日本工業規格
JIS
C
8919
-1995
結晶系太陽電池セル・モジュール
屋外出力測定方法
Outdoor measuring method of output power
for crystalline solar cells and modules
1.
適用範囲 この規格は,JIS C 8911 に規定する二次基準結晶系太陽電池セル(以下,二次基準セルと
いう。
)を使用して自然太陽光の下で,平面・非集光形の電力発電を目的とする地上用結晶系太陽電池セル
及び地上用結晶系太陽電池モジュール(以下,太陽電池セル・モジュールという。
)の出力特性を測定する
方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1102
指示電気計器
JIS C 8911
二次基準結晶系太陽電池セル
JIS C 8912
結晶系太陽電池セル・モジュール測定用ソーラシミュレータ
JIS C 8913
結晶系太陽電池セル出力測定方法
JIS C 8914
結晶系太陽電池モジュール出力測定方法
JIS C 8916
結晶系太陽電池セル・モジュールの出力電圧・出力電流の温度係数測定方法
JIS C 8918
結晶系太陽電池モジュール
JIS Z 8103
計測用語
JIS Z 8113
照明用語
JIS Z 8120
光学用語
2.
用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 8911,JIS C 8913,JIS C 8914,JIS C 8916,
JIS C 8918
,JIS Z 8103,JIS Z 8113 及び JIS Z 8120 の規定によるほか,次による。
(1)
全天日射 任意の面に単位面積当たり立体角 2
πSr より入射する自然太陽光の放射束。
(2)
水平面全天日射 水平面に単位面積当たり立体角 2
πSr より入射する自然太陽光の放射束。
(3)
傾斜面全天日射 任意の傾斜面に単位面積当たり立体角 2
πSr より入射する自然太陽光の放射束。
3.
測定の状態
3.1
標準状態 太陽電池セル・モジュールの測定は,次の条件で行う(基準状態への換算を行う。)。
(1)
セル・モジュール温度 10〜70℃
(2)
放射照度 800W/m
2
以上
(3)
採光条件 直達日射,水平面全天日射,傾斜面全天日射のいずれの光も使用できるが,直達日射の入
射角度は 10°以内であること。
2
C 8919-1995
また,測定中の放射照度の変動は 1%以内とし,地表面,周囲の建物などから直達日射の直接反射
がないこと。
3.2
基準状態 基準状態は,次による
(1)
セル・モジュール温度 25℃
(2)
分光分布 AM1.5 全天日射基準太陽光
*
注
*
JIS C 8911
を参照。
(3)
放射照度 1 000W/m
2
4.
測定装置 測定に用いる機器は,次の条件を満足するものとする。
(1)
計測器は,JIS C 1102 に規定の 0.5 級,又はこれと同等以上のものとする。
なお,抵抗器の許容差は,0.2%以内とする。
(2)
電圧計は,測定中のいかなる場合も電圧計に流入する電流が短絡電流 I
sc
の 0.1%を超えないような入
力インピーダンスが高いものとする。
(3)
温度を測定する計測器の確度は,±1℃とする。
(4)
二次基準セルは,JIS C 8911 の 5.(二次基準太陽電池用セルの校正法)の規定に従って校正されたも
のを用いる。
なお,測定光源でのスペクトルミスマッチによる測定誤差が±2%以下であることが確認されたとき
には,異なった太陽電池群の二次基準セルを用いてもよい。ただし,屋外測定に用いる二次基準セル
は,周囲の温度及び環境変化の影響を受けにくく,かつ,保管しやすいパッケージ内に封入され,次
の条件を満たすものとする。
その他の条件は,JIS C 8911 の規定による。
(a)
パッケージのフロントカバーとセルの間は,安定で透明の充てん材で埋め,充てん材の屈折率はフ
ロントカバーの屈折率と類似(10%以内)しているものを使用すること。
また,二次基準セルの感度波長領域で,入射光の 95%以上が二次基準セルに吸収されること。
(b)
二次基準セルは,温度を一定に保持できる構造が望ましいが,セル温度を±1℃の精度で測定できる
構造であればよい。ただし,JIS C 8916 の規定によって 1 000W/m
2
の放射照度で温度係数を測定し
ておくこと。
(5)
バイアス用電源は,被測定太陽電池セル・モジュールの可変負荷として用いることができるもので,
図 1 の I-V 特性曲線上の A 点(電圧が負の値を示す点)と B 点(電流が負の値を示す点)との間で電
圧をステップ状又は連続的に掃引できるものとする。
備考 被測定太陽電池セル・モジュールにかかる逆バイアス電圧によって被測定太陽電池セルの特性
劣化又は破壊を起こす場合があるので,被測定太陽電池セル・モジュールの種類ごとに逆バイ
アス電圧の最大値を制御できるものとする。
3
C 8919-1995
図 1 I-V 特性曲線
注(
1
) A
点の電圧値は6.2に規定する補正をした後でも,負
であるように設定しなければならない。
(2) B
点の電圧値は 6.2 に規定する補正をした後でも,負
であるように設定しなければならない。
5.
測定
5.1
測定項目 次の項目について,被測定太陽電池セル・モジュールの特性値を測定する方法を規定す
る。
(1)
短絡電流
I
sc
(mA
又は A)
(2)
開放電圧
V
oc
(mA
又は A)
(3)
最大出力
P
m
(mW
又は W)
(4)
最大出力動作電圧
V
Pm
(mV
又は V)
(5)
最大出力動作電流
I
Pm
(mA
又は A)
(6)
曲線因子
FF
(7)
太陽電池セル・モジュール変換効率
η
(%)
(8)
電圧規定電流
I
v
(mA
又は A)
(9)
電流規定電圧
V
i
(mV
又は V)
5.2
測定方法 測定方法は,次による。
(1) I-V
特性曲線の測定は,4 端子法を用いて行う。このとき,電流測定端子接続部での電圧降下が測定電
圧に含まれないようにする。
(2) I-V
特性曲線の測定は,
図 2 の回路を使用し,次の(a)又は(b)のいずれかの方法による。この場合,I-V
特性曲線の短絡電流 I
sc
(
図 1 の C 点)から開放電圧 V
oc
(
図 1 の D 点)までの間で 30 点以上を測定す
る。
4
C 8919-1995
図 2 I-V 特性曲線の測定
(a)
電圧・電流の測定端子を X-Y レコーダに接続し,バイアス電圧を連続的に変化させながら I-V 特性
曲線を描かせる方法。
(b)
バイアス電源をステップ状に変化させ,電圧,電流測定出力を記録し,測定値を基に I-V 特性曲線
を描く方法。
備考 接続配線及び電流測定器の内部抵抗によって短絡状態とならない場合は,これらの抵抗による
電圧降下によってわずかに電圧値がゼロにならないが,この電圧値が開放電圧の 3%以内であ
れば I-V 特性曲線を外挿して,縦軸との交点を短絡電流としてもよい。
5.3
測定手順 測定手順は,次による。
(1)
二次基準セルと被測定太陽電池セル・モジュールに地表面及び周囲の建物などから直達日射の直接反
射がないことを確認する。
(2)
二次基準セルを使用して,放射照度が 800W/m
2
以上であることを確認する。
(3)
二次基準セルと被測定太陽電池セル・モジュールの面は±5°以内で同一平面に設定する。
(4)
二次基準セルと被測定太陽電池セル・モジュールの面は法線方向を直達日射に対し±10°以内に設定
する。
(5)
二次基準セルの出力電流値及び温度を測定し,5.4 によって放射照度を決定する。
(6)
被測定太陽電池セル・モジュールの I-V 特性曲線及び温度を測定する。
(7)
測定中の放射照度の変動が±1%以内であること,及び二次基準セル及び被測定太陽電池セル・モジュ
ールの温度の変動が±1℃以内であることを確認する。
5.4
放射照度の計算 放射照度 E は,次の式(1)によって算出する。
)
25
(
000
1
1
2
1
T
I
I
E
ref
ref
ref
−
−
×
=
α
(1)
ここに, I
ref1
: 標準状態(測定状態)での二次基準セルの短絡電流 (mA)
I
ref2
: 基準状態での二次基準セルの短絡電流 (mA)
T
1
: 標準状態(測定状態)での二次基準セルの温度 (℃)
α
ref
: 放射照度 1 000W/m
2
での二次基準セルの短絡電流の温度係数
(mA/
℃)
6.
計算及び測定データの補正
5
C 8919-1995
6.1
測定データの補正 5.で測定したデータは,6.2 に示す補正式によって基準状態への換算を行う。た
だし,(1)及び(2)を満足する場合は,補正を行わなくてもよい。
(1)
被測定太陽電池セル・モジュール温度が 25±2℃の範囲にあるとき。
(2)
放射照度が 1 000±10W/m
2
の範囲にあるとき。
6.2
補正式 基準状態での電圧値,電流値,放射照度及び被測定太陽電池セル・モジュール温度をそれ
ぞれ V
2
,I
2
,E
2
及び T
2
とし,測定した電圧値,電流値,放射照度,被測定太陽電池セル・モジュール温度
及び短絡電流をそれぞれ V
1
,I
1
,E
1
,T
1
及び I
sc
とするとき,次の式(2)及び式(3)を用いて補正を行う(
4
)
。
注(
4
)
5.2(2)(a)
に示すような連続的な測定の場合も,得られた特性曲線から5.2(2)(b)に示すような30点
以上のデータを読み取って補正する。
)
(
1
2
1
1
2
1
2
T
T
E
E
I
I
I
sc
−
+
÷÷ø
ö
ççè
æ
−
+
=
α
(2)
)
(
)
(
)
(
1
2
2
1
2
1
2
1
2
T
T
KI
I
I
R
T
T
V
V
s
−
−
−
−
−
+
=
β
(3)
ここに,
α
: 放射照度 1 000W/m
2
での被測定太陽電池セル・モジュール温
度が 1℃変動したときの短絡電流 I
sc
の変動値 (A/℃)。測定は,
JIS C 8916
の規定による。
β
: 放射照度 1 000W/m
2
での被測定太陽電池セル・モジュール温
度が 1℃変動したときの開放電圧 V
oc
の変動値 (V/℃)。
測定は,
JIS C 8916
の規定による。
R
s
: 直列抵抗 (
Ω)。測定は JIS C 8913 の 6.3(補正係数の測定及び
算出)の規定によって行う。
K
: 曲線補正因子 (
Ω/℃)。測定は JIS C 8913 の 6.3 の規定によっ
て行う。
この四つの補正係数は,一群の被測定太陽電池セル・モジュールを代表する係数である。ただし,受渡
当事者間の協定によって,補正項の一部を省略することができる。
6.3
各パラメータの算出方法 短絡電流 I
sc
,開放電圧 V
oc
,最大出力 P
m
,最大出力動作電圧 V
Pm
,最大出
力動作電流 I
Pm
,曲線因子 FF,太陽電池セル・モジュール変換効率
η
,電圧規定電流 I
v
及び電流規定電圧
V
i
を JIS C 8913 の 6.4(各パラメータの算出方法)の規定によって算出する。
6
C 8919-1995
新型太陽電池作業会 構成表
氏名
所属
(主査)
下 川 隆 一
通商産業省工業技術院電子技術総合研究所
猪 狩 真 一
財団法人日本品質保証機構
長 峰 文 昭
財団法人日本品質保証機構
能 勢 順 多
財団法人機械電子検査協定協会
石 原 隆
三菱電機株式会社
大 西 三千年
三洋電機株式会社
栗谷川 悟
昭和シェル石油株式会社
小 林 広 武
財団法人電力中央研究所
高 倉 秀 行
富山県立大学
高 橋 昌 英
株式会社四国総合研究所
川 崎 憲 介
株式会社四国総合研究所
藤 間 健 一
通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部
杉 上 孝 二
通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部
森 信 昭
通商産業省工業技術院ニューサンシャイン計画推進本部
佐 野 則 雄
新エネルギー・産業技術総合開発機構
中 島 光 雄
新エネルギー・産業技術総合開発機構
大 湯 孝 明
新エネルギー・産業技術総合開発機構
野 元 克 彦
シャープ株式会社
伊 藤 学
シャープ株式会社
岡 本 浩 二
シャープ株式会社
中 田 行 彦
シャープ株式会社
濱 敏 夫
株式会社富士電機総合研究所
濱 川 圭 弘
大阪大学
古 市 正 敏
通商産業省工業技術院標準部
倉 重 有 幸
通商産業省工業技術院標準部
栗 原 史 郎
通商産業省工業技術院標準部
水 上 誠志郎
鐘淵化学工業株式会社
泉 名 政 信
鐘淵化学工業株式会社
太和田 善 久
鐘淵化学工業株式会社
蓑 輪 義 弘
社団法人日本電機工業会
今 坂 善 夫
社団法人日本電機工業会
清 水 英 範
社団法人日本電機工業会
三 宅 行 美
英弘精機株式会社
室 園 幹 夫
松下電池株式会社
吉 川 重 夫
日本放送協会放送技術研究所
渡 辺 博 之
京セラ株式会社
白 澤 勝 彦
京セラ株式会社
和 田 隆 博
松下電器産業株式会社
坂 東 健
東京電力株式会社
松 田 弘
関西電力株式会社
堀 口 友四郎
ウシオ電機株式会社
(事務局)
増 田 岳 夫
財団法人光産業技術振興協会
朝 倉 武
財団法人光産業技術振興協会
八木沼 洋 子
財団法人光産業技術振興協会
五十里 紘 一
財団法人光産業技術振興協会
湯 村 周 三
財団法人光産業技術振興協会