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日本工業規格          JIS 

 

D 1039-1994 

 

 

二輪自動車−登坂能力試験方法 

Mopeds and motorcycles−Method of hill climbing test 

 

 

1. 適用範囲 この規格は,二輪自動車(以下,自動車という。)の登坂能力試験方法について規定する。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

 

2. 試験条件 

2.1 

試験路 試験路は,次のとおりとする。 

(1) 試験路は,防滑構造の乾燥した人工坂路で,できる限り平らで一様なこう配の直線路面が望ましい。

やむを得ない場合には,これに準じる自然坂路を選ぶ。 

(2) 試験路面は,図1に示す助走区間及び測定標点をもつ測定区間をあらかじめ設定しておく。 

また,自然坂路を使用するときには,試験前に坂路の傾斜角度を測定しておく。傾斜角度は,測定

区間の前5mの間及び測定区間は,同一とする。 

図1 試験路面 

 

2.2 

気象条件 気象条件は,次のとおりとする。 

(1) 気圧は,100±3kPaの範囲とする。 

(2) 気温は,5〜30℃の範囲が望ましい。 

(3) 相対湿度は,95%以下が望ましい。 

(4) 測定中の平均風速は,3m/s以下とし,瞬間最大風速は,5m/s以下が望ましい。 

2.3 

試験自動車 試験自動車の条件は,次のとおりとする。 

(1) 試験自動車の積載条件は,空車状態(1)の自動車に1名乗車とする。 


D 1039-1994  

注(1) 自動車が燃料,潤滑油,工具など(予備部品,その他の携帯物品を除く。)を満載し,運行に必

要な装備をした状態。 

この状態における質量を空車質量という。 

(2) 試験自動車のエンジン,動力伝達装置,かじ取り装置,ブレーキ装置,タイヤ空気圧(冷間時)など

の整備は,あらかじめ行っておく。 

参考 自動車製造業者による整備に関する情報は,取扱説明書,整備説明書などに示されている。 

(3) 試験自動車は,試験開始前に準備運転を行って,エンジン,その他の部分を運転状態に予熱しておく。 

2.4 

試験器材 主な試験器材は,次のとおりとする。 

(1) こう配測定器 道路の傾斜角度を測定できるものとする。 

(2) 時間測定器 時間測定器は,次のいずれかを使用し,測定値の誤差を少なくするため,電子式又は電

気式時間測定器を用いることが望ましい。 

(a) 電子式又は電気式時間測定器 電子式又は電気式時間測定器の目量は,0.000 1秒以下とする。 

(b) ストップウオッチ ストップウオッチの目量は,0.01秒以下とし,3個以上を併用する。 

(3) 巻尺 巻尺の目量は,0.001mとし,50m以上を測定できるものが望ましい。 

(4) 標識棒 

(5) 手旗 

(6) 乾湿温度計 乾湿温度計の正確さは,±1℃とし,通風型乾湿温度計を用いることが望ましい。 

(7) 気圧計 気圧計は,フォルタン型水銀気圧計又は同等のものとし,目量は,133Pa以下のものを用い

る。 

(8) 風速計 風速計は,風速及び風向を測定できるものとする。 

2.5 

運転者の質量及び服装 運転者の質量及び服装は,次のとおりとする。 

(1) 運転者の質量は,運転者及び保護具(ヘルメット,衣類など)を含み,70±5kgの範囲とする。ただ

し,登坂能力計算の基準値は,70kgとする。 

(2) 運転者は,身体を保護するため,運転者の体に合った保護具を着用する。 

2.6 

運転姿勢 運転姿勢は,次のとおりとする。 

(1) 両手は,ハンドルバーを握る。 

(2) 両足は,運転者用のフットレスト,フットボード又はペダルに置く。 

(3) 腰は,ライダシートに置く。 

(4) 上体の姿勢は,腕を軽く曲げた状態とし,測定中に変化させてはならない。 

 

3. 試験方法 

3.1 

試験の概要 最下速段の歯車を用いて助走区間から発進し,最大出力を得られるよう加速し,測定

標点(10m点,20m点)を通過するのに要する時間を測定し,その結果を計算して,最大登坂能力を求め

る。 

3.2 

試験の準備 試験に先立ち,2.1によって,試験路の測定標点に時間測定器を設置する。時間測定器

が準備できない場合には,測定標点に標識棒を立て,手旗によって測定できるように人員を配置する。 

3.3 

走行方法 次の条件を満足するように,あらかじめ調査した最大登坂能力の速度付近で,測定始点

を通過する。 


D 1039-1994  

t1≧t2−t1 

ここに, 

t1: 測定始点から10m標点までの所要時間 (s) 

 

t2: 測定始点から20m標点までの所要時間 (s) 

完全に登坂できた場合には,更に急なこう配の坂路において試験し,最大登坂能力を判定する。ただし,

適当な坂路がない場合には,同一坂路において上速段の歯車を用い,又は積み荷質量を増して登坂する。 

登坂不能の場合には,緩いこう配の坂路を用いるか,又は積み荷質量を減じて登坂する。 

3.4 

所要時間の測定 始点から各標点までの所要時間を,同一条件で2回以上,測定値が安定するまで

測定する。測定値は,JIS Z 8401によって,小数点以下3けた目を四捨五入して,小数点以下2けたに丸

める。 

ストップウオッチを用いて測定した場合には,各ストップウオッチの測定値の平均値を用いる。ただし,

平均値から著しく偏った測定値があるときには,その値を除外し,残りの測定値の平均値を用いる。 

 

4. 最大登坂能力の算出 最大登坂能力は,同一条件で2回以上成功した試験結果を基に次の式を用いて

算出する。 

算出値は,JIS Z 8401によって,小数点以下2けた目を四捨五入して,小数点以下1けたに丸める。 

sin

1

sin1

i

i

M

M

i

 

ここに, 

 最大登坂能力 ( °) 

 

 積み荷質量+(運転者質量−70) (kg) 

 

M: 空車質量+70 (kg) 

 

il: 最下速段の歯車の変速比 

 

i: 使用歯車の変速比 

 

 試験坂路の傾斜角度 ( °) 

 

5. 記録方法 試験結果は,付表1に従って記録する。 


D 1039-1994  

付表1 登坂能力試験記録及び成績 

 

 

関連規格 JIS D 0109 二輪自動車用語 

 


D 1039-1994  

社団法人自動車技術会 二輪部会 二輪走行試験方法分科会 構成表 

 

 

氏名 

所属 

(分科会長) 

 

岡 本   勇 

スズキ株式会社二輪設計部 

 

 

中 村   裕 

スズキ株式会社二輪設計部 

 

 

東 郷 和 英 

読売江東理工専門学校 

 

 

戒 能 一 成 

通商産業省機械情報産業局 

 

 

笹 尾 照 夫 

工業技術院標準部 

 

 

大 柳 武 雄 

運輸省自動車交通局技術安全部 

 

 

波多野   忠 

交通安全公害研究所交通安全部 

 

 

神 谷 哲 雄 

川崎重工業株式会社技術総括部 

 

 

大 前 秀 行 

株式会社本田技術研究所朝霞研究所 

 

 

松 本 俊 広 

ヤマハ発動機株式会社第1開発部 

 

 

岡 山   巧 

財団法人日本自動車研究所第2研究部 

 

 

伊 藤 彰 康 

社団法人日本自動車連盟ロードサービス部 

(事務局) 

 

宇 高 苗 子 

社団法人自動車技術会規格部門