2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
F 0045-1992
舟艇用語−船体
Pleasure boat−Vocabulary−Hull
1. 適用範囲 この規格は,スポーツ及び娯楽用の舟艇(1)の船体に関する主な用語及び定義について規定
する。
注(1) 小形船の総称。
備考1. スポーツ及び娯楽用の舟艇のことを,“プレジャーボード”と呼ぶことがある。
2. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS F 0010 造船用語(船舶一般編)
JIS F 0011 造船用語(船体編−基本計画)
JIS F 0012 造船用語(船体編−船こく構造)
2. 分類 用語の分類は,次のとおりとする。
(1) 船の部位及び方向
(2) 寸法及び大きさ
(3) 船形及び構造
(a) 船形
(b) 構造
(4) 区画及び居住区
(5) 船の部分の名称
(6) 構造材及び補強工作法
(7) 船の状態
(8) 復原力
3. 用語及び定義 用語及び定義は,次のとおりとする。
なお,参考のために対応英語及び慣用語を示す。
備考 用語欄の括弧内の仮名は,読みを示す。
2
F 0045-1992
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(1) 船の部位及び方向
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
1001 船首
(せんしゅ)
船の前端又は前方の部分。
bow
へさき,
バウ,
おもて
1002 船尾
(せんび)
船の後端又は後方の部分。
stern
とも,
スターン
1003 船体中央
船体の長さ方向の中央部。
midship
ミドシップ,
ミジップ
1004 右げん
船尾から船首を見て船体の中心線より右側。
starboard
スターボード
1005 左げん
船尾から船首を見て船体の中心線より左側。
port
ポート
1006 船体
外板,甲板,隔壁,骨格などからなる船の胴体。
hull
船こく,
ハル
1007 船底
キールからチャイン又は湾曲部までの船の底の部分。 bottom
ボットム
1008 甲板
(かんぱん)
船体上部を構成する部分。
deck
デッキ,
甲板(こうは
ん)
1009 チャイン
平底船体の船底外板と船側外板との交線。
chine
1010 キール
船底中心部を縦通する部材(JIS F 0010参照)。
keel
竜骨
1011 トランサム
船体最後部の横強力材。ビーム,フロア,フレーム及び
パネルによって構成する。
transom
1012 上部構造物
甲板上の船室などの構造物。
superstructure
上構
1013 隔壁
船内の区画を形作る仕切壁(JIS F 0010参照)。
bulkhead
バルクヘッド
1014 水密隔壁
水又は海水が他の区画に漏れるのを止めるために設け
る隔壁。
watertight bulkhead
1015 ブリッジ
操だ室及び見張り所を設けた上部構造物。
bridge
船橋
1016 コックピット 機関,操だ機などの制御装置を配置し,ボートの操縦を
行う場所。
cockpit
1017 ポート
船首を左に向けるようにとる かじのとり方。
port
取舵(とりか
じ)
1018 スターボード 船首を右に向けるようにとる かじのとり方。
starboard
面舵(おもか
じ)
1019 正横
(せいおう)
船の中心線に直角な方向。
abeam
アビーム
(2) 寸法及び大きさ
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
2001 全長
船体の最前端から最後端までの長さ(JIS F 0011参照)。 length overall
L. O. A.
2002 垂線間長
船首垂線と船尾垂線との水平距離(JIS F 0011参照)。 length between
perpendiculars
L. p. p.
2003 水線長
喫水線上で測った船の前端から後端までの水平距離。 length water line
L. W L.
2004 登録長
上甲板下面で船首材前面から船尾垂線までの水平距離。 registered length
2005 全幅
(ぜんはば)
長さと直角方向に測った最広部の距離。
breadth
B
2006 型幅
船体最広部における両げんの外板内面間の水平距離
(JIS F 0011参照)。
moulded breadth
2007 水線幅
水線で測った最大幅。
water line breadth
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F 0045-1992
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
2008 型深さ
船体中央で,キール上面からげん側におけるデッキ下面
までの垂直距離。
moulded depth
D
2009 喫水
(きっすい)
船が浮いているときの船体最下面から水面までの垂直
距離。
draft,
draught
2010 総トン数
船の容積を表すトン数。
gross tonnage
グロストン
2011 純トン数
旅客又は貨物の運送に供する場所の大きさを表すトン
数。
net tonnage
2012 排水量
船体が排除する水の質量(JIS F 0011参照)。
displacement
2013 国際総トン数 “船舶のトン数の測度に関する国際条約”の規定に従い
算定されるトン数。
international gross
tonnage
2014 縦横比
縦と横の長さの比。
aspect ratio
2015 速長比
(そくちょうひ)
速度を長さの平方根で除した値。
speed length ratio
2016 フルード数
速度を水線長と重力加速度との積の平方根で除した値。 Froud number
2017 レイノルズ数 速度と長さの積を液体の動粘性係数で除した値。
Reynolds number
(3) 船形及び構造
(a) 船形
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
3001 排水量形
主として動的浮力によって船体を支えて走るのに向い
た船形。
displacement type
3002 滑走形
主として動的揚力によって船体を支えて走るのに向い
た船形。
planing type
3003 単胴形
一つの船体部分をもつ船。
monohull type
モノハル
3004 双胴形
左右に二つの船体部分をもつ船。
catamaran type
カタマラン
3005 三胴形
中央及びその左右に船体部分をもつ船。
trimaran type
トリマラン
3006 角形
断面形状が角ばった船形。
chine type,
knuckle type
3007 丸形
断面形状が丸みをもった船形。
round bilge type
3008 V形
船底断面形状がV字形の船形。
vee bottom
3009 波形
船底断面形状が波形をした船形。
wave bottom
オメガ型,
ベル型
3010 ディープV形 船底のV形形状が きつい船形。
deep vee bottom
3011 逆V形
逆V形の船底をもつ船形。
inverted vee bottom
シースレッド
型
3012 トンネル形
船底の中央部に くぼんだ部分をもつ船形。
tunnel bottom
3013 モノヘドロン
形
船底の傾斜が中央から船尾まで一定になっている船形。 monohedron hull
form
3014 ステップ形
滑走時の抵抗減少を図るとともに,縦安定を保つため,
船底に段差を設けた船形。
stepper type
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F 0045-1992
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(b) 構造
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語など
3101 単板構造
外板を1層だけ張った構造。
single plate
construction
single skin
3102 サンドイッチ
構造
中央に心材を配して,上下に強度の優れた板を接着した
複合構造。
sandwich
construction
3103 縦式構造
船体の主要フレームを縦方向に配列した構造。
longitudinal system
3104 横式構造
船体の主要フレームを横方向に配列した構造。
transverse system
(4) 区画及び居住区
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
4001 船室
船客及び船員が居住する区画。
cabin
キャビン
4002 機関室
推進用原動機及び補助機械を据え付けている区画。
engine room
4003 船倉
貨物などを積載する区画。
hold
4004 操だ室
操だ装置のある部屋。
備考 分かりにくい場合には,“操だ室”は“操だ
(舵)室”と示してもよい。
wheel house,
pilot house
4005 甲板室
上甲板上又は船楼甲板に設けた,船側から船側に達しな
い部屋。
deck house
4006 空所
特定の目的に使用しない区画。
cofferdam
4007 フライングブ
リッジ
ブリッジの上に設けられた簡易形の操だ席。
flying bridge
(5) 船の部分の名称
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
5001 基線
船体の諸寸法を表す場合の基準線。
base line
5002 垂線
基線に垂直に立てた線。
perpandiculars
5003 水線
基線に平行な線。
water line
5004 ステムライン 船首材前面の形状を表す線。
stem line
5005 シアー
甲板下面のげん側線の船首尾方向の反り(JIS F 0011参
照)。
sheer line
舷弧
5006 キャンバー
甲板の横方向の反り(JIS F 0011参照)。
camber
5007 デッドライズ 船底のこう配。
dead rise,
rise of floor
5008 船首材
船の最前端部を強固に構成し,これに外板を取り付ける
ための構造材。
stem
5009 外板
船体の外殻を形成する板。
shell
5010 ブルワーク
人や貨物が船外に落ちないように,又は波が打ち込まな
いように暴露甲板げん側に立てる囲い。
bulwark
5011 ストライプ
船底に付けられた縦方向の段。
stripe
5012 ビルジキール 船の動揺軽減の目的で船底湾曲部外側に取り付ける部
材。
bilge keel
(bilge board)
ビルジボード
5013 スケグ
キール下部又はかじ前端に付けられた三角形の方向安
定性をよくする部材。
skeg
5014 センタボード 横流れ防止及び重心を下げるために船底を突き抜けて
水中に出入り可能にした板。
center board
(dagger board)
ダガーボード
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F 0045-1992
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
5015 バラストキー
ル
セーリングボートの艇体下部に出っ張らして設けたキ
ール。
ballast keel
5016 フィンキール ひれのように船底から突き出ているセーリングボート
のキール。
fin keel
5017 トリムタブ
航走中の姿勢を調整するためにトランザム下部に設け
た板。
trim tab
5018 ビーム
甲板の下面に,ある間隔で横又は縦方向に配置する構造
材(JIS F 0010参照)。
beam
梁(はり)
5019 フレーム
外板の内側に横又は縦方向に配置する構造材(JIS F
0010参照)。
frame
肋骨(ろっこ
つ)
5020 縦通材
縦方向の加重に役立つよう配置してあって縦強度に役
立つ構造材。
longitudinal member
5021 ガーダ
縦通する大形の構造材(JIS F 0012参照)。
girder
桁(けた)
5022 特設ビーム
大形のビーム。
strong beam,
web beam
5023 特設フレーム 機関室,隔壁間隔が長い所に設ける,強力なフレーム。 web frame
5024 防とう材
平板の強度を増すために取り付ける板材や形材。
備考 分かりにくい場合には,“防とう材”は“防
とう(撓)材”と示してもよい。
stiffner
5025 機関台
機関を据え付けるための台。
engine bed
5026 床板
床を構成する板。
floor board
5027 縁材
(えんざい)
昇降口,コックピットなどを囲む仕切り。
coaming
5028 足止材
滑止めのために甲板の周囲などに取り付ける角材。
foot bar
5029 ハルライナー FRP船において,いす,床板などを一体成形して作った
もの。
備考 FRPとは,Fibreglass Reinforced Plasticsをい
う。
hull liner
5030 かじ
船の針路を保ったり方向を変えるために用いる板状の
もの。
rudder
5031 だ柱
かじを船体に取り付けるための柱。
rudder post
5032 船尾管
推進軸が船体を貫通する部分に設けられた管。
stern tube
5033 シューピース 船尾材の一部でかじの下端を支えるために船尾方向に
延長して設けた部分。
shoepiece
5034 張出し軸受
船底外板に設けた支持材で,推進軸を支持するために取
り付けた軸受。
shaft bracket bearing
(6) 構造材及び補強工作法
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
6001 ガラス繊維
ガラスを繊維化したものでFRP用の強化材。
glass fiber
6002 アラミド繊維 芳香族ポリアミドを繊維化したもの。
alamido fiber
6003 炭素繊維
有機繊維を炭化焼成して作った繊維。
carbon fiber
6004 手積み法
FRP成形法の一つで,人の手でガラス繊維基材を積層・
成形する方法。
hand lay-up method
6005 オーバーレイ
アップ
FRPで包み込むように重ね,積層すること。
over lay-up
6
F 0045-1992
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(7) 船の状態
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
7001 軽荷状態
船体,機関などに附属する設備及び法定備品からなる船
の状態。
light condition
7002 満載状態
乗員,積み荷,燃料などを満載している船の状態。
full loaded condition
7003 トリム
船体の縦方向の傾斜。
trim
7004 ヒール
船体の横方向の傾斜。
heel
7005 ローリング
船体の縦軸周りの揺動運動。
rolling
横揺れ
7006 ピッチング
船体の横軸周りの揺動運動。
pitching
縦揺れ
7007 ブローチング 船尾後方から波を受け,船が大きく傾斜する状態。
broaching
7008 パンチング
船首尾部に受ける波による局部的な衝撃。
panting
7009 スラミング
荒天航行中 波と船体運動との相対作用によって船首船
底部に受ける大きな衝撃。
slamming
7010 リーウェイ
風の作用によって船体が風下方向に流されること。
leeway
風圧差
7011 滑走状態
船が走ることによって生じる動的揚力によって船が滑
走する状態。
hydro planing
プレーニング
7012 ハンプ
波の干渉によって造波抵抗が著しく増大する抵抗曲線
上の山。
hump
7013 ホロー
波の干渉によって造波抵抗が減少する抵抗曲線上の谷。 hollow
(8) 復原力
番号
用語
定義
参考
対応英語
慣用語
8001 浮心
水面下の船体に作用する浮力の合力の作用点。
centre of buoyancy
8002 浮力
船体が排除する水の質量と等しく鉛直上向きに働く力。 buoyancy
8003 重心
船体を構成するすべての部分に働く重力の合力の作用
点。
centre of gravity
8004 浮面心
水線面の面積中心。
centre of flotation
8005 メタセンタ高
さ
船を小角度傾けたときの浮心の軌跡の曲率中心から船
の重心までの距離。
metacentre height
GH
8006 復原性
船が外力に抵抗して直立の姿勢を保とうとする性能
(JIS F 0011参照)。
stability
復原力
8007 復原てこ
復原偶力が作用する腕の長さ(JIS F 0011参照)。
righting arm
GZ
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F 0045-1992
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
船舶部会 舟艇専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
杉 崎 昭 生
東京商船大学運送工学科
小 郷 一 郎
財団法人日本船舶標準協会標準部
東 伊一郎
日本小型船舶検査機構技術部
高 橋 哲
社団法人日本舟艇工業会
玉 利 為 宇
財団法人マリーンスポーツ財団事業部
岡 田 光 豊
運輸省海上技術安全局
山 村 修 蔵
工業技術院標準部
太 田 治 孝
横浜ヨット株式会社設計部
山 本 啓 吉
ヤンマー造船株式会社技術部
伊 藤 仁
IHIクラフト株式会社技術部
大 橋 且 典
社団法人日本外洋帆走協会
小 林 昇
ヤマハ発動機株式会社マリン本部
中 村 正 和
中村船具工業株式会社
坪 井 勇
三信工業株式会社技術管理部
工 藤 慎 一
トーハツ株式会社技術部
栗 原 宏 一
日産自動車株式会社マリーン事業部
(事務局)
中 田 幹 夫
工業技術院標準部機械規格課