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日本工業規格          JIS 

 

D 4609-1993 

 

 

乗用車のシートベルトの取付部− 

位置及び強度 

Passenger car−Seat belt anchorages− 

Position and strength of mounting 

 

 

1. 適用範囲 この規格は,乗用車(以下,車両という。)の前向きシート用として,JIS D 4604に定めら

れた自動車用シートベルトを車に取り付ける際の,取付部の強度及び取付方法について規定する。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS B 0208 ユニファイ細目ねじ 

JIS B 0212 ユニファイ細目ねじの許容限界寸法及び公差 

JIS B 1001 ボルト穴径及びざぐり径 

JIS D 0024 自動車におけるH点の決め方 

JIS D 4604 自動車用シートベルト 

JIS D 4607 自動車室内寸法測定用三次元座位人体模型 

 

2. 用語の定義 この規格に用いる主な用語の定義は,JIS D 4604及びJIS D 0024によるほか,次のとお

りとする。 

(1) 取付部 シートベルト又は中間ガイドを取り付ける際の,車両側の取り付ける部分。 

(2) 車体取付式 一組のシートベルトの取付部のすべてを車体に設ける方式。 

(3) シート組込み式 一組のシートベルトの取付部の一部又は全部をシートに設ける方式。 

(4) 下部取付部 腰ベルトの取付部。 

(5) 上部取付部 三点式シートベルトの肩ベルトの車両側の取付部(図1及び図9参照)。 

(6) 中間ガイド取付部 中間ガイドの車両側の取付部(図3参照)。 

(7) 単式取付部 一組のシートベルトの一端を取り付ける部分(図1参照)。 

(8) 複式取付部 二組のシートベルトの一端を共通に取り付ける部分(図2参照)。 

(9) Hʼ点 JIS D 4607又はJIS D 0024に定められた三次元マネキン(人体模型)をシートに着座させた

場合の,三次元マネキンのH点(ヒップポイント)に相当するシート上の点(図9参照)。 

(10) R点 前後位置が調節できるシートでは,シートを設計上の最後端位置にし,シートバックの角度が

調節できるシートでは,シートバックを設計基準位置,又は三次元マネキンのトルソラインができる

だけ鉛直から25度に近くなるような位置にし,その他の調節機構は設計基準位置に調節して求めた三

次元マネキンのH点に相当するシート上の設計基準点(図10参照)。 

(11) シートベルト取付点 取付部のねじ穴又はボルト穴の取付面上の中心点。ただし,取付具,中間ガイ

ド,シートフレームなどが荷重が掛かったウェビングを拘束する場合には,ウェビングがこれらと接


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する点(図9参照)。 

(12) 下部取付角度 シートベルト取付点とHʼ点とを結ぶ線が,車体水平基準線となす角度。 

図1 単式取付部 

 

図2 複式取付部 

 

図3 中間ガイド取付部 

 

 

3. 種類及び記号 

3.1 

シートベルトの種類 シートベルトの種類及びその記号は,JIS D 4604によるもので,表1に示す3

種類とする。 

表1 シートベルトの種類・記号 

種類 

記号 

備考 

二点式 

II 

腰ベルト2点支持形式 

三点式A形 

IIIA 

腰ベルトと肩ベルトの一端が連結された3点支持形式 

三点式B形 

IIIB 

腰ベルトと肩ベルトとが連続している3点支持形式 

備考 エネルギー吸収装置を含むシートベルトの記号には,記号Eをつける。 

例 II-E, IIIB-E 

3.2 

取付部方式による種類及び記号 シートベルトの取付部を設ける方式による種類及びその記号は,

表2による。 


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表2 取付方式による種類及び 

記号 

種類 

記号 

車体取付式 

シート組込み式 

3.3 

取付部の位置による種類及びその記号 取付部の位置による種類及びその記号は,表3による。 

表3 取付部の位置の種類・記号 

取付部の位置の種類 

記号 

備考 

下部取付部 

AL 

二点式,三点式(A形及びB形)の下部取付部 

上部取付部 

AU 

三点式(A形及びB形)の上部取付部 

中間ガイド取付部 

AT 

 

3.4 

取付部の組合せの種類 取付部の組合せの種類は,取り付けることができるシートベルトの種類に

よって,表4のとおりとする。 

表4 取付部の組合せの種類 

種類 

取付部の組合せ 

取り付けることができるシートベルトの種類 

1種 

AL×2 

二点式 

2種 

AL×2+AU 

二点式,三点式(A形及びB形) 

3.5 

取り付けられるシートベルトの数による種類及びその記号 1個の取付具に取り付けることができ

るシートベルトの数による取付部の種類及びその記号は,表5による。 

表5 取り付けることができるシートベルトの 

数による取付部の種類・記号 

種類 

記号 

取り付けることができるシートベルトの数 

単式 

複式 

3.6 

呼び記号 シートベルトの取付部の呼び記号は,取付方式の記号,取付部の位置の記号及び取り付

けられるシートベルトの数による記号を連記する。 

例1. I-AU-S(シート組込み式・上部取付部・単式取付部の場合) 

例2. B-AL-W(車体取付式・下部取付部・複式取付部の場合) 

 

4. 取付部の強度 

4.1 

取付部の性能 取付部の性能は,次による。 

(1) 取付部は,4.2に定めた荷重試験に耐えなければならない。 

(2) シート組込み式の場合,又はシートが荷重を分担する場合には,シート及びシート取付部も,4.2に定

めた荷重試験に耐えなければならない。 

4.2 

試験 取付部の試験は,静荷重試験とし,次によって行う。 

(1) シートを設計上の最も後方に下げた位置に,また,他のシート調節機構をもつ場合には,それらを設

計基準位置に調節する。 

(2)  上部取付点が調節式のものでは,設計基準位置又は調節範囲の中間位置に調節する。 

(3) 試験は,取付部にJIS D 4604に規定する取付具を用い,ボデーブロックにシートベルトを着用した状

態,又はそれを再現できるジグを用いて行う。 

(4) 試験は,A種,B種及びC種の3種類に分け,試験方法は表6による。 


D 4609-1993  

表6 試験の種類 

試験の種類 試験する取付部 ボデーブロック 

の形式 

荷重の方向 

荷重の大きさ 

kN 

参照図 

A種 

下部取付部 

1形又は2形 水平から上方 

10±5° 

1名分 22.3 

図4 

B種 

下部取付部及び 
上部取付部 

1形又は2形 水平から上方 

10±5° 

1名分 13.5 

図5 

C種 

シートの取付部 

− 

水平 

(シート総質量)×gn 

の20倍 

図6 

備考 標準重力加速度 gn=9.806 65m/s2 

 

図4 A種の試験 

図5 B種の試験 

 

 

図6 C種の試験 

 

(5) 取付部の組合せの種類に応じて,(4)の試験を表7の組合せによって行う。ただし,三点式(A形及び

B形)シートベルトを常備する座席では,A種,又はA種及びC種の組合せの試験を省略してもよい。 


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表7 試験の適用区分 

取付部の組合せの種類 

試験の種類 

車体取付式 

1種 

A種 

2種 

A種及びB種 

シート組込み式 

1種 

A種及びC種の組合せ 

2種 

A種及びC種の組合せ並びに 
B種及びC種の組合せ 

(6) A種及びB種の荷重試験は,60秒以内に表6に定めた荷重を与え,0.2秒以上保持する。 

試験荷重は,図7に定めたボデーブロック1形又は2形のいずれかを用いて与える。ただし,3人

掛けシートの中央では図7のボデーブロック3形を用いてもよい。 

(7) C種の荷重試験は,60秒以内に表6に定めた荷重をシート重心位置に与え,0.2秒以上保持する。 

なお,シート重心に荷重が作用するように,ジグ,補強部材などをシートに取り付けてもよい。 

(8) C種の荷重試験は,A種又はB種の試験と同時に行う。 

(9) 前席及び後席に設けた,すべての取付部の同種類の荷重試験は,同時に行う。 

(10) 前席の荷重試験及び後席の荷重試験は,別々に行うことができる。 

図7 ボデーブロック 

 


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5. 取付方法 

5.1 

取付一般 シートベルトは,JIS D 4604によるものを用い,その取付方法は次のとおりとする。 

(1) 単式取付部に二組のベルトを取り付けてはならない。 

(2) 一組のシートベルトは,ベルトがシートの後方で交差し,乗員の胴体を巻き付けるような形に取り付

けてはならない。 

(3) バックル本体を取り付けたベルトは,ドア開閉操作の際にバックル本体をできるだけ損傷しないよう

な配慮が必要である。 

5.2 

シートベルト取付点の位置 シートベルト取付点の位置は,次による。 

(1) 荷重がかかった腰ベルトをシートフレーム及び中間ガイドが拘束しない場合の下部取付点の位置は,

図8(a)に示すように,シートベルトの下部取付角度は60±10°の範囲になるように定める。ただし,

シートが前後又は上下に調節可能であって,シートベルトの取付部が車体床に設けてある場合には,

図8(b)に示すようにシート調節範囲のあらゆる位置において,下部取付角度が30〜80°の範囲になる

ように定める。 

(2) 荷重がかかった腰ベルトがシートフレーム及び中間ガイドに拘束され,図8(c)に示すように取り付け

る際の下部取付点の位置は,シートベルトの下部取付角度が60±10°の範囲になるように定める。 

また,シートを移動させた位置でも,荷重がかかったウェビングに機能失陥を起こさないように下

部取付点の位置を定める。 

(3) 後席用で,車体構造上,その他の理由によって,下部取付角度が60±10°の範囲に設定できない場合

には,図8(d)に示すように30〜80°の範囲でもよい。 

(4) 三点式(A形及びB形)シートベルトの肩ベルトは,図9に示すように,中間ガイドを用いてベルト

の方向を変えてもよい。 


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図8 シートベルトの下部取付点の位置及び下部取付角度 

 

図9 肩ベルトに中間ガイドをもった三点式シートベルト 

 


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(5) 二点式及び三点式(A形及びB形)シートベルトの左右の下部取付点の横方向の間隔は,図10に示

すように350mm以上(3人掛けシートの中央座席では310mm以上)あり,かつ,座位中心線から左

右それぞれの取付点までの距離a,bは共に120mm以上とする。比a:bは,なるべく1:1に近い値

が望ましい。 

また,三点式(A形及びB形)シートベルトの上部取付点の横方向の間隔は,図10に示すように

座位中心線から取付点までの距離sを140mm以上とする。 

(6) 三点式(A形及びB形)シートベルトの上部取付点の位置(取付点の位置が調節式のものでは,その

設計基準位置)は,R点を基準として図10に示す範囲ABCD内にあり,シートベルトの作動時に乗

員を適正に拘束し,取付具などによって負傷することがないように定める。 

なお,車体構造上の理由によって,範囲ABCDの内側に上部取付点を設けることができない場合で

も,図10の範囲EFA内になければならない。 

また,着用性を向上させるために取付点を調節するものにあっては,図10の範囲GHJKの内側ま

で調節が可能であってもよい。 

図10 シートベルト取付点の位置 

 


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6. 取付けねじ 取付部のねじは,次による。 

(1) 取付部に用いるボルト及びナット(又はねじ穴)のねじは,原則として表8による。 

また,ボルト穴径は,JIS B 1001の2級以上に準じるものとする。 

表8 取付けねじ 

種類 

記号 

ねじの呼び・等級 

ナットの有効ねじ部の長さ mm ボルトの引張荷重 kN 

単式 

716-20UNF-2A及び2B 

約10 

22.3 

複式 

約13 

40.0 

備考1. ねじは,JIS B 0208の規定によることとし,その許容限界寸法は,JIS B 0212の規定に

よる。 

なお,ボルトに表面処理を施した場合のねじの最大許容寸法は,外径,有効径及び谷

の径とも3Aとする。 

2. 車体の構造上やむを得ず上記以外のボルト及びナットを使用するとき,又は一つの取

付具本体を複数の取付ボルトで取り付けるときには,JIS D 4604の7.6(1)(ボルトの引
張強さ試験)に準じる方法で試験したときに,表8と同等以上の強度をもつものでな
ければならない。 

(2) 取付部のねじ穴には,さび止め処理を施す。 

 

7. 取扱説明書に記載する事項 シートベルトの取付けについては,自動車製造業者が発行する自動車の

取扱説明書に,使用することが許されるシートベルトの種類及びその数を記載しなければならない。 


10 

D 4609-1993  

社団法人 自動車技術会車体部会衝撃保護分科会 構成表 

 

 

氏名 

所属 

(分科会長) 

 

佐 藤   武 

慶應義塾大学理工学部 

(幹事) 

 

奥 原 久 和 

株式会社本田技術研究所栃木研究所 

 

 

平 野 由紀夫 

工業技術院標準部 

 

 

江 坂 行 弘 

運輸省地域交通局陸上技術安全部 

 

 

入 江 泰 彦 

交通安全公害研究所交通安全部 

 

 

惣宇利 善 信 

交通安全公害研究所自動車審査部 

 

 

中 島 雄 司 

いすゞ自動車株式会社車体設計部 

 

 

鈴 木 健 弘 

スズキ株式会社実験部 

 

 

藤 田 春 男 

ダイハツ工業株式会社実験部 

 

 

藤 原 英 二 

トヨタ自動車株式会社第2車両実験部 

 

 

河 合   洋 

日産自動車株式会社車体実験部 

 

 

渡 辺 健 二 

日産ディーゼル工業株式会社実験部 

 

 

清 久 光 俊 

日野自動車工業株式会社車両RE部 

 

 

鈴 木   昇 

富士重工業株式会社技術本部研究実験第1部 

 

 

織 田 芳 雄 

マツダ株式会社車両実験研究部 

 

 

井 上 重 光 

三菱自動車工業株式会社乗用車技術センター 

 

 

大 矢 雅 清 

富士オートリブ株式会社開発部 

 

 

吉 田 良 一 

タカタ株式会社愛知川製造所 

 

 

鈴 木 勝 英 

財団法人日本自動車研究所 

 

 

小 林 隆 二 

社団法人日本自動車部品工業会 

(事務局) 

 

平 野 修 二 

自動車技術会規格部門