C 8942
:2009
(1)
目 次
ページ
1
適用範囲
1
2
引用規格
1
3
用語及び定義
1
4
性能
3
4.1
等級
3
4.2
最大入射角
3
4.3
有効照射時間
3
5
性能の測定方法
4
5.1
放射照度の設定
4
5.2
放射照度の場所むら測定
4
5.3
放射照度時間変動率の測定
6
5.4
スペクトル合致度の測定
6
5.5
測定頻度
7
6
表示
7
C 8942
:2009
(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人光産業技術振興協会(OITDA)及び財
団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工
業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
日本工業規格
JIS
C
8942
:2009
多接合太陽電池測定用ソーラシミュレータ
Solar simulator for multi-junction solar cells and modules
1
適用範囲
この規格は,平面・非集光形の電力発電を目的とする地上用多接合太陽電池セル,地上用多接合太陽電
池サブモジュール及び地上用多接合太陽電池モジュール(以下,太陽電池セル・モジュールという。
)の出
力測定に用いる多接合太陽電池測定用ソーラシミュレータ(以下,ソーラシミュレータという。
)について
規定する。
注記 この規格は,ソーラシミュレータの特性及び測定方法について規定するものであるが,この規
格単独では,適合性評価を行うことは,意図していない。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS C 8941
二次基準多接合太陽電池要素セル
JIS C 8943
多接合太陽電池セル・モジュール屋内出力測定方法(基準要素セル法)
JIS Z 8103
計測用語
JIS Z 8120
光学用語
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 8941,JIS C 8943,JIS Z 8103 及び JIS Z 8120 によるほか,
次による。
3.1
放射照度
太陽電池セル・モジュールの面に入射する放射束を,その面の面積で除した値。
3.2
放射照度の場所むら
ソーラシミュレータ照射面の場所による放射照度のむらの度合いを示す値。式(1)から求められる。
Δ
spatial
100
min
max
min
max
×
+
−
±
=
E
E
E
E
(1)
ここに,
Δ
spatial
:
放射照度の場所むら
(
%
)
E
max
:
照射面内の放射照度の最大値
(W/m
2
)
E
min
:
照射面内の放射照度の最小値
(W/m
2
)
2
C 8942
:2009
3.3
放射照度時間変動率
1
枚の太陽電池セル・モジュールの
I-V
特性の全データを採取するのに必要な時間を基準とし,ソーラ
シミュレータ製造業者とソーラシミュレータ使用者間との協定で規定する時間内の放射照度の変動率。式
(2)
から求められる。
Δ
temporal
100
min
max
min
max
×
+
−
±
=
E
E
E
E
(2)
ここに,
Δ
temporal
:
放射照度時間変動率
(
%
)
E
max
:
規定時間内の放射照度の最大値
(W/m
2
)
E
min
:
規定時間内の放射照度の最小値
(W/m
2
)
3.4
スペクトル合致度
ある波長帯(
λ
i
〜
λ
i
+
1
の間)でのスペクトルの合致度。式
(3)
から求められる。
( )
( )
∫
∫
+
+
=
1
o
1
s
i
i
i
i
i
d
E
d
E
M
λ
λ
λ
λ
λ
λ
λ
λ
(3)
ここに,
M
i
:
スペクトル合致度
λ
:
光の波長
(nm)
E
o
(
λ)
:
波長
λ
での基準太陽光
1)
の分光放射照度
[
W/(m
2
・
nm)
]
E
s
(
λ)
:
波長
λ
でのソーラシミュレータの分光放射照度
[
W/(m
2
・
nm)
]
注
1)
JIS C 8941
に規定する基準太陽光。
3.5
有効照射面
ソーラシミュレータに規定された光学的仕様を満足する照射面。
3.6
照射面への最大入射角
有効照射面上の任意の点に入射する光線が,それらの入射点を起点とする法線となす角度のうちの最大
値(
図 1 参照)。
法線
n1,n2,n3……
最大入射角
θ1,θ2,θ3,……の中の最大値
図 1−照射面への入射角
3
C 8942
:2009
3.7
スペクトル可変式人工光源
光路中に複数の光学フィルタを配置,又は分光放射照度分布(スペクトル)の異なる複数の光源の出力
を調整することによって,そのスペクトルが可変な形式のソーラシミュレータ。
4
性能
4.1
等級
ソーラシミュレータは,
その放射照度の場所むら,
放射照度時間変動率及びスペクトル合致度によって,
等級
MS
,等級
MA
,等級
B
及び等級
C
の
4
等級に分類する。各等級に属するソーラシミュレータは,
表
1
に示す当該等級の項目のすべてを満足しなければならない。スペクトル合致度は,
表 2 又は表 3 に示す
波長帯ごとに評価し,すべての波長帯で該当する等級の合致度を満足しなければならない。また,スペク
トル可変式人工光源は等級の後に形式を記載する。
例
等級
MA
(スペクトル可変式人工光源)
。
多接合太陽電池の出力測定に使用するソーラシミュレータは,JIS C 8943 の測定手順に基づき,スペク
トルの調整を行う。
なお,要素セルと基準太陽電池要素セルとの分光感度特性の近似度が低い多接合型太陽電池の出力特性
の測定には,等級
MS
を用いなければならない。
表 1−等級の分類
等級
項目
MS MA B C
放射照度の場所むら %
±2 以下
±2 以下
±3 以下
±10 以下
放射照度時間変動率 %
±1 以下
±1 以下
±3 以下
±10 以下
スペクトル合致度
表 2 において
0.95
〜1.05
表 2 において
0.75
〜1.25
表 3 において
0.6
〜1.4
表 3 において
0.4
〜2.0
4.2
最大入射角
照射面への最大入射角は,
15
°以内とする。
4.3
有効照射時間
パルス光を照射する方式のソーラシミュレータの場合,パルス光の照射時間幅のうち 4.1 の光学的仕様
を満足する有効照射時間は,式
(4)
から求められる。
T
Eff
≧
T
A
+
T
B
+
T
C
(4)
ここに,
T
Eff
:
有効照射時間
T
A
:
太陽電池セル・モジュールにステップ状に光を照射した場合
の時定数の
4
倍の時間
T
B
:
太陽電池セル・モジュールの負荷をステップ状に変化させた
場合の時定数の
4
倍の時間
T
C
:
太陽電池セル・モジュールの
1
点の
I-V
データを測定するた
めに要する時間
ただし,
1
回の有効照射時間中に負荷を変化させ,
n
点のデータを測定する場合の有効照射時間は,式
(5)
から求められる。
4
C 8942
:2009
T
Eff
≧
T
A
+
n(T
B
+
T
C
) (5)
5
性能の測定方法
5.1
放射照度の設定
放射照度の設定は,被測定太陽電池セル・モジュールの分光感度に対応する複数の二次基準多接合太陽
電池要素セルを用いて行う。
5.2
放射照度の場所むら測定
放射照度の場所むらの測定は,次の a)及び b)による。
a)
測定に使用する受光器は,直径
2 cm
以下の丸形又は辺
2 cm
以下の角形の形状で,その受光面積はソ
ーラシミュレータ有効照射面積の
4
%以下のものでなければならない。また,その構造は,少なくと
も入射角±
15
°の光を障害なく受光できるものでなければならない。
b)
ソーラシミュレータの光源を点灯し,熱的に安定した後,有効照射面上の放射照度を
1 000
±
50 W/m
2
に合わせ,a)に示す受光器で
図 2 に示すように
17
点以上の放射照度を測定する。有効照射面の大きさ
及び形状に応じて測定箇所を増やす。
注記
測定箇所は,ソーラシミュレータ製造業者とソーラシミュレータ使用者間との協定による。
5
C 8942
:2009
a)
丸形照射面の場合
b)
角形照射面の場合
図 2−放射照度の場所むら測定(参考)
また,パルス光を照射するソーラシミュレータのように
1
回の発光中にすべての点の測定をするこ
とが困難な場合は,有効照射面内に放射照度補正用の受光器を置き,各発光回ごとの放射照度のばら
つきを同時に測定し,式
(6)
によって各点の放射照度を補正する。
i
i
i
E
e
e
E
′
×
=
1
(6)
ここに,
E
i
:
E'
i
の補正値
(W/m
2
)
e
1
:
1
回目の発光時の比較用受光器の測定値
(W/m
2
)
又は比較用受光器の校正値
(W/m
2
)
e
i
:
i
回目の発光時の比較用受光器の測定値
(W/m
2
)
E'
i
:
i
回目の発光時の場所むら測定値
(W/m
2
)
6
C 8942
:2009
c) b)
で得たデータから最大値
E
max
及び最小値
E
min
を求め,式
(1)
から放射照度の場所むらを計算する。
d)
スペクトル可変式人工光源において,複数の種類の光源をもつ場合は,それら複数の種類の光源を点
灯させた状態で放射照度の場所むらの測定を行い,更に光源ごとに放射照度の場所むらの測定を行う。
5.3
放射照度時間変動率の測定
放射照度時間変動率の測定は,次による。
a)
測定に使用する受光器は,太陽電池セル・モジュールの
I-V
特性データ取込み速度よりも十分に早い
応答速度をもつものでなければならない。
b)
ソーラシミュレータの光源を点灯し,熱的に安定した後,有効照射面上の放射照度を
1 000
±
50 W/m
2
に合わせ,有効照射面上の放射照度を 3.3 の規定時間以上記録する。
c)
5.2 c)
で得られた放射照度の記録から,最大値
E
max
及び最小値
E
min
を求め,式
(2)
から放射照度時間変
動率を求める。
注記
5.2
及び 5.3 の測定中,受光器の温度が測定精度に影響するほど上昇する場合は,冷却装置など
を用いて,受光器の温度を上昇させない手段を講じることが望ましい。
5.4
スペクトル合致度の測定
スペクトル合致度の測定は,次による。
a)
ソーラシミュレータの光源を点灯し,熱的に安定した後,有効照射面上の放射照度を
1 000
±
50 W/m
2
に合わせ,波長分解能
10 nm
以下の分光器を用いて分光放射照度の測定を行う。
b)
有効照射面での分光放射照度を,波長
λ
について
表 2 又は表 3 に示す波長帯ごとに積分する。
c)
それぞれ
表 2 の場合は
i
=
1
〜
15
,
表 3 の場合は
i
=
1
〜
6
の積分の総和を
100
としたときの波長帯ごと
の積分値の割合を求める。
d)
c)
で求めた波長帯ごとの積分値の割合を,
表 2 又は表 3 に示す対応する波長帯の相対エネルギー分布
(
%
)
で除し,それぞれの波長帯でのスペクトル合致度(
表 2 の場合は
M
i
: i
=
1
〜
15
,
表 3 の場合は
M
i
: i
=
1
〜
6
)を求める。
e)
スペクトルの測定箇所は,有効照射面の大きさ・形状に応じて,ソーラシミュレータ製造業者とソー
ラシミュレータ使用者間との協定による。
7
C 8942
:2009
表 2−基準太陽光のエネルギー分布
表 3−基準太陽光のエネルギー分布
i
波長帯 nm
λ
i
〜
λ
i
+
1
相対エネルギー分布 %
i
波長帯 nm
λ
i
〜
λ
i
+
1
相対エネルギー分布 %
1 350
〜 400 4.1
1
400
〜
500
18.4
2 400
〜 450 7.8
2
500
〜
600
19.9
3 450
〜 500 9.8
3
600
〜
700
18.4
4 500
〜 550 9.7
4
700
〜
800
14.9
5 550
〜 600 9.4
5
800
〜
900
12.5
6 600
〜 650 9.1
6
900
〜 1 100
15.9
7 650
〜 700 8.5
400
〜 1 100
100.0
8 700
〜 750 7.6
9 750
〜 800 6.7
10 800
〜 850 6.2
11 850
〜 900 5.8
12 900
〜 950 3.4
13 950
〜 1 000
3.8
14 1
000
〜 1 050
4.4
15 1
050
〜 1 100
3.8
350
〜 1 100
100.0
5.5
測定頻度
測定頻度は,次による。
a)
放射照度の場所むら及び放射照度時間変動率は,
1
か月に
1
回以上測定する。
b)
分光放射照度(スペクトル合致度)は,
6
か月に
1
回以上測定する。
c)
それぞれの測定では,ソーラシミュレータに表示された等級の性能を満足していることを確認する。
6
表示
ソーラシミュレータに添付する特性表には,次の項目を記載する。
a)
製造業者名
b)
形式
c)
等級
d)
放射照度
(W/m
2
)
e)
照射面の位置
f)
有効照射面積
g)
分光放射照度(スペクトル合致度
M
i
を表示する。
)
h)
照射面積内の放射照度の場所むら
i)
放射照度時間変動率
j)
照射面への最大入射角
k)
データ採取の日付
l)
製造番号
m)
適用太陽電池セル,適用太陽電池サブモジュール及び適用太陽電池モジュールの種類
n)
スペクトル可変範囲