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C 61340-2-2:2013  

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 用語及び定義 ··················································································································· 1 

3 一般事項························································································································· 3 

3.1 測定方法の種類 ············································································································· 3 

3.2 測定方法の適用例 ·········································································································· 3 

4 測定······························································································································· 4 

4.1 測定時の環境及び注意事項 ······························································································ 4 

4.2 電荷測定方法 ················································································································ 4 

4.3 静電界測定方法 ············································································································· 8 

4.4 電位測定方法 ··············································································································· 11 

5 試験報告書 ····················································································································· 13 

附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 15 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本電子部品信頼性センター

(RCJ)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきと

の申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

JIS C 61340-2の規格群には,次に示す部編成がある。 

JIS C 61340-2-1 測定方法−材料及び製品の静電気電荷拡散性能の測定方法 

JIS C 61340-2-2 第2-2部:測定方法−帯電特性の測定 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格 

      JIS 

C 61340-2-2:2013 

静電気−第2-2部:測定方法−帯電特性の測定 

Electrostatics-Part 2-2: Measurement methods- 

Measurement of chargeability 

序文 

この規格は,2000年に第1版として発行されたIEC/TR 61340-2-2を基に,規格利用者の理解及び利便

性を図るため,構成を変更して作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある箇条の規定内容は,対応国際規格の規定内容を変更している

事項である。変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。 

適用範囲 

この規格は,物体と他の物体との間の接触,剝離,摩擦などによって発生する静電気電荷を評価するた

めの静電気の帯電特性の測定方法について規定する。また,この規格で取り扱う静電気の発生過程は,エ

レクトロニクス産業に限定したものであり,測定対象についてもエレクトロニクス産業で一般的に用いる

ものに限定する。 

なお,この測定方法は,着火及び爆発の可能性がある環境には適用しない。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

IEC/TR 61340-2-2:2000,Electrostatics−Part 2-2: Measurement methods−Measurement of 

chargeability(MOD) 

なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”

ことを示す。 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

2.1 

静電気(static electricity) 

電荷の分布が時間的に変化しないときの電気現象。電荷が完全に静止するのではなく,空間各点の電荷

密度の平均値がそれぞれ一定で,電流密度の平均値がゼロの場合も静電気として扱う。 

2.2 

電荷(electric charge) 

正及び負の2種類がある全ての電気現象の根元となる実体。正の電荷は陽子がもつ電気の量であり,負

の電荷は電子がもつ電気の量である。電荷は,電気の最小単位の電気素量である。 

注記 電気素量は,記号eで表し,その値は,e=1.602×10−19 C(C:クーロン)である。 

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2.3 

静電荷(electrostatic charge) 

物質内に存在し,時間的にも空間的にも変化しない,又は変化が緩やかな状態にある電荷。 

2.4 

電界(electric field) 

電荷及び電荷を帯びた物体によって形成され,電荷及び電荷を帯びた物体に電気的な力を及ぼす場。 

2.5 

静電界(electrostatic field) 

静電気(静電荷)によって形成された電界。 

2.6 

電位(electrical potential) 

位置エネルギーであり,基準点(無限遠点)からその位置まで電界に逆らって単位電荷を運ぶために要

する仕事量。 

2.7 

静電電位(electrostatic potential) 

静電気の帯電に起因する静電界によって,ある任意の点と決められた基準点との間に起こる時間的にも

空間的にも変化しない電位。 

2.8 

帯電(electrostatic charging) 

物体に電荷を帯びさせること,又は電荷をもった状態。 

2.9 

摩擦帯電(tribo-electric charging) 

物体が互いに摩擦することによって電荷をもつようになり,その状態で物体を分離したときに,それぞ

れの物体が電荷をもち帯電が起こる現象。 

2.10 

帯電列(tribo-electric series) 

正極性に帯電しやすい材質から負極性に帯電しやすい材質を並べた序列表。離れた位置にある物質同士

を擦るほど帯電量は多くなる傾向がある。摩擦帯電列ともいう。 

2.11 

接触帯電(contact charging) 

異種の物質を接触したとき,接触電位差に基づいて帯電が起こる現象。 

2.12 

剝離帯電(peeling charging) 

二つの物体の接触面の分離によって帯電が起こる現象。 

2.13 

帯電特性(chargeability) 

物体が帯電したときの帯電極性及び帯電量の大きさ。 

2.14 

ファラデーケージ(faraday cage) 

電荷量を測定するための絶縁した金属製容器(ケージ)をいい,導体の箱(多くは円筒形)をある電位

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に保ち,箱の中に入れた帯電物体の電荷量を,箱に連結してある電位計などによって測定する装置。 

注記 ファラデーケージは,イギリスの科学者マイケル・ファラデー(Michael Faraday)が行った金

属製のかご(cage)を用いた電気実験にちなんで付けられた名称である。かごを用いない場合

でも,原理が同じであればファラデーケージという。 

2.15 

接触形静電電位計(electrostatic voltmeter) 

入力インピーダンスが1×1014 Ω以上の接触形電位計。 

一般事項 

3.1 

測定方法の種類 

静電気の帯電特性を評価するための物理量には,電荷,電界及び電位がある。それぞれの測定方法は,

次による。 

a) 電荷測定方法 供試体の電荷量は,供試体をファラデーケージに入れて測定する。ファラデーケージ

に入れた供試体の電荷が,外部周辺と結びつくような漏れがない場合,入れた供試体の電荷は,内容

器に同じ極性で同じ量の誘導電荷又は誘導電位として現れる。この原理を利用した測定方法である。

この方法は,導体又は絶縁体のいずれも測定できる。 

b) 静電界測定方法 供試体から生じる静電界は,静電界内に配置する絶縁した検出電極表面に誘導され

る電位又は電荷を測定する。この方法では,誘電プローブ測定器,フィールドミル電界計又はフィー

ドバック電界計を用いる。 

注記1 供試体の帯電電位に変化がなくても,試験時の環境,供試体と測定器との間の環境及びそ

れらの周囲近傍に存在する物体,供試体と測定器との間の距離,供試体の形状などによっ

て測定値が変化するため,必要に応じて補正する。 

注記2 静電界測定法に用いる測定器には,“V/m”の表示ではなく,“V”の表示だけのものがあ

る。この種の表示は,測定する供試体の表面から一定の距離で校正し,供試体の表面の電

位を表している。そこで,このタイプの測定器を用いる場合には,測定器と供試体の表面

との間の距離を,正確に維持する。 

c) 電位測定方法 供試体の電位の測定には,接触形静電電位計,電界計又は非接触形静電電位計を用い

る。導体を測定する場合は,接触形静電電位計を用いるが,電界計又は非接触形静電電位計も用いる

ことができる。また,絶縁体の表面電位及び空間の電位を測定する場合は,電界計又は非接触形静電

電位計を用いる。 

注記1 接触形静電電位計による導体の電位測定では,供試体の静電容量と測定器の静電容量とが

並列接続となるため,測定する電位は元の値よりも減少する。体積又は表面積が小さな物

体を測定するときは,測定器の静電容量の影響を大きく受ける。 

注記2 電界計又は非接触形静電電位計による表面電位測定は,測定器を供試体に近付けることに

よって,供試体の静電容量と供試体及び測定器のプローブ外筒間の静電容量とが並列接続

となるため,測定する電位は元の値よりも減少する。 

3.2 

測定方法の適用例 

物体は,他の物体との接触,剝離,摩擦などによって静電気が発生して帯電する。これらの帯電は,接

触帯電,剝離帯電,摩擦帯電などと呼ばれる。静電荷が発生する代表的な例及びその標準的な測定方法を,

表1に示す。 

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表1−静電荷が発生する代表的な例及び標準的な測定方法 

静電荷が発生する代表例 

標準的な測定方法 

電荷測定 

静電界測定 

電位測定 

表面上を物体が滑る動作 
例えば,半導体デバイスが輸送用チューブから滑り出る動作 

○ 

△ 

△ 

配管及びフィルタ中の液体の流動 

○ 

△ 

△ 

キャリアテープからカバーテープを剝離する動作 

○ 

△ 

○ 

物体の摩擦 
例えば,包装材中の電子部品が輸送中に動く動作 

△ 

○ 

○ 

織物及びフィルム材料のロール表面の通過 

△ 

△ 

○ 

床表面上の人の歩行 

× 

△ 

○ 

注記 “○”は標準的な測定ができることを,“△”は測定に工夫が必要であることを,“×”は測定ができ

ないことを,それぞれ示す。 

測定 

4.1 

測定時の環境及び注意事項 

4.1.1 

測定環境 

4.1.1.1 

一般事項 

供試体の帯電状態は,環境の温度及び相対湿度の影響を受ける。 

注記 絶縁体の電気的特性は,環境の温度及び相対湿度に依存する水分含有量によって,変化する。 

4.1.1.2 

現場での測定 

現場で供試体の帯電特性を測定するときには,測定場所及び測定時における温度及び相対湿度を記録す

る。供試体の使用状況について,その内容を記録する。 

4.1.1.3 

実験室での測定 

実験室で供試体の帯電特性を測定するときには,測定環境として温度及び相対湿度を,関連規格に適合

させる。 

なお,関連規格に規定がない場合,実際に供試体の使用が予測される最も帯電しやすい環境(最も厳し

い使用環境)で,測定することが望ましい。 

4.1.2 

注意事項 

4.1.2.1 

測定者の注意事項 

測定者が帯電している場合,帯電特性の測定値に影響を与える。そのため,測定者は,次の事項に注意

しなければならない。 

a) 測定者は,リストストラップ,帯電防止靴などによって人体接地を必ず実施して,測定者の帯電電位

を確実に低く抑制する。 

b) 測定者は,帯電防止対策を講じた帯電防止服を着用する。 

4.1.2.2 

測定周辺に関する注意事項 

供試体の帯電特性を測定するとき,供試体及び測定システムの周囲に,測定値に影響を与える可能性が

ある,物体,ごみなどの不要な物体及び浮遊体を除去する。 

4.1.2.3 

供試体の注意事項 

実験室での測定において供試体に前処理を施す場合,その内容を記載する。 

4.2 

電荷測定方法 

4.2.1 

測定器 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

測定器は,次による。 

a) ファラデーケージ 電荷測定のためのファラデーケージの例を,図1に示す。ファラデーケージは,

接地している外容器及び電気的に絶縁した内容器からなる,二つの同心状導体容器で構成する。内容

器と検出器との接続には,ポリエチレンなどで被覆・絶縁されたリード線を用いる。外容器は,高さ

が内容器よりも約10 %高いものとし,内容器の外部電界からの電気的なシールド及び検出器をはじめ

とする電荷測定システムの保護のために用いる。 

内容器 

外容器(シールド) 

絶縁体 

接地 

検出器 

リード線 

図1−ファラデーケージの例 

内容器を載せるための絶縁体並びに検出器への接続及び配線は,内容器の電荷漏れが発生しないよ

うに設計して製作する。絶縁体の材料は,機械強度,漏えい抵抗,吸湿特性及び圧電特性を考慮して

選択する。 

正確に電荷測定を行うためには,内容器に挿入した供試体の電荷からの電界の一部が,内容器の開

口部から漏れることを抑制する(防止する)必要がある。 

注記1 絶縁体の抵抗値は,1×1015 Ωを超えることが望ましい。 

注記2 単純円筒形の容器を内容器とし,供試体の大きさが内容器の底から高さ30 %の場合,電界

の漏れを全体の1 %未満に抑えるためには,内容器の深さhと直径dとの比率(h/d)は,

1.3を超えることが望ましい。また,漏れを5 %未満に抑えるためには,内容器の深さhと

直径dとの比率(h/d)は,0.8を超えることが望ましい。 

b) 検出器 電荷を測定するために,ファラデーケージに検出器を接続する。この検出器の回路方式は,

次のいずれかの方式とする。各モードの電荷量測定システムの構成例を,図2に示す。 

1) 電流モード方式 ファラデーケージの内容器に移動した電荷及び内容器の外側に誘導された電荷 

を,電流計を介して接地したときの電流値と積算時間とによって求める。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

2) 電位モード方式 内容器にあらかじめ接続した接触形静電電位計によって,電荷量を測定する。ま

た,内容器の電位増加を電界計又は非接触形静電電位計を用いて測定してもよい。このときは,既

知の内容器の静電容量から電荷量を求める。高電位を測定する場合,内容器の電位変化を制限する

ために,内容器と外容器との間に漏えい(洩)抵抗値が高いコンデンサ(例えば,ポリプロピレン

フィルムコンデンサ,セラミックコンデンサなど)を付加する。 

a) 電流モード方式 

b) 電位モード方式 

内容器 

外容器(シールド) 

絶縁体 

接地 

リード線 

A 電流計 

C コンデンサ 

V 電位計 

図2−電荷量測定システムの回路方式(例) 

4.2.2 

測定手順 

4.2.2.1 

測定システムのゼロ点調整及び安定性の確認 

ファラデーケージを含む測定システムのゼロ点調整及び安定性を確認する方法は,次による。 

a) 測定開始前に,測定システムの接地線を接地接続点に適切に接続していることを確認し,外容器及び

内容器を接地した状態で,内容器のゼロリセット1)を実施する。 

注1) ゼロリセットとは,測定を開始する前に,測定機器で接地導体を測定して,測定機器の表示

がゼロになるように調整する操作をいう。測定機器に表示のリセットスイッチがある場合は,

リセットスイッチをオン(ON)にして,測定機器の表示をゼロに調整する。 

静電気電位を測定する場合には,毎回このゼロ表示を確認することが望ましい。表示がゼ

ロを示さない場合は,機器の取扱説明書に従って,ゼロ調整ダイアル又はポット(Pot)を回

して表示がゼロになることを確認する。この時に,測定対象接地導体が接地されていてゼロ

電位であることも確認する。 

測定機器によっては,ゼロリセットスイッチをオン(ON)にすることで接地状態になり,

ゼロ電位を提供できる機器もある。 

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A

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b) ゼロリセット終了後,ゼロドリフト2)を1分間以上かけて確認する。 

注2) ゼロドリフトとは,測定機器の校正時及び測定時に,測定機器で接地導体を測定しながら,

ゼロリセットを行った後に,測定機器の表示がゼロを示し,安定的にゼロを示し続ける状態

をいう。 

静電気電位を測定する場合には,毎回このゼロドリフトを確認することが望ましい。また,

測定機器ごとに取扱説明書などに安定性を確認する時間が記載されている場合は,それを参

照することが望ましい。 

c) ゼロドリフトを確認した後,内容器を接地から切り離し,システム確認用の供試体を内容器に投入し

て,測定システムの応答及び絶縁性を確認する。 

ファラデーケージの内容器を含む測定系の絶縁性の確認を,必ず実施する。 

4.2.2.2 

電荷量の測定 

電荷量測定前に,4.1.1に規定する測定環境で,4.2.2.1に規定する測定システムのゼロ点調整及び安定性

の確認を行っていることを確認する。 

電荷量の測定は,次による。 

a) ファラデーケージの内容器に接地線を接続して,測定システムのゼロリセットを行う。 

b) 電荷測定システムのゼロリセット終了後,内容器から接地線を切り離す。 

c) 供試体を,内容器のいかなる面にも接触させずに挿入する。全電荷量は,直接測定できる。流動する

物体の場合には,接地電流を記録し,測定時間で積分して電荷量を求める。粉体の質量又は液体の体

積を記録すれば,単位質量(又は単位体積)当たりの電荷量が計算できる。 

注記1 ファラデーケージに供試体を入れるために用いる工具は,取扱い時に発生する静電荷量を

抑制するために,帯電列において供試体に近い材質(絶縁物)のものを用いる。 

注記2 供試体を取り扱う場合,様々な静電気帯電及び減衰を考慮して,供試体と取り扱う工具と

の接触面積を最小とし,内容器に挿入する又は取り出す場合,供試体が内容器に接触しな

いようにする必要がある。また,測定時に供試体を移動するときも,新たに電荷が発生し

ないよう,慎重に行うことが望ましい。 

d) 電荷量Qは,直接内容器の電位を読み取り,式(1)を用いて求める。 

Q=C×V ·················································································· (1) 

ここに, 

Q: 電荷量(C) 

C: 全キャパシタンス(F) 

C=C1+C2+C3 

C1:ファラデーケージのキャパシタンス(F) 
C2:測定器の入力キャパシタンス(F) 
C3:接続ワイヤのキャパシタンス(F) 

V: 電位(V) 

接地電流が測定できる場合,電荷量は,式(2)を用いて求める。 

dt

I

Q

t∫0

 ················································································ (2) 

ここに, 

Q: 電荷量(C) 

I: 電流(A) 

t: 測定時間(s) 

粉体試料の質量又は液体試料の体積を測定して,単位質量当たりの電荷(C/kg)又は単位体積当た

りの電荷(C/m3)を求める。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記 正及び負の電荷が共に存在する供試体の測定値は,供試体の全ての正及び負の電荷量の代数和

となる。 

e) 次の供試体の測定をする場合は,a)のゼロリセットを必ず実施してから測定を行う。 

4.3 

静電界測定方法 

4.3.1 

測定器 

測定器は,次のいずれかによる。 

a) 誘導プローブ測定器 誘導プローブ測定器は,図3に示すように,接地との間に規定の静電容量をも

つ検出電極を増幅器に接続した単純な構造であり,かつ,安価な測定器である。入力抵抗は無限大で

はないため,誘導プローブ測定器は,接地平面を参照面として供試体表面を素早くスキャンする測定

に適している。この測定器で帯電面を連続測定する場合,誘導プローブの検出電極に誘導されている

電荷を打ち消すための反対極性の電荷が接地から流れ込み,ゼロ点がずれてしまう場合がある。この

ため,この測定器を用いるときには,ゼロ点調整を頻繁に行いながら測定する。 

帯電物体 

電界 

検出電極 

増幅器 

表示 

シールド 

接地 

C コンデンサ 
R 入力抵抗 

図3−誘導プローブ測定器の構成(概略図) 

b) フィールドミル電界計 フィールドミル電界計は,誘導プローブの弱点であるゼロ点のずれをなくす

ために,接地された回転シャッタ又は音さ(叉)振動シャッタで誘導プローブの検出電極に入る電界

の遮断を繰り返し行い,接地からの反対極性の電荷の流入を防ぐことによって,ゼロ点安定性を高め,

静電界の連続測定を可能とした測定器である。回転シャッタ付き及び音さ(叉)振動シャッタ付きの

フィールドミル電界計の構成を,図4及び図5にそれぞれ示す。 

1

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R

C

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R

C

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

帯電物体 

電界 

検出電極 

回転シャッタ 

位相検出器 

表示 

シールド 

接地 

図4−回転シャッタ付きフィールドミル電界計の構成(概略図) 

帯電物体 

電界 

検出電極 

音さ(叉)振動シャッタ 

位相検出器 

表示 

シールド 

接地 

図5−音さ(叉)振動シャッタ付きフィールドミル電界計の構成(概略図) 

c) フィードバック電界計 フィードバック電界計は,測定器の検出電極での電界を変調するために振動

検出電極を用い,入力電界をゼロにするように第二の電極に電圧をフィードバックすることで,誘導

プローブ測定器のゼロ点安定性を高め,静電界の連続測定を可能とした測定器である。この電界計の

構成を,図6に示す。 

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帯電物体 

電界 

振動検出電極 

電位計 

フィードバック 

第2電極 

シールド 

接地 

図6−フィードバック電界計の構成(概略図) 

4.3.2 

測定手順 

4.3.2.1 

測定システムのゼロ点調整及び安定性の確認 

誘導プローブ測定器,フィールドミル電界計又はフィードバック電界計を含む測定システムのゼロ点調

整及び安定性を確認する方法は,次による。 

a) 測定器のケースを接地し,接地した金属表面の近くの(理想的にはファラデーケージの内部のような)

電界のない場所に,測定器の検出部を置いて,電源スイッチをオン(ON)にし,目盛をゼロに設定す

る(ゼロリセットの確認)。このとき,測定システムの接地線を接地接続点に適切に接続していること

を確認する。 

b) ゼロドリフトは,実際の測定に要する時間にほぼ等しい時間をかけて,電界のない場所で確認する。

ゼロドリフトは,1分間以上かけて確認することが望ましい。誘導プローブのゼロドリフトの確認方

法は,次による。 

1) 測定を開始する前に,測定器のゼロドリフトを確認するために接地する。 

2) 測定面よりも大きい金属板を,測定器で決められた距離に固定する。 

3) 接地された金属板の電位を測定して,ゼロが安定的に表示されることを確認する。 

ゼロドリフトの確認方法の概略図を,図7に示す。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

接地金属板 

誘電プローブ測定器 

接地 

図7−ゼロドリフトの確認方法の概略図 

c) 次に,測定器を移動して,一定の電圧を印加している金属板に対向して配置し,金属板と測定器の検

出部との距離を測定器で決められた値に合わせて,金属板が形成する電界を測定する。このとき,近

くに絶縁材料及び帯電した物体がないことを確認する。 

なお,供試体を取り扱う工具は,取扱い時に発生する静電荷量を抑制するために,帯電列において

供試体に近い材質(絶縁物)のものを用いる。 

d) 電界の読取値の変化速度を調べて,入力が減衰するときの時定数を見積もる。 

注記 誘導プローブ測定器は,入力インピーダンスが無限大ではないため,入力の減衰が速い。 

e) 入力減衰時定数に比較して2 %未満の短い時間にわたって,電圧を印加している金属板からの電界を

測定した後,測定器を電界のない場所に戻し,測定器のゼロ点の変化率を記録する。 

4.3.2.2 

静電界の測定 

静電界の測定前に,4.1.1に規定する測定環境で,4.3.2.1に規定する測定システムのゼロ点調整及び安定

性の確認を行っていることを確認する。 

静電界の測定は,次による。 

a) 測定は,測定したい位置で,入力減衰時定数と比較して短く定めた時間内に,測定器の値を読み取る。 

b) 静電界の強さは,個々の読取値をボルト毎メートル(V/m)の単位で表す。 

4.4 

電位測定方法 

4.4.1 

測定器 

測定器は,次のいずれかによる。 

a) 接触形静電電位計 接触形静電電位計は,1×1014 Ωを超える非常に高い入力抵抗及び低い値の静電容

量とをもち,供試体に直接接続することで電位を測定する。その構成を,図8に示す。この測定器は,

供試体の大地に対する静電容量が,測定系全体の静電容量に比べ,非常に大きい場合にだけ有効であ

る。 

注記 接触形静電電位計を用いる場合,測定器の静電容量が影響を及ぼすため,測定器の静電容量

及び供試体の静電容量を考慮することが望ましい。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

帯電物体 

プローブ 

シールド 

電位計 

接地 

図8−接触形静電電位計の構成(概略図) 

b) 誘導プローブ測定器,フィールドミル電界計及びフィードバック電界計 供試体の表面電位は,誘導

プローブ測定器,フィールドミル電界計及びフィードバック電界計の機能を応用して測定する。これ

ら測定器の構成は,図3,図4,図5及び図6にそれぞれ示す。 

c) 非接触形静電電位計 非接触形静電電位計は,入力電界をゼロにするように電圧追従プローブに電圧

をフィードバックすることによって,非接触で供試体の表面電位を測定する。その構成を,図9に示

す。この非接触形静電電位計による測定では,測定器と供試体との距離がその測定値にほとんど影響

しない。 

帯電物体 

電界 

振動検出電極 

電位計 

フィードバック 

電圧追従プローブ 

シールド 

接地 

図9−非接触形静電電位計の構成(概略図) 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.4.2 

測定手順 

4.4.2.1 

測定システムのゼロ点調整及び安定性の確認 

接触形静電電位計,誘導プローブ測定器,フィールドミル電界計,フィードバック電界計及び非接触形

静電電位計を含む測定システムのゼロ点調整及び安定性を確認する方法は,4.3.2.1による。 

4.4.2.2 

電位の測定 

電位測定前に,4.1.1に規定する測定環境で,4.4.2.1に規定する測定システムのゼロ点調整及び安定性の

確認を行っていることを確認する。 

測定器と供試体との距離は,用いる測定器で決められた値に設定し,次のいずれかで測定する。 

a) 接触形静電電位計を用いる場合 接触形静電電位計を用いて電位を測定する場合には,導体の供試体

に直接接続し,測定する。測定した電位の読取値を記録する。 

電位は,個々の読取値をボルト(V)単位で表す。 

b) 誘導プローブ測定器,フィールドミル電界計及びフィードバック電界計を用いる場合 誘導プローブ

測定器,フィールドミル電界計及びフィードバック電界計は,供試体と測定器の検出部との距離が測

定器の取扱説明書に記載する値となるように設置し,測定する。測定した電界の値を記録する。 

電界E(V/m)を示す電界計の開口部から距離d(m)離れた表面の電位V(V)は,式(3)を用いて

求める。 

V=f×E×d ··············································································· (3) 

ここに, 

V: 表面の電位(V) 

f: 補正係数 

E: 電界(V/m) 

d: 測定する測定器の検出部からの距離(m) 

注記 式(3)の補正係数fは,電界Eが平等電界である場合はf=1となり,不平等電界の場合はf≠1

となる。ただし,測定器で決められた距離で測定している限り,測定値は,読取値自体が補

正済みの値であるため,f=1として扱うことができる。 

電位は,個々の測定値をボルト(V)単位で表す。 

c) 非接触形静電電位計を用いる場合 非接触形静電電位計の値を読み取る。読み取った値を記録する。

入力電界をゼロにするために必要な電圧は,電圧追従プローブ経由で記録する(図9参照)。 

電位は,個々の測定値をボルト(V)単位で表す。 

試験報告書 

試験報告書には,次の事項を記載する。 

a) 測定日時 

b) 測定場所 

c) 測定環境(測定前,測定中及び測定後) 

d) 供試体の形状・寸法及び構造 

e) 供試体の製造方法 

f) 

供試体の材質及び特性 

g) 供試体の識別(名称,等級,色,製造業者,製造日など) 

h) 供試体の前処理の有無及びその条件(クリーニング方法を含む。) 

i) 

測定方法(適用した測定方法の規格番号及び名称並びに測定方法の名称) 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

j) 

測定器の種類,形式,校正情報など 

k) プローブ(電極)の形,材料及び寸法(この規格で規定したものと異なる場合) 

l) 

試験条件(製品仕様書と異なる場合) 

m) 測定回数(その個別の結果及び平均値) 

n) 試験中の特別な観察事項 

参考文献 JIS C 2170 静電気電荷蓄積を防止する固体平面材料の抵抗及び抵抗率試験方法 

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附属書JA 

(参考) 

JISと対応国際規格との対比表 

JIS C 61340-2-2:2013 静電気−第2-2部:測定方法−帯電特性の測定 IEC/TR 61340-2-2:2000 Electrostatics−Part 2-2: Measurement methods−Measurement of 

chargeability 

(I)JISの規定 

(II) 
国際規
格番号 

(III)国際規格の規定 

(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごとの
評価及びその内容 

(V)JISと国際規格との技術的差異の理由及
び今後の対策 

箇条番号
及び題名 

内容 

箇条
番号 

内容 

箇条ごと
の評価 

技術的差異の内容 

1 適用範
囲 

静電気の帯電特性の
測定方法について規
定。 

JISとほぼ同じ 
 
 

一致 
 
 

対応国際規格は標準報告書(TR)であ
るが,帯電特性の測定方法はJISとし
て必須であるため,規定した。 

JISでは必須であり,IECでISを作成する
場合,技術的差異の部分は提案する。 

2 用語及
び定義 

この規格で用いる15
の用語を定義した。 

− 

− 

追加 

利用者の理解を容易にするため,追加した。 
IECがISを作成する際に,提案する。 

3 一般事
項 

3.1 測定方法の種類 
 原理を説明 
3.2 測定方法の適用
例 

JISとほぼ同じ 追加 

 
変更 

三つの測定方法を記載し,その原理を
説明した。 
この規格の基にした対応国際規格で
は,静電気の発生状況及び測定方法を
記載しているが,JISでは表を用いた。 

利用者の理解を容易にするため,原理と適
用例とを関連付けて,記載した。また,発
生状況及び測定方法は,表の方が分かりや
すいため,表形式にまとめた。 
IECがISを作成する際に,提案する。 

4 測定 

4.1 測定時の環境及
び注意事項 
4.2 電荷測定方法 
4.3 静電界測定方法 
4.4 電位測定方法 

3  

JISとほぼ同じ 
 

変更 
 
削除 

測定の前処理を含め,測定と位置付け
た。また,対応国際規格では,測定方
法の中に,原理を規定しているが,JIS
では箇条3に規定したため,削除した。 

測定の準備から結果を得るまでを測定と位
置付け,利用者の理解を容易にした。 
IECがISを作成する際に,提案する。 

− 

− 

5  

削除 

対応国際規格では,箇条5までに紹介
した方法を実践するモデル試験を記載
しているが,削除した。 

この規格の基にしたのは標準報告書(TR)
であることから,この箇条が設けられ,記
載されたと解釈できる。この規格では事例
は不要と判断でき,削除した。今後,IEC
がISを作成する際に,再度,提案する。 

5 試験報
告書 

報告書に記載する内
容を規定。 

6  

JISとほぼ同じ 変更 

対応国際規格の規定をより細かく規定
した。 

技術的差異はない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

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JISと国際規格との対応の程度の全体評価:IEC/TR 61340-2-2:2000,MOD 

注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。 

  − 一致………………技術的差異がない。 
  − 削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。 
  − 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。 
  − 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。 

注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。 

  − MOD…………… 国際規格を修正している。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。