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E 4207

:2004

(1)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人日本鉄道

車輌工業会 (JARI) /財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべ

きとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,国土交通大臣が改正した日本工業規格である。

これによって,JIS E 4207:1992 は改正され,この規格に置き換えられる。

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。

JIS E 4207

には,次に示す附属書がある。

附属書(参考)溶接部の疲労強度の評価方法例


E 4207

:2004

目  次

ページ

1.

  適用範囲

1

2.

  引用規格

1

3.

  設計の共通的な条件の分類 

1

4.

  負荷荷重条件 

1

4.1

  静荷重条件 

1

4.2

  動荷重条件 

2

5.

  強度設計条件 

2

5.1

  応力計算 

2

5.2

  許容応力 

3

6.

  構造設計条件 

4

6.1

  形状及び材料 

4

6.2

  構造設計に考慮する事項 

4

6.3

  溶接継手の設計に関して考慮する事項 

5

7.

  剛性設計条件 

7

7.1

  曲げ剛性 

7

附属書(参考)溶接部の疲労強度の評価方法例

9

 


日本工業規格

JIS

 E

4207

:2004

鉄道車両−台車−台車枠設計通則

Truck frames for railway rolling stock

−General rules for design

1.

適用範囲  この規格は,鉄道車両(特殊鉄道用を除く。)に用いる台車枠(以下,台車枠という。)の

設計に対する共通的な条件について規定する。

なお,車体と台車枠との間にまくらばりを使用する台車には,まくらばりの設計にこの規格を適用する

ことができる。

備考  この規格は,ゴムタイヤなどを用いる特殊鉄道(例  無軌条電車,モノレール車両,中量軌道シ

ステム車両,磁気浮上車両など)に用いる台車枠には適用しないが,それらの車両の台車枠に

用いる材料の許容応力は,この規定を適用してもよい。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS G 3106

  溶接構造用圧延鋼材

JIS G 3114

  溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材

JIS G 5102

  溶接構造用鋳鋼品

JIS Z 2273

  金属材料の疲れ試験方法通則

3.

設計の共通的な条件の分類  設計の共通的な条件は,負荷荷重条件,強度設計条件,構造設計条件及

び剛性設計条件に分類し,次による。

a))

負荷荷重条件の分類  負荷荷重条件の分類は,静荷重及び動荷重とする。

b))

強度設計条件の分類  強度設計条件の分類は,応力計算及び許容応力とする。

c))

構造設計条件の分類  構造設計条件の分類は,形状及び材料,構造設計に考慮する事項並びに溶接継

手設計に考慮する事項とする。

d))

剛性設計条件の分類  剛性設計条件の分類は,曲げ剛性及びねじり剛性とする。

4.

負荷荷重条件

4.1

静荷重条件  静荷重条件は,車両が停止した状態で台車枠にかかる荷重(軸ばねが負担する荷重)

とし,式(1)による。

W = W

1

W

2

+W

3

 (1)

ここに,  W: 台車枠にかかる静荷重(N) 

W

1

: 1 台車が負担する車体の質量による荷重(N)

W

2

: 1 台車が負担する

表 の積載質量による荷重(N)

W

3

: 台車枠及び台車枠部品の質量による荷重(N)

なお,まくらばりに適用する場合は,式(2)による。


2

E 4207

:2004

W

B

 = W

1

W

2

+ W

B3

 (2)

ここに,  W

B

: まくらばりにかかる静荷重(N)

W

B3

: まくらばり及びまくらばり部品の質量による荷重(N)

  1  積載質量(

1

)

区分

摘要

旅客車

乗客(

2

)

,乗務員,水,燃料,砂,蓄電池,食料(食堂車)

,荷物(荷物車)

機関車

乗務員,水,燃料,砂,蓄電池,荷物

一般貨物車

貨物(

3

)

貨物車

タンク車

積載物(

4

)

注(

1

)

台車へ配分される積載質量が車両の中で不均等な場合は,大きい方の配分荷重を採用する。

(

2

)

定員質量の 1 倍から 3 倍までの間の質量

(

3

)

最大質量の 1.1 倍の質量

(

4

)

最大質量

4.2

動荷重条件  動荷重条件は,車両が走行している状態で台車枠にかかる荷重で,静荷重と付加係数

との積で表示する荷重と,取付け部品の特性で決まる荷重とがあり,その大きさは通常,

表 による。

なお,実際に適用する付加係数の大きさ及び部品の特性による荷重の大きさは,線路条件及び実際の車

両で発生すると予想される振動の大きさを考慮し,受渡当事者間の協議による。

5.

強度設計条件

備考  ここに用いる“平均応力”,“変動応力”,“片振り”などの用語は,JIS Z 2273 による。

5.1

応力計算  応力計算は,台車枠に静荷重及び動荷重をかけた場合の応力を,荷重の種類ごとに計算

し,平均応力及び変動応力に区分して合成する。応力の合成方法は,次による。

a) 

平均応力  平均応力は,静荷重の種類ごとに算出された複数の応力の代数和とする。ただし,片振り

となる動荷重がある場合の平均応力は,その荷重による応力の 1/2 を静荷重による応力に加えたもの

とする。

b)

変動応力  変動応力は,動荷重による応力を合成したものとし,式(3)による。

2

2

3

2

2

2

1

n

a

σ

σ

σ

σ

σ

・・・+

 (3)

ここに,

σ

a

: 変動応力 (MPa)

σ

1

 

σ

2

 

σ

3

・・・, 

σ

n

: 動荷重の種類ごとの計算応力 (MPa)

ただし,

ブレーキ装置受けに作用する荷重及びブレーキによる荷重押付け力による応力が発生する

部位は,

両者が同時に作用するため,当該応力成分の代数和と他の動的応力とを合成する方法とする。

なお,片振りとなる動荷重による応力は,その 1/2 の応力を用いて合成したものとし,式(4)による。

2

2

2

3

2

2

2

1

2

n

i

a

σ

σ

σ

σ

σ

σ

+・・・+

+・・・+

÷÷ø

ö

ççè

æ

 (4)

ここに,

σ

a

: 変動応力 (MPa)

σ

1

σ

2

σ

3

,・・・,

σ

n

: 動荷重の種類ごとの計算応力 (MPa)

σ

i

: 片振りとなる動荷重による計算応力 (MPa)


3

E 4207

:2004

  2  動荷重条件

区分

種類

荷重条件(

5

)

適用(例)

負担質量の振動による荷重

W

1

:(0.2∼0.5)×W(

6

) 

側ばり取付部品

W

2

:(1∼2)×L

p

(

7

)

ブレーキ部品

横ばり取付部品

W

3

:(3∼10)×L

p

(

7

)

主電動機,駆動装置

取付部品の質量
の振動による荷

端ばり取付部品

W

4

:(5∼10)×L

p

(

7

)

ブレーキ部品, 
排障器

駆動力によって駆動装置受けに作
用する荷重(

11

)

W

5

:(0.2∼0.4)×L

a

(

8

)

歯車箱つり受け 
減速機支え受け

ブレーキ力によってブレーキ装置
受けに作用する荷重

W

6

p(

9

)

×f(

10

)

ユニットブレーキ,ディ
スクブレーキ

上下動ダンパ受けに作用する荷重

W

7

:ダンパ特性による荷重

軸ばねダンパ

上下方向

アンチローリング装置受けに作用

する荷重

W

Z  8

:アンチローリング装置特性

による荷重

アンチ ローリ ング 装置

軸受け部

負担質量の振動による荷重及び遠

心力による荷重

W

1

:(0.2∼0.4)

×

W(

6

)  

左右動ストッパ受けに作用する荷

W

2

W

Y1

から空気ばねなどが負担

する分を減じた荷重

左右動ストッパゴム

取付部品の質量の振動による荷重

W

3

:(2∼4)×L

p

(

7

)

主電動機,ブレーキ部品

左右方向

左右動ダンパ受けに作用する荷重

W

4

:ダンパ特性による荷重

左右動ダンパ

負担質量の振動による荷重

W

 X 1

:(0.2∼0.4)

×

W(

6

)

けん引力による荷重

W

 X 2

:(0.2∼0.4)×L

a

(

8

)

取付部品の質量の振動による荷重

W

 X 3

:(1∼3)×L

p

(

7

)

主電動機,ブレーキ装置

前後方向

ブレーキによる荷重

W

 X 4

p(

9

)

ねじり

カント低減などによるねじり変位

1

台車の対角車輪位置で,水平に

対する変位を与える。

δ

T

:10∼15 mm

注(

5

)

荷重記号の添え字は,上下方向,左右方向及び前後方向でそれぞれ

Z

Y

及び

X

とする。

(

6

)

台車枠にかかる静荷重[式(1)又は式(2)による。

(

7

)

取付部品の質量による静荷重(質量×重力加速度)

(

8

)

軸重:台車に組込まれる輪軸一対から軌道(レール)にかかる荷重

(

9

)

制輪子押付力

(

10

)

制輪子と車輪踏面及び/又はブレーキライニングとブレーキディスクとの摩擦係数

(

11

)

具体的な荷重の大きさは,車輪とレールとの間の接線力を W

Z5

とした後,採用する駆動装置などの減速比,

支え位置などを考慮に入れて算出する。

備考  まくらばりに適用する場合は,を W

B

に置き換える。 

5.2

許容応力  許容応力は,図 の応力限界図の限界内とする。


4

E 4207

:2004

σ

B

:材料の引張強さ (MPa)

σ

o

:材料の降伏に対する許容応力 (MPa)

σ

w1

σ

w3

:疲れ許容応力 (MPa)

  1  応力限界図

主な材料の引張強さ(

σ

B

)

,降伏点  (

σ

s

)

及び疲れ許容応力  (

σ

w1

σ

3

)

は,

表 による。

  3  主な材料の引張強さ,降伏点及び疲れ許容応力

単位  MPa

材料の種類

SM400 SM490

項目

SMA400 SMA490

材料の引張強さ(

σ

B

) 400

490

材料の降伏点(

σ

s

)

235

355

材料の降伏に対する許容応力(

σ

o

) 205

305

材料(

σ

w1

) 135

155

仕上げない場合(

σ

w2

) 70

疲れ許容応力

溶 接 止
端部

仕上げる場合(

σ

w3

) 110

6.

構造設計条件

6.1

形状及び材料  形状及び材料は,次による。

a)

)

形状  台車枠の形状は,側ばり及び横ばりを主要部材として構成し,必要に応じて,端ばり,中ばり,

附属品取付座などを設ける。

b)

)

材料  材料は,通常,次による。

JIS G 3106

の SM400,SM490 又は SM520

JIS G 3114

の SMA400,SMA490 又は SMA520

JIS G 5102

の SCW410,SCW450 又は SCW480

6.2

構造設計に考慮する事項  台車枠の構造を設計するときに考慮する主な事項は,次による。

a)

)

車両限界

b)

)

ばね装置による変位  (ただし,変位は,上下変位,左右変位,前後変位,ピッチング変位,ローリ

ング変位及びヨーイング変位とする。

c)

)

曲線通過時の回転変位

d)

)

車輪及びレールの摩耗


5

E 4207

:2004

e)

)

定期検査に対する保守性

6.3

溶接継手の設計に関して考慮する事項  溶接継手設計に考慮する主な事項は,次による。

a)

)

溶接継手の形状に関して考慮する事項

1)

)

新しい溶接継手構造を採用する場合には,溶接施工性試験によって溶込み性を確認のうえ,継手形

状及び施工方法を選定する。

2)

)

主構造部材の溶接継手は両側溶接を基本とし,片側溶接の場合には,開先溶接とする。

3)

)

フレア溶接の場合は,溶込み量の確認ができるよう,開先形状を図面上指示する。

b)

)

溶接ビードの形状に関して考慮する事項

1)

)

高応力部の溶接継手は,過度の応力集中を生じないようにビード形状を考慮するとともに止端部を

グラインダなどによって仕上げる。その仕上げ範囲及びその形状は,図面などで指示する。

2)

)

部材の裏面に補強を溶接するとき,本体の溶接ビードと補強の溶接ビードとの間に溝状のノッチを

生じないように配慮する。

3)

)

台車枠に部材を溶接するとき,最大主応力に直交する方向の溶接はできるだけ避けるものとし,避

けられない場合には,応力集中を軽減するため溶接部をなだらかな形状にグラインダ仕上げする。

c)

)

溶接の施工方法に関して考慮する事項

1)

)

溶接される部材相互の板厚に大きな差があると,熱容量の違いから融合不良を起こすおそれがある

ので,板厚の大きい側は,こう(勾)配を付けて板厚を減じるなどの方法を採用するか,又は溶接

施工時の予熱などを指定する。

2)

)

部材の突合せ溶接部に永久裏当て金を用いる場合には,裏当て金を途中で分割してはならない。裏

当て金を分割して途中で継ぐ必要のあるときには,事前に裏当て金の継目部を完全に溶け込ませ,

部材の溶接部に高温溶接割れなどの切欠きを生じさせてはならない。

d)

)

溶接付加物の構造に関して考慮する事項

1)

)

台車枠に付加物を溶接する場合には,相対弾性変形の大きな部材間にまたがって付加物を溶接する

ことを避ける。

2)

)

台車枠に剛性の大きな部材を溶接する場合には,応力集中が生じやすくなるため,注意する。例え

ば,部品取付座などの付加物で構造体が大きく,かつ,剛性が大きい場合には,台車枠にあらかじ

め取付座を設け,付加物によって生じる応力集中の影響が小さくなるよう配慮する。

3)

)

台車枠の主部材が,座類の溶接で固められるような設計は避けなければならない。その際,台車枠

に溶接する座類は,溶接部が重ならない構造に設計する必要がある。

4)

)

台車枠に管受けなどの部材を溶接する場合には,次の部位への取付けは,極力避ける。

−  台車枠各部の主要溶接ビード上,特にグラインダ仕上げ部

−  側ばりの下面

−  台車枠各部の溶接ビードにかかる可能性のある部位

−  定期検査における保守作業のとき,台車枠を取り扱う作業者に対し損傷を与えるおそれのある部

e)

)

溶接部の強度評価方法に関して考慮する事項

1)

)

溶接部の疲労強度の評価方法  溶接部の疲労強度の評価は,部材の表側の溶接部だけでなく溶接ル

ート部及び部材の裏側に存在する溶接部についても行うことが望ましい。溶接部の疲労強度の評価

方法例は,

附属書に示す。

2)

)

管受け類溶接部の目安を与える公称応力限度線図(参考)  台車枠に溶接する管受け類は,あらか


6

E 4207

:2004

じめ供試体に施工して溶接部周辺の応力状態を評価することが望ましい。しかし,最近の研究成果

として,静荷重試験データの評価又は有限要素法 (FEM) による応力解析から得られる台車枠の公

称応力状態が明らかな場合には,供試体で評価していない場所に管受け類を取り付けるときの目安

として,その場所の公称応力状態に応じて溶接施工要領を区別する方法が実用化され始めているの

で,参考に,その方法を次に示す。

参考  管受け類溶接部の目安を与える公称応力限度線図の使い方

−  管受け類を取り付ける場所の台車枠部材の引張強さが 400 MPa である場合は

図 を,490 MPa

である場合は

図 を適用する。

−  公称応力は①,②,③の領域に区分する。

−  領域①は,

図 に規定されている溶接止端部耐久限度線図の領域を 1/2 に縮小した領域であ

る(ただし,引張強さについては縮小しない。

。この領域は,溶接後の止端部のグラインダ

仕上げは不要である。

−  領域②は,

図 に規定されている溶接止端グラインダ仕上げ部耐久限度線図の領域を 1/2 に

縮小した領域から,領域①を除いた領域である。この領域は,溶接後の止端部のグラインダ

仕上げが必要である。

−  領域③は,降伏点以下の領域で領域①及び領域②を除いた領域である。この領域には,管受

け類を溶接してはならない。

備考  台車枠に管受け類を溶接するとき,それぞれの領域ごとの溶接施工要領に従うことによって,

溶接止端部に発生する応力が

図 の応力限度線図を満足すると予測できる。

注(

12

)

この表示は

図 に規定する内容の再掲である。 

  2  管受け類溶接部の目安を与える公称応力限界線図(材料の引張強さが 400 MPa である場合)


7

E 4207

:2004

  3  管受け類溶接部の目安を与える公称応力限界線図(材料の引張強さが 490 MPa である場合)

7.

剛性設計条件

7.1

曲げ剛性  曲げ剛性の測定方法及び計算方法は,次による。

a)

)

上下曲げ剛性  上下曲げ剛性は,上下方向荷重をかけた場合,荷重点でのたわみから,式(5)による。

V

V

W

K

V

δ

=

 (5)

ここに,

K

v

上下曲げ剛性 (mm/MN)

W

v

図 の上下方向荷重 (MN)

δ

v

図 の上下方向たわみ (mm)

  4  上下曲げ剛性

b

)

左右曲げ剛性は,左右方向荷重をかけた場合,荷重点でのたわみから,式(6)による。

L

L

L

W

K

δ

2

=

 (6)

ここに,

K

L

左右曲げ剛性 (mm/MN)

W

L

図 の左右方向荷重 (MN)

δ

L

図 の左右方向たわみ (mm)


8

E 4207

:2004

  5  左右曲げ剛性

7.2 

ねじり剛性  ねじり剛性は,ねじり荷重をかけた場合,荷重点でのたわみから,式(7)による。

l

S

S

T

δ

K

=

 (7)

ここに,

K

T

ねじり剛性  [mm/(MN・mm)]

W

S

図 のねじり荷重 (MN)

l

図 の荷重点の間隔 (mm)

δ

S

図 のたわみ(表 

δ

T

を軸ばね位置へ換算した値)

(mm)

  6  ねじり剛性


9

E 4207

:2004

附属書(参考)溶接部の疲労強度の評価方法例

この

附属書は,台車枠の溶接部のうち溶接ルート部及び部材の裏面に存在する溶接部の疲労強度を,評

価する方法の例を記述するものであり,規定の一部ではない。

1.

台車枠溶接部の疲労強度の評価方法

1.1

疲労き裂発生部位  台車枠を構成する部材どうしを接合する溶接部に発生する疲労き裂の部位は,

一般的には次の 3 種類に区分され,

それぞれ

附属書図 及び附属書図 の中で代表的な位置を示している。

a)

)

部材の表面の溶接部:

附属書図 及び附属書図 の中で矢印“↓”で示している部分

b)

)

溶接ルート部:

附属書図 の中で○印で示している部分

c)

)

部材の裏面に存在する溶接部:

附属書図 の中で○印で示している部分

1.2

疲労強度の評価方法  これらの部位のうち,部材の表面の溶接部における疲労強度は,本体図 

応力限界図によって評価が可能である。しかし,溶接ルート部及び部材の裏面に存在する溶接部の強度評

価には,この方法は適用できない。そこで,溶接ルート部については破壊力学的手法,裏面に存在する溶

接部については社団法人日本鋼構造協会の疲労設計指針の応用による評価方法の例を,次に示す。

1.2.1

溶接ルート部の強度評価例  本来,溶接部は両面溶接とすることが望ましいが,台車枠においては,

裏当て金を使用しない片面開先溶接が多く使われている。この場合,完全溶込みを目指してもルート部に

は小さな溶込み不良(接合不良)は存在すると考えなくてはならない。この溶込み不良をき裂とみなして,

附属書図 の a)  図に示す片面開先溶接の代表的な荷重伝達形の 1)突合せ継手,2)T 字形継手及び 3)斜交形

継手について,破壊力学的手法を用いて強度評価を行う方法を,次に示す。

破壊力学のパラメータである応力拡大係数範囲

∆ K

は,次の式で表される。

a

F

K

π

σ

ここに,

∆ σ

溶接部近傍母材部の応力範囲(

1

)

F

c

補正係数

a

溶込み不良深さ(

2

)

                              注(

1

)

  溶接部近傍の母材部の応力測定位置は,附属書図 

                                    び

附属書図 の中に      で例示している。

                              (

2

)

a

の寸法の測り方は,

附属書図 及び附属書図 の中に

                                  示している。

この

∆ K

がき裂進展の応力拡大係数範囲の下限界値

∆ K

th

との間に次の関係が成立すれば,溶込み不良か

らはき裂は発生しないと判定できる。

)

MPa

2

4

(

m

.

th

∆K

∆K

=

F

c

は,破壊力学の文献に計算式が紹介されているが,台車枠の溶接継手に適合したものはほとんどない

ので,台車枠の主要部の溶接接合に用いられる突合せ形,

T

字形及び斜交形の継手形状について有限要素

 (FEM)

によって

F

c

を求めた結果の例を,

附属書図 に示す。


10

E 4207

:2004

附属書図  1  溶接部における疲労き裂発生部位の例(その 1)

附属書図  2  溶接部における疲労き裂発生部位の例(その 2)


11

E 4207

:2004

附属書図  3  補正係数 F

c

の計算結果例

附属書図 は,過去に損傷を起こした台車枠の側ばりと横ばりとの溶接部を評価した例を示したもので

ある。判定を容易に行えるよう

附属書図 

F

c

を用いて,

∆ K

∆ K

th

となるとき限界応力範囲

σ

th

a

との関係を求め評価を行った。

σ

は,実際には強度評価の対象とする溶接止端から

30 mm

程度離れ,負

荷の集中しやすい部材端部付近の母材部の応力測定値を採用した。

σ

の測定値の最大は

50 MPa

であった

ため,許容できる

a

は,限界応力範囲との交点から求まる

2 mm

強となる。実際に損傷を起こした台車の

a

3.5 mm

以上であり,この評価方法は,安全側(き裂発生に対して余裕をもつ。

)に評価できる。

附属書図  4  溶接ルート部の強度評価例

附属書図 は,溶込み不良のある多数の溶接試験片に対して,一定応力振幅下における疲労試験で繰返

し数

N

10

8

回まで行って得られた

∆ K

th

N

曲線である。この線図を用い,継手構造ごとに

∆ K

の算出式


12

E 4207

:2004

に基づいて

a

をパラメータとした

σ

th

N

との関係を示す曲線が得られる。この線図を用いれば,実際

の応力発生頻度分布をレインフロー法

(

3

)

によって計数し,使用期間中における各水準の応力範囲

σ

i

及び

その発生回数

N

i

の推定を行い,修正マイナー則

(

3

)

から累積損傷度

(

3

)

を計算して,応力発生回数を考慮した

評価を行うことができる。

(

3

)

レインフロー法,修正マイナー則,累積損傷度などの用語は強度解析の基礎的事項として,多

くの文献に掲載しているのでこの附属書ではその定義を例示しない。

附属書図  5

Δ

K

th

曲線

附属書図 は,過去に損傷の実績があり応力範囲ごとの発生回数が求められている例(

T

字形継手)で,

応力発生回数を考慮して評価した例を示す。これは,部材板厚

9 mm

の側ばりにおいて“当初,開先なし

のすみ肉溶接が施工され,溶込み不良範囲

a

が板厚に近い

8 mm

程度であったため溶接ルート部より多く

のき裂が発生した。この改善策として,その溶接部を開先溶接構造に改造し,超音波探傷などによって十

分な品質管理を行う対策が施された結果,

その後のき裂発生は皆無となった。

例である。

改造前を

a

8 mm

に設定すると測定されたほとんどの応力範囲

σ

m

で限界応力範囲

σ

th

を超過し,累積損傷度

D

は“

8.9

となり,基準の“

1

”を大きく超えていて,

“問題あり”と評価できる。一方,改造後の状態を標準の

a

2

mm

で評価すると,測定値はすべての応力範囲で

σ

th

下回っており,

D

は“

0.04

”となり,

1

”を下回る

ので“問題なし”と判断される。すなわち,この評価方法は,妥当な結果が得られると考えられる。

附属書図  6  発生回数を考慮した溶接ルート部の強度評価例


13

E 4207

:2004

1.2.2

裏面に存在する溶接部の強度評価例  台車枠の主要構成部材は,附属書図 の側ばりのように,主

構造部材の裏面には,内部補強の溶接部のような表側から見えない溶接部が存在し,このような溶接部に

は応力測定用ひずみゲージをはり付けることはできない。そこで,溶接ルート部の評価の場合と同様に,

部材表面の公称応力値から社団法人日本鋼構造協会の疲労設計指針を応用して強度を評価する方法を,次

に示す。

附属書図 は,この指針の中で示されている疲労設計線図で,橋りょう(梁)などの鋼構造物を対象と

して

1993

年に定められたものである。これらは,膨大な数の疲労試験結果に基づき各種継手に

A

F

の強

度等級を付与し,等級ごとに疲労設計曲線及び応力範囲の打切り限度

σ

ce

及び

σ

ve

が設定されている。

ここに用いる応力範囲は応力集中成分を含まない公称値である。

測定した応力範囲の最大値

(

4

)

σ

ce

を超過しなければ問題なしと判定するが,これを超過した場合に

は,

σ

の発生頻度分布をレインフロー法によって計数し,使用期間中における各水準の応力範囲

σ

i

その発生回数

N

I

の推定を行い,疲労設計曲線[

(

5

)

σ

ve

まで含める。

]を用いて修正マイナー則によって

累積損傷度を計算し,応力発生回数を考慮した評価を行う。

(

4

)

一定振幅応力範囲の打切り限界

(

5

)

変動振幅応力範囲の打切り限界

強度等級と許容応力範囲  (単位 MPa)

強度等級

σ

ce

  

σ

ve

A

          190           88

B

          155           72

C

          115           53

D

           84           39

E

           62            29

F                      46                      21

附属書図  7  日本鋼構造協会疲労設計指針の疲労設計曲線

この手法は,裏面溶接部に限らなくとも,溶接部近傍の平滑な母材部の応力(公称応力)を用いること

によって,a

)

に区分される部材の表面の溶接部にも適用が可能であり,応力発生回数を考慮した評価が行


14

E 4207

:2004

える。溶接継手の強度等級を台車枠に適用するときの例を,

附属書表 に示す。

附属書表  1  溶接継手の強度等級を台車枠に適用する場合の例

溶接継手の形式

溶接の種類

対象部位

溶接部のグライング仕上げ

(以下,G 仕上げという。

程度

強度等級

突合せ開先溶接

両面開先

溶接止端部

溶接のまま

G

仕上げ

D

,E

B

片面開先

溶接止端部

溶接のまま

G

仕上げ

E

B

裏当て金付きルート部

― F

T

字形溶接

両面開先

溶接止端部

溶接のまま

G

仕上げ:脚長 20 mm 以上

G

仕上げ:脚長指定なし

E

B

C

裏面すみ肉溶接止端部

溶接のまま

E

,F

片面開先

溶接止端部

溶接のまま

G

仕上げ:脚長 20 mm 以上

G

仕上げ:脚長指定なし

E

B

C

裏面すみ肉溶接止端部

溶接のまま

E

,F

裏当て金付きルート部

― F

両面すみ肉

溶接止端部

溶接のまま

E

,F

斜交形溶接

両面開先

溶接止端部

溶接のまま

G

仕上げ:脚長 20 mm 以上

G

仕上げ:脚長指定なし

E

,F

B

C

裏面すみ肉溶接止端部

溶接のまま F

片面開先

溶接止端部

溶接のまま

G

仕上げ:脚長 20 mm 以上

G

仕上げ:脚長指定なし

E

,F

B

C

裏当て金付きルート部

― F

一周重ね溶接

止端部

溶接のまま

E

,F

重ね溶接,栓及び 
スロット溶接

栓溶接,

スロット溶接

止端部

溶接のまま F

ルート部

F

又は,1.2.1

の 方 法 に よ
る。

備考  強度等級が“E,F”のように二つ表示してあるときは,溶接姿勢で区別して,強度等級の高いほう“E”

は下向き安定姿勢溶接を,低いほう“F”は不安定姿勢溶接に適用することを示す。 

附属書図 に,過去に損傷事例がある台車枠をこの方法を適用して評価した例を示す。これは,気動車

用台車の側ばり裏面に存在する溶接部を起点としてき裂が発生した例であり,この方法の評価では“

2

×

10

6

200

万)

km

走行にも耐えられない可能性あり”と判定された(実際,過去に

1.5

×

10

6

 km

走行したとき

に,長さ

100 mm

のき裂が発見された事例がある。


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E 4207

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附属書図  8  裏面溶接部の強度評価例

備考

ここに示した社団法人日本鋼構造協会の疲労設計曲線は,橋りょう(梁)などの鋼構造物を対

象として定められているもので,その分野における施工・品質管理などを考慮に入れた,たく

さんの疲労試験データをベースにしている。一方,鉄道車両用台車枠は,過去の事故例を反映

した施工・品質管理が行われていて,この方法を適用した幾つかの例を検討すると,最近採用

されている台車枠の構造では,

疲労設計線図は

附属書図 の一定振幅応力

σ

ce

で評価できる可

能性がある。しかし,これまでの評価サンプル数が少なく,台車枠用の疲労設計線図を定める

までのデータがそろっていない。

したがって,

附属書図 を適用する場合,採用する溶接継手によっては利用できる疲労設計

応力の範囲が狭い領域に限られる。このため台車枠部材のはり寸法の拡大,又は部材板厚の増

大が必要になり,台車枠質量が大幅に増加する可能性があるので,このことを受渡当事者間の

協議で事前に合意する必要がある。