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C 60068-2-54

:2009

(1) 

目  次

ページ

序文

1

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

1

3

  用語及び定義

2

4

  試験の概要

2

5

  試験設備の概要

2

5.1

  試験装置

2

5.2

  はんだ槽

2

6

  前処理

3

6.1

  供試品の準備

3

6.2

  エージング

3

7

  材料

3

7.1

  一般

3

7.2

  フラックス

3

8

  試験手順

3

8.1

  試験温度

3

8.2

  フラックスの塗布

4

8.3

  フラックスの乾燥

4

8.4

  試験

4

9

  結果の表示

4

9.1

  記録計の記録の形

4

9.2

  記録紙上の各点の意味

5

9.3

  基準となるぬれ力

5

9.4

  試験の要求条件

6

10

  製品規格に規定する事項

6

附属書 A(規定)装置の仕様

7

附属書 B(参考)はんだ付け性平衡法を適用する指針

8

附属書 JA(参考)JIS と対応する国際規格との対比表

14


C 60068-2-54

:2009

(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,社団法人電子情報

技術産業協会(JEITA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標

準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS C 60068-2-54:

1996

は,改正され,この規格に置き換えられた。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格に従うことは,次に示す出願公開後の特許出願の使用に該当するおそれがある。

発明の名称  フラックス塗布装置及び方法

設定登録日  平成 16 年  5 月 27 日

なお,この記載は,上記に示す出願公開後の特許出願の効力,範囲などに関して何ら影響を与えるもの

ではない。

上記の特許権者は,日本工業標準調査会に対して,非差別的及び合理的な条件で,いかなる者に対して

も当該特許権の実施を許諾する意志があることを保証している。

この規格の一部が,上記に示す以外の特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実

用新案登録出願に抵触する可能性がある。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,

出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責任は

もたない。


日本工業規格     

JIS

 C

60068-2-54

:2009

環境試験方法−電気・電子−はんだ付け性試験方法

平衡法)

Environmental testing-Part 2-54: Tests-Test Ta: Solderability testing of

electronic components by the wetting balance method

序文

この規格は,2006 年に第 2 版として発行された IEC 60068-2-54 を基に,対応する部分については対応国

際規格を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規定

されていない規定項目を日本工業規格として追加している。

なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一

覧表にその説明を付けて,

附属書 JA に示す。

1

適用範囲

この規格は,

任意の形状をした部品端子のはんだ付け性の試験方法について規定する。

この試験方法は,

特に基準試験として,及びその他の方法では定量的に試験することができない部品に適用する。表面実装

部品(SMD)の試験方法は,IEC 60068-2-69 を適用する。

この規格は,鉛入りはんだ合金及び鉛フリーはんだ合金を用いた標準手順を示す。

注記  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

IEC 60068-2-54:2006

,Environmental testing−Part 2-54: Tests−Test Ta: Solderability testing of

electronic components by the wetting balance method (MOD)

なお,対応の程度を表す記号(MOD)は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,修正していることを示

す。

2

引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。

は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS C 60068-1

  環境試験方法−電気・電子−通則

注記  対応国際規格:IEC 60068-1:1988,Environmental testing−Part 1: General and guidance 及び

Amendment 1:1992 (IDT)

JIS C 60068-2-20:1996

  環境試験方法−電気・電子−はんだ付け試験方法

注記  対応国際規格:IEC 60068-2-20:1979,Environmental testing−Part 2: Tests. Test T: Soldering (IDT)

JIS Z 3282:2006

  はんだ−化学成分及び形状


2

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3

用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 60068-1 及び JIS C 60068-2-20 による。

4

試験の概要

供試品を高感度な平衡システム(一般的に,ばねシステム)につるし,一定温度の溶融はんだ槽中に規

定の深さまで供試品の端から浸す。浸せきした供試品に作用する浮力と表面張力とによって生じる鉛直方

向の合成力を検出し,その出力を信号変換器によって電気信号に変換してコンピュータ又は高速チャート

記録計(以下,記録計という。

)に時間の関数として連続的に記録する。この記録を,供試品と同じ特性及

び寸法の完全にぬれたものの記録と比較してもよい。

次の二つの試験モードがある。

−  静止モード試験は,供試品の特定場所のはんだ付け性を調べることを目的とする。この規格での試験

方法は,このモードを対象としている。

−  掃引モード試験は,供試品表面の拡張された部分のはんだの一様性を調べることを目的とした試験モ

ードである。このモードの標準化は,現在検討中である。

5

試験設備の概要

5.1

試験装置

この試験槽に適した装置の構成を,

図 に示す。ただし,試験装置は附属書 に規定する特性をもち,

供試品に作用する鉛直方向の力を測定できるものであれば,どのような試験装置を用いてもよい。

図 1−試験装置の構成

5.2

はんだ槽

はんだ槽の寸法は,A.7 の規定による。試験に用いるはんだ槽は,溶融はんだに耐える材質とする。


3

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6

前処理

6.1

供試品の準備

供試品は,製品規格に規定がない場合には,受入れ状態のままで試験する。指又はその他のものに触れ

て汚れないように注意する。

製品規格に規定がある場合は,供試品を室温で中性有機溶剤に浸せきして洗浄してもよい。ただし,そ

の他の洗浄方法は用いない。

6.2

エージング

製品規格に加速エージングの規定がある場合は,

JIS C 60068-2-20

の 4.5 から選定したエージングを行う。

7

材料

7.1

一般

はんだの組成は,製品規格に規定する。

7.1.2

鉛入りはんだ合金

鉛入りはんだの組成は,JIS C 60068-2-20 

附属書 による質量分率で  すず(錫)60  %,鉛 40  %(JIS 

Z 3282

の Sn60Pb40)又はすず(錫)63  %,鉛 37  %(JIS Z 3282 の Sn63Pb37)とする。

7.1.3

鉛フリーはんだ合金

製品規格に規定がない場合には,推奨する鉛フリーはんだの組成は,質量分率で銀 3  %,銅 0.5  %及び

残りがすず(錫)

(Sn96.5Ag3Cu0.5)又は銅 0.7  %及び残りが  すず(錫)

(Sn99.3Cu0.7)とする。

注記  質量分率で銀 3  %〜4  %,銅 0.5  %〜1  %及び残部が  すず(錫)のはんだを,Sn96.5Ag3Cu0.5

の代わりに用いてもよい。質量分率で銅 0.45  %〜0.9  %及び残りが  すず(錫)のはんだを

Sn99.3Cu0.7

の代わりに用いてもよい。

7.2

フラックス

試験に用いるフラックスは,次のロジン系の非活性又は活性とし,製品規格に規定する。

a)

ロジン系の非活性フラックス  組成は,質量分率でコロホニー(ロジン)25  %を質量分率で 75  %の

2-

プロパノール(イソプロパノール)又はエチルアルコールに溶解したもの(JIS C 60068-2-20 

附属

書 を参照)。

b)

ロジン系の活性フラックス  a)のフラックスに分析試薬級の塩化ジエチルアンモニウムをコロホニー

の質量に対する遊離塩素比率として,0.2  %以下又は 0.5  %以下を加えたもの。

注記  製品規格には,コロホニーの質量に対する遊離塩素比率として 0.2  %又は 0.5  %を規定するの

がよい。

8

試験手順

8.1

試験温度

8.1.1

鉛入りはんだ合金

試験前及び試験中のはんだの温度は,235  ℃±3  ℃とする。

8.1.2

鉛フリーはんだ合金

製品規格に規定がない場合には,試験前及び試験中のはんだの温度は,245  ℃±3  ℃(Sn96.5Ag3Cu0.5)

又は 250  ℃±3  ℃(Sn99.3Cu0.7)とする。


4

C 60068-2-54

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8.2

フラックスの塗布

適切な保持具に供試品を取り付けた後,

規定の表面部分を室温でフラックスに 3 秒間〜5 秒間浸せきし,

供試品を 600 mm/s±200 mm/s の速度で鉛直方向にフラックスから取り出す。

又は,次の方法による。

適切な保持具に供試品を取り付けた後,規定の表面部分を室温でフラックスに浸せきし,供試品をフラ

ックスから取り出した後,直ちに 1 秒間〜5 秒間清浄なろ紙の上に立てて過剰なフラックスを取り除く。

8.3

フラックスの乾燥

試験前にはんだ温度を,8.1 に規定する温度とする。次に,フラックス溶剤の大部分を揮発,乾燥させる

ために供試品を垂直に下げて端子下端をはんだ面から 20 mm±5 mm 離し,30 秒間±15 秒間つるす。

この乾燥中に記録計をゼロ点に調整し,試験直前に,はんだ表面の酸化物を適切な材料で作ったへらで

取り除く。

8.4

試験

供試品の端子を,5 mm/s±1 mm/s〜20 mm/s±1 mm/s の速度で溶融はんだ中に規定の深さまで浸せきし,

規定の時間その位置に保持した後,引き上げる。力対時間の解析をする部分は,供試品が浸せき位置で静

止している間の記録とする。

注記  供試品を規定の深さまで浸せきする時間は,溶融はんだとの接触開始から 0.2 秒間以内とする

のがよい。

記録は,供試品を溶融はんだに浸せきする直前から始め,試験中は継続する。

試験手順の時間シーケンスは,

表 による。

表 1−試験手順の時間シーケンス

単位  秒

試験手順

時間

継続時間

1)

フラックスの塗布 0

約 5

2)

過剰なフラックスの取除き

約 10 1〜5

3)

供試品をはんだ槽上につるす

約 15

4)

予熱

約 20 30±15

5)

はんだ表面の酸化物の取除き

約 60

6)

試験開始

約 65 1〜5

7)

はんだへの浸せき 70 以内 5

注記

時間 は,フラックスの塗布からの経過時間を表す。 継続時間

は,それぞれの手順の継続時間を表す。

9

結果の表示

9.1

記録計の記録の形

記録の形には,2 種類の形がある。その違いは,力の読みの極性だけである。

図 では,上方向の力(ぬれなし)は負,下方向の力(ぬれ)は正として示す。通常 E 点の力は,安定

なぬれの状態を表す D 点の力とほぼ等しい。E 点の力が D 点の力より著しく小さい場合は,不安定なぬれ

となる(B.6.1.3 参照)


5

C 60068-2-54

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注記  浮力線は,理論上の浮力である。

図 2−記録の例

9.2

記録紙上の各点の意味

9.2.1

時刻 t

0

は,はんだ表面と供試品とが最初に接触する時刻である。これは,力の記録がゼロ線から移

動を開始することによって示される。

9.2.2

A

点では,溶融したはんだ表面が供試品の端子を昇り始める。通常,ぬれ力の急激な上昇を示す。

9.2.3

B

点では,接触角が 90 度になる。測定される力は,部品の浮力による。

9.2.4

ぬれ力が測定される最大値の 2/3 になる点を C 点とする。C 点でのぬれ力は,規定の時間内で規定

の値以上とする。

9.2.5

D

点では,規定の浸せき時間中に到達するぬれ力(下方向の合成力)が最大となる。

9.2.6

E

点では,

規定の浸せき時間の終わりの点である。

D

点と E 点とは,

同じ力になることがある

B.6.1.3

参照)

9.2.7

E

点から後の供試品を引き抜くときの記録は,評価の対象としない。

9.3

基準となるぬれ力

試験結果と比較する供試品の種類ごとの実用的な基準を,次の手順で定める。

供試品を試験試料から抜き取り,7.2 に規定する活性化フラックスを用い,最適の条件であらかじめ予備

はんだ付けをする。この予備はんだ付けは,ぬれ性試験と同じ条件で平衡法の設備で行うことができる。

予備はんだ付けは,最大の力の読みが増えなくなるまで同じ供試品で繰り返す。この最大の力を,基準と

なるぬれ力とする。

供試品のはんだ付けの一般的適合性を調べるには,

基準となるぬれ力を完全なぬれが発生する場合とし,

適切な表面張力定数と,はんだの密度を仮定して算出した理論値とを比較する。

理論的ぬれ力 は,次の式によって求める。

F=−gρvγP

ここに,

F: 理論的ぬれ力(mN)

g: 重力の加速度(mm/s

2

ρ: はんだの密度(g/cm

3

v: 供試品の浸せき部分の体積(mm

3


6

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γ: 表面張力定数(mN/mm)

P: 供試品の浸せき部の周囲長さ(mm)

注記  この式は,溶融したはんだ表面近くでの供試品の断面と,その供試品の軸方向に沿っての断面

が同一のときだけに適用できる。表面張力定数は,はんだの組成,温度及びフラックスに依存

するため,この規格に規定する試験条件のときだけに適用できる(B.6.2 参照)

9.4

試験の要求条件

はんだ付け性に対する要求は,次のパラメータの一つ以上で表す。

−  ぬれの初期段階:時間間隔(t

0

から B まで)での最大値

−  ぬれの進行段階:時間間隔(t

0

から C まで)での最大値

−  ぬれの安定性:次の最小値 

点での力

点での力

D

E

10

製品規格に規定する事項

平衡法での試験を規定する場合は,製品規格に,次の項目を規定する。

項目

参照する細分箇条

a

)

脱脂溶剤(必要がある場合)

6.1

b

)

エージング方法(必要がある場合)

6.2

c

)

はんだ合金の組成

7.1

d

)

フラックスの種類

7.2

e

)

試験温度

8.1

f

)

供試品の試験部分及びフラックスの塗布方法

8.2

g

)

浸せき深さ

8.4

h

)

浸せき時間

8.4

i

)

浸せき速度

8.4

j

)

記録から測定するパラメータ

9.4

k

)

これらのパラメータに対する許容値

9.4


7

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附属書 A

規定)

装置の仕様

序文

この附属書は,装置の仕様について規定する。

この規格の目的に対して,コンピュータシステム又は記録計を含む完全な装置とは,装置各構成部位が

次の特性を満足する。

A.1

記録計の記録素子(ペンなど)の応答時間は,最大負荷から中心のゼロ点への戻りが

0.3

秒間以下で

あって,行きすぎ量(

overshoot

)は,最大の読みの

1

%以下とする。

A.2

測定系は,複数の感度設定ができることが望ましい。最大感度レンジでは,中心からの最大の振れ

が供試品保持具に

200 mg

を超えないおもりをつるすことによって得られる。

A.3

記録紙の速度は,

10 mm/s

以上とする。

A.4

記録中の電気的及び機械的雑音は,力換算で

0.04 mN

相当量以下とする。

A.5

記録計の振れは,最大目盛で

95

%よりよい正確さで,力に正比例する。

A.6

機械的な平衡をとるばね系の硬さは,

10 mN

の負荷を供試品保持具につるしたときの鉛直方向の変

位が

0.1 mm

以下とする。

A.7

はんだ槽の大きさは,供試品のどの部分も槽壁から

15 mm

以上離れており,槽の深さは

15 mm

以上

とする。

A.8

はんだ槽の温度は,8.1 に規定する温度を維持する。

A.9

供試品の最下端部の浸せき深さが

2 mm

5 mm

で,最大誤差を±

0.2 mm

に調整できる。

A.10

浸せき速度は,静止モード試験では,

5 mm/s

±

1 mm/s

20 mm/s

±

1 mm/s

とする。

A.11

最大の浸せき深さに保持する時間を,

0

秒間〜

10

秒間に調整できる。


8

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附属書 B

参考)

はんだ付け性平衡法を適用する指針

序文

この附属書は,はんだ付け性平衡法を適用する指針について記載するものであって,規定の一部ではな

い。

B.1

ぬれ性測定の定義

平衡法は,溶融はんだ槽に供試品を浸せきしたときに,供試品に作用する鉛直方向の力を,時間の関数

として測定する方法である。供試品のぬれ性は,所定のぬれの程度に到達する時間及び所定の時間内で到

達したぬれの程度として,観測結果から推定できる。

ぬれ性の規定は,力対時間曲線上の幾つかの点で特定の値に適合することを要求してもよい。この指針

では,そのうちの用いてもよい幾つかの点及び値について考慮する。

再現性及び定量的な結果を要求する場合には,試験装置は一定の要求条件を満足する。その要求条件及

びそれらの要求を満足していることを実証する方法も,ここで説明する。

B.2

供試品の形状

供試品は,どのような形状のものでもよいが,力対時間曲線の解釈及び力の計算を単純にするために,

供試品の浸せき部分の断面積が同一であるのがよい。計算値との差を小さくするためには,供試品の試験

表面を垂直軸から±

15

度の角度で浸せきするのがよい。供試品の浸せきする側を切断する必要がある場合

は,ばりがないように垂直軸と直角に切断する。

この試験は,表面実装用コンデンサ又はプリント配線板のようなはんだにぬれない広い面積をもつ供試

品にも適用できる。しかし,はんだにぬれない領域は,力対時間曲線にゆがみを発生させることがある。

このような理由から,この規格は,横断面周りの全体がはんだでぬれるように設計した部品端子について

試験するときに,この方法を適用することを指示している。

B.3

供試品の準備

試験中のフラックス溶剤の揮発及びフラックスのたれの影響によって記録に乱れが生じないようにする

ため,規定の試験手順によって供試品にフラックスを塗布し,たれ切り(

dripping

)をすることが重要であ

る。

B.4

試験装置の特性

B.4.1

記録装置

B.4.1.1

ゼロ点の調整

試験中,供試品に作用する力の方向は,ぬれていない状態からぬれた状態になると反転する。浮力は,

ぬれの記録を上下方向にかなり偏位させる場合もある。したがって,最大可能感度でぬれの記録の全振幅

を記録するためには,記録紙の中心をゼロ点にするか又は記録紙上にすべての曲線が描けるように調整で

きる記録計を用いる必要がある。


9

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B.4.1.2

応答時間(A.1 参照)

応答時間は,記録計が特にぬれの初期に生じる力の急激な変化を正確に再現することを保証するよう十

分に早くする。理論的には早ければ早いほどよいが,実用上

0.3

秒間以下であればよい。このため記録装

置として,記録紙を用いた記録計を用いることができる。

記録装置として,記録紙を用いた記録計を用いることができるが,力対時間信号をデジタル化してコン

ピュータで分析することがより一般的である。

次の手順を用いて装置の応答時間及びゼロ点の安定性を調べる。質量が既知のおもり(質量は,記録計

のペンが中央のゼロ点から最大目盛の振れを示すのに十分であるのがよい。

及びおもりに適切な形の供試

品保持具を用いる。

供試品保持具を取り付け,記録計をゼロ点に調整する。

最大速度で記録紙を送る。

供試品保持具上におもりを載せる。

  2

秒間〜

3

秒間後に,おもりを取り除く。ただし,記録紙は送り続ける。

  2

秒間〜

3

秒間経過後,再び保持具上におもりを載せる。

以上の操作を

5

回以上繰り返した後,記録紙送りのスイッチを切る。

記録紙上に得られた記録から,選択した設定での装置感度,ペンの応答に必要な時間及びゼロ点復帰の

一貫性が分かる。

B.4.1.3

感度の設定(A.2 参照)

数段階の感度設定をすることによって,異なった寸法の供試品を試験できる。数段階の感度設定は,多

様な増幅度を設定できる記録計によって容易に得られる。最大目盛表示での力が,

1 mN

20 mN

(約

100 mg

2 g

の質量増加に対応)の設定の場合は,周囲長さが

1 mm

20 mm

の供試品に適用できる。

B.4.1.4

記録紙速度(A.3 参照)

力対時間曲線上の重要な点を識別するためには,最低

10 mm/s

の記録紙速度が必要である。

B.4.2

平衡システム

B.4.2.1

ばねの硬さ(A.6 参照)

平衡システムは,一般的には,

供試品に作用する応力によって生じるばねアセンブリの変位を測定する。

そのような変位は,

はんだに浸せきした供試品の深さの変化及びその結果としての浮力の変化をもたらす。

したがって,ばねシステムは,試験中のばねシステムのたわみとそれによる浮力の変化が,測定するその

他の力に比べて無視できる程度になるように,十分硬い必要がある。

B.4.2.2

雑音レベル(A.4 参照)

平衡システム及び増幅システムの電気的及び機械的雑音のレベルは,試験できる最高の感度で信号レベ

ルの

10

%を超えない。

B.4.3

はんだ槽(A.7 参照)

はんだ槽は,十分大きな熱容量をもって,試験温度に要求する精度を保つ。

また,供試品に作用する力がはんだ槽壁面でのはんだ表面のわん曲による影響を受けないよう,供試品

を槽壁から十分離す。8.1 に規定する槽温度は,結果の判定を容易にするために選定している。

ある種のめっきは,試験中にはんだ合金に不純物として,又は

はんだ組成の変化として融け込む。はん

だ中の不純物又は組成の変化は,はんだ合金のはんだ付け特性の変化及び結果の表示に影響がある。この

ため,はんだ槽内のはんだの組成が,規定の範囲内であることを確認することが望ましい。


10

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B.4.4

槽の昇降機構及び制御

B.4.4.1

浸せき深さ(A.9 参照)

供試品を溶融はんだに浸せきする深さ(製品規格に規定)は,次の条件を満足する。

a

)

ぬれの過程では,上昇する溶融したはんだ表面が試験する領域を上昇する。これを達成するため又は

供試品の端部とはんだ槽の底との空間を確保するために,供試品の端部を切断してもよい。

b

)

溶融したはんだが,均一な横断面部の周囲を切れ目なく上昇するのがよい。

c

)

浮力の誤差(一般に小さい)が最悪でも常に±

10

%にすることを保証するには,供試品の浸せき深さ

を±

0.2 mm

に再現できるようにする。

注記

浸せきしすぎると,たとえ完全なぬれ状態の場合でも,浮力が大きくなりゼロ点の機械的ゼ

ロ点からのずれが大きくなって,最終段階でも初期の平衡点より下の位置になる場合がある。

浸せきが深くなればなるほどはんだから供試品への熱伝達をより有効にする界面が広く

なり,ぬれの過程の遅れが少なくなる。

B.4.4.2

浸せき速度(A.10 参照)

標準の操作での浸せき速度は,はんだ浸せき速度が速すぎるとはんだ槽内で衝撃波(力の測定を妨げる)

が発生し,遅すぎると溶融はんだ表面が上昇する重要な初期段階ではんだ槽がまだ動いているので,

16

mm/s

25 mm/s

が妥協点である。

B.4.4.3

浸せき時間(A.11 参照)

はんだ付け過程が

10

秒間以上かかる供試品は,一般的には受け入れられない。

10

秒間未満の保持時間

では,はんだ付け性が悪いか又は熱容量の大きな供試品について十分な情報を収集する時間としては不十

分なときもある。リード線のような小さな供試品では,保持時間は通常

5

秒間で十分である。

試験の初めに記録した力の値と保持時間後の力とを比較することによって,はんだと供試品との界面の

安定性についての情報が得られる(B.6.1.3 参照)

B.5

幾つかの代表的な力対時間曲線

代表的な力対時間曲線を

図 B.1 に示す。図 B.1 では,供試品に対し上方向に作用する力を表す曲線部分

(ぬれなしの状態)を負,下方向に作用する力を表す曲線部分(ぬれ)を正として示す。


11

C 60068-2-54

:2009

図 B.1−代表的な力対時間曲線

破線は,供試品の重さを打ち消した試験サイクルの開始状態を表す。水平な実線は,浮力による偏りを

示しており,そこでは,ぬれ力はゼロである。供試品の浮力は,浸せき体積と排除された溶融はんだの密

度との積で計算できる。規定の試験温度

235

℃では,質量分率ですず(錫)

60

%,鉛

40

%の溶融はんだ

密度として丸めた値

8 g/cm

3

を用いるのがよい。

Sn-Ag-Cu

及び

Sn-Cu

はんだ合金の場合は,溶融はんだの

密度として丸めた値

7.1 g/cm

3

を用いるのがよい。

B.6

力対時間曲線から測定するパラメータ

B.6.1

評価基準の選択

この試験方法の長所の一つは,ぬれの過程のすべてを調べることができることであり,評価基準を決め

る場合には,9.2 に規定するパラメータの一つ以上を用いるとよい。

B.6.1.1

ぬれが始まる時間

B

点(

図 参照)でのぬれ過程は,ぬれなしの状態から

はんだがはんだ槽の表面レベル以上に上昇し始


12

C 60068-2-54

:2009

めようとする点へ進む。この結果,時刻 t

0

B

点との間でぬれが始まる。多数の部品を同時にはんだ付け

する工程で取り付ける部品の場合,この時間は,フラックスの種類及び供試品の熱特性に依存するが,

1

秒間〜

2.5

秒間にするのが望ましい。

B.6.1.2

ぬれの進行

ぬれ力の最大値は,試験時間の間で得られる最大値である。基準となるぬれ力は,所定の方式で得られ

る最大値である。

定められた時間で得られる力又は定められた力に到達するまでの時間は,所定の要求を満足するのがよ

い。

B.6.1.3

ぬれの安定性

力が最大値

D

に到達した後には,溶融したはんだ表面は定常的な状態となり力の値も変化しない。ただ

し,この安定性は,供試品とはんだとの反応が原因で供試品表面がはんだによって溶解する又は界面に反

応生成物層を形成することによって乱される。さらに,フラックスの残りかすは,蒸発若しくは分解又は

はんだ槽の表面全体に移行することがある。これらの影響は,試験時間の終わりの

E

点での値を

D

点での

値より低くする原因となるかもしれない。このような不安定性は好ましくない。

したがって,試験時間が

5

秒間〜

10

秒間の場合は,

D

点での力に対する

E

点での力が

0.8

以上になる

のがよい。

B.6.2

基準となるぬれ力

9.3

の基準となるぬれ力を決める手順は,

試験対象表面をぬれが良好な状態とする処置として利用できる。

表面状態が未知の供試品の試験結果と,形状及び寸法とが同じで,かつ,試験で規定した条件でその材

料が到達できる最良のぬれ力とを比較するときに,測定で得られた基準値を用いる。

この手順を,もともとはんだでぬらすことが困難な材料に適用すると,得られる基準ぬれ力は,低すぎ

るぬれ性(

too low degree of wetting

)を標準に設定することになる。このような場合は,供試品は確実に最

初の要求事項(t

0

から

B

点までの時間間隔)に不適合になる。

供試品に無関係にぬれの標準を得るためには,実際の基準となるぬれ力を,次の式によって算出した理

論的ぬれ力 と比較する。

F

=

gρvγP

ここに,

F: 理論的ぬれ力(

mN

g: 重力の加速度(

mm/s

2

ρ: はんだの密度(

g/cm

3

v: 供試品の浸せき部分の体積(

mm

3

γ: 表面張力定数(

mN/mm

P: 供試品の浸せき部の周囲長さ(

mm

この関係は,次の仮定に基づいている。

a

)

理論的ぬれ力 は,供試品表面の平面に働いている(すなわち接触角は,ゼロ。

b

)

表面張力定数 γ は,この規格に規定するフラックスの使用及び規定の試験温度の場合だけに適用でき

る。

Sn-Pb

はんだでは

0.4 mN/mm

,また,

Sn-Ag-Cu

はんだ及び

Sn-Cu

はんだでは

0.47 mN/mm

である。

c

)

と ρ との積は,この計算の場合には,近似値として

0.08 N/cm

3

Sn-Pb

はんだ)

又は

0.07 N/cm

3

Sn-Ag-Cu

はんだ及び

Sn-Cu

はんだ)を用いることができる。


13

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:2009

参考文献

IEC 60068-2-44

:1995

Environmental testing – Part 2: Tests

Guidance on test T: Soldering

IEC 60068-2-58

:2005

Environmental testing

Part 2-58: Tests

Test Td: Test methods for solderability,

resistance to dissolution of metallization and to soldering heat of surface mounting devices (SMD)

IEC 60068-2-69

:2007

Environmental testing

Part 2-69: Tests

Test Te: Solderability testing of

electronic components for surface mounting devices (SMD) by the wetting balance method

IEC 61190-1-1

:2002

Attachment materials for electronic assembly

Part 1-1: Requirements for

soldering fluxes for high-quality interconnections in electronics assembly


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-2-54

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-2-54

200

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附属書 JA

参考)

JIS

と対応する国際規格との対比表

JIS C 60068-2-54:2009

  環境試験方法−電気・電子−はんだ付け性試験

方法(平衡法)

IEC 60068-2-54:2006

,Environmental testing−Part 2-54: Tests−Test Ta: Solderability testing of

electronic components by the wetting balance method

(Ⅰ)JIS の規定 

(Ⅲ)国際規格の規定 

(Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の

箇条ごとの評価及びその内容 

箇条番号

及び名称

内容

(Ⅱ)

国際
規格
番号 

箇条

番号

内容

箇条ごと

の評価 

技術的差異の内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異の理由及び今後

の対策 

2

引用規格

JIS Z 3282:2006

,は

んだ−化学成分及

び形状

2

7

材料

7.2 a)

ロ ジ ン

系 の 非 活 性 フ
ラックス

フラックスに関す
る規定

7

7.2 a)

JIS

に同じ。

追加

差異はない。

コロホニーは,一般的でないので,同義語のロジン
を括弧内に記載した。 
対応国際規格では,colophony(コロホニー)を用い

ている。これは,rosin(ロジン)を用いると resin(レ
ジン)と混同するおそれがあるためである。

7.2 b)

ロ ジ ン

系 の 活 性 フ ラ
ックス

フラックスに関す
る規定

7.2 b)

JIS

に同じ。

追加

差異はない。

国際規格では遊離塩素比率は,

0.2

%以下又は 0.5  %

以下となっている。 
フラックス中の遊離塩素比率は,試験結果に影響す

るので,注記で製品規格には,0.2  %又は 0.5  %で
規定することを推奨した。

8

試験手順

8.2

フラックス

の塗布

フラックスの塗布
方法

8

8.2

JIS

にほぼ同じ。

選択

供試品をフラックスに浸せ
き後の供試品の取り出し速

度を規定して,対応国際規
格の方法との間で選定可能
とした。

供試品へのフラックスの塗布量の安定化は,試験結
果の安定化にとって重要である。供試品のフラック

スからの取り出し速度を規定することによって,フ
ラックスの塗布量の安定化が図れる。 
国際規格の改正提案を検討する。

8.4

試験

試験手順の時間シ
ーケンス

8.4

JIS

に同じ。

一致

差異はない。

供試品の浸せき深さを製品規格で規定することを明
確化した。


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C

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-2-54

200

9

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 60068

-2-54

200

9

 

(Ⅰ)JIS の規定 

(Ⅲ)国際規格の規定 

(Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の
箇条ごとの評価及びその内容 

箇条番号 
及び名称

内容

(Ⅱ)
国際
規格

番号 

箇条
番号

内容

箇条ごと
の評価 

技術的差異の内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異の理由及び今後
の対策 

9

結果の表示

9.1

記 録 計 の

記録の形

記録の例

 9

9.1

JIS

に同じ。

一致

差異はない。

図 中の浮力線は,実際の記録ではなく,理論浮力
であることを注記に記載した。

10

製品規格に

規定する事項

個別規格に規定す
る事項

 10 JIS

にほぼ同じ。 追加 8.2 でフラックスの塗布方

法を選択可能としたので,
追加した。

国際規格の改正提案を検討する。

 

JIS

と国際規格との対応の程度の全体評価:IEC 60068-2-54:2006,MOD 

注記 1  箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。 

−  一致技術的差異がない。

−  追加国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。

−  選択国際規格の規定内容とは異なる規定内容を追加し,それらのいずれかを選択するとしている。

注記 2  JIS と国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。 

−  MOD国際規格を修正している。