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日本工業規格          JIS 

 

D 4610-1993 

 

乗用車用シート及び 

シート取付装置−強度 

Seats and seat anchorages for passenger cars−Strength 

 

 

1. 適用範囲 この規格は,乗用車のシート及びシート取付装置の強度について規定する。ただし,横向

きシート,通路・荷台など専らシート以外の目的に使われる床面に設ける折り畳み式シート,及び運行前

点検する場合に取外しを必要とするシートには適用しない。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS D 0024 自動車におけるH点の決め方 

JIS D 4609 乗用車のシートベルトの取付け及び車体強度 

 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。 

(1) シート 乗車する者が着座するための装置。附属装置も含む。 

(2) シートフレーム シートの骨格となる金属又は硬質部分の組立品。 

(3) シートアジャスタ 乗員の着座姿勢に合わせて,シート及びシートの一部を調節する装置。機能とし

ては,前後,上下,角度,回転などの位置調節がある。 

(4) シートロック装置 シート及びシートの一部を使用位置に保持するための装置。一般にシートアジャ

スタに組み込まれる。 

(5) シート解錠装置 中間固定位置をもたないシートロックの解除装置。シート後方への乗降などの便宜

上設けられる。 

(6) シート取付装置 シートを車体に固定するための装置。車体側の取付部を含む。 

(7) ヘッドレストレイント 自動車が主として追突を受けた際,乗員の頭部の後傾を抑止して,けい部の

損傷を防止又は軽減するための装置。 

(8) シート総質量 シートの全質量。ただし,シートクッションとシートバックが別々に車体に取り付け

られるものでは,各々を測定し,それらの合計値とする。 

(9) シート重心 調節式ヘッドレストレイントは設計上の最高位置に,その他の調節装置は設計基準位置

に調節して測定したシートの重心。ただし,シートクッションとシートバックが別々に車体へ取り付

けられるものでは,各々を測定する。 

(10) 設計基準位置 シートアジャスタの調節位置及び着座位置に対し,設計者が設定した基準となる位置。 

(11) R点 JIS D 0024に規定する成人男子の50パーセンタイル3次元マネキンのH点(胴部と大たい部

の回転中心点)に相当する,シート上に設定した設計基準点。ただし,前後位置が調節できるシート

は,設計上の最後端位置にし,シートバックの角度が調節できるものは,設計基準位置,又は3次元

マネキンのトルソライン(胴体の傾斜を表す線)ができるだけ鉛直から25度に近くなるような位置と


D 4610-1993  

し,その他の調節機構は,設計基準位置に調節する。 

(12) 座位中心面 (11)における3次元マネキンの左右の中心面に相当する,シート上に設定した設計基準

面。 

(13) バックパン 3次元マネキンによって設定される人体胴体の背面模型加圧具。 

(14) 前向き,後向き シートに着座した乗員を基準とする前後の向きを指す。 

 

3. 性能 5.に示す各方法で試験したとき,シートは,次の性能をもつものとする。 

(1) シート及びシート取付装置は,試験負荷に耐えること。 

(2) シートロック装置は,試験中シートを使用位置に保持できること。 

(3) シート解錠装置は,試験中解除しないこと。 

 

4. 構造 シートの構造は,次による。 

(1) シートは,乗員の繰返しの加圧に対して十分耐える強度をもつこと。 

(2) シートアジャスタ,シートロック装置及びシート解錠装置は,操作が円滑・容易にでき,シートロッ

ク装置は操作後,確実にその位置を保持するような構造をもつこと。 

 

5. 試験方法 

5.1 

シートの一般条件 試験をするシートの一般条件は,次による。 

(1) 負荷又は強度に関係しないものは取り除いてもよい。 

また,目的の部位の強度に影響を及ぼさない補強はしてもよい。 

(2) シートは,原則として車体上に取り付けて固定する。ただし,車体側のシート取付装置が試験目的で

ない場合は,車体と同じ取付位置になるように製作されたジグに取り付けてもよい。 

(3) シートアジャスタの調節位置は,特に規定がない場合は設計基準位置とする。 

(4) 高さが調節可能なヘッドレストレイントは設計上の最高位置とし,その他の調節装置は設計基準位置

に調節する。 

5.2 

慣性力負荷によるシート取付強度試験 

5.2.1 

試験の実施 試験は,動的試験 (5.2.2) 又は静的試験 (5.2.3) のいずれかによって行う。ただし,

シートベルトの取付部がシートに取り付けられている場合の5.2.3の前向き試験では,JIS D 4609に規定す

るシートベルト取付部の試験荷重を同時に加える。 

また,シートが前後又は上下の調節機構をもつ場合には,シートを次の位置に調節する。 

(1) 前向き負荷の場合 前後方向は設計上の最前端位置又は最前端から1ノッチ後,上下方向は設計上の

最上端位置とする。 

(2) 後向き負荷の場合 前後方向は設計上の最後端位置又は最後端から1ノッチ前,上下方向は設計上の

最下端位置とする。 

なお,前向き負荷及び後向き負荷に使用するシートは,別々又は同一のいずれであってもよい。 

5.2.2 

動的試験 動的試験は,次による。 

(1) 所定の向きに慣性力が加わるように,シートを加速装置に取り付ける。 

(2) 水平前向き及び水平後向きに196m/s2の加速度が,少なくとも30ms作用するように,加速度を個別に

加える。 

(3) 試験後のシート取付装置及びシートロック装置の破壊の有無を調べる。 


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5.2.3 

静的試験 静的試験は,次による。 

(1) シート総質量及び重心位置を測定する。 

(2) (1)の重心位置を通り,車両の縦中心面と平行な線上の任意の点に,水平に負荷がかけられるようにす

る。 

また,目的の部位以外の箇所が過負荷になる場合は,例えば,図1に示すように負荷用部材を取り

付けてもよい。 

(3) シート重心位置に水平前向き及び後向きに,シート総質量×gnの20倍の大きさの力を個別に加える。 

備考 gn(重力の標準加速度)=9.806 65m/s2 

(4) 試験後のシート取付装置及びシートロック装置の破壊の有無を調べる。 

図1 慣性力負荷によるシート取付強度試験(後向き負荷の場合) 

 

5.3 

モーメント負荷によるシート強度試験 

5.3.1 

試験の実施 試験は,集中荷重による負荷 (5.3.2) 又はバックパンによる負荷 (5.3.3) のいずれか

によって行う。 

5.3.2 

集中荷重による負荷 集中荷重による負荷の場合の試験は,次による。 

(1) シートを設計上の最後端位置に調節する。 

(2) R点を定める。 

(3) R点周りのモーメントMが乗員1人に付き373N・mになるように,水平後向きの力Pをシートバック

上部クロスメンバの各座位中心面上に,乗員数だけ加える(図2参照)。ただし,R点から高さ600mm

以下に上部クロスメンバがない場合は,高さ450mm以上の位置に堅固な負荷用部材を付け,それに

負荷してもよい。上部クロスメンバが弱い場合には,局部的な過負荷による座屈を防ぐため,その上

に負荷用部材を付けて試験してもよい。 

なお,荷重は,乗員数に比例した一つ又は二つの集中荷重に置き換えてもよい。 

(4) 試験後のシートフレーム,シートロック装置及びシート取付装置の破壊の有無を調べる。 

図2 モーメント負荷によるシート強度試験 

 

5.3.3 

バックパンによる負荷 バックパンによる負荷の場合の試験は,次による。 


D 4610-1993  

(1) シートを設計上の最後端位置に調節する。 

(2) R点を定める。 

(3) 乗員数のバックパンについてH点をR点に一致させ,R点周りのモーメントがそれぞれ530N・mにな

るように,後向きの力をバックパンに加える。 

(4) 試験後のシートフレーム,シートロック装置及びシート取付装置の破壊の有無を調べる。 

5.4 

慣性力負荷による耐ロック解除試験 

5.4.1 

試験の実施 試験は,動的試験 (5.4.2) 又は静的試験及び計算による方法 (5.4.3) のいずれかによ

って行う。 

5.4.2 

動的試験 動的試験は,次による。 

(1) シートが折り畳まれる方向とは逆方向の加速度がシート取付部に加わるように,シートを加速装置に

取り付ける。 

(2) 196m/s2の加速度が,少なくとも30ms作用するように,加速度を加える。 

(3) 試験後のシートバックのロック装置及びシート解錠装置の解除の有無を調べる。 

5.4.3 

静的試験及び計算による方法 静的試験及び計算による方法によって行う試験は,次の(1)及び(2)

の方法を併用する。 

(1) 静的試験 静的試験は,次による。 

(a) シートの前傾する部分の質量及び重心位置を測定する。 

(b) (a)の重心位置を通り車両の縦中心面と平行な線上の任意の点に,水平に負荷がかけられるようにす

る。ただし,目的の部位以外の箇所が過負荷になる場合は,例えば,図3に示すように負荷用部材

を取り付けてもよい。 

(c) (a)の重心位置に水平前向きに(a)の質量×gnの20倍の大きさの力を加える。 

備考 gn(重力の標準加速度)=9.806 65m/s2 

(d) 試験後のシートバックのロック装置及びシート解錠装置の解除の有無を調べる。 

図3 慣性力負荷による耐ロック解除試験(静的試験) 

 

(2) 計算による方法 計算による方法は,次による。 

(a) シートバックのロック装置及び解錠装置の機構を調べ,ロック時の位置関係を求める。 

(b) 解除に抗するばね力の設計値を求める。 

(c) 可動部分の各々の重心位置及び質量を求める。 

(d) 各可動部分に対し,水平後向きに所定の加速度を加えた場合の慣性力を計算する。ただし,重力に

よる影響や摩擦力は無視する。 

(e) (d)の慣性力によってロック装置に伝達される力を計算し,解除に抗するばね力の大きさと比較して,

ロックが解除しないことを調べる。 

関連規格 JIS D 4606 自動車乗員用ヘッドレストレイント 


D 4610-1993  

自動車航空部会 自動車専門委員会 構成表(昭和62年7月1日制定のとき) 

 

 

氏名 

所属 

(委員会長) 

 

中 込 常 雄 

社団法人自動車技術会 

 

 

中 川 勝 弘 

通商産業省機械情報産業局 

 

 

松 波 正 壽 

運輸省地域交通局陸上技術安全部 

 

 

飛 田   勉 

工業技術院標準部 

 

 

石 渡 正 治 

財団法人日本自動車研究所 

 

 

梅 澤 清 彦 

東京工業大学精密工学研究所 

 

 

大 西   徳 

社団法人全日本トラック協会 

 

 

佐 藤   武 

慶應義塾大学理工学部 

 

 

瀬 倉 久 男 

防衛庁装備局 

 

 

田 中 兼 吉 

社団法人日本バス協会 

 

 

轟     秀 

社団法人日本自動車連盟 

 

 

杉 浦 秀 昭 

社団法人日本自動車整備振興会連合会 

 

 

岩 根 政 雄 

社団法人日本自動車部品工業会 

 

 

宇 藤   官 

鈴木自動車工業株式会社二輪第二設計部 

 

 

大 槻 耕 一 

日野自動車工業株式会社研究管理部 

 

 

改 田   護 

トヨタ自動車株式会社技術管理部 

 

 

金 子 達 昭 

日本自動車輸入組合 

 

 

野 本 正 猪 

三菱自動車工業株式会社技術本部技術管理部 

 

 

牧 野   昇 

本田技研工業株式会社総務部 

 

 

宮 崎 弘 昭 

日産自動車株式会社設計管理部 

 

 

安 部 史 之 

日産ディーゼル工業株式会社設計管理部 

 

 

一 瀬   修 

マツダ株式会社東京技術部 

 

 

植 木 源 治 

日本道路公団 

 

 

大 野 恭 二 

いすゞ自動車株式会社特許部 

(関係者) 

 

古 川  洋 

社団法人自動車技術会 

(事務局) 

 

江 口 信 彦 

工業技術院標準部機械規格課 

 

 

中 田 幹 夫 

工業技術院標準部機械規格課 

(事務局) 

 

笹 尾 照 夫 

工業技術院標準部機械規格課(平成5年2月1日改正のとき)