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日本工業規格

JIS

 C

9605

-1988

携帯電気ドリル

Portable Electric Drills

1.

適用範囲  この規格は,定格周波数 50Hz 専用若しくは 60Hz 専用又は 50Hz・60Hz 共用の金工用携帯

電気ドリル及び木工用携帯電気ドリル(以下,総称して,電気ドリルという。

)について規定する。

備考  この規格の中で{  }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,参

考として併記したものである。

2.

種類及び出力  電気ドリルの種類は,使用できるドリルの直径の最大値によって分け,出力は種類に

対応して,金工用にあっては

表 1,木工用にあっては表 のとおりとする。ただし,電動機の時間定格は,

30

分とする。

表 1  金工用電気ドリルの種類及び出力

種類 5mm

6.5mm 10mm

13mm

16mm

20mm

25mm

32mm

ドリルの最大径

の呼び寸法

mm

5  6.5 10 13 16 20 25 32

出力

W

55

以上

75

以上

150

以上

225

以上

260

以上

370

以上

600

以上

1000

以上

表 2  木工用電気ドリルの種類及び出力

種類 21mm 24mm 30mm 36mm

ドリルの最大径

の呼び寸法

mm

21 24 30 36

出力

W

135

以上

160

以上

190

以上

220

以上

3.

定格電圧及び使用電動機  電気ドリルの使用電動機の種類及び定格電圧は,表 のとおりとする。

表 3  使用電動機の種類及び定格電圧

単位 V

使用電動機の種類

定格電圧

直巻整流子電動機又は単相誘導電動機

100

又は 200

三相かご形誘導電動機 200

                                                      
引用規格:15 ページに示す。


2

C 9605-1988

4.

使用電圧の変化  電気ドリルは,その端子の供給電圧に定格電圧の上下 10%の変化があっても,実用

上差し支えなく使えるものでなければならない。

5.

性能

5.1

始動  8.2 の試験を行ったとき,電動機の回転子の位置に関係なく始動しなければならない。

5.2

ドリルの先端の振れ  ドリル先端の振れは,8.3 の試験を行ったとき,各回とも表 の値以下でなけ

ればならない。

表 4  ドリル先端の振れ

単位 mm

ドリルチャックの取付方法

ドリル先端の振れ

テーパ式 0.3

ねじ式 0.6

5.3

温度  各部の温度は 8.4 の試験を行ったとき,表 の値以下でなければならない。

表 5  温度限度

単位℃

測定箇所

温度

A

種絶縁のもの 105

E

種絶縁のもの 120

B

種絶縁のもの 125

F

種絶縁のもの 140

電動機の巻線

H

種絶縁のもの 165

金属製のもの,陶磁器製のもの及びガラス製のもの

 60

スイッチなどのつ
まみ,押しボタン  その他のもの

75

金属製のもの,陶磁器製のもの及びガラス製のもの

 65

人が容易に触れる
おそれのある外郭
(ギヤーケース及

び軸受部を含む。

その他のもの

80

金属製のもの,陶磁器製のもの及びガラス製のもの

 55

使用中に人が操作

する取っ手

その他のもの

70

備考  基準周囲温度は,30℃とする。

5.4

絶縁  絶縁は,次の各項に適合しなければならない。

(1)

絶縁抵抗  絶縁抵抗は 8.5(1)の試験を行ったとき,6.7 に規定するクラス II 絶縁構造以外のものにあっ

ては 2M

Ω以上,クラス II 絶縁構造のものにあっては 7MΩ以上であること。

なお,クラス II 絶縁構造のもので,絶縁の種類ごとに測定を行う場合は,

表 の値以上であること。

表 6  絶縁抵抗

単位 M

絶縁の種類

絶縁抵抗

機能絶縁 2

保護絶縁 5

強化絶縁 7

(2)

耐電圧  8.5(2)の試験を行ったとき,これに耐えること。

5.5

出力  出力は,次の各項に適合しなければならない。

(1)  8.6(1)

の試験を行ったとき,

表 又は表 のとおりであること。

(2)  8.6(2)

の試験を行ったとき,その電流は,全負荷電流(銘板記載の値)の 110%以下であること。


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C 9605-1988

5.6

スイッチ  スイッチは,次の各項に適合しなければならない。

(1)  8.7(1)

の試験を行ったとき,各部に支障が生じないこと。

(2)  8.7(2)

の試験を行ったとき,接触部の温度が

表 の値以下であること。

表 7  接触部の温度限度

単位℃

接触部の種別

温度

銅又は銅合金 70

銀又は銀合金 95

備考  基準周囲温度は,30℃とする。

5.7

コードの折り曲げ

5.7.1

本体とコードとの接続部の折り曲げ  本体とコードとの接続部は,8.8.1 の試験を行ったとき,コ

ードの短絡が生じてはならない。

また,コードの素線の断線率は,10%以下でなければならない。

5.7.2

コード付一体成形の接続器のコード接続部の折り曲げ  コード付一体成形の接続器のコード接続

部は,8.8.2 の方法によって試験を行ったとき,コードの短絡が生じてはならない。

また,コードの素線の断線率は,20%以下でなければならない。

5.8

耐衝撃性  耐衝撃性は,8.9 の試験を行ったとき,次の各項に適合しなければならない。

(1)

充電部が露出しないこと。ただし,

付図に示す試験指によって試験を行ったとき,試験指に触れない

程度の充電部の露出は,この限りでない。

(2)

電気ドリルを電源に接続したとき,短絡しないこと。

(3)

直流 500V 絶縁抵抗計によって測定した充電部と,地絡するおそれがある非充電金属部との間の絶縁

抵抗は,2M

Ω以上であること。

(4)

ポリアミド球を落下させたとき,感電,火災などの危険を生じるおそれがあるひび,割れその他の異

常を生じないこと。

5.9

耐久性  8.10 の試験を行ったとき,各部の緩みなど実用上支障があってはならない。

5.10

騒音

5.10.1

無負荷状態における騒音  無負荷状態における騒音は,8.11.1 の試験を行ったとき,6 か所の測定

値の平均が,85dB 以下でなければならない。

5.10.2

負荷状態における騒音  負荷状態における騒音は,8.11.2 の試験を行ったとき,4 か所の測定値の

平均が,82dB 以下でなければならない。

5.11

拘束  8.12 の試験を行ったとき,拘束時に発煙がなく,拘束後の定格電圧で運転したとき,実用上

支障があってはならない。

備考  実用上支障がないとは,著しい異常音,振動等がないことをいう。

5.12

過負荷  8.13 の試験を行った後,定格電圧が 100V の電気ドリルには 1 200V,定格電圧が 200V の電

気ドリルには 1 400V の 50Hz 又は 60Hz の正弦波に近い電圧を次の箇所に 1 分間加えたとき,これに耐え

なければならない。

(1)

充電部と,人が触れるおそれがある非充電金属部との間

(2)

人が触れることのできない非充電金属部と,人が触れるおそれがある非充電金属部との間 

6.

構造


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C 9605-1988

6.1

構造一般  構造は,次の各項に適合しなければならない。

(1)

通常の使用状態において危険が生じるおそれがないものであって,形状が正しく組み立てられ,各部

の仕上がりが良好で,動作が円滑であること。

(2)

使用中著しい振動及び異常音がなく,安全に動作すること。

(3)

各部は,容易に機械的又は電気的な故障を起こさず,危険が生じないこと。

(4)

スイッチは,操作がしやすい箇所に取り付けるものとし,接触,振動等のために不意に始動するおそ

れがないこと。

(5)

整流子をもつ電動機は,整流火花が少ないもので,ブラシの取替えができること。

(6)

充電部は,露出しないこと。

(7)

スラストを受ける部分は,十分これに耐えること。

(8)

導電部を締め付けるねじには,緩み止めを施すこと。

(9)

電気ドリルは,チャック又はソケットによってドリルを確実に取り付けることができ,チャック使用

のものは,チャックハンドルを備えていること。

(10)

ドリルは,通常の使用状態で切削したとき,能率よくさん(鑚)孔できること。

6.2

絶縁距離  絶縁距離は,次の各項に適合しなければならない。

(1)

極性が異なる充電部相互間,充電部と非充電金属部との間及び充電部と人が触れるおそれがある非金

属部表面との間の絶縁距離(空間距離及び沿面距離)は,

表 に示す値以上であること。

表 8  絶縁距離

単位 mm

線間電圧又は対地電圧  (V)

絶縁距離

50

以下のもの

50

を超え

150

以下のもの

150

を超え

300

以下のもの

製造業者が接続する端子部間

− 2.5  3

の取


電源側電線

製造業者が接続する端子部と,

地絡するおそれがある非充電
金属又は人が触れるおそれが
ある非金属部の表面との間

     2.5

3

固 定 し て い る
部分であって,

じ ん あ い が 侵
入 す る お そ れ
が な く ま た 金

属 粉 が 付 着 し
にくい箇所

1.2

     1.5

     3

極 性 が 異 な る
充電部間(開閉

機 構 が あ る も
の の 電 線 取 付
端 子 部 を 含

む。

その他の箇所

1.2

     2

     2.5

固 定 し て い る
部分であって,

じ ん あ い が 侵
入 す る お そ れ
が な く ま た 金

属 粉 が 付 着 し
にくい箇所

1.2

     1.5

     2

その他の部分

充電部と,地絡 
す る お そ れ の

あ る 非 充 電 金
属 部 又 は 人 が
触 れ る お そ れ

の あ る 非 金 属
部 の 表 面 と の

その他の箇所

1.2

     2

     2.5

整流子

1.6

     1.6

     1.6

(2)

電子回路に使用する半導体,抵抗体,コンデンサ,印刷配線などの構造上やむを得ない部分であって,


5

C 9605-1988

次の試験を行ったとき,これに適合する部分は(1)によらなくてもよい。

(a)

極性が異なる充電部を短絡した場合,短絡回路に接続された部品が燃焼するおそれがないこと。た

だし,当該回路に接続されている一つの部品が燃焼した場合においても他の部品が燃焼しないもの

は,この限りでない。

(b)  (a)

の試験の後に,500V 絶縁抵抗計によって測定した充電部と,人が触れるおそれのある非充電金

属部との間の絶縁抵抗は,0.1M

Ω以上であること。

6.3

雑音の強さ  整流子電動機を使用するもので,定格消費電力が 1 000W 以下の電気ドリルの発生する

雑音の強さは,次の各項に適合しなければならない。

(1)

雑音電力は,吸収クランプで測定したとき,

表 の値以下であること。この場合 dB は 1pW を 0dB と

して算出した値とする。

表 9  雑音電力

雑音電力  dB

定格消費電力

周波数範囲

700W

以下 700W を超えるもの

30MHz

以上 300MHz 以下

55 59

(2)

雑音端子電圧は,1 線対地間を測定した場合に,

表 10 の値以下であること。この dB は 1

µV を 0dB と

して算出した値とする。

表 10  雑音端子電圧

雑音端子電圧 dB

定格消費電力

周波数範囲

700W

以下 700W を超えるもの

525kHz

以上 5MHz 以下 59

63

5MHz

を超え 30MHz 以下

64 68

6.4

電源電線  電源電線は,次の各項に適合しなければならない。

(1)

電源電線は,JIS C 3312(600V ビニル絶縁ビニルキャブタイヤケーブル)に規定するキャブタイヤケ

ーブル,JIS C 3327(600V ゴムキャブタイヤケーブル)に規定する 2 種キャブタイヤケーブル又は絶

縁性及び機械的強度がこれらと同等以上のものとし,クラス II 絶縁構造のものを除き,単相のものは

3

心,三相のものは 4 心のものを用い,そのうち緑と黄のしま模様又は緑色の 1 心を接地線とするこ

と。

電源電線は,その公称断面積を 0.75mm

2

以上,長さ(有効長)を 1.8m 以上とする。ただし,入力

500W

以下のものについては,JIS C 3306(ビニルコード)に規定するビニルキャブタイヤコードを使

用してもよい。

(2)

単相のものにあっては,コードの先端に JIS C 8303(配線用差込接続器)に規定する 2 極差込プラグ

又は接地形 2 極差込プラグを取り付けること。

なお,プラグで接地できる構造でない場合は,接地用口出線をプラグから 10cm 以上引き出し,そ

の先端にクリップを取り付けること。

また,接地用口出線には容易に消えない方法で,接地用である旨を表示していること。

(3)

器体の内部の接地用口出線及び接地用口出線を接続する端子又はその近傍に,容易に消えない方法に

よって接地用である旨を表示していること。

6.5

配線  配線は,次の各項に適合しなければならない。

(1)

電源電線の貫通孔は,保護スプリング,保護ブッシング,その他適当な保護装置を使用してある場合


6

C 9605-1988

を除き,電源電線を損傷するおそれがないように面取り,その他適当な保護加工を施していること。

ただし,貫通部が金属以外のものは,その部分が滑らかであり,電源電線を損傷するおそれがない場

合は,この限りでない。

(2)

電源電線と内部端子との接続部には,電源電線の張力が直接に加わらないこと。

(3)

内部配線は,高温部に近接するものは,異常が生じるおそれがなく,また回転部に触れるおそれがな

いこと。

また,被覆された電線を固定する場合,又は貫通孔を通す場合は,被覆を損傷しないようにするこ

と。

(4)

電線の取付部は,電線を確実に取り付けることができる構造であること。

(5)  2

本以上の電線を一つの取付部に締め付ける場合は,それぞれの電線の間にナット又は座金を用いる

こと。ただし,圧着端子,その他の器具によって確実に取り付けることができるものは,この限りで

ない。

(6)

電源電線の取付端子のねじは,電源電線以外のものの取付けに兼用しないこと。ただし,電源電線を

取り付け又は取り外した場合において,その電源電線以外のものが脱落するおそれがないものは,こ

の限りでない。

6.6

スイッチ  電動機の操作に用いるスイッチは,動作が確実で,容易に故障を起こさず,スイッチの

開閉操作又は開閉状態を,文字,記号又は色によって,見やすい箇所に表示しなければならない。ただし,

表示することが困難なものは,この限りでない。

6.7

クラス II 絶縁構造  クラス II 絶縁構造の電気ドリルは,JIS C 0702(クラス II 電気機器の絶縁構造

通則)に適合しなければならない。

6.8

ドリルの取付け  ドリルの取付け方法並びにチャック及びソケットの大きさは,金工用は表 11,木

工用は

表 12 のとおりとする。

表 11  金工用電気ドリルのチャックの呼び寸法とソケット番号

種類

チャックの呼び寸法又はソケット番号

    5mm

        5

   6.5mm

    6.5

10mm

   10

13mm

   13

16mm

JIS B 4634

(携帯電気ドリル用チャ

ック)又は JIS B 6001(工作機械

用ドリルチャック)に規定のチャ
ック

   16

20mm No.2

25mm No.3

32mm

JIS B 4003

(モールステーパ部のシ

ャンクとソケット)に規定のソケ
ット

No.3

表 12  木工用電気ドリルのチャックの呼び寸法

種類

チャックの呼び寸法

21mm 10,

13,

16

24mm 13,

16

30mm 13,

16

36mm

JIS B 4634

又は JIS B 6001 に規定

のチャック

16

7.

材料  材料は,次の各項に適合しなければならない。

(1)

主要部品は,金属その他の適当な材料で作られ,耐久性が大きいこと。

(2)

器体の材料は,通常の使用状態における温度に耐えること。


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C 9605-1988

(3)

電気絶縁物は,これに接触したり,近接する部分の温度に十分に耐え,かつ吸湿の少ないものである

こと。

(4)

アークが達するおそれがある部分に用いる電気絶縁物は,アークによる有害な変形及び変質を起こさ

ないこと。

(5)

鉄鋼(ステンレス鋼を除く。

)には,めっき,塗装,油焼き,その他の適当なさび止めを施しているこ

と。ただし,酸化することによって危険が生じるおそれがない部分に使用するものは,この限りでな

い。

(6)

導電材料は,銅若しくは銅合金又はこれらと同等以上の電気的,熱的及び機械的な安定性をもつ,さ

びにくいものであること。ただし,弾性を必要とする部分,その他構造上やむを得ない部分で危険を

生じるおそれがないときは,この限りでない。

(7)

端子ねじの材料は,銅又は銅合金であること。ただし,接地用端子ねじ以外のもので直接通電を目的

としないもの又は温度が 100℃以上となる部分に使用するものは,ステンレス鋼又はめっきを施した

鉄若しくは鋼を使用することができる。

(8)

接地用端子ねじの材料は,十分な機械的強度をもち,さびにくいものであること。ただし,接地用口

出し線を器体の内部に取り付けるものは,この限りでない。

(9)

整流子片の材料は,JIS C 2801(整流子片)に規定されたもの又は導電率及び硬さがこれと同等以上

のものであること。

8.

試験方法

8.1

構造試験  構造試験は,6.及び 10.について調べる。

8.2

始動試験  始動試験は,定格周波数で定格電圧の 90%の電圧を加えて始動するかどうかを調べる。

8.3

ドリル先端の振れ試験  ドリル先端の振れ試験は,電気ドリル本体を固定した後,表 13 に示す試験

棒をくわえ,

表 13 に示す位置に JIS B 7503(0.01mm 目盛ダイヤルゲージ)に規定するダイヤルゲージを

当て,数回回転させてダイヤルゲージの読みの最大差を求める。

なお,この試験においてチャック取付けの場合は,ハンドル穴の三つを順次に均等に締めてから測定す

る。

表 13  ドリル先端の振れ試験

単位 mm

チャックの呼び寸法又

はソケット番号

5  6.5 10 13 16

No.2

No.3

試験棒の直径

      4.5

      6

      9

    12

    15

    18

    21

試験棒の長さ

  80

  90

 110

 140

 155

 220

 250

チャック又はソケット

の先端からダイヤルゲ
ージまでの距離

  60

  70

  85

 110

 120

 140

 150

備考1.  試験棒は,両センタ間で受けて回転しながら中央部と両端とを含み,少なくとも3か

所以上の振れを測定したとき,それぞれの読みの最大差が0.01mm 以下のものとす
る。

2.

試験棒の直径許容差は,±0.5mm とする。

8.4

温度試験  温度試験は,表示された全負荷電流が流れるように負荷した状態において,定格周波数

の定格電圧を電気ドリルに加えて 30 分間運転し,

表 14 の測定方法によって各部の温度を測定する。


8

C 9605-1988

表 14  測定箇所と測定方法

測定箇所

測定方法

電動機の巻線

抵抗法

スイッチなどのつまみ,押しボタン

人が容易に触れるおそれがある外郭

(ギヤーケース及び軸受部を含む。

使用中に人が操作する取っ手

熱電温度計法

8.5

絶縁試験  絶縁試験は,次によって行う。

(1)

絶縁抵抗試験  絶縁抵抗試験は,温度試験の前後において,直流 500V 絶縁抵抗計によって充電部と

人が触れるおそれがある非充電金属部又は外郭との間の絶縁抵抗を測定する。

なお,クラス II 絶縁構造のもので絶縁の種類ごとに測定する場合は,

表 によって測定するものと

する。

(2)

耐電圧試験  耐電圧試験は,温度試験の後の絶縁抵抗試験後,定格電圧が 100V の電気ドリルは 1 000V,

定格電圧 200V の電気ドリルは 1 500V の 50Hz 又は 60Hz の正弦波に近い電圧を,充電部と人が触れ

るおそれがある非充電金属部又は外郭との間に 1 分間加え,これに耐えるかどうか調べる。ただし,

多数個の場合は,定格電圧が 100V のものは 1 200V,定格電圧が 200V のものは 1 800V の電圧を 1 秒

間加えることによって,これに代えることができる。

なお,クラス II 絶縁構造のものは,

表 15 によって 50Hz 又は 60Hz の正弦波に近い電圧を 1 分間加

え,これに耐えるかどうか調べる。ただし,多数個の場合は,充電部と,人が触れるおそれがある非

充電金属部又は外郭との間に,定格電圧が 100V のものは 2500V,定格電圧が 200V のものは 4 000V

の 50Hz 又は 60Hz の正弦波に近い電圧を 1 分間加えることによって,これに代えることができる。

表 15  クラス II 絶縁構造電気ドリルの耐電圧値

単位 V

電圧

絶縁の種類

定格電圧が 100V のもの 定格電圧が 200V のもの

機能絶縁

1 000

1 500

保護絶縁

1 500

2 500

強化絶縁

2 500

4 000

8.6

出力試験  出力試験は,次によって行う。

(1)

定格周波数,定格電圧及び全負荷電流で電気ドリルを運転し,出力がほぼ一定となったとき,その値

を測定する。

(2)

定格周波数,定格電圧及び定格出力(銘板記載の値)で電気ドリルを連続して 30 分間運転したとき,

電流値を測定する。

8.7

スイッチ試験  スイッチ試験は,次によって行う。

(1)

開閉試験  開閉試験は,表 16 に示す条件で行い,各部に支障が生じるかどうかを調べる。


9

C 9605-1988

表 16  スイッチの開閉試験条件

項目(

1

)

周波数

電圧

電流

力率

開閉の速さ

回数

1

定格周波数  定格電圧

全負荷電流

全 負 荷 電 流

の と き の 力

毎分約 20 回

開閉

10 000

2(

2

)

定格周波数

定格電圧の

1.2

倍の電圧

電 気 ド リ ル
を 拘 束 (

3

)

た と き の 電

電 気 ド リ ル
を 拘 束 (

3

)

た と き の 力

毎分約 4 回 CO(

4

)5

(

1

)

試験順序を示す。

(

2

)

項目 1 の試験に合格した試験品について行う。

(

3

)

定格周波数の定格電圧の 1.2 倍の電圧を加えて拘束する。

(

4

) CO

は,閉路動作 (C) に続いて,直ちに遮断動作 (O) を行うことを示す。

(2)

温度試験  温度試験は,スイッチに電気ドリルの定格周波数の定格電圧を加え,電気ドリルの全負荷

電流に等しい電流を通じ,各部の温度がほぼ一定となったときの温度を熱電温度計法によって測定す

る。

8.8

コードの折り曲げ試験

8.8.1

本体とコードとの接続部の折り曲げ試験  本体とコードとの接続部の折り曲げ試験は,図 のよう

にコードに 5N {500gf} の引張荷重がかかっているようにし,可動板を回してコード本体出口で,コード

を右方向に 60°折り曲げ,これを元に戻し(これを 1 回とする。

,続いて左方向に 60°折り曲げ,これを

元に戻す(これを 1 回とする。

。この操作を毎分約 40 回の速さで,連続 5 000 回繰り返した後,コードの

短絡の有無及び素線の断線率を調べる。

図 1  コードの折り曲げ試験

8.8.2

コード付一体成形の接続器のコード接続部の折り曲げ試験  コード付一体成形の接続器のコード

接続部の折り曲げ試験は,

図 に示す試験装置の可動板の中心と当該接続部とを一致させ,さらに,コー

ドが可動範囲の中央で折り曲がらず鉛直になるように,接続器を取り付け,コード 5N {500gf} の引張荷

重がかかるようにし,可動板を左右交互に各々60°の角度で毎分約 40 回(左右それぞれを 1 回と数える。

の速さで,5000 回操作を行った後,コードの短絡の有無及び素線の断線率を調べる。


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図 2  一体成形の接続器のコード接続部の折り曲げ試験

8.9

衝撃試験  衝撃試験は,次によって行う。

(1)

水平で表面が平らなコンクリート床上に大きさ約 1.5×1.5m,厚さ約 30mm のラワン板を置き,

図 3

に示す左又は右側面が水平になるように器体をひもによってつり下げ,

表 17 の高さから 3 回落下させ

た後,充電部の露出の有無等を調べる。

備考1.  試験は,無通電で行う。

2.

ドリル及び工具を使用しないで取り外すことができる附属品は,取り外す。

3.

直付けのコードは,落下させる際,邪魔にならないよう器体上部に束ねる。

表 17  落下高さ

製品の質量

kg

底面からの落下高さ

cm

                  4

以下のもの

70

4

を超え  7 以下のもの

50

7

を超えるもの 30

(2)

外郭として用いる絶縁物及び器体の外面に露出しているブラシキャップその他これらに類するものに

あっては,質量が 250g で,ロックウェル硬さ HRR100 に表面をポリアミド加工した半径が 10mm の

球面をもつおもりを 20cm の高さから垂直に落とすか,又はこれと同等の衝撃力をロックウェル硬さ

HRR100

に表面をポリアミド加工した半径が 10mm の球面をもつ衝撃片によって加えた後,充電部の

露出の有無等を調べる。ただし,器体の外面に露出しているブラシキャップその他これらに類するも

のであって,表面積が 4cm

2

以下であり,器体の外郭の表面から 10mm 以上突出していないものは,こ

の限りでない。

8.10

耐久性試験  耐久性試験は,定格電圧の 1.1 倍の電圧で無負荷の状態において,100 秒運転,20 秒休

止する操作を繰り返し,運転時間(休止時間を含む。

)が 24 時間に達した後,引き続き定格電圧の 0.9 倍

の電圧で運転時間(休止時間を含む。

)が 24 時間に達するまで運転した後,各部の緩みなどがあるかどう

かを調べる。

8.11

騒音試験

8.11.1

無負荷状態の騒音試験  無負荷状態の騒音試験は,次の条件において,定格周波数の定格電圧を加

えて無負荷運転したとき測定する。


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(1)

測定条件

(a)

暗騒音と合成音との差が,10dB 以上あるときに測定することを原則とし,それ以下の場合は,JIS Z 

8731

(騒音レベル測定方法)に規定する補正値によって補正する。

(b)

騒音計は,JIS C 1502(普通騒音計)に規定する普通騒音計又はこれと同等以上の機能をもつ騒音

計とする。

(2)

測定方法  図 のような方向において電気ドリルから 1m 離れた所にマイクロホンを置き,測定する。

測定値は,その音の大小に関係なく,騒音計の聴感補正回路の A 特性で測定する。動特性は,

“緩”

(slow)

を使って測定し,測定期間中の平均値を読み取り,

図 の各方向の平均値をもって,その電気

ドリルの騒音値とする。マイクロホン及び測定物の高さは,床面から 75cm とする。

図 3  無負荷状態での騒音測定

(3)

注意事項

(a)

マイクロホンに気流による風圧がかからないようにすること。

(b)

電磁場の影響を受けないこと。

(c)

電気ドリルの振動がマイクロホンに入らないよう,十分に注意すること。

8.11.2

負荷状態の騒音試験  負荷状態の騒音試験は,次の条件において,定格周波数の定格電圧,全負荷

電流に近い負荷を加えて,表示最大径のドリルを用いてさん(鑚)孔したとき測定する。

(1)

測定条件

(a)

暗騒音と合成音との差が 10dB 以上あるときに測定することを原則とし,

それ以下の場合,

JIS Z 8731

に規定する補正値によって補正する。

(b)

騒音計の種類は,JIS C 1502 に規定する普通騒音計又はこれと同等以上の機能をもつ騒音計とする。

(2)

さん(鑚)孔条件

(a)

被さん孔材料は,金工用及び金工・木工兼用のものは JIS G 3101(一般構造用圧延鋼材)に規定す

る 2 種材料(記号 SS41)とし,厚さ d(ただし,最小厚さ 10mm とする。d:ドリルの最大径)

,大

きさ縦 30cm,横 30cm とする。木工用のものは,大きさ縦 30cm,横 1m,厚さ 2dd:ドリルの最

大径)のラワン板とする。

(b)

被さん孔材料は,万力に取り付けるか又は水平に台上に置いてさん孔するものとし,その台は,さ

ん孔時に発生する器体の騒音とさん孔音の合成音だけが測定できるようなものとすること。

(3)

測定方法  図 のような方法において,電気ドリルから 1m 離れた所にマイクロホンを置き測定する。

測定値は,その音の大小に関係なく,騒音計の聴感補正回路の A 特性で測定する。動特性は“緩”

(slow)

を使って測定し,所定期間中の平均値を読み取り,

図 の各方向の平均値をもって,その電気

ドリルの騒音値とする。測定期間は,ほぼ一定の負荷となっている期間の任意の 5 秒間とする。

マイクロホン及び測定物の高さは,床面から 75cm とする。


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図 4  負荷状態の騒音測定

(4)

注意事項

(a)

マイクロホンに気流による風圧がかからないようにすること。

(b)

電磁場の影響を受けないこと。

(c)

もみつけ時及び突抜け時は,測定の対象としないこと。

8.12

拘束試験  拘束試験は,あらかじめ回転部分(チャック部分)を拘束し,速やかに定格電圧に昇圧

して,3 秒間保持した後,拘束を外し,定格電圧で 30 秒間無負荷運転し,異常の有無を調べる。

8.13

過負荷試験  過負荷試験は,定格周波数,定格電圧を加え,次によって行う。

なお,この試験は,クラス II 絶縁構造のものに適用する。

(1)

表 18 の順序によって,発炎,巻線断線,電機子拘束,巻線短絡(

5

)

のいずれかが発生するまで,又は全

負荷電流の 200%の負荷まで運転する。

なお,外郭の温度が 90℃を超える場合は,無負荷運転に切り換え,外郭の温度が安定飽和した後,

無負荷運転に切り換える前の負荷で運転再開する。ただし,累計の運転時間は 6 時間とする。

(

5

)

設定した電流が試験中50%以上増したときをいう。

(2)

発炎,巻線断線又は電機子拘束が生じた場合は,試験を打ち切り,発生した炎は直ちに消す。発炎,

巻線断線又は電機子拘束を伴わない巻線短絡が生じた場合は,その状態のまま試験を 30 秒間継続する。

この間に発炎,巻線断線又は電機子拘束がないときは運転を中止して室温まで冷却し,電流調節を元

の状態のまま再び 30 秒間運転する。

発炎,巻線断線又は電機子拘束が生じた場合は,

試験を中止する。

表 18  過負荷試験

試験順序

負荷及び運転時間

 1

全負荷電流で 14.5 分運転し,続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 2

全負荷電流の 110%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 3

全負荷電流の 120%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 4

全負荷電流の 130%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 5

全負荷電流の 140%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 6

全負荷電流の 150%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 7

全負荷電流の 160%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 8

全負荷電流の 170%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

 9

全負荷電流の 180%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

10

全負荷電流の 190%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

11

全負荷電流の 200%で 14.5 分運転し,

続けて無負荷で 0.5 分運転する。

備考  試験時間短縮のため,試験順序 3 から開始することができる。ただし,

運転時間の累計が 30 分未満となる場合は,試験順序 1 から開始するも
のとする。


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9.

製品の呼び方  製品の呼び方は,名称,種類,使用電動機及び定格電圧による。

例:携帯電気ドリル金工用  32mm 三相かご形誘導電動機  200V

携帯電気ドリル金工用  6.5mm 直巻整流子電動機  100V

携帯電気ドリル木工用  21mm 直巻整流子電動機  100V

10.

表示  電気ドリルには,見やすいところに次の事項を表示しなければならない。ただし,木工用電気

ドリルにはその旨を記す。

(1)

名称

(2)

種類 

(3)

相数(定格電圧が 125V 以上のものに限る。) 

(4)

定格周波数 (Hz) 

(5) 

定格電圧 (V) 

(6)

全負荷電流 (A) 

(7)

定格消費電力 (W) 

(8)

定格出力 (W) 

(9) 

無負荷回転速度(定格周波数,定格電圧における無負荷時のドリルの毎分回転数の公称値。) (rpm) 

例: 1 500rpm

(10)

製造業者名又はその略号 

(11)

製造年月又は製造番号 

(12)

クラス II 絶縁構造のものは

の表示 

(13)

雨中での使用を禁止する旨 

11.

取扱説明書に記載する事項  取扱説明書に記載する事項は,次による。

(1)

使用方法に関する事項

(2)

保守に関する事項


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付図  試験指

備考1.  角度の許容差は,±5'とする。

2.

寸法の許容差は,25mm 以下は

0

05

.

0

mm

,25mm を超える寸法は,±0.2mm とする。

3.

使用材料は,黄銅とする。

4.

試験品の導電部は,一括して接続する。

5.

電源電圧は,定格電圧以下の任意の電圧(40V 以上)としてよい。

引用規格: 

JIS B 4003

  モールステーパ部のシャンクとソケット

JIS B 4634

  携帯電気ドリル用チャック

JIS B 6001

  工作機械用ドリルチャック

JIS B 7503

  0.01mm 目盛ダイヤルゲージ

JIS C 0702

  クラス II 電気機器の絶縁構造通則

JIS C 1502

  普通騒音計

JIS C 2801

  整流子片

JIS C 3306

  ビニルコード

JIS C 3312

  600V ビニル絶縁ビニルキャブタイヤケーブル

JIS C 3327

  600V ゴムキャブタイヤケーブル

JIS C 8303

  配線用差込接続器


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JIS G 3101

  一般構造用圧延鋼材

JIS Z 8731

  騒音レベル測定方法

家庭電器部会  電動工具専門委員会  構成表

氏名

所属

(委員会長)

牛  島  隆  久

財団法人日本電気用品試験所

横  江  信  義

通商産業省機械情報産業局

稲  葉  裕  俊

資源エネルギー庁公益事業部

前  田  勲  男

工業技術院標準部

粂  川  壮  一

労働省産業安全研究所

北  山  宏  幸

労働省労働基準局安全衛生部

山  本  和  男

株式会社芝浦製作所

荒  巻  俊  雄

神鋼電機株式会社

中  野  忠  司

株式会社マキタ電機製作所

大  鐘  治  昭

ミタチ電機株式会社烏山工場

酒  井  武  雄

リョービ株式会社

堀      俊  治

高速電機株式会社浦和工場

森  井      清

社団法人全国建設業協会

浅  田  時  則

社団法人日本鉄道車両工業会

平  井  正  行

石川島播磨重工業株式会社東京第一工場

赤  坂  賢  治

日産自動車株式会社

古  川  哲  夫

財団法人日本消費者協会

柳  橋  哲  夫

国民生活センター

山  中  克  彦

社団法人日本電機工業会

山  田  悦  弘

日立工機株式会社

(事務局)

五十嵐  重  雄

工業技術院標準部電気・情報規格課

穐  山  貞  治

工業技術院標準部電気・情報規格課)

長  谷  亮  輔

工業技術院標準部電気・情報規格課