日本工業規格
JIS
C
8934
-1995
アモルファス太陽電池セル出力
測定方法
Measuring method of output power
for amorphous solar cells
1.
適用範囲 この規格は,JIS C 8931 に規定する二次基準アモルファス太陽電池セル(以下,二次基準
太陽電池セルという。
)を使用して JIS C 8933 に規定するアモルファス太陽電池測定用ソーラシミュレー
タ(以下,ソーラシミュレータという。
)で,平面・非集光形の電力発電を目的とする積層形を除く地上用
アモルファス太陽電池セル(以下,太陽電池セルという。
)の出力特性を測定する方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1102
指示電気計器
JIS C 8913
結晶系太陽電池セル出力測定方法
JIS C 8931
二次基準アモルファス太陽電池セル
JIS C 8933
アモルファス太陽電池測定用ソーラシミュレータ
JIS C 8937
アモルファス太陽電池出力電圧・出力電流の温度係数測定方法
JIS Z 8103
計測用語
JIS Z 8113
照明用語
JIS Z 8120
光学用語
2.
用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 8913,JIS C 8931,JIS C 8933,JIS Z 8103,
JIS Z 8113
及び JIS Z 8120 の規定によるほか,次による。
(1)
サンプリング遅延時間 太陽電池出力測定の際,バイアス電圧をステップ状に変化させながら電流・
電圧を測定する場合,そのステップバイアス電圧印加時からデータ取得(サンプリング)開始までの
時間。
3.
測定の状態
3.1
標準状態 太陽電池セルの測定は,次の条件で行う。
(1)
セル温度 25℃
(2)
放射照度 1 000±50W/m
2
(3)
光源の条件 4.(4)による
3.2
基準状態 基準状態は,次による
(1)
セル温度 25℃
(2)
分光分布 AM1.5 全天日射基準太陽光*
2
C 8934-1995
注*
JIS C 8931
を参照。
(3)
放射照度 1 000W/m
2
4.
測定装置 測定に用いる機器は,次の条件を満足するものとする。
(1)
計測器は,JIS C 1102 に規定する 0.5 級又はこれと同等の許容差のものとする。
(2)
電圧計は,測定中のいかなる場合も,電圧計に流入する電流が短絡電流 I
sc
の 0.1%を超えないような
入力インピーダンスが高いものとする。
(3)
温度を測定する計測器の確度は,±1℃とする。
(4)
測定光源は,JIS C 8933 に規定する等級 A 又は B のソーラシミュレータとする。
(5)
放射照度を設定する場合は,JIS C 8931 に規定する二次基準アモルファス太陽電池セルを用いて行う。
なお,この二次基準太陽電池セルは,25±2℃にセル温度を制御した状態で用いる。
(6)
二次基準太陽電池セルは,JIS C 8931 に従って校正された二次基準太陽電池セルとする。
なお,測定光源下でのスペクトルミスマッチによる測定誤差が±2%以内であることが確認できると
きには,異なる太陽電池群の二次基準太陽電池セルを用いてもよい。
(7)
バイアス用電源は,太陽電池セルの可変負荷として用いることができるもので,
図 1 の I-V 特性曲線
上の A 点(電圧が負の値を示す点)と B 点(電流が負の値を示す点)との間で電圧をステップ状又は
連続的に掃引できるものとする。
備考 被測定太陽電池セルに印加される順バイアス電圧及び逆バイアス電圧によって被測定太陽電池
セルの特性劣化又は破壊を起こす場合があるので,被測定太陽電池セルの種類ごとに順バイア
ス電圧及び逆バイアス電圧の最大値を制御できるものとする。ただし,逆バイアス電圧につい
ては,被測定太陽電池セル製造業者の指定する値とする。
図 1 I-V 特性曲線
注(
1
) A
点の電圧値は6.2に規定する補正をした後でも,負であるように設定しなければならな
い。
(
2
) B
点の電圧値は 6.2 に規定する補正をした後でも,負であるように設定しなければならな
い。
5.
測定
5.1
測定項目 次の項目について,被測定太陽電池セルの特性値を測定する方法を規定する。
3
C 8934-1995
(1)
短絡電流 I
sc
(mA 又は A)
(2)
開放電圧 V
oc
(mA 又は A)
(3)
最大出力 P
m
(mW 又は W)
(4)
最大出力動作電圧 V
pm
(mV 又は V)
(5)
最大出力動作電流 I
pm
(mA 又は A)
(6)
曲線因子 FF
(7)
太陽電池セル変換効率
η
(%)
(8)
電圧規定電流 I
v
(mA 又は A)
(9)
電流規定電圧 V
i
(mV 又は V)
5.2
測定方法 測定方法は,次による。
(1) I-V
特性曲線の測定は,4 端子法を用いて行う。このとき,リード線又はプローバ部によって被測定太
陽電池セルが遮へいされる部分は,できるだけ集電電極など発電に寄与しない部分とし,被測定太陽
電池セルの有効面積の 3%以上が遮へいされる状態で測定を行ってはならない。
(2) I-V
特性曲線の測定は,
図 2 の回路を使用し,次のいずれかの方法による。この場合,I-V 特性曲線の
短絡電流 I
sc
(
図 1 の C 点)から開放電圧 V
oc
(
図 1 の D 点)までの間で 30 点以上を測定する。
図 2 I-V 特性曲線の測定
(a)
電圧・電流の測定端子を X-Y レコーダに接続し,バイアス電圧を連続的に変化させながら I-V 特性
曲線を描かせる方法。
(b)
バイアス電圧をステップ状に変化させる場合は,電圧・電流の測定出力を記録し,測定値を基に I-V
特性曲線を描かせる方法。バイアス電圧をステップ状に変化させる場合は,電圧及び電流のサンプ
リング遅延時間を測定する太陽電池セルの時定数の 4 倍以上とする。
(3)
ガラス基板のアモルファス太陽電池セルでは,発電部以外に照射された光の回り込みによる測定誤差
を最小にするため,セル周辺部の非発電部は黒色板によって照射光をできる限り遮へいして測定を行
う。
5.3
測定手順 測定手順は,次による。
(1)
ソーラシミュレータを点灯し,放射照度が一定になるまで放置する。
(2)
試験面上に,二次基準太陽電池セルを光源の光軸と垂直になるように置く。
(3)
二次基準太陽電池セルのセル温度を 25±2℃にする。
4
C 8934-1995
(4)
光を照射し,二次基準太陽電池セルの短絡電流 I
sc
が 3.1(2)で定めた放射照度の範囲になるようソーラ
シミュレータを調節する。直径 5cm よりも大きい太陽電池セル(角形の太陽電池セルでは,対角線の
長さが 5cm 以上)を測定するときには,試験面上の測定に使用する面積内で,少なくとも中央部と周
辺部 4 か所の放射照度を測定し,その平均値をもって放射照度とする。
(5)
被測定太陽電池セルを(2)で二次基準太陽電池セルを置いた位置と同一平面上にソーラシミュレータ
の光軸と垂直になるように置く。
(6)
放射照度を設定した状態から変化させずに,被測定太陽電池セルの I-V 特性曲線の測定を行う。
(7)
被測定太陽電池セルのセル温度を測定する。
(8)
放射照度の変化をチェックするために,随時,二次基準太陽電池セルなどで放射照度の測定を行い,
3.1(2)
に示す範囲にあることを確認する。
6.
計算及び測定データの補正
6.1
測定データの補正 5.で測定したデータは,6.2 に示す補正式によって基準状態への換算を行う。た
だし,(1)及び(2)を満足する場合は補正を行わなくてもよい。
(1)
被測定太陽電池セル温度が 25±2℃の範囲にあるとき。
(2)
放射照度が 1 000±10W/m
2
の範囲にあるとき。
6.2
補正式 基準状態での放射照度,被測定太陽電池セルの温度,電圧値及び電流値をそれぞれ E
2
,T
2
,
V
2
及び I
2
とし,二つの異なった照度で測定した放射照度,被測定太陽電池セルの温度,電圧値及び電流値
を E
1
,T
1
,
,V
1
及び I
1
並びに E
3
,T
3
,V
3
及び I
3
とするとき,次の式(1)及び式(2)を用いて補正を行う。すな
わち,測定した I
1
-V
1
及び I
3
-V
3
特性曲線から直線補間の方法によって,基準状態の電圧値及び電流値を求
める。ただし,放射照度 E
1
及び E
3
は 600W/m
2
以上で,放射照度の差 (E
2
-E
1
)
と (E
1
-E
3
)
が 2 けた以上の
数値をもつような照度を選択する(代表例:E
1
=950W/m
2
,E
3
=800W/m
2
)
。
)
(
)
(
1
2
3
1
3
1
1
2
1
2
T
T
I
I
E
E
E
E
I
I
−
+
−
−
−
+
=
α
⋅
(1)
1
1
1
2
1
2
)
(
oc
V
V
T
T
V
V
⋅
−
+
=
β
(2)
ここに,
I
3
:
V
3
=V
1
のときの I
3
−V
3
特性曲線上の電流値 (A)
(
図 3 参照)
V
oc1
:
I
1
−V
1
特性曲線上の開放電圧 (V) (
図 3 参照)
α
:
放射照度 1 000W/m
2
での被測定太陽電池セル温度が 1℃変動
したときの短絡電流 I
sc
の変動値 (A/℃)
β
:
放射照度 1 000W/m
2
での被測定太陽電池セル温度が 1℃変動
したときの開放電圧 V
oc
の変動値 (V/℃)
この補正係数は,一群の太陽電池セルを代表する係数である。
なお,受渡当事者間の協定によって,補正項の一部を省略することができる。ただし,式(1)及び式(2)
は温度 T
3
が温度 T
1
±2℃の範囲にあることを前提としている。この範囲を超えるときは,I
3
,V
3
の代わり
に次の式(3)及び式(4)と 6.3 で求められる放射照度 E
3
での温度係数
α
,
β
を用いて,温度補正を行った後の
I
3
'
,V
3
'
を用いる。
)
(
'
3
1
3
3
T
T
I
I
−
+
=
α
(3)
)
(
'
3
1
3
3
3
3
T
T
V
V
V
V
oc
−
・
+
=
β
(4)
ここに,
3
oc
V
:
I
3
−V
3
特性曲線上の開放電圧 (V) (
図 3 参照)
5
C 8934-1995
図 3 電流値直線補間法の説明図
6.3
補正係数の算出方法 アモルファス太陽電池セルの出力電流・電圧の放射照度 1 000W/m
2
での温度
係数
α
,
β
の測定は,JIS C 8937 の規定によって行い,各種放射照度 E での温度係数
α
,
β
は,次式によって
算出する。
α
(E) =
α
(1 000)
×
000
1
E
(5)
β
(E) =
β
(1 000)
一定 (6)
6.4
各パラメータの算出方法 短絡電流 I
sc
,開放電圧 V
oc
,最大出力 P
m
,最大出力動作電圧 V
pm
,最大出
力動作電流 I
pm
,曲線因子 FF,太陽電池セル変換効率
η
,電圧規定電流 I
v
及び電流規定電圧 V
i
を JIS C 8913
の 6.4(各パラメータの算出方法)によって算出する。
6
C 8934-1995
アモルファス太陽電池作業会 構成表
氏名
所属
(主査)
下 川 隆 一
通商産業省工業技術院電子技術総合研究所
猪 狩 真 一
財団法人日本品質保証機構
長 峰 文 昭
財団法人日本品質保証機構
能 勢 順 多
財団法人機械電子検査協定協会
石 原 隆
三菱電機株式会社
大 西 三千年
三洋電機株式会社
栗谷川 悟
昭和シェル石油株式会社
小 林 広 武
財団法人電力中央研究所
高 倉 秀 行
富山県立大学
高 橋 昌 英
株式会社四国総合研究所
川 崎 憲 介
株式会社四国総合研究所
藤 間 健 一
通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部
杉 上 孝 二
通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部
森 信 昭
通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部
佐 野 則 雄
新エネルギー・産業技術総合開発機構
中 島 光 雄
新エネルギー・産業技術総合開発機構
大 湯 孝 明
新エネルギー・産業技術総合開発機構
野 元 克 彦
シャープ株式会社
伊 藤 学
シャープ株式会社
岡 本 浩 二
シャープ株式会社
中 田 行 彦
シャープ株式会社
濱 敏 夫
株式会社富士電機総合研究所
濱 川 圭 弘
大阪大学
古 市 正 敏
通商産業省工業技術院標準部
倉 重 有 幸
通商産業省工業技術院標準部
栗 原 史 郎
通商産業省工業技術院標準部
水 上 誠志郎
鐘淵化学工業株式会社
泉 名 政 信
鐘淵化学工業株式会社
太和田 善 久
鐘淵化学工業株式会社
蓑 輪 義 弘
社団法人日本電機工業会
今 坂 善 夫
社団法人日本電機工業会
清 水 英 範
社団法人日本電機工業会
三 宅 行 美
英弘精機株式会社
室 園 幹 夫
松下電池株式会社
吉 川 重 夫
日本放送協会放送技術研究所
渡 辺 博 之
京セラ株式会社
白 澤 勝 彦
京セラ株式会社
和 田 隆 博
松下電器産業株式会社
坂 東 健
東京電力株式会社
松 田 弘
関西電力株式会社
堀 口 友四郎
ウシオ電機株式会社
(事務局)
増 田 岳 夫
財団法人光産業技術振興協会
朝 倉 武
財団法人光産業技術振興協会
八木沼 洋 子
財団法人光産業技術振興協会
五十里 紘 一
財団法人光産業技術振興協会
湯 村 周 三
財団法人光産業技術振興協会