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日本工業規格          JIS 

 

D 1060-1982 

 

 

乗用車の前面・後面の衝突試験方法 

Frontal and Rear Vehicle Collision Test Procedure 

 

 

1. 適用範囲 この規格は,乗用車の固定バリヤによる前面衝突及びムービングバリヤによる後面衝突の

試験方法について規定する。ただし,二輪自動車には適用しない。 

対応国際規格: 

ISO 3560 Road vehicles−Frontal fixed barrier collision test method 

ISO 3784 Road vehicles−Measurement of impact velocity in collision tests 

ISO 3984 Road vehicles−Passenger cars−Moving barrier rear collision test method 

 

2. 用語の意味 この規格に用いる主な用語の意味は,次による。 

(1) 走行路 試験車及びムービングバリヤの走行に用いる助走路を含む路面。 

(2) ピット 衝突中及び衝突前後の試験車の状態を下側から観察し,測定するための溝状の地下構造物 

(3) 衝突角度 バリヤ前面と直交する鉛直面と試験車縦軸を含む鉛直面とのなす角度。 

(4) 解明度 衝突速度を測定するときの,有効最小単位。 

 

3. 試験場及び設備 

3.1 

試験場 試験場は,次のとおりとする。 

(1) 走行路,固定バリヤ及びその他試験に必要な設備を収めるのに十分な広さであること。 

(2) 衝突地点の手前15mの走行路区間は堅く水平で,かつ,いかなる区間の1mをとっても3%以下のこ

う配であること。 

3.2 

固定バリヤ 固定バリヤは,次のとおりとする。 

(1) 地上部の大きさは,原則として幅3m以上,高さ1.5m以上,厚さ0.6m以上の鉄筋コンクリートのブ

ロックからなり,その質量は70t以上であることが望ましい。 

(2) バリヤ前面は平らで,かつ鉛直であり,厚さ20±2mmの木合板で覆われていること。 

なお,木合板とバリヤの間に,剛な金属板又は構造物を入れて使用してもよい。 

3.3 

ムービングバリヤ ムービングバリヤは,次のとおりとする。 

(1) 衝突面は,衝突により変形することがない堅固かつ平らな鉛直面で,その寸法は表による。ただし,

試験目的により別の寸法が指定された場合にはこの限りではない。 

表 衝突面の寸法 

単位mm 

幅 

高さ 

下端の地上高 

2 500以上 

800以上 

175±25 

(2) 衝突面は,厚さ20±2mmの木合板で覆われていること。


D 1060-1982  

(3) 衝突面は,ムービングバリヤ縦軸に対し直交していること。 

(4) ムービングバリヤの本体は,衝突時変形等によりエネルギーを吸収しない構造であること。 

(5) ムービングバリヤと試験車との再衝突が避けられるようになっていなければならない。 

(6) 総質量は1100±20kgであること。ただし,試験目的により別の指定がある場合にはこの限りではない。 

3.4 

けん引装置 けん引装置は,次のとおりとする。 

(1) 試験車又はムービングバリヤを試験目的により定められた速度まで加速した後,ほぼ一定の速度を保

持できる性能をもつこと。 

(2) 衝突の直前においてけん引力及びガイド装置は,試験車又はムービングバリヤから切り離される構造

であること。 

備考 けん引するために必要なジグ又はガイド装置等を試験車に取り付けることによって,試験車の

性能に影響を及ぼさないこと。 

3.5 

ピット 衝突地点の走行路には試験車又はムービングバリヤの姿勢,挙動を阻害しない範囲でピッ

トを設けることが望ましい。 

3.6 

速度測定装置 測定装置の精度は±1%の性能をもち,解明度は0.5km/h以下とする。 

 

4. 試験車の状態 

4.1 

試験車質量 標準装備時の質量に合わせる。ただし,試験目的により別の指定があればそれに合わ

せる。 

なお,質量を合わせるため,試験結果に影響を与えない範囲での部品の取り外し,又は補助おもりを搭

載してもよい。 

4.2 

試験車の状態 試験車は,特に指定がない限り次の状態にする。 

(1) 車両附属品,オプション部品は必要に応じて取り付ける。 

(2) 冷却水,潤滑油,バッテリ液等は,試験結果に影響を与えない範囲で抜き取ってもよい。 

(3) 燃料タンクには最大容量の90%を超える燃料を注入する。ただし,燃料の代わりに比重が類似した代

用液体を使用してもよい。 

(4) 燃料配管内には燃料又は代用液体を正規の状態に注入する。 

(5) タイヤ空気圧は,指定された値にする。 

(6) 変速装置のセレクト位置は,中立位置とする。 

(7) 駐車制動装置は,開放状態とする。 

(8) ドアロックは,開放状態とする。 

 

5. 衝突速度 試験車又はムービングバリヤの速度を,試験目的により定められた速度範囲に合わせる。

速度の測定は次のとおりとする。 

(1) 試験車又はムービングバリヤが衝突する地点から手前3m以内で行う。 

(2) 試験車又はムービングバリヤが一定区間を移動する時間,又は一定時間内に移動する距離を測定し算

出する。 

 

6. 衝突の条件 衝突の条件は,次のとおりとする。 

(1) 試験車又はムービングバリヤは,その縦方向軸が意図された衝突角度から±2にあるように衝突させ

る。 


D 1060-1982  

(2) 前面衝突では,試験車の縦方向鉛直中心面と固定バリヤ又は構造物前面と直交する鉛直中心面の横方

向のずれ量は,300mm以下とする。 

(3) 後面衝突では,試験車の衝突中心点を通り,衝突方向と平行な鉛直面とムービングバリヤ縦方向鉛直

中心面との横方向のずれ量は,300mm以下とする。 

 

7. 試験の記録 試験の記録は,次による。 

(1) 試験期日 

(2) 試験場所 

(3) 試験車の諸元 

(a) 車名,型式 

(b) 車台番号 

(c) 搭載エンジンの型式 

(d) 燃料の種類 

(4) 試験条件 

(a) 試験車質量及びムービングバリヤ質量 

(b) 使用した代用液体名称 

(5) 試験結果 

(a) 衝突速度 

(b) その他試験目的により定められた試験車の性能を記録する。 

 

社団法人自動車技術会 車体部会 インパクトテスト分科会構成表 

 

 

氏名 

所属 

(分科会長) 

 

岩 田   徹 

日産自動車株式会社車体実験部 

 

 

渡 辺 邦 幸 

日産自動車株式会社車体実験部 

 

 

松 川 東 一 

工業技術院標準部機械規格課 

 

 

大 滝 英 征 

工業技術院機械技術研究所自動車安全公害部 

 

 

小 杉 昭 夫 

運輸省自動車局整備部 

 

 

梅 田 哲 弘 

運輸省交通安全公害研究所交通安全部 

 

 

鈴 木 好 朗 

運輸省交通安全公害研究所自動車審査部 

 

 

山 崎 和 久 

いすゞ自動車株式会社開発本部 

 

 

渥 美 正 紀 

鈴木自動車工業株式会社四輪車設計部 

 

 

中 西 定 美 

ダイハツ工業株式会社実験部 

 

 

中 矢 裕 介 

東洋工業株式会社実験研究部 

 

 

松 岡 章 雄 

トヨタ自動車株式会社第11技術部 

 

 

福 岡 信 男 

日野自動車工業株式会社第2実験部 

 

 

堀 口 忠 男 

富士重工業株式会社スバル技術本部 

 

 

杉 本 十三男 

株式会社本田技術研究所 

 

 

清 水   彊 

三菱自動車工業株式会社乗用車技術センター 

 

 

岩 根 政 雄 

社団法人日本自動車部品工業会 

(事務局) 

 

香 取 恭 三 

社団法人自動車技術会