C 8914 : 1998
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによって JIS C 8914-1989 は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実
用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録
出願にかかわる確認について,責任はもたない。
日本工業規格
JIS
C
8914
: 1998
結晶系太陽電池モジュール
出力測定方法
Measuring method of output power
for crystalline solar PV modules
序文 規格を適用するに当たっては,その規格が引用している規格も同時に参照しなければならない。ま
た,同類の規格があれば,これとの比較検討が必要なことも多い。
この規格は,1987 年に発行された IEC 60891, Procedures for temperature and irradiance corrections to measured
I-V characteristics of crystalline silicon photovoltaic devices,
及び 1992 年に発行された IEC 60891 Amendment
No.1
を元に,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格である。
1.
適用範囲 この規格は,JIS C 8911 に規定する二次基準結晶系太陽電池セル(以下,二次基準太陽電
池セルという。
)を使用して JIS C 8912 に規定する結晶系太陽電池測定用ソーラシミュレータ(以下,ソ
ーラシミュレータという。
)で,平面・非集光形の電力発電を目的とする地上用結晶系太陽電池モジュール
(以下,太陽電池モジュールという。
)の出力特性を測定する方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1102-1
直動式指示電気計器 第 1 部:定義及び共通する要求事項
JIS C 1102-2
直動式指示電気計器 第 2 部:電流計及び電圧計に対する要求事項
JIS C 8911
二次基準結晶系太陽電池セル
JIS C 8912
結晶系太陽電池測定用ソーラシミュレータ
JIS C 8913
結晶系太陽電池セル出力測定方法
JIS C 8916
結晶系太陽電池セル・モジュールの出力電圧・出力電流の温度係数測定方法
JIS Z 8103
計測用語
JIS Z 8113
照明用語
JIS Z 8120
光学用語
2.
用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 1102-1, JIS C 1102-2, JIS C 8912, JIS C 8913,
JIS C 8916, JIS Z 8103, JIS Z 8113
及び JIS Z 8120 の規定によるほか,次による。
(1)
太陽電池モジュール 複数個の太陽電池セルを直列及び/又は並列に接続し,耐環境性のため外囲器
に封入し,かつ,外部端子を備え,規定の出力特性をもつもの。
(2)
二次基準太陽電池セル 基準太陽電池セルのうち,一次基準太陽電池セルを用いて JIS C 8912 に規定
するソーラシミュレータで校正したもの。
(3)
太陽電池モジュール面積 フレームなどを含んだ太陽電池モジュールの全面積。
2
C 8914 : 1998
(4)
太陽電池モジュール温度 太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルすべてが一定温度になったと
きの温度。太陽電池モジュールの中央付近のセル温度で代替してもよい。
(5)
太陽電池モジュール変換効率 (
η
)
最大出力 (P
m
)
を,太陽電池モジュール面積 (A) に入射する放射
束で除した値で,百分率 (%) で表す。
(6)
測定放射照度 (E
r
)
JIS C 8911 の二次基準結晶系太陽電池セルを用いて設定された放射照度。
(7)
スペクトルミスマッチ誤差 一次又は二次基準太陽電池セルと被測定太陽電池セル・モジュールとの
間での相対分光感度のずれ,及び基準太陽光と測定光源との間での分光放射照度分布のずれが原因で
生じる測定誤差。
3.
測定の状態
3.1
標準状態 太陽電池モジュールの測定は,次の条件で行う。ただし,必要がある場合は,基準状態
への換算を行う。
(1)
太陽電池モジュール温度 15℃〜35℃
(2)
放射照度 1
000
±50W/m
2
(3)
光源の条件
4.(4)
による
3.2
基準状態 基準状態は,次による。
(1)
太陽電池モジュール温度 25℃
(2)
分光分布 AM1.5 全天日射基準太陽光(
1
)
注(
1
) JIS C 8911
を参照。
(3)
放射照度 1
000W/m
2
4.
測定装置 測定に用いる機器は,次の条件を満たすものとする。
(1)
計測器は,JIS C 1102-1 及び JIS C 1102-2 に規定する 0.5 級又はこれと同等の許容差のものとする。
(2)
電圧計は,20k
Ω/V 以上の内部抵抗をもつものとする。
(3)
温度を測定する計測器の確度は,±1℃とする。
(4)
測定光源は,JIS C 8912 に規定する等級 A 又は B のソーラシミュレータとする。
(5)
放射照度を設定する場合は,JIS C 8911 に規定する二次基準結晶系太陽電池セルを用いて行う。
なお,この二次基準太陽電池セルは,太陽電池セル温度を 25±2℃に制御した状態で用いる。
(6)
二次基準太陽電池セルは,JIS C 8911 に従って校正された二次基準太陽電池セルとする。
なお,測定光源下でのスペクトルミスマッチによる測定誤差が±2%以内であることが確認できると
きには,異なる太陽電池群の二次基準太陽電池セルを用いてもよい。
(7)
バイアス用電源は,太陽電池モジュールの可変負荷として用いることのできるもので,
図 1 の I-V 特
性曲線上の A 点(電圧が負の値を示す点)と B 点(電流が負の値を示す点)との間で電圧をステップ
状又は連続的に掃引できるものとする。
3
C 8914 : 1998
図 1 I-V 特性曲線
注(
2
) A
点の電圧値は,6.2に規定する補正をした後で
負であるように設定しなければならない。
(
3
) B
点の電流値は,6.2 に規定する補正をした後で
負であるように設定しなければならない。
5.
測定
5.1
測定項目 次の項目について,被測定太陽電池モジュールの特性値を測定・計算する方法を規定す
る。
(1)
短絡電流
I
sc
(mA 又は A)
(2)
開放電圧
V
oc
(mV 又は V)
(3)
最大出力
P
m
(mW 又は W)
(4)
最大出力動作電圧
V
pm
(mV 又は V)
(5)
最大出力動作電流
I
pm
(mA 又は A)
(6)
曲線因子
FF
(7)
太陽電池モジュール変換効率
η
(%)
(8)
電圧規定電流
I
v
(mA 又は A)
(9)
電流規定電圧
V
1
(mV 又は V)
5.2
測定方法 測定方法は,次による。
(1) I-V
特性曲線の測定は,四端子法を用いて行う。このとき,電流測定端子接続部での電圧降下が測定
電圧に含まれないようにする。
(2) I-V
特性曲線の測定は,
図 2 の回路を使用し,次の(a),(b)又は(c)のいずれかの方法による。この場合,
I-V
特性曲線の短絡電流 I
sc
(
図 1 の C 点)から開放電圧 V
oc
(
図 1 の D 点)までの間で 30 点以上を測
定する。ただし,(c)の場合は
図 2 の E 点から V
oc
(
図 1 の D 点)の間の 30 点以上とする。
4
C 8914 : 1998
図 2 I-V 特性曲線の測定
(a)
図 2 の(a)の方法は,電圧,電流測定信号を X-Y レコーダに接続し,バイアス電圧を連続的に変化さ
せながら I-V 特性曲線を描かせる方法。
(b)
図 2 の(b)の方法は,バイアス電圧をステップ状に変化させ,電圧・電流の測定出力を記録し,測定
値を基に I-V 特性曲線を描かせる方法。
(c)
図 2 の(c)の方法は,バイアス電源の代わりに連続的又はステップ状に可変の抵抗器を被測定太陽電
池モジュールの負荷として接続し,その内部を流れる電流と被測定太陽電池モジュールの両端子間
電圧を測定して I-V 特性曲線を描く方法。
この方法では,負荷として接続する抵抗値を零とした場合,測定される点(
図 1 の E 点)は接続
配線抵抗及び電流計の内部抵抗によって C 点からわずか D 点よりの測定点として記録されるが,E
点の電圧が開放電圧の 3%以下であれば E 点での接線と軸線との交点を短絡電流としてもよい。
5.3
測定手順 測定手順は,次による。
(1)
ソーラシミュレータを点灯し,放射照度が一定になるまで放置する。
(2)
試験面上に,二次基準太陽電池セルをソーラシミュレータの光軸と垂直になるように置く。
(3)
二次基準太陽電池セルのセル温度を 25±2℃にする。
(4)
光を照射し,3.1(2)で定めた放射照度の範囲になるようにソーラシミュレータを調節する。直径 30cm
よりも大きい太陽電池モジュール(角形の太陽電池モジュールでは,対角線の長さが 30cm 以上)を
測定するときには,試験面上の測定に使用する面積内で,少なくとも中央部と周辺部 4 か所の放射照
度を測定し,その平均値をもって放射照度とする。
(5)
被測定モジュールを(2)で二次基準太陽電池セルを置いた位置と同平面上にソーラシミュレータの光
5
C 8914 : 1998
軸と 5°以内で垂直になるように置く。二次基準太陽電池セルは,ソーラシミュレータの試験面での
放射照度変化を検出できる位置に置く。
(6)
放射照度を設定した状態から変化させずに,被測定太陽電池モジュールの I-V 特性曲線の測定を行う。
(7)
被測定太陽電池モジュールの温度を測定する。
(8)
放射照度の変化をチェックするために,随時,二次基準太陽電池セルなどで放射照度の測定を行い,
3.1(2)
に示す範囲にあることを確認する。
6.
計算及び測定データの補正
6.1
測定データの補正 5.で測定したデータは,6.2 に示す補正式によって基準状態への換算を行う。た
だし,(1)及び(2)を満足する場合は補正を行わなくてもよい。
(1)
モジュール温度が 25±2℃の範囲にあるとき。
(2)
放射照度が 1 000±10W/m
2
の範囲にあるとき。
6.2
補正式 基準状態での放射照度,太陽電池モジュール温度,電圧値及び電流値をそれぞれ E
2
,T
2
,
V
2
,
I
2
とし,測定した放射照度,太陽電池モジュール温度,電圧値,電流値及び短絡電流をそれぞれ E
1
,T
1
,
V
1
,I
1
,I
sc
とするとき,次の式(1)及び式(2)を用いて補正を行う(
4
)
。
注(
4
) 5.2(2)(a)
に示すような連続的な測定の場合も,得られた I-V 特性曲線から5.2(2)(b)に示すような
30
点以上のデータを読み取って補正する。
I
2
=I
1
+I
sc
・
ú
û
ù
ê
ë
é
−1
1
2
E
E
+
α (T
2
−T
1
) (1)
V
2
=V
1
+
β
(T
2
−T
1
)
−R
s
・ (I
2
−I
1
)
−K・I
2
(T
2
−T
1
) (2)
ここに,
α
:
温度が 1℃変動したときの短絡電流 I
sc
の変動値 (A/℃)。
β
:
温度が 1℃変動したときの開放電圧 V
oc
の変動値 (V/℃)。
R
s
:
太陽電池モジュールの直列抵抗 (
Ω)
K
:
曲線補正因子 (
Ω/℃)
I
sc
:
短絡電流 (A)
この補正係数は,一群の太陽電池モジュールを代表する係数である。
なお,受渡当事者間の協定によって,補正項の一部を省略することができる。
6.3
補正係数の算出方法 JIS C 8913 に基づき次の方法で行う。
(1)
α
:JIS C 8916 によって太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルの電流の温度係数
α
c
を測定し,
次の式によって太陽電池モジュールの電流の温度係数
αを計算する。
α
=n
p
・
α
c
ここに,
n
p
: 並列に接続された太陽電池セルの数
(2)
β
:JIS C 8916 によって,太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルの電圧の温度係数
β
c
を測定し,
次の式によって太陽電池モジュールの電圧の温度係数
β
を計算する。
β
=n
s
・
β
c
ここに,
n
s
:
直列に接続された太陽電池セルの数
(3)
R
s
:JIS C 8913 に規定する方法によって測定する。
(4)
K
:JIS C 8913 に規定する方法によって測定する。
6.4
各パラメータの算出方法 短絡電流 (I
sc
)
,開放電圧 (V
oc
)
,最大出力 (P
m
)
,最大出力動作電流 (I
pm
)
,
曲線因子 (FF),太陽電池モジュール変換効率 (
η
)
,電圧規定電流 (I
v
)
及び電流規定電圧 (V
i
)
を JIS C 8913
の 6.4(各パラメータの算出方法)によって算出する。
6
C 8914 : 1998
専門委員会委員 構成表
氏名
所属
猪 狩 真 一
財団法人日本品質保証機構
石 原 隆
三菱電機株式会社
大 山 秀 明
松下電池工業株式会社
大 山 芳 正
社団法人日本電機工業会
岡 田 健 一
京セラ株式会社
兼 岩 実
シャープ株式会社
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
栗谷川 悟
昭和シェル石油株式会社
小 林 広 武
財団法人電力中央研究所
下 川 隆 一
工業技術院電子総合研究所
高 倉 秀 行
立命館大学
髙 橋 昌 英
株式会社四国総合研究所
中 村 昇
三洋電機株式会社
橋 爪 邦 隆
工業技術院標準部
(後 藤 王 喜)
畠 中 正 人
新エネルギー・産業技術総合開発機構
濱 敏 夫
株式会社富士電機総合研究所
濱 川 圭 弘
立命館大学
水 上 誠志郎
鐘淵化学工業株式会社
宮 沢 和 男
工業技術院
三 宅 行 美
英弘精機株式会社
吉 川 重 夫
日本放送協会
根 上 卓 之
松下電器産業株式会社
増 田 岳 夫
財団法人光産業技術振興協会
平 原 奎治郎
財団法人光産業技術振興協会
堀 切 賢 治
財団法人光産業技術振興協会
生 沢 正 克
財団法人日本品質保証機構
池 田 光 佑
株式会社松下テクノリサーチ