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C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

(1)

目  次

ページ

序文

1

1  適用範囲及び目的

1

2  引用規格

2

3  用語及び定義

2

4  空間距離

3

4.1  一般条件

3

4.2  基本的情報

3

4.3  平等電界及び準平等電界

3

4.4  不平等電界

4

5  沿面距離

7

5.1  実験データ

7

5.2  沿面距離の規定値の決定

7

6  固体絶縁物

9

6.1  一般的考慮事項

9

6.2  影響要素

9

6.3  固体絶縁物厚さの規定値の決定

10

7  高周波試験

11

7.1  基本要求事項

11

7.2  試験電圧源

11

7.3  コンディショニング

11

7.4  高周波絶縁破壊試験

11

7.5  高周波部分放電試験

11

7.6  試験結果の例

14

8  非正弦波電圧

14

8.1  一般的考慮事項

14

8.2  反復ピーク電圧

14

8.3  高調波分析

14

8.4  規定値の決定の手順及び試験

14

附属書 A(参考)高周波電圧における空間距離の絶縁性能

16

附属書 B(参考)高周波電圧における沿面距離の絶縁性能

22

附属書 C(参考)高周波電圧における固体絶縁物の絶縁性能

25

附属書 D(規定)高周波電圧での絶縁試験

32

附属書 E(参考)非正弦波高周波電圧のストレスを受ける絶縁

44

附属書 F(参考)規定値の決定図

45

参考文献

47


C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人電気学会 (IEEJ) 及び財団法人日本

規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調

査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責

任はもたない。

JIS C 60664 の規格群には,次に示す部編成がある。

JIS

C

60664-1  第 1 部:基本原則,要求事項及び試験

JIS

C

60664-3  第 3 部:汚損保護のためのコーティング,ポッティング及びモールディングの使用

JIS

C

60664-4  第 4 部:高周波電圧ストレスの考慮

JIS

C

60664-5  第 5 部:2 mm 以下の空間距離及び沿面距離を決定するための包括的方法


日本工業規格

JIS

 C

60664-4

:2009

(IEC 60664-4

:2005

)

低圧系統内機器の絶縁協調−

第 4 部:高周波電圧ストレスの考慮

Insulation coordination for equipment within low-voltage systems

Part 4: Consideration of high-frequency voltage stress

序文

この規格は,2005 年に第 2 版として発行された IEC 60664-4 を基に,技術的内容及び対応国際規格の構

成を変更することなく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。

1

適用範囲及び目的

この規格は,低電圧機器の内部で高周波電圧ストレスにさらされる基礎絶縁,付加絶縁及び強化絶縁に

ついて規定する。基礎絶縁には規定値をそのまま適用し,強化絶縁には,JIS C 60664-1 に従って追加要求

事項を適用する。この規格は,基本周波数が 30 kHz を超え 10 MHz 以下のすべてのタイプの繰返し電圧の

ストレスを受ける空間距離,沿面距離及び固体絶縁物の規定値の決定に適用する。

この規格は,JIS C 60664-1 又は JIS C 60664-5 と併せて使用しなくてはならない。JIS C 60664-1 又は JIS 

C 60664-5 をこの規格と併用することで,JIS C 60664-1 又は JIS C 60664-5 の周波数限界が 30 kHz を超え

る周波数まで拡張される。

この規格は,JIS C 60664-3 の 30 kHz を超える周波数に対するタイプ 1 保護にも適用できる。タイプ 2

保護に適用するかは,検討中である。

注記 1 10

MHz を超える周波数に対しての規定は,検討中である。

注記 2  この規格では,商用電源に重畳する高周波放射を考慮していない。機器を通常使用する場合,

商用電源に重畳する高周波放射による妨害は,絶縁ストレスに関して無視できる程度である

と仮定しているためである。

この規格は,定格電圧が交流 1 000 V 以下で,かつ,海抜 2 000 m 以下で使用する機器に適用する。

この規格では,様々な機器の性能基準に基づく機器の空間距離,沿面距離及び固体絶縁物に関する要求

事項を規定する。また,絶縁協調に関する電気的試験方法についても規定する。

この規格で規定する最小空間距離は,電離した気体が発生する箇所には適用しない。このような状況に

関する特殊な要求事項については,関連の製品規格で規定してもよい。

この規格は,次の距離には適用しない。

−  液体絶縁を貫通する距離

−  空気以外の気体を貫通する距離

−  圧縮空気を貫通する距離


2

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

注記 3  機器の内部回路には,より高い電圧(交流 1 000 V 超)が存在してもよい。

注記 4  標高が 2 000 m を超える場合の要求事項は,JIS C 60664-1 の表 A.2 から求めることができる。

この規格の目的は,様々な機器の製品規格において,機器に対する空間距離,沿面距離及び固体絶縁物

を規定するとき,個別要求事項を合理的に定めて絶縁協調が達成できるように指針を示すことである。

注記 5  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

IEC 60664-4:2005,Insulation coordination for equipment within low-voltage systems−Part 4:

Consideration of high-frequency voltage stress (IDT)

なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,一致していることを

示す。

2

引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。

)は適用しない。

JIS C 2134:2007  固体絶縁材料の保証及び比較トラッキング指数の測定方法

注記  対応国際規格:IEC 60112:2003,Method for the determination of the proof and the comparative

tracking indices of solid insulating materials (IDT)

JIS C 60664-1:2009  低圧系統内機器の絶縁協調−第 1 部:基本原則,要求事項及び試験

注記  対応国際規格:IEC 60664-1:2007,Insulation coordination for equipment within low-voltage

systems−Part 1: Principles, requirements and tests (IDT)

JIS C 60664-5:2009  低圧系統内機器の絶縁協調−第 5 部:2 mm 以下の空間距離及び沿面距離を決定

するための包括的方法

注記  対応国際規格:IEC 60664-5:2007,Insulation coordination for equipment within low-voltage

systems−Part 5: Comprehensive method for determining clearances and creepage distances equal to

or less than 2 mm (IDT)

IEC Guide 104:1997,The preparation of safety publications and the use of basic safety publications and group

safety publications

注記  この規格の対応国際規格 IEC 60664-4 では,IEC 60664-1 及び IEC 60664-5 の 2007 年より古い

版に従って,それらの箇条番号を引用している。しかし,IEC 60664-1 及び IEC 60664-5 が 2007

年に改正され,各要求事項の箇条番号が変更になったため,それらに対応する JIS C 60664-1

及び JIS C 60664-5 は,この規格の対応国際規格  (IEC 60664-4)  で引用する IEC 60664-1 及び

IEC 60664-5 の箇条番号とは異なる。このため,この規格では,JIS C 60664-1 及び JIS C 60664-5

(すなわち,IEC 60664-1 及び IEC 60664-5 の 2007 年版)に従った箇条番号に変更している。

3

用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 60664-1 によるほか,次による。

3.1

準平等電界  (approximately homogeneous field)

30 kHz を超える周波数について,導電部の曲率半径が空間距離の 20 %以上の電界。この場合,電界は近

似的に平等であるとみなす。

3.2


3

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

不平等電界  (inhomogeneous field)

30 kHz を超える周波数について,導電部の曲率半径が空間距離の 20 %未満の電界。この場合,電界は不

平等であるとみなす。

3.3

U

peak

絶縁部に加わるあらゆる種類の繰返し電圧のピーク値。

3.4

f

crit

ある空間距離に対する絶縁破壊電圧の低下が起こる臨界周波数。

3.5

f

min

この規格の範囲において,ある空間距離に対する絶縁破壊電圧の最大低下が起こる周波数。

注記  この規格の範囲とは,現在のところ 30 kHz∼10 MHz の間であり,4.3.2 によって,この周波数

は,3 MHz となる。

3.6

部分放電電圧  (partial discharge voltage)

部分放電開始電圧 U

i

と部分放電停止電圧 U

e

との両方に対する総称。

3.7

電界強度 (electrical field strength E)

単位長さ当たりの電圧こう配。通常,kV/mm で表す。

4

空間距離

4.1

一般条件

この箇条 は,気中空間距離に適用する。寸法データは,海抜 2 000 m までの標高に対して有効である。

これを超える標高については,JIS C 60664-1 

表 A.2 の標高補正係数を適用する。

4.2

基本的情報

繰返し電圧(JIS C 60664-1 の 5.1.2.3 又は JIS C 60664-5 の 5.2.2.3 参照)が関係している場合は,A.1 

示す基本的情報に従って,空間距離に対する耐電圧性能はその電圧の周波数によってだけ影響を受ける。

過渡過電圧については,

JIS C 60664-1 の 5.1.2.2 又は JIS C 60664-5 の 5.2.2.2 に従った規定値で十分である。

4.3

平等電界及び準平等電界

4.3.1

準平等電界の条件

30 kHz を超える周波数については,導電部の曲率半径が空間距離の 20 %以上のとき,準平等電界が存在

するとみなす。

4.3.2

絶縁破壊特性の実験データ

A.2.1 の結論として,絶縁破壊電圧の低下が起こる臨界周波数 f

crit

は,式(1)のように空間距離の値に依存

する。

(MHz)

2

.

0

crit

d

f

 (1)

ここに,

d: 空間距離 (mm)

A.2.1 に示す平等電界の条件に対する実験データは,50/60 Hz 値との比較で,周波数に伴う絶縁破壊電圧


4

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

が最大で 20 %まで低下することを示している。この低下が最大となる周波数を f

min

と呼ぶ。

注記  この規格では,図 A.1 に図示すように,f

min

を 3 MHz としている。

4.3.3

平等電界及び準平等電界の条件に対する空間距離の規定値の決定

大気圧における気中平等電界空間距離の,周波数についての絶縁特性は,次の表現に要約することがで

きる。

−  f

crit

を上回る範囲では,絶縁破壊電圧は周波数の上昇に応じて低下する。絶縁破壊電圧の最大低下は,

約 20 %である。

−  絶縁破壊電圧は,周波数 f

min

のときに最低になる。これより高い周波数の場合,絶縁破壊電圧は上昇

して,商用周波数での値を超えることがある。

これらの特性は,準平等電界条件にも適用できると仮定する。

平等電界に対する規定値の決定は,JIS C 60664-1 

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表 のケース B の値に

基づいている。これらの値の使用には,JIS C 60664-1 又は JIS C 60664-5 の 6.1.2 に従った耐電圧試験が必

要である。

準平等電界に対する規定値の決定は,JIS C 60664-1 

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表 のケース A の値

に基づいている。耐電圧試験は不要である。ただし,導電部の曲率半径は,空間距離の 20 %以上でなけれ

ばならない。

規定値の決定には,次の二つの方法がある。

a

)  詳細な評価を意図していない場合,この規格の周波数範囲内では,JIS C 60664-1 の表 F.7 又は JIS C 

60664-5 の表 による,必要とする耐電圧の 125 %に相当する空間距離の規定値を適用する。

b

)  詳細な評価を意図している場合は,次の規定を適用する。

1

)  f

crit

未満の周波数に対する空間距離[式(1)参照]は,JIS C 60664-1 

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表

による必要とする耐電圧の 100 %に相当する規定値とする。

2

)  f

min

を超える周波数に対する空間距離は,JIS C 60664-1 

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表 による必

要とする耐電圧の 125 %に相当する規定値とする。

3

)  f

crit

と f

min

との間の周波数 に対する空間距離は,JIS C 60664-1 

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表 

よる必要とする耐電圧の

%

25

%

100

crit

min

crit

×

+

f

f

f

f

 (2)

に相当する規定値とする。

臨界周波数を求める場合は,まず,JIS C 60664-1 

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表 による必要とする

耐電圧の

100 %

に相当する空間距離を仮定する。次に,条件 b

)

 1

)

b

)

 2

)

又は b

)

 3

)

のうち,いずれに該当す

るかを決定する必要がある。この評価は,得られた結果(空間距離)に影響されることがあるので,

2

目の繰返しが必要になることがある。

注記 1

規定値の決定についての詳細を,

附属書 に示す。

注記 2

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

4.4

不平等電界

4.4.1

不平等電界の条件

30 kHz

を超える周波数について,導電部の曲率半径が空間距離の

20 %

未満のとき,不平等電界が存在す

るとみなす。

4.4.2

部分放電及び絶縁破壊特性の実験データ


5

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

不平等電界条件の場合でも,

f

crit

は式

(1)

から近似することができる。

f

crit

を上回る範囲では,周波数が絶

縁破壊電圧に与える影響は,平等電界条件の場合よりもはるかに大きい。商用周波数における絶縁破壊電

圧の低下率は,

50 %

を超えるかもしれない。

不平等電界条件の場合,絶縁破壊電圧を下回る電圧では部分放電を予測しなければならない。高い繰返

し周波数をもつこれら放電によって劣化が引き起こされるリスクが高いことから,規定値の決定は,部分

放電の発生を回避できるだけの十分なものでなければならない。

実験データを,A.2.2 に示す。

4.4.3

不平等電界条件に対する空間距離の規定値の決定

f

crit

未満の周波数に対する空間距離[式

(1)

参照]は,JIS C 60664-1 

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表 

よる,必要とする耐電圧の

100 %

に相当する規定値とする。

f

crit

以上の周波数に対する空間距離は,規定値の決定に関して電圧の周波数を考慮しなければならない。

部分放電は過渡過電圧によって引き起こされることがあり,また,定常電圧によって維持されることがあ

ってはならないため(JIS C 60664-1 の 6.1.3.4 参照)

,規定値の決定に関しては部分放電の放電停止電圧を

使用しなければならない。部分放電又は絶縁破壊を避けるための気中不平等空間距離(規定値)を,実験

値とともに

図 に示す。

注記 1

規定値の決定については,

0.75 mm

までの空間距離に対しては絶縁破壊電圧から求めた,ま

た,これを超える空間距離に関しては,

1 MHz

での部分放電の放電停止電圧から求めた,A.2.2

のデータを適用することができる。

不平等電界に対する寸法データを,

表 に要約して示す。規定値は,導電部の曲率半径が小さい場合に

適用することができる。実際には,導電部の曲率半径が空間距離の

20 %

未満の場合,この条件を満足する。

注記 2

規定値の決定に関する詳細を,

附属書 に示す。

注記 3

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。


6

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 1−部分放電(空間距離≧1 mm)又は絶縁破壊(空間距離<1 mm)を避けるための

大気圧における気中不平等空間距離の規定値の決定(針−平板電極,5 μm 半径)


7

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

表 1−不平等電界条件に対する大気圧での気中空間距離の最小値

電圧 
U

peak

kV

空間距離

mm

      0.6 以下

a)

b)

0.065

0.8

 a)

0.18

1.0

 a)

0.5

1.2

 a)

1.4

1.4

 a)

2.35

1.6

 a)

4.0

1.8

 a)

6.7

2.0

 a)

 11.0

a)

  この表に示す値の間の電圧には,直線補間法を用いて算出してもよい。

b)

  0.6 kV 未満の電圧 U

peak

については,データがない。

5

沿面距離

5.1

実験データ

附属書 のデータに従って,沿面距離の絶縁破壊電圧に対する周波数の影響を考慮する。

実施する調査及び実験で使用する材料に関する実験条件を,参考として B.2 に記載する。

実験データを,B.3 に示す。部分放電電圧(

PD

電圧)及び絶縁破壊電圧は,電圧の周波数によって顕著

な影響を受ける。

5.2

沿面距離の規定値の決定

100 kHz

以下,

1 MHz

以下及び

3 MHz

以下の三つの異なる周波数範囲に関する測定データ(実験値)を,

限界曲線(規定値)とともに,

図 に示す。沿面距離に対する寸法データを,表 に要約している。追加

の周波数範囲に関するデータは,直線補間によって得たものである。これらのデータは,汚損度

1

に対し

て有効である。

注記 1

沿面距離の規定値の決定については,高周波電圧の部分放電が長時間発生していると材料に

破壊的な影響を与えることになるので,B.3 の部分放電停止電圧データを部分放電として適

用できる。

関連の実験(参考文献

[5]

参照)では,汚損度

2

及び汚損度

3

に対する沿面距離は,補正係数を適用して,

汚損度

1

について決められた距離から導出できることが示された。汚損度

2

の場合は補正係数

1.2

を,ま

た,汚損度

3

の場合は補正係数

1.4

を適用できる。

注記 2

汚損度

1

∼汚損度

3

は,JIS C 60664-1 の 4.6.2 参照。

表 のデータは,トラッキング現象の影響を考慮していないので,JIS C 60664-1 又は JIS C 60664-5 

考慮に入れなければならない。したがって,この規格の

表 から導かれる値(ピーク電圧に対する値)が

JIS C 60664-1 の表 F.4 又は JIS C 60664-5 の表 から導かれる関連値(実効値に対する値)より小さい場

合は,後者を適用する。

これらの規定値のデータは,熱作用によって劣化する可能性のあるすべての材料に適用できる。このよ

うな劣化が起こる可能性のない材料(例,セラミックス)の場合には,この規格の箇条 による空間距離

に対する規定値で十分である。

注記 3

規定値の決定に関する追加情報を,

附属書 に示す。

注記 4

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。


8

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 2−部分放電(沿面距離≧1 mm)又は絶縁破壊(沿面距離<1 mm)を避けるための

沿面距離の規定値の決定


9

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

表 2−異なる周波数範囲に対する沿面距離の最小値

沿面距離

a)

mm

電圧

U

peak

kV

30 kHz  <  f

≦ 100 kHz

0.2 MHz

b)

 0.4

MHz

 b)

 0.7

MHz

 b)

 1

MHz

 b)

 2

MHz

 b)

 3

MHz

 b)

0.1

0.0

7

0.3

0.2

0.042

0.15

2.8

0.3

0.083

0.09

0.09

 0.09

 0.09

 0.8

20

0.4

0.125

0.13

0.15

 0.19

 0.35

 4.5

0.5

0.183 0.19 0.25

0.4

1.5 20

0.6

0.267

0.27

0.4

 0.85

 5

0.7

0.358 0.38 0.68

1.9 20

0.8

0.45  0.55 1.1

3.8

0.9

0.525 0.82 1.9

8.7

 1

0.6

1.15

3

18

1.1 0.683

1.7

5

1.2 0.85

2.4

8.2

1.3

1.2

3.5

1.4

1.65

5

1.5

2.3

7.3

1.6

3.15

1.7

4.4

1.8

6.1

a)

  表中の沿面距離の値は,汚損度 1 に対するものである。汚損度 2 の場合は補正係数 1.2 を,また,汚損度 3 の

場合は補正係数 1.4 を表中の沿面距離の値に乗じなければならない。

b)

  この表に表す値の間の周波数には,直線補間法を用いて算出してもよい。

6

固体絶縁物

6.1

一般的考慮事項

気中空間距離に比べて,

固体絶縁物は少なくとも

1

けた大きい絶縁破壊電界強度になっている。

しかし,

実際の使用では,固体絶縁物の大きい絶縁破壊電界強度は,十分活用できていない。

注記

予想よりも相当に小さい電界強度での劣化及び最終的破壊を引き起こすメカニズムについて

は,C.1 で詳しく記載する。

6.2

影響要素

1 MHz

の周波数に対しては,短期的な絶縁破壊電界強度が商用周波数の値の

10 %

近くまで低下すること

がある。絶縁破壊電界強度は,たとえ

100 MHz

に近い周波数においても,下限に達することはないと推定

される。

注記

高周波破壊特性を,C.2 に参考として示している。

一般に,固体絶縁物の耐電圧は,特に高周波電圧において,湿度及び温度の影響を受けて更に低下する。

この影響は,7.3 に従った試験に先立ち,コンディショニングによって考慮される。

このような特性を踏まえて,高周波の用途で使用するように意図された固体絶縁物は,

92 %

の相対湿度

を超える湿度環境に長期間さらしてはならない。例えば,ガラス及び一部のセラミックスのような一部の

材料は,湿度の影響を受けることはなく,したがって,この

92 %

という限度値に制限されることはない。

固体絶縁物の絶縁破壊電界強度は,材料の厚さの関数である。非常に薄いフィルムは,厚さ

0.75 mm


10

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

試料よりも最大で

1

けた大きい絶縁破壊電界強度をもつことがある。したがって,固体絶縁物厚さに対す

る規定値の決定に当たっては,このような絶縁破壊電界強度の絶縁厚さへの依存性を考慮に入れなければ

ならない。

温度の絶縁破壊電圧に対する影響は,C.2 に示している。したがって,温度は,規定値の決定及び試験

に際して考慮しなければならない重要な影響要素である。

高周波電圧における部分放電は,電圧周波数に対応した高い部分放電

(PD)

インパルス繰返し周波数をも

つ。したがって,部分放電が発生する場合は,固体絶縁物本来の寿命を期待することはできない。

6.3

固体絶縁物厚さの規定値の決定

箇条 に従った高周波試験の代わりに,

次の規定値の決定の方法を使用することができる。

この方法は,

電界強度がほぼ均一であって,かつ,それぞれ式

(3)

又は

図 による既定値を超えることがなく,更に固体

絶縁物の中にボイド又は空げきが存在しない場合に,電圧の最高周波数

10 MHz

に対して適用する。これ

らの条件を満たすことができない場合は,箇条 に従った高周波試験が必要になる。

電界がほぼ平等(

注記 参照)であれば,規定値を使用することができる。固体絶縁物層が

d

0.75 mm(

d

1

)

と厚い場合,電界強度

E

のピーク値は

2 kV/mm

以下でなければならない。固体絶縁物層が

d

30 μm(

d

2

)

と薄い場合,電界強度のピーク値は

10 kV/mm

以下でなければならない。

d

1

d

d

2

の場合は,一定の厚

d

に対する直線補間のために,式

(3)

を使用しなければならない(

図 も参照)。

+

=

667

.

1

25

.

0

d

E

 (3)

ここに,

E

電界強度のピーク値

 (kV/mm)

d

固体絶縁物の厚さ

 (mm)

注記 1 電界強度の平均値からの偏差が±

20 %

未満の場合,電界は近似的に平等であるとみなされる。

図 3−式

(

3

)

による固体絶縁物の規定値の決定のための許容電界強度


11

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

固体絶縁物の規定値の決定のために電界強度を使用するには,ボイド又は空げき(隙)が介在しないほ

ぼ平等の電界分布が必要になる。電界強度が算出できない(電界が平等でない)場合,ピーク値が式

(3)

図 からそれぞれ得られる値よりも高い場合,ボイド若しくは空げきを排除できない場合,又は

10 MHz

を超える高い周波数の場合,

高周波電圧を用いた耐電圧試験又は部分放電試験が必要になる。

JIS C 60664-1

の 5.3.3.2.3 に従って,耐電圧試験は短時間ストレスに,また,部分放電試験は長時間ストレスに適用する。

注記 2

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

7

高周波試験

7.1

基本要求事項

次の試験は,使用電圧の周波数で実施する。

高周波交流電圧試験を利用した,空間距離及び固体絶縁物に対する短時間耐電圧の検証

定常的な高周波電圧の印加条件下で部分放電が発生しないことの検証

高周波では容量負荷が大きいため,高周波試験は主として構成部品及び半組立品に適用する。完成した

機器に対して追加的な高電圧試験が必要な場合,この試験は,商用周波電圧を用いて,JIS C 60664-1 

6.1.3 に従って実施してもよい。

注記

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

7.2

試験電圧源

試験電圧源を,D.1 に示す。

7.3

コンディショニング

製品規格による規定が特にない限り,試験は新品の試料を用いて実施しなければならない。温度及び湿

度処理による試料のコンディショニングは,次のことを意図する。

最も厳しい通常使用条件を代表させる。

新品の状態では出現しない潜在的な弱点を顕在化させる。

JIS C 60664-1 の 6.1.3.2 に規定されているコンディショニングの方法は,高周波試験にも適用する。

注記

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

7.4

高周波絶縁破壊試験

この試験は,商用周波での高電圧試験と同様とする(JIS C 60664-1 の 6.1.3.4 参照)

注記

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

7.4.1

試験方法

高周波耐電圧性能は,機器の温度及び環境条件の影響を受ける。したがって,試験は,機器の通常使用

による温度上昇を含めて,使用中に遭遇する最も厳しい条件下で実施しなければならない。試験時間は

1

分とする。

7.4.2

試験結果

試験時間中,絶縁破壊が生じてはならない。試験後,目視で確認できるほどの損傷(焼損,溶融など)

があってはならない。

7.5

高周波部分放電試験

7.5.1

一般的考慮事項

部分放電試験のための一般的な方法は,IEC 60270 に規定されている。低電圧機器の部分放電試験につ

いては,JIS C 60664-1 の 6.1.3.4 及び JIS C 60664-1 

附属書 を適用できるが,高周波電圧による試験の

場合は,次のように試験機器及び方法を変更しなければならない。


12

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

試料の劣化のリスクを最小限に抑えるために,部分放電試験は,厳密な手順及び測定によって,かつ,

部分放電開始電圧の範囲内の試験電圧で実施することが望ましい。不合格基準として,低い部分放電レベ

ル(通常,

10 pC

未満)を規定しなければならない。規定の部分放電停止電圧を決定する正確さには限界

があり,かつ,試験中は通常は考慮しない温度及び湿度などの追加パラメータの影響を受けるため,部分

放電停止電圧には最高周期性ピーク電圧の

F

1

 = 1.2

倍の安全係数を含めなければならない(JIS C 60664-1

の 6.1.3.5 参照)

。強化絶縁の場合は,更に厳しいリスク評価が必要であり,部分放電停止電圧については

F

3

 = 1.25

の追加安全係数を用いなければならない(JIS C 60664-1 の 6.1.3.5 参照)

注記

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

部分放電試験は主として部品の試験であるが,機器の試験も可能である。機器試験の場合は,部分放電

の発生源を特定することが困難な場合があり,また,部分放電の大きさの測定値は装置内の位置によって

決まる。形式試験のときは,部分放電試験によって,絶縁システムの設計,絶縁材料の選択及び製造プロ

セスについて,それぞれの適切さを検証する。これらの試験は,機器の設計に当たっても非常に有用であ

る。抜取検査及びルーチン試験を実施することで,製造プロセス全体を検証することができる。これは,

品質保証にとって基本的な重要性をもつ。

高周波試験電圧であるため,近くにある別の電子機器との干渉を防止するために,導電性の囲いによっ

て試験システムを慎重に遮へいしなければならない。一般に,このような遮へい措置は,部分放電測定中

に要求される干渉レベルに十分対応できる。

7.5.2

試験方法

高周波電圧においては試料の劣化のリスクが高いので,電圧上昇速度は,試験電圧のオーバーシュート

を引き起こすことのない,可能な限り速いものとすることが望ましい。一般に,高周波部分放電試験中の

ノイズは,商用周波試験中よりもかなり大きくなる。

7.5.3

試験機器

試験電圧と部分放電信号の周波数スペクトルとが重なり合っていて,適切に分離する方法(フィルタリ

ング)が必要になることから,高周波電圧における部分放電の測定は,更に困難である。試験電圧の周波

数は広い範囲で変動することがあるので,同調ノッチフィルタが必要になる。これらフィルタの中心周波

数は,試験電圧の周波数に同調させなければならない。非正弦波試験電圧源の信号を部分放電信号から分

離することは相当に困難である。したがって,この規格の適用範囲内では,このような試験は実施しない

ほうがよい。部分放電の強度の測定の場合は,高周波試験電圧を抑制するために,デジタルオシロスコー

プを帯域消去フィルタと組み合わせて使用する。

高周波電圧をもつ部分放電試験回路の例を,D.2 に示す。部分放電の検出は,サンプリングレートが高

いデジタルオシロスコープを用いてデジタル積分して行う。

7.5.4

試験回路

部分放電測定は,部分放電電流を検出して行う。このために,測定用抵抗

R

m

を試料と直列に接続する。

この

R

m

の電圧降下を,帯域消去フィルタを通じて高帯域幅(

100 MHz

以上)のデジタルオシロスコープ

の一つのチャンネルで測定する。帯域消去フィルタは,試料に送る容量性電流が引き起こす電圧降下を除

去する。また,集中定数素子からなる試験回路と合わせた総合的な帯域幅が

60 MHz

になるようにする。

この手法によって,

5 pC

の部分放電感度を得ることができる。高周波試験電圧は高周波電圧計で測定し,

波形はデジタルオシロスコープの別のチャンネルで観測する。試験回路の詳細については,D.2.2 を参照。

7.5.5

試験回路の必要帯域幅

次の評価では,試験回路は一次低域透過特性(

PT

1

特性)をもっている。つまり,低域遮断周波数がゼ


13

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

ロになり,高域遮断(

3 dB

低下)周波数

f

c

が帯域幅となる。

試験回路の潜在的共振周波数又は低域遮断周波数の作用についての考慮事項を,D.2.2 に規定している。

7.5.5.1

部分放電インパルス感度限界に対する最小帯域幅

高周波試験電圧の場合,高い部分放電インパルスのパルス繰返し周波数を予想しなければならない。し

たがって,部分放電インパルス感度限界は,パルス重畳を避けられるだけのものでなければならない。こ

の理由から,いわゆる“広帯域”測定機器だけを使用することができる。この点は,JIS C 60664-1 で商用

周波電圧での試験について推奨していることと対照的といえる。

部分放電測定回路の最小帯域幅は,パルス重畳を避けるために,部分放電インパルス周波数以上でなけ

ればならない。この周波数でも,部分放電パルス波形の観測は,難しい。

通常は,部分放電インパルス周波数の

5

倍に当たる試験回路の高域遮断周波数

f

c

で十分である。詳細に

ついては,D.2.2.2.1 を参照。

7.5.5.2

部分放電インパルス分析のための最小帯域幅

部分放電信号の発生源を分析,並びに部分放電の発生源であるボイドの形状及びサイズをある程度分析

するためには,帯域幅を相当に大きくしなければならない。詳細については,D.2.2.2.2 を参照。

7.5.6

試験回路の回路定数の決定

回路定数を適切化することで部分放電インパルスの重畳を避けなければならず,また,それによって部

分放電インパルスの波形を分析してもよい。このような回路定数の決定には,試験回路の分析が必要であ

るが,これは D.2.2 で行っている。

7.5.6.1

試験回路が透過特性に与える影響

部分放電インパルスを適切に再現するためには,試験回路が近似的に非周期的に応答しなければならな

い。また,高域遮断周波数

f

c

は可能な限り高いことが望ましい。詳細は,D.2.2.3.3.1 に規定する。

試験回路が非周期的応答をするためには,配線のインダクタンス

L

w

と結合コンデンサのインダクタンス

L

ck

との和であるインダクタンス

ck

w

L

L

L

+

=

 (4)

4

2

m

C

R

 (5)

に限定しなければならない。ここに,R

m

は部分放電電流に対する測定用抵抗とする。有効容量 は,試料

の容量を C

3

及び結合コンデンサの容量を C

k

とすると,式(6)のようになる。

k

3

k

3

C

C

C

C

C

+

=

 (6)

この場合,高域遮断周波数

f

c

は,簡易

RC

回路を仮定することで近似することができる。

C

R

f

m

c

π

2

1

=

 (7)

低域遮断周波数はゼロである。

7.5.6.2

結合コンデンサが透過特性に与える影響

結合コンデンサ

C

k

の容量が試験回路の透過特性に及ぼす影響については,D.2.2.3.4

 [5]

で評価している

が,これが示すように,この影響は非常に強力であり,試料の容量

C

3

に対比して結合コンデンサを小さく

することが適切とはいえない。

結合コンデンサの容量が小さいと測定信号が低減するため,測定信号の補正を考慮する。ただし,部分


14

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

放電試験回路の感度も低下する。このほかの問題として,小さな容量の結合コンデンサを使用する場合の

測定信号の区別がある。D.2.2.3.4 から,最小容量は

C

k

 = C

3

であることが分かる。できれば,容量を

C

k

10

×

C

3

とすることが望ましい。

結合容量に必要な値は,結合コンデンサの値と試験回路の非周期応答に必要な容量とのいずれか大きい

方の値とする[7.5.6.1 の式

(5)

参照]

7.6

試験結果の例

低電圧機器用の多くの構成部品が,高周波試験電圧を用いて試験されている。一般的な結果の一例を,

D.3 に示す。

8

非正弦波電圧

8.1

一般的考慮事項

この規格では,正弦波高周波電圧が絶縁の規定値の決定及び試験に与える影響を扱っている。現実の多

くのケースでは,実際の電圧ストレスは正弦波からほど遠いものである。多くの用途で,大きく変動する

波形をもつ周期パルスがみられる。

この場合,インパルス形状の高調波分析が必要になり,また,関連する正弦波周波数を特定することが

必要になる。

次の考慮事項では,電圧波形が巻線絶縁における電圧分布に与える作用は考慮していない。

8.2

反復ピーク電圧

このような電圧波形の例を,

図 に示す。

図 4−反復ピーク電圧(JIS C 60664-1 参照)

8.3

高調波分析

関連する実験

 [32]

では,異なる波形をもつ反復ピーク電圧の高調波分析を行っている。すべての場合

において,スペクトルの主要成分は基本波である。基本波と最も重要な第

3

高調波との関係は,オーバー

シュートによって大きく変化することはない。これは,強力な振動を重畳させても同様である。

したがって,ピーク電圧の基本周波数について,空間距離,沿面距離及び固体絶縁物を設計及び試験す

ることは可能と考える。そのため,基本波の振幅をピーク値に合わせて調整することで,非正弦波電圧の

ピーク値を考慮に入れる。

8.4

規定値の決定の手順及び試験

空間距離の規定値の決定には,非正弦波電圧のピーク値及び電圧ピークの反復周波数が関係する。空間


15

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

距離は,同じピーク値及び周波数の正弦波電圧で設計しなければならない。マイナスのピーク値とプラス

のピーク値とが異なる場合は,両者の高い方の値を適用する。

部分放電及び絶縁破壊は規定値の決定に関係する要素と考えられるため,沿面距離の規定値の決定の場

合にも同じことが当てはまる。

6.3 に規定したように,固体絶縁物の規定値を決定するには,一般に高周波電圧による高電圧試験が必要

になる。8.3 の高調波分析から,大きな周期ピークをもつ波形の場合でも,基本波の振幅は第

3

高調波より

もずっと大きい。このように,正弦波試験電圧の周波数は,最高振幅をもつ成分でなければならず,通常

は基本周波数とする。しかし,正弦波試験電圧の振幅は,本来の波形のピーク値又は第

1

高調波の振幅の

うちの大きい方と一致しなければならない。

基本波の振幅に対比して試験電圧がこのように上昇することは,

より高次の高調波の影響を表すもので,

このことは試験中に考慮していない。

10 MHz

の最高電圧周波数の場合,電界強度がほぼ平等であって,かつ,固体絶縁物にボイド又は空げ

きが介在しなければ,試験ではなく,6.3 に規定した規定値の決定の手順を適用してもよい。


16

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

附属書 A

参考)

高周波電圧における空間距離の絶縁性能

A.1

空間距離の絶縁破壊についての基本的情報

空間距離の絶縁破壊は,通常,

1 µs

未満で発生する。このような時間的尺度では,商用周波数の交流電

圧は振幅が基本的には一定の値である。例えば,

50 Hz

では,振幅のピーク値の

99 %

以上の値が

1 ms

の間

に収まっている。したがって,絶縁破壊に至る過程で,電圧のピーク値が絶縁破壊を誘起する。したがっ

て,この規格の適用範囲の空間距離では,交流(ピーク)絶縁破壊電圧と直流絶縁破壊電圧とが同じにな

る。

更に高い周波数では,絶縁破壊に至るまでに,電圧のピーク値からの低下及び極性反転を考慮しなけれ

ばならない。このような作用は,絶縁破壊電圧の上昇を引き起こす。

現在までのところ,絶縁破壊の開始時に発生するイオン(通常,プラスイオン)の作用は考慮されてこ

なかった。これらのイオンは正弦波の波頭において発生し,また通常は,半波の残りの部分の間に,これ

らのイオンが電極に移動するだけの十分な時間がある。しかし,空間距離が大きい場合又は高周波では,

イオンが空間距離から抜き取られてしまう前に極性が逆転する可能性がある。この結果,静電界にひずみ

が生じて,絶縁破壊電圧が低下する。イオンの平均速度

ν

は,

100 kPa

の気圧において,式

(A.1)

のように

近似できる

[1]

s

v

m

10

6

2

×

=

(A.1)

正弦波の周期の

1/4

の時間に,イオンは式

(A.2)

による距離

s

だけ移動する

[2]

f

v

s

π

2

=

(A.2)

これは,

f = 50 Hz

の場合には

1.91 m

となる。したがって,商用周波数では,この点は空間距離が非常に

大きな場合だけに関係してくる。ただし,周波数を

kHz

範囲まで増すと,空間距離が小さくてもこの現象

が関係してくる。

両者の作用を重ね合わせると,

3 MHz

のオーダーにある一定の周波数

f

min

に対する最小絶縁破壊電圧を

示す典型的な曲線が得られる。

A.2

実験データ

A.2.1

平等電界及び準平等電界の分布

平等電界分布をもつ空間距離の場合,絶縁破壊電圧

U

b

と周波数との関係を,

図 A.1 に示す

[3]

。周波数

25 MHz

のオーダーにある場合,絶縁破壊電圧は

50 Hz

の場合とほぼ同じになる。この図は,空間距離

の値が重要なパラメータであることも示している。

現在使用されている周波数については,周波数の上昇に伴い絶縁破壊電圧が初期低下する範囲の方がよ

り重要である。この周波数範囲は

3 MHz

のオーダーであるが,

図 A.2 でより詳細に説明する

[4]

。このデー

タは,この規格の適用範囲内で妥当とみなす。


17

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 A.1−大気圧,平等電界及び周波数範囲 50 Hz25 MHz における気中高周波での絶縁破壊

[3]

結論として,平等電界条件においては,周波数に伴い絶縁破壊電圧

U

b

50/60 Hz

のときの値に対して

最大

20 %

低下する。絶縁破壊電圧の低下が起こる臨界周波数

f

crit

 [2]

は,空間距離の値によって,

100 kPa

の大気圧での値である。

MHz

2

.

0

π

crit

crit

d

f

d

v

f

=

(A.3)


18

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

ここに,

v

イオンの平均速度

d

空間距離

 (mm)

図 A.2−大気圧,平等電界及び周波数範囲 50 Hz2.5 MHz における気中高周波での絶縁破壊

[4]

図 A.2 に式

(A.3)

に従った追加曲線を描くと,利用可能な実験データと式

(A.3)

で与えられる臨界周波数と

の間には,ある程度の偏差がある。実験データは完璧なものではなく,また,精度も分かっていないので,

(A.3)

を規定値の決定で使用することにする。


19

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

A.2.2

不平等電界分布

不平等電界条件では,部分放電(コロナ)開始電圧を超えると,高周波電圧ストレスにおいてニードル

の先端近くに明るい発光現象が生じるのを裸眼で見ることができる。電圧をこの領域から更に引き上げる

と,細いチャンネルが反対側の電極(面)に向かって伸び始めて絶縁破壊を引き起こす。これで,ニード

ルの先端は劣化しているはずである。このことを,

図 A.3 に示す。

不平等電界条件でも,

f

crit

を式

(A.3)

から近似することができる。

f

crit

を超えると,周波数が絶縁破壊電圧

に及ぼす影響は,平等電界条件に比べてより大きくなる。

50 Hz

のときの絶縁破壊電圧と比べると,絶縁

破壊電圧の低下は

50 %

を超え得る

[1]

図 A.3−絶縁破壊後(上)及び前(下)のニードル先端

近年,部分放電開始電圧及び大気圧下での気中不平等電界空げき(点−面)の絶縁破壊電圧について,

詳細な測定がなされた

[5]

[6]

。半径が

5 µm

30 μm

及び

100 μm

の点電極ツリーイングニードル

(Ogura)

及び有効半径が約

5 μm

の ISO 7864 による一方向ドレンチューブ

[7] (B. Braun)

を使用した。後者が主とし

て使用されたが,

BB

ニードルと呼ばれている。

一般に,有効ニードル長さが空間距離の約

3

倍の場合,ニードル電極を不平等電界のシミュレーション

で使用することができる

[8]

。したがって,有効ニードル長さが約

20 mm

BB

ニードルは,最大空間距離

7 mm

のときに使用できる。

図 A.4

 [6]

の比較測定は,

100 kHz

の周波数で行われたものであるが,ツリーイングニードル(

Ogura

30

μm

及び

5 μm

)と

BB

ニードル(約

5 μm

)との間に大きな挙動の差がないことを示している。

図 A.4 によ

れば,最も低いデータは,

BB

ニードルについて得られている。したがって,寸法データは,

BB

ニードル

の測定値から導いた。


20

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 A.4−大気圧における f = 100 kHz に対する気中部分放電開始電圧,先端半径が異なる点−面電極

[6]

部分放電停止電圧は,より高い再現性があるので,この電圧を規定することが望ましい。部分放電が過

渡過電圧によって始まることがあり,また,どのような定常状態の電圧も部分放電を維持してはならない

ので,この電圧は,規定値の決定に対して適切な値でもある(JIS C 60664-1 の 6.1.3.4 参照)

注記

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

これらの測定から部分放電停止電圧の評価が行われてきており,

460 kHz

の周波数に対して,絶縁破壊

電圧と合わせて

図 A.5

 [6]

に示す。後者の試験は,使用する電圧源の最高試験電圧によって制限を受けた。

1 MHz

の周波数についても,更に試験が実施された。その結果から,部分放電停止電圧及び絶縁破壊電

圧を,

図 A.6 に示す

[6]

。空間距離が

1 mm

未満の場合,部分放電開始電圧は絶縁破壊とほぼ一致するので,

破壊と破壊との間を区別することができない。

3 MHz

の周波数の場合は,限定された実験しかできなかったが,ある程度の一時的なデータを得た。こ

れは,

1 MHz

で得たデータにほぼ一致する。したがって,

図 A.6 に示すデータは,この規格の範囲内での

寸法規定値の決定が妥当とみなした。

なお,部分放電開始電圧の測定結果は,ある程度まで,試験電圧の上昇速度によって影響を受けている

ので注意を要する。


21

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 A.5−大気圧における f = 460 kHz に対する気中部分放電停止電圧及び絶縁破壊電圧,

BB ニードルによる点−面電極

[6]

図 A.6−大気圧における f = 1 MHz に対する気中部分放電停止電圧及び絶縁破壊電圧,

BB ニードルによる点−面電極

[6]


22

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

附属書 B

参考)

高周波電圧における沿面距離の絶縁性能

B.1

沿面距離の耐電圧性能

JIS C 60664-1 においては,トラッキングは沿面距離の規定値の決定のために考慮する現象にすぎない。

しかし,より最近のデータ

[9]

は,このことが厳しい環境条件に,しかも,使用材料が耐トラッキング性を

もたない場合にしか当てはまらないことを実証している(JIS C 2134 参照)

。より良好な環境条件下では,

トラッキングが規定値の決定に大きくかかわるようにはみえない。この場合,特に,沿面距離が

2 mm

満と小さいとき,絶縁材料表面を横断する絶縁破壊電圧は,汚損によって低下し,規定値の決定に際して

絶縁破壊電圧を考慮しなければならない(JIS C 60664-5 参照)

汚損がより小さい場合,特に,沿面距離が小さい場合,絶縁表面を横断する絶縁破壊電圧は寸法規定値

の決定にかかわりがあり,周波数が絶縁破壊電圧に及ぼす影響を考慮しなければならない。

B.2

実験条件

沿面距離が小さい場合の耐電圧特性を測定するための試験片を,

図 B.1 に示す。調査に含めた材料を,

表 B.1 に示す。プリント導体は,標準製造技法に従って適用した。試験片は清浄で,コーティングなしと

した。各基板について,平行導体間に

15

か所の測定点を設けた。公称電極距離もまた,

図 B.1 に示す。部

分放電電圧と絶縁破壊電圧との両者を測定した。

単位  mm

図 B.1−部分放電電圧及び沿面距離が 6.3 mm 以下の耐電圧を測定するための試験片


23

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

表 B.1−調査に含めた材料

材料の分類

材料名称

B

ガラス-エポキシラミネート FR4

C

ポリエステル樹脂(熱硬化性)

,タイプ 802

D

フェノール系樹脂,タイプ 31.5

E

ガラス-エポキシラミネート FR4 でラミネート処理したポリイミドフィルム

G

ポリエステルラミネート  GPO III

H

メラミン樹脂,タイプ 150

部分放電電圧及び絶縁破壊電圧を測定するために,試験電圧の上昇速度を約

300 V/s

とした。これによ

って,試験中に試験片が重大な劣化を引き起こすことはないものと考えられる。試験電圧が高周波である

のに上昇速度がより遅い(

10 V/s

程度)と,試験中に母材の劣化が生じる可能性がある。この結果,絶縁

破壊電圧測定値が

10 %

オーダー

(order)

で低下してしまう。

B.3

実験データ

試験結果を,

図 B.2 及び図 B.3 に示す

[6]

。詳細は

[5]

でとりあげている。

100 kHz

の周波数に比べて,

1 MHz

における部分放電開始電圧は

66 %

にすぎない。

3 MHz

の周波数では,これらの値は更に約

30 %

低下する。

したがって,電圧の周波数に応じて具体的な寸法基準を規定しなければならない。

絶縁破壊電圧は,電圧の周波数にさほど左右されない。ただし,空間距離の場合は,既にみられた飽和

作用が非常に強力であり,距離を数ミリメートルの範囲で変動させたところで絶縁破壊電圧はほとんど上

昇しない。

絶縁破壊電圧を大部分の試験片で測定している間に,電極及び/又は母材が劣化を起こした。こうした

損傷は絶縁材料に導電性をもたせてしまうものであるが,その発生源は

2

種類の劣化メカニズムに関連し

ているようである。その一つは,破壊中の高放電エネルギーによる電極材料の溶融である。もう一つは部

分放電による現象であり,破壊発生前に起こり,かつ,母材劣化の原因となるものである。


24

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 B.2−沿面距離が 6.3 mm 以下の部分放電停止電圧 U

e

の試験結果 

[6]

図 B.3−沿面距離が 6.3 mm 以下の絶縁破壊電圧 U

b

の試験結果 

[6]


25

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

附属書 C 

参考)

高周波電圧における固体絶縁物の絶縁性能

C.1

固体絶縁物の劣化のメカニズム

気中空間距離と比べて,固体絶縁物は少なくとも

1

けた大きい絶縁破壊電界強度になっている。ただし,

この絶縁破壊電界強度は,絶縁の厚さ,絶縁材料の温度及び電気ストレスの持続時間などのパラメータに

大きく依存している

[10]

。組成及び処理にかかわる材料固有の影響も考慮しなければならない。一般にい

えることは,絶縁の厚さが比較的薄く(<

0.1 mm

,かつ,ストレスが短時間の場合,商用周波数におい

ては,

100 kV/mm

のオーダーの非常に大きい絶縁破壊電界強度が得られる。

しかし,実際の使用では,固体絶縁物の大きい絶縁破壊電界強度は,十分活用できていない。材料自体

に含まれる空洞又は成層絶縁系内部のガス空げきによって,絶縁破壊電圧を大きく下回ったところで部分

放電が発生する。このように,空洞内のガスが短時間のあいだ導電性となる。しかし,固体絶縁物の残り

の部分は絶縁を維持する。空洞内における部分放電の間に,空気(又は類似のガス)の絶縁破壊が発生す

る場合は,比較的小さい絶縁破壊電界強度を適用する。容量性電圧分布による交流電圧ストレスの場合,

及び固体絶縁物が比較的高い誘電率であることに応じて,ガスが充満した空洞全体により大きな割合の電

圧がかかることから,更に結果が悪化する。このために,絶縁ガスは,それ自身の絶縁破壊電界強度が小

さいにもかかわらず,更に大きなストレスを受ける。

したがって,実際の絶縁システムでは,絶縁破壊電圧を大きく下回ったところで部分放電が発生するこ

とがあり,結局,これらのことから,ほぼすべての固体絶縁物で破壊が生じる

[11]

。次の例で示すように,

好ましくない条件下で絶縁破壊が生じるまでの時間は非常に短く,商用周波数・高電圧試験の間でさえも

固体絶縁物の劣化が起こり得る。

例えば,絶縁フィルムで覆ったプリント回路板

[12]

を考える。この場合,導体と,公称距離で

0.4 mm

間隔を置いた隣接のはんだパッドとの間にストレスをかけている。高電圧を印加すると,絶縁フィルム(コ

ーティング)の下側で強力な部分放電が発生し,最終的に試験品の破壊に至る。このことを,

3.15 kV

(実

効値)の一定商用周波数試験電圧

U

t

について,

図 C.1 に示す。この試験電圧は,

2.2 kV

(実効値)という

部分放電開始電圧を既に

45 %

もオーバーしている。絶縁材料が高品質であるため,部分放電強度

q

がナノ

クーロンの範囲にあるにもかかわらず,試験品はこのストレスに約

37

分耐えることができる。


26

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 C.1−コーティングの耐部分放電能力;定試験電圧 U

t

(

f = 50 Hz

)

[12]

図 C.2−コーティングの耐部分放電能力;線形上昇する試験電圧 U

t

(

f = 50 Hz

)

[12]


27

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 C.2 において,試験片には,初期上昇速度が

4 kV/min

でほぼ直線的に上昇する商用周波数試験電圧

U

t

でストレスを加える。

2.2 kV

(実効値)での部分放電開始がはっきりとみられる。これらの試験片で典

型的にみられるのが,非常に大きい部分放電強度が直ちに発生することである。部分放電強度及び部分放

電インパルス速度は,試験電圧値にほぼ比例している。試験片は,この見かけ上はかなり高いストレスに

7

分間しか耐えることができなかった。この例が明りょうに示すように,商用周波数電圧であっても,

部分放電は比較的短時間,大きい破壊能力をもち得る。

さらに,日常の用途では,機器の寿命期間中に発生するすべてのストレスとその損傷作用が累積するこ

とを考慮する必要がある。電気的ストレス,熱

[13]

ストレス及び機械的ストレスも,事前にはほとんど知

ることができない法則に従って重畳する。こうした長期的作用のシミュレーションを,適切な短期的試験

によって実施することは,非常に困難な作業である。電気試験と適切な試験片のコンディショニングとを

組み合わせることで,はじめてこれが可能になる。適切なコンディショニング方法については,JIS C 

60664-1 の 6.1.3.2 を参照。

注記

JIS C 60664-1 の引用項目番号を変更(内容は変更ない。)し,最新版に対応した。

これらストレスは部分放電

[14]

の発生に影響を与え,また,その損傷作用と誘電加熱とが相まって,絶

縁破壊電界強度を劇的に低下させる

[15]

。促進試験

[16]

で実証済みのように,部分放電による損傷作用は電

圧の周波数に応じて増大する。

最も正確な時間加速ができるのは,純粋な熱ストレスに関してである(アレニウスの法則

[17]

。ただし,

これも,化学的エイジング(酸化)を引き起こす場合は,シミュレーションにすぎなくなる。しかし,ス

トレス加速の間に劣化のメカニズムが変化する(例えば,劇的に上昇した温度の間の軟化/流動化)場合

は,時間加速方法は,使用できなくなる。熱ストレスの場合,このことは容易に予見,及び回避すること

もできる。しかし,増大した電気ストレスを適用して時間加速をすると,劣化メカニズムが変化する可能

性が生まれる

[18]

固体絶縁物については,通常,

2

種類の破壊メカニズムが関係する。一つは,高い電力負荷での誘電損

失によるものである。加熱が大きくなり,熱的不安定さ及び熱破壊に至ることがある。このような状況は

数分のうちに発生し,また,検証することも容易である。さらに,固体絶縁物は,絶縁層が異なること,

絶縁部品と導電部品との間のインタフェース又は絶縁材料の製造不良によって,ガス空げき又は空所を含

むことがある。このような小さな空げきでは,電気ストレスが十分に低く熱破壊を引き起こすほどでない

場合であっても,部分放電が固体絶縁物を実質的に破壊する可能性がある。

固体絶縁物の場合,電圧周波数が非常に重要な影響因子になっている。周波数を一定としたときの誘電

損失は,式

(C.1)

から求める。

δ

tan

π

2

2

v

C

fU

P

=

(C.1)

ここに,

P

v

誘電損失(電力消費)

(W)

f

電圧周波数

 (Hz)

U

固体絶縁物の端間電圧の(実効値)

(V)

C

絶縁配置の容量

 (F)

 tanδ

絶縁材料の誘電損失係数

誘電損失係数

tanδ

は周波数に左右されるため,周波数が誘電損失に及ぼす影響は,見かけの線形依存性

から予測できるレベルよりも上下することがある。この結果,熱破壊の確率が高まり,短期の耐電圧性能

が低下する。

高周波ストレスが固体絶縁物に及ぼす作用をシミュレーションできるとは思えない。したがって,一般

にこの種の高いレベルのストレスの有無については,低周波数電圧を用いた固体絶縁物の試験が必要にな


28

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

ろう。C.2 に示す実験結果は,高周波電圧での試験が必要となる特定の周波数における高いストレスを表

す電界強度値について,ある程度の情報を与えるはずである。

C.2

実験結果

高周波絶縁破壊特性については,異なる絶縁材料で調査が行われてきた

[15]

。最も重要な結果を,

図 C.3

に示す。周波数が

1 MHz

の場合,短期の絶縁破壊電界強度

E

b

は商用周波数値の

10 %

にすぎない。絶縁破

壊電界強度は,

100 MHz

と高い周波数であっても,下限には達しないようである。

図 C.3−高周波における絶縁破壊電界強度,(固体絶縁物;沿面距離 d = 0.75 mm の場合)

[15]

固体絶縁物全般の耐電圧性能,特に高周波電圧における耐力は,湿度及び温度の影響で更に低下する。


29

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

湿度の高い条件下で長期間保管する場合に,高周波電圧において,固体絶縁物の絶縁破壊電界強度に与

える影響を

図 C.4 に示す

[19]

。マイカを詰めたフェノール系の絶縁破壊電界強度の低下が,異常に大きい。

これは,商用周波数でも既に重要な問題となっているが,周波数が高くなると更に重大さを増す。マイカ

を詰めたフェノール系の性能が低いのは,水分吸着(JIS C 60664-5 参照)が比較的高いことによるもので,

こうした条件では水分吸着は質量比で

1 %

のオーダーにあることが分かっている。

同一条件下で,ガラス

-

シリコンラミネートの水分吸着は,質量比で

0.3 %

にすぎない。

注記  #x/new の“new”は,湿度処理をしていない新しい材料を意味する。また,#x/180d;y %の“180d”は,

湿度 y %で 180 日間の湿度処理をした材料を意味する。

図 C.4−高周波での絶縁破壊電界強度,固体絶縁物,湿度の影響;50  ℃で状態調節;

#1:マイカを詰めたフェノール系,d = 0.75 mm

#2:ガラス-シリコンラミネート,= 1.5 mmd =  沿面距離)


30

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

固体絶縁物の絶縁破壊電界強度は,材料の厚さの関数であり,非常に薄いフィルムは,厚さ

0.75 mm

試験片の場合よりも

1

けた高い絶縁破壊電界強度をもつことがあり得る。このことを,

図 C.5 が実証して

いる

[20]

。ただし,周波数が増すと値が大きく低下することもある。

1 MHz

では,絶縁破壊値が

50 Hz

の約

10 %

にすぎなかった。こうした低下は,厚さが約

1 mm

の試験片の場合に匹敵する。したがって,固

体絶縁物の厚さに準拠した規定値の決定では,絶縁破壊電界強度がこのように絶縁厚さに左右されること

を考慮しなければならない。

図 C.5−高周波における絶縁破壊,絶縁フィルム;

#1:セルロースアセトブチレート;#2:ポリカーボネート;#3:セルローストリアセテート

[20]


31

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

温度が絶縁破壊電圧に及ぼす影響は,

図 C.6 でみることができる

[20]

。したがって,温度は重要な影響

因子であり,規定値の決定及び試験に際して考慮しなければならない。

高周波電圧における部分放電特性に関する詳細な結果を,数

kHz

までの周波数について利用することが

できる

[16]

[21]

。この範囲内では,部分放電による破壊に至る時間が周波数に反比例していることが確認

されている。この関係は,促進試験で既に利用されている。したがって,特に,より高い電圧周波数では,

部分放電が発生するときには,十分な固体絶縁物寿命を期待することができない。

図 C.6−高周波での絶縁破壊,絶縁フィルム;#1:ポリスチレン,d = 80μm

#2:ポリエチレン,d = 50 μm 

[20]


32

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

附属書 D 

規定)

高周波電圧での絶縁試験

D.1

試験電圧源

商用周波数を大幅に超える周波数で何らかの高電圧試験をする場合,周波数を調整可能な試験電圧源が

適切かどうかが基本的な問題となる。

図 D.1−高周波共振変圧器[二次コイルの巻数

(

N

2

)

が出力電圧

(

U

2

)

に与える影響]

[22]

高周波共振変圧器は,低電圧,高周波発電機と組み合わせて使用できる

[22]

。この方法の問題点は,

D.1 の例が示すとおりである。高共振周波数を得るためには,変圧器の二次巻線の巻数を,図 D.1 のよう

に減らさなければならない。これによって,利用できる出力電圧も減ることになる。

周波数全域をカバーするためには,複数の共振変圧器を必要とする。このような試験電圧源がもつ,も

う一つの問題点が,試験片のインピーダンスと試験電圧の周波数及び振幅との間の強力な反作用

(reaction)

である。

この代わりに,高周波,高電力オシレータ(トランスミッタ)を試験電圧源として用いてもよい。これ

によって,より高い周波数をより多くの電力出力と組み合わせることができる

[5]

[6]

及び

[20]

。例を

図 D.2

に示す。この電圧源の出力電圧は約

4 kV

ピークで,最高周波数は

5 MHz

である。


33

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 D.2−高周波,高電力オシレータ

 [5]

  及び

 [6]

試験電圧源が大きな容量性負荷を供給する能力は,試験電圧源を選択するときの最も重要な問題の一つ

となる。部分放電結合容量は試験片の容量より大きいことが望ましいので,通常は結合コンデンサが容量

性負荷を決定する。

表 D.1 は,

[5]

及び

[6]

で使用した強力な試験電圧源についての代表的データの一部を示す。出力電圧は,

強力な高電圧源

(4 kV

400 mA)

から給電を受ける真空

4

極管から発生する。可変陽極インダクタンス及び

全負荷容量からなる直列共振回路を,使用する周波数に同調する。最高試験電圧と最高負荷容量(主とし

て,部分放電結合容量)との両者を,

表 D.1 に示す。この試験電圧源の全調波ひずみは,共振動作の結果

2 %

未満になる。

表 D.1−試験電圧源

 [5]

  及び

 [6]

  のデータ

周波数

MHz

結合容量

pF

最高試験電圧

kV

必要試験電流

A

 0.1

1 100

2.7

1.9

 0.2

1 100

4.0

5.5

 0.5

450

3.4

4.8

1 520

2.7 8.8

3 320

1.0 6.0

D.2

高周波部分放電試験

D.2.1

試験機器

高周波電圧における部分放電試験が必要な場合

[5]

及び

[6]

,標準の部分放電測定機器は使用できないため,

幾つかの問題が加わってくる。ただし,一般には,デジタルオシロスコープを,高周波試験電圧抑制のた

めの手段と組み合わせれば十分である。

報告されている高周波試験電圧による部分放電測定の多くは,

図 D.3 に示す試験回路を用いて実施した

ものである

[24]

。部分放電の検出は,高いサンプリングレートをもつデジタルオシロスコープでデジタル

積分することで行う。

図 D.3 に示す回路は,高周波発生器及び増幅器

(1)

から給電を受ける高周波共振変圧器

(2)

をベースとする

[22]

。これに代わるものとして,高周波電力オシレータを,

図 D.2 に示すように共振状態で用いてもよい。


34

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

これによって,

部分放電測定中の試験電圧の阻止を容易にするための望ましい低調波ひずみを維持しつつ,

十分に高い周波数を発生することができる

[5]

及び

[6]

 1  高周波発生器及び増幅器 
 2  高周波共振変圧器 
 3  試験片 
 4  帯域消去フィルタ 
 5  高電圧プローブ 
 6  遮へいしたキャビネット 
 7  高速デジタルオシロスコープ 
 8  デカップリング増幅器 
 9  部分放電測定計器(狭帯域,モニター専用)

10

デジタル電圧計

11

アナログオシロスコープ

12

制御コンピュータ

図 D.3−高周波電圧試験のための部分放電試験回路 

[22]

D.2.2

試験回路

D.2.2.1

一般的考慮事項

部分放電測定は,部分放電電流を検出して行う。測定では,測定インピーダンス

R

m

を試験片に直列に

接続する。このインピーダンスにおける電圧降下を,第

3

帯域消去フィルタ経由で,高い帯域幅(

100 MHz


35

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

以上)をもつデジタルオシロスコープの一方のチャンネルに接続し,集中素子からなる試験回路と合わせ

た合計帯域幅が

60 MHz

となるようにする。帯域消去フィルタは,試験片に給電する容量性電流が引き起

こす電圧降下を除去する。この手法によって,

5 pC

という部分放電感度が得られる。

高周波試験電圧は高周波電圧計で測定し,また,デジタルオシロスコープの第

2

のチャンネルでモニタ

する。多くの場合,試験片は見えないので(耐候試験機)

,ビデオカメラを用いて外部放電活動又はフラッ

シオーバの有無を検出することが望ましい。試験回路は,IEEE 488 バス経由で

PC

が制御する。試験回路

の配置図を,

図 D.4

[5]

及び

[6]

に示す。

図 D.4−試験回路図

 [5]

  及び 

[6]

試験片が透明の場合,ビデオカメラによって部分放電を目視で検出することもできる。しかし,このカ

メラによる手法の感度は,高周波電圧においても非常に低いため,電気測定に代わることはできない。透

明試験片からの発光を検出する光電子増倍管

(PMT)

を使用すると部分放電検出の感度が高まるが,部分放

電の大きさを校正することはできない。ただし,オシロスコープを起動するために

PMT

を使用すること

で,部分放電検出感度を大きく改善することができる。この方法をとれば,多くの場合に,オシロスコー

プを電気的ノイズより低いレベルで立ち上げることができるためである。

D.2.2.2

試験回路の必要帯域幅

次に説明する評価では,試験回路は

1

次低域転移

(low-pass transfer)

特性(

PT

1

特性)をもち,その結果,

低域遮断周波数はゼロになり,高域遮断周波数

(3 dB)

f

c

は帯域幅に等しくなる。

潜在的共振点又は試験回路の低域遮断周波数の作用については,D.2.2.3 に記述する。

D.2.2.2.1

部分放電インパルス感度限界に対する最小帯域幅

高周波試験電圧の場合,部分放電インパルスのパルス繰返し周波数が高くなると予測しなければならな


36

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

い。したがって,部分放電インパルスの感度限界は,パルス重畳を避けることができるものでなければな

らない。この理由から,いわゆる“広帯域”測定機器

[23]

だけを使用することができる。このように,通

常,部分放電検出は,広帯域オシロスコープを用いて行う。

試験回路の必要帯域幅について,一定の値を規定することは困難である。例えば,試験電圧周波数が

100

kHz

の場合,点−面空げきでは,最高

1 MHz

の部分放電インパルス周波数がみられた。部分放電が複数の

場所で同時に発生することがあるよ(撚)り線対の場合では,部分放電インパルス周波数が

10 MHz

を超

えることが観察されている。

部分放電測定回路の最小帯域幅は,パルス重畳を避けるために,部分放電インパルス周波数以上でなけ

ればならない。これは,部分放電パルス波形を再現しないための絶対的な最低限の要求事項となる。

注記  “f

centre

”とは,

図 D.4 中の帯域消去フィルタの中心周波数である。そのフィルタは,

この周波数で最大挿入損失となる。

図 D.5−試験回路の高域遮断周波数 f

c

が異なるときの部分放電インパルス周波数を 2 MHz と仮定した場合

の部分放電インパルス応答;これは,f

centre

 = 1 MHz の第 帯域消去フィルタを含む

 [5]

  及び

 [6]

通常,高域試験回路遮断周波数

f

c

は,部分放電インパルス周波数の

5

倍で十分である。この条件を,高

域遮断周波数が不十分な他の例とともに,部分放電インパルス周波数を

2 MHz

と仮定した

図 D.5 に示す。

簡易化のため,プラスの部分放電インパルスだけが発生すると仮定した。

この比率は,帯域消去フィルタの励起周波数を中心とする帯域幅で,良好な部分放電検出感度が得られ

ることを示す。

図 D.5 に示す例は,

f

centre

 = 1 MHz

の第

3

帯域消去フィルタを使用したものである。

D.2.2.2.2

部分放電インパルス分析のための最小帯域幅

部分放電信号の発生源を分析して,部分放電の発生源であるボイドの形状及びサイズをある程度分析す

るためには,帯域幅を更に大きくする必要がある。立ち上がり時間が

1 ns

以下のオーダーのストリーマ状


37

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

部分放電の場合

[26]

,正確なインパルス応答を得るためには

1 GHz

のオーダーの帯域幅にする必要があろ

う。

このような広い帯域幅は,同軸試験回路によってだけ,すなわち,実験室内でだけ得ることができる

[26]

及び

[27]

。集中素子を用いると,

50 MHz

のオーダーの帯域幅をかなり容易に得ることができる。これによ

って,立ち上がり時間が非常に短い部分放電インパルスを,約

7 ns

の立ち上がり時間で再現する。これで,

ストリーマ状の部分放電インパルス(立ち上がり時間例

 1 ns

)とタウンゼント状の部分放電インパルス(立

ち上がり時間例

 20 ns

)とを十分に判別できる。

D.2.2.3

試験回路の寸法

規定値の決定を適切に行うことで,部分放電インパルスの重畳を回避しなければならず,またそれによ

って,部分放電インパルス波形をある程度分析できるようになるはずである。

D.2.2.3.1

部分放電試験回路の分析

図 D.6−集中素子をもつ部分放電試験回路の等価回路 

[5]

同軸回路は室内試験だけでの考慮の対象となり,この箇条では考慮しない。集中素子による試験回路

RLC

回路)は,

図 D.6 に示す等価回路で表すことができる

[5]

一般に,部分放電試験回路の誘電成分(配線インダクタンス

L

w

,発生源のインダクタンス

L

S

及び結合

コンデンサ

L

ck

)を無視することはできない。容量性成分(結合コンデンサ

C

k

,試験片の容量

C

3

)ととも

に,部分放電試験回路の遷移特性に共振点が発生する。この共振点は,部分放電インパルスの再現に大き

な影響を与える。したがって,試験回路については近似的な非周期応答が必要であり,高域遮断周波数

f

c

はできるだけ高いことが望ましい。


38

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

D.2.2.3.2

部分放電電圧源と部分放電電流源

図 D.7a−部分放電インパルス電圧源

図 D.7b−部分放電インパルス電流源

図 D.7−部分放電インパルス電圧源及び部分放電インパルス電流源 

[5]

  を使用したときの

部分放電試験回路の遷移特性


39

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

最も適切な部分放電インパルス発生源モデルは,電流源のように思える。他方,部分放電試験に関する

規格

[23]

では,電圧源を試験回路の校正で用いている。明らかに,部分放電試験回路の遷移特性は,校正

で用いている部分放電インパルス発生源の種類によって左右される。

図 D.7a において,部分放電インパルス電圧源を使用したが,これでは適切な部分放電信号の再現ができ

ない。同じ試験回路において部分放電インパルス電流源を使用すると(

図 D.7b),遷移特性が適切なもの

となる。試験回路の遷移特性の詳細については,

[5]

でとりあげている。

次に,適切な遷移特性を得るために,部分放電インパルス電流源を検討する。いうまでもないが,これ

は,標準インパルス電圧源を用いて部分放電試験回路を校正する際の矛盾を解決するものではない

[23]

D.2.2.3.3

部分放電試験回路の分析

試験回路の遷移特性は,

図 D.6 に示す等価回路を用いて分析することができる。分析は,ネットワーク

分析又は適切なソフトウェアを使用したシミュレーションによって行うことができる。

D.2.2.3.3.1

ネットワーク分析

この分析は,試験片の容量性等価回路を用いて,部分放電インパルス電流源について行う(

図 D.6)。他

のインダクタンスとは対照的に,

L

S

は直列共振周波数の計算で無視できる。

L

w1

及び

L

w2

L

w

(巻線のイ

ンダクタンス)に加算する。結合コンデンサ

C

k

が低誘電性でないか又は重要な配線をもつ場合,

L

ck

L

w

に加えて,合計インダクタンス

L

を得る[式

(D.1)

ck

w

L

L

L

+

=

(D.1)

2

1

3

C

C

C

>>

>>

(D.2)

(D.2)

の関係から,試験片の容量は

C

3

で近似することができる。したがって,部分放電インパルス電

流源に対する有効容量

C

は,式

(D.3)

で表される。

k

3

k

3

C

C

C

C

C

+

=

(D.3)

また,共振周波数

f

r

は式

(D.4)

となる。

LC

f

1

π

2

1

r

=

(D.4)

実際には,この直列共振回路の減衰は,

R

m

だけによって生じる。損失係数

d

は式

(D.5)

から得られる。

C

L

R

d

/

m

=

(D.5)

非周期応答の場合,損失は式

(D.6)

でなければならない。

2

d

(D.6)

したがって,インダクタンス は,式(D.7)に示すように限定される。

4

2

m

C

R

(D.7)

この場合,高域遮断周波数 f

c

は,簡易 RC 回路を仮定して式(D.8)によって近似することができる。

C

R

f

m

c

π

2

1

=

(D.8)

ただし,低域遮断周波数はゼロとする。

D.2.2.3.3.2

  回路シミュレーション

試験回路は,該当するコード(PSPICE) [28]を用いた回路シミュレーションによって,より詳細に分析す

ることができる。この手法は,D.2.2.2.1 に規定する結果を得るために既に利用されている。ここでは,結


40

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

合コンデンサのサイズが試験回路の遷移特性に与える影響を評価するために,この手法を適用する。

D.2.2.3.4

  結合コンデンサが遷移特性に与える影響

図 D.8−結合コンデンサ C

k

の容量に依存した入力信号 U

in

及び測定信号 U

m

試験片の容量 C

3

 = 10 pF)[5]

結合コンデンサ C

k

の大きさが試験回路の遷移特性に及ぼす影響は,

図 D.8 [5]に示す。図 D.8 から,影

響が非常に強力であること,及び結合コンデンサを試験片容量 C

3

に比べて小さくすることは不適切である

ことが明らかとなる。

結合コンデンサが小さいと測定信号が低下するので,校正によって考慮する。ただし,部分放電試験回

路の感度も低下する。このほかに,小さな結合コンデンサを使用したときの測定信号の判別という問題が

ある。

図 D.8 から,最小容量が C

k

 = C

3

のオーダーであることが分かる。できれば,C

k

≧10×C

3

とする。

結合コンデンサに対する必要な値は,この値と試験回路の非周期応答に必要な容量とのうちの大きい方

の値である[D.2.2.3.3.1 の式(D.7)参照]

結合コンデンサの大きさについては,理論的な上限というものはない。実際には,特に試験電圧の高周

波数における,試験電圧源に対する強力な反作用(reaction)によって限定される。この特殊な問題について

は,[29]で説明している。幾つかの実際のデータを,

表 D.1 に示す。

D.3

  試験結果の例

低電圧機器用の多くの構成部品が,高周波試験電圧を用いて試験されている。

オプトカプラの場合,

図 D.9 に示すように,部分放電電圧が大幅に低下することがある[30]。さらに,

面倒なことは,部分放電の強度が電圧周波数の上昇に伴って大きく増大することである。部分放電インパ

ルスの繰返し周波数は電圧周波数とはほとんど無関係に上昇するので,絶縁に対して非常に高いストレス

を加えることがある。


41

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 D.9−高周波電圧におけるオプトカプラの部分放電試験  [30]

図 D.10−インパルス変圧器の部分放電試験:電圧の周波数の影響  [30]


42

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 D.11−コーティングしたプリント回路板の部分放電試験;U

i

d = 0.2 mm [30]


43

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

注記  #1,#2 及び#3 は,三つの質が異なるエナメル線を意味する。

図 D.12−高周波電圧におけるエナメルめっきワイヤ(より線対)の寿命 t

ストレスは部分放電開始電圧を 10 %上回る  [31]

インパルス変圧器の場合,電圧の周波数が重要な影響要素になる。周波数を商用周波数以上に引き上げ

ることで,部分放電特性は大幅に低下する。

図 D.10[30]に示すように,部分放電停止電圧が低下する。部

分放電強度は特に高くはないが,部分放電インパルスの繰返し周波数は試験周波数に比例して増加する。

この結果,劣化の可能性が大きくなる。

コーティングしたプリント回路板の場合,絶縁特性は電圧の周波数によって影響されることはあまりな

い。異なる導体パターンについて

図 D.11[30]に示すように,部分放電開始電圧は,電圧周波数に伴ってや

や低下するだけである。しかし,部分放電強度が大きいこと及び周波数が高いことから,部分放電が発生

すれば予想寿命が非常に短くなる可能性がある。したがって,通常非破壊試験とみなされる部分放電試験

でさえも,試験片をひどく劣化させることがある。

高周波電圧ストレスを受ける部分放電の場合,薄い絶縁フィルムの寿命 について,

図 D.12[31]からあ

る程度理解することができる。電圧が部分放電開始電圧を 10 %しか上回っていない場合であっても,寿命

が数分というオーダーとなり得るので,この試験片は,高周波電圧を用いる 1 分間の高電圧試験に合格す

ることはできない。


44

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

附属書 E

参考)

非正弦波高周波電圧のストレスを受ける絶縁

(対応国際規格の附属書を削除した。


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C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

附属書 F

参考)

規定値の決定図

次の図は,絶縁協調のための空間距離及び沿面距離の規定値の決定に影響を与える各要素間の関係を示

す。この図では,主要な要素に焦点を当てており,関連項目を全面的に見直そうとするものではない。特

に,これらの要素は,平等電界状況(ケース B の状態,JIS C 60664-1 の 3.14 参照)

f

crit

と f

min

との間の周

波数についての空間距離の規定値の決定の精度向上,及び高周波電圧での試験を回避するための固体絶縁

物の規定値の決定は考慮していない。

なお,空間距離の規定値の決定及び沿面距離の規定値の決定は,独立したものであることに注意が必要

である。したがって,空間距離と沿面距離とが同一絶縁面にわたって一致する場合,空間距離又は沿面距

離のうちのいずれか大きい方を使用する。

図 F.1−空間距離の規定値の決定の図解

注記 30

kHz を超える周波数については,導電部の曲率半径が空間距離の 20 %以上のとき,準平等電

界であるとみなす。必要な曲率半径は,規定値の決定手順の終わりでだけ規定できる。

回路

過渡過電圧の測定値

又は制御値

繰返し電圧

4.3 による準平等電界条件

注記参照)

4.4 による不平等電界条件

ケース A について,

JIS C 60664-1

表 F.7 又は JIS C 60664-5 の表 3

からの空間距離の 125 %

表 による空間距離

不平等電界(ケース A,JIS C 
60664-1 
の 3.15 参照)の場合,JIS 
C 60664-1 
の表 F.2 からの空間距

最小空間距離は,過渡過電圧で必要な値又は繰
返し電圧で必要な値のうちのいずれか大きい方
となる。


46

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

図 F.2−沿面距離の規定値の決定の図解

強化絶縁の寸法については,JIS C 60664-1 に従って追加要求事項を満たすことが必要になる。

繰返し電圧のピーク値

繰返し電圧(実効値)

汚損度

絶縁材料(5.1)

最小沿面距離は,トラッキング防止に 
必要な値又は高周波電圧による劣化の 
うちのいずれか大きい方とする。

回路

表 からの沿面距離

JIS C 60664-1 の表 F.4

又は JIS C 60664-5 

表 からの沿面距離

絶縁材料(CTI)

汚損度


47

C 60664-4

:2009 (IEC 60664-4:2005)

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Consideration of high-frequency voltage stress の Annex E