D 9207 : 2000
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人日本規格協会 (JSA) /財団法人日
本車両検査協会 (VIA) から工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきと申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日本工業規格である。
日本工業規格
JIS
D
9207
: 2000
電動アシスト自転車−
一充電当たりの走行距離測定方法
Electric power assist bicycles
−
Test method of travelling distance per full charging
序文 電動アシスト自転車の性能を知る一つの手段として,シャシダイナモメータ上に設置した電動アシ
スト自転車のクランク部分を外部モータで駆動する模擬運転によって,一充電当たりの走行距離を測定す
る方法を確定するため,この規格を制定する。
1.
適用範囲 この規格は,完全充電したバッテリを搭載した二輪及び三輪の電動アシスト自転車におい
て,そのバッテリによってアシスト機能が持続する距離をシャシダイナモメータ上で測定する方法につい
て規定する。
2.
定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
a)
電動アシスト自転車(以下,アシスト車という。) 道路交通法施行規則第 1 条の 3 に規定する基準
に適合する駆動補助機付自転車。
b)
アシスト装置 駆動モータ及び減速装置等からなる駆動部,制御部,電源部等によって構成し,駆動
補助をするための装置。
c)
アシスト機能 正常に作動するアシスト装置によって,アシスト車がそれぞれに設定されたアシスト
比率を維持して走行する機能。
なお,アシスト比率は,次の式によって算出する。
α= (P
2
-P
1
) /P
1
ここに,
α: アシスト比率
P
1
:
クランクの回転入力 (W)
P
2
:
駆動輪の出力 (W)
d)
一充電当たりの走行距離 アシスト車に装備するバッテリを附属の充電器によって完全充電して,こ
れをアシスト車に用いてシャシダイナモメータ上で駆動したとき,アシスト機能が持続して走行でき
る距離。
e)
バッテリ アシスト車に標準装備する電源。
f)
シャシダイナモメータ 自転車の駆動輪(通常は後車輪)をローラ上に設置して駆動輪の回転をロー
ラに伝え,ローラ回転軸に伝わる駆動トルクとローラ回転数から,自転車の出力を測定する装置(
図
1
参照)
。
g)
等価慣性質量 アシスト車へ人員が乗って路上を走行するときに発生する慣性力を,シャシダイナモ
2
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メータ上で模擬するために必要な質量。この質量はシャシダイナモメータのローラに取り付けるフラ
イホイールによって調整する。
h)
外部モータ アシスト車に乗る人員の踏力の代わりに,アシスト車の外部からペダル,クランク,又
はクランク軸(以下,クランク部分という。
)を駆動するモータ。
3.
測定条件 測定条件は,次による。
a)
測定場所の周囲温度は,23±5℃とする。
b)
アシスト装置へ走行速度に相当する冷却風を前面から与える。
c)
測定開始前にタイヤ空気圧,チェーン張り等をアシスト車の製造業者の定めた値に調整する。
d)
測定に供するアシスト車のバッテリは,そのアシスト車に装備されたバッテリ又は同型式のバッテリ
を用い,附属する充電器によって完全充電する。充電時の周囲温度は 23±5℃とする。
4.
測定方法の種類 アシスト車の走行距離の測定方法は,2°登坂路連続走行及び 4°登坂路連続走行の
2
種類とする。速度及び変速装置を装備する場合の変速段の位置は,
表 1 による。
表 1 測定方法別の設定
測定方法の種類
速度 km/h
変速段の位置
2
°登坂路連続走行 10
中間段(
1
)
4
°登坂路連続走行
7
最小段
注(
1
)
最大段と最小段の間の中位段であって,最大段を2で除して
四捨五入した整数の段とする。
5.
測定装置
5.1
シャシダイナモメータ 測定に用いるシャシダイナモメータは,次の設定,操作及び運転を行う。
a)
シャシダイナモメータに設定する等価慣性質量は,測定に供するアシスト車の質量に 60kg(乗車人員
の体重を想定した質量)を加えた質量の値に応じて,
表 2 の標準値に設定する。
表 2 等価慣性質量の標準値
単位 kg
供試アシスト車の質量+60kg
等価慣性質量の標準値
68.76
∼71.25 70
71.26
∼73.75 72.5
73.76
∼76.25 75
76.26
∼78.75 77.5
78.76
∼81.25 80
81.26
∼83.75 82.5
83.76
∼86.25 85
86.26
∼88.75 87.5
88.76
∼91.25 90
91.26
∼93.75 92.5
93.76
∼96.25 95
96.26
∼98.75 97.5
98.76
∼101.25 100
101.26
∼103.75 102.5
103.76
∼106.25 105
106.26
∼108.75 107.5
3
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単位 kg
供試アシスト車の質量+60kg
等価慣性質量の標準値
108.76
∼111.25 110
111.26
∼113.75 112.5
113.76
∼116.25 115
116.26
∼118.75 117.5
118.76
∼121.25 120
b)
シャシダイナモメータ及びその附属装置は精度を確認したもので,シャシダイナモメータの製造業者
の定める取扱要領に基づいて点検,整備及び校正したものを用いる。
c)
測定前におけるシャシダイナモメータの暖機運転は,等価慣性質量を設定した後,15km/h で 30 分以
上行う。
d)
シャシダイナモメータからアシスト車駆動輪に加える走行抵抗は,式(1)によって算出する。
F
=R+0.027V
2
+9.8W
sin
θ
(1)
ここに,
F
:
走行抵抗 (N)
V
:
速度 (km/h)
W
:
等価慣性質量の標準値(kg)
θ
:
登坂角度 (°)
R
:
ころがり抵抗 (N) 。シャシダイナモメータのローラ上に
設置しない車輪 1 本当たりのころがり抵抗を 2.6 とする。
0.027
:
空気抵抗係数 [N/ (km/h)
2
]
5.2
外部モータ アシスト車を駆動する外部モータは,回転数を任意に制御できるものであって,その
回転数や出力を監視する装置を備える。
図 1 シャシダイナモメータの概念図
6.
測定 測定は,次の順序によって行う。
a)
シャシダイナモメータ上に,試験に供するアシスト車を設置する。
b)
サドル上に 60kg の重りを載せる。
c)
測定方法の種類に応じて
表 1 に示すアシスト車の変速段の位置を設定し,式(1)に定められた試験条件
4
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に合致するようシャシダイナモメータの走行抵抗を設定する。
d)
アシスト車のクランク部分を外部モータによって駆動し,測定方法の種類に応じて
表 1 で示すローラ
の表面速度を発生させる。このときのクランク部分の回転には,設定速度に対して±2%の速度変動(
2
)
を与える。
注(
2
)
図2のように正弦波形の振幅の速度変動とし,周波数はクランク軸が半回転する時間 (s) の逆数
とする。
図 2 設定速度に対する±2%の速度変動
e)
アシスト車のクランク部分が回転を開始してからアシスト機能が停止(
3
)
するまでのアシスト車の走行
距離を測定する。
なお,測定距離は km で表し,小数点以下第二位で四捨五入する。
注(
3
)
アシスト機能の停止は,アシスト車が走行していても駆動モータヘの電流が遮断されて,駆動
補助ができなくなった場合をいう。
7.
走行記録及び測定成績書 測定の記録は,次の示す内容を含んだ測定成績書によって記録することが
望ましい。
5
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図3 測定成績書(例)
6
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電動アシスト自転車−一充電当たりの走行距離測定方法
原案調査作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
大 矢 多喜雄
明治大学理工学部
(副委員長)
河 治 宏 泰
財団法人自転車産業振興協会技術研究所
瀬 戸 比呂志
通商産業省機械情報産業局
宮 崎 正 浩
工業技術院標準部
矢 代 隆 義
警察庁交通局
国 谷 安 三
財団法人日本交通管理技術協会
橋 本 進
財団法人日本規格協会
長久保 徹
製品安全協会
金 井 孝
国民生活センター
伊 藤 文 一
財団法人日本消費者協会
芦 原 安 史
ヤマハ発動機株式会社
福 田 隆
本田技研工業株式会社
吉 田 捷 二
ナショナル自転車工業株式会社
田 中 建 明
三洋電機株式会社
電動アシスト自転車−一充電当たりの走行距離測定方法
原案調査作成委員会構成表
氏名
所属
(分科会長)
河 治 宏 泰
財団法人自転車産業振興協会技術研究所
(副分科会長)
田 中 建 明
三洋電機株式会社
内 藤 智 雄
工業技術院標準部
長久保 徹
製品安全協会
芦 原 安 史
ヤマハ発動機株式会社
岩 館 徹
株式会社本田技術研究所
吉 田 捷 二
ナショナル自転車工業株式会社
(事務局)
川 島 敏 輝
財団法人日本車両検査協会
川 口 豊 勝
社団法人日本自転車協会