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C 8802

:2003

(1)

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。主務大臣及び日本工業標準調査会は,

このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登

録出願にかかわる確認について,責任はもたない。

JIS C 8802

には,次に示す附属書がある。

附属書 1(規定)小型単セル試験

附属書 2(規定)ショートスタック加速試験

附属書 3(規定)加速倍数算定方法

附属書 4(参考)りん酸形燃料電池の寿命試験方法の技術的根拠


C 8802

:2003

(2)

目  次

ページ

序文

1

1.

  適用範囲

1

2.

  引用規格

1

3.

  定義

1

4.

  寿命試験方法の概要

2

5.

  試験

2

5.1

  試験の種類

2

5.2

  試験方法

2

6.

  寿命の算出

2

6.1

  セルスタック寿命の算出手順

2

6.2

  セルスタック寿命の算出

5

附属書 1(規定)小型単セル試験

6

附属書 2(規定)ショートスタック加速試験

12

附属書 3(規定)加速倍数算定方法

17

附属書 4(参考)りん酸形燃料電池の寿命試験方法の技術的根拠

20

 


日本工業規格     

JIS

 C

8802

:2003

りん酸形燃料電池の寿命試験方法

Accelerated life test methods for phosphoric acid fuel cell

序文  この規格は,りん酸形燃料電池のセルスタックの寿命を加速評価するための試験方法について規定

するものである。りん酸形燃料電池の寿命に影響を及ぼす因子は多いが,この規格は,特に電極の活性化

分極及び拡散分極に起因するセルスタック寿命の試験方法を規定するものである。完成した設計書又は使

用説明書として用いられるように意図したものではない。

この規格に従っても,いかなる人,機関又は企業が他の関連する規則を遵守する責任を免れるものでは

ない。

1.

適用範囲  この規格は,小型単セル試験及びショートスタック加速試験によって、りん酸形燃料電池

のセルスタック寿命特性を評価するための試験方法及びセルスタック寿命を算出する方法について規定す

る。

備考  りん酸形燃料電池セルスタックの寿命は,電圧低下,構成材料の腐食劣化などによって決定さ

れるが,この規格では,このうち活性化分極の増大及び拡散分極の増大を要因とするセル電圧

低下によるセルスタック寿命を評価する方法を対象とする。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS C 8800

  燃料電池発電用語

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 8800 によるほか,次による。

a)

セルスタック寿命  運転開始から基準条件における電圧が 10%低下するまでの時間。

b)

基準条件  セルスタック寿命特性を評価する際に基準とする運転条件。

c)

小型単セル  セルスタックの単セルよりも電極面積が小さな単セル。

d)

ショートスタック  セルスタックを構成する単セル及び冷却板を使用し積層した電池で,セルスタッ

クと比較して積層セル数が少ないもの。

e)

ブロック  セルスタック又はショートスタックで,冷却板間の複数セルから構成される要素。

f)

セル反応部  燃料極,空気極及びマトリクスから構成される発電に寄与するセルの有効部分。

g)

電圧低下速度  セル電圧を縦軸,運転時間の常用対数を横軸とし,セル電圧の経時変化を直線近似し

たときの傾き。

h)

運転温度  運転時の単セル,ショートスタック又はセルスタックを代表する温度。

i)

加速倍数  基準条件での電圧低下速度に対する加速条件での電圧低下速度の比率。


2

C 8802

:2003

j)

平均セル電圧  セルスタック又はブロックにおける各セル電圧の平均値。

4.

寿命試験方法の概要  電圧低下速度は,運転温度が高いほど大きい。この温度依存性を利用して基準

条件より高い運転温度でショートスタック加速試験を行い,セルスタック寿命を算出する寿命試験方法を

提供する。その際の運転温度と加速倍数の関係は,温度をパラメータとした複数の小型単セル試験によっ

て求める。

5.

試験 

5.1

試験の種類  試験方法の種類は,次による。

a)

小型単セル試験

b)

ショートスタック加速試験

5.2

試験方法 

a)

小型単セル試験  小型単セル試験は

附属書 による。

b)

ショートスタック加速試験    ショートスタック加速試験は

附属書 による。

6.

寿命の算出 

6.1

セルスタック寿命の算出手順  セルスタック寿命の算出手順を,図 に示す。

a)

加速倍数の算出  小型単セル試験によって運転温度をパラメータに領域Ⅱ及び領域Ⅲの加速倍数を求

める。領域Ⅱ及び領域Ⅲの定義並びに加速倍数の求め方は,

附属書 による。

b)

加速寿命試験実施  a)で求めた運転温度と加速倍数の関係から加速評価可能な運転温度を求め,その

温度でショートスタックの加速試験を,1 万時間程度行う。運転温度の求め方は,

附属書 による。

c)

基準条件の経時特性(算出)  ショートスタックでの加速試験結果から,小型単セル試験で求めた加

速倍数をもとに,基準条件の電圧経時特性を算出する。

d)

寿命の算出  算出した基準条件の電圧経時特性を用い,セル電圧が領域Ⅱ開始点のセル電圧から 10%

低下する点を求め,運転開始からこの点までの時間をセルスタック寿命とする。


3

C 8802

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(

1

)

附属書 3 参照

  1  セルスタック寿命の算出手順 

領域Ⅲ (

1

)

領域Ⅱ (

1

)

加速倍

運転温度

セル電

時 間 (常用対数)

基準条件の

  経時特性

セル電

時 間 (常用対数)

加速条件

の経時特性

セル電

時 間 (常用対数)

基準条件の

  経時特性

10% 電圧低下

寿命

領域Ⅱ

領域Ⅲ

a)加速倍数の算出

b)加速寿命試験実施

加速条件の

経時特性

c)基準条件の経時特性(算出)

10% 電圧低下

d)寿命の算出


4

C 8802

:2003

6.2

ショートスタック加速試験による寿命算出方法  ショートスタック加速試験結果から,次の方法でセ

ルスタック寿命を求める。

a)

加速条件における設定電流時のセル電圧を縦軸に,時間の常用対数を横軸として電圧の経時変化を表

示する。

図 の L

2

及び L

3

(

実線)が加速条件での電圧経時変化に相当する(

図 では領域Ⅰの電圧経時

変化 L

1

の表示は,省略した。詳細は,

附属書 参照)。

b)

ここで点 a

1

は,加速条件における領域Ⅱの開始点を,点 b

1

は,加速条件における領域Ⅲの開始点を示

し,それぞれの時間を t

a

及び t

b

とする。時間 t

a

における電圧を,Va1 とする。

c)

ショートスタック加速試験で得られる運転初期の基準条件での電圧と加速条件移行直後の電圧との差

から,図 2 の t

a

における基準条件電圧値 Va2 を推定し,点 a

2

を決める。

  Va2

Va1  −(加速条件に移行直後の電圧−運転初期の基準条件での電圧)

d)  Va2

を基準に電圧が 10%低下した値を寿命時点の電圧(Vc)として,寿命基準ラインを引く。

    Vc

Va2 × 0.9

e)

小型単セル試験結果から求めた加速倍数(

附属書 の 2.2 参照)と加速条件の電圧低下速度をもとに,領

域Ⅱ及び領域Ⅲにおける基準条件での電圧低下速度を次の式を用いて算出する。

基準条件時の領域Ⅱ電圧低下速度:ε

v

2

=ε

v

1

/  m

基準条件時の領域Ⅲ電圧低下速度:ε

v

2

=ε

v

1

/  m

ここに,

ε

v

1

加速条件時の領域Ⅱ電圧低下速度

ε

v

1

加速条件時の領域Ⅲ電圧低下速度

m

領域Ⅱにおける加速倍数

m

領域Ⅲにおける加速倍数

f)

点 a

2

を起点に−

ε

v

2

の傾きをもった直線 L

2

´(

破線)を時間 t

b

まで引き,時間 t

b

と直線 L

2

´

との交点を点

b

2

とする。

g)

同様に点 b

2

を起点に−

ε

v

2

の傾きをもった直線 L

3

´

を引き,寿命基準ラインとの交点を c とする。

  2  セルスタック寿命の算出方法 

時 間 (常用対数)

10%電圧低下

領域Ⅰ

(0〜1,500h)

領域Ⅱ

(〜5,500h)

領域Ⅲ

(  )は時間の目安

:加速条件での経時特性

':基準条件での

   経時特性

1

1

寿命

2

2

c

a

b

寿命基準ライン

a1

c

a2

セル電圧

':基準条件

での経時特性

:加速条件での経時特性


5

C 8802

:2003

6.3

セルスタック寿命の算出 

運転開始から交点 c までの時間 t

c

を,基準条件におけるセルスタッ

ク寿命とする。 


6

C 8802

:2003

附属書 1(規定)小型単セル試験

1.

適用範囲  この附属書は,りん酸形燃料電池の寿命試験方法の小型単セル試験方法について規定する。

2.

試験方法 

2.1

供試品  実寸大セル部材(燃料極,マトリクス,空気極)の反応部から小片を切り出して小型単セ

ルを製作する。小型単セルの断面構造例を,

附属書 付図 に示す。試験に供する供試品の数は,再現性

を確認するため同一試験条件で 3 個以上とすることが望ましい。

2.2

試験装置  小型単セル試験装置には,次の制御,計測ができる機器を備えたものを用いる。なお,

小型単セル試験装置の構成例を,

附属書 付図 に示す。

a)

小型単セル温度

b)

反応ガス流量              燃料極側:水素,二酸化炭素

                                          空気極側:空気,酸素

c)

負荷電流                定電流制御ができる負荷装置を用いるのが望ましい。

d)

セル電圧

e)

パージ用窒素ガス流量    燃料極側及び空気極側

2.3

試験条件及び試験時間  加速評価のために,実機で通常運転される温度及びそれより高めの複数の

運転温度で試験する。ただし,試験時間や運転評価の容易性から,運転温度は 180〜220℃の範囲に設定す

るのが望ましい  (

附属書 付表 参照)。  試験時間は,1 万時間を目安とし,適宜,備え付けのりん酸補給

口からりん酸の補給を行って運転する。

2.4

試験手順  小型単セルの試験手順は,次による。試験手順の概略を,附属書 付図 に示す。

a)

小型単セル組立後に小型単セル試験装置に組み込み,立上げ操作としてりん酸浸透処理,部分負荷運

転,予備発電などを行う。立上げ手順例を,

附属書 付図 に示す。

b)

予備発電終了後に基準条件で,特性評価試験を行う。特性評価試験項目を,

附属書 付表 に示す。

その基準値の例を,

附属書 付表 に示す。

c)

基準値を満足したセルは,加速条件(基準条件も含む。

)で連続運転を実施する。加速条件例を,

附属

書 付表 に示す。

d)

その後,約 1 000 時間ごとに加速条件で特性評価試験を行う。

e)

加速条件運転終了後に基準条件に戻し,特性評価試験を実施し,当該加速条件での小型単セル試験を

終了する。この特性評価試験は,セル電圧変化要因の概要を調べて運転状況に異常がないことを確認

するために行う。


7

C 8802

:2003

附属書 付図  1  小型単セル断面構造例

附属書 付図 2    小型単セル試験装置の構成例

  

リブ付き多孔体

ライナ

燃料側ハウジング

マトリクス

空気側ハウジング

セパレータ

リブ付き多孔体

ライナ

空気極

テフロンシート

テフロンシート

燃料極

セパレータ

りん酸吸収

防止処理

りん酸補給口

止め栓

止め栓

りん酸補給口

窒 素

水 素

二酸化

炭素

窒 素

空 気

酸 素

燃料系排気

空気系排気

流量調節器

加湿装置

保温ヒータ

(凝縮防止)

小型
 単セル

流量調節器

流量調節器

燃料極

空気極

負荷装置


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C 8802

:2003

備考  基準条件例を附属書 1 付表 2 に,加速条件例を附属書 1 付表 4 に示す。

附属書 付図  3  小型単セルの試験手順

小形セル立上げ運転

基準条件特性評価試験

加速条件下での連続運転

基準条件特性評価試験

加速条件特性評価試験

:基準条件

:加速条件  

(約 1000 時間ごと)


9

C 8802

:2003

附属書 付図  4  小 型 単 セ ル の 立 上 げ 手 順 例  

  

基準条 件例
運転温 度:200℃, 運 転圧 力:常圧, 電 流密 度:300mA/cm

2

燃料利 用率 :80%(水 素:二酸 化炭 素=80:20),酸素 利用 率:60%

温度: 約 160℃ ,時 間:24〜48 時 間, 雰囲 気:窒 素

温度:約 160℃ ,  時間:24〜48 時間 ,

電流密 度:100mA/cm

2

燃料利 用率 :約 50%,酸 素利 用率 :約 40%

温度:約 200℃ ,  時間:約 24 時 間,
電流密 度:200mA/cm

2

燃料利 用率 :約 50%,酸 素利 用率 :約 40%

温度:約 200℃ ,  時間:約 24 時 間,

電流密 度:300mA/cm

2

燃料利 用率 :80%, 酸素 利用 率:60%

〔基準 条件 での 特性 試験 〕

 上 記 基 準 条 件 で の セ ル 電 圧 が 基 準
 (例:610mV)以上 であ るこ とを 確認す る。

 基準 値に 未達 の場 合、りん 酸浸 透処 理を 行う。
 温度 :約 160℃、 雰囲 気: 窒素

 基準 条件 特性 が基 準値 を満 足し た時 を運 転開始 と する 。

小形セ ル組 立

りん酸 浸透 処理

部分負 荷運 転

予 備 発 電 (1 次

)

予 備 発 電 (2 次

)

セル電 圧確 認

運転条 件設 定

りん酸 浸透 処理

基 準 値 未 満

基 準 値 以 上


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C 8802

:2003

附属書 付表  1  小 型 単 セ ル の 特 性 評 価 試 験 項 目 及 び 試 験 条 件 例  

項        目

電流密度

水素濃度

燃料利用率

酸素濃度

酸化剤利用率

 mA

/cm

2

電流−電圧特性試験(

1

) (50)

〜300

80 80 21 60

燃料利用率依存性試験 300

80

80

±10 21

60

酸化剤利用率依存性試験

300 80 80 21

60

±10

水素ゲイン依存性試験 300

80

100

80

64(

2

)

21 60

酸素ゲイン依存性試験

300 80 80 21

100

60

12.6(

3

)

(

2

)

電流−電圧特性での電流密度は,電圧が 800mV を超えず,電圧が急激な低下を示さない範囲とする。し
たがって,上表は一応の目安である。

(

3

)

水素ゲイン依存性試験で,水素濃度 100%の場合の水素流量は,水素濃度 80%の場合の燃料流量と同一

とする。

(

4

)

酸素ゲイン依存性試験で,酸素濃度 100%の場合の酸素流量は,酸素濃度 21%の場合の空気流量と同一
とする。

附属書 付表  2  基準条件例

電流密度 300mA/cm

2

燃料水素濃度 80

燃料加湿条件 50℃飽和

燃料利用率 80

酸化剤利用率 60

運転温度 200℃

圧力

常圧


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C 8802

:2003

附属書 付表  3  基準値の例

評  価  項  目

基    準    値

セル電圧 610mV 以上

燃料利用率依存性

70

〜90%

15mV

以内

酸化剤利用率依存性

50

〜70%

20mV

以内

水素ゲイン依存性 25mV 以内

酸素ゲイン依存性 100mV 以内

附属書 付表  4  加速条件例

電流密度 300mA/cm

2..

燃料水素濃度 80

燃料加湿条件 50℃飽和

燃料利用率 80

酸化剤利用率 60

運転温度

基準温度:200  ℃

加速条件:200+20℃

温度の加速傾向調査:10℃間隔

圧力

常圧

試験時間

10

000

時間


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C 8802

:2003

附属書 2(規定)ショートスタック加速試験

1.

適用範囲  この附属書は,りん酸形燃料電池のショートスタックの加速試験方法について規定する。

2.

試験方法 

2.1

供試品  試験に供するショートスタックは,評価対象となるブロックのほかにショートスタックの

上下端からの放熱の影響を受けないように,上下にブロックを設けて 3 ブロック以上から構成する。ショ

ートスタックの構成例を,

附属書 付図 に示す。

2.2

試験装置  ショートスタック試験装置は,次の項目の制御ができる機器を備えたものとし,附属書 2

付表 に示す項目の計測が可能なものとする。ショートスタック試験装置の構成例を,附属書 付図 

示す。

a)

温度  冷却水の温度を制御できる。

b)

流量  燃料ガス,酸化剤ガス,冷却水及びパージ用窒素。

c)

電流  定電流制御ができる負荷装置を用いるのが望ましい。

2.3

加速条件及び試験時間  小型単セル試験で求めた運転温度と電圧低下速度の関係から,劣化モード

が異なると思われる温度の高い領域を避けて,加速評価可能な運転温度を設定し試験を行う。例えば,基

準条件よりも 10〜20℃高めの温度,ただし,220℃以下で行う。  また,小型単セル試験の結果を待たずに,

ショートスタックの試験を開始できるものとする。その場合,加速倍数は,小型単セル試験の結果をもと

に算出し,試験温度に関しては,小型単セルによって妥当性を確認する。

電圧低下速度の温度依存性を評価する場合は,次に定義するいずれかの温度を用いる。

−  単セル平均温度  単セルの面内温度の平均値。面内温度分布を測定していない単セルの平均温度は,

面内温度分布を測定した単セルの温度分布を適用して算出する。

−  ブロック平均温度  ブロック内単セル平均温度の平均

運転は,1 万時間程度実施する。

2.4

試験手順  ショートスタックの加速試験手順は,次による。試験手順概略を,附属書 付図 に示

す。

a)

立上げ運転後,例として

附属書 付表 に示す基準条件下で運転を実施する。所定の電圧に達しない

ときは,

附属書 付図 に示すようなりん酸浸透処理を行う。

b)

異常がないことを確認するため,

附属書 付表 に示す特性評価試験を実施する。

c)

異常がないことを確認後,加速条件に移行する。温度以外は,基準条件と同等である。

d)

加速条件下で経時的にセル電圧を測定する。また,特性評価試験を適宜実施する(例えば,1 000 時間

ごと)。

e)

1

万時間程度の寿命試験終了時,健全性を確認するため,基準条件に戻し特性試験を実施後,停止す

る。


13

C 8802

:2003

附属書 付図  1  ショートスタックの積層例

附属書 付図  2  ショートスタック試験装置構成例

(評価対象区間)

        冷却板

ブロック

    冷却板

ブロック

                                                            

    冷却板

ブロック

    冷却板

単セル

シ ョ ー ト ス タ ッ ク

 
 
 
 
 
 
                                                                                                                                流 量 調 節 弁  
 
 
 
                              流 量 調 節 弁    
  燃 料 ガ ス

   
 
 
                                                                                                                                 
 
 

負 荷 装 置

排 気

酸 化 剤

ガ ス

冷 却 器

窒 素

窒 素

水 蒸 気 分 離 器


14

C 8802

:2003

附属書 付図  3  ショートスタックの試験手順

 
 
 
 

 

 
 

立上げ運転

 

基準条件特性評価試験 

加速条件下での連続運転 

基準条件特性評価試験 

加速条件特性評価試験

 

:基準条件

 

:加速条件

 

(適宜:例えば,

 約 1000 時間ごと)

判定基準に到達

しなかった場合

には、りん酸浸透

処理を実施(

附属

書 1 付図 4 参照)


15

C 8802

:2003

附属書 付表  1  ショートスタックの計測点例

計測項目 

 

積層方向

−  各単セルの代表点

面内方向

−  中央ブロックの冷却板間中央セルの面

内(例えば,9 点)

冷却水

−  入口,出口

温度

燃料加湿

−  加湿器

−  燃料ガス 

−  酸化剤ガス

流量

−  冷却水 

電流

電圧

−  セル電圧(全セル) 
−  ブロック電圧 
−  全電圧

 

附属書 付表  2  ショートスタックの構成及び基準条件の例

項目

セル面積

実寸サイズ

ブロック数 3

ブロック内セル数

5

〜9

電流密度 300mA/cm

2

水素濃度 80%水素

燃料

ガス

加湿条件 50℃飽和

燃料利用率   80

利 
用 

酸化剤利用率 

60

運転温度 200℃

圧力

常圧

附属書 付表  3  ショートスタックの特性試験項目

試験項目

電流-電圧

特性試験

基準電流密度の 25%,50%,75%及び 100%
を基本とする。

燃料利用率 
依存性試験

基準となる利用率の±10%を基本とする。

酸化剤利用率

依存性試験

基準となる利用率の±10%を基本とする。

水素ゲイン

依存性試験

基準組成における水素濃度と 100%水素時
を基本とする。

備考  特性試験時に,各セル電圧が 800mV を超えてはなら

ない。


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C 8802

:2003


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C 8802

:2003

附属書 3(規定)加速倍数算定方法

1.

適用範囲  この附属書は,りん酸形燃料電池寿命試験方法の小型単セル試験データから加速倍数を算

定する方法について規定する。

2.

加速倍数の算定方法  電圧経時特性から電圧低下速度を求め,その結果をもとに加速倍数を算定する。

2.1

電圧低下速度の算定方法 

a)  1

万時間程度の小型単セル試験を実施し,セル電圧を縦軸に,時間の常用対数を横軸として電圧経時

変化を表示する。電圧経時特性の例を,

附属書 図 に示す。

b)

運転初期の電圧が安定しない期間や電圧が上昇している期間など,ほとんど電圧低下が認められない

期間を領域Ⅰとして近似直線 L

1

を引く(領域Ⅰがない場合もある。

c)

領域Ⅰ以降  (具体的には,電圧が一定の低下速度で推移し始めてから)の運転領域全体の電圧変化を観

察し,前半と後半とを代表する 2 本の直線で近似する。前半の近似直線を L

2

とし,後半の近似直線を

L3

とする。

d)

上記までの手順で引いた 3 本の近似直線 L

1

,L

2

,L

3

のそれぞれの交点を,点 a

1

,点 b

1

とすると,領

域Ⅰ,領域Ⅱ,領域Ⅲが次のように求められる。

領域Ⅰ

:運転開始から点 a

1

まで

領域Ⅱ

:点 a

1

から点 b

1

まで

領域Ⅲ

:点 b

1

から運転終了まで

領域Ⅰがなく領域Ⅱから始まる場合もあり,この場合,運転開始後 100 時間を領域Ⅱの開始点 a

1

する。

e)

領域Ⅱ及び領域Ⅲの電圧低下速度は,直線 L

2

,L

3

の傾きから求める。電圧低下速度の算出方法を,

属書 図 に示す。

附属書   1  電圧経時特性及び領域 

セル電

運転時間(常用対数)

直線

2

1

1

直線

3

直線

1

領域Ⅰ


18

C 8802

:2003

附属書   2  電圧低下速度の求め方

 

 

備 考  

  電 圧 低 下 速 度 は 近 似 直 線 上 の 2 点 か ら 次 式 に よ っ て 算 出 す る 。  

  

                                   

V

 

2   

−    

V

 

1  

                     

ε

v

 

  =    

−  

                           

      

lo g  

1 0

 

  

t

 

2   

−  

 lo g  

1 0

 

  

t

 

1  

こ こ に 、    

ε

v

 

   

: 電 圧 低 下 速 度   ( m V / d e c a d e )  

t

1  お よ び

t

2 : 運 転 時 間  

                       

: セ ル 電 圧  (m V ) 

セル電圧

 

(

m

V)

 

運 転 時 間 ( 常 用 対 数 )

 

lo g

 

1 0

 

 

2

 

lo g

 

1 0

 

 

1

 

V  

1

 

V  

2

 

V

1  お よ び

V

2  

備考  電圧低下速度は,近似直線上の 2 点から次の式によって算出する。

1

log

2

log

1

2

10

10

t

t

v

v

v

=

ε

ここに,

ε

v

電圧低下速度(mV/decade)

t1

及び t2:

運転時間

V1

及び V2:

セル電圧(mV)


19

C 8802

:2003

2.2

加速倍数の算定方法  電圧低下速度と運転温度との関係を求めるために,複数の運転温度で小型単

セル試験を実施し,

附属書 図 に示す領域Ⅱ及び領域Ⅲに対して加速倍数を算定する。

a)

運転温度の異なる小型単セル試験結果に対して,

附属書 図 で示す方法によって各運転温度での領

域Ⅱの電圧低下速度及び領域Ⅲの電圧低下速度を求める。求めた電圧低下速度を各運転温度で整理し

たものを,

附属書 図 に示す。

附属書   3  電圧低下速度及び運転温度

b)

附属書 図 の横軸に基準条件例及び加速条件例を示す。この 2 点の運転温度における電圧低下速度

の比率をもって加速倍数を決定する。領域Ⅱ,領域Ⅲそれぞれの加速倍数は,次の式によって算出す

る。

2

1

領域Ⅱの加速倍数  

v

v

m

= ε

ε

2

1

領域Ⅲの加速倍数  

v

v

m

=

ε

ε

ここに,

ε

 v

1

領域Ⅱの加速条件での電圧低下速度

ε

 

v

2

領域Ⅱの基準条件での電圧低下速度

ε

 v

1

領域Ⅲの加速条件での電圧低下速度

ε

 

v

2

領域Ⅲの基準条件での電圧低下速度

運転温度    (℃)

 電

 

(mV/deca

d

e)

基準条件

加速条件

領域Ⅱ

領域Ⅲ

ε

v

1

ε

v

2

ε

v

1

ε

v

2

:小型単セル試験データ(平均値)


20

C 8802

:2003

附属書 4(参考)りん酸形燃料電池の寿命試験方法の技術的根拠

序文  この附属書(参考)は,りん酸形燃料電池の寿命試験方法の技術的根拠について記述するものであ

り,規定の一部ではない。

1.

セル劣化の加速要因(参考文献 123及び 参照)  セル反応部の加速寿命試験方法確立に当

たって,小型単セルによる加速試験を実施した。加速要因として,運転温度,電流密度,運転圧力及び電

位(実際上はセル電圧)を想定し,セル電圧低下に及ぼす影響を調査した(

参考文献 参照)。供試品として

現在実用化されている実寸大セルの反応部から小片を切り出し,小型単セルを製作して使用した。

標準の試験条件は,温度 200℃,電流密度 300mA/cm2,運転圧力常圧,試験時間 3 000 時間とした。

試験結果について温度のセル電圧低下速度に及ぼす影響を,

附属書 付図 1a に示す。温度の増大ととも

にセル電圧低下速度は増大し,200℃から 220℃へと温度を 20℃上昇させると,セル電圧低下速度は,約

2.5

倍増大した。電流密度の影響を,

附属書 付図 1b に示す。電流密度を増大させてもセル電圧低下速度

はほとんど変化しなかった。運転圧力の影響を

附属書 付図 1c に示す。電流密度と同様に圧力の影響は,

ほとんど見られなかった。電位の影響を,

附属書 付図 1d に示す。電流密度を一定とした試験では経時

的にセル電圧は低下するので,セル電圧一定の試験条件を保持するため,適時電流密度を調整しながら試

験を実施し,定期的に電流密度を 300mA/cm2 にし,そのときのセル電圧経時特性を求めた。電位を高く

すると,セル電圧低下速度は明らかに増大した。例えば,300mA/cm2 時のセル電圧に相当する約 650mV

からセル電圧としては,かなり高い 850mV まで変化させると,セル電圧低下速度は 2.0 倍増大した。セル

電圧を大幅に変化させても,

加速倍数の変化割合は,

温度を加速要因とした場合と比べ比較的小さかった。

以上,セルスタック劣化の加速要因としては,温度及び電位が候補として挙がったが,加速倍数への影

響及び試験の容易さを考慮して,温度を加速要因とした試験方法が最適と判断した。ただし,セル温度が

230

℃以上では,セル電圧低下速度が急激に増大した。これは劣化モードが異なるものと考えられるので,

温度の高い領域を避けたセル温度 220℃以下での試験が望まれる。

2.

長時間試験領域までの加速寿命試験(参考文献 参照)  長時間の運転が可能なショートスタックに

よって,18 000 時間の発電試験を実施し,セル電圧経時特性を把握した。

セル電圧経時特性を,

附属書 付図 に示す。運転時間を常用対数表示で示すと,経時特性は大きく三

つの領域に区分けすることができた。試験の過程で定期的に,電流―電圧特性試験を実施し,その結果か

ら,セル電圧低下の要因について,分極分離手法(

参考文献 参照)を用い,活性化分極及び拡散分極を

求め,結果を

附属書 付図 に示す。これらを総合すると,領域Ⅰは運転の初期に現れる現象で,セルは

っ水性の強弱や初期の運転条件(起動,停止操作)で大きく変化する。領域Ⅱは,触媒劣化に起因する活

性化分極が支配する領域で,領域Ⅲは,触媒の劣化に加えガス拡散阻害が増大する領域である。

セル電圧経時特性から温度を変化させたときの領域Ⅱ及び領域Ⅲのセル電圧低下速度を求め,結果を

属書 付図 に示す。①は触媒劣化に起因するセル電圧低下速度を,②はガス拡散阻害に起因するセル電

圧低下速度を示す。

ショートスタックの試験によって,活性化分極とともに拡散分極についても,温度の増加とともに増大

していることが把握できた。以上の結果から長時間領域まで含め,温度による加速寿命試験は可能との見


21

C 8802

:2003

通しを得た。

参考のため,長時間運転している現地試験データを調査した。結果の一例を,

附属書 付図 5(参考文

献 参照)に示す。ショートスタックの試験データと比較するため,定格運転時の温度及び電流に換算し

て,運転温度及び電流を一定にしたときのセル電圧経時特性を求めて表示した。現地試験データは,負荷

変化,負荷状態及び緊急停止を含めた起動,停止の状況などが,ショートスタック試験と異なるものの,

全体の傾向として,①セル電圧経時特性は,運転時間の常用対数表示が可能であること,②領域Ⅱと領域

Ⅲとは明らかに区分できるなどが判明し,ショートスタック試験で得られた結果の一般性が確認できた。

3.

セル劣化メカニズムに及ぼす温度の影響  2 節では,セル劣化メカニズムを分極分離手法によって推

定したが,この節では,長時間運転したセルを解体し,触媒粒径及び触媒層のりん酸含浸量を測定し,物

性の変化から劣化の要因を検討した。

a)

活性化分極増大及び温度(参考文献 23及び 参照)  活性化分極の増大は,主に触媒の劣化と

関係づけられる。温度をパラメータとした小型単セル試験の試験終了後のセルを解体し,カソード触

媒粒径を求め,結果を

附属書 付図 に示す(参考文献 参照)。温度が高い程,触媒粒径の成長が大

きい。18 000 時間運転したショートスタックに用いたセルの触媒粒径変化と温度との関係を,

附属書

4

付図 に示す。ショートスタック試験では,セル平面の温度分布をあらかじめ測定しているので,

温度測定結果から触媒採集箇所の温度を推定し,その温度と触媒粒径変化の関係を求めた。小型単セ

ル試験の温度と触媒粒径変化の関係を,

附属書 付図 をもとに,18 000 時間の発電を想定したとき

の触媒粒径を推定し,

附属書 付図 に示す。触媒粒径変化の温度依存性は,ショートスタックに用

いたセルと小型単セルともよく一致した。

触媒粒径変化からセル電圧低下値を式(1)をもとに求めることができる(

参考文献 及び参考文献

9

参照)

1

0

/

log

b

R

R

V

=

(mV) (1)

ここに,

V: セル電圧低下値

b

ターフェルこう配

R

o

初期の触媒粒径

R

1

ある時間経過後の触媒粒径

触媒粒径変化から触媒劣化に起因するセル電圧低下値を算定して,

附属書 付図 に示す。一方,

セル電圧低下速度と温度の関係を示す

附属書 付図 をもとに,18 000 時間運転したときの触媒劣化

に起因するセル電圧低下値を求め,その結果を,

附属書 付図 に示す。分極分離手法によって推定

した活性化分極変化の温度依存性は,物性変化から推定した温度依存性と極めてよく一致した。この

ことから領域Ⅱの電圧低下は,触媒の劣化に依存し,温度の上昇によって,触媒の粒径が増大し,触

媒表面積が低下し,セル電圧低下をもたらしたと考える。

b)

ガス拡散阻害及び温度  電極のぬれに基づくセル電圧低下は,りん酸が触媒層細孔内部にどれだけ存

在するかだけでなく,触媒たん(坦)持体カーボンの一次粒子間のすき間で,反応サイトとなる一次

孔と,一次粒子の集合体であるアグロメレイト間のすき間,すなわち,ガスチャンネルとなる二次孔

に,どのようにりん酸が分布しているかを知ることが重要であり,このための二次孔のりん酸フィル


22

C 8802

:2003

レベル(細孔容積に対する含浸するりん酸量の比率)と酸素ゲインとの関係(

参考文献 10 参照)が附

属書 付図 のように関連づけられること及び二次孔内のりん酸フィルレベルの算出方法(参考文献

11

参照)を渡辺などが示している。ここでは,この考えに基づき,ガス拡散阻害によるセル電圧低下

と温度の関係について検討した。

なお,触媒層内の構造(

参考文献 11 参照)を,附属書 付図 10 に示す。触媒の周りには,りん酸

による薄い膜が形成され,反応ガスはこの層を拡散して侵入し,触媒表面上で反応する。一方,二次

孔にもりん酸は占積しているが,その量は少なくガス侵入通路の役割をしている。

18 000

時間運転したセルを解体し,温度をパラメータとした空気極触媒層内の二次孔のりん酸フィ

ルレベルを求め,結果をもとに酸素ゲインを推定し,温度とセル電圧低下速度の関係を求め,結果を

附属書 付図 11 に示す。比較のため,分極分離方法で求めた附属書 付図 の結果を同図に示す。以

上,セル劣化メカニズム解明に基づき検討した結果とセル電圧経時特性から推定したガス拡散阻害に

基づくセル電圧低下の温度依存性は,ほぼ一致した。しかし,温度をパラメータとしたりん酸フィル

レベル及び白金利用率に関するデータは不足している。また,りん酸フィルレベルと白金利用率のわ

ずかな変化で,セル電圧低下が大きく変化する。このため,ガス拡散阻害によるセル電圧低下のメカ

ニズムは,さらに解明が必要である。

以上の検討から,領域Ⅱは,触媒劣化に起因し,領域Ⅲは触媒劣化と触媒層のぬれによるガス拡散

阻害に基づくセル電圧低下であると考えられる。現地試験では,

附属書 付図 12(参考文献 12 参照)

に示すように,従来の領域Ⅲに加え,新たに領域Ⅳが観測されたが,この領域Ⅳのセル電圧低下は,

実プラントでは出力一定運転を行うため,運転の後半で,電流増大及びセル温度上昇による運転が予

想され,ショートスタック試験とは異なった現象が現れたものと解釈する。

4.

小型単セル試験温度とショートスタック温度の関係(参考文献 参照)  小型単セル温度とセル電圧

低下速度の関係を,

附属書 付図 13 に示す。ショートスタックのセル温度は,セル平面に温度分布があ

り,セル電圧低下速度がセル平面内の最高温度で決まるのか,平均温度で決まるのか不明であった。そこ

で,セル温度表示として,最高温度表示及び平均温度表示の 2 種類を考え,それぞれの温度とセル電圧低

下速度の関係を求め,結果を

附属書 付図 13 に示す。ここでセル平均温度とは,セル平面を均等に分割

した 9 か所で温度を測定し,その結果を用いてシミュレーション解析し,25 に均等分割した各部分の温度

を求め,その平均値をセル平均温度と定めた。ブロックの平均温度とは,セルごとの平均温度の平均値,

また,ブロックの最高温度とは,セルごとの最高温度の平均値とした。ショートスタックのセル平均温度

表示及び小型単セル試験結果並びにブロック平均温度表示及び小型単セル試験結果が一致することから,

小型単セル温度と等価なショートスタック温度は,セルごとではセル平均温度,ブロックではブロック平

均温度であると考えるのが妥当である。

5.

ガス拡散分極増大の開始点  スタック平均温度を変化させたときの領域Ⅱ及び領域Ⅲのセル電圧経時

特性を示す直線の交点,すなわち領域Ⅲの開始点について調査した結果を,

附属書 付図 14 に示す。温

度を 192℃から 208℃まで変化させたときの領域Ⅱと領域Ⅲの交点は 4 800〜5 600 時間の範囲にあった。

運転温度が低い程,領域Ⅲの開始点は遅れるものと予想していたが,試験では 4 800〜5 600 時間の範囲に

あり,これはばらつきの範囲内にあること及び寿命を厳しく評価するとの観点から,基準状態の拡散分極

増加の開始点を加速試験時の開始点とする。


23

C 8802

:2003

6.

りん酸搬出によるセル劣化及びりん酸補給について  りん酸搬出によるセル内りん酸不足現象及び

りん酸不足時のセル電圧挙動は解明されており(

参考文献 131415 及び 16 参照),りん酸を外部から

補給することによってセル電圧は回復するので,

セル劣化要因からりん酸搬出によるセル劣化を除外した。

加速試験実施に当たっては,温度を上昇させるため,りん酸の搬出量は増大するので,加速試験途中でり

ん酸を補給することを前提とする。りん酸補給時期及び補給量は,りん酸搬出量を事前に予測し,その結

果に基づき実施する。

参考文献

1

.M.Watanabe, H. Uchida, H. Hiratsuka, T. Kitai, K. Nishizaki, N. Nakajima

    and H. Miyoshi,  “Electrochemical Evaluation of Fill Level with Electrolyte in Gas Diffusion Electrodes at

    Phosphoric Acid Fuel Cells”,Denki Kagaku, 64, 460 (1996).

2

.N.Nakajima, H. Miyoshi, K.Nishizaki, T. Kitai,  H.Uchida and M. Watanabe,  “Evaluation of the

    performance degradation at PAFC investigation of dealloying process of electrocatalysts with in-situ

    XRD”,1996 Fuel Cell Seminar Abstracts, 230 (1996).

3

.新エネルギー・産業技術総合開発機構,“リン酸型燃料電池寿命評価研究(加速試験法の開発),

    (平成 8 年度共同研究成果報告書)(1997).

4

.原嶋,西川,宇佐見,“リン酸形燃料電池の寿命評価技術 ,Denki Kagaku,66(2),122(1998).

5

.西川,小上,松本,原嶋,渡辺,“リン酸型燃料電池のセル電圧低下の要因について ,電学論

    B,118,874(1998).

6

.日本電機工業会,“  りん酸形燃料電池の加速寿命試験方法の標準化に関する研究開発 ,

    平成 9 年度  新エネルギー・産業技術総合開発機構委託業務成果報告書(1998).

7

.青木,小上,谷口,岩崎,西川,“リン酸形燃料電池の劣化モードの経時変化 ,

    電学論 B,119,500(1999).

8

.日本電機工業会,“  新発電システムの標準化に関する調査研究 ,平成 10 年度,

    通商産業省工業技術院委託(1999).

9

.G.A. Gruver,R.F. Pascoe,and H.R. Kunz,“Surface Area Loss of platinum

    Supported on Carbon in Phosphoric Acid Electrolyte”,  J. Electrochem. Soc.,

    127,1219(1980).

10

.三好,中島,西崎,鍛代,内田,渡辺,“PAFC の劣化要因に関する要素試験研究 ,

    第 4 回 FCDIC シンポジウム,p60(1997).

11

.M. Watanabe, M.Tomikawa, and S.Motoo,“ Experimental Analysis of the Reaction

    Layer Structure in a Gas Diffusion Electrode”,  J. Electroanal. Chem.,195,81(1985).

12

小野寺,

“200kW

実機における 4 万時間の電池電圧経時特性 ,

第 7 回 FCDIC シンポジウム,

p16(2000).

13

.上野,青木,佐藤,桑原,関,西川,“リン酸不足状態におけるセルの運転特性 ,

    電学論 B,119,950(1999).

14

.堤,山口,難波,“  長期運転したりん酸形燃料電池のりん酸補給前後の諸特性特性 ,

    電学論 B,112,115(1992).

15

.吉岡,光田,堀内,松本,“  リン酸形燃料電池における蒸発リン酸のセル内凝縮 ,

    DENKI  KAGAKU 66,41(1998).

16

.岡江,加藤,瀬谷,鴨下,“ PAFC におけるりん酸マネジメントの研究 ,第 7 回 FCDIC シンポジウ

ム,p57(2000)


24

C 8802

:2003

50

40

30

20

10

0

160 170  180 190 200

210

220

230

240

250 260

セル電

圧低

下速

度(

µ

v/

h

セル運転温度(℃)

50

40

30

20

10

 0

0 100

200

300

400 500

運転電流密度(mA/cm

2

セル電

圧低

下速

度(

µ

v/

h

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

附属書 付図 1a  セル電圧低下速度のセル運転温度依存性(参考文献 6 参照)

附属書  1b  セル電圧低下速度の電流密度依存性(参考文献 6


25

C 8802

:2003

設定電圧(mV)

セル電

圧低

下速

度(

µ

v/

h

220℃ 
200℃

900

50

40

30

20

10

0

850

800

750

650 700

40

20

 0

0

運転圧力(ata)

セル電

圧低

下速

度(

µ

v/

h

実測値

平均値

80

60

1  2 3 4 5  6 7 8  9 10

附属書 付図 1c  セル電圧低下速度の圧力依存性(参考文献 参照)

附属書 付表 1d  セル電圧低下速度の設定電圧依存性(参考文献 6 参照)


26

C 8802

:2003

700

680

660

640

620

600

100

運転時間(h)

セル電

圧(

mV

1000

10000

100000

領域Ⅰ

700

680

660

640

620

600

100

運転時間(h)

セル電

圧(

mV

1000

10000

100000

活性化分極

拡散分極

附属書 付図  2  セル電圧経時変化(ショートスタック加速試験)(参考文献 参照)

附属書 付図  3  セル電圧経時変化(分極分離結果)(参考文献 7 参照)


27

C 8802

:2003

セル温度(℃)

セル電

圧低

下速

度(

mV

/decade

190 200

210

220

0

50

100

①  領域Ⅱのセル電圧低下速度

②  ③から①を差し引いたセル電圧低下速度

③  領域Ⅲのセル電圧低下速度

附属書 付図  4  セル電圧低下速度の温度依存性(参考文献 7 参照)


28

C 8802

:2003

700

650

600

550

100

累積発電時間(h)

平均セ

ル電

圧(

mV

1 000

10 000.

100 000

現地試験データ(B)

定 格 容 量

          :200kW

定 格 電 圧

          :210V

燃料利用率:80%

空気利用率:60%

700

650

600

550

100

累積発電時間(h)

平均セ

ル電

圧(

mV

1 000

10 000

100 000.

現地試験データ(A)

定 格 容 量

          :200kW

定 格 電 圧

          :210V

燃料利用率:80%

空気利用率:60%

附属書 付図  5  現地試験データ(参考文献 8 参照)


29

C 8802

:2003

アノード 180℃    アノード 200℃

アノード 220℃    アノード 240℃

カソード 180℃    カソード 200℃

カソード 220℃    カソード 240℃

*  :表示された式は, 
    実験式である。

運転時間(h)

500

400

300

200

100

0

0

5 000.

変化比

率(

%)

1 000.

2 000.

3 000.

4 000.

y=28.669Ln (x) + 100

y=17.331Ln (x) + 100

y=7.7422Ln (x) + 100

y=0.999Ln (x) + 100

*

*

*

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

附属書 付図  6  触媒粒径の経時変化(参考文献 6 参照)

*


30

C 8802

:2003

5.0

170

温    度(℃)

触媒金

属粒

径(

初期値

に対

する比

4.0

3.0

2.0

1.0

0.0

180 190 200

210

220

230

240

附属書 4 付図 6 から推定(18 000 時間の推定値)

分析結果(運転時間:18 000 時間)

セル温度(℃)

セル電

圧低

下値

mV

:ショートスタックの経時特性から算出(運転時間:18 000 時間)

:触媒粒径変化からの推定(運転時間:18 000 時間)

 40

 30

 20

 10

    0

190 200 210

附属書 付図  7  カソード触媒粒径変化及び運転温度の関係

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

附属書 付図  8  触媒粒径変化及びセル電圧低下速度から推定した電圧低下値


31

C 8802

:2003

180

160

140

120

100

 80

0 20

二次孔りん酸フィルレベル(%)

酸素ゲ

イン

mV

40 60 80 100

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

附属書 付図  9  細孔内りん酸フィルレベルと酸素ゲインの関係(参考文献 及び 10 参照)

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

附属書 付図 10  触媒層の構造(参考文献 11 参照)

agglomerate(アグロメレイト)

primary pore(一次孔)

secondary pore(二次孔)

electrolyte(電解液)

A : Pore for gas dissolution      (ガス溶解用の孔)

B : Pore for gas transportation(ガス侵入用の孔)

A

B

Pt

gas

PTFE


32

C 8802

:2003

205

200

195

190

スタッ

ク電

圧(

V

    入口酸素分圧・電流補正(V)

    停    止

領域  Ⅱ

低下率:-12mV・log (h)

領域  Ⅲ

低下率:-38mV・log (h)

領域  Ⅳ

低下率:

-286mV・log (h)

りん酸補給

210

185

180

175

170

100

1 000

10 000

100 000

累積発電時間(h)

215

220

680 
670 
660 
650 
640 
630 
620 
610 
600 
590 
580 
570 
560 
550

530

540

セル電

圧(

mV

附属書 付図 11  セル電圧低下速度及び温度

附属書 付図 12  長時間運転時のセル電圧経時特性(現地試験データ)

温    度(℃)

    物性変化からの推定

    実    測

100

 50

  0

 
180 185

セル電

圧低

下速

度(

mV

/decade

200

205

210

220

190 195

215


33

C 8802

:2003

セル温度(℃)

セル電

圧低

下速

度(

µ

V/

h)

    セル温度表示 
    (小型単セルの 
      セル全面の温度は均一)

180 200

220

240

10

30

20

供試品 A-1(ショートスタック)の 
セル電圧経時変化

供試品 A-1(ショートスタック)の 
ブロック電圧経時変化

供試品 B(小型単セル)の 
セル電圧経時変化

    ブロック平均温度表示 
    (セル平均温度の平均値)

    ブロック最高温度表示 
    (セル最高温度の平均値)

    セル平均温度表示
    セル最高温度表示

附属書 付図 13  セル電圧低下速度の温度依存性(参考文献 7 参照)


34

C 8802

:2003

運転時間(h)

0.700

0.680

0.660

0.640

0.620

0.600

10

セル電

圧 

V

100 10

000

10000.

1 000

T=200℃

a

b

5.0

附属書 付図 14  セル電圧経時変化(温度変化)

運転時間(h)

700

680

660

640

620

600

100

セル電

圧(

mV

1 000.

10 000.

100 000

4.8

a

b

5.6

T=208℃

T=192℃

b