部は,予行運転に繰り入れることができる。 

(1) 保証速力試験 標柱間1往復又はこれに代わる方法によって,あらかじめ定められた船の喫水,トリ

ム及び機関の出力状態で行う(一般には機関出力として,連続最大出力又は常用出力を選ぶ)。 

(2) てい(逓)増速力試験 標柱間各1往復又はこれに代わる方法によって,連続最大出力の41,42,43,

44(又は許容回転速度に対する出力)及び常用出力のうち,3種類又は4種類の出力について行う。 

なお,この試験は,保証速力試験を兼ねることができる。 

(3) 過負荷試験 一般には行わない。ただし,内燃主機で特に必要がある場合は,関係者協議のうえ,過

負荷の程度を定めて行う。 

(4) 続航試験 連続最大出力(又は許容回転速度に対する出力)で少なくとも1時間行い,その間に速力

試験,燃料消費量試験,かじ取試験,旋回試験など適当と認められた試験を行うことができる。 

(5) 燃料消費量試験 燃料消費量試験は,次による。 

(a) 常用出力又は連続最大出力(又は許容回転速度に対する出力)であらかじめ定められた時間連続し

て行う。 

(b) 燃料消費量試験中は,主機の運転に直接関係がない補機は,原則として使用しないものとするが,

やむを得ず使用する場合は,燃料消費量の補正を行うことができる。 

(c) 内燃主機で,燃料消費量の保証は一般に機関の陸上試験において行われるので,試運転では参考値

にとどめる。 

(6) 後進試験 常用出力で前進中,後進全力を発令し,できるだけ速やかに後進全力への切換操作を行い,

後進回転速度が整定するまで運転する。次に前進を発令し,できるだけ速やかに前進への切換操作を

行い,機関出力を常用出力まで上げ,前進回転速度が整定するまでの運転を行う。この試験中,原則

としてかじは中央に保持しておく。 

なお,後進時の回転速度は,原則として次による。 

(a) タービン主機 計画時の後進出力に相当する回転速度。 

(b) 内燃主機 前進連続最大出力回転速度の70〜75%の回転速度。 

(7) 最低回転速度試験 内燃主機について,機関を円滑確実に運転できる最低の回転速度を求めるために

行う。回転速度整定後は,適当にかじを操作し,機関が停止しないことを確認する。 

(8) 始動試験 始動に空気を必要とする内燃主機は,始動空気だめを所定の圧力まで充気した後,途中で

空気を補給することなく始動できなくなるまで,自己逆転機関では前進及び後進を交互に行い,非自

己逆転機関では始動及び停止を繰り返して行う。 

なお,始動試験は主機が冷態時に,かつ,主機を船橋から遠隔始動する船では船橋から,また集中

制御室から遠隔始動する船では集中制御室から行うことが望ましい。 

F 0801-1989  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(9) 機関室無人運転試験 操船時を含むすべての航海状態のもとで,連続して機関の無人運転を行う船に

対しては,無人運転を行うために必要な設備が正常に作動することを確認した後,通常の航海状態と

できる限り同等の航海状態において,船橋から,あらかじめ定められた時間,安全,かつ,確実に機

関設備の監視及び制御ができることを確認する。 

なお,この場合,集中制御室又は機側制御場所から,機関設備の手動操作は行わない。 

(10) その他の試験 必要に応じて,次の試験を行う。 

(a) 軸系ねじり振動計測 

(b) 振動計測 

(c) 騒音計測 

(d) 排ガスエコノマイザ蒸発量計測 

(e) 造水装置容量計測 

4. 計測項目及び計測方法 

4.1 

一般 計測に関する一般事項を次に示す。 

(1) 試運転方案に定められている諸試験に対して必要な計測を行う。 

(2) 保証速力試験及びてい増速力試験では,各速力試験片航ごとに一般計測を行う。続航試験及び燃料消

費量試験における一般計測は,試験中,少なくとも2回行う。 

なお,続航試験における一般計測は省略することができる。 

(3) 後進試験では,後進発令前,後進回転速度整定時,前進発令前及び前進回転速度整定時の各点におけ

る回転速度及び経過時間について計測する。 

なお,自己逆転機関では,後進及び前進発令から制動空気投入までの時間及びそのときの回転速度

を併せて計測する。 

(4) 始動試験では,始動の回数及び各始動ごとに始動空気だめの圧力を計測する。 

(5) 計測は,電灯信号,笛の吹鳴,その他適当な方法によって,できる限り同時に行う。 

(6) 計測用計器はあらかじめ検査し,できる限り正確なものを使用する。 

(7) 諸計測のうち,特に注意を必要とするものについては,4.2以下に記載する。 

4.2 

回転速度計測 速力試験の場合は,試験中なるべく長い時間積算計測した回転数から平均回転速度

を求め,回転速度計(瞬時計)の読みは参考とする。続航及び燃料消費量試験の場合の回転速度は,出力

計測と同時に計測する。試験中の総平均回転速度は,所定時間内の総回転数から算出する。 

なお,積算回転計を装備しない船では,回転速度計によって求めてもよい。 

4.3 

出力計測 出力計測は,次による。 

(1) ブレーキ出力 陸上試験において,水動力計,その他適当な計器を用いて計測して得たデータを使用

して,次のいずれかの方法によって算出する。 

(a) 陸上試験で燃料ポンプラック目盛×回転速度と出力との関係を求め,あらかじめ作成された主機出

力推定曲線に基づいて,試運転時の“燃料ポンプラック目盛×回転速度”から求めた出力に次の補

正を行って算出する。 

F 0801-1989  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

γ

γ

u

a

ua

a

1

H

S

H

S

BHP

BHP=

ここに, BHP 

:海上試運転時主機出力 (kW) {PS} 

BHP1 :主機出力推定曲線から直接求めた出力 (kW) {PS} 

:陸上試験における燃料ポンプの有効吐出し行程 (mm) 

Sa 

:海上試運転における燃料ポンプの有効吐出し行程 (mm) 

Hu 

:陸上試験における燃料油の低発熱量 (kJ/kg) {kcal/kg} 

Hua 

:海上試運転における燃料油の低発熱量 (kJ/kg) {kcal/kg} 

γ 

:陸上試験における機関入口燃料油比重 

γa 

:海上試運転における機関入口燃料油比重 

(b) 指圧図採取装置などを装備する機関では,陸上試験で得た機械効率及び図示出力から算出する。 

BHP=ηm・IHP 

ここに, BHP 

:ブレーキ出力 (kW) {PS} 

ηm 

:機械効率 

IHP 

:図示出力 (kW) {PS} 

(2) 軸出力(1) 軸出力は,ねじり計測器を用いて測定するが,計器は量後部中間軸に取り付けるのがよい。 

注(1) 出力の定義はJIS F 0401(船に装備された主機の出力の呼び方 及び その定義)の規定による。 

4.4 

圧力計測 圧力計測には,圧力計,連成計,真空計,絶対圧力計,マノメータ,風圧計(ピストル

式又は定置式)などのうち適当なものを用いる。その装備基準は,JIS F 7003(圧力計の船内装備基準)

の規定によるが,必要に応じて更に試運転用のものを仮設する。 

4.5 

温度計測 温度計測には,棒状温度計,電気式温度計などを用いる。 

なお,その装備基準は,JIS F 7004(船舶機関部温度計装備基準)の規定によるが,必要に応じて更に

試運転用のものを仮設する。 

4.6 

燃料消費量計測 燃料消費量計測は,次による。 

(1) 計測器 燃料油消費量の計測には,あらかじめ容積,性能などを厳密に実測しておいた流量計,本船

固有のタンク又は特設タンクを用いる。 

(2) 燃料消費率 燃料消費率の算出は,次による。 

(a) 実際の燃料消量率 燃料消費量試験中の総燃料消費量及び機関平均出力を求め,次式によって補正

を行う。 

(

)

2

t

1

10

T

P

E

1

Q

b

×

±

γ

ここに, b1: 

実際の燃料消費率 (g/kW・h) {g/PS・h} 

γt: 

燃料消費量試験中の流量計入口温度における燃料油密度 (kg/l) 

Q: 

燃料消費量試験中の総燃料消費量(l) 

E(2): 

流量計器差修正係数(流量計を用いて測定する場合) 

P: 

燃料消費量試験中の機関平均出力 (kW) {PS} 

T: 

燃料消費量計測時間 (h) 

注(2) タンクを用いて計測する場合は,式中のEの値を0として求める。 

なお,ディーゼル船の場合は,流量計と同じ時間内に計測した漏れ量を流量計で求めた量から差

し引くことができる。 

(b) ディーゼル船の場合の燃料消費率の補正 試運転における実際の諸条件と計画時の条件とが異なっ

ている場合には,各条件に対する修正係数を求め,次式によって補正を行う。 

F 0801-1989  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

b2=Cb1 

ここに, b2: 

補正された燃料消費率 (g/kW・h) {g/PS・h} 

b1: 

実際の燃料消費率 (g/kW・h) {g/PS・h} 

C: 

各条件に対する修正係数の積 

C=Cf・Ct・Cp・Cw 

Cf (3): 燃料油低発熱量の変化に対する修正係数 

Ct(4): 過給機入口空気温度の変化に対する修正係数 

Cp(4): 過給機入口空気圧力の変化に対する修正係数 

Cw(4): 空気冷却器入口冷却水温度の変化に対する修正係数 

注(3) Cf:標準発熱iと使用燃料の発熱量の比 

(4) Ct・Cp・Cw:主機製造業者によって,あらかじめ提示された値とする。 

ただし,発熱量の変化に対する修正以外の補正は,関係者が協議のうえ,省略できる。 

(c) タービン船の場合の燃料消費率の補正 試運転における実際の諸条件と計画時との条件が異なって

いる場合には,各条件に対する修正係数を求め,次式によって補正を行う。 

b2=Cb1 

ここに, b2: 

補正された燃料消費率 (g/kW・h) {g/PS・h} 

b1: 

実際の燃料消費率 (g/kW・h) {g/PS・h} 

C: 

各条件に対する修正係数の積 

C=Cf・Ch・Ct・Cp・Cv・Cg・Ce・Cs 

Cf: 

燃料油高発熱量の変化に対する修正係数 

Ch: 燃料油中水素含有率に対するボイラ効率の変化による修正

係数 

Ct: 

主ボイラ過熱器出口蒸気温度の変化に対する修正係数 

Cp: 主ボイラ過熱器出口蒸気圧力の変化に対する修正係数 

Cv: 復水器真空の変化に対する修正係数 

Cg: 発電機負荷の変化に対する修正係数 

Ce: 造水量の変化に対する修正係数 

Cs: 計画プロペラ回転速度の変化に対する修正係数 

(3) 標準発熱量 燃料油の発熱量は,原則として次による。 

内燃機関の場合 

低発熱量(5) 

42 000kJ/kg {10 030kcal/kg} 

ボイラの場合 

高発熱量 

43 000kJ/kg {10 270kcal/kg} 

注(5) JIS B 8002(往復動内燃機関の性能試験方法通則)による。 

4.7 

燃料油の確認 試運転に使用する燃料油の発熱量及び温度と比重との関係並びに温度と粘度との関

係を確認し,成績表として取りまとめる。 

4.8 

電力計測 電力計測は,次による。 

(1) 電流及び電圧は,それぞれ電流計及び電圧計によって計測する。 

(2) 電力(入力)は,次の計算式によって算出するか,又は直接,電力計によって計測する。 

(a) 直流の場合 

W=I・V 

ここに, W: 

入力 (kW) 

I: 

電流 (A) 

V: 

電圧 (kV) 

F 0801-1989  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(b) 交流の場合 

W=αIVPf 

ここに, W: 

入力 (kW) 

α: 

結線の方法によって定まる係数 

I: 

電流 (A) 

V: 

電圧 (kV) 

Pf: 

力率 

船舶部会 船舶機関設計専門委員会 構成表(昭和59年11月15日改正のとき) 

氏名 

所属 

(委員会長) 

石 川 哲 司 

白 石 圭 一 

財団法人日本海事協会 

百合草 正 韶 

船舶整備公団 

片 岡 榮 夫 

運輸省海上技術安全局 

横 溝 眞一郎 

工業技術院標準部 

荻 野 義 治 

財団法人日本船舶標準協会 

浅 見 与 一 

富士ディーゼル株式会社 

鵜 野 元 彦 

昭和精機工業株式会社 

村 松 綏 啓 

株式会社新潟鉄工所内燃機事業部 

藤 田   護 

ヤンマーディーゼル株式会社 

瀬 角 憲 一 

ダイハツディーゼル株式会社技術本部 

緒 方   勇 

株式会社赤坂鉄工所技術部 

佐 藤 彰 一 

日本鋼管株式会社重工事業部 

伊 藤   宏 

石川島播磨重工業株式会社艦船設計部 

清 水   實 

川崎重工業株式会社船舶事業本部 

宮 下 尚 明 

住友重機械工業株式会社追浜造船所 

清 水 英 夫 

日立造船株式会社船舶本部 

田 中 嘉 春 

三井造船株式会社船舶事業部 

戸野本 義 直 

三菱重工業株式会社船舶鉄構事業本部 

臼 居   勲 

社団法人日本船主協会 

(事務局) 

黒 河 亀千代 

工業技術院標準部機械規格課 

武 藤 晃 雄 

工業技術院標準部機械規格課 

(事務局) 

小 林 秋 穂 

工業技術院標準部機械規格課(平成元年6月15日改正のとき) 

山 形 智 幸 

工業技術院標準部機械規格課(平成元年6月15日改正のとき)