D 9201 : 2001
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人自転車産
業振興協会 (JBPI) /社団法人自転車協会 [BA (J)] /財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を
具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改
正した日本工業規格である。これによって,JIS D 9201 : 1997 は改正され,この規格に置き換えられる。
改正に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 4210 : 1996 Cycles−Safety
requirements for bicycles
を基礎として用いた。
JIS D 9201
には,次に示す附属書がある。
附属書(参考) JIS と対応する国際規格との対比表
日本工業規格
JIS
D
9201
: 2001
自転車−制動試験方法
Bicycles
−Method of braking test
序文 この規格は,1996 年に第 4 版として発行された ISO 4210, Cycles−Safety requirements for bicycles を
元に,対応する部分(制動試験方法)については対応国際規格を翻訳し,技術的内容を変更することなく
作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規定されていない規定項目を日本工業規格として追加
している。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にない事項である。
1.
適用範囲 この規格は,JIS D 9111 に規定する一般用自転車の制動試験方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21 に基づき,IDT(一致している)
,MOD(修
正している)
,NEQ(同等でない)とする。
ISO 4210 : 1996, Cycles
−Safety requirements for bicycles (MOD)
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS D 9111
自転車−分類及び諸元
JIS D 9112
自転車用タイヤ−諸元
JIS D 9301
一般用自転車
3.
試験走路 試験走路は,次による。
なお,試験走路には,速度の測定用として誤差が 2%以下になるように校正された計時装置を備え,必
要に応じ助走用傾斜台,傾斜路などを併設する。
a)
試験走路の路面 試験走路は,じんあい(塵挨)又は砂利がない,乾燥したコンクリート又はアスフ
ァルトの平たんな舗装路面で,供試車のタイヤとの摩擦係数は,0.5 以上でなければならない。
なお,水ぬれ時の制動試験においては,路面上の水を適宜ふき取るなどして一定の路面状態の保持
に努めなければならない。
b)
試験走路のこう(勾)配 試験走路の走行方向のこう配は,0.5%以下とする。
4.
試験装置の装備
4.1
速度計又は回転数計 JIS D 9301 の 5.2.5(制動性能)で規定する走行速度(以下,規定走行速度と
いう。
)で,誤差が±5%以内になるように校正された速度計又は回転数計を,供試車又は併走車に備える。
4.2
速度記録装置 制動開始時の速度を記録する速度記録装置の精度は,±2%以内でなければならない。
2
D 9201 : 2001
4.3
距離記録装置 制動距離を記録する距離記録計の精度は,±1%以内でなければならない。
4.4
水ぬれ装置 水ぬれ時の制動試験においては,各ノズルから 4ml/s 以上の放水が同時に行える水ぬれ
装置を供試車に備える。水ぬれ装置は,配管によって前車輪制動部の一対のノズル,及び後車輪制動部の
一対のノズル,並びに各ノズルに接続される貯水装置及び噴水量を制御するための開閉弁から構成する。
また,放出される水の温度は,周囲温度とする。
なお,ノズルは,ブレーキの種類によって
付図 1〜付図 6 に示す位置に取り付ける。
5.
供試車
5.1
供試車の調整 供試車は,各部の調整点検を十分に行い,試験用積載機器,調整重りなどの取付け
が安全確実でなければならない。
なお,タイヤ空気圧は,表示空気圧(範囲で示されている場合には,その最大値。
)とする。ただし,表
示がないものは,JIS D 9112 の標準空気圧による。
5.2
ブレーキ操作力 試験におけるブレーキ操作力は,次による。
a)
手動ブレーキ 手動ブレーキ付き供試車のブレーキ操作力は,前後とも 180N 以下で,ブレーキレバ
ー端からほぼ 25mm の位置に加え,一連の試験走行の前後に確認する。
なお,ブレーキレバーの操作を手動ではなく,任意の装置によって行う場合は,ブレーキ操作力の
63%
に達するまで,0.2 秒以下にならないように調節しなくてはならない。
b)
コースターハブ コースターハブ付き供試車については,ペダル踏力を制限しない。
6.
供試車への負荷 供試車への負荷は,自転車の質量,乗員体重,試験用積載機器及び調整重りの質量
との合計で 100±1kg とする。
ただし,
製造業者が指定する適応乗員の体重
(範囲で示されている場合には,
その最大値。
)と,自転車の質量との合計が 100kg を超える場合には,自転車の質量,適応乗員体重,試験
用積載機器の質量との合計±1%とする。
7.
試験 乾燥時及び水ぬれ時の制動試験は,次によって行う。図 1 に乾燥時及び水ねれ時の試験方法の
概念図を示す。
3
D 9201 : 2001
図 1 乾燥時及び水ぬれ時の試験方法
a)
試験時の風速 試験は,走路上の風速が 3m/s 以下のときに行う。
b)
試験走行回数 試験走行回数は,表 1 による。
c)
試験走行の方向 試験走路のこう配が 0.2%未満の場合にはすべて同方向,こう配が 0.2%以上,0.5%
以下の場合には,交互に反対方向に走行する。
表 1 試験走行回数
試験走路のこう配
走行条件
0.2%
未満 0.2%以上 0.5%以下
乾燥時
連続有効走行
5
回
6
回(往復 3 回)
ならし走行(
1
)
2
回
水ぬれ時
連続有効走行
5
回
6
回(往復 3 回)
注(
1
)
連続有効走行に先立って行う。
備考 各走行回の間には,3 分以内の休止時間をとることができる。
d)
初速度の測定 試験走路上に初速度を測定するための計時地点 e,f を設定し,e,f 間の距離(以下,
計時区間という。
)A を供試車が通過するのに要した時間を測定して初速度を求める。計時区間 A は,
計時方法によって適切な距離を取る。
e)
制動開始区間 制動開始区間 B は,計時地点 f から 2m の間とし,あらかじめ路面に表示しておいて
もよい。
f)
走行及び制動 供試車の規定走行速度を維持しつつ,計時地点 f に達する前にペダル駆動を休止して,
制動開始区間 B 内で,5.2 で規定するブレーキ操作力を加え制動を行う。
g)
放水の開始及び停止 計時地点 f の 25m 前を放水開始制限地点 g とし,この地点 g から自転車が停止
4
D 9201 : 2001
するまでを放水区間 D として,水ぬれ時の試験は,自転車が地点 g に達する前に放水を開始し,停止
するまで放水を継続する。
h)
制動距離の測定 試験走路上に記された制動開始地点と停止地点との直線距離を測定して制動距離
(測定制動距離という。
)とする。
8.
制動距離の補正 測定した制動距離は,次の式によって補正する(補正制動距離という。)。
( )
2
1
2
1
V
V
L
L
=
ここに,
L
2
: 補正制動距離 (m)
L
1
: 測定制動距離 (m)
V
: 規定走行速度 (km/h)
V
1
: 測定初速度 (km/h)
9.
試験走行の有効性 試験走行の有効性は,次による。
a)
試験走行は,次の場合には無効とする。
1)
過度の横滑りがあった場合。
2)
制御を失った場合。
b)
補正制動距離が JIS D 9301 の 5.2.5(制動性能)で規定する制動距離(以下,規定制動距離という。
)
を超えたとき,次の場合の試験走行は無効とする。
1)
測定した初速度が規定走行速度より 1.5km/h 超過した速度の場合。
2)
前ブレーキが後ブレーキより遅れて作動した場合。
3)
前ブレーキの作動開始地点と後ブレーキの作動開始地点との距離が,1m を超えた場合。
c)
補正制動距離が規定制動距離より短いとき,次の場合の試験走行は無効とする。
1)
測定した初速度が,規定走行速度より 1.5km/h 不足した速度の場合。
2)
後ブレーキの作動開始地点が制動開始制限地点を超えた場合。
10.
試験成績 制動試験の結果は,一般的に次の項目について試験成績表に記録する。
a)
試験の区分(乾燥時,水ぬれ時の区別)
b)
試験の日時,天候,気温,風向き,風速
c)
試験場所,試験走路の路面状況及びこう配
d)
試験実施者(測定者)氏名
e)
供試車の車種,ブレーキの種類
f)
前車輪・後車輪のタイヤ空気圧
g)
ブレーキ操作力
h)
試験走行回数
i)
試験走行の有効性
j)
質量に関する事項
1)
供試車質量
2)
試験乗員体重
3)
試験用積載機器質量
5
D 9201 : 2001
4)
調整重り質量
5)
試験乗員,試験用積載機器及び調整重りの質量合計 [2)+3)+4)]
6)
供試車総質量 [1)+5)]
k)
速度に関する事項
1)
規定走行速度
2)
測定した初速度
3)
規定走行速度と測定した初速度との差
l)
制動距離
1)
規定制動距離
2)
測定制動距離
3)
補正制動距離
4)
平均補正制動距離
m)
制動時の状況及び所見
備考 前リムブレーキのノズル位置も,ほぼ同様とする。
付図 1 前キャリパブレーキのノズル位置
6
D 9201 : 2001
付図 2 後キャリパブレーキのノズル位置
付図 3 内拡ブレーキのノズル位置
7
D 9201 : 2001
付図 4 バンドブレーキのノズル位置
付図 5 ディスクブレーキのノズル位置
8
D 9201 : 2001
備考 注水ノズルは,ハブの両側のすきまに向ける。
付図 6 コースタハブのノズル位置
9
D 9201 : 2001
附属書(参考) JIS と対応する国際規格との対比表
JIS D 9201 : 2001
自転車−制動試験方法
ISO 4210 : 1996
Cycles−Safety requirements for bicycles
(I)JIS
の規定 (III)国際規格の規定 (IV)JIS と国際規格との技
術的差異 の項目 ごとの評
価及びその内容
表示箇所:
表示方法:
項目番号
内容
(II)
国際
規格
番号
項目番号
内容
項 目 ご と
の評価
技術的差異の内
容
(V)JIS
と国際規
格との技術的差
異の理由及び今
後の対策
1.
適用範囲
一般用自転車の制動試
験方法
ISO
4210
1.1
自転車の安
全要件
MOD
/変
更
JIS
では制動試
験方法だけを規
定している。
JIS
では安全要
件の内,制動試
験方法を適用範
囲にしている。
2.
引用規格
JIS D 9111
JIS D 9112
JIS D 9301
同上 1.2
ISO 5775-1,
-2
ISO 6742-1,
-2
外
MOD
/追
加
JIS
では関係す
る JIS を追加し
ている。
JIS
では適用範
囲に応じ関係す
る JIS を引用し
ている。
3.
試験走路
測定誤差,2%以下の計
時装置,傾斜台,傾斜
路
同上 4.3.2
規定なし MOD/追
加
JIS
では計時装
置などを追加し
ている。
JIS
では試験に
必要な装置等を
規定している。
a)
試 験 走 路 の
路面
コンクリート又はアス
ファルトの平坦舗装路
面,タイヤとの摩擦係
数 0.5 以上
同上 4.3.2.3
JIS
と同じ IDT
b)
試験走路の
こう配
走 行 方 向 の こ う 配
0.5%
以上
同上 4.3.2.2
JIS
と同じ IDT
4.
試 験 装 置 の
装備
4.1
速度計又は
回転数計
速度誤差±5%の速度
計又は回転数計
同上 4.3.3.1
JIS
と同じ IDT
4.2
速 度 記 録
装置
精度±2%
同上 4.3.3.2
JIS
と同じ IDT
4.3
距 離 記 録
装置
精度±1%
同上 4.3.3.3
JIS
と同じ IDT
4.4
水 ぬ れ 装
置
放水量 4ml/s,前後制動
部に各一対のノズル,
貯水装置,開閉弁で構
成
同上 4.3.3.4
JIS
と同じ IDT
5.
供試車
5.1
供 試 車 の
調整
各部の点検調整実施,
機 器 等 取 付 が 安 全 確
実,タイヤの空気圧(表
示がない場合は標準空
気圧)
同上 4.3.1
荷重 試験 実
施後実施,ブ
レー キ位 置
の再調整,試
験タ イヤ の
空気圧
MOD
/変
更
JIS
では荷重試
験は行わない。
また,ブレーキ
位置,空気圧以
外の項目を追加
している。
JIS
では適切な
試験が行えるよ
う変更して規定
している。
10
D 9201 : 2001
JIS D 9201 : 2001
自転車−制動試験方法
ISO 4210 : 1996
Cycles−Safety requirements for bicycles
(I)JIS
の規定 (III)国際規格の規定 (IV)JIS と国際規格との技
術的差異 の項目 ごとの評
価及びその内容
表示箇所:
表示方法:
項目番号
内容
(II)
国際
規格
番号
項目番号
内容
項 目 ご と
の評価
技術的差異の内
容
(V)JIS
と国際規
格との技術的差
異の理由及び今
後の対策
5.2
ブ レ ー キ
操作力
a)
手 動 ブ レ ー
キ
操作力 180N 以下
装置による場合は,操
作力の 63%になるまで
に 0.2 秒以上
同上 4.3.5.1 ,
4.3.5.2
JIS
と同じ IDT
b)
コースター
ハブ
ペダル踏力を制限しな
い
ISO
4210
4.3.5.3
JIS
と同じ IDT
6.
供 試 車 へ の
負荷
100
±1kg
同上 4.3.4
JIS
と同じ IDT
7.
試験
a)
風速 3m/s 以下
同上 4.3.2.5
JIS
と同じ IDT
b)
走行回数
勾配 0.2%未満:5 回
勾配 0.2%以上 0.5%
以下:6 回(往復 3 回)
同上 4.3.6.3
JIS
と同じ IDT
c)
走行方向
勾配 0.2%未満:同方向
勾配 0.2%以上 0.5%
以下:交互方向
同上 4.3.2.2
JIS
と同じ IDT
d)
初速度の測
定
計時区間を設定し初速
度を測定
同上
規定なし MOD/追
加
JIS
では追加し
ている。
JIS
では制動距
離の補正,試験
の有効性の確認
に必要なため規
定している。
e)
制 動 開 始 区
間
計時地点から 2m の区
間
同上
規定なし MOD/追
加
JIS
では追加し
ている。
JIS
では試験の
有効性を確保す
るため規定して
いる。
f)
走 行 及 び 制
動
規 定 走 行 速 度 を 維 持
し,制動区間内でブレ
ーキ操作し制動
同上 4.3.6.1
4.3.6.2
JIS
と同じ IDT
g)
放水の開始及
び停止
放水は計時地点の 25m
前から停止地点まで継
続
同上 4.3.6.2
JIS
と同じ IDT
h)
制動距離の
測定
制動開始地点から停止
地点の直線距離
同上 1.3.6
JIS
と同じ IDT
8.
制 動 距 離 の
補正
測定制動距離の補正方
法を規定
同上 4.3.7
JIS
と同じ IDT
9.
試験走行の有
効性
無効とする場合の条件
を規定
同上 4.3.8
JIS
と同じ IDT
11
D 9201 : 2001
JIS D 9201 : 2001
自転車−制動試験方法
ISO 4210 : 1996
Cycles−Safety requirements for bicycles
(I)JIS
の規定 (III)国際規格の規定 (IV)JIS と国際規格との技
術的差異 の項目 ごとの評
価及びその内容
表示箇所:
表示方法:
項目番号
内容
(II)
国際
規格
番号
項目番号
内容
項 目 ご と
の評価
技術的差異の内
容
(V)JIS
と国際規
格との技術的差
異の理由及び今
後の対策
10.
試験記録
記録すべき項目を規定 同上 4.3.9
補正制動距
離の平均値
MOD
/追
加
JIS
では補正制
動距離の平均値
以外の項目を追
加している。
JIS
では試験の
実施状況を明確
にするため記録
項目を追加規定
している。
JIS
と国際規格との対応の程度の全体評価:MOD
備考1. 項目ごとの評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
− IDT……………… 技術的差異がない。
− MOD/削除……… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− MOD/追加……… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− MOD/変更……… 国際規格の規定内容を変更している。
− MOD/選択……… 国際規格の規定内容と別の選択肢がある。
− NEQ……………… 技術的差異があり,かつ,それがはっきりと識別されていない。
2. JIS
と国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
− IDT……………… 国際規格と一致している。
− MOD…………… 国際規格を修正している。
− NEQ……………… 技術的内容及び構成において,国際規格と同等でない。
JIS D 9201
原案改正委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
大 矢 多喜雄
明治大学名誉教授
(委員)
川 島 敏 輝
財団法人日本車両検査協会
矢 代 隆 義
警察庁交通局
瀬 戸 比呂志
通商産業省機械情報産業局
橋 本 進
財団法人日本規格協会
金 井 孝
国民生活センター
伊 藤 文 一
財団法人日本消費者協会
長久保 徹
製品安全協会
○
高 木 郁 夫
ブリヂストンサイクル株式会社
○
板 野 正
丸石自転車株式会社
○
早 川 寿三夫
ホダカ株式会社
△
遠 山 和 廣
宮田工業株式会社
△
加 島 哲 雄
株式会社加島サドル製作所
△
増 尾 健
株式会社シマノ
△
清 水 浩 次
株式会社扇工業
○
横 山 克 義
財団法人自転車産業振興協会
河 治 宏 泰
財団法人自転車産業振興協会技術研究所
(事務局)
山 田 玄 一
財団法人自転車産業振興協会
川 口 豊 勝
社団法人日本自転車協会
備考 ○は分科会委員も兼ねる。
△は分科会委員。