C 8912 : 1998
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによって JIS C 8912-1989 は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実
用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録
出願にかかわる確認について,責任はもたない。
日本工業規格
JIS
C
8912
: 1998
結晶系太陽電池測定用
ソーラシミュレータ
Solar simulators for crystalline solar cells and modules
序文 規格を適用するに当たっては,その規格が引用している規格も同時に参照しなければならない。ま
た,同類の規格があれば,これとの比較検討が必要なことも多い。
この規格は,1995 年に発行された IEC 60904-9, Photovoltaic devices−Part 9 : Solar simulator performance
requirements
を元に,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規
定されていない規定項目(測定手順などの測定方法)を日本工業規格として追加している。
1.
適用範囲 この規格は,平面・非集光形の電力発電を目的とする地上用結晶系太陽電池セル及び地上
用結晶系太陽電池モジュール(以下,太陽電池セル・モジュールという。
)の出力測定に用いる結晶系太陽
電池測定用ソーラシミュレータ(以下,ソーラシミュレータという。
)について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 8911
二次基準結晶系太陽電池セル
JIS C 8913
結晶系太陽電池セル出力測定方法
JIS C 8914
結晶系太陽電池モジュール出力測定方法
JIS Z 8103
計測用語
JIS Z 8120
光学用語
2.
用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 8913,JIS C 8914,JIS Z 8103 及び JIS Z 8120
の規定によるほか,次による。
(1)
放射照度 太陽電池セル・モジュールの面に入射する放射束を,その面の面積で除した値。
(2)
放射照度の場所むら 場所による放射照度のむら。次の式で表す。
100
min
max
min
max
×
+
−
±
=
E
E
E
E
ΔE
ここに,
Δ
E: 放射照度の場所むら
(%)
E
max
:
放射照度の最大値
(W/m
2
)
E
min
:
放射照度の最小値
(W/m
2
)
(3)
放射照度時間変動率 規定時間内の放射照度時間変動率。次の式で表す。
100
min
max
min
max
×
+
−
±
=
E
E
E
E
ΔE
2
C 8912 : 1998
ここに,
Δ
E: 放射照度時間変動率[
%
/規定時間(
1
)
]
E
max
:
放射照度の最大値
(W/m
2
)
E
min
:
放射照度の最小値
(W/m
2
)
注(
1
)
規定時間は,
1
枚の太陽電池セル・モジュールの I
-
V 特性の全データを採取するのに必要な時間
を基準として定める(例
%/1.5ms
)。これはソーラシミュレータ製造業者とソーラシミュレー
タ使用者間の協定による。
(4)
スペクトル合致度 ある波長帯(
λ
i
〜
λ
i
+
1
の間)でのスペクトルの合致度。次の式で表す。
λ
λ
λ
λ
λ
λ
λ
λ
d
E
d
E
M
o
i
i
s
i
i
i
)
(
)
(
1
1
∫
∫
−
+
=
ここに,
M
i
:
スペクトル合致度
λ
:
光の波長 (nm)
E
o
(
λ
)
:
波長
λ
での基準太陽光(
2
)
の分光放射照度 (W/m
2
・nm)
E
s
(
λ
)
:
波長
λ
でのソーラシミュレータの分光放射照度 (W/m
2
・nm)
注(
2
)
JIS C 8911
に規定された基準太陽光。
(5)
有効照射面 ソーラシミュレータに規定された光学的仕様を満足している照射面。
(6)
照射面への最大入射角 有効照射面上の任意の点に入射する光線が,それらの入射点を起点とする法
線となす角度のうちの最大値(
図 1 参照)。
図 1 照射面への入射角
3.
性能
3.1
等級 ソーラシミュレータは,その放射照度の場所むら,放射照度時間変動率及びスペクトル合致
度によって,等級 A,B 及び C の 3 等級に分類する。各等級に属するソーラシミュレータは,
表 1 に記載
された当該等級の 3 項目のすべてを満足しなければならない。
3
C 8912 : 1998
表 1 等級の分類
等級
項目
A B C
放射照度場所むら %
±2 以下
±3 以下
±10 以下
放射照度時間変動率 %
±1 以下
±3 以下
±10 以下
スペクトル合致度 0.75〜1.25 0.6〜1.4 0.4〜2.0
備考 スペクトル合致度は,400〜1 100nm の波長範囲で,表 2 に示す波
長帯ごとに評価するが,すべての波長帯で該当する等級の合致度
を満足しなければならない。
3.2
最大入射角 有効照射面に対するソーラシミュレータ光の最大入射角は 15 度以内とする。
3.3
有効照射時間 パルス光を照射する方式のソーラシミュレータは,パルス光の照射時間幅のうち 3.1
の光学的仕様を満足する有効照射時間は,次の式による。
T
Eff
≧n× (T
A
+T
B
+T
C
)
ここに, T
Eff
:
有効照射時間
T
A
:
太陽電池セル・モジュールにステップ状に光を照射した場合
の時定数の 4 倍の時間
T
B
:
太陽電池セル・モジュールの負荷をステップ状に変化させた
場合の時定数の 4 倍の時間
T
C
:
太陽電池セル・モジュールの 1 点の I-V データを測定するた
めに要する時間
ただし,1 回の有効照射時間中に負荷を変化させ,n 点のデータを測定する場合の負荷応答時間及び測定
時間は,それぞれ上記の n 倍とする。
4.
性能の測定方法
4.1
一般事項 放射照度の設定は,被測定太陽電池セル・モジュールの測定に対応できる二次基準結晶
系太陽電池セルを用いて行う。
4.2
放射照度の場所むら測定 放射照度の場所むら測定は,次による。
(1)
測定に使用する受光器の受光面積は,直径 2cm 以下の丸形又は辺 2cm 以下の角形で,かつ,ソーラシ
ミュレータ有効照射面積の 4%以下であり,少なくとも入射角±15 度の光は障害なく受光できる構造
の検出器を用いて行う。
(2)
ソーラシミュレータの光源を点灯し,熱的に安定した後,有効照射面上の放射照度を 1 000±50W/m
2
に合わせ,(1)に示す受光器で
図 2 に示すように 17 点以上の放射照度を測定する。
また,パルス光を照射するソーラシミュレータのように 1 回の発光中にすべての点の測定をするこ
とが困難な場合は,有効照射面の中心付近に放射照度補正用の受光器を置き,各発光回ごとの放射照
度のばらつきを同時に測定して,次の式で各点の放射照度を補正する。
i
i
i
E
e
e
E
′
×
=
1
ここに,
E
i
:
E
i
'の補正値 (W/m
2
)
e
1
:
1
回目の発光時の比較用受光器の測定値 (W/m
2
)
e
i
:
i 回目の発光時の比較用受光器の測定値 (W/m
2
)
E
i
': i 回目の発光時の場所むら測定値 (W/m
2
)
(3)
得られたデータから最大値 E
max
と最小値 E
min
を求め,2.(2)に示す式によって放射照度の場所むらを計
算する。
4
C 8912 : 1998
図 2 放射照度の場所むら測定(参考)
4.3
放射照度時間変動率の測定 放射照度時間変動率の測定は,次による。
(1)
測定に使用する受光器は,太陽電池セル・モジュールの I-V 特性データ取込み速度よりも十分に早い
応答速度をもつものでなければならない。
(2)
ソーラシミュレータの光源を点灯し,熱的に安定した後,有効照射面上の放射照度を 1 000±50W/m
2
に合わせ,有効照射面上の放射照度を 2.(3)の
注(
1
)
に示す規定時間以上記録する。
(3)
得られた放射照度の記録から,最大値 E
max
と最小値 E
min
を求め,2.(3)に示す式によって放射照度時間
変動率を求める。
5
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備考 4.1 及び 4.2 の測定中,受光器の温度が測定確度に影響するほど上昇する場合は,冷却装置など
を用いて,受光器の温度を上昇させない手段を講じる必要がある。
4.4
スペクトル合致度の測定 スペクトル合致度の測定は,次による。
(1)
ソーラシミュレータの光源を点灯し,熱的に安定した後,有効照射面上の放射照度を 1 000±50W/m
2
に合わせ,波長分解能 10nm 以下の分光器を用いて分光放射照度の測定を行う。
(2)
有効照射面での分光放射照度を,400nm から 1 100nm までの波長
λについて表 2 に示す i=1〜6 の波長
帯ごとに積分する。
(3)
i
=1〜6 の積分の総和を 100 としたときの波長帯ごとの積分値の割合を求める。
(4)
(3)
で求めた波長帯ごとの積分値の割合を,
表 2 に示された対応する波長帯のエネルギー分布 (%) で
除し,それぞれの波長帯でのスペクトル合致度 (M
i
: i
=1〜6) を求める。
表 2 基準太陽光のエネルギー分布
i
波長帯 nm
λ
i
〜
λ
i
+
1
相対エネルギー分布 %
1 400
〜500
18.5
2 500
〜600
20.1
3 600
〜700
18.3
4 700
〜800
14.8
5 800
〜900
12.2
6 900
〜1 100
16.1
400
〜1 100
100.0
4.5
測定頻度 測定の頻度は,次による。
(1)
放射照度の場所むら及び放射度時間変動率は,少なくとも毎月 1 回測定しなければならない。
(2)
分光放射照度(スペクトル合致度)は,少なくとも 6 か月に 1 回測定しなければならない。
(3)
それぞれの測定では,ソーラシミュレータに表示された等級の性能を満足していることを確認しなけ
ればならない。
5.
表示 ソーラシミュレータに添付する特性表は,次の項目を記載しなければならない。
(1)
製造業者名
(2)
形式
(3)
等級(等級 B 及び C のものは,
表 1 で示す各特性がどの特性に属するかをも表示する。)
(4)
放射照度 (W/m
2
)
(5)
照射面の位置
(6)
有効照射面積
(7)
分光放射照度(スペクトル合致度 M
i
を表示する。
)
(8)
照射面積内の放射照度の場所むら
(9)
放射照度時間変動率
(10)
照射面への最大入射角
(11)
データ採取の日付
(12)
製造番号
(13)
適用太陽電池セル及び適用太陽電池モジュールの種類
6
C 8912 : 1998
専門委員会委員 構成表
氏名
所属
猪 狩 真 一
財団法人日本品質保証機構
石 原 隆
三菱電機株式会社
大 山 秀 明
松下電池工業株式会社
大 山 芳 正
社団法人日本電機工業会
岡 田 健 一
京セラ株式会社
兼 岩 実
シャープ株式会社
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
栗谷川 悟
昭和シェル石油株式会社
小 林 広 武
財団法人電力中央研究所
下 川 隆 一
工業技術院電子総合研究所
高 倉 秀 行
立命館大学
髙 橋 昌 英
株式会社四国総合研究所
中 村 昇
三洋電機株式会社
橋 爪 邦 隆
工業技術院標準部
(
後 藤 王 喜)
畠 中 正 人
新エネルギー・産業技術総合開発機構
濱 敏 夫
株式会社富士電機総合研究所
濱 川 圭 弘
立命館大学
水 上 誠志郎
鐘淵化学工業株式会社
宮 沢 和 男
工業技術院
三 宅 行 美
英弘精機株式会社
吉 川 重 夫
日本放送協会
根 上 卓 之
松下電器産業株式会社
増 田 岳 夫
財団法人光産業技術振興協会
平 原 奎治郎
財団法人光産業技術振興協会
堀 切 賢 治
財団法人光産業技術振興協会
生 沢 正 克
財団法人日本品質保証機構
池 田 光 佑
株式会社松下テクノリサーチ